平成23年度 第4回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第三部会)

議 事 録


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平成23年度第4回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第三部会)

平成23年7月21日

【事務局】 ただいまから平成23年度第4回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第三部会)を開催いたします。
 議事次第に従いまして、国総研所長からご挨拶申し上げます。

【所 長】 本日は、皆様、本当にご多用なところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。今年で国総研は10年を迎えまして、分科会の委員の先生方何名か、ちょうど区切りということでお代わりになっておられますけれども、実は5月から7月の人事異動で我々のほうもこの列は大半代わっておりますが、また心機一転ということでよろしくお願い申し上げたいと思います。
 本日は、私どものほうから課題を立てて、直接、財務省に研究予算を要求する、我々は事項立て研究課題と呼んでおりますが、この事前評価ということをしていただくことになります。来年の予算がどうなるのか、なかなか不透明なのですが、先ほど携帯でちょっとニュースを見ていましたら、今ちょうど参議院で予算委員会をやっていて、やはり復興予算が優先であるということで、概算要求締め切り9月末と出ていました。その通りになるかまだまだわからないのですけれども、そうはいっても研究予算の獲得に向けて準備はきちっとやっておかなければいけませんので、今日は本当によろしく、いろいろとアドバイスをいただければというように思っております。
 このところ予算が年々厳しくなっていますので、1課題当たりの予算が少し小さくなりつつあります。今回、1つ1つがあまり小さくなり過ぎないように、数が多くなり過ぎないようなことで少し抑え目に提出させていただいておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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【事務局】 本日の第三部会の開催に当たりましては、分科会設置規則に基づきまして主査が指名されておりますので、ご挨拶をいただきまして、以降の議事をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

【主 査】 初めに所感を述べさせていただきますと、どのような研究機関でも、研究テーマを設定する際に、どのような研究設問を設けて、どのような方法論を使って、どのような研究学問枠組みを援用してそのテーマに迫っていくかということが非常に重要な課題になるわけです。国総研の場合には、このように委員会を設けて、外部の専門家から意見を徴するということをやっていらっしゃることは学問分野の発展の上から見ても、しかるべきやり方をしていらっしゃるというように思います。 3月11日の東日本大震災以来、新しい研究テーマを設定するということがどこの研究機関にも求められているという状況だと思いますので、本日は、各専門のお立場から、各委員から国総研への研究テーマについて議論をいただくという機会でございますので、皆様、どうぞよろしくお願いいたします。 

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【主 査】 それでは、早速、議事に入りたいと思います。議事次第の4番、国総研評価委員会についてということで、事務局からご説明をお願いいたします。

【事務局】 それでは、お手元の資料2、横長のものでございますが、これで評価委員会についてご説明したいと思います。
 めくっていただきまして、1ページ目でございますが、国総研の研究評価委員会でございますが、研究内容の適切性、効率性について、外部の委員に評価をいただき、その結果を研究活動等に反映していくことを目的としまして、政府の各種の基本方針に準拠する形で設置しているものでございます。
 めくっていただきまして、2ページ目に評価委員会の構成を示しておりますけれども、本委員会と分野ごとの3つの分科会で構成しております。本委員会では、毎年、前年度の研究活動全般に対してさまざまなアドバイス・評価をいただきまして、所全体の研究活動に反映させていただいております。
 また、本日の分科会のほうでございますが、ここでは個別の研究課題の評価をいただいております。詳しくは、次の3ページのほうを見ていただきたいと思います。分科会では、国総研として重点的に推進する個別の研究課題について評価をいただいておりまして、2つのタイプがございます。1つ目が、事項立て研究課題、本日審査いただくものでございますけれども、これは、国総研が自ら課題を設定して、直接、財務省に予算要求する研究でございます。2つ目が、プロジェクト研究といいまして、研究開発目標を共有する研究を統合するなどして、所として重点的に推進する研究。言い換えれば、国総研の顔となるような研究ということで、ここでは国土交通本省から配分される事業調査費による研究なども対象となってまいります。これらに関しましては、研究開始の前年度に事前評価を、研究終了の翌年度に事後評価をいただいております。また、研究期間は一定ではございませんで、中には5年を上回るようなものもございます。5年を上回る場合には中間評価をいただいているということでございます。
 これら各評価のうち、事前評価につきましては、事項立て研究課題とプロジェクト研究で実施時期を分けております。概算要求の前の実施が義務づけられております事項立て研究課題につきましては本日のように7月に、そのような制約のないプロジェクト研究につきましては、本省事業部局との調整などのために事前検討の期間を設けさせていただいて、12月に事前評価をさせていただいているというところでございます。
 その他、委託研究への助言ということですが、大学等の研究機関へ委託する研究がある場合には、選定プロセスや研究の進め方について助言をいただいているということでございます。
 全体については、以上でございます。
 続きまして、個別研究課題の評価方法等につきまして、ご説明いたします。資料3をご覧ください。
 評価対象ですが、平成24年度に新規予算要求を行う研究課題(事項立て研究課題)を評価対象といたします。
 評価の視点と項目ですけれども、平成24年度の概算要求(8月)のために必要な事前評価として、必要性、効率性、有効性の観点から評価いただき、最終的に、「実施すべき」「一部修正して実施すべき」「再検討すべき」と、評価を行っていただきます。
 評価の進め方ですけれども、個別研究課題につきまして担当の研究者が10分間で説明した後、15分間で評価を行っていただきます。本部会におきましては評価対象課題に参画されている委員はいらっしゃいませんので、1)については該当なしということになります。
 次に、(2)の1)ですけれども、本部会におきまして他の部会及び欠席の委員から事前にいただいている意見はございませんでしたので、この後、主査及び各委員から、ご議論いただき、評価シートに逐次ご意見をご記入いただきます。本日の審議内容及び評価シートの集計結果に基づきまして、主査に総括を行っていただきます。各課題の時間配分につきましては、先ほど申し上げたとおり、説明が10分、質疑応答と評価が15分になります。この15分の中にコメントシートの記入と主査による総括の時間も含めておりますので、間違いないようにご注意いただきます。
 4の評価結果のとりまとめですけれども、審議内容、評価シート及び事前意見をもとに、後日、主査名で最終的な研究課題の評価結果として取りまとめ、公表させていただく予定にしております。なお、評価結果につきましては、研究評価委員会に報告いたします。
 5の評価結果の公表ですが、評価結果は議事録とともに公表いたします。なお、議事録における発言者名につきましては、個人名は記載せずに、「主査」「委員」「事務局」「国総研」等として表記いたします。
 次に、裏に行きまして、参考ということですけれども、まず、6月に親委員会を開催しております。それから、本日1日かけて、事項立て研究事前評価ということで、午前中に土木分野、午後の前半に建築分野、本会は、港湾・空港分野ということで、第三部会ということになります。それから、今後ですけれども、事項立て研究の事後評価、それから先ほど説明ありましたプロジェクト研究課題の事前評価・事後評価をいただく部会につきましては、11月から12月ごろ開催を予定しておりますので、近づきましたら日程調整をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 こちらからは、以上でございます。

【主 査】 どうもありがとうございます。
 今ご説明のありました評価方法等について、委員の皆様方、何かご質問があればお伺いいたしますが、いかがでしょうか。
 委員の皆様のお手元にコメントシートが2枚置いてあると思いますが、これは後ほどご発言をいただいた後に回収をさせていただいて、それをもとに最終的な評価、および評価の内容についてまとめさせていただきます。記述するスペースがあいておりますので、ここに適宜ご記入いただくということになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 評価方法について何かご質問があればお伺いいたしますが、よろしいでしょうか。

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【主 査】 それでは議事に入らせていただきます。今年度のこの24年度の開始予定研究課題の事前評価に入りますが、皆様に今日ご評価いただく課題がご覧のように3つ挙がっております。「外装材の耐震安全性の評価手法・基準に関する研究」、「建物火災時における避難安全性能の算定法と目標水準に関する研究」、「沿岸都市の防災構造化支援技術に関する研究」でございます。今、ご案内がございましたようにそれぞれご説明いただき、皆様にご質問いただいた上でご評価いただくということで進めてまいりたいと思います。

【主 査】 それでは、具体的に1つ1つの研究についての評価に入っていきたいと思います。まずは、「大規模津波地震を踏まえた空港の災害リスクに関する研究」について、説明をお願いいたします。

【国総研】 ご説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ まず、先生からご紹介がありました、「大規模津波地震を踏まえた空港の災害リスクに関する研究」ということで、副題に、「空港津波対策の最適化に向けて」ということで、ちょっと簡単に概念を述べさせていただいております。

・ 先ほど事務局からご説明がありましたように、財務省に直接予算要求する研究ということで、実はこの手の評価は本省航空局でもう既に走っております。実は、この8月までにある一定のものをまとめて来年度の予算あるいは補正予算に反映しろということで、今、急ピッチでやっておるところでございます。ただ、非常に時間が限られていますので、後からも述べますが、非常に対処療法的で、特に空港毎に個別に案があるわけじゃなくて、実は同じパターンで標準的な対策というのを取りまとめることとしています。また、今回、東日本大震災は非常に悲惨でありましたけれども、空港においてはかなり幸運なところもございまして、そういった意味では最悪の事態想定までは十分考えられていない。さらに、個別空港の特性というのは踏まえませんので、空港の立地なんかに関係します広域的な代替空港、代替の視点というのも、国土交通省航空局の検討では含まれておりません。そういった中で、事態想定は十分なのか、それから、後で述べますが、PDCAサイクルをうまく導入できてない。したがって、評価(C)の方法もブラッシュアップされてない。さらに、受容性といいますか、構造の世界ではレベル2、レベル1と言われている部分ですが、そこの考え方。それから、多様な主体、管理主体が、国だけじゃなくて、民間会社であったり、県であったりという中で、誰がどう見直していくのかというところが課題として、ぱっと見た限りでも見受けられます。
 これは実は、今、国土交通省航空局で考えているやり方ですが、全く従来何もなかったというわけじゃなくて、いろいろ、あり方とか、標準的なものが1つ出ております。今回、震災で事例研究をしまして、津波が来た、対応したという感じで、仙台空港のものを事例として対策A、B、C、これはどこの空港にも同じように、同じ順番、同じ優先順位で適応する。先ほどお話ししましたような最悪の事態想定、PDCAの導入、それから評価(C)の方法、これはCがそもそもございません。それから、受容性の検討。ここは今回の私どもの研究でも、きっちりやり切れるかというと、ちょっと難しいところがありますが、やはりこの議論はしなければならない。それから、各空港管理者誰もができるような仕組みにしなければならないということで、評価モデル、PDCAを入れる限りのCの方法の改良ということで、評価モデルの高度化、最適化を目指す。それから、誰でもできるという意味では、評価モデルの汎用化ということで、強いては見直しを促進していくということを目指したいと思っております。

・ ここに、従来計画をP、最悪の事態想定をDにしまして、Cのところを評価モデルの高度化、ここで受容性。受容性という言い方をするときれい事ですけど、はっきり言って、どこに足切りを持つのか、どこから先は捨てていくのかという考え方の整理。結果として出てくるものは、空港毎にも優先順位がつきますし、1つの空港であっても、対策A、B、C、これは空港毎に組み合わせが違います。それに優先順位がついたり、その規模についても空港によって変わってくる。こういったものを評価モデルのほうで目指していきたいと思っております。
 研究の実施方法と進め方は先ほどのPDCAのフローそのものですが、事態想定、受容性の考察、評価モデル。最後に、空港管理者だったら誰もができるように、評価モデルについてはガイドラインという形、あるいは、評価の上改善した強化計画については何らかのひな型という形で普及のツールというものを示していきたいと考えております。

・ まず、肝心な評価モデルのところを考える時の受容性の考察の検討イメージということで、これは、今、政府のいろんな委員会の中でも出ておりますけれども、ハードとソフトの役割分担、正直、ハードはここで諦めて、できないところはソフトでやりましょうというのが実際多いんですが、ここでよく考えられているのは、この後の議論、ハードのところでも議論があるんですけれども、構造物としてここまでもつから、ここから先はソフトにしましょうというのではなくて、むしろ空港の運用、災害時にこの空港はこういった運用を確保しなければならないと。当然、空港によって運用の中身は違ってきますので、通常言われるレベル2±αというのが空港別に出てくるのではないかと考えております。

・ これは発生頻度と結果重大性、リヒター・グーテンベルク曲線と全く同じ冪乗則で、今まで我々はこの辺で足切りを見ていた、考えてないとは言えないんですが、想定外という言葉は禁句なんでしょうけれども、足切りの条件をぐっと後ろに持っていくわけですが、ただ、例えば、ご存じのように羽田をやられますと日本全体のネットワークが全部、夜間に地震があれば機材の半分が失われて、ネットワークの半分は失われる。あるいは、今回は内陸でしたけれども、離島では陸路による啓開支援なんかができなかった場合はどう考えるのか。それから、守るべき、本来、空港不可分の母都市/経済圏がダメージを受けた時にどう考えるのとか、ちょっといろいろ考え方のアプローチがあると思います。また、並行して新幹線があったわけですけれども、確かに新幹線が届くまでは早くやったというんですが、実際、ピンポイントでやる空港という意味ではもっと早くやらなければならないのではないか。あるいは、新幹線がほぼ9割復旧したのに、民間航空のほうは4割しか復旧してない。したがって、関西方面からの投資家、パナソニックなどの工場関係者は非常に不便になっている。こういうことで地域の復興としていいのかどうか。こういったことを考えて、再度、難しいところですが、合意形成。正直、検討という言葉は、自分もちょっと、ここはそこまで行けると思いませんので、まず考察ということで両論併記的になると思いますが、しっかり検討をしていきたいと思っております。

・ あと、実際の評価モデルですが、前回から引き続いている委員の皆様方には昨年12月にご説明したプロジェクト研究で同様のものがございました。ここで使った手法をブラッシュアップしていきたいと思います。発生頻度、結果重大性、脆弱性。これはいいテキストがあるわけではないのですが、空港や港湾におけるテロ対策などで使っている手法を準用させていただいています。発生頻度、結果重大性、ここに対して、先ほど結果重大性などにつきましては、航空ネットワークの確保とか、こういった視点を追加して、ただ、自分たちがコントロールできるのは脆弱性のところだけですので、これを空港毎にまた評価して、どう改善していこうか。その改善したものが、このPDCAサイクルじゃないですけれども、強化計画(ひな型)、これは個別空港間の優先順位をつける時の考え方です。同じようにこれを質問形式でガイドラインという形にして、普及するツールとしていきたいと思っています。

・ 次は、1つの空港における施設・設備間の優先順位をつけて、何をどこまで直すかというようなところですが、これはなかなか難しゅうございます。これ実は、物理的な被害の問題と、復旧とか、そういった運用をここにずっと羅列しておりまして、やはり発生頻度、結果重大性、脆弱性から、ここの部分は多分簡素的になると思うんですが、マトリックスを考えていくと思います。例えば、今回新たに出てきたところで、緊急医療拠点(広域搬送)というのがごく初期の段階から出ています。ということは、ある程度のネットワークを今まで考えられている以上に早く確保しなければならないのではないかと。じゃあ、そのためには何を改善していかなければならないのか。あるいは、よく問題になっております電源問題ですね。電源がなくなったので、空港として機能が全部停止してしまったと。ただ、今、国土交通省航空局で考えていますのは、一律に電源を高床式にしますとか、密閉したところに置きますとかいう議論ですが、実際のところ、外部電源からやられている。じゃあ、空港によっては、重要な空港であれば、共同溝の耐震化・冠水対策であったり、あるいは先ほどお話ししましたように、羽田のように全国にいきなりダメージが行くのであれば、ある意味、一部の港湾でもあるのですが、小型の発電所を1つ持ってもいいのではないかと。こういったことが、評価方法、新しいモデルを入れることで、差別化、優先順位をつけて、全体として最適化が図れるようにしていきたいと思います。あとの評価モデルの考え方、改善計画というのは、同じようなことになります。

・ 必要性、効率性、有効性ということでは、記述させていただいておりますが、必要性という意味では、まずPDCAサイクルで再評価をして、最適化を促すということ。また、これは言わずもがななんですが、こういった現場とのフィードバックの関係ですので、まず現場のほうとのいい関係をつくって、実際の災害の意見を漏れなく拾い上げる。また、その改善計画を示す。さらに、有効性でございますが、先ほどガイドラインの汎用化でガイドラインを入れるとか、あるいは強化計画のひな型を示すということで普及促進をしていこうということで、研究結果を有効に役立てる。
・ 最後に、急がれていますので、2カ年で何とか全て終わらせたいと思っておる次第でございます。
 ご説明は以上でございます。ご審議をよろしくお願いいたします。

【主 査】 どうもありがとうございます。
 それでは、委員の皆様から、ただいまのご説明に対して、質疑、意見をお願いいたします。

【委 員】 非常に単純な質問です。課題名が「災害リスクに関する研究」となっているんですが、ご説明のほうは、災害リスクをどう考えているかとか、災害リスクをどういう観点で評価するかという説明ではなくて、評価の方法論の枠組みを考えているという説明だったと思いますが、この表題と内容との関連性をもう少し説明していただけませんでしょうか。

【国総研】 実はそれほど深い考えがあって作ったわけではなくて、やはり年度当初の予算要求の考えで、こういった切り口で予算要求をさせていただこうというので、表題に「災害リスク」という言葉を使ってきました。他方、この研究だけではなくて、並行してもう既に検討がいろんなところで、先ほどお話ししましたように国土交通省航空局、あるいは地方の空港管理者の皆さんとか、一気に進んでいく。さらに、そういったことをよくわかっている財務省の財政当局の人間に、確実に予算を獲得するためには、こんなことを言っちゃ何ですけれども、財政当局に受けるストーリーとなるとこういったストーリーになったということで、ファンドを得るためと言ったら申しわけないんですが、ずれていったというのが現実なところかなということで、それほど深い考えがあるわけではございません。

【委 員】 お答えをあげつらうつもりはないんですけれども、むしろ、災害というものをどう受けとめているかということによって、評価した内容が意味を持つかどうかというのに変わってくると思うんです。今回の災害事例を念頭に置かなきゃいけないというのはよくわかるんですが、例えば、空港にとってこのような地震とか津波が来るとここまでの災害が起きる可能性があると考えるというのが1つと、その時、だけれども復旧はかなり早くなる可能性が高いという場合は、災害が起きても社会的ダメージの及ぶ期間とか範囲が少なくて済むわけですね。ところが、災害規模としてはそんなに大きくなかったけれども、例えば電源を喪失したために、非常に単純なことだったけれども影響は大きかったと。このように災害のリスクの内容の評価の仕方自体をもう少し詳細に議論する枠組みだというように言っていただければ、少しわかったかなと思うんです。特にお答えは必要ないんですけど、私の解釈です。

【国総研】 おっしゃるとおりで、その意味では、これは最終的な事業の予算を獲得する立場からはあんまり言いにくいのですが、ここの結果重大性におっしゃるように単純に地震を置けばいいじゃないかという話ではなくて、おっしゃるようにかける、この施設だったら社会的にどういった影響が及ぶかというのが多分ここに入ってくるんだろうなと。ちょっと、ここの空港のレベルで入れるのか、個々の空港の設備のレベルで入れるのかというのは、正直、今、実は悩んでおります。ただ、おっしゃるとおりに、翻って言えば、例えば那覇なんか面白いと思うのですが、米軍の基地があると。日米安全保障条約の枠の外ですけれども、これが本当に機能するのであれば、那覇空港を捨ててもいいのではないかと。こういった、結果としてはっきりとは言えないんでしょうけれども、ただ、両論併記でそこまでは検討していって、先生がおっしゃるようなリスクというきれいな形で優先順位をきっちりつけるかまでは、これはなかなかつけられない立場でもあるのですが、ただ、両論はしっかり併記していきたいと思っております。

【委 員】 研究内容自体はおそらく、空港の事業継続計画の策定の手法をどう合理的にするかという、そういう内容だと私は認識したんですが、そうだとすると、例えば、リスクをどう評価して、想定リスクはどうして、それで、先ほど那覇の話をされましたけど、代替設備はどういうように考えられるかとか、もう少しすっきり研究の流れを作られたほうが、聞いていてもわかりやすいです。ただ、BCPの場合だと、研究手法は大体決まっているので、それに従ってやっていただく。ただ、空港という問題はこれまで十分、事業継続の、要は業務継続計画自体が十分整ってなかったので、これ自体は非常に意味のあることであるし、今後、東南海・南海地震などを考えますと、当然、東京羽田、名古屋、すべての空港が被災してくる可能性があって、その中では何を優先的に、例えばボトルネック設備は一体何なのかといったこととか、それから、業務復旧、目標復旧時間はどうするのかとか、そういうことをもう少し整理されて研究計画の中に書いていたほうがおそらくスムーズに研究も進むんのではないかと私は思ったんですが、いかがですか。

【国総研】 おっしゃるとおりで、先生方にご説明するのはそこまで踏み込んだお話のほうがいいと思ったのですが、どうしても同じ資料で財務省向けの説明を考えていますと、じゃあ那覇は要らないのね、対策は一切要らないのねと、簡単に片づけられる可能性がありまして……。

【委 員】 いや、そんなことはないと思うんですけど、空港側はいかにして速やかに業務を始めるかということを、今回の仙台空港の例を見ても明らかなわけですから、当然、それをやるためにはこういう手順でこの研究を進めないとだめだし、仙台空港以外でも各空港でこんなリスクがあって、そういうことを明らかにした上で優先的にどういう対策をとるべきかということを今標準化しておくことが非常に重要だというようにご説明されたら、当然理解されるはずだと私は思うんですが、そんなものじゃないんですか。

【国総研】 残念ながら仙台空港は必ずしも、みんなが思われているような雰囲気でいいのかどうかというのはもうちょっとレビューしていかなければ、自信がございません。救助・救難の拠点が宮城県の中で仙台空港だとつい思い込んでいますが、よく調べてみますと、実は自衛隊の霞目基地のほうがかなりよく動いているんですね。あるいは松島とか。それは応能する部隊が自衛隊という実力部隊が入っているという現実を見ますと、むしろ仙台空港は、セレモニーと言っちゃ何なんですけれども、海外からの救援物資なんかを受け入れる……。

【委 員】 それは、私は逆だと思います。それは、仙台空港が速やかに復旧できなかったからこそ、松島基地とか、山形空港とか、そういう空港が機能しなければならなかったわけですね。本来は仙台空港が機能しなければならなかったのが、それができなかった。それは、ああいう津波危険性が高いという問題とか、そのリスクをたくさん抱えていたために電源が全く失われて、今も復旧してないという状況が続いていますよね。そうした中で機能を使えなかったからこそ、よそで代替したと。ただ、代替できたということは非常にいいことなんですね。どうやって代替させて機能を持たせるかということも含めて研究をしなければならないんだということだと、私は思いますけど。

【国総研】 そこはちょっと、事実をいろいろ現場から聞いてみて、そういうありがたいご意見もあるんですが、逆じゃないのというのもしっかり検証し切れない段階で弁舌さわやかにそこまで言えないという辛さが、正直なところございます。

【委 員】 今、○○先生のお話を聞いていて、そういうことだったのかと改めて逆に思ったんですけれども、私は、お話を伺っていて、発生頻度とシビアさの軸でかいてあるリスクカーブがありますが、リスクカーブの形をどうしたいのかという話として、あのリスクカーブが結果重大性のでかいところにすーっと延びていくことがないように、どこかで頭打ちするようにということをやろうとしているのかなあと。縦軸を下に下げるというよりは、むしろ横軸に延びていく。頻度は低い事態であっても、すごく重大なことが起こってしまう。ささいな現象が雪だるま的に大きなことにつながる。こういうのをセーフティーバーストと言うんだそうですけど、今、福島で起こっていることがまさにそうだと思うんですが、そういうことがないようにとめるための算段をするというのがPDCAの議論なのかなあと。ですから、今お話を伺ったような、何かどこかで代替できてしまうんだったら優先度は実は高くないんじゃないかという議論は、まさにそういう話かな。代替性がなくて、それが大きな問題に雪だるま的に膨らんでいくようなことをいかに抑えるか。クライシスマネジメントの専門家って、考えられないことを考えるというんでしょうか、シンク・アンシンカブルというようなキャラクターの方がスペシャリストになるんだそうですけど、考えられないことを考えてやばいことをほじくり出していくようなことでリスクカーブが右側にしっぽが延びていくことを何とか食い止めようというようなことにこれがつながっていくのかなと思いながら話を伺っていたんですけど、そういうことではないんですか。

【国総研】 実は私、港のテロ対策の、あり得ないことを考えるという担当をやっておりました。これはアメリカのテキストなんかであって、実際考えます。考えます。ただ、人・物・金という経営資源、それから守るべき資産のリターン等も考えて、どこかで足切りしなきゃいけませんと。実はここは、優先順位をつけて網羅しなさいとは書いてあるんですが、どこで足切りしなさいというのは書いていません。ただ、だれが判断しなさいというのだけは書いてあって、それは最終リスクを負う人間がやりなさいと。実際、その最終リスクというのは、原子力でもそうですが、災害が起こった時に、現場でコントロールするだけじゃなくて、後ろから軍を投入するだとか、お金を際限なく投入できるといった、実際は政府になることが多いんですけれども、そこのトップが判断しなさいよと。正直、その条件を示すところまでが私どもが得ているテキストの限界かなと思っております。

【委 員】 すごく単純な質問をさせていただきたいんですけれども、目的の2つ目にPDCAサイクルの導入ということがあって、今もお話が出ていましたので、お話を聞いていて何となくわかってきたんですが、導入されるPDCAサイクルというのは誰がどのようにやるというのをイメージされていらっしゃるのかなという質問なんです。

【国総研】 多分、国土交通省航空局がそれを使って、どの空港、それからどの設備から補強していかなきゃいけないという考えを示すことになると思います。ただ、管理者が民間会社である株式会社なんかもございますので、ただ、それは多分、実施の現場のコントロール、まさに原子力の今の政府と東京電力みたいな関係で、このようにやりなさいという指針を政府が言って、管理者である空港会社なんかがそれを選択してやっていくということになると思います。

【委 員】 時間は過ぎているんですが、最後に1点だけ。このPDCAサイクルは、普通のPDCAサイクルじゃないですね。Plan、do、check、actじゃないですもんね。Dだと、doでないといけないので、対策をやらないといけないですね。何でこれをPDCAサイクルという名前をつけたのか、私はわからない。

【委 員】 そもそも、「大規模津波地震」という言葉はあるんですか。要するに、読んでいると津波のことしか書いてなくて、今回の地震で言うと、羽田で起こった被害とか、成田で起こったこととかということの話はあまり書かれてない。要するに、空港の外側で起こったような問題が空港の問題にかかわってくるんだ。ターミナルがいっぱいになっちゃって、飛行機が降りられなくなっちゃう。そんな話まで入れるのかなあと思いながら……。

【国総研】 入れたいと思います。おっしゃるとおり、用語が政府の中でもころころ変わっていて、ただ津波だけは予算をつけるよという中で「津波」という2文字を残しているだけで、ご指摘のとおり、羽田も液状化でエプロンに夜間駐機している機材がやられてしまう、こっちのほうがよっぽどネットワーク全体としては大きい結果にすぐなると思います。こういったことも入れていきたいと考えております。

【主 査】 短かめにもしご発言があれば伺いますが、よろしいでしょうか。
 私から一言だけ申し上げたいのですけれども、4ページにある図の中に津波減災レベル(レベル2)±α(空港別に)と書いてありますが、これは、津波防護レベル(レベル1)+α(空港別に)ということではないかと思います。津波防護レベルというのは、費用便益分析もするような、構造物によってどれだけ資産を守ることができるかというレベルですが、空港も当然それを考えてやるべきものであって、それにプラスアルファをどれだけするかということ、つまり重要な施設であるからプラスアルファするかという議論であって、減災レベルというのは、命を守るために最大限何でもするというものです。命を守るために最大限の努力をするというのが津波減災レベル(レベル2)に当たりますので、そこまで空港が考えることはないのではないかというように思いました。この表現はご検討いただければと思います。
 それでは、議論も尽きないところではございますが、時間でございますので、評価の取りまとめをする必要がありますので、評価シートを書いていただいて、提出をお願いしたいと思います。

【主 査】 結果は、「実施すべきである」が1枚、「一部修正して実施すべきである」が6枚、「再検討すべきである」が1枚ということで、コメントを見せていただくと、研究内容についてもう少し精査していただいて、今、各委員からいろんなご指摘をいただいたので、それをよく踏まえて内容をもう一回吟味していただいてから、ここにありますように「一部修正して実施すべきである」ということです。修正して実施していただきたいということにいようと思います。

【国総研】 ありがとうございました。

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【主 査】 それでは、続きまして、「沿岸域における港湾・水産・環境協調型統合的管理方策の研究」ということで、ご説明をお願いいたします。

【国総研】 ご説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

〔パワーポイント映写、以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ まず、調査の中身に入る前に、我々の海洋環境研究室でやっている業務をちょっと説明してからご説明したほうが、とっつきやすいのではないかというように思っています。

・ 海洋研究室では、専ら港湾を中心といたしまして、海域の環境の再生であるとか、あるいは創出などを中心に、それにかかわる政策実現のための技術的な研究をしているというところでございます。大きく4つの柱を立てて、現在実施しているところでございます。
 1つ目は、東京湾水質一斉調査とりまとめというマップがかいてございますけれども、こういう内湾域の環境を調査して、非常にわかりやすくマップとして集大成をすることによって、誰でもそれの環境について全体的に同じ理解を得られるということで、環境の現況を把握し診断する技術と言っていますけれども、こういうことをやっています。
 2つ目は、最近、環境再生という中で、順応的管理手法というのをよく言われています。モニタリング等をしながらいろいろ目標を変えつつ環境の再生を図っていくというようなことをやっておりますが、そういうものの活用をしながら、環境共生型事業を推進するための技術ということをやっております。
 また、いろんなモデル化、海域環境のモデル化がございます。私ども、1つは、概念モデルの活用による環境共生型の事業を評価する技術というのをやっております。
 また、4つ目でございますけれども、海域については非常に様々な関係者がございます。我々のような国土交通省のような者もございますし、水産関係、環境関係、NPO、そのような様々な主体がいろんなことに携わっている中で、これらの方々と、シンポとか、ワークショップとか、事例集等をつくりながら、お互いに情報交換を図るというような情報発信の、あるいはコーディネートの活動をしているというところでございます。
 これらの4つの柱でこれまで研究を進めてきておりますけれども、今般、これらを一つ集大成する形で、統合的沿岸管理というテーマのもとに研究を集大成したいと、新しい技術を提案していきたいということで、本年度から、当初、ご説明ありましたけれども、プロジェクト研究ということで4年間、統合的沿岸管理のプロジェクト研究を立ち上げてございます。来年要求します事項別研究につきましては、このうちの一部をこの事項別研究として要求をするということでございますので、最初にプロジェクト研究の全体像をちょっとご説明したほうがよろしいかと思いますので、その説明をちょっとしたいと思います。

・ まず、背景でございます。ご存じだと思いますけれども、大都市、特に内湾域はかつて、環境が非常に劣悪な時期がございました。様々な主体がいろんな努力をして徐々には再生しているんですけれども、とはいいつつもまだまだ、例えば富栄養化に伴う赤潮が年間数十回起こるとか、あるいは貧酸素に伴う青潮が数年に1回起こる。それから、貧酸素水塊が原因かどうかわかりませんけれども、数年に1回、魚介類の大量死が起こるというようなことで、徐々にはよくなってきてはいるものの、まだまだ海域環境に対して予断を許さない状況にあるということでございます。

・ それから、背景といたしましては、平成14年度から、国土交通省が中心となりまして、様々な湾の再生プロジェクトを実施しております。東京湾、伊勢湾、大阪湾、広島湾でやってございますけれども、海域環境の再生のために様々な主体が集まって一緒にやろうという、今で言うかなり先駆的な取り組みをしてきたわけでございます。これがだんだん目標年次を迎えてくるというような中で、おそらく現在の状況だと、次のステップ、次期計画への戦略的取り組みというのが求められるであろうということで、これまでやったことの反省点に立ちながら、新しい技術というか、手段というか、ツールを持ちながら、新しい政策目的・計画を立てていく必要があるというのもまた迫られているということです。

・ また、背景がくどいですけれども、例えば、平成19年に、これは海洋基本法でございますけれども、海洋基本計画に基づく中では、環境の保全とか創出と開発を両立していきましょうと。そのために、沿岸域にかかわるいろんな主体が協力して沿岸域管理を行わなければいけないという大目的ができている。それから、例えば生物多様性が叫ばれる中で、民間のNPOの方々が、非常に多くの方々が環境蘇生に向けての関心と実行に移しているというようなことがあります。また、海洋部における積極的取り組みが一番可能な港湾におきましても、生物共生型の港湾構造物の整備が行われるなどしておりますので、これらをあわせて、港湾・水産・環境が協調した沿岸域管理を推進するというのが必要になってきているという背景がございます。
また、プロジェクト研究は去年議論してお願いをしたわけですけれども、その時には想定されていませんでしたが、今回の大震災に伴って、岩手、宮城の沿岸部が壊滅的な被害を受けたと。特に湾域において壊滅的な被害を受けて、今後、復興に向けて数年かけて努力をしていく中で、新しい沿岸域のあり方、整備の仕方を模索して、それを実行していかなければいけないというような中で、具体的な沿岸域管理のあり方というのを提案していかなければいけないというような必要性にもまた迫られているというところでございます。

・ このような背景の中で統合的沿岸管理というものを我々は模索しているわけですけれども、問題はやっぱり、今まで取り組んでいる中で幾つか問題があるだろうということで考えております。いろんな問題があると思いますけれども、まとめると3つの問題があるのではないかというように認識をしているところです。
 書きぶりがちょっと乱暴なところがありますけれども、まず1点目としましては、先ほど言いましたように、海域に関わる、様々な主体がございます。それぞれの主体がみずからに必要な、いろんな環境調査とかをやってデータを持っているわけですけれども、データの共有化がどうもされていないということで、いろんな統一テーブルについても現状認識には非常にずれがある。あるいは、データの理解度の違いによって、本来の問題とちょっと違うところで議論をしているところがあるんじゃないかと。問題の認識がずれている。つまり、ベースがどうもぴったりと、皆さん共通したものを持たれていないというようなところが一つあるのではないか。それは問題があるんじゃないかということ。
 2番目としましては、1番に連動するのかもしれませんけれども、同じフィールドの中でいろんな主体がいろんなことをやらなければいけないわけですが、そういう現状認識にずれがあるがために、利用とか、保全、再生のためのいろんな取り組みに対して、必ずしも効率的な取り組みがなされていないのではないかと。例えば、ある主体は、ここでは水質をよくしたいなと思っていても、本当はそこが水質をよくするのではなくて、全体として考えるのならば別なことをやらなければいけないんだけれども、そういうようなことをやっていないと。本来それは、関係者が集まって調整のプロセスの中で効率的なことをやっていかなければならないんだけれども、そういう場なり、そういう共通認識ができていない可能性があるということが、問題としてあるのではないかということ。
 3つ目といたしましては、実際にやった事業は効果がほんとうにどのぐらいあるのかという検証手法がないということで、その3つの解決することによって統合的な沿岸域管理という新しいシステムの提案ができるのではないかという認識のもとに、新規プロジェクトということで沿岸域の統合的管理による港湾環境の保全・再生に関する研究というのを去年ご提案いたしまして、今年から実施をしているところでございます。

・ 3つの枠組み、まさしくさっきの課題の裏返しのことを書いてございます。沿岸環境の理解・環境情報の共有促進を図るマップ、情報ツールの作成ということと、海の環境の特性を反映した、問題解決プロセスの標準手法の構築、総合的沿岸域管理の事業を評価する包括的な評価手法の構築、この3つを柱としまして、新しい沿岸域管理型のシステムの確立をしたいということです。今年から始めて、今年といいますか、従来からの研究の蓄積を含めていろいろ積み上げているわけですけれども、例えばマップの作成の中では、水際線の情報の可視化などをこれまでやってきております。それから、概念モデルの構築、これはまだ、データを取りまとめて、湾域モデルとか、あるいは潮だまりごとにどういうモデルが考えられるかというのを現在検討中でございますけれども、こういうこともやってきている。それから、統合的沿岸域管理の評価手法としましては、生物指標による評価などができないかということで、かつて東京湾で非常に隆盛を博していたハゼを指標にできないかとか、あるいは付着生物で何か指標になるようなものはないかというのを研究しております。この中で今回、マップとか情報ツールの作成、あるいは問題解決プロセスの完成のために必要なものとして、概念モデル、あるいは生物指標による評価、あるいはこれまで可視化をしてきたデータを一括りにした、問題解決のための共通マップのようなものを作る必要があるなと。そのマップに基づいた具体的な行動指針というのも作る必要があるなと。それをもってこの3つの個別テーマが完成するのではないかというふうに思っておりまして、今回、事項別でお願いというか、要求をしたいのは、今、最後に言いました、アズキ色といいますか、赤といいますか、その部分でございます。

・ 具体的に、じゃあどういうことをするかということでございます。これは東京湾だけの、背後の流域のマップでございます。これについてのデータと東京湾の中の各種の環境データとのリンクによって、それぞれの海域別にどういうことができるかというのを、いろんなケースで試行錯誤で試して、どういうことが提案できるかという手法を開発したいというのが、一つの大きなテーマです。

・ じゃあ湾の中にどんなデータがあるかという一つの例としまして、これは底泥と生物の生息の状況を示しているものでございますが、これらの状況をもとに、いろんな環境条件とか生物生息条件の多変数構造解析といいますか、そういうのを行いながら、どこでどのような環境再生、生物共生が可能であるかということが出てくるのではないかと。そういうのをどのように出すかというのを、例えば概念モデルから持ってくるのか、既存の生物サイシの中で持ってくるのかというような手法を検討してみたいなというふうに思っています。それができることによって、1つ前に戻りますけれども、例えば、これは横須賀港でございますけれども、横須賀港の中ではこういうことをすれば、海域環境にもいいし、生物にもいいんだということが言えるようなマップ、共通したマップができるのではないかというふうに思っています。

・ もう1つは、これは具体的に実現するためのメニューといいますか、具体的にどのような形で環境再生なり沿岸域の管理をしていかなければいけないかというところの提案のために諸外国の事例などを参考にしたいなということで、当然、我々は、日本の状況についても調べておりますし、調べるつもりでございますけれども、海外事例についてもあわせて調べていって、それを参考にしていきたいなというふうに思っています。

・ 効率性ということで、今言ったいろんな組み合わせとかを考える際に、当然、プロセスが必要だと思います。我々だけがやるんじゃなくて、今までつき合いのある水産関係、環境の方々と一緒にワークショップ等をやって実施をしているという中で、そのプロセスについても、果たしてこういうプロセスでいいのかどうかというのも、皆さんで一緒に議論をしながら、具体的な計画策定のためのマニュアルといいますか、ひな型を作っていきたいというふうに思っています。

・ なお、研究は、先ほど言いましたけど3年で、一応、今のところ1,200万の研究費ということで考えてございます。
 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

【主 査】 どうもありがとうございます。
 何か、ご意見ございますでしょうか。

【委 員】 今までの研究に根差した、しっかりした内容かと思うんですが、1つは、こちらも震災に関して取り上げていまして、港湾・水産基盤施設の被災からの復興、これがやはり最後の方法論のところでもうちょっとイメージがつかない。それともう1つは、それをもし適用するとしたら、今回の事例をどこか選ばれると思うんですけど、非常に広いものだから、あそこのどこの沿岸域を事例として取り上げて震災の復興に、特に水産業の復興ということだと思うんですが、どんなことを予定されているか、イメージがつくような形でもしお答えいただければ……。

【国総研】 ありがとうございます。今こういう状況なので、東北関係の沿岸域について、まさしく復興、新しいのを作るんだというところの中で、こういう新しい考えを取り入れたいなと。また、どこかでそこで、この中でも検討したいなというのはあるんですけれども、じゃあ具体的にどこでやるとか、まだなかなか想像がつきません。おそらくやるとしたら、釜石とか、大船渡とか、そういうところだと思うんですけれども、今回、これは東京湾でやるということで、実際にやるに当たっては、1つはかなりのデータが必要だというところで、どのくらいのデータが集まるのかというところが、どこでやるかというところの一つのあれになると思います。それはまだ具体的にわかりませんけれども、それを探りつつ、どこか適用できるようなところについてできればやるということになると思います。
 そのほかに、できなくても、今回のこの調査の中で具体的にどういう組み合わせでどう考えればいいんだという手法の汎用化はしようと思いますので、少なくともそれができれば、どこの海域でもある程度適用できるのではないかと思っています。ですから、データの蓄積を待ってその手法を適用しようというような、少し時間がかかるかもしれませんけれども、そういう対応になるのかもしれないということで、ある程度限界があるというようなことは思っています。

【委 員】 わかりました。うちの大学は水産の復興のプロジェクトを立ち上げているものですから、いろいろと教えていただきたいと思います。ありがとうございました。

【委 員】 先ほどの空港リスクは、私には全く理解できなかったので委員の責務が果たせるのか実は心配してしまいました。しかし、今回のこのテーマをお聞きして、大変重要だと思いました。そういう意味で1つ質問があります。本研究は、環境という視点で、港湾と水産と環境を一繋ぎにされて、その統合的管理を考えようとものだとすると、今、まさに私たちの社会状況を見ても一番不足しているところを突いています。それは、いわゆる政治的に言うと縦割りで、国土交通省、農林水産の水産部門、環境省と分かれていることが、海は1つなのに、そこがなかなかうまくいってない問題です。今回、これを統合的な管理に向けてマップを作られるということですが、そういう省庁のいろんな研究機関があると思うんですが、そういうところとの連携というのはどのようにお考えでしょうか。

【国総研】 一番最初にご説明をしました、一番下にいろんな技術相談窓口等をやっているので、このような取り組みを10年以上前からやっています。この中には、環境省の関係研究所、それから水産関係の研究所、あるいは水産の、一番最後に書いていましたけれども、東京湾とか、神奈川水産技術センターとか、自治体がやっているようなところ。そういう関係者が皆さん入っていただいて、あとNPOも入っていまして、そういう方々とコミュニケーションをこれまで延々と続けてきております。特に東京湾についての議論が中心だったわけですけれども、東京湾については、最終的に海で誰が何をできるかというと、一番できるのは国土交通省なんですね。周りはずっと港で囲まれていますので、港で何かやろうとしたらできますよと。だから、主導権は国土交通省がとると。でも、実際、何をやっていいかとか、何をやったらどんな効果があるのかというのはなかなか水産関係とか環境関係の方々と意見が合わないということで、今までずっと、会議、ワークショップなどを開きながらコミュニケーションをとってきたという、そういう基盤がある中で今回のこの研究もいろんな組み合わせで、どういう海域がどんなものに使われる、どういう開発をしたら水産にもいいし環境にもいいんだとかということも、今までの関係を生かしたワークショップなどを開きながら、お互いのコミュニケーションをとりながら、やっていこうと思っています。それがある意味で一つのモデル的なプロセスになるのかなというふうに思っていまして、それが全国的に、水産と環境しかございませんけれども、プロセスの考え方を汎用的に応用できるのではないかということを我々は期待しているということです。

【委 員】 あと1点だけ、コメントがあります。特にこの成果ということで言うと、今回まとめられたマップがいかに公開されて共有化されるかというところが鍵だと思います。つい最近、SPEEDIという原発事故の後の文科省のデータが全く出てこないというようなことがありました。本研究の内容は、本当に環境ということに対しても甚大な影響を与えるということで、今回は、港湾、それから水産とか、そのようなことの情報の公開と共有化というところを一段と力を入れていただくとよいと思いました。また、今回、第三部会は金額が出ているんですが、3年間で1,200万円の予算というのはかなりささやかな要求なので、先ほどのがその倍額でしたので、そういう意味で言うと、最終的に財務省に働きかける時のめりはりのつけ方などもぜひお考えいただくとよいと思いました。

【国総研】 ありがとうございます。最初に要求していたのはもっと少なかったんですけれども、あまりに少な過ぎるということで、少し増やしたところです。ありがとうございます。今のご意見を参考にさせていただいて、また研究を進めていきたいと思います。

【委 員】 今のご質問が出たので質問をする勇気が少し出たんですけど、事前の質問にも書いたんですけど、三鷹の海上安全技術研究所とどのように分けるんですか。船屋さんですね。

【国総研】 船屋というか、いわゆる外海……。

【委 員】 外洋ですよね。これまでだと閉鎖性の高い海域の話だから……。

【国総研】 うちは閉鎖性のほうを中心にやって、外洋のほうは境界条件のところで入ってくるんでしょうけれども、三鷹とか、あそこは外洋についてやっているというのはよく存じ上げていまして、どちらかというとそこで今のところは仕分けをしているようなイメージで研究を進めているという……。

【委 員】 最初の印象として、沿岸域とタイトルに書いてあるので外洋と思って、境界があいまいなところに出ていかれるのかなと思っていたものですからね。

【国総研】 確かに外洋も含めて沿岸域と言いますけれども、どっちかというと今のところ我々は内湾域を中心にやっていると。

【委 員】 ありがとうございます。

【委 員】 簡単なことです。スライドの7番目のところで、新規プロジェクト研究で平成23年度、今年度からというようなことをおっしゃったと思うんですが、コメントシートでは来年度からですよね。ここの関係がよくわからなかったんですが。

【国総研】 プロジェクト研究と今回の事項立てというのはちょっと分けて、プロジェクト研究自体は去年から始まっていまして、プロジェクト研究は、必ずしも事項立てでなくて、様々な研究費をトータルにして1つの研究をまとめていきましょうというのがプロジェクト研究だというように思っています。それは既に23年度から、これは小さいですけど、例えば黄色のところみたいなところは既にやっていると。今回、事項別として要求するのは、赤というか、あの部分であって、それを今回説明させていただいた。

【委 員】 中の一部を?

【国総研】 そうです、この中の一部を今回の事項立てでやるという、そういう区分けといいますか、そのようになります。

【委 員】 わかりました。

【委 員】 1点だけ申し上げたいんですけど、こうした研究を長年にわたって実施されているということをお伺いしましたが、せっかく新しく提案されるので、その中でまた、目的の中でも震災復興にも資するようなことも書かれておられたので、もし可能なら、これまでつくられてきた技術を今回の震災復興の環境再生としてどう生かすのかというようなところも、研究目的の中にというか、もう少し入れていただくと非常にいいなというように思いました。説明の中ではそのあたりが十分入ってなかったので、目的のところには書いてありましたけれども、そのあたりをぜひ、もし可能ならお願いしたいなと思います。

【国総研】 ありがとうございます。おっしゃるとおりでございますので、我々も、この新しい技術を待つのではなくて、今持てる力でどういうことに貢献できるかというのも含めて、検討していきたいというように思います。

【主 査】 他に何か。よろしいですか。
 6枚目のスライドで「沿岸域の統合的管理の課題」と書いてあるのですが、もしこれを本当に課題だと思っていて、特に1と2ですけども、これらが課題ないし研究設問だとすると、これ自体が検証されるべき仮説で、検証するのであれば別の方法論が必要になります。別の方法を使わなければこの1と2は検証されないということになっちゃうと思うので、この6枚目のスライドの扱いは難しいとおもいます。これがあるとその後の研究の展開の仕方というのは本当に6にこたえるのかというように疑問を持たれてしまうと思うのですが、いかがでしょうか。

【国総研】 すみません、私もあまりよく理解できないんですけれども、単純にこれまでこういうことがあったのでこれを解決しなきゃいけないですね、そのためのツールはこんなものを作ることが必要ですねという、そういう流れで書いているつもりなんですが、そうとられてなかったら、ちょっと変えなきゃいけないですね。

【主 査】 私の研究室では1番と2番がまさに研究設問で、それに対して社会学的な手法を用いて研究をするということをやっているもので、これを前提にするのは間違いではないかなと思います。この仮説は修正されるべきものではないかと思っているということです。

【国総研】 わかりました。

【委 員】 7ページ目のフローチャートのところは今日のプレゼンテーションの全体に対してちょっとどうかなあと思ったんですけど、要するに、全体のあるプロジェクトがあって、実はその中であぶれちゃったところを今日申請しますよというように聞こえちゃったんですね。

【国総研】 あぶれたところではないんですけど。

【委 員】 ですから、マップを作るとか、区分をかけるとかって言っているところがどうして同じところに入ってくるのか、その論理展開が今日のプレゼンテーションでちょっと繋がらなかったので、もし財務省説明等があると気をつけられたほうがいいかなと思いました。

【国総研】 ありがとうございます。気をつけて説明をしたいと思います。もとがない中でいろんな組み合わせで使える金でこっちは合致、こっちは違うというジグソーパズルのようにやっていますので、ちょっとこういう形になってしまったという。

【主 査】 よろしいでしょうか。それでは、この件についてコメントシートをご提出いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

【主 査】 今いただいた評価シートは、「実施すべきである」というものが5枚、「一部修正して実施すべきである」というものが3枚あります。内容を見ますと、もう少しこういうことを考えて研究を進めてもらったほうがいいのではないかというようなこともありますが、全体としては「実施すべき課題である」ということにしたいと思います。それでよろしいでしょうか。
 それでは、今回もいろんな意見が出ましたので、それを参考に研究を進めていっていただければと思います。

【国総研】 ありがとうございました。

【主 査】 第三部会で担当する研究課題の評価については、これで終了となります。

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【主 査】 本日評価いただいた課題の評価書の作成につきましては、各委員からいただいた課題ごとの評価の取りまとめをベースにいたしまして本日の議事録を確認しながら作成するということです。この後の作業は私にご一任いただくということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【主 査】 それでは、本日の議事はこれで終了いたしました。全体を通じて何かお気づきの点がありましたら今お伺いいたしますが、よろしいでしょうか。
 それでは、この後の進行は事務局のほうでお願いいたします。

【事務局】 ありがとうございました

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【事務局】 それでは、最後になりますけれども、国総研副所長からご挨拶申し上げます。

【副所長】 委員の各先生方には大変いろいろなご意見を頂戴いたしまして、ありがとうございました。一部の先生方には、第一部会から長時間にわたっての出席、本当にありがとうございました。
 本日お諮りをしました事前評価でございますが、1本目の空港の災害リスクでございますが、こちらは、実際に仙台の空港で今回の震災でああいった事態が起きて、説明の中では必ずしも破局的な状況じゃなかったんじゃないかというような説明も、実はかなり破局的だったんじゃないかと思っておりまして、この辺もちょっといろいろ認識があるんですが、どうも説明が、申しわけございません、直前の、近々の実務的な、財務省の説明というところを非常に色濃くご説明させていただいてしまって、本来であれば科学的にきちっと先生方とご議論してその内容を詰めるということがこの評価委員会の目的だと思っておりますので、本日いただいたご意見につきましては真摯に受けとめさせていただきまして、一部修正ということでございますので、修正をさせていただいて、必要であればまた個別にご相談をさせていただいて、内容を詰めた上で進めさせていただきたいと思っておりますので、今後ともよろしくご指導をお願い申し上げます。
 それから、2点目の沿岸域の統合的管理の問題であります。これも、今、担当からご説明したとおりでありますが、実は内湾のやりやすいところからやっていく。これは、国土技術政策総合研究所として、国土交通省の機関としてやりやすい場所を主に選んでいるということでありますが、何人かの先生からご指摘がありましたが、今、東北の被災地、下水道システムが完全にいかれてしまったり、堤防が決壊して陸であったところが海になってしまって、そもそも沿岸域の環境が全く激変したり、水産がものすごいダメージを受けたりということで、おそらく統合管理が今一番必要なのはそちらではないかと、このように思っておりますので、直接そちらをやるというのは非常に難しいという話もちょっと担当からさせていただきましたけれども、研究の成果そのものがそういったものにも生かせるようにこれから少し発展をさせていきたいと思っていますので、いただいた意見を参考にさせていただきまして、そういった方向で研究を発展させていきたいと思っていますので、今後ともまたよろしくご指導いただければと思っております。
 本日は、どうも長時間ありがとうございました。

【事務局】 以上をもちまして、平成23年度第4回研究評価委員会分科会を閉会いたします。
 本日はまことにありがとうございました。

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