<道路部>

道路研究室 平成10年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


建設分野における外部コストの評価手法の開発に関する研究

研究期間:平10〜平14
担当者 :濱田俊一、曽根真理、田中良寛

 本研究の目的は、公共事業、特に道路事業の外部的なコストまでを含めた総コストを対象としてコスト縮減を行うことある。このため、本研究は、その前段階として、道路事業全体についてコスト構造を把握するものである。
 10年度は、コスト構造把握のための第1段階として、計画開始から完了までについて、道路事業費の経年的変化を調査することを行った。具体的には、過去に完了した道路事業(仙台西道路)について、過去の工事の記録等を元に、計画段階から工事完了までの総コストの経年変化を算出した。ここで言う総コストとは、従来の総コストである工事費、調査費、用地費等に対し、新たに行政人件費を経費に加えたものである。
 また、仙台西道路では事業初期段階において、住民との交渉を早期に解決するため長大トンネル案が採用されたが、次年度以降の研究のプロローグとして、長大トンネル案を採用しなかったと仮定した場合の事業費を推計し、実際にかかった経費との比較を行った。


人の感性や地域特性を考慮した社会資本整備の評価軸に関する調査

研究期間:平10〜平11
担当者 :濱田俊一、畠中秀人

 本調査は人の感性や地域特性を考慮した社会資本整備のための評価軸の総合化について検討を行うことを目的として、交通行動をケーススタディとし、人の感性・地域特性が交通機関選択行動に及ぼす影響について研究を行うものである。
 10年度は、従来の交通機関選択要因を既存文献、パーソントリップ調査等から把握するとともに、人の感性・地域特性が交通機関選択に及ぼす影響を把握するための調査方法を提案した。


維持管理分野ITS化ガイドライン作成調査

研究期間:平10
担当者 :濱田俊一、曽根真理、池原圭一

 道路の維持管理分野における業務の多くは、依然として旧来の手法により処理されている。しかしながら近年、情報通信技術などのITS技術の開発によりこうした業務の効率化を図ることが可能になってきている。この為、本調査では維持管理分野においてITS技術を導入することにより効率化を行うにあたっての手法について主に占用許可業務、巡回パトロール業務について検討を行った。
 その結果、1)占用許可業務のように決済行為大部分を占める業務については決済手続きを電子化することによって効率化が図られること、2)巡回業務のように現場の判断・作業が大部分を占める業務については、現場業務の報告許可手続きを電子化することで効率化が図られることが判明した。


新物流システムの適応性に関する調査(その2) − 物流交通の問題と対応策に関する調査 −

研究期間:平10〜平14
担当者 :濱田俊一、河野辰男

 近年の社会経済の変化や情報分野を中心とした技術革新の進展から、物流分野においても様々な変化が現れてきているが、依然として物流交通に起因する都市環境の悪化や交通渋滞が深刻な問題となっている。このような背景から本調査では、自動車単体技術や物流施設等の道路利用・運用を含む広い観点で物流交通対策として必要な取り組みを明らかにしようとするものであり、10年度はわが国の物流の現状と動向及び課題の把握、物流対策メニューの検討を行った。


道路交通の需要マネジメントに関する調査

研究期間:平8〜平10
担当者 :濱田俊一、河野辰男、田中良寛

 本研究は、交通需要マネジメント(TDM)施策の普及を推進するにあたって、各地で検討・実施されている事例の情報を収集・整理し、データベースを構築して情報を提供することにより、円滑なTDM施策導入に資することを目的とするものである。
 10年度は、『交通需要マネジメント(TDM)実施事例データベース』を構築することを目的に、各地で検討・実施されている事例の情報を収集・整理し、情報を外部に提供する方法について概略を検討した。
 その結果、10年度末現在で、活動事例400件、文献(論文等)250件、ヒアリング調査事例8件について情報を収集し、体系的に整理した。


