<材料施工部>

土質研究室 平成10年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


土工用新材料の長期安定性に関する研究

研究期間:平9〜平11
担当者 :三木博史、小橋秀俊、藤井厚企、古本一司、小畑敏子

 現在、建設発生土の有効利用を図るため、ジオテキスタイル、ハイグレードソイル、流動化処理土等の新材料を用いた利用技術が提案され、現場への普及が図られている。しかしながら、これらの技術を用いた土工構造物の長期的な安定性については、十分に解明されているとはいえない。本研究では、新材料を土構造物に適用した場合の、長期的な安定性を評価するための促進試験の実施や、現場データに基づく検証を行う。
 9年度は、袋詰脱水処理工法の袋材の天日暴露に対する劣化促進試験、短繊維混合補強土工法の短繊維の天日やアルカリ改良材に対する耐久性の確認、流動化処理土工法の土中養生時の強度発現経過について検討を行った。
 10年度は、気泡混合土の吸水と密度への長期的な影響を対象に、吸水促進試験法の検討と今後の検証のための現地施工を行った。


軟弱地盤対策の選定とその効果に関する共同研究

研究期間:平10〜平14
担当者 :三木博史、小橋秀俊、中野穣治、古本一司

 日本、タイ、インドネシア、フランスの4カ国間で、本共同研究のマスタープランを作成するとともに、「軟弱地盤改良に関する共同研究プロジェクトに関する4カ国間のMemorandum of Understanding」に調印を行った。
 次いで、本共同研究の第一回会議およびワークショップを開催し、PVD工法などの適用性についての知見を整理するとともに、低コスト地盤改良技術についての検討課題を抽出した。さらに、インドネシアの軟弱地盤特性と対策技術の調査を行うとともに、国際建設技術協会が進めている浅層固化技術の移転事業と連携し、浅層固化と木杭を組み合わせた工法に関する試験盛土を施工した。さらに技術・経済レベル等を考慮した低コスト地盤改良技術について討議し、開発目標達成のための研究詳細計画を策定した。
 日本独自には、低改良率深層混合処理工法のメカニズム解明のための実験的検討を行った。


地盤環境保全型建設技術の開発

研究期間:平9〜平11
担当者 :三木博史、小橋秀俊、古田光弘、古本一司、小畑敏子

 今後の建設工事では、工場や事業所等の跡地で、土壌汚染や地下水汚染の対応に苦慮するケースが増加すると予想される。また、大都市圏では大規模な地下構造物が計画される場合も増えており、広域的な地下水脈の遮断や流動阻害が懸念される。本研究はこうした建設工事に伴う、地盤環境への影響防止の技術開発に取り組むものである。まず、土壌・地下水汚染の課題については、影響予測の際に汚染物質の挙動を大きく左右する定数の状況、ビーカー試験から算出された遅延係数の適用性、地下水中での電気探査技術の適用性などを確認した。また、影響防止対策技術として、不透水層に根入れしない遮水壁工法の成立条件、有機塩素化合物が土壌洗浄できる条件、複数の重金属に汚染された土壌の固化・不溶化材の選定法などが明らかになった。地下水の流動阻害の課題については、長大構造物に対する模型実験を行い、透水層の遮断率が地下水に与える影響、おぼれ谷など地下水が集中した場合の3次元的な地下水挙動などを明らかにした。


可撓性施設の合理的設計施工法に関する調査

研究期間:平10〜平12
担当者 :三木博史、古本一司

 本研究では、可撓性管を埋設する際に発生するたわみの算定手法の見直しや、流動化処理土等の利用により、埋設コスト縮減を図ることを目的としている。
 10年度は、管の埋設載荷模型実験を行い、管を地中に埋設した際の合理的なたわみ量算定手法、および流動化処理土の利用による掘削幅削減及び管材薄肉化の可能性について検討を行った。その結果、埋戻し材を十分に締め固めることができる場合は、スパングラー式を用いることによって、コスト縮減を図ることができる可能性があることが明らかになった。また、流動化処理土を用いることによって、掘削幅の削減や管材の薄肉化が可能であることが明らかになった。


