平成23年度 第6回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第三部会)

議 事 録


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平成23年度第6回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第三部会)

平成23年12月9日

【事務局】 只今から平成23年度第6回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第三部会)を開会いたします。
 本日の第三部会におきましては、平成22年度に研究が完了したプロジェクト研究及び事項立て課題2件に関する事後評価をお願いするものでございます。
 それでは、国総研所長からご挨拶申し上げます。

【所 長】 一言ご挨拶申し上げます。
 本日は、師走の本当に多忙な時、また冷たい雨の降る中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 今日は、先ほど話がありましたように、昨年度で終わりました研究課題2件の事後評価をいただくということになっております。今年度は3月の大震災以来ほとんどそれで埋め尽くされているような感があります。柴山先生を初め、委員の先生方も大分関連の仕事でご活躍のところを拝見させていただいておりますが、我々の職員も、直後から現地調査、その後の本省関係の委員会対応等でかなり頑張ってきているのではないかと考えております。予算も、補正予算が1次、2次、3次、今度は4次も検討するそうですが、あるいは当初保留された予算が突然解除になったり、そういった予算執行の方でも苦労しているようですが、何とか年が越せそうなところまで来ているというのが現状でございます。来年度予算はまだ全然スケジュールが分からないと聞いております。国会が今日終わりそうだということだけは聞いております。そんな中ですが、それぞれ担当は一生懸命やっておりますので、ご評価いただければと思います。
 1つだけお知らせがございまして、地震の後、今年の連休の直前に国総研としての地震の報告会を土研、建研と一緒にやらせていただきました。我々の特徴としては広い分野の話が一度に聞けるということで、好評をいただいたのですが、次はいつだとずっと言われておりまして、なかなか歩調が合わずにできなかったのですが、何とか場所のめどがつきそうだということと、内部でも1年たったら何か話をしたいという機運が出てきましたので、今の予定では、3月13日に東京で、それから、地方でもやってほしいという話がありましたので、21日に大阪でそれぞれ、今回は土研と一緒に、そして建築研究所は建築研究所の講演会が直近にありまして、それと併せて聞いていただくということで予定しております。もし時間がございましたら、見ていただければと思います。
 ということで、今日は2件の評価を宜しくお願い申し上げます。

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【事務局】 それでは、主査にご挨拶いただきたいと思います。宜しくお願いいたします。

【主 査】 本日は研究の事後評価ということで、これは、かつての日本社会は専門家集団に任せてあると。安心して専門家集団に任せてあるという社会から、専門家集団から積極的にやっている内容を説明して社会の信頼をかち得ていくという社会に変わったということで、本日の評価は、専門家集団として社会に対して積極的にその内容を説明していくというプロセスの中で非常に重要な役割を果たす評価ということだと思いますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

【主 査】 それでは議事に入りたいと思いますので、「本日の評価方法等について」の説明を事務局からお願いいたします。

【事務局】 それでは、個別研究課題の評価方法について説明いたします。資料2をご覧ください。
 評価の対象ですが、平成22年度に終了した事項立て研究課題、プロジェクト研究課題及び24年度から開始予定の新規プロジェクト研究がありますが、第三部会では、先ほど申し上げたとおり、2課題の事後評価ということで、新規のプロジェクト研究はございません。
 最後の紙に別添3というのがございまして、分科会の評価スケジュールを示しております。今回ご評価いただくのは、上側の事項立て研究課題、これは、平成22年度に終了した課題につきまして、翌年度、すなわち今年度の12月に事後評価をいただきます。それと同様に、プロジェクト研究課題につきましても、前年度に終了した研究を、翌年度、今年度の12月に事後評価いただくということになってございます。
 資料の2ページ目に戻っていただきまして、本日の評価対象課題に分科会の委員が参画されている場合は評価を行わないという特段の対応がございますが、本日ご出席の委員の皆様方には該当される方がいらっしゃいませんので、本日はご出席の全委員に評価を行っていただくことになります。
 1枚目に戻っていただきまして、評価の視点と項目ということで、必要性、効率性、有効性の観点から、目標設定の妥当性、活用の妥当性等につきまして評価いただくということになります。
 評価の進め方ですが、個別研究課題につきまして担当の研究者が説明した後に評価を行っていただきます。本部会におきましては、他の部会及び欠席の委員等から事前に伺っている意見はございませんので、主査及び各委員からご意見をいただき、評価シートにご記入いただきます。そして、本日の審議内容及び評価シートの集計結果に基づき、主査に評価を行っていただきます。
 各課題の時間配分につきましては、別添2、3枚目の横の紙になりますが、説明が15分、質疑応答、これはコメントシートの記入も含めて20分、それから評価が、主査による総括も含めて5分の計40分となっております。議事の進行管理のためにベルで時間の経過をお知らせいたします。説明、質疑とも終了1分前に1回、終了時刻に2回、1分超過時に3回ベルを鳴らしますので、議事進行にご協力をお願いいたします。
 1枚目の裏側になりますが、評価結果の取りまとめということで、本日の評価結果は、審議内容、評価シートに基づき、主査の責任において取りまとめた後、研究評価委員会への報告を経て国総研の研究評価委員会の評価結果といたします。
 評価結果の公表ですが、本日の評価結果は議事録とともに公表いたします。また、議事録における発言者につきましては、「主査」、「委員」、「事務局」等として表記いたします。
 次に、一番最後にあります参考資料の中のクリップ留めの一番後ろ、4番をご覧ください。青と黄色のカラーになっている縦の表でございますが、こちらが国総研が重点的に推進しております研究課題の一覧となっております。昨年度終了、現在実施中のプロジェクト研究と事項立て研究等を書いておりまして、本日ご評価いただくのは黄色の2課題となってございます。
 こちらからは以上でございます。

【主 査】 どうもありがとうございます。
 今日の評価の方法について事務局から説明をいただいたのですが、この件で委員の皆様からご質問はありますでしょうか。ご説明をいただいて、討議をした後に、お手元にある評価シートを書いていただいて、それをもとに評価を進めるという手順になると思いますが、それでよろしいでしょうか。

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(2)平成22年度終了研究課題の事後評価

【主 査】 それでは、議事の2番、「平成22年度終了研究課題の事後評価」に入ります。
 まずは「沿岸域における包括的環境計画・管理システムに関する研究」について、説明をお願いいたします。

【国総研】 沿岸海洋研究部長でございます。概要についてご説明したいと思います。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ まず当プロジェクト研究の背景及び目的でございます。
 ご存じのとおり、かつての劣悪な閉鎖性水域・海域の環境条件については大分改善がなされてきたわけですが、相変わらず青潮、赤潮の発生が見られるということで、かつてのダメージがなかなか払拭できていないという状況でございます。その一方で、世界的に生物多様性の重要性が叫ばれる中、国土交通省などが中心となりまして、閉鎖性水域を中心とする環境改善を図ろうということで、例えば首都圏におきましては、首都圏にふさわしい東京湾創出という大目標を掲げた東京湾再生計画が平成15年に立てられております。同様の計画が大阪湾、伊勢湾、広島湾で立てられて、現在様々な活動がなされているという状況でございます。

・ これらの目標を達成するに当たっては、ここに書いてございますような海域における環境改善対策あるいは陸域負荷削減策の様々な対策を同時並行的に実施することが求められているわけです。ただ、この中には、当然、まだ知識の蓄積が足りないもの、あるいは今後研究開発が必要なものも混ざっておりまして、そのようなものに対応することにより全体として施策の完結を図ることが求められているわけで、そのような中で、国総研といたしましては、対応が遅れている課題として、海域においては、干潟・藻場等の造成実験による知見の蓄積、あるいは順応的管理手法を取り入れた環境の再生創造事業の手法の確立、陸域におきましては、点源対策に比べて遅れておりました面源から発生する汚濁負荷削減に対して総合的に同時に取りかかることが必要であると考えまして、それぞれに対応して@、A、Bという大きなテーマを掲げて、関係研究部が共同で実施しているものでございます。これの完成により、最終的には、既存の研究課題と併せまして、流域海域での総合的な施策の実現が図られることを期待してのプロジェクト研究でございます。

・ 研究実施体制については様々な側面がございましたので、関係した団体だけをとりあえず掲げております。

・ 成果目標と活用方針につきましては、またこの後にご説明いたしますが、それぞれの成果につきまして、ガイドラインあるいは資料、技術基準への反映などを通じてその普及を図るというようなものでございます。
 それでは、個別の内容について、それぞれ概要をご説明したいと思います。

・ まず1つ目のテーマでございます「『包括的計画』『順応的管理』の視点からの手法開発や運用方針の確立」ということで、これは、海洋において環境再生事業を実施する際の様々なガイドラインあるいは指針を作ろうというものでございます。
 その1つとして行ったのが、「計画手法に関するガイドラインの作成」と書いてございますが、実質は、生物とか環境に関する様々な資料を取りまとめて情報発信するということを行っております。特に干潟に関してはその取り組みをメインとして実施いたしました。
 これは大阪湾の阪南港の沖合にございます人工干潟でございますが、この計画に造成段階から加わりまして、干潟の造成の技術の蓄積及びそこに発生する生態系の形成の状況を観察し、そのデータを蓄積したというものでございます。
 また、東京港の芝浦アイランドの南護岸おきまして都市型の干潟を造成いたしまして、同様にそこにおける生態系に関する研究を実施し、その資料を集積しております。

・ これらの結果の詳細につきましては、いずれも国総研資料などで発信しておりますが、その他にも、分かりやすい資料として取りまとめて、これを全国に発信することによって各地での干潟造成のガイドラインとして活用していただいているところでございます。

・ また、このようにいろいろなデータを集める中で、我々だけが集めているデータをそれぞれ活用するのではなく、広く情報の共有を図ろうということで、海域に関する様々な利害関係者が集まって情報共有を図ると同時に、それぞれが顔を合わせることによって包括的な環境目標の設定の際の土壌の育成を図ろうということで、年に1回、東京湾シンポジウムというところで、環境あるいは水産、NPOの方々が集まって、それぞれの取り組みや問題点、考えていることなどを意見交換しております。それと併せまして、各所で行われている環境再生のための事業の具体的な例示をパネル展として実施いたしまして、これらのデータにつきましてはそれぞれ報告書としてまとめて、これも同じように、分かりやすくまとめた資料を全国各地に発出することによって、各所でのそういう取り組みのための参考資料としていただいているという状況です。

・ これらのデータあるいは経験などを蓄積して作り上げましたのが、順応的管理手法を取り入れた具体的な現地におけるマニュアルの整備を行っております。
 順応的管理というのは、ここにフローを書いてございますが、レベル1、2、3とありまして、包括的目標から、例えば東京湾をきれいにしようという目標から、具体的にはどういうことをしなければいけないか、行動計画、事業実施方針を立てて、それを実施するに当たって、モニタリングをしながら現地の環境に合わせた形で順次変更、いわゆるPDCAのような形で変更しながら現地に合わせていこうという現在の環境再生事業の主要な考え方でございますが、こういうものを作っていこうということです。ただ、現地に対応するに当たっては、現地の技術者には当然知識・技術がない、経験がないので、ちゃんと現地に合わせた考え方ができるようなマニュアルにしようということで作り上げております。
 具体的にどういう視点でやるかというと、干潟とか藻場とかサンゴ礁の場の自然再生に着目したもの、あるいは鳥類とか魚類という生物の保全・再生に着目したもので、それぞれにつきまして上のフローに沿った考え方がそれぞれ導かれるというマニュアルになっています。

・ 1つ例をお示ししますと、これは干潟のものの抜粋でございますが、具体的な行動計画・事業実施方針の策定ということで、下にフローの抜粋がございますが、各地区の実情に合わせた状況を、このフローに基づいて、それぞれ事業実施の方針などが導かれる。

・ 事業実施の方針が導かれると、その管理に対してどういう具体的な指標を定める必要があるか。

・ こういうマニュアルが順次、解説ができたマニュアルとして、現在、実践ハンドブックということで全国各地に配布いたしまして、各地で沿岸域における環境創生事業の参考としていただいております。また、その他にいろいろなデータに関するデータブックを出しておりまして、これらも併せて各地での管理型の環境再生事業実施のための補助的な手段として順次活用されているという状況でございます。

・ 2つ目のテーマで、「海岸保全における自然共生・保全評価のあり方の提示」というものでございます。
 これは、海岸事業におきまして、特に砂浜海岸におきましては、従来、海岸事業による生物環境への影響についてはそれほど考えてこなかったのですが、それではいけないということで、方向転換を図ろうということです。そのためには、これまで網羅的に実施していた環境調査などにつきましても、その海岸事業が海岸の環境にどのような影響を与えるかを事前に察知し、注目すべき環境因子を抽出するとともに、同じような注目生物も選定し、その後の環境のモニタリングというか追跡を図りやすくしようということです。これについても、様々な既存の調査をもとに選定手法を検討し、提示したところでございまして、具体的には、これを全国の海岸における調査の指針としていただくべく、河川砂防技術基準の中に取り込むべく、現在作業を現在進めているところでございます。

・ それに続きまして、実際の河川事業に伴う環境影響の予測を行うための手法が必要ということで、具体的には、HEP、ハビタット評価手続というものが適当であるということを検討いたしました。これについては、実際に静穏な閉鎖性海域並びに外洋性の開放性の砂浜での拡張ができるかどうかというのを、上は瀬戸内海、下は仙台の太平洋側でございますが、それぞれについて具体的なモデルを作成し、現地の再現、説明ができることを確認しております。これによって、海岸整備事業による海浜への影響について予測できる手法を提示したところでございます。

・ 3つ目のテーマとして、「市街地における雨水汚濁負荷量の測定および対策に関する研究」ということです。
 下水道につきましては、分流型の整備が進むにつれて汚水処理場から発生する対応については対策が進む一方、雨水のように無処理で海洋あるいは流域に流れるものにつきましては対策が遅れていたという状況でございます。
 そのため、この無処理で流される雨水につきまして果たしてどういう環境インパクトがあるかというモニタリングと、それに対する対策を検討しております。
 これは、左側にA、B、Cと上からなっていますが、それぞれの3排水区、13降雨におきまして、実際の現地での雨水の水質項目を調査したものでございますが、一番下に水質基準と書いてございますが、亜鉛とか鉛などの重金属や微量の有機化学物質につきまして、環境基準を大きく上回る項目が非常に多いという実態が明らかになっております。これによりまして、雨水につきましても流域に対する環境インパクトが無視できないという状況を改めて確認しております。

・ また、それに対する対応といたしまして、雨水ますの下部に浸透層を設けた雨水浸透施設がこの対策に有効ではないかということで、実際に実験を行っております。実験結果がCOD、トータル窒素、リン、SSについて書いてございますが、それぞれ右側半分が浸透ますの結果でございます。流入と流出の棒グラフを比べると、流入に比べて流出が非常に小さくなっているということで、汚濁負荷の大半を捕捉したという結果になってございます。非常に有効な対策であろうという示唆をここで得ております。
 これらのモニタリングの結果、それから雨水浸透ますの負荷軽減効果につきましては、「市街地ノンポイント対策に関する手引き」というものの改訂の中で追加に入れておりまして、現在、既に全国各地での雨水対策に対する1つの指針として活用されているものでございます。

・ 以上、冒頭でもご説明いたしましたが、それぞれの項目につきまして、一応の成果として、現在既に活用されているものが多いということもございますが、目標がほぼ達成されたのではないかと我々としては考えているところでございます。

・ 最後に、もう一回繰り返しになりますが、プロジェクト調査で今回の3テーマについて行いました。それとこれまでの既存技術・手法等を合わせて、少なくとも現在進められている海域環境への総合的な取り組みがこれでかなり進むのではないかと考えているところでございます。
 ただ、今回、進化に向けてということで、今回の検討につきましては国交省側の個別事業に関わる研究開発にとどまるということで、先ほども関係者として述べましたが、ご存じのとおり、一般海域においては、水産あるいは環境部局、あるいは一般の住民の方々などといった様々な利害関係者がいらっしゃいます。そういう方々との、例えば環境目標の設定とか、具体的な活動とか、その中でいろいろな協調が不可欠ということで、その関係なり、そこと併せた全体的な目標設定の考え方をもう少し深めていく必要があるのかなと思っております。ある意味で統合的な沿岸域管理へ向けての取り組みがまだ必要であると思っておりまして、これにつきましては、一部今年から新プロジェクト研究ということで実施しておりますが、「沿岸域の統合的管理による港湾環境の保全・再生に関する研究」ということで今年から進めさせていただいているところでございます。また、これに関わって、先ほどいろいろなデータの集積をしていると言いましたが、データの集積については現在もなお継続中のところも数多くあるということを最後にご紹介いたしまして、非常に早口で恐縮でしたが、概要ということで説明させていただきました。どうもありがとうございます。

【主 査】 どうもありがとうございます。
 それでは、各委員からの意見を伺う前に、本日欠席の委員や他の部会の委員の方々からいただいた意見がもしあれば、ご紹介いただこうと思いますが、いかがでしょうか。

【事務局】 意見等はございませんでした。

【主 査】 それでは、各委員から、この研究に対する質疑及び研究に関する意見をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【委 員】 質問なのですが、閉鎖性海域の環境を維持する、あるいは改善することに対して、内陸の話は述べられているのですが、その外側、外洋の話の影響はどの程度あるのでしょうか。

【国総研】 ないとは言えないと思います。例えば東京湾などは、恐らく入り口のところで影響が出てくると思います。ただ、東京湾などにつきましては、我々はモニタリング調査などもかけております。海流・水流の流れによって湾内の水質がお互い連携しながらどのように変化していくかというのも調べております。その内容を見ると、外洋というよりはむしろ湾内での動きで、ある意味でクローズしてそれぞれ陸域からの影響を受けながら変化しているというのがほとんどというか、それでほとんど説明できるというような状況になってございます。

【委 員】 質問にも書かせていただいたのですが、3.11みたいな事態は特別なこととしても、外側で石油を積んだ船が沈んだとか、海水温が上がったとか、そういう外洋の影響を受けてここで書かれたシナリオが崩れてしまうというような、境界条件に対するセンシティビティということです。

【国総研】 確かにそういうことも考えられないことはないと思いますが、そこはレアケースとして今後の問題とするか。この研究の中ではそういうのは取り上げていないということです。

【主 査】 どうもありがとうございました。
 他にいかがでしょうか。

【委 員】 これも伺ったことなのですが、日本は北から南まで非常に幅が広いのですが、ここでやられている研究は日本全体で汎用性のあるものなのでしょうか。北海道と沖縄で適用し分けられるような形でマニュアルを作っておられるのでしょうか。

【国総研】 マニュアルにつきましては、基本的に全国のデータをもとに作っております。その中で、例えば水温の問題とか日照の問題とか底質とか、そういう問題をある程度は網羅的に検討できるマニュアルにしているつもりでございます。ただ、いかんせん、既存の我々が集めた範囲の科学的知見に基づくマニュアルになっておりますので、当然抜けもないとは言えないと思います。それにつきましては、今回のマニュアルが完璧なものだとは我々も思っておりません。現在既に皆さんに使っていただいているのですが、全国でそれらを活用していただいた事例がいろいろ出てきておりまして、現在、それを追跡して調査しているという状況ですので、その成果によっては、バージョン2とか3とか、そのようにまだ進化形であるというような形で見ていただければと思います。

【主 査】 他にいかがでしょうか。

【委 員】 後半で説明があったテーマAの破砕帯のモデルの図面を見ますと、T型の突起のようなものが出ているのですが、こういう人工施設のモデルへの組み込みというのはされていると解釈してよろしいのでしょうか。

【国総研】 基本的に人工施設による影響をかなり重要視しておりますので、人工施設周りの海浜流がどう変化するかといったことを環境因子として、例えば流速として入れる、あとは底質が変わるというような形でモデルの中に組み込んでおります。

【委 員】 図面が小さいせいもあるのですが、もう少し細かく分かるということですね。

【国総研】 そうです。ここには例として離岸堤の図だけを出しているのですが、海岸事業の中で用いています突堤とか、あとは護岸、陸側の方とか、いろいろな施設ごとに、こういった影響が考えられる、こういう因子に着目しなければいけないといったことを整理しております。

【委 員】 もう一つのテーマBの、情報提供をされて、雨水が受ける商業地や住宅地からの問題、効果があるだろうということなのですが、どのぐらい内陸部まで想定されているのでしょうか。例えば、ここで問題になるような重金属とか微量有機物質というのは相当内陸からも出ているわけで、埼玉県でもかなり問題になっているわけですが、沿岸というのはどの範囲になるのでしょうか。

【国総研】 基本的には今回の調査区域は都市部だと聞いています。下水なり雨水排水施設が整備されている所ということで、基本的には沿岸域に近い所で調査をしております。

【委 員】 何kmぐらいですか。

【国総研】 すみません。それについては後日ご回答したいと思います。

【主 査】 私からお伺いしたいのですが、東京湾シンポジウムで他の分野の専門家や環境NGOの方々とも一緒に議論している、それから統合的沿岸域管理の立場からは他の分野の専門家とどう一緒に検討を進めていくかが大事だというお話、それは非常によく分かったのですが、もう一つは、私はこれは専門も近いことがあって、この中に出てくるお話をいろいろな学会で伺ったような覚えがあって、国総研の人が話していたような気もするのですが、実は専門家集団の議論を国総研がリードしているのだというようなことを主張した方が良いかなと思った部分があったのです。要するに、全く資料がついていないのですが、専門家集団の中で、どんな学会で発表して、どんな論文を発表したかということで、なるほど専門家の議論も国総研がリードしていて、その上で専門家集団を代表して他の専門家集団や一般市民の方との議論を積み重ねているというストーリーが良いと思うのですが、その点はいかがでしょうか。

【国総研】 おっしゃる通りでございまして、その点は抜けておりました。今回のシンポジウムにしろ、これ以外にもいろいろな情報交換会はしておりますが、自慢ではございませんが、当研究所が全体のコーディネートなりをしながら運営しているという状況でございます。また、一般の方々の参加などにつきましても、我々の方で各種のNPOとの伝手等を利用して参加していただいているというようなことで、そういう意味で、今回、我々がやっているということで1つの成果として挙げさせていただいたのですが、そういう形で実施しております。今日はそこら辺は説明が抜けておりましたが、そういう形でやらせていただいています。

【主 査】 他にいかがでしょうか。何かご意見、ご質問。
 いかがでしょうか。他部会からいらっしゃった先生方も何か。

【委 員】 質問ではないのですが、環境モニタリングというところで非常に優れていると私は感じました。
 1つ、お話にもありましたが、データをモニタリングするときの継続性というか、多分これは1年で終わるものではなくて、ずっとやっていくわけですね。そのときのデータのとり方の継続性及び共有の仕方ですね。聞いていて思ったのは、これは事業評価ですが、それをいかに簡略化というか、続けられていくかということ、それが今後この事業が大きく発展するかどうかの鍵になっているのかなと思いました。コメントだけですが。

【国総研】 ありがとうございます。その件について、私から別の話をさせていただきますが、モニタリングは非常に重要なプロセスであります。ただ、モニタリングを官の側だけでやるとすると、金と人の面で非常に難しい。ということで、この中にも市民の方々をいろいろ巻き込んでいくことによって、1つは市民の方々の環境意識の高揚が図られるということと、正直な話、安くできるというようなことを考えています。
 先ほどお話ししなかったのですが、第二フェーズで、この下の方、芝浦アイランドの南護岸で環境調査をしております。その下の2ポツに「市民参加型の共同実験」と書いてございますが、ご存じだと思うのですが、実は芝浦アイランドには超高層マンションがたくさん建っていて、住民が数千人いるといいます。この方々は、自分の目の前ですので、環境に対する意識が非常に高いということで、こういう方々を環境再生事業の中に巻き込むことによって、環境に対する社会的な盛り上がりとか、あるいはその方々にモニタリングをしてもらうというようなやり方ができないかというのをここで実際に実験的にやっているという状況です。具体的には、ここは環境指標の1つでハゼという魚がいるのですが、これを定期的に釣っていただいて、どういうハゼがここで釣れたかを報告していただくというようなことをやっていまして、どういうことまでだったら市民の方々ができるのか、それ以上だったら専門家が入らなければいけないとか、そこら辺の指針も今後考えていきたいということで、ここで実験的にやっているということで、これは現在も継続中という状況です。

【主 査】 他にいかがでしょうか。

【委 員】 内容については、目標設定に対し十分達成できていると思いますし、何よりも関係する研究機関等とうまく連携されて、良い成果を出されていると感じております。
 1点だけお伺いしたいことは、このプロジェクト自身とは必ずしも直接関係ないかもしれませんが、先ほどご質問で若干ありましたが、今後いろいろな災害が予測されますので、大きなインパクトに対しても順応的管理という仕組みをどのように入れていくかという点が今後の大きな課題になるのではないかと思っておりますが、今まで進めてこられたのは平時に対する順応的管理、少しずつ変わっていくものに対する順応的管理としていろいろ提示しておられますが、これからは想定外と言われるようなインパクトに対する管理をどのようにするかという視点も是非入れていただきたい。そういう研究も進めていただければと思っております。既にそういう計画があるのかもしれませんが、その辺でコメントがあれば、宜しくお願いします。

【国総研】 ありがとうございます。参考にさせていただいて、今後の対応の柱にもしていきたいと思います。
 今回の震災につきましては環境についての議論は余り表に出てきていないのですが、今我々が相談を受けているのが、今回の津波によって宮古湾で藻場が大量に喪失して困っているというようなことです。そのようなご相談がぼちぼち出てきていますので、それに対応しながら、データの蓄積とか、事前の準備みたいなものも要るのかもしれませんが、そういうインパクトに対する対応も確かに必要だという認識でございますので、今後それを参考にさせていただいて、研究の1つとして進めていきたいと思います。どうもありがとうございます。

【主 査】 他にいかがでしょうか。

【委 員】 雨水浸透施設による汚濁負荷削減機能の評価について、除去したものを浸透させていくという話ですが、それを回収する手立てはどういうシナリオを書いておられるのですか。

【国総研】 下水道研究部長でございますが、浸透施設はもともと、雨で浸水がひどい地域とか、そういうところで使うケースが多かったのですが、こういう形で汚濁の削減にもいろいろ効果があるということが分かってきております。ここでもマニュアルの件が書いてありますが、一定期間経ったところでそこに土砂とかが溜まってきますので、それを定期的に、例えば1年に1回、あるいは半年に1回とかされて、廃棄物として処分するというような形が標準になっております。

【委 員】 こういう施設というのはあるところで集中的にやるものなのですか。先ほどのご質問にもありましたが、雨は沿岸域だけではなくて上流域でも降っているわけですから、なるべく雨が降った箇所でとらえておく方が良いわけですね。そうすると、集中的にやるよりも広域拡散的にやって、ただしそれぞれに対して回収の手間が結構かかるようだとコストパフォーマンスがどうかというような議論になってくるのかなという気がするのですが、いかがでしょうか。

【国総研】 2ページ目の実現に向けての施策の推進のところで、陸域からの汚濁負荷削減の関係で幾つかの項目が挙がっておりますが、下水道はかなり普及が進んできて、汚水として流されるものについては大分対策がとられてきました。ただ、市街地に降った雨も、都市ではいろいろな活動があって、いろいろなところに堆積しているものがどう流れてきて、それがどう影響するのかということについては余り状況が分かっていなかったということで、特に今回は都市部で下水道とかもありますので、ある種のコントロールの可能性もあるということで、そこで実際の汚れがどうなっているのかということを調べて、対策をするときに新たな大きな処理をするということはかなり難しいですが、浸透ますがあるのであれば、これを新タイプに代えていくということでこれだけの効果がありそうだということは分かったということです。
 実際どういうところで行われているかということに関しては、比較的大規模な開発があるときには、例えば市役所でいろいろな計画を受けているときに、こういう形でやりませんかというようなことをアドバイスしたり。場所によっては、そういうことをする場合には既存の個人の住宅とか建物も含めて若干の補助はしますよというような制度を持っていらっしゃる自治体もあります。

【主 査】 特にこれ以上ご意見がないようでしたら、この辺で評価シートの記入をお願いいたします。

(事後評価シート回収)

【主 査】 これが各委員の評価の分布になります。
 この分布を見ますと、方向としては、評価の結果について、研究の実施方法と体制の妥当性については適切であった、目標の達成度については十分に達成できたということで評価のまとめをさせていただきたいと思います。
 個別の意見については、これは非常に強力なツールとなり得る可能性が高いので、更にしっかりディテールを詰めてツールとして完成させてくださいというようなご意見もいただいておりますので、その辺を参考にさせていただいて、評価としては、あそこの分布にありますように、実施体制等は適切であった、達成度については十分に目標を達成できたということで評価書を作らせていただきたいと思います。
 それでよろしいでしょうか。―どうもありがとうございます。

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2.港湾の広域連携化による海上物流への影響把握と効果拡大方策に関する研究

【主 査】 それでは、次の「港湾の広域連携化による海上物流への影響把握と効果拡大方策に関する研究」ということで、これに対しても説明をお願いいたします。

【国総研】 「港湾の広域連携化による海上物流への影響把握と効果拡大方策に関する研究」につきましてご説明いたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ 研究機関は3年間、研究費は約1,400万円となってございます。

・ まず背景でございますが、港湾の広域連携につきまして、日本の主要湾域は、複数の港湾管理者が分割管理しているという状況にございます。
 これに対して、国際競争力強化策として、経営の効率化のための広域連携が進展している状況にございます。大阪湾につきましては、4港湾管理者において大阪湾諸港の連携が2006年に開始されています。東京湾につきましては、3港湾管理者にいて2008年から京浜3港の連携が進んでおります。更に、2010年からは国際コンテナ戦略港施策が推進され、京浜港、阪神港が選定されているところでございますが、埠頭運営会社がコンテナターミナルを一元管理・運営する予定になっておりまして、更に広域連携化が進んでいる状況にございます。
 あと、本研究は2008年から2010年という研究期間でございますが、その間に世界不況が発生いたしまして、船社の寄港に対する考え方が大きく変わったということが、本研究に対して少し影響を与えているという状況にございます。

・ 続きまして、成果の目標でございますが、大きく分けて2つございます。1つ目が「海上物流への影響把握」、2つ目が「効果拡大方策の検討」。それぞれにつきましては後ほど詳しくご説明いたします。
 活用方針につきましては、大阪湾・東京湾の広域連携の促進及び他の海域への施策の展開となってございます。
 実施体制でございますが、港湾計画研究室が中心になりまして、国交省の港湾局及び地方整備局と連携・意見交換、有識者・学識経験者と意見交換、アンケートにより陸運事業者・船舶代理店等の業者の要望を把握しております。

・ それでは、1つ目の成果目標であります「海上物流への影響把握」でございます。
 こちらは、広域連携施策の中でアジア域内のコンテナ船を連続寄港をさせようという施策を対象としております。
 こちらは3つの会社のアジア域内の航路図をお示ししておりますが、いずれの航路におきましても、日本で複数寄港して、そこからアジアに行く、あるいはアジアから帰ってくる、このような形態になっております。
 これに対して、2007年4月に大阪湾内の連続寄港船の入港料を半減するという施策、12月には一開港化によってとん税が1港分に減免される、2009年4月には京浜港内の複数港への連続寄港船の入港料を1港分に減免する、こういう施策がとられています。これらはいずれも、船会社に対しては、入出港関係費用の削減により連続寄港を促すことを目的としてございます。荷主に対しては、最寄り港湾の利用による陸送費の削減、更には、もって生産・販売増につなげる、そういう意図があります。
 これにつきまして、本研究では、連続寄港に関する施策の効果を把握するということでございます。具体的に効果があったことが確認できれば、他の海域との広域連携を推進することができるだろうと考えております。

・ 実際の結果でございますが、まず大阪湾についての連続寄港隻数割合の変化です。大阪湾につきましては入港料減免と一開港化が時期を分けて実施されておりますので、施策がない状態、入港料減免のみの状態、一開港化も併せて行われている状態の3つに分けて連続寄港隻数割合の変化を追っております。
 こちらがその結果でございます。見方でございますが、赤い棒グラフが入港料減免前後の連続寄港割合の変化、青い棒グラフが一開港化前後での連続寄港割合の変化、黒丸の折れ線グラフが入港料減免と一開港化を両方合わせた場合の連続寄港割合の変化でございます。例えば入港料減免につきましては、大阪湾は全航路と東アジアはほとんど変化がなく、その時期に施策が行われていない東京湾では少し上昇しているという状況もありまして、入港料減免だけで効果があったとはなかなか言い難いところがございますが、入港料減免と一開港化を両方合わせますと、大阪湾では、全航路、東アジア航路で3%ポイント程度、近海航路では7%ポイント以上の高い伸び率になっておりまして、同時期の東京湾、伊勢湾よりは連続寄港割合の増加量は大きいということから、大阪湾については入港料減免と一開港化によって連続寄港が大きく増加したと見ることが出来ます。

・ 東京湾につきましては、京浜港の入港料減免が実施されていますので、この前後1年間の連続寄港割合の変化を追ってございます。
 その結果でございますが、この時期に世界不況が発生しておりまして、船会社はなるべく寄港地を絞りたいという行動に出ております。大阪湾、伊勢湾につきましてはその影響を受けておりまして、連続寄港割合は減少しておりますが、東京湾につきましては、全航路、近海航路はプラス、東アジア航路はわずかなマイナスということで、世界不況の中でも東京湾では連続寄港割合が維持されていたということでございます。

・ 入出港費用の削減効果についても把握しております。
 こちらは阪神港に連続寄港したコンテナ船について、どのぐらいの費用がかかるのかをグラフにしたものでございますが、全航路で100万円弱、近海航路で40万円程度かかっていました。そのうち施策の対象となっておりますのが、赤で囲んだ部分の入港料、とん税及び特別とん税でございまして、こちらが概ね半減されます。具体的には、1回当たり約3万〜9万円の減少になります。これが入港費用でどれぐらいになるのかという割合で見たものでございますが、航路によらず、大体9%程度の減少になっているということが分かりました。

・ 更に、陸送費用の削減についても確認しております。
 ポンチ絵でお示ししておりますが、もともと単独寄港船に対して非最寄り港を利用していたという状況から、その船が連続寄港することになると最寄り港が利用できるということで、ルートを変更した場合の陸送費用の削減をざっと計算してございますが、大阪府・兵庫県発着貨物について、概ね半減となっています。連続寄港船の割合の増加から考えると、こういった貨物は2〜3%程度は増加したのではないかと推計しております。
 以上が研究成果@でございます。

・ もう一つが成果目標Aの、「効果拡大方策の検討」でございます。
 具体的には、大阪湾では2006年3月に国際物流戦略チームの提言が、東京湾では2010年2月の京浜港共同ビジョンが発表されておりますが、いずれも港湾ごとの情報発信から、共通ポータルを開設して運営しようという流れになってございます。この情報発信の一元化に加えて更にプラスアルファの情報が提供できれば、連携の推進が期待できるというものでございます。
 ここで、本研究で注目いたしましたのが船舶入出港情報でございまして、これはある単独港湾の例でございますが、例えば着岸・離岸実績については、港湾管理者の事務の方々が更新するのだと思いますが、更新しなければ不明、あるいは土日は更新されなかったりする可能性もある、あるいはバースに着岸するまで動静が分からない、こういう状況にございます。
 この状況に対して、本研究では、湾域全体を対象とする情報システムを開発するというものでございます。これは連続寄港船あるいは港湾内への入港船のリアルタイム把握によって連携港湾のコンテナターミナルの一体運営に少しでも近づけたい、更には連携港湾の航路の計画等にも使えるというものでございます。

・ ここで既存のNILIM−AISネットワークについてご説明いたします。
 AISとは、9.11米国テロを契機に世界中の船舶へ設置が義務づけられた装置、船舶自動識別装置です。国総研、地方整備局では、8地上局による受信ネットワークを既に構築しております。
 こちらの図が、AISのご説明でございますが、各船が船舶動静情報あるいは動的情報等を一定間隔で発信し続けるということになっていまして、他の船はそのデータを受け取れば、どの船がどこに居て、どういう方向に向かっているというのがすべて分かる。レーダーですと反射してきたものを見なければいけませんし、相手の船名までは分からないということですので、AISは衝突防止に役に立つものでございます。この海域に地上局を設置すると、周辺海域の船舶動静が把握可能になります。そこで、国総研及び地方整備局では、現在この図のAIS受信局を設置いたしまして、国総研のデータセンターにデータを送っているという状況にございます。

・ もう一つ、情報システムへの要望をアンケートにより把握しております。関東地方の物流事業者へのアンケートでございますが、設問として、港湾物流に関わるリアルタイム情報の中で入手を希望する情報は何ですかということで、アからオまで、具体的な記載をしております。
 これに対する回答でございますが、イの船舶入出港・離着岸情報につきまして、陸運業者を除きますと、フォワーダー・海貨事業者以下は6割以上の利用希望率で、ターミナル業者以下はすべて1位ということで、総じて最も高い提供要望のある項目でございました。
 先ほど、実際の単独港湾のシステムの例をお示しいたしましたが、一部港湾ターミナルで既にこういう情報の提供がなされているのですが、電話等での問い合わせ件数が減っていないという現状がございました。

・ このような状況に対応するために、国交省港湾局において、コンテナ物流情報サービス、Colinsというモデル事業が3カ年で現在実施されています。このモデル事業の目的は、コンテナ物流情報を一元的に提供することによって関係者の情報共有化を進めるということです。
 これに対して、本研究では、ColinsにAISリアルタイムデータを配信するシステムを構築いたしました。
 こちらがColinsのトップページですが、下の方にコンテンツメニューがありまして、混雑状況カメラとかコンテナヤードの搬出可否情報、こういったものが見えます。この中に船舶動静情報というのがございまして、こちらに対してAISのリアルタイム情報を国総研のデータセンターから送り届けるシステムを本研究の中で構築したというものでございます。

・ 実際にどのように活用できるかということでございますが、まず、AISの情報ですのでリアルタイムにデータが更新されるということ。更には、船舶が位置する港湾だけではなく、湾央とか湾口の通過も確認できる状況にしてあるということでございます。
 こちらがその船舶動静情報のページでございます。横浜港のデータになってございまして、こちらにAISの情報がございますが、例えば隣の東京港に入っていますとか、東京湾の湾央に来ていますとか、そういう情報がリアルタイムで更新されるということで、これまでの船舶動静情報に比べて格段に利用価値は上がっていると考えてございます。

・ 更には、AISのデータを活用してバース・航路の利用率把握システムを作っております。こちらは利用状況を自動的に算定するシステムになってございます。
 こちらは航路の利用率把握システムで、浦賀水道の例で、東京、横浜、川崎、いずれの港に入る場合にもこの航路を用いますが、この航路の通航状況、しかもある曜日のある特定の時間とか、タンカー等々他の船種の通航状況についてもすべて把握できるシステムになってございます。

・ もう一つ、バースの利用率把握システムも作っておりまして、これはバースウィンドウと言われるものでございますが、横軸に日時、縦軸にバースの延長をとっておりまして、この色がついている部分に船がついているということで、こういうものが一目で見れるような形にしておりまして、港湾計画等の検討に役に立つようなシステムが構築できてございます。

・ 成果目標の達成度でございますが、1つ目の「海上物流への影響把握」につきましては、コンテナ船の連続寄港への連携施策の効果を確認しています。また、連続寄港船の入出港費用の削減率や最寄り港湾利用の陸送費用の削減効果を把握しております。これらにより、設定した目標に対しては概ね目標を達成できたと考えてございます。
 2つ目の「効果拡大方策の検討」でございますが、物流事業者の船舶動静情報への高い要望を確認した上で、リアルタイム動静情報の提供システムを構築しております。更に、港湾施設の利用率算定システムも開発しております。こちらにつきましては、当初の目標はシステムを提案するところまでだったのですが、実際には、Colinsというモデル事業が同時並行的に行われたという幸運もあり、実用モデルまで行きましたので、目標に対しては十分に達成できたと考えてございます。

・ 最後に今後の展開でございますが、1つ目の「海上物流への影響把握」につきましては、世界不況の影響が出ているということもございまして、今後も継続して施策の効果を把握していく必要があると考えてございます。
 2つ目の「効果拡大方策の検討」でございますが、Colinsは今年度いっぱいということになってございまして、今後システムがどのように発展するかは分かりませんが、それに対してもできる限り対応していきたいと考えてございます。
 あと、今回用いましたのは地上局で受信されたAISデータでございますが、今は衛星によってAISのデータを把握することが技術的に可能になってきておりまして、そのようなサービスも少しずつできているところです。そこで、我々といたしましては、このAISデータを用いて船舶トラッキングの可能性の検討を開始したいと考えてございます。
 あと、港湾施設の利用率把握システムにつきましては、研究成果を取りまとめて、港湾計画等での活用が可能なように今後していきたいと考えております。
 以上でございます。

【主 査】 どうもありがとうございます。
 この件に関しても、欠席委員や他の部会からは意見は特になかったということですね。

【事務局】 はい、ございませんでした。

【主 査】 それでは、この件につきまして委員の皆様からご意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

【委 員】 十分分かっているわけではないのですが、1点教えていただきたいのです。
 国際競争力の向上という目的が一番大きいところだと思うのですが、そうした場合に、例えば後半の情報システムの開発の部分とか、非常に利便性が上がっている技術だと思うのですが、国際的に見てこれはどの程度優位性を発揮できるのかという国際比較とか、他の港湾との比較みたいなのも分析を入れていただくと、今後の開発目標みたいなのもはっきりしてくるのではないかと思うのですが、その辺のご見解があれば教えてください。

【国総研】 ご指摘ありがとうございます。まさに国際競争力強化の一助とするための研究でございまして、利便性が上がっているというところで、特に日本のコンテナに関する陸上輸送は非常に厳しい状況です。昨今でも東京港のコンテナターミナルの混雑状況は新聞報道でも出ているところでございますが、こういうところの改善をしていくという意味で、利便性の向上が陸上輸送の円滑さを導き、少しでも国際競争力の強化に寄与できているのかなと考えておりますが、他の港湾とどの程度というところについては比較ができていないところもございまして、その辺については今後考えていきたいと思います。

【主 査】 他にいかがでしょうか。

【委 員】 2つほど教えていただきたいです。
 最初の連続寄港を促すということなのですが、単純に考えると、船会社から見たら、ワンストップで短時間で効率的に荷物を回収したり運んだりした方が良いわけですよ。それを、わざわざ連続寄港を促して、違う意味からいくと効率の悪い物流を実現するようなイメージもあるのですが、それはどうしてなのかというのが1つです。
 それから、後半のColinsと連携してというのは、大変おもしろいデータがとれて、有効活用できるのだろうと思ったのですが、もう少しイメージがわかなくて、このバースウィンドウも、こういったデータを集めるのは大変結構なのですが、それがその次の港湾の計画にどういう使われ方をするのかという、そこのつなぎが私もイメージがつかなくて、何かアイデアがあれば教えていただきたいと思います。お願いします。

【国総研】 ご指摘ありがとうございます。
 ワンストップの方につきましては、ご指摘のような話も施策当初から聞かれていたのですが、経緯をご説明いたしますと、大阪湾の広域連携につきまして、大阪湾の国際物流戦略チームの中で、何としても国際競争力を挙げて地元の経済を発展させたいという意図のもとに進められております。その中で、船会社に対しては、連続寄港することによって、おっしゃるとおり、ワンストップがツーストップになってしまって、少し費用が増える。その費用が増える分を少しでも低減させると、陸送費用の削減によって地元経済で価格低下による生産増あるいは販売増につなげられないかという意図でこの施策が進められていたところがございますので、船会社にとって少し不便なところを低減するということと、荷主にとっては陸送費用を削減するというところで、もう少しバランスの良いところに持っていけないかというのがこの施策の意図だと考えております。
 バースウィンドウでございますが、こちらは、こういう形で一目瞭然でどのぐらい使われているというのが分かりますので、次に新たなバースが必要かどうかという話をするときに、こういう状況でもう使えない状況にあるのか、あるいは、例えば他の港湾と比較したときにまだ少し余裕があるのかという定量的な指標の1つにできないかと考えてございます。すなわち、利用率が一目で分かるようにして、次の整備が必要かどうかの検討を可能にするというのがこのシステムの使い方と考えてございます。

【委 員】 2つほど質問させていただきたいことがございます。
 1つは、今のご質問に関連すると思うのですが、スライドの7番目で、シッピングをする場合にルート変更を最寄りにすると、それを途中で船が拾ってくれるということだと思うのですが、こういうことは陸上側の交通網の整備状況も関係すると思うので、その辺をどう考慮されたかというところを伺いたいということです。
 それから、それも関係しているかどうか分からないのですが、スライドの4枚目で、大阪湾と東京湾のことをおっしゃったのですが、伊勢湾は入港料減免をやった場合にマイナスになっているように見えるのですが、これは何が原因だったのでしょうか。

【国総研】 ご指摘ありがとうございます。
 順序が逆になりますが、まず伊勢湾のお話をさせていただきたいと思います。
 これは施策が行われたのは大阪湾と東京湾だけでございまして、伊勢湾は全く施策が行われていない状況でどうだったかという比較のために数字をとったものですので、施策としては行われていません。

【委 員】 大阪湾が下げられたのが効いてしまったということですか。

【国総研】 伊勢湾の状況については、施策が行われていないという以上のところについては要因分析には到っていないというのが現状でございます。
 陸上交通網につきましては、ご指摘の部分は事前審査のときにもお話があったように聞いているのですが、たまたまこの時期にうまく道路が整備できたということがあるわけでもないので、具体的には同じルートの中でやっております。ただし、この計算方法につきましては、もしこの道路が整備できたらということに関して更に計算するということが可能になってございますので、新たな道路の整備に対しては、対応可能と考えております。

【委 員】 来年2月に東京ゲートブリッジが開通した場合、青海のコンテナヤードにかなりトラックが路上駐車しているという大問題がどのぐらい解消するかというのは非常に興味があるところだと思うので、何か結果が出るのであれば、是非教えていただきたいと思います。

【国総研】 ご指摘ありがとうございます。

【主 査】 他にございますでしょうか。
 4ページと5ページをもう少し教えていただきたいのですが、これは余りインフォーマティブではないというか、きちっとした情報を伝える図になっていないように見えてしまうのですが。特に5ページを見ると、大阪湾も連続寄港の割合が減っているように出ていますね。もしその原因が世界不況で全体の環境が変わったということであれば、周囲はどのぐらい変わっていて、この部分はそれよりはましだとか、周囲が変わったのと同じぐらい落ち込んでいて余り効果はなかったとか、何かそういう説明をつけておかないと、この図があるとかえって混乱してしまうような気もしたのですが、もう少し説明していただけますか。

【国総研】 説明が到らず、申し訳ございません。
 4ページ、5ページにつきましては、4ページは大阪湾の施策があった時期について、施策がなかった東京湾、伊勢湾と比較してどうかという議論をしてございます。5ページについては、逆に東京湾の施策があった前後について、全く施策がなかった伊勢湾と、一部その前に施策があった大阪湾と比較しているという状況でございます。そういう意味では、特に伊勢湾は全くこういう施策が行われておりませんので、対象として比較するためにやっています。ご指摘がありました大阪湾につきましては、4ページでは増えているがその後5ページでは減っているではないかという、その減り具合ということでございますが、ここは要因分析に到っていないのですが、寸前に寄港地を増やしたということで、もしかしたら、また寄港地を減らすという検討をしたときに、先に減らしやすいところから減らしたというようなところもあるのかとも推測しておりますが、確たる要因分析にまでは到っていないという状況でございます。

【主 査】 今ご説明いただいた4ページと5ページは、この施策が大きな効果を及ぼしたという非常に強い主張をしようと思っているページだというのはよく分かりました。ただ、最初は分からなかったので。どうもありがとうございます。

【国総研】 補足でございますが、学会で発表したときにも、こういう状況があると、もう少し長期的に見ていかなければいけないというご指摘をいただきまして、そういう意味で、今後ももう少し見ていきたいというところを最後につけ加えているところでございます。

【主 査】 他に何か特にご意見があればお伺いいたしますが、よろしいでしょうか。
 それでは、この辺で評価シートの記入をお願いいたします。

(事後評価シート回収)

【主 査】 これを見ていただくと、分布は、研究の実施方法と体制の妥当性については、適切であったが3、概ね適切であったが4、目標の達成度については、十分に達成できたが4、概ね目標を達成できたが3ということで、この分布を見て、研究の実施方法と体制の妥当性については、概ね適切であったが多数ということで、これを採用させていただいて、目標の達成度については、十分に目標を達成できたというのが多数でございますので、これも多数の方を採用させていただくという方向で評価を取りまとめさせていただいて、更にいろいろコメントをいただいております。例えば、国際競争力向上に向けた調査としては港湾の実情をもう少しきちんと比較してほしいとか、システムとしてはツールとして使える非常に立派なシステムができたので、これをどうやって評価に使っていこうかとか、効果をもう少しはっきりと示してほしいとか、主にはそういうご指摘をいただいておりますので、そういうご指摘をまとめさせていただいて、今申し上げたように、研究の実施方法については概ね適切であった、目標の達成度については十分に達成できたという方向で取りまとめさせていただこうと思いますが、それでよろしいでしょうか。―どうもありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。
 それでは、第三部会で担当する研究課題の評価はこれで終わりということになりますので、今後、本日ご評価いただいた課題の評価書の作成という作業がございますが、課題ごとの評価の取りまとめを今行いましたので、それをベースに、本日の議事録を作成しながら作成するということで、後の作業は私にご一任いただくということでよろしいでしょうか。
 それでは、以上で本日の議事はすべて終了いたしましたので、全体を通じて、こういう評価の方法、それから今後どう評価していくかというようなことについてもしご意見がございましたら、今お伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。―よろしいですか。
 では、特にご意見はございませんようですので、本日は委員の皆様にはご協力をいただきまして、ありがとうございました。議事は終わりましたので、この先は事務局の方でお願いいたします。

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【事務局】 本日の審議内容につきましては議事録として取りまとめて、委員の皆様にご確認していただき、その上で主査に確定していただくことになります。評価書については、先ほど主査に一任となりましたので、本委員会の報告を経て最終決定いたします。報告書につきましては、議事録及び評価書が決定された後、これらを取りまとめた分科会報告書を国総研資料として公表いたします。

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【事務局】 それでは、最後に副所長からご挨拶申し上げます。
【副所長】 本日は、12月、師走に入りまして大変ご多忙の中、しかも雪もちらつくような非常に寒い日にこちらまでお運びいただきまして、また長時間熱心にいろいろとご指導いただきまして、誠にありがとうございます。
 冒頭、柴山先生から、本日の部会は私ども専門家集団がきちんと外に説明する貴重な機会だというご指摘をいただきました。そういった観点で今日の説明を改めて見ますと、いろいろと問題もあって、またご指摘もいただきましたので、そういったところは直ちに改善していきたいと思います。
 それから、本日ご説明させていただきました研究課題でございますが、いずれも22年度までの研究の事後評価ということになっておりますが、3月11日の震災の後でこれを見ますと、やり残していることがたくさんあるという感じがいたします。
 特に前半の「沿岸域における包括的環境計画・管理システムに関する研究」は、今の討議の中でもご指摘がありましたが、劇的に環境が変わることについて、非常に悪いことではありますが、私どもが想定していなかったのかもしれない。こういったところもきちんと取り組んでいくべきではないかと思っております。
 それから、「港湾の広域連携化による海上物流への影響把握と効果拡大方策に関する研究」ですが、実はこれは22年度の前にリーマンショック経済危機がありまして、その影響を港湾の運営ももろに受けているわけでありますが、そういったことでは想定外の話が既に入っていたのですが、震災ということでもう一回これを見直してみますと、実は震災によって東北・関東の太平洋側の港湾はある一定の期間、機能をほとんど喪失してしまっていて、むしろそういった意味で連携がすごく重要だったということで、こういった分析もこれからきちんとやっていくことが重要だと思います。それから、今はヨーロッパの金融危機とかTPPの話がありますが、もしこれが実現されれば港湾の活動にものすごく大きな影響があるのは間違いないので、こういったものを想定しながら分析を続けていくことが重要かなと思っておりまして、今後ともそういった面で各先生方にはいろいろとご指導いただければと思っております。
 先般、菅内閣から野田内閣に替わりまして、私ども国土交通大臣も前田大臣に替わりましたが、大臣は最近、組織の統括力、あるいは総合力と言っても良いのかもしれませんが、この統括力が大事だということをいろいろなところで発言しているわけですが、私ども国総研もこれから、いろいろな分野についていろいろな知見を持っておりますので、むしろその統括力を発揮して、先ほど柴山先生からもご指摘がありましたが、専門家集団として今後とも外に向かっていろいろと発信して、研究成果を高めていきたいと思います。今後ともご指導をお願い申し上げまして、御礼の言葉とさせていただきます。どうもありがとうございました。

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【事務局】 以上をもちまして平成23年度第6回研究評価委員会分科会(第三部会)を閉会いたします。本日は誠にありがとうございました。

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