安全・快適な自転車利用空間の創造に関する試験調査

研究期間:平9〜平11
担当者 :濱田俊一、田宮 佳代子

 近年、環境に優しい交通手段として自転車利用が注目されているが、わが国では都市部を対象とした自転車利用空間の整備に関する知見が非常に少ないため、安全性・快適性を確保した自転車利用の空間を整備することは困難なのが現状である。
 本調査は、市街地において自転車利用空間を整備する際に必要な技術基準検討のための基礎調査であり、10年度は、都市部における自転車利用空間の整備に係る技術的な課題の整理を行った。また、混合交通下における交通容量やサービス水準の検討を行うために、歩道部を対象として交通流動調査を行い、各主体の挙動分析を実施した。
 その結果、自転車利用空間の構造に関する調査が不足していること、自転車および歩行者の交通量が増加するに従って自転車の走行が影響されることがわかった。


地域特性を生かした道路計画手法に関する調査

研究期間:平10〜平14
担当者 :濱田俊一、畠中秀人

 これまで全国一律の基準に基づく一貫した道路整備がなされてきたが、沿道環境の改善、自然環境への配慮、整備コストの縮減、用地取得の困難等から、地域の特性に応じた道路建設への転換が必要となっている。本研究では、適切な空間機能を確保した道路、狭幅員の小型車専用道路、山岳地域における1車線道路等、地域特性を生かした新しい道路構造について検討を行う。本年度は、小型車専用道路の構造を検討するため、縮小された幅員での安全性及び走行性に関する走行実験を行った。


経済性に優れた新しい橋梁の走行面に関する試験調査(その3)

研究期間:平10〜平13
担当者 :濱田俊一、池原圭一

 今後の超長大吊り橋の桁形式に関しては、建設コスト縮減策の一つとして二箱桁でグレーチング床版を採用することが検討されている。海外では走行車線にグレーチングを適用した事例が数例あるが、国内の自動車専用道路では明石海峡大橋等の路肩や中央分離帯に採用されているだけである。走行車線にグレーチングを適用する場合、自動車の走行安全性の観点から、タイヤとグレーチング間のすべり、車両挙動、ドライバーフィーリング等について検討することが必要である。
 10年度は第1段階として、各種のグレーチングを試作して、タイヤとグレーチング間のすべり摩擦抵抗力の基礎的調査を行い、中低速度域において道路構造令の設計値を満足するすべり摩擦係数が得られるグレーチングの構造特性が明らかになった。


道路事業の評価に関する調査(その2)

研究期間:平8〜平12
担当者 :濱田俊一、曽根真理、池原圭一

 道路事業の評価には大きく1)道路事業の中での施策の評価、2)個別路線の評価がある。本研究は、主として1)施策の評価を対象として研究を行うものである。
 10年度は、施策評価の今後のあり方を今後検討するにあたっての基礎資料の収集と問題点の整理を行うこととした。具体的には、現在政府部内で行われている取り組みについてまとめるとともに、外国、特に先進的といわれる英国、米国で行われている道路事業の政策評価に関する取り組みに関して我が国の状況を踏まえながら調査することとした。更にその上で、今後の研究の方向性を検討することとした。 


交通調査の効率化に関する調査 (その1)

研究期間:平8〜平11
担当者 :濱田俊一、畠中秀人、田宮 佳代子

 現在、交通行動や交通流の把握を目的として、道路交通センサスやパーソントリップ調査などの各種の交通調査が実施されている。しかし、調査費用や被験者への調査負荷が増大していることに加えて、トリップ特性に関する詳細なデータのニーズが高まっており、近年技術の進展が著しい高度情報機器を上記の交通調査に応用し、従来人手観測や被験者に質問していた調査項目を機器によるデータ収集で代替することによって、調査の効率化及び高度化を図ることが考えられる。
 本調査は、高度情報機器を利用した交通データ収集の可能性について、技術的側面からの検討を行うものである。
 10年度は、上記の交通調査への適用が可能と考えられる高度情報機器の開発状況及びデータの収集状況について整理するとともに、これらの基本性能を確認するためにデータ収集実験を実施した。