地形改変を低減するのり面対策工法に関する調査〜山岳道路への軽量盛土工法の適用〜

研究期間:平9〜平12
担当者 :三木博史、中野穣治、小橋秀俊、藤井厚企

 本研究は、急峻な斜面上の道路建設において、切土による地形改変を出来る限り低減する観点から、軽量材料を用いた盛土主体工法の適用に関するフィジビリティスタディ、並びに耐震性を考慮した設計手法の検討を行うものである。軽量盛土工法の山岳道路への適用は、自然環境保全のほか、防災管理の簡素化、発生土のリサイクル促進、建設コストの縮減など多方面にわたる社会的ニーズに応えうる可能性を有する。
 10年度は、混合軽量盛土材(気泡混合土、発泡ビーズ混合軽量土)の傾斜斜面上の盛土への適用について、動的大型遠心載荷実験により、高盛土となる場合の地震時挙動及び応答特性解析、耐震対策工の検討を行った。
 その結果、1)トップヘビーな混合軽量盛土体では鉛直方向の応答が生じること、2)通常の水平方向応答に対する盛土体の滑動対策に加えて,鉛直方向応答を抑制するための地山と盛土体の定着を図る対策工の検討、鉛直方向応答を考慮した盛土体底部の支持力検討が必要であることなどがわかった。


防災カルテ対応のり面・斜面の道路管理手法に関する調査

研究期間:平10〜平14
担当者 :三木博史、中野穣治、藤井厚企、古田光弘

 我国は非常に多くの山岳道路を有している。8年度の道路防災総点検の結果、当面日常の監視等により管理していく防災カルテ対応箇所は10万箇所以上存在しており、これらの箇所について限られた財源、管理体制の中で、継続的に適切なリスク評価を行う、効率的なマネジメント技術の開発が求められている。
 本研究テーマでは上記のような状況を踏まえ、10年度は斜面の危険度評価の基本となる表土層の強度を簡便に調べる手法の開発と、その方法を用いて逆解析を行い、斜面が崩壊に至る飽和度の推定を行った。
 その結果、簡易貫入試験の実施により得られるNc値と土のせん断力τとの間には、今回用いた試料においては土質によらず一定の関係があり、安定解析への適用も可能であるとの見通しが得られた。


軟弱地盤の合理的な沈下すりつけ対策に関する調査

研究期間:平10〜平12
担当者 :三木博史、古本一司

 本研究では、軟弱地盤上の構造物と取付盛土との間に生じる段差を解消するための対策(すりつけ対策)について、合理的な設計法を提案することを目的としている。
 10年度は、試設計により各対策工法の適用性を比較検討した。さらに、すりつけ対策の一つである低改良率深層混合処理工法に関する実験的検討を行った。
 試設計の結果、盛土高が低い場合は、供用後の補修を必要としない発泡ビーズ混合軽量土工法の適用性が高い等、各工法の適用性が明らかになった。また実験の結果、ジオグリッドや表層安定処理工法などを併用することにより、未改良部に作用する荷重が小さくなり、深層混合処理の低改良率化を図ることができることが明らかになった。


高盛土下のカルバートの作用土圧軽減に関する調査

研究期間:平7〜平11
担当者 :三木博史、野口典孝、小畑敏子

 高盛土下のカルバートには設計値以上の土圧が作用することが現場の調査によって確認されている。本研究では小型の模型実験およびFEM解析により土圧が増加する仕組みを解明するとともに、作用土圧の軽減工法を提案することが目的である。
 9年度は、カルバート側方の圧縮沈下に起因する土圧の増加を軽減するため、EPSの設置法について模型実験を行って検討した。また、基礎地盤が沈下した場合にはEPSのみでは土圧の軽減が小さかったため、基礎地盤の安定処理(以後安定処理とする)やカルバート側方の安定処理(以後、側方処理とする)を行うことによって、さらに土圧の軽減が図れる可能性が認められた。
 そこで、10年度では、安定処理や側方処理の幅によって土圧の軽減効果がどの程度見られるか模型実験を行って確認した。その結果、安定処理の幅をある程度大きくすると土圧を軽減する効果が頭打ちとなることや、側方処理を併用することによって、土圧を軽減する効果が高くなることが分かった。


堤防強化対策の選定手法に関する調査

研究期間:平10〜平14
担当者 :三木博史、藤井厚企、野口典孝

 全国の河川堤防を対象として実施された堤防総点検において抽出された被災危険個所について、効果的かつ経済的な対策工法を早急に検討する必要がある。そこで本研究では、試設計に基づく各種対策の比較検討、および短繊維混合補強土などの新技術を用いた対策工法に関する実験的検討を行い、合理的な堤防強化対策工法を提案することを目的とする
 10年度は、堤防における弱点箇所となりやすい軟弱地盤上の杭支持された樋門に関し、対策工法の一つと考えられる押さえ盛土工法に関する大型模型実験を行い、その効果を検証した。
 その結果、対策工として押さえ盛土の有効性が確認された。さらに、盛土材に短繊維混合補強土を用いることでより高い効果が得られることがわかった。


フィルタ材料の設計合理化に関する調査

研究期間:平8〜平10
担当者 :三木博史、古田光弘、野口典孝、小畑敏子

 近年、繊維分野でジオテキスタイルフィルタという新材料が実用化されている。現在ロックフィルダムのフィルタ材には厳しく粒度管理された砂礫が用いられているが、通常適用できない粗い砂礫でもジオテキスタイルを併用することでフィルタの性能を満足できれば、材料選択の幅が広がり建設コストが低減できる可能性がある。
 10年度は、前年度までの試験結果を受け、ジオテキスタイルフィルタ表面で起こる土粒子の侵食を想定した「非侵食試験」により、ジオテキスタイルフィルタのフィルダムへの適用性を検討した。
 その結果、フィルダムへ適用するジオテキフィルタとしては、開孔径0.1mm程度で引張強度の大きいスパンボンド系のものが適しており、施工時の損傷を考慮すると厚みの大きい材料が望ましいことがわ かった。


堤防強化対策技術に関する調査

研究期間:平10
担当者 :三木博史、藤井厚企、野口典孝

 河川堤防に設けられる樋門・樋管と堤体の境界部では、浸透流が卓越し水みちが形成され弱点箇所となりやすく、必要な浸透経路長を確保するために遮水工(うなぎ止め)が設けられる。現在、遮水工のパイピング防止効果についてはレーンのクリープ比により判定しており、基準値を下回らないよう設計されている。しかし、レーンの式はダムの直接基礎の考え方であり、空洞化する樋門・樋管のような浸透メカニズムの異なるものに対して本式が合理的であるかどうかは不明確である。
 そこで本研究では、レーンの式及び基準値並びに水平方向への適用が妥当であるかを検討するため、空洞化を再現した樋門・樋管の大型模型実験を実施した。その結果、レーンの式は樋門・樋管の設計に対しても合理的であることが確認された。、また、遮水工横周りによる圧力水頭の低減効果は大きいことが確認され、レーンの式を用いた評価手法によれば、安全側に評価されることが明らかになった。


建設副産物再利用フォローアップ調査

研究期間:平9〜平10
担当者 :三木博史、小橋秀俊、藤井厚企、古本一司

 建設省では「リサイクルプラン21」の目標を達成するため、総合技術開発開発プロジェクト「建設副産物の発生抑制・再生利用技術の開発」(H4〜8)やリサイクルモデル事業等を通じて、発生抑制・再生利用の技術開発に取り組んできた。しかしながら、平成7年度建設副産物実態調査結果によると、建設発生土のリサイクル率(32%)は期待するほど伸びていない。平成9年10月には「建設リサイクル推進計画'97」が策定され、公共工事でのリサイクル率を、さらに引き上げることなど(2000年度までに建設発生土:80%)が盛り込まれた。
 本調査は、建設省技術研究会の指定課題として、9年度より2年間にわたって実施してきたものである。10年度はその最終年度として、建設発生土のリサイクルを促進するための、技術・行政の両面から適用用途の拡大方法やコストダウンの図り方などを総括した