<材料施工部>

機械研究室 平成10年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


認知工学の建設機械への適用に関する研究

研究期間:平8〜平10
担当者 :村松敏光、新田恭士、田中和嗣、滝野 勲

 土木工事の建設機械の接触・転倒事故の多くが操作ミスに起因するものと考えられる。こうした状況のもと運転席の配置や操作具の操作力など、人間工学的な観点から調査研究が行われてきた。しかし、実際の事故の形態を考えると、間違った操作や判断誤りなど上記の人間工学的知見のものでは、評価がむずかしい心理的要因によることが少なくない。近年、建設機械の熟練運転者が減少する傾向にあり、今後は一層未熟練運転者による作業が増加することが予想される。
 本研究は、オペレータ操作時の特性について、認知工学的観点から検討し、より根本的な安全対策の実現等に資することを目的とする。10年度は、視覚情報に着目し9年度に提案した認知過程のモデルに、建設機械の遠隔操作を当てはめて考察を行った。


施工−維持管理段階の情報活用方策に関する研究

研究期間:平8〜平10
担当者 :村松敏光、朝倉義博、新田恭士、服部達也

 施工−維持管理段階の各業務間では、紙による情報交換が基本であり、効率的な情報の共有、連携、管理が課題である。仮に情報が電子データで提供されても、情報項目の標準化が行われていなければ効果的な情報活用が図れない。本研究は、CALSを念頭に置いた公共事業執行の情報化として、施工・維持管理段階を対象に将来的な電子情報の活用方策を提示し、情報交換の標準化を図るものである。
 10年度は、施工・維持管理段階におけるCALSを念頭においた情報活用方策の提案、データベース構造の検討、完成図書のフォルダ構成およびデジタル写真に関する情報交換方法の提案を行った。これより、情報交換標準としてデジタル写真管理情報基準(案)を策定した。


施工情報活用による品質管理・検査の合理化技術の開発(シールド工)

研究期間: 平10〜平12
担当者 : 村松敏光、持丸修一、田中和嗣

 近年の国際社会において、WTO/TBT協定に示されるように、技術仕様はデザインまたは記述的に示された特性よりも、性能に着目して定めることが求められている。また、国内建設事業においても、新技術開発導入の促進とこれによる生産効率向上のために、性能を重要視した技術仕様による設計・施工の自由度の向上が求められている。さらに、公共工事に着目すると、品質管理・検査の合理化等によるコスト縮減等が求められている。このような要求に対応するためには、性能規定化を考慮した新しい品質管理体系の開発が有効である。しかし、これまで、土木分野における性能規定化の技術的手法は確立していない。
 本研究は、シールド工事を事例として、性能規定化の技術的手法と、これを考慮した新しい品質管理体系の検討を行うものである。10年度は、技術仕様の性能規定化のために、土木構造物における性能と品質の概念モデルを示すとともに、シールドトンネルにおける要求性能の検討を行った。


(ITS調査) ITSに適応した維持管理機械に関する調査

研究期間:平10〜平12
担当者 :村松敏光、新田恭士、服部達也

 新しい道路五ヶ年計画では、道路管理の効率化や交通の信頼性確保の観点から情報化が推進される。そのための基盤技術として、標準化動向を見極めつつ、道路関係データ形式の統一化、関連データベースの整備など道路全般にわたる共通情報を効率的に利用、提供できる環境の整備が進められる。維持管理においてもこれら技術を利用した維持管理機械の効率的運用システムの確立が求められている。リアルタイム道路交通情報の提供などのITS基盤整備に伴い、交通インフラ環境は大きく変わることにより道路利用者の利便性は向上するが、道路維持管理についてもこれらインフラの有効活用及びCALS等の適用により、維持管理関連データの整理と同時に自動化・半自動化機械を利用した効率化やコスト縮減対応を図っていく必要がある。しかしながら、実際の道路維持管理作業(除雪・清掃・点検等)は一般交通と異なり、低速・路側作業で状況に応じ実施されるなど個別の作業特性を有するため、一般車向けのITS技術をそのまま適用できない部分がある。このような観点から、本研究では、ITSに対応した維持管理機械の運用技術の開発を目的とし研究を行うものである。
 10年度は、機械作業による道路維持管理全般についてITSの活用を前提とした現状調査と要素技術調査を実施し、特に除雪作業における機械運用についてITS適用の効果が高いことを確認した。