交通調査の効率化に関する調査(その2) − 常観データの有効活用に関する調査 −

研究期間:平10〜平11
担当者 :濱田俊一、河野辰男、田中良寛

 交通量常時観測(常観)は、全国の主要な幹線道路における交通量の変動等交通特性を把握するために実施されており、道路計画・管理に欠くことのできない重要なデータを収集している。しかも最近では、4車種分類化・オンライン化が進められ、データ活用場面の充実・拡大が求められている。
 そこで本調査では、常観データをより効果的に活用するための方法を提示することを目的に、利用状況や利用上の問題点の把握、現状の常観システムを最大限に生かした活用可能性の検討、観測体制の変化や道路行政に求められるニーズの変化に応じた活用場面・利用方法を検討した。


駐車需要の推計と情報提供に関する調査

研究期間:平8〜平10
担当者 :濱田俊一、池原圭一

 都市部の深刻な駐車問題に対処するためには、道路交通対策の一環として需給バランスに見合う駐車場整備を進めるとともに、既存施設の有効利用を図ることが必要である。そのためには、適切な駐車需要の推計や交通への影響評価が必要となるが、これらの実用的手法が定まっていないのが現状である。
 また、駐車場案内システム等による情報提供が駐車需要に与える影響は定量的に把握されておらず、情報提供内容とともに適切な運用手法の検討が必要である。
 本課題では、検討要因等の設定を容易に行える静的なシミュレーションモデルによる交通流影響評価システムを作成し、モデル街区への適用によって駐車場案内システムの導入効果等を明らかにした。


新交通システム等の整備計画に関する調査

研究期間:平8〜平10
担当者 :濱田俊一、河野辰男、田中良寛

 本研究は、近年都市内公共交通機関として注目を集めているLRT(ライト・レール・トランジット)について、日本での導入促進のための方策を検討したものである。
 10年度は、既存路面電車における問題点を体系的に整理し、LRT導入促進に向けて『需要確保』、『採算性確保』、『導入空間確保』の観点から、それぞれの課題に対する対応方策を提示した。
 また、公共交通利用者のニーズ・交通手段の選択構造を把握することを目的とし、交通分野や異分野における関連調査・分析手法を整理し、公共交通の顧客満足に関する調査・分析手法の方向性を検討した。


多孔質弾性舗装の開発に関する調査

研究期間:平10
担当者 :濱田俊一、池原圭一

 多孔質弾性舗装は、ゴムを主体に構成される舗装であり、従来の骨材を主体に構成される舗装とは異なるすべり摩擦特性を有している。その特性もゴム表面の劣化(表面硬化やゴム小片の剥離など)等を考えると、経年変化が想定される。よって、10年度を初年度として多孔質弾性舗装のすべり摩擦係数の経年変動調査を開始した。
 また、今後はすべり摩擦性能の向上を図るために、新たな製品が開発されることが想定される。新たな製品の性能評価にあたっては、従来のすべり測定車による試験では試験舗装を伴うなど大がかりな試験となってしまう。そのため、新たな製品を簡易な試験機器で評価する方法について検討を行い、簡易な試験機器の基本的な適用条件等を明らかにした。


小型車専用道路の構造に関する調査

研究期間:平10
担当者 :濱田俊一、畠中秀人

 都市内及び都市近郊において、交通需要の増大に対応した道路構造が求められる中、コスト縮減、環境保全、道路空間の有効活用等の諸課題を解決する一方策として小型車専用道路の導入が考えられる。
 本調査では、小型車専用道路の導入検討に際し、橋梁及びトンネルの建築限界及び横断面構成について検討し、断面の縮小化を図るとともに、縦断線形についても検討し、小型車専用道路の幾何構造の設定を行った。