<材料施工部>

施工研究室 平成10年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


コンピュータによる認識・最適化技術を利用した施工管理・検査に関する研究

研究期間:平10〜平12
担当者 :大下武志、市村靖光、光橋尚司

 リモートセンシングやCTスキャン等の新しいセンサー技術から得られる膨大なデータを処理し、現象を把握する手法として、認識・最適化技術が実用化されている。土木事業の調査施工段階においても新しいセンサー技術を用いた方法が開発され、短時間に明確な値で測定結果が得られるようになった。しかし、膨大な計測データの解釈は、依然経験に頼る部分が多い。土木事業にも本手法を適用することにより、合理的な判断が得られ、施工管理や検査を高度化できる可能性がある。
 本研究では、施工管理・検査への認識・最適化技術の適用性を検証することを目的とする。
 10年度は、文献などから理論概要と適用事例を調査整理し、施工管理・検査への本手法の適用性を明らかにした。また、改良地盤強度の測定手法であるロータリーサウンディングの計測データをニューラルネットワークで解析した結果、重回帰分析に比べて高い精度が得られ、本手法の有効性が確認できた。


図面関連の要素技術の研究開発

研究期間:平8〜平10
担当者 :大下武志、青山憲明、光橋尚司

 設計図面や施工図面は従来紙にプリントアウトして作成・伝達されてきた。しかし、建設産業では業務の効率化を目指してCADやGIS、データベース等の導入が進んできたため、図面を電子データで扱うことによって公共事業を高度化できる可能性がある。図面情報は、長期にわたって多数の関係者が取り扱うため、電子化にあたっては作成方法や交換・共有等の方法を標準化する必要がある。そこで、本研究では、公共事業の設計から維持管理までの全体工程にわたり図面情報を正確かつ効率的に利用するための標準を提案することを目的とした。
 9年度には、電子標準化の対象図面を抽出し、中間ファイルフォーマットによる図面情報交換の技術的課題を実証実験により整理した。
 10年度には、既存の製図基準を整理して、図面の表現方法や記載内容の標準化を検討した。また、前年度に引き続き図面情報の交換・共有方法を検討し、これらの成果をCAD製図基準(案)にとりまとめた。


文書関連の要素技術の研究開発

研究期間:平8〜平10
担当者 :大下武志、青山憲明、光橋尚司

 多くの人々が関与する公共土木事業では、多くの情報を正確に効率よく扱えるように、仕様書等で伝達する情報内容が定められている。受発注者間で受け渡す情報を表現する手段として図面・文書がある。これまで文書の様式は建設省全体で統一されていなかったが、最近では、工事関係書類の一部が工事現場での施工管理の効率化を目的として統一されるなど、標準化への機運が高まっている。
 コンピュータやネットワーク技術を利用すれば、構造物の設計情報や構造情報等を容易に管理することができ、事業に関わる図面・文書情報の共有や再利用が可能になる。この場合、公共土木事業で必要となる情報のなかで電子標準化の効果が高いものを整理し、個々の情報の定義(名称や意味)を明確にした上で、それらを体系化することが必要となってくる。
 本研究では、公共土木事業で扱う文書の利用状況を踏まえて、受発注者間で受け渡す文書情報を正確かつ効率的に活用するために体系化し、その交換・共有の効果を実験的に検証することを目的としている。
 10年度は、設計及び工事段階の文書を事業効率化の観点から整理し、電子標準化すべき情報を抽出して効率的な交換・共有方法を提案した。


土木事業の情報の高度化に関する研究開発

研究期間:平8〜平10
担当者 :大下武志、青山憲明、光橋尚司

 建設CALSを実現し、土木事業の情報の高度化を図っていく上で、STEPは技術情報のデータ交換規格として最も重要な位置づけになると考えられる。現在、STEPはISO国際標準として位置づけられており、各業界で標準化に向けた作業が進められているところである。本研究は、わが国の土木分野におけるデータモデル作成などを含むSTEP導入の基礎を築くとともに、海外の関係機関との情報交換を積極的に行うことで、将来的には、ISOのSTEP制定作業においてわが国の意見を十分に反映できるようにすることを目的に研究を実施している。
 10年度は、海外におけるデータモデルのわが国への適用性を検討するために国際ワークッショップを開催して情報交換を図るとともに、具体的なデータモデリング作業を通じたモデリング技術取得のための橋梁維持管理を対象としたデータモデリング、実証実験システム開発並びに実証実験の実施と評価、及びデータモデリングや実証実験の内容をまとめた「STEP手法を用いたビジネスモデル構築ガイド」を策定した。また、今後わが国におけるSTEP研究開発の方針としてグランドデザインを作成した。


土構造物の品質管理技術の開発

研究期間:平9〜平12
担当者 :大下武志、市村靖光、森 芳徳、井谷雅司

 道路土工は、現在、原則として道路土工要綱・指針に従って設計・施工されている。しかし、近年は、技術の向上等によりこれらの要綱・指針に盛り込まれていない新工法が数多く出現してきている。これらの新工法を採用することによって、品質向上、コスト縮減等の効果が見込まれる場合であっても、要綱・指針に盛り込まれていないことが理由で採用に踏み切れないことが多くある。こうした事態を解決するため、本研究においては、従来の詳細な仕様に拘束されず、構造物に要求される性能あるいは品質を明確にし、的確に品質を確認できる検査手法を導入することによって品質管理の合理化を図り、品質向上とコスト縮減を図るものである。
 9年度は、現状整理と性能規定化に向けた検討課題を抽出した。10年度は、土構造物の品質に着目した性能規定化の対象分野の絞り込み、技術基準や設計・契約図書類の変更点および導入すべき検査手法について検討した。


建設副産物の発生抑制技術の開発

研究期間:平10〜平14
担当者 :大下武志、青山憲明、石崎麻子

 建設工事に伴って副次的に発生する建設汚泥は、建設副産物の中でもリサイクル率が14%(平成7年度:減量化を含む)と極めて低い状況にあり、その大部分を最終処分している。しかし、最終処分場の逼迫などから不適正処理や長距離輸送などによる環境負荷(外部コスト)が増大しており、問題となり始めている。本研究では、内部コストと外部コストを同時に考慮した社会的コスト(建設事業コスト)の低減を図ることを目的とし、建設汚泥の適正な利用を検討する。
 10年度は、現状の建設汚泥の発生・処理・輸送の状況およびそれぞれのコストを調査し、今後の課題を整理した。


構造物の補修・補強技術の開発

研究期間:平10〜平14
担当者 :大下武志、青山憲明、橋本 聖

 現代の道路構造物の多くは、交通量の増加や車両の大型化に伴い劣化や損傷等が激しく、老朽化に合わせて災害の危険性も危惧されている。特に都市部においては交通量の増大により、構造物に与える影響が顕著になっている。そのため、公共事業費縮減の風潮でも、維持管理費の割合は今後増大することが予想され、より効率的な投資が必要不可欠となっている。しかし、維持管理事業を進めるにあたっても、公共工事による環境・住民に与える影響を無視できない状況にある。現在、環境アセスメント法の制定や廃棄物処理法に関する規制がとられているが、各工事において、これらを考慮したコスト評価が確立していない。本研究テーマは、道路事業に関する維持・補修工事における外部コストを抽出し、これらをこれらをコスト評価(内部化)する手法等を検討することで、トータル的なコスト削減法を提案することを目的としている。(記事例として、外部コストの項目…交通渋滞等、工事)


小規模シールド工事のコスト縮減化に関する調査

研究期間:平10〜平11
担当者 :大下武志、森 芳徳、井谷雅司

 現在、都市内における地下利用が進み、シールド工法による下水管路施設等の整備が増加している。また、地方都市の市街地においても、交通事情や土地利用の問題から小規模なシールド工事の採用が増加しつつある。一方、下水道事業においては、平成9年4月に政府が示した「公共工事コスト縮減に関する行動指針」を踏まえ、「下水道事業におけるコスト縮減の取り組みについて」が公表され、コスト縮減に向けた基準や計画・設計方法の見直し、技術開発の推進が必要となっている。本研究では、今後、採用が一層増加すると予想される小規模シールド工事の施工の合理化に向けたコスト縮減の課題を整理し、コスト縮減方策を提案することを目的とする。
 10年度は、小規模シールド工事の合理化に向け、現状の課題を整理するとともにコストアップの要因となっている項目を調査し、現状基準で対応可能な合理化案を検討するとともに、縮減効果を試算・分析した。


(一般調査) 埋込み杭・場所打ち杭の施工管理手法に関する調査

研究期間:平8〜平11
担当者 :大下武志、市村靖光

 本調査は、小口径場所打ち杭であるマイクロパイルに関して、グラウトの注入管理などの施工中の管理項目を明確にするとともに、インティグリティ試験や急速載荷試験などの適用性を検討し、信頼性の高い施工管理手法の確立を図るものである。
 10年度は、実大のマイクロパイルに対して実施した急速載荷試験の解析法について検討を行い、減衰定数を変位とともに変化させることで静的抵抗の推定精度が向上することがわかった。


(大規模調査) 近接施工時の補強方法に関する試験調査

研究期間:平8〜平11
担当者 :大下武志、光橋尚司、橋本 聖、井谷雅司

 本研究は近接施工時に伴う補強技術の内、地盤改良工法による対策について、改良強度・改良率・改良体配置を考慮した経済的かつ信頼性の高い設計手法と品質管理手法を確立することを目的としている。
 10年度は、深層混合処理工法の設計および施工上の留意点を見直すために、過去の現場事例の調査、対策法をもとに想定される問題や対策を検討し、今後の現場施工への参考となるように取りまとめた。また、改良地盤の品質管理手法としての回転貫入サウンディングの適用性を検証するため、同一現場にて2種類の異なるシステムを用いて改良体の強度を測定し、従来の品質管理手法であるコアボーリングによって得られた一軸圧縮強さと比較検討した。その結果、両システムともに深度方向に同様の強度分布を示し、従来方法との相関性が高いなどの整合性が確認された。


(一般調査) 擁壁構造物の設計合理化に関する調査

研究期間:平8〜平11
担当者 :大下武志、青山憲明、橋本 聖、井谷雅司

 近年、高さ10mを越える大規模な補強土壁が増加しており、こうした構造物の合理的な設計法を確立する必要がある。また、現場発生土の有効利用、コスト縮減の観点から建設発生土を利用した擁壁構造物の提案が求められている。
 10年度は比較的細粒分の多い盛土材にも適用可能な多数アンカー式補強土壁に、含水比の高い関東ロームを盛土材として使用し、アンカープレート周辺を改良土により部分改良することによって現場発生土の適用性について検討した。その結果、各項目に対して、次のような評価、提案を行った。
 1) 内的安定はプレート周辺改良強度により評価可能
 2) 外的安定は改良体のせん断力の大きさによって評価可能
 3) アンカー引抜けのメカニズムの解析および引抜け抵抗に対する設計手法を提案を提案


建設副産物再生利用フォローアップ調査

研究期間:平9〜平10
担当者 :大下武志、石崎麻子

 建設工事に伴って副次的に発生する建設汚泥は、建設副産物の中でもリサイクル率が14%(平成7年度:減量化を含む)と極めて低い状況にあり、リサイクルの促進が急務となっている。本調査は、建設汚泥の改良土を用いた試験盛土について追跡調査を行い、建設汚泥の適切な利用方法を検討するとともにマニュアル策定へ向けた検討を行った。
 調査対象は、平成4〜8年度実施の共同研究「建設汚泥の高度処理・利用技術の開発」で実施した試験盛土であり、10年度までの築造後4年間の調査結果を取りまとめた。その結果、改良土は強度的にははほとんど劣化が見られないことや、覆土などを行うことで改良土によるアルカリの影響を抑え、盛土への植栽も可能であることなどが確認された。