平成23年度 第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第二部会)

議 事 録


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平成23年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第二部会)

平成23年7月21日

【事務局】  それでは定刻となりましたので、平成23年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第二部会)を開会させていただきます。
 開会に当たりまして国総研所長の○○より一言ご挨拶を申し上げます。

【所 長】  一言ご挨拶申し上げます。本日はご多忙のところをお集まりいただきましてありがとうございます。国総研発足後10年たちまして、委員の先生方も何名かお代わりいただいておりますが、私どもの方もここの前列を中心にかなりメンバーが代わりました。私だけ代わっておりませんが、新しいメンバーでリフレッシュして頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は、国総研から直接財務省に課題を挙げて研究費を要求するもの3課題について事前評価ということでご審議いただくわけでございます。国会の方は、今日も一応、審議はされているようですが、やっているのが今、第2次補正か何かで、来年度の予算がどうなるかというのは、要求の仕方を含めて、いつどんなスケジュールでやるのかまだ全然見えてきていないのですが、いずれの時期かには要求書を出せという話になると思いますので、通常の年のペースで準備をしていこうと。ただ、ここ一、二年、予算が大分圧縮されておりますので、あまり課題の数を多くして1つ1つが小さくならないようにということを配慮して、今日も課題を提出させていただいております。どうぞよろしくご審議のほどお願い申し上げます。

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【事務局】 続きまして、開会に当たりまして、まず○○主査に一言ご挨拶をいただきたいと思います。

【主 査】  本年度から主査を拝命いたしました○○でございます。皆様、本日はお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。今、○○所長からもお話がございましたが、予算が厳しい折でございますが、こういうときだからこそ今日ご審議いただきます分野の課題は大変重要であり、めげずに粛々とやっていくべき課題だと思っております。
 ただ、やはり研究内容の企画があまいと、これはご説明がございましたように財務省からは厳しい鉄槌が待っているということでございますので、今日ここで、どちらかと言えば厳しい関門の前に、良い意味でもんでいただくというのがこの趣旨の会だと思いますので、是非忌憚のないご意見をいただき、より良いプロポーザルがまとまるようにご協力いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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【事務局】  それでは、議事の進行につきましては○○主査にお願いしたいと思います。○○主査、よろしくお願いいたします。

【主 査】  それでは、皆様のお手元に議事次第というのがございますが、この議事次第に基づきまして議事を進めてまいります。今、この議事次第の中の3番目が終わっておりますので、4番目の国総研評価委員会につきましてご説明をお願いいたします。

【事務局】  それではご説明いたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ 表紙をめくっていただきまして1ページ目でございますが、研究評価委員会についてということでございます。国総研の評価委員会でございますが、研究内容の適切性、効率性について外部の委員に評価をいただき、その結果を研究活動等に反映していくということを目的として、政府の各種の基本方針に準拠する形で設置しているものでございます。

・ それで2ページ目でございますが、評価委員会の構成として、本委員会と本日の分科会、3つの分野の分科会で構成しております。本委員会では、毎年、前年度の研究活動全般につきましてアドバイス、評価をいただきまして、所全体の研究活動に反映させていただいております。

・ そして本日の分科会の方でございますが、個別の研究課題の評価をいただくということでございまして、詳しくはこの次のページ、3ページをご覧いただきたいと思います。分科会の方では、国総研として重点的に推進する個別課題の評価をいただくということでございますが、2つのタイプがございまして、1つが本日の事項立て研究課題、国総研が自ら課題を設定して直接財務省に予算要求する研究でございます。2つ目がプロジェクト研究と申しまして、研究開発目標を共有する研究を統合するなどしまして重点的に推進する研究、言い換えますと国総研の顔となるような研究ということで、ここには本省の事業部局から配分されます事業調査費による研究なども対象となってまいります。これらの研究につきまして、研究開始の前年度に事前評価、終了の翌年度に事後評価をいただきます。また、研究期間が5年以上にわたるものにつきましては中間評価をいただいております。
 こういった各種の評価のうち、特に事前評価につきましては事項立て研究とプロジェクト研究で時期を分けております。概算要求の前に実施が義務づけられております事項立て研究課題につきましては、本日のように7月に実施させていただいて、そのような制約のないプロジェクト研究につきましては、本省事業部局との調整なども必要なことから事前の検討の期間を確保させていただいて、12月に事前評価をいただいているというところでございます。また、個別評価のほかにも委託研究、国総研が大学等の研究に委託する場合の助言をいただいております。委託者の選定プロセスや研究の進め方について助言をいただいているところでございます。これは委託研究機関を確保するために毎年4月に案件がある場合には実施しております。なお、本年度は4月に持ち回りで開催させていただいたとおりでございます。
 全体のご説明は以上でございます。

【事務局】  続きまして、本日の評価の進め方についてご説明させていただきたいと思います。資料3をご覧いただけますでしょうか。まず本日の評価の対象ですが、平成24年度に新規の予算要求を行う研究課題、先ほども出ましたが事項立て研究課題を評価の対象としております。この平成24年度の概算要求が8月なのですが、そのために必要な事前評価としまして、必要性、効率性、有効性の観点から評価を行っていただくものです。
 本日の評価の進め方ですが、当部会が担当となっております研究の課題ごとに評価を行っていただきます。本日、対象となるのは3課題となっております。まず、研究課題の説明として10分、説明の時間をとっております。通常、課題に利害関係がある評価委員につきましては、評価に参加できないのですが、本日の課題につきましては特段対象になる方はいらっしゃらないということですので、この部分については省略させていただきます。
 それから、研究内容、必要性のところについての説明ということでパワーポイントに従って10分間、説明をさせていただきます。その後、研究課題についての評価ということで、全体で15分ですが、まず他の部会欠席委員等からの事前意見の紹介をさせていただきますが、第二部会の課題につきましては事前に特段意見等はございませんでしたのでご報告させていただきます。それから、そちらの紹介をさせていただいて、その後に主査及び各委員の方に研究課題についてのご議論をいただくということでございます。その際、意見等につきましては、その都度、評価シートの方にご記入いただければと思います。
 それから、審議内容、評価シート等をもとに主査の方に最後まとめということで総括を行っていただきます。時間配分につきましては、説明が10分、その後の評価が15分ということで、よろしくお願いいたします。評価結果につきましては、審議内容等をもとに、後日主査の方で最終的な研究課題の評価結果を取りまとめまして公表をさせていただく予定でございます。評価結果につきましては、親委員会ということになりますが、研究評価委員会の方に報告というようにさせていただきます。それから評価結果につきましては、議事録と合わせまして公表する予定でございます。なお、議事録につきましては、発言者名は、個人名は記載せずに主査、委員、事務局、国総研等として表記をさせていただきます。
 裏側、参考でございますが、本日、午前中、第一部会でございますが、第一から第三部会まで分科会を開催しております。さらに11月から12月ごろに事項立て研究課題の事後評価と、あとプロジェクト研究の事前、事後評価を行いますが、そちらの方はまた時期が来ましたら、日程調整等をお願いすることになりますのでどうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【主 査】  今、資料のご説明をいただきましたが、今の事務局のご説明に対しましてご質問、ご意見などございますでしょうか。特にございませんか。よろしゅうございますか。それでは、今ご説明いただいた内容、私ども共通認識とさせていただいたというように理解させていただきます。

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【主 査】 それでは議事に入らせていただきます。今年度のこの24年度の開始予定研究課題の事前評価に入りますが、皆様に今日ご評価いただく課題がご覧のように3つ挙がっております。「外装材の耐震安全性の評価手法・基準に関する研究」、「建物火災時における避難安全性能の算定法と目標水準に関する研究」、「沿岸都市の防災構造化支援技術に関する研究」でございます。今、ご案内がございましたようにそれぞれご説明いただき、皆様にご質問いただいた上でご評価いただくということで進めてまいりたいと思います。

【主 査】 それでは、第1番目の課題でございます外装材の耐震安全性の評価手法・基準に関する研究につきまして説明をお願いいたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