(新技術開発調査) 道路状況点検システムの高度化に関する調査

研究期間:平10
担当者 :村松敏光、朝倉義博、服部達也

 よる施設の老朽化等のため、その重要性が増している。維持管理の基本は点検作業であり、点検結果を活用し、適切な状況判断を行うことが重要である。このため、道路点検データの保存・検索が迅速に行えることが重要である。本研究は、点検データ作成作業の軽減とデータの活用促進を図るものである。
 10年度は、道路維持管理作業の整理、GISに含むべき項目の整理、道路維持管理作業における位置要求精度の整理及び、作業合理化の提案を行った。その結果、道路管理GIS構築にあたっては、市販されている電子地図へ道路中心線などの項目を追加する必要性が得られた。また、位置データの記録方法として、巡回記録時には±10m精度のGPSの利用、維持修繕作業等の記録時には±0.35m精度が必要なため、高精度D-GPSや電子野帳の利用が考えられる。


建設機械施工情報システム技術に関する調査

研究期間:平8〜平10
担当者 :村松敏光、朝倉義博、服部達也

 建設機械施工では、コスト縮減、従事者の高齢化・熟練者不足等への対策、安全性の向上策として、運転者への的確な情報提供、イージーオペレーション化、自動化等の研究開発が取り組まれている。一方、電子情報技術を活用した建設事業の高度情報化への取り組みが本格化しており、今後は、維持管理作業においても、CALSの概念を導入した情報システム構築や、GISデータの整備を進める必要がある。本調査では、維持管理用機械の自動化に必要な位置検出システム、及び情報システムの構築手法を調査し、CALS及びGISといった標準情報基盤と連動した情報有効活用方法を提案する。
 10年度は、情報化による維持管理作業の合理化方策の提案と将来の道路維持管理作業における建設機械の自動化を踏まえたデータベース構造について具体例を取り上げて提案した。


河川管理用機械設備の集中管理システムの信頼性に関する調査

研究期間:平8〜平11
担当者 :村松敏光、持丸修一、服部達也

 河川管理設備は排水機場設備点検・整備指針(案)等に従い定期的に点検が実行されているが、これらの点検対象は従来型の設備、機器が中心となっており、近年導入されているコンピュ−タ設備を中心とした集中管理システムに対しては、必ずしも最適とはいえないと考えられる。本業務は、集中管理システムの信頼性確保方策及びその評価手法を提案、集中管理方式の導入効果の検証を目的としている。
 10年度は、論理的な保全方法の策定手法である信頼性向上保全計画(RCM:Reliability Centered Maintenance)を用いて検討を行った。これにより、集中管理システムの効果的な予防保全方法の検討と評価手法の有効性を得た。


ダム用ゲート設備の保守管理手法に関する調査

研究期間:平8〜平10
担当者 :村松敏光、持丸修一、小林 誠

 ダム用ゲート設備を保守管理する上で、ベテラン担当者の減少、施設の高度化による保守管理情報量の増大等が進んでおり、保守管理の合理化が望まれている。
 10年度は、9年度に選定した保守管理の状況を過不足なく記録できる「保守管理記録の様式(以下、保守用カルテという)」を用いて、点検・整備結果の記録、保管、データの活用(信頼性評価、機器の劣化予測等)を支援する保守管理支援システムを構築し、試験運用を行い、適用マニュアル(案)をとりまとめた。


建設機械の遠隔操作制御に関する試験調査

研究期間:平9〜平11
担当者 :村松敏光、新田恭士、滝野 勲

 近年土石流、地滑り、崖崩れ等の災害復旧工事において遠隔操作型建設機械を導入した施工事例が増えている。現場で二次災害の危険性がある場合、オペレータや作業員を危険から遠ざけるため遠隔操作型機械の導入に踏み切っている。しかしながら、遠隔操作型の機械の導入に際し、機械の絶対数が少ないため調達に時間を要する、作業効率が著しく低下する、機器の安全性確保が難しい、施工管理手法が不明である等、様々な課題が依然としてあり改善が望まれている。
 本研究では、災害現場への遠隔操作型機械調達の迅速化に向け汎用建設機械を遠隔操作型に改造する技術について検討を行った。


工事騒音・振動・大気のマニュアルに関する調査

研究期間: 平10〜平15
担当者 : 村松敏光、朝倉義博、小林 誠

 平成9年6月の環境影響評価法(環境アセスメント法)の成立、公布を受け、現行の閣議アセスに代わり新たに工事の騒音・振動・大気質(粉じん等、NO2,SPM)に関する環境アセスメントが加えられ、平成11年6月から実施される。
 本調査は、道路事業における工事の騒音・振動・大気質(粉じん等,NO2,SPM)に関して、環境アセスメントを円滑に実施するために「環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等に関する省令(平成10年6月公布)」に基づいた標準的な調査・予測・評価手法等の技術的事項について、環境アセスメントマニュアルに反映させるために整理を行った。


建設機械の排出ガスの排出係数等調査(NO2,SPM)

研究期間:平10
担当者 :村松敏光、朝倉義博、滝野 勲

 平成11年6月から環境影響評価法に基づき、新たに工事に関する環境アセスメントが実施される。工事に関する二酸化窒素、浮遊粒子状物質の環境アセスメントの実施に当たっては、建設機械の排出ガス(二酸化窒素、浮遊粒子状物質)の大気拡散に関する定量的な予測手法が必要となる。一般に有風時のガス状物質の大気拡散予測式はプルーム式が用いられるが、これを用いて建設機械の排出ガスの拡散計算を行うには拡散特性である拡散幅および有効煙源高さの設定が必要となる。このため、他の要因からの影響のない平地において、建設機械(32t排出ガス対策型ブルドーザ)を用いたトレーサガス(SF6)拡散実験を行い、拡散予測式に必要な拡散幅および有効煙源高さの推計を行った。


河川用ゲート設備への新技術の適用に関する調査

研究期間:平10〜平12
担当者 :村松敏光、持丸修一、田中和嗣

 本研究は、河川用ゲート設備の維持管理の合理化と、機器及び設備全体の信頼性向上を目的として、新しい防食方法を適用するための防食設計手法の調査研究を行うものである。近年、河川用ゲート設備の腐食による機能障害を防止するために、ステンレス鋼等の耐食性材料が適用されている。しかし、複数の腐食要因が複雑に作用する河川環境下では、予想外の腐食が発生する場合がある。そのため、試験片による防食性能試験が行われているが、複雑な形状と種々の加工を有する河川用ゲート設備の防食性能の評価を得る方法としては限界がある。防食設計としては、既知の知見に加えて、適切な実証試験により必要な情報を収集して検討する方法が有効である。
 本研究は、河川用ゲート設備の設計に関する新技術としての防食設計手法確立を目的とした検討を実施するものである。
 10年度においては、実証試験の方法を確立するために、ケーススタディによる暴露試験の方法を検討するとともに、河川用ゲート設備の形状・加工方法等を考慮した暴露試験体を検討作成した。


ICカードによる施工情報システムの運用・導入に関する調査

研究期間:平7〜平10
担当者 :村松敏光、服部達也、滝野 勲

 官民連帯共同研究「ICカードによる施工情報システムの開発」(4〜6年度)により、建設事業へのICカードの導入は、生産性向上、建設現場の福利厚生向上、コスト縮減等の可能性が高いことが得られた。本研究は、現場での試験導入を通じて、現場や運営組織における利用効果や課題を調査し、普及展開方針を立案するものである。
 10年度は、導入現場における適用性評価、将来に向けた運営組織の検討とその有効性の検討を行った。これにより、建設ICカードの普及には、建設ICカードへの付加価値と恒常的な運営組織が望まれており、勤労者退職金共済機構の共済手帳としての利用の具体方策を立案し、これにより、建設業就労者、建設行政、建設業者、関連法人に対して有効であることが得られた。


発破による低周波音に関する調査

研究期間:平10
担当者 :村松敏光、新田恭士

 本調査は、予測手法が難しいとされている低周波音の発生と伝搬特性について、トンネル工事発破工事を対象に施工時の実態について知見を蓄積するとともに、将来の予測手法整備にむけての考察を行うことを目的として実施した。今回は実測データを基に、トンネル発破に伴う低周波音の距離減衰特性、指向性、パワーレベルについて考察を行い予測式による予測の可能性を確認した。