<材料施工部>

コンクリート研究室 平成10年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


コンクリート構造物の耐久性向上のための構造細目に関する研究

研究期間:平8〜平12
担当者 :河野広隆、渡辺博志、田中良樹、古賀裕久

 鉄筋コンクリートの設計における鉄筋のかぶりやあき、ハンチ、配筋などの構造細目は、構造物の耐久性に大きな影響を及ぼすことが知られているが、その影響度は必ずしも明確にされていない。
 10年度は昨年度に引き続き、RC部材のせん断抵抗の一つとされる、主鉄筋のダウエル作用に関する検討を行った。過去の載荷試験結果を基に、主鉄筋径・コンクリート断面幅・かぶり・コンクリート強度をパラメータとした、主鉄筋のダウエル作用によるせん断強度の簡易的な評価式の提案を行った。ややばらつきはあるものの、主鉄筋のダウエル作用によるせん断強度を、おおよそ予測しうることが明らかとなった。


鉄筋の継手部の挙動の解析及び対策

研究期間:平8〜平10
担当者 :河野広隆、森濱和正

 兵庫県南部地震において、RC構造物中の鉄筋継手に破断現象がみられたことから、種々の鉄筋継手の地震時を想定した各種引張試験を行い、強度的に問題ないことを明らかにした。10年度は、ガス圧接継手を有する鉄筋コンクリートはり部材の正負交番繰返し載荷実験、およびガス圧接継手の信頼性回復をめざし非破壊検査手法の検討を行った。
 はり部材の載荷実験では、圧接部に引張圧縮と同時にせん断力が作用する厳しい状態でも、基準どおり施工された圧接部は剛性が大きいので破断しないことがわかった。非破壊検査については、欠陥が圧接の外周部にあるとき、表面SH波による超音波探傷は探傷領域が広がり、信頼性が向上すること、熱間押抜法では目視検査が可能で、押抜径を大きくすることにより安全性が向上することが明らかになった。


コンクリート材料・構造物の品質検査技術の開発(非破壊検査・高知能検査等)

研究期間:平9〜平12
担当者 :河野広隆、片平 博、田中良樹、古賀裕久

 せん断スパン比が小さいディープビームと呼ばれる鉄筋コンクリート部材は、コンクリートの負担するせん断強度は通常の鉄筋コンクリート部材より大きくなるため、設計ではこの効果を考慮したせん断耐力の評価法が採用されている。しかし、正負交番荷重が作用する場合のディープビーム部材のせん断強度はこれまで明らかされていないため、必ずしも耐震設計にこの考え方が適用できるとはいえない。ここでは、ディープビーム供試体の正負交番載荷試験を実施し、繰り返し荷重作用下のせん断強度に関する検討を行った。その結果、部材降伏変位以内の繰り返しであれば、ディープビームとしてのせん断強度が確保されるものの、降伏変位を超えた振幅で荷重を繰り返すと、せん断強度の低下が顕著となることが明らかとなった。品質管理・検査の合理化に関する検討として、9年度に引き続き、フレッシュコンクリートの単位水量を現場で即時に推定する方法について検討した。10年度は、加熱乾燥法に加え単位体積質量法についても試験を実施し比較を行った。また、ポストテンション型プレストレストコンクリートの施工時を対象にした、光ファイバーによるグラウト注入状況の管理方法についても引き続き検討を行った。
 品質管理や検査の今後を考える上では、現在各分野で検討されている基準類の性能規定化を念頭に置く必要がある。そこで、コンクリート構造物の性能規定化手法に関する検討として、道路橋示方書に規定されている構造細目の一部について背景の整理を行った。


建設副産物の発生抑制・再利用拡大技術の開発

研究期間:平10〜平14
担当者 :河野広隆、片平 博

 コンクリート構造物に関する外部コストを考えるとき、解体したコンクリート副産物の取り扱いは大きな課題である。10年度はコンクリート副産物の発生状況とその性状について調査した。この結果、現状での再生クラッシャーランとしての利用法が妥当なものであることを確認した。


(大規模調査) 現場打ち高強度コンクリート部材の設計施工法に関する試験調査

研究期間:平8〜平11
担当者 :河野広隆、渡辺博志、田中良樹

 高強度コンクリート部材は低水セメント比の配合条件で施工されるため、コンクリートへの塩分浸透性が小さく、耐久性に優れた構造物が建造できる。しかし、現場打ち施工で高強度コンクリートを採用した場合、セメントの水和発熱に伴う大きな温度応力が生じ、適切な温度ひび割れ対策が講じられない場合、むしろ耐久性が劣りかねない。
 10年度は、高強度コンクリート部材に発生する温度ひび割れを把握するための簡易試験方法について検討を行った。水和発熱による温度応力を正確に把握することは一般的に困難であるが、ここで開発した簡易試験法により、おおよその温度応力を把握しうることが明らかとなった。


(一般調査) せん断補強筋設計施工法に関する試験調査(その1)

研究期間:平8〜平10
担当者 :河野広隆、渡辺博志

 鉄筋コンクリートラーメン構造の隅角部は、荷重作用によって生じる曲げモーメント・せん断力が集中しやすく構造上重要な部位である。しかし、隅角部の応力状態は複雑であり、その強度を精度良く予測する手法は確立していない。
 10年度は、隅角部の曲げ強度算定手法を考案し、良好な精度で強度を予測しうることを確認した。また、正負交番荷重が作用する場合の隅角部のじん性に関する検討を行い、ハンチ筋を配置して、隅角部の接合部パネル内に塑性ヒンジを生じさせないことが、じん性を確保する上で最も確実であることを明らかにした。


(一般調査) コンクリート舗装の設計施工の合理化に関する試験調査(その1)

研究期間:平7〜平10
担当者 :河野広隆、森濱和正

 コンクリート舗装は、設計耐用年数が20年とアスファルト舗装の2倍であり、長寿命舗装としての資質を備えている。それにもかかわらず、その建設や道路関連施設の維持管理面が容易でないために、アスファルト舗装ほど広く普及していないというのが現状である。コンクリート舗装のさらなる普及を図るため、コンクリート舗装の構造設計や建設の合理化を検討するとともに、維持管理手法の合理化を図る必要がある。
 10年度は、曲げ強度および割裂引張強度に関し、JISのISO整合化改訂に伴う載荷速度の影響、試験方法の違いによる乾燥の影響について調査し、強度の品質管理に関する合理化を検討した。


省人化施工のためのコンクリートの品質に関する調査

研究期間:平9〜平11
担当者 :河野広隆、森濱和正、古賀裕久

 ダムコンクリート用骨材の製造時には微粒分が、火力発電所からはフライアッシュが発生するなど、各種粉体が大量に発生している。環境保全や省資源の観点から、これらの有効利用が望まれており、ダムコンクリートの品質と施工性を改善するために、粉体を利用した場合のダム用コンクリートの配合設計方法の確立を検討している。
 10年度は、外部用の有スランプコンクリートについて、粉体量と施工性、強度、耐久性の関係を調査し、適切な粉体量の目途を得た。


新素材・新工法を用いた防御工の開発(ポーラスコンクリート)

研究期間:平9〜平12
担当者 :河野広隆、片平 博、古賀裕久

 「自然を生かした川づくり」を目指した河川整備事業の推進が求められているが、この実現には治水面での安全性が高く、かつ豊かで多様な動植物の生息・生育の可能な低コストの護岸工法の確立が急務 である。
 ポーラスコンクリートは比較的高い強度を有し、また空隙部に植生基盤材を充填することで緑化や微小生物の生息が可能となるため、多自然型河川護岸への適応に期待が高まっている。本研究はポーラスコンクリートの基礎性状、河川護岸への適応方法、品質管理法等について検討を行うものである。
 10年度はポーラスコンクリートの凍結融解耐久性を明らかにする目的で凍結融解試験を実施した。この結果、厳寒地を除けば比較的広い地域でポーラスコンクリートの適応が可能であることが分かった。


新潟大堰管理橋の塩害実態に関する調査

研究期間:平10
担当者 :河野広隆、渡辺博志、田中良樹、古賀裕久

 信濃川関屋分水路の河口に位置する新潟大堰の管理橋のうち、第7径間が塩害による損傷が著しいため平成9年度に架け替えとなった。これまでにコンクリート研究室では、この撤去された塩害桁を利用して曲げ載荷試験を行い、塩害によるコンクリート中の鋼材腐食が桁の耐荷性状に及ぼす影響を検討した。本調査では、さらにこの塩害桁を解体して材料試験及び腐食調査を行うとともに、この結果に基づく曲げ挙動の解析を行った。
 塩害を受けた既設コンクリート橋の補修、補強、架替を検討する際、橋の残存耐荷力の評価が求められるが、その適切な評価は難しいのが現状であり、本調査の結果はその評価手法を確立する上での重要な情報を提供するものでもある。


横川ダム原石山調査

研究期間:平10
担当者 :河野広隆、森濱和正、古賀裕久

 横川ダム原石山予定地から採取される骨材は、節理が発達していることや粗骨材最大寸法が 40mmと小さくなることから、フレッシュ時に必要なワーカビリティーを得るための単位水量、セメント量が増大することや硬化後のコンクリートの強度や凍結融解抵抗性に悪影響を与えるおそれがある。そこで、9年度までは、RCD用コンクリートに粗骨材最大寸法 40mmの骨材を用いた場合の配合等について検討してきた。
 10年度は、原石山予定地から採取される骨材を提体表面の外部用コンクリートに用いた場合を想定し、コンクリートの凍結融解試験を行った。


殿ダム骨材試験

研究期間:平10〜平11
担当者 :河野広隆、片平 博

 殿ダムは中国地方建設局で建設中のロックフィルダムであり、洪水吐に約10万m3のコンクリートを施工する。このコンクリート用骨材として現地材料(ロック材用の原石山骨材)が使用可能であるかどうかを検討するものである。
 10年度は現地材料を用いたコンクリートの凍結融解耐久性について検討した。この結果、コンクリート用骨材としての使用が可能であることを確認した。