【国総研】 
・ まず最初に、研究の背景からご説明いたします。左下の図1は、民間調査をもとに、三大都市圏におけるマンションなど共同住宅の竣工年と新規建築棟数を示したものです。赤い線はストック棟数を示すもので、2004年の段階で三大都市圏だけでも約9万5千棟を超える共同住宅のストックがあり、さらに年々増加している傾向が分かります。
 次に下中央の図2は、平成22年度に国交省住宅局が既存建築物の外装材の落下の危険性を調査したものです。これによると調査対象建物の約11%について外装材剥落の危険性が指摘されていることが分かります。これを、先ほどの図1の共同住宅のストック棟数に掛け合わせますと、3大都市圏だけでも、2004年度の段階で約1万棟を超える建物について外装材の落下の危険性があったことが十分に予想されます。
 さらに、右下の図3は、阪神大震災のときの鉄筋コンクリート造建物の外装材の被害状況を示したものです。横軸は外装材の種類を、縦軸は調査件数で、被害の状況を無害から剥離大まで5段階に色を変えて示しています。一般に、外装材の中で落下の被害や危険性が多いと言われているのは窓ガラスですが、この調査では青い部分の無被害が半数以上ありました。一方、タイルの場合は8割を超える建物で何らかの被害が出ている現状が確認できます。
 これらのことから、外装材の剥落・落下によって人的な被害を含めた潜在的な危険性が年々増加していることが伺えます。

・ 次に二番目の背景です。一般に、外装材は湿式と乾式に大別され、こちらの図4は代表的な乾式工法によるALCと、湿式工法によるタイルについて、建物の変形角度を表す層間変位角と被害の状況を示したものです。左から右に行くほど建物の変形が大きくなり、ALCの場合は、部分的補修や取替えで使用可能な程度の被害は、100分の1ぐらいの層間変形角で発生しています。一方、湿式のタイルの場合は、改修が必要な被害は1000分の1以下の層間変形角でも発生しています。物件によっては、赤で示す大規模な補修が必要な被害も発生していることが伺えます。
 この様な違いは、ALCのような乾式工法による外装材については、これまでにも耐震安全性に関する検討が行われ、技術基準類の整備がなされてきましたが、タイルやモルタルなどの湿式工法による外装材については、耐震安全性を含めた技術基準類が未整備であったことが原因と考えられます。

・ 更に三番目の背景ですが、外装材を含む仕上げ材の構造は、お手元の参考資料1に示しますように、建築基準法施行令の39条とその関連告示である昭和46年の109号で定められております。ただし、これらに書いているのは、外装材をモルタルなどの接着材で緊結する、と言うことだけで、技術的な基準、方法は全く記されていません。
 一方、80年代に日本建築学会などの学協会で非構造部材の指針類が取りまとめられております。しかし、材料や工法については既に使われていないものがあったり、有機系接着剤などの近年開発されたものであったり、また従来の測定方法では診断が困難な状況が増えております。また、80年代に取り纏められた指針類は新築建物を対象にしており、補修、改修を含めた既存建物の耐震安全性までは検討されておりませんでした。
 さらに、湿式外装材の設計や施工を行っているのは中小の企業が主で、これらの民間が、耐震安全性を評価するための試験方法や判断基準、閾値などを統一的に作っていくのは困難です。
 以上の背景から、湿式外装材の耐震安全性を考慮した統一的な技術基準類を、公的機関によって早急に整備することが必要だと考えております。

・ 次に研究の目的をご説明いたします。目的は2つございます。1つ目は、タイルやモルタル等の湿式外装材を対象に、耐震安全性を考慮した剥落防止のための技術基準類を作成します。例えば、耐震安全性の技術基準と、材料や工法を選定する際に参考となるデータ集、標準仕様などです。2つ目は、地震後に湿式外装材の健全性を評価する方法を確立します。例えば、地震被災後に重点的に診断・点検しなければならない部位や箇所などを明確にすることや、損傷を受けた湿式外装材の健全性の程度、補修も含めた適切な評価手順などを想定しています。
 なお、22年度から始まっております予防保全総プロでは、タイル等の剥離を測定する技術の開発を行っております。皆様に本年3月に予防保全総プロの委託研究として評価をしていただいた技術です。本研究目的の一つとして挙げております地震後の健全性を評価する手法として、その際に実際に使う技術として、この予防保全総プロで開発された技術が適用できるだろうと考えております。

・ 次に、研究の全体の流れについてご説明いたします。本研究は、24年度から26年度の3カ年で行います。24年度には主に調査関係について実施します。詳細についてはこの後でご説明いたします。24年度の中ほどから実験検討に必要な試験体の製造、養生等を含めた作業を開始します。実験等については25年度の早いうちから始めたいと考えております。調査および実験等で得られたデータをもとに、25年度から検討可能なものについては整備を進めて行いたいと考えております。

・ 次に、研究の内容についてご説明いたします。まず湿式外装材の耐震安全性を考慮した剥落防止のための技術基準類については、1,各種工法に関わる材料および施工方法に関する調査。2,既存の評価方法や耐震安全性を確保するための設計方法に関する調査。3,東日本大震災も含め、湿式外装材を対象にした既存の地震被害、および現地調査を行いたいと考えております。

・ 2つ目は耐震安全性の評価手法に関する実験検討で、この研究の大きな部分になります。評価方法の検討では、実際の建物の挙動をどこまで把握、評価できるかということが重要になります。より正確な評価を行うには、図5Bに示すような実際の建物の部材を取り出して評価するという構造実験のような方法がありますが、外装材には材料や工法がたくさんあり、構造実験を全ての水準で行うことは困難です。その代わりに、例えば図5@に示すような材料レベルのせん断試験とか引張り試験で得られた特性値をもとに設計を行って、図5Aに示すダイヤゴナルのような小型の試験体を用いて性能評価を行う、というような形式の標準試験方法を作ります。ただし、この標準試験方法による挙動と実際の建物の挙動との相関性を検証しておかなければならないので、標準試験方法の妥当性を部材レベルで検証する実験的検討も行います。

・ 3つ目として、代表的な材料、工法を選定して、作成した標準試験方法をもとに、耐震安全性を評価するために必要なせん断特性とか引張特性の確認を行います。一部については部材レベルの変形性能についての確認を行います。
 4つ目として、これらの成果をもとに、例えば湿式外装材の設計方法、性能評価のための標準試験方法、材料や工法を選定するための技術資料など、耐震安全性に関わる各種技術資料を策定いたします。

・ 2つ目の研究目標として挙げている地震後の湿式外装材の健全性を評価する方法につきましては、まず24年度に被害調査および文献調査を行い、使用されている材料や工法の確認と分類、それから、特に被害が大きかった状況の確認を行います。次にこれらを構造方式や形状ごとに分類、整理し、被害状況の分類を行います。これら分類、整理の結果をもとに、最終的に湿式外装材の健全性の診断方法の策定を行いたいと考えております。

・ 本研究の成果としましては、先ほどから申し上げているように、1,湿式外装材の耐震安全性を考慮した剥落防止のための技術基準類の確立、2,地震後の湿式外装材の健全性を評価する方法の確立、の2つです。

・ 最後に成果の活用についてご説明いたします。設計への活用と健全性評価への活用の2つを考えております。設計の方は、例えば建築基準法に基づく告示などへの反映とか、学協会などの技術ガイドラインへの反映、また官庁営繕等の標準仕様書とか耐震計画基準などへの反映を想定しております。これらによって、従来1,000分の1以下でも補修が必要だった外装材については、1000分の1以上でも無被害、できれば従来大規模な補修が必要だった外装材についても部分的な補修にとどめることができるような効果・成果にしていきたいと考えております。
 また、健全性評価につきましては、法12条の健全性評価を緊急に実施する場合の技術基準、例えばどのような状況、方法で実施するかを示すことが必要と考えております。また、応急危険度判定マニュアルなどにつきましては、現在はA、B、Cというランクがありますが、判断が非常に難しいため、これを明確化するための方法を示していきたいと考えております。
 以上で説明を終わります。

【主 査】  ありがとうございました。
 それでは質疑、評価のための意見ということで、10分弱設けたいと思いますので、委員方、ご質問や意見をお願いいたします。いかがでございましょうか。ございませんか。○○委員、お願いします。

【委 員】  私もかなり近い研究を実施しておりますが、本研究は非常に興味深い課題であると認識しております。ただ、何か技術的な答えが見つかっているのかどうかが気になります。つまり、評価基準は多分整備できるとは思いますが、その評価基準をクリアできる技術的な工法とかにある程度の見通しがあれば、この研究は順調に進み、研究成果も普及していくと考えられます。その辺り見通しがあればお聞かせいただきたいと思います。対象が湿式外装材ということですが、湿式にあくまでこだわるのかどうか、湿式と言っても、弾性的な接着材料までも対象として、研究開発のような指導を民間に対して行っていこうということになるのでしょうか。その辺りが見通しがあれば、お聞きしたいと思います。

【主 査】  いかがでございましょうか。どうぞ。

【国総研】  今ここで挙げております層間変形角で1,000分の1とか200分の1というような技術基準は仮のものとして挙げております。今、検討されている技術基準で言うと、例えば有機系接着剤を使用したものではせん断性能というのがありますが、従来の学会基準とか、現行の営繕の仕様書といったものには、せん断性能というような考え方は取り入れられていません。
 想定している層間変位角の基準を満足するようなものが具体的にあるのかどうかというご質問ですが、本研究では外装材の剥落防止のための工法や材料の開発を行うわけではありませんが、可能性として有機系接着剤を使用したものがあるだろうと考えております。また、80年代のものに比べると、工法の名称だけでなく、下地のつくり方とかについてもかなり改善はされてきております。その全てが、例えば層間変位角200分の1の変形に耐えられるかどうかはこれから調査していきますが、一部については変形に耐えうるとのデータがあります。ただ、どれだけの数の外装材が対応できるかということについては、まだ把握し切れておりません。

【主 査】  よろしいですか。

【委 員】  はい。

【主 査】  では、他の委員方いかがでございましょうか。どうぞ。

【委 員】  まず最初はシンプルな質問です。最初のスライドの説明のところでマンションのストック数からこういう研究が重要なのだというご説明があったのですが、今回この研究は、そういういわゆるマンションに限られるのか、それとも一般の例えばオフィスビルとか様々同じ状況にあると思うのですが、含められるのでしょうか。その対象の範囲というのがいま一つちょっとよくわからなかったので教えてください。

【国総研】  本研究で検討するのは、共同住宅だけではなく、外壁に湿式外装材を施しているもの全般について考えております。全国すべての建物を対象とした調査結果がないものですから、今日お見せしたのは、国交省が行った調査データを参照として提示させていただいております。

【委 員】  2つ目の質問は、研究の目的として2つ掲げられていて、1つは湿式外装材の剥落防止のための技術基準類の確立、もう一つは震災後の健全性評価ということです。素朴に思うのは、新築する際にどういう方法にすればいいのかという技術が求められているとか、震災の後にその健全性を評価するというのは大変重要だと思うのですが、その中間にあたる、要するに管理のあり方によって、全く当初期待していた、例えば外装材の剥落の安全性が全くそのようにはならないとか、あるいは震災の結果でも、例えば同じ初期条件であったものが管理の状況とか、いろいろな条件によって全然違った結果になっているということがあるのではないかと思うのです。日本の状況から考えると、これから新築のものがたくさんできてくるというよりも、むしろ、そこから先の維持管理、保全の仕方とか、あるいは改修の仕方みたいなことがこの技術的な安全性を確保するということと、どのように関係があるのかということがより重要なような気がするのですが、その辺についてはどのように扱われるのかというのをお聞きしたいと。

【国総研】  今、○○委員がお話しされたのは、冒頭お話ししたこの図2にあります。この図は劣化による外装材の剥落危険性を示したものだと思います。今回検討する内容には直接的に劣化は含まれておりません。劣化現象は下地の材料とか工法によって変わってきますし、環境によっても変わってくるため、今回の研究ではこれら劣化要因の部分の検討を考えておりません。しかし、従来はこういう湿式外装材の性能評価に関して統一的な方法がありませんでしたが、外装材についても建築基準法の8条の中で、外装材だけではありませんが、常時適法な状態に保つことになっています。それを担保する方法として12条で定期検査みたいなものを行っているわけですが、劣化の仕方は各条件で異なりますので、定期検査の段階でここに挙げているような標準試験方法、現在は引張試験しか行っていませんが、例えばせん断試験等を行うことによって、設計段階での性能と比較を行うことができます。設計段階の性能というのは研究室や試験機関等で試験、検査することになると思いますが、標準試験の一部は材料レベル、施工レベルで言うと、現場でも適用できる方法だと考えております。実際にせん断試験や引張試験などは一部の現場で応用されておりますので、標準試験が策定できればそういうものを使っていただいて評価してもらう。そして、設計、施工当初の性能を発揮しているのかどうかを確認してもらう。そういうような検査方法を、12条などに組み入れていければとは考えております。

【主 査】  あと1つぐらい評価の前にご質問をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

【委 員】  追加でいいですか。

【主 査】  はい。どうぞ。

【委 員】  今の経年劣化の話ですが、実際に地震に遭うときの建築物は新築でないことが多いので、経年劣化した後の耐震安全性が本当は求められるのではないかなと思いますので、その観点は残しておいていただくのがいいのかと思います。
 それから、今までに開発されてきた技術、工法については、やはり経済性とか工法の容易性という観点も重要で、それらへの配慮もなされて普及してきていると思いますので、無理な技術で無理やり耐震安全性を確保するというのではなく、剥落防止についてはフェイルセーフ的なものも含めて、総合的に外壁の耐震安全性の答えが出てくれば非常にいいと思います。
 以上です。

【主 査】  ありがとうございます。
 それでは皆様、恐縮でございますが、コメントシートの方のご記入もお願いいたします。それで記入の終わりました委員につきましては、シートをご提出いただいた上で、もしご質問がまだございましたらば、是非お願いしたいと思います。

【委 員】  では、1点。

【主 査】  ○○委員、どうぞ。

【委 員】  建築の分野は素人なので教えていただきたいのですが、結局は地震動の外力をどこに設定するかにすごく依存してしまうのではないかなと思って聞いていたのですが、外力をどこに設定するかの議論はこの研究の中には含まれないのですか。

【国総研】  地震動の外力をどこに設定するかというのは、例えば、層間変形角を何分の1に設定するか、というようなご質問でしょうか。

【委 員】  はい。

【国総研】  構造躯体は今回の震災でも多くが健全でした。ところが、外装材については非常に問題がありましたが、外装材の検討だけではなかなか安全性の物理量を示せません。ここで挙げております200分の1というのは、施行令の方で躯体の層間変位角の1つの目安として200分の1以内であることを確認していなければならないというような記述がありますので、1つの例として200分の1を説明させていただきました。
 この研究で、外力の数値を外装材については個別に幾つにします、というようなところは検討外と考えております。実際には200分の1をすべてがクリアするというのはなかなか難しいと思います。先ほどご説明したように1,000分の1以下でもかなりの被害が出ているものもあります。その中には施工不良も含まれています。建物の重要性みたいな形で工夫するのも一つの案と考えております。

【委 員】  ありがとうございました。

【主 査】  ありがとうございます。
 それでは議論も尽きないところでございますが、時間も限られておりますので、この辺で評価の取りまとめを行いたいと思います。今、質疑応答をしていただいている間にご記入いただきまして、私の手元に評価シートが参りました。委員方のご評価でございますが、すべてのご評価が実施すべきというご評価でございます。
 ただ、今議論でも異口同音にございましたように、現在、新築とストックの比率等々を考えていきますと、既存建物に関するこの外装材の安全性評価ということ、大変委員方、気にしていらっしゃいますので、やはり経年変化を含めた耐震安全性の評価、工法ということを、スコープをむしろ広げるべきではないかといったご意見を評価シートの中ではいただいておりますので、これからつくる建物についての湿式工法についてこういう基準があり、そしてその基準を満たすためには、こういう具体的な技術な解があるよということも掴んでいくことも大事だとは思いますが、一方、圧倒的に数の多い湿式系と思われる外装材の劣化、あるいは耐震性の評価についての知見も是非入れていただきたいというようなご意見が半数以上の委員の先生からいただいておりますので、是非ご考慮いただければと思います。
 以上のような形でこの評価を取りまとめたいと思いますが、委員方いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。ありがとうございました。それでは、今申し上げました意見などを研究を進める上での参考にしていただければと思います。どうもありがとうございました。

【国総研】  ありがとうございました。

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【主 査】  それでは、続きまして第2番目の課題の評価に移りたいと思います。第2番目の課題でございますが、建物火災時における避難安全性能の算定法と目標水準に関する研究でございます。
 それではご説明をお願いいたします。

【国総研】  建築研究部の○○からご説明させていただきます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ それでは早速、内容についてご説明させていただきます。まず研究の背景ですが、大きく3点ございます。建築物の火災安全をめぐる社会状況ということで、高齢化を迎えております。その結果、今後避難能力の劣る高齢者の増加によって、火災による死傷者の増加が見込まれる状況でございます。それから建築基準法で規定していない用途が既に幾つか出ておりまして、今後も増加するであろうと予想されます。実際に大阪の個室ビデオ店でも火災が起きておりまして多くの死傷者を出しております。
 また、既存不適格建築が放置されているという現状がございます。なかなか解消しようとすると現行規定に適用しなければいけないということで、少しハードルが高いものですのでそのまま放置される。そうすると、避難安全性能もどういったレベルの性能を有しているのかということがはっきりしないという状況がございます。こういったことから、潜在していた避難安全上の問題が顕在化してきているということが言えます。建物特性・在館者特性に応じた避難安全性能の確保が重要であると言えます。

・ 2つ目の背景としましては、性能規定化への建築基準法改正の動向でございます。現行の防火・避難規定について言いますと仕様規定が主体でございまして、設計の仕様が限定されまして新技術が導入しにくいという状況がございます。また、性能規定が平成12年に一部導入されているのですが、さらなる性能規定化の必要性があります。また、規定全体が複雑化しているということもありまして、性能規定化に向けて現在、法体系の整理に向けた議論が進んでいる状況でございます。

・ 3つ目の背景といたしましては、世界各国における防火避難機能の動向でございます。先進国を中心にしまして性能規定化が進行しているという状況がございます。また、性能規定化をさらに前進させるために火災リスクを評価して、それを取り組むという動きがございます。これはまだ十分ではありませんが、こういった動きがあるということですね。国際基準に関しましてもISO、TC92の中でこういったリスクに関する検討が進んでおりますし、また現状では各国とも研究の段階にあるという状況でございます。
 次に本研究の目的についてご説明したいと思います。合理的な避難安全性能の確保に向けて建築物の避難安全上の問題を把握すること、それから、建築物が備えるべき安全性能を明確にすること、新技術も含めた実態に見合った対策の導入を促進すること、こういうことが重要であると考えております。そのためには避難安全性能の定量化と目標水準を定めるということが不可欠であると言えます。

・ 本研究では、避難安全性能の定量化の指標としましては火災リスクを用いるということを想定してございます。火災リスクは、想定している火災条件ごとの発生確率、それと死傷者数を掛けたものをすべて足し合わせたという指標でございます。これ以降、火災リスクというものを避難安全性能の指標ということで説明させていただきます。合理的な避難安全性能の確保のためには、1つ目としまして火災リスクの算定法をきちんと開発するということ。それから2点目としまして避難安全性能の目標水準を提示するということが本研究の2つの目的でございます。

・ 具体的に研究の内容をご説明させていただきます。火災リスクの算定法の開発の部分では、まず全体のフレームワークを構築するという作業を想定してございます。このスライドには最終的なイメージということで整理をした結果を示しております。建物条件、それから想定火災条件、避難安全検証という3つの部分からなっております。建物条件はリスク算定に必要な建物条件の抽出をする部分でございます。面積ですとか階数、それから用途、避難経路ですとか煙制御設備、こういったものがこの中に含まれる。それから、想定火災条件ですが、想定火災条件の発生確率を算定するということで、例えば煙制御の設備、排煙設備が働くのか働かないのか、あるいは火源規模としてどういう火源になるのか、そこで避難をする人たちはどういう属性なのかという全体のパッケージがどの割合、どういう確率で発生するのかということを検討する部分でございます。
 それから避難安全検証の部分につきましては、従来の検証と同様の決定論的避難安全検証をする部分でございます。煙がどうおりてくるのか、それから人がどう逃げるのかということで実際に死傷者が出ておりますので、この部分の判定基準を検討するという部分でございます。発生確率と死傷者数の特定ができますと、火災リスクが算定できるということですので、それぞれを検討していくということになります。具体的な作業項目ですけれども、大きくは統計データの調査、それから、実験による検討という2つに分けられます。統計データの調査は@、A、Bと3つございます。それぞれ建物条件、想定火災条件、避難検証という部分に関係するもの、それから実験等による検討は想定火災条件と避難安全検証に関する部分でございます。

・ 少し具体的にご説明したいと思います。統計データの調査ですが、1番目としましてリスク要因となる建物データを抽出するということで、死傷者が発生者した実火災事例において、建物諸元等の項目を抽出するということで、火災報告のデータを使用してデータの抽出を行っていくという予定でございます。
 2番目としまして想定火災条件の発生確率の算定ですが、火源の発生規模ですとか煙制御設備の作動、それから避難特性に関して発生確率に関する要因を抽出するということで、火災報告と定期検査報告ということで、検査の結果、作動するのかしないのかということを要因としまして、この部分で整理していくという予定でございます。
 3番目の死傷者数特定のための基準の推計ですが、実火災時の死傷者発生状況を考慮するために避難安全検証における死傷者数を特定する基準を推定します。これは火災報告のほかに過去に起きました大きな火災報告というものについて調査をするということで、リスク要因、発生確率、死傷者特定基準に関する調査を統計データをもとに行うということでございます。

・ それから4つ目ですが、実験による検討でございます。統計から得られる情報というのは、ここにもありますとおり、例えば焼損床面積、燃焼継続時間というデータはあるのですが、火災の現象はもともと燃焼によって出た熱によって現象がすべて支配されます。この中では床面積ということで面積は分かるのですが、この面積からどういう形で熱が出たのかということを調べる必要がございます。ですので床面積、例えばここで病院の事例を挙げているのですが、こういう空間の床面積当たりどういう熱が出ますかということについて調べていかないといけないということが1点、それからもう一つは、統計から得られる情報としまして、どうしてもデータ数が不足する用途が見込まれます。こういったものについては実験を行って燃焼拡大のモデルをつくっていくという2つの項目を検討する予定でございます。

・ それから5番目としましては、避難に関する部分でございます。現行の避難開始時間、どの時点で人が逃げるかというものの扱いですが、例えば検証法の中で言いますと、出火室以外は、一律出火してから3分たった時点で避難をしますという想定をしています。あるいは煙の数値計算、煙がどう流動するのか、流れていくのかという計算をするときには、例えば天井高さの10%の煙がたまった時点で火災だと気づくということを想定しています。そのほか感知器等の性能によるものもありますが、こういったことを火源規模ですとか空間規模を変数としまして、煙流動及び火災感知器の性能に応じて実験を行って、どういう時点で感知器が作動して火災だと気づいて逃げ始めるのかということについて、実験的な検討を予定してございます。

・ それから本研究の目的の2つ目でございます。避難安全性能の目標水準を提示するということですが、現行規定で達成される火災リスクを算定します。具体的な用途毎の火災リスクを算定するのですが、面積ですとか階数等によってどういった影響があるのか、それから在館者の特性、そういった要因によってどういったリスクに影響があるのかということについて検討いたします。
 次に目標水準を提示するということで、現行法の基準の中でどういったレベルのリスクが確保されているのかということについて、この中で明らかにするということです。ここは高齢化、あるいは避難弱者ということで見込まれますので、こういった目標水準をもとに必要な対策を検討していくということでございます。それから研究成果の活用の例示ということで、新しい技術をどう適用できるようにするかというフレームワークの部分についての検討をいたします。

・ 期待される成果と活用を再度示します。本研究の成果はリスクの算定法の確立と目標水準を提示することでございます。成果の活用としましては、建築基準法の改正、それから、性能規定化への反映ということで考えております。ですので、この研究の適用範囲としましては必要な用途に応じたリスクが算定できるということを目指しております。それから社会的な効果としましては、建築形態、在館者特性のリスク要因に応じた避難安全対策の合理的な選択が可能になる、新技術の導入促進による設計自由度が増す、建設コストの最適化が図られるということが期待できます。

・ 研究実施体制ですが、本省の住宅局建築指導課とは法改正も含めた情報交換をするということ、それから外部機関につきましては日本火災学会、それから独立行政法人建築研究所と情報交換、研究ベースの情報交換をしていくという予定でございます。それから情報発信としましてはISO、TC92のSC4の中で、この研究成果については積極的に発信をしていくという予定でございます。
 以上です。

【主 査】  ありがとうございました。
 それでは皆様のこの研究に対する質疑や評価意見をお願いいたします。ご自由にお願いいたします。

【委 員】  こういう避難安全性について、今まである程度確立されてきたところに、今回特に、日本の状況で言うと高齢化の問題で見直すというのは大変意義のあることだと思います。ただその時に私がすごく思いますのは、建物側だけの安全性の問題ではないというヒューマンファクターの問題を今回どのように入れ込むのかというのが問われているのではないかと思います。
 それで、今日ご説明いただいた資料で手短にどこが気になるのかというのを申し上げます。2ページのところでたまたま札幌のグループホームの死亡事故が出ていますが、これは福祉の分野のいろいろな基準で人の配置が夜間は9人に対して1人しかいないわけですね。私の聞くところ、そういう状況に対して開放型のストーブの周りに洗濯物を干していて、それが倒れてという通常想定外の利用のされ方をして、なおかつ認知症の人がここに入居しているわけですから、そういう人を救出する人手が全く足りなかったという案件です。住んでいる人の条件とそれをサポートする側の人の条件という2種類のヒューマンファクターが大きく作用したということです。
 それからもう一つ、この前に長崎でグループホームの事故があったのですが、それは非常に立地が市街地から離れて、消防車がどこに行っていいのか分からないという、そういうところに立地していたということです。非常に建物だけでは補いがたい条件があったというところがどうやって今回反映されるのかというのに関心があります。
 そういう意味で7ページのところにリスク要因となる建物データの抽出というところがあるのですが、実は福祉の方の建物で言うと2003年に抜本的に変えていて、それ以前は特別養護老人ホームだと、1ベッド1室に4人までオーケーでした。それを原則全室個室にしたわけですが、建築的に見ると面積が広がって、全部個室なのでドアを開けなければいけないのですが、実はケアをする方の人員配置は全然基準は変わっていないんです。ですから、パラメータで見ると、大きく建物の条件が変わっているのに、救出する側の人のサポート条件は前後で全く変化がないということになります。そういうようなことが今回のこのリスク評定をするときにどう影響をするのかというのも重要ではないかと思います。
 最後の1点は、9ページ目のところに実験をされるということなのですが、これは実は認知症の人とか、それから知的・精神の障害の人はコミュニケーション障害というのが大前提なので、アンケートとかそういうような通常のやり方では状況が把握できないんですね。ですから物言わぬ人、コメントできない人の特性をどうやって把握するのかという辺りも、少し細かいですが私としては非常に重要だと思うのでそういうところをセンシティブに切り込んでいただくと、これは世界初の大変意義のある研究になるのではないかと思います。

【主 査】  ありがとうございます。

【委 員】  私も○○委員と同じような印象を持ったのですが、最初の冒頭の研究の背景としてこの高齢化であるとか、あるいは既存不適格とかそういうような新しい社会的状況に対応した火災リスクの安全性を考えるという観点でおっしゃられたのですが、そうしますとやっぱり建物としてどういうものに的を絞るかというのは、高齢者が常時滞在するような施設なのか、高齢者が比較的これから利用度が高まるような施設かによっても大分違うと思いますし、それから既存不適格といってもどういう観点の既存不適格に着目するかによって、既存不適格といってもものすごい対象が多過ぎますから、どこかこの研究でどういうものにはまず非常にターゲットを絞るとか、そうされないと膨大に考える要素があり過ぎるような気がするので、この研究ではここは特に着目してやられるとかという、そういう何か的絞りをされた方が私としてはすごく有用な研究ですし、良い成果が出るのではないかなという印象を持ちました。

【主 査】  ありがとうございます。

【委 員】  ○○委員の意見と逆の話になってしまうかもしれないのですが、今回想定する燃え草は、持ち込まれた家具というようなことなのかなと思うのですが、公共建築物木造利用促進法が施行されて内装制限の問題というか、多分そこまで広げるべきではないのかなとも思いつつ、要は木質内装側が燃えしろになり得るような想定は今回は扱わないかどうかといった辺りもお考えがあれば。

【国総研】  内装に関しましては、基本的に今の検証法、安全に逃げられるかどうかという方法があるのですが、その中でも可燃材料という形での評価はできております。木造利用という観点で内装に木材を使うということで、従来と少し違うつまりは比較的薄い木材を想定していたものが少し厚いもの、燃える燃え方が少し違うものが使われるということが予想されますので、そういったことについては直接この研究の中でやるのではないのですが、そういった検討は別途の研究で検討しておりますので、そういった知見が得られれば、その内容をこの中に入れて検討していきたいと思っております。

【主 査】  よろしゅうございますか○○委員。はい、他には何か。○○委員、お願いいたします。

【委 員】  火災に関しても、既存建築物に対しての防火性がかなり重要であるというのは間違いないと思います。新築ですと、違法とか不適格というわけではなく適法な状態であり、火災の発生確率も死傷者もかなり抑えられている状況にあるためリスクは低いと思いますが、既存のものでは使い方がよくなかったり用途変更があったりと、リスクが増加していると思います。
 そういう意味で、火災の発生確率とか死傷者を特定されるときには、当然現存する建築が対象になると想像できますが、違法であったり不適格であったりすると火災の発生確率が増加すると予想されます。その場合、建築基準法の改正も視野に入れているのでしょうか。例えば8条には、所有者は適正な状態に建築物を保たなければいけないという規定がありますが、罰則規定がなく、本当に現在のストックが安全かどうか、国はコントロールできているのかどうか、疑問に思ったりしますが、建築基準法への反映は考えられているのでしょうか。

【国総研】  制度そのものというのは具体に考えているわけではないのですが、例えば既存不適格の問題にしますと、結局、今リスクを考える中で、例えばある設備が働かない、つけたのだけれども働かないという確率があるという場合を想定しますと、もともとなかった、現象としては同じことが起きています。ですので、細かくリスクの1つ1つ、この想定火災条件、例えば排煙設備を設けたのですが働きませんでしたという場合があったとすると、もともと排煙設備がない建物と状況は同じになります。
 それが法律で要求される前に建物が建って、排煙設備を設けていなかったとすると、それが既存不適格の建築になるのですが、リスクを考える上ではその状況というのはケースとしては考えられています。ただ、発生確率としてどこまでだろうかという議論がありますので、その点については、すべて考慮されていますというのはなかなか言いにくい部分があるとは思うのですが、一応、既存不適格の問題もケースとしては考えているということです。

【委 員】  法的にと申し上げたのは言い過ぎているかもしれませんが、法律でというわけではなく、国としての方向性を示すものができあがり、その方向に建築所有者がうまく誘導されればいいと思います。

【国総研】  今、既存不適格だとしても、それが初めのスライドのところで示したのですが、どういう性能を持っているのか、例えば法律で要求されているものがないのだけれども、ないなりにどういう性能を有しているのか、避難上少しぐらい避難安全性能が落ちているのか、いやとても危険な状態ですという、そのものの議論がどうしても定量的にできないとなかなか議論がかみ合わないところがございますので、この研究の中では、まずはそこを定量化して議論をする中での、合理的に議論が進むようなことを想定して算定法を検討するということを予定しております。

【委 員】  少し分野外ということもあって的外れかもしれないのですが、この研究自体は非常に有用な研究だと思いました。それで、その中で例えば消防署の方の立ち入りをして、そのときに避難安全度の評価みたいなのが簡単にできるような、そういうような評価システムみたいなものができると非常にありがたいなと思ったことと、あともう一つは仮にそうした場合に、こういうところを改善しましょうということを指導されたときに、その改善効果が計量できる、このようなシステムを通して火災リスクを定量的に評価することによって、そういった改善効果がだれでも評価できるような仕組みがもしできれば、非常に普及もしやすいのではないかと少し思ったのですが、特に例えばいろいろな企業さんにとってもBCPを策定する際にいろいろ改善をするのですけれども、なかなかその改善のどの程度改善されたかというのが目に見えないということもありますので、そういう点で役立つと非常にありがたいと思いました。

【主 査】  ○○委員、ございますか。

【委 員】  大丈夫です。

【国総研】  少しよろしいですか。先ほど○○委員のご質問に対してお答えしていなかったので、こちらの方の考え方を少し説明させていただきたいと思います。基本的にはこの研究ではリスクというものを定量的に評価してやって、そのように評価すると新たな適用対象について、いろいろと検討していくとこういうものについては、法令化してより絞った形で実際には使い方をオープンに、もう少し緩やかにできるだろうというものを行政側と相談しながら進めていく。それは次のステップかなと考えていて、こちらではどのようにして評価をするかというところ辺りまでやっていって、その辺りから行政とコミュニケーションしながら、どういう対象だったら適用できるかなという辺りを考えていく。それは○○委員のコメントとも同じような形で、その辺で行政側とコミュニケーションしながら、どの辺りまで適用できるかというのを考えていくという形の進め方かなと考えております。

【主 査】  ありがとうございます。ご説明ありがとうございました。
 今、私の手元に委員方にからいただきましたシートが集まりましたので、評価の取りまとめをしたいと思います。委員方のご評価は、すべての委員方が実施すべきというご評価をしていただいております。重点的に実施すべきものだと思われます。ただ、いろいろとコメントをいただいておりますが、それを取り急ぎ整理させていただきますと、まず、今、ご意見等にもございましたように、あいまいもことしたこの性能を定量化して示すという意義につきましては、皆様お認めいただいているというように思います。それでこの研究の背景としてご説明もございましたように、全世界での性能規定化の流れとともに、我が国では高齢化が進んでいるということ、そしてまた一方では建物の方の高齢化も進んで、既存不適格が相当数あるという条件が2つある。その中でこのファクターをつくっていらっしゃいますので、まず研究上のご心配としては非常にシミュレーション等、あるいはリスク評価をするにしてもパラメータが多いので、チャレンジングしてたくさんのパラメータが解けたシミュレーションができるのは、それはそれでチャレンジングだし、出来ればそれは良いというご意見もこの中にいただいておりますし、そうではなくて、ある程度割り切って対象を絞るべきではないかというご意見も、まず研究実施上では、ここでいただいておりますそれと、ともにやはりインジケータを出すのであれば適用対象をこれから新築建築基準法の主たる対象である新築ではなくて、既存、8条、12条をどうするかはともかく、その8条、12条を含めた既存の方にも適用してリスクを定量的に評価していくといいのではないかというような意見が出ております。
 一方ヒューマンファクターについてのご指摘、○○委員を含めいただいておりますけれども、私も全くそのとおりに思いまして、リスクを評価するときにヒューマンファクターをどう入れるかということ、また市街地の立地によって消防力も違いますので、消火力といいましょうか、という状況もどうあるかということもありますが、まず評価の中でヒューマンファクターをどう入れるかということとともに、じゃあ、一応その価値中立的なインジケータができてきて、リスクが評価できたとしてもどこに設定すべきかということでまたこれでヒューマンファクターを考えていくというので、二重にリスク評価をする時と最終的にまた一律的に決められないところもあるので、そういう意味でヒューマンファクターをどうするかということを是非お考えいただいた方が良いし、そうしないと大変重装備な備えをしないと、この社会的に受容できるリスク以下に抑えることができないということになると大変な現実性を欠いてしまうのではないかというようなご心配もここにございますので、今申し上げたようなご意見を参考にこの研究を進めていただけたらと思います。
 以上のような取りまとめをしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。それでは、この第2番目の課題につきましての評価を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

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【主 査】  では、続きまして3つ目の課題につきましての評価を始めたいと思います。課題名は、沿岸都市の防災構造化支援技術に関する研究でございます。それではご説明をお願いいたします。

【国総研】  都市研究部でございます。課題名、「沿岸都市の防災構造化支援技術に関する研究」ということで、都市研究部と総合技術政策研究センター共同で準備を進めてきたものでございます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ まずこの研究の背景でございますが、今回の東日本大震災における被害、多くは申しませんが津波による大きな被害、あるいは広範囲にわたる宅地の液状化という問題が発生してございます。今後、国としてどう考えるかというときに、この下にございますが、中央防災会議専門調査会の提言に端的にあらわれていると思っております。住民の生命を最優先として行政機能、病院等最低限の社会経済機能を維持する。このため住民の避難を軸に土地利用、避難施設、防災施設等の総合的な津波対策を確立するということでございまして、これを都市政策としても強く受けとめて今後展開していかなければいけないと、このように考えてございます。

・ そこで今回の研究の目的でございますが、将来の巨大地震で被災のおそれがある、復興対策は着実に進んでいるところでございますが、こちらの研究といたしましては、東南海、東海、南海、これから大きな地震で被災のおそれがある地域で、どうやって災害に強い都市づくりをしていくかということを念頭に置いた研究にしていきたいと考えております。その際に防災対策としてでございますが、先ほども申し上げましたような大きな被害を考えますと、住民の迅速・円滑な避難、被災時の都市機能の維持、そして宅地の液状化、こういった問題に対する対策の充実が非常に重要だと思ってございまして、これらの対策に関します、国の指針や技術基準類に必要な計画手法や技術的データの整備、これに取り組んでいきたいと考えてございます。

・ そこで今回の震災に着目した問題と本研究での取り組み、先に全体の研究の流れをご説明したいと思っております。まず発生した問題点といたしましては、やはり避難の問題、そして防災拠点施設、機能がかなり損なわれたという問題、そして宅地の液状化被害が広範囲に発生したという3つの課題をとらえまして、必要な対策といたしまして避難対策や都市機能の維持、そして既造成地に対する液状化対策、この3つを重点的に取り組んでまいりまして、沿岸都市の防災構造化につなげていきたいということでございます。それに沿いまして研究内容はこの3点を掲げております。まず、避難安全性に基づく市街地整備計画の手法、そして防災拠点機能のリダンダンシー確保手法、そして宅地の液状化対策基準、これの根拠データの整備、こういった取り組みを考えています。

・ それらの研究の成果をどう活かすかということでございますけれども、この成果の活用方針にございますように、まずは国の技術指針類でございまして、防災都市づくりの計画を策定する。これを都市局で進めてございますが、その指針というものを今、充実させようとしてございます。それにこの成果がまとまった段階でも反映をしていきたいということでございまして、当然そういった計画の中には住民の円滑な避難や防災拠点機能の維持、そして宅地の液状化対策、こういったものがさらに位置づけられてまいりますので、そこにこの研究の成果を活かしていくというのが1つでございます。
 そして宅地の液状化の関係ですが、宅地防災マニュアルとその解説というものがございます。当然これの見直しも行われることになりますので、そちらにここでの知見を反映させていくということを目指しております。そういった国における成果の活用を通しまして、自治体におけます防災都市づくり計画等の充実が図られていくということを是非目指していきたいと思っております。

・ ここで私どもが考えております沿岸都市の防災構造化、どういったものをイメージしているかということでございますが、これは都市を非常に粗々で模式図的にしたものでございますが、ここで実際に今後に向けての計画を作ろうという時にこういったメニューを実態に合わせて組み合わせていくという作業が行われることになると思っております。例えば避難の関係でいけば一部高台移転とか、避難路の整備とか、あるいは沿道の耐震化、難燃化、避難ビル等の整備、こういったメニューが出てまいりますし、一方で防災拠点機能の維持ということでまいりますと、役場等の災害拠点施設の移転、あるいはバックアップ機能の確保、そして病院等の災害時の拠点となるような施設の耐震化対策の実施、あるいは海沿い、河川沿いの軟弱地盤に対しましては液状化対策を災害の抑制ということでの予防的な実施というものがメニューとして考えられる。このように考えております。
 以上が全体の研究の流れでございまして、以下個別の研究テーマにつきましてご説明をしたいと思います。

・ まず、津波避難安全性能に基づく市街地整備計画手法でございますが、これについては、まず津波の避難のシミュレータというものを実用に供するものを是非用意したいと思ってございまして、手元には今、都市研究部で市街地の火災避難の関係のシミュレーションを持っているわけでございますが、それを津波対策向けにさらに充実させるということを是非やっていきたいと思っております。これにはシミュレータのところに書いてございますが、火災避難モデルに車での移動も、特に地方に行きますと何らかの考慮をせざるを得ない状況でございますので、車両交通モデルとか、あるいは津波の遡上モデル、こういったものを組み合わせてシミュレーションしていく。
 そこに右側にございますように実際の津波避難行動が今回どうであったかということについても実際の調査のかなり知見が得られますので、そういったものをモデルに組み込んだりということでシミュレーションをしてまいります。この結果といたしまして、真ん中にございますように避難上の重要路線がどこかとか、あるいは実際に避難を進めようとしたときに渋滞してしまうような箇所がどこにありそうかとか、あるいは避難所の容量が不足するような場所はどこか、あるいは非常に重要なところですが、避難困難者が出てしまいそうなエリアがどこにあるかというようなことをあぶり出しをいたしまして、その後の一番右になりますが、いろいろな計画策定のメニュー、こういったものを組み合わせて計画づくりに活かしていくという手順になろうかと考えているところでございます。当然アウトプットといたしまして、その避難困難人口これをいかに減らすかということが最大の目的でございます。

・ 次に2番目のテーマでございますが、防災拠点機能のリダンダンシー確保手法ということでございます。一番上にありますように、今回の災害で役場とか避難所、あるいは医療・救急施設等の災害時の防災拠点になり得る施設もかなりの被害を受けまして、一部の機能が損なわれたり、あるいは物資の配給が途絶したりといった問題が発生いたしております。こういった問題にどう備えるかということで、まず今回の被災都市における調査をいたします。実際に拠点施設がどういう被害を受けてどういう面で支障があったか、それを回復の過程でどういう工夫をしたか、そういったところをまず押さえたいというのが一番でございます。そして実際の都市で想定される津波を前提としたときに、どういった施設がどのぐらい機能を損なわれそうかといったこともケーススタディーを行いたいと思います。
 そして、一方で既存の各施設の分野でどういったリダンダンシー確保の考え方をしているか、これについては例えば病院だったり、学校だったり、それぞれの施設でそういった考え方の整理が現行のものがありますが、そういったものを横並び的に見ながら、これについても確保の考え方を抽出していくという作業をしたいと思います。それらを積み重ねましてCになりますが、いろいろな対策・技術のメニューが並んでくると思いますが、そういったものがどういった場面で適用の可能性が高いか、それが有効であるかということについての評価をする、その手順についての検討を進めていきまして、Dでございますように各対策を都市レベルでどうやって組み合わせていくことが、その都市全体でそういった災害時に必要な機能を確保するという目的にかなうかということでの手順の検討をしたいと、このように考えております。

・ 以上が津波対策でございますが、この後は宅地の液状化対策についてでございます。今回の研究内容の前段にございますけれども、国の技術基準類が未整備なところがあるということでございます。なかなか人命に影響があまり出ないということもございまして、宅地防災マニュアル等におきましては、まだ具体的な数値基準が整備されておりませんが、そういったものがそのままでいいのかというのがまず1番目でございます。2番目は既造成地の液状化対策ということで、既に住宅が建ってしまったところでどういった対策を予防的に打てるかということについて考えておく必要があるということで、この2点についての問題意識を持ってございます。

・ 最初に液状化対策の数値基準でございますが、その具体的な数値基準を是非示していきたいということで、まず基準としてどういうイメージがあり得るかということでございますが、要求性能はここに書いてあるとおりになるかと思いますが、メルクマールとして、まずどういう設定をするか。ここでは仮置きでございますが、例えば平均沈下量をこのぐらいに抑えるというような、まずメルクマールを設定いたしまして、工法別に、もちろん地盤によって変わってくるわけでございますが、いろいろな対策工法がございますが、工法によってどんな仕様としての基準があり得るかということについて検討をしたいということでございます。

・ その検討の方法でございますが、今回は実態として沈下量が測れるものが、非常に多くのデータを得られるということが通常での研究と違っているところでございまして、特にここにございますように半壊100分の1以上、これは行政として支援をするかどうかというところの境目になっているわけでございますが、その境目に対しまして、一方で、電算解析でどういった地盤でどういった対策を講じていたところは被害がなかったとか、あるいはこういう工法でやったところはこの数字を超えてしまったとか、そういった実測値と電算解析での予測数値、これを照らし合わせまして数値基準の目安となるところをぜひあぶり出していきたいということでございます。

・ もう1点の宅地液状化対策でございますが、先ほど申し上げましたが、既造成宅地で耐液状化改修工法、どういったものが実用性があるか。もちろん、かなりコストも考えながらやらなければいけないと思っておりますが、個々の宅地だけに着目するのではなくて、一定の広がりがある住宅地で公共空間も使いながら、どういった工法が、もう既に建てつけ地になっている市街地に有効であるかということについて、是非いろいろな工法について、その有効性について検討をしていきたいと、このように考えております。こういった研究を進めることでぜひ沿岸都市の防災構造化の促進につながればと思ってございます。
 以上でございます。

【主 査】  ありがとうございました。
 それでは皆様、この研究に対します質疑や評価意見をお願いいたします。いかがでございましょうか。

【委 員】  今回の東日本大震災を契機にというか、非常に緊急性の高い、それで重要な研究だろうと思いますし、非常にやっていただきたい研究ではないかと思います。ただ、今までこういう防災対策に関する既存の計画なり技術というのはものすごい膨大な蓄積がありますから、それらを踏まえてこの研究の中で特にどういうところに的を絞るかというのは、お話を伺っている限りでは今回は復旧・復興の被災地ではなくて、これから起こり得ることに対して予防的な対策でといって、提案されている高台移転とか幾つかについては、なかなか理想論としてはいいかもしれないが、実は社会的、経済的な制約でそう簡単にできないとしたら、制約条件をもう少しやっぱり考慮しながら、この防災構造化をどういう中長期的な形で進めていくかという、そういう視点を持たれた方が研究の説得力があるのではないかなと思います。
 是非そういう意味での、今回、幾つかのケースを想定しながらというようにされるとしたら、限られた自治体財源の中で高台移転も、それからいろいろな避難拠点化もというのは、そんなにたくさんのメニューを全部一挙にこなせないとしたら、どこからどういう手順でやるかも含めて、少し的を絞られる方がこの研究の優位性が高まると思いますし、それから液状化対策については、これも非常に今まで手薄だったところなので、ぜひ成果を出していただければなと思っております。

【主 査】  ありがとうございました。
 他にご意見いかがでございましょうか。○○委員。

【委 員】  2点ほど。今、○○委員もおっしゃったと思うのですが、是非ケーススタディー的にこれから起こるところと最初におっしゃったので、これから起こりそうなところをチェックするようなことを最終成果として、提唱、警鐘を鳴らすところまで行けるといいのかなというのが1つ。
 もう一つは、ただ、あまり理想に走って防災、防災と言っていると、じゃあ平常時はどうなの、高台まで病院に通わなければいけないのという何かそういうことが、どうも現実と理想と乖離が生じてしまうかなというのが少し絵を見ながら思ってしまったものですから、是非その辺の現実的なところとのつながりを意識しながらご研究を進めていただければなと思います。

【主 査】  ありがとうございます。
 他にいかがでございましょうか。○○賀委員。

【委 員】  緊急かつ重要な課題ですので、是非推進していただきたいと思います。それでスライドの8番の関係なのですが、今回東北の冬に起きて、例えば学校の体育館みたいに、断熱が全くされていない建物で多くの方が病気で亡くなられたり、あと夏の熱中症が問題視されていますが、キーワードとして避難所になるような建物で最低限の断熱性を持たせるというような、それは1つは省エネ法の改正で新築の建物は強化されるわけですが、既存の建物が相変わらず取り残されてしまう。対策が手が回らないのですが、今回の震災を踏まえて、少なくともこういう拠点になるような建物の断熱改修とか、何かそんなキーワードが入っていていただけるといいかなというのがコメントです。

【主 査】  ありがとうございます。
 他にはいかがでございましょうか。○○委員。

【委 員】  津波避難のシミュレータのところで1点教えていただきたいのですが、1点というか、2点ほどですが、津波のシミュレータというのは結構いろいろなところでやられていて、それに対しての、特別にこれが、どの点がオリジナリティがあるのかということが1つ、少し弱いかなというように思うのが1点。
 そういった場合に、例えばこのパワーポイントにもあるのですが、実態に基づく津波避難行動モデルというのを入れるというようになっていますが、これ自体が実は恐らく一番難しい話で、このモデルがしっかりしていないと結果は何が出てくるか分からないということになりますので、シミュレータは答えは出てくるんだけれども、その入力のものが悪ければいいものが出てこないという、そういう大きな問題が出てくると思うんですね。だから、そのあたりを、これ3年間で全部やるような研究になっていますので、その辺りも大きな研究課題になってくるだろうとは思います。

【主 査】  今の点につきましてはご説明ございますか。オリジナリティ、それとあと現実の説明力というんでしょうか、それに関する見通しについてはいかがでしょうか。もしコメントがないようだったらば、ご参考にいただければと思いますが、ございますか。

【主 査】  はい。

【国総研】  今回のシミュレーションの売りですが、まず、今まで建物の中ではなくて市街地での市民の行動というのを、なかなか実態を把握できないということがありました。今、委員のご指摘がありましたように、市民の行動が一番難しいところなのですけれども、今回、本省の方で津波避難実態調査が行われますので、この実態の調査を踏まえていろいろな都市において、どういう属性の方が、どのような判断のもとに、どのように動いたのかということの実態が把握できます。それをきちんとパラメータとして避難者の行動ルールに落とし込んでいけるということが、1つ売りになると考えております。

【主 査】  ○○委員。

【委 員】  これまでの津波の避難の研究の中で問題点として、北海道南西沖地震の奥尻島の問題とか、地震のたびに避難行動って違うんですよね。それで、その前の地震の津波のときにはこう避難行動したからこういうような行動をするだろうというように研究をやってきたのですが、実は津波のたびに違うんですよ。だから今回、東日本大震災でこうだったからこうだというようにはならないという、そこら辺りがやっぱり大きな課題だと、我々もそう思っています。

【国総研】  他の地震で避難行動まで調査されているか分からないのですが、例えばチリ地震、最近あったチリ地震での避難の状況、奥尻もありましたが、そういった過去の実態も少し考えながら進めていきたいと思います。

【委 員】  よろしくお願いします。

【主 査】  ありがとうございました。
 他にはいかがでございましょうか。

【委 員】  単純な質問なのですが、宅地液状化対策を今回検討されるに当たって、その前提として例えば液状化にかかわるハザードマップみたいなものがあるのかどうか。私のすごく素人的な感じだと、今回、想定外に液状化の被害に遭ってしまったというようなエリアの方が非常に多いような気がするのですが、この技術的なことを検討する前に、どこがどういう被害が起きるのかということはもう既に想定されているのでしょうかという質問です。

【主 査】  いかがでしょうか。

【国総研】  既に自治体が液状化のハザードマップを公開しているところはたくさんあります。ただ今回の被害とそれがどの程度一致したかということについては、ハザードマップで液状化しそうなところの中で液状化が起こっているのだけれども、だけどそこには液状化していないところもたくさんあって、これはこれで別途液状化のメカニズムや、あるいは液状化判定法の研究として私どもではなくて他のところで行われていきます。それから、その他液状化のハザードマップについても見直しをどう考えるかというところの検討もほかでスタートしています。でも私どもはここに焦点を絞っているということでございます。

【主 査】  それでは皆様、コメントシートの方のご記入もお願いします。その上でご意見がございましたら承りたいと思いますが、いかがでしょうか。

【委 員】  液状化については、別のところで研究が進められているということのようであり、液状化対策の数値基準をメルクマールとして示される際には、両者のリンクが重要であると思います。この研究では、実験を集中的にやってメカニズムから液状化を検討していくというわけではなさそうなので、ぜひ両者の間で有効に連携を図っていただいて基準づくりをしていただければと思います。

【国総研】  はい。そのようにいたします。

【主 査】  よろしゅうございますか。それではまだご意見あるかもしれませんけれども時間が限られておりますので、この辺で取りまとめを行いたいと思います。今、評価委員方からいただきましたシートを拝見しているところでございます。評価委員の先生方につきましては、大半は実施すべきというご判断をいただいておりますが、一部修正して実施すべきというご意見もいただいております。シミュレータにつきましては、私もたまたまどこか尾鷲か何か辺りを舞台にした某ベンダーのシミュレーションを見せていただいたこともございますので、私ごときの者が知っているということは、かなりいろいろなシミュレータが各所でつくられているかと思いますので、そちらとどこが違うのか、あるいはそういったものを含めて改良するのか、ポジションをはっきりさせた方がいいということだろうと思います。
 それとあと、現実の説明力ということに重点を置くのか、それとも現実は幾つかのシナリオが想定してあって、過去いろいろなことが起きたときにどうなるのかということをさまざまに検討するツールとしてお使いになるのか、要は現実が説明できることは不確実なのだけれども、いろいろと試すことによってある程度対策を練ることができるという使い方をするのか、その辺りも明確にする必要があろうかと思います。
 またいただいておりますご意見で、この防災に関しましては常に大災害がありますと、我々の足らざるところを認識する面もあるのですが、逆にやはり知的蓄積も多くございますので、非常に大きなテーマでありますが、やはりこれに関連する過去の知的蓄積、既存研究等々ございますから、どれをきちっと利用していくのか、そしてまたどれはこのプロジェクト研究で足していくのかというところを明確にするとともに、過去の研究で使われていない研究はどうも現実としては理想論だということでございますので、この現実の制約条件を考えてこの研究をしていただきたい。場合によっては架空の都市をするよりは、具体的なケーススタディーをして、そこでの現実的な制約条件を踏まえてご研究いただくとかいうことをすることが、先生方のご注意を反映させる1つの方法ではないかなというように思います。
 また、同様にどこまで被害を減災することとともに受容するかというところにつきましても、この研究の大前提として大変大事なところでございますので、その点について受容性であるとか、あるいはそうは言っても、この都市構造を考えた場合に多重防護すべきような機能が何であるかとかいったようなことについても知見を整理していただきたいというご意見もいただいております。また、被災した後の避難施設等々の居住性についてもご配慮いただきたいということがございます。それと液状化につきましても、これもやはり地盤工学の分野で相当多くの知見があるところでございますので、その中の成果も活かしながら、この都市計画、都市運営に反映させる辺りがこの研究のオリジナルだと思いますので、そういった地盤工学の方の成果を踏まえつつ、まちづくりの方にどうそれを翻訳していくかというところに特に軸足を置いてご研究いただければいいのではないかなと思います。
 ということで、一部ご注意いただくところがございますが、総合的には実施すべきということをこの委員会の評価とさせていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。それでは、今申し上げました意見等も研究を進める上でのご参考にしていただければと思います。
 以上で今日議事を予定しておりました、3つの第二部会が担当する研究課題の評価はこれで終了となります。

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【主 査】  本日いただきました課題の評価書の作成について、本日の議事録をもとに作成したいと思います。取りまとめには恐縮でございますが、主査であります私にご一任いただくということでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【主 査】  ありがとうございます。
 ここで全体を通じてご意見等がございましたら、評価委員の方からお願いいたします。いかがでございましょうか。特にございませんか。ありがとうございます。それでは、以上で本日の議事にしております平成24年度開始予定課題の事前評価を終了させていただきます。
 あと、議事次第に戻りましてその他でございますが、本日の議事はすべて終了いたしました。委員の皆様には議事の進行にご協力いただきまして、ありがとうございました。厚く御礼申し上げたいと思います。それでは、以下の進行につきましては事務局の方にお返ししたいと思います。よろしくお願いいたします。

【事務局】  それでは、最後にその他といたしまして、今後の予定等についてご説明をさせていただきます。本日の評価結果についてですが、先ほど○○主査の方からも話がありましたが、評価書ということで主査とご相談の上で最終的にまとめをさせていただきたいと思います。
 それから議事録につきましては、別途委員の皆様方にメールで内容確認をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。それから本日の報告書ですが、国総研の資料ということで出版させていただくのとともに、あとホームページ上で公開させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 連絡事項については以上でございます。

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【事務局】  それでは最後に、閉会に当たりまして国総研副所長の○○よりご挨拶を差し上げます。

【副所長】  副所長の○○でございます。本日は数々の貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。ご意見を踏まえまして研究成果の実が上がるように努力してまいります。最初の2つの課題は建築基準法関連の課題でございました。ご案内のように建築基準法に関しては非常に分かりづらいとか、硬直的であるとかといった不平不満といいますか、意見があるところです。とりわけ設計者はもとより、大学の先生方からも建築基準法をもう少し何とかできないのかという声をいただいております。
 建築基準法をよりよくしていく方向として、1つの大きな方向としては性能規定化を推し進めていくということだと思います。本日の課題については、それに即した研究テーマだと思っております。いろいろストック対策が大切だというご意見もございました。性能規定化の方向というのはストック対策を柔軟に行っていくという上でも効果的な方向だと思っておりますので、成果がそれにつながっていくように頑張りたいと思います。
 また3つ目の防災関係の課題ですけれども、ご指摘のとおり都市研究部だけでやり切れない部分も多々ありますので、これは国総研の中にも多くの他分野でこれに関連した知見、技術がございますので、そうしたところをはじめとして連携をとって、これまたいい成果を上げていきたいと思っております。会議の冒頭に○○主査より財務省に向けてブラッシュアップするという趣旨の励ましをいただきましたけれども、予算全体の動向が不透明でありますけれども、ちゃんと予算化できるように努力してまいります。本日はどうもありがとうございました。

【事務局】  以上をもちまして、本日の研究評価委員会分科会(第二部会)を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

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