平成23年度 第2回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第一部会)




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(2)-1 ICTを活用した人の移動情報の基盤整備及び交通計画への適用に関する研究
(2)-2 超過外力と複合的自然災害に対する危機管理に関する研究 〜想定外に備えて〜

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平成23年度 第2回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第一部会)

平成23年12月8日


1.開会/国総研所長挨拶

【事務局】 それでは、定刻となりましたので、平成23年度第2回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第一部 会)を始めさせていただきたいと思います。
 それでは、開会に当たりまして、まず、国総研所長より一言ご挨拶を申し上げます。

【所 長】 一言、ご挨拶申し上げます。本日はご多忙の中、足元の悪い中お集まりいただきましてまことにありがとうござい ます。実は4月の分科会で国総研10年目の節目で評価委員会の委員方にもかなり多数交代いただきましたというご報告を申し上げたところでございますが、少 し見ていただいたらお分かりのとおり、この5月から7月までの人事異動で、特にこの最前列は、私以外はかなり交代いたしましたが、引き続きよろしくお願い 申し上げます。
 本日は、国総研が課題を立てて直接財務省に要求をいたします研究課題のうち、この第一部会に係る分、2課題の事前審査をいただくということで、よろしく ご審議をお願いしたいと思います。今、隣の部屋でテレビ中継を行なっておりましたが、参議院の予算委員会審議をやっているようでございます。ただ、これは 本年度の第2次の補正予算ということで、来年度の予算要求、予算案をどのようにつくっていくのか、まだ全く我々の方に情報が来ておりません。ただ、そうは 言っても、いずれの時点かで予算要求をしていくことになるかと思いますので、基本的には去年までの形で我々の方は要求していきたいと思っております。
 ただ、昨年、一昨年、予算を相当絞られてきておりますので、従来どおり要求していきますと、1課題当たりの予算はどんどん小さくなってしまいますので、 今年は少し厳選させていただいて、課題の数はあまり膨らまさないように、むしろ削り加減で要求しようという方針で出してまいりました。東日本大震災の対応 と並行しまして、こちらの方もしっかり予算を獲得して頑張ってまいりたいと思っておりますので、ご審議よろしくお願い申し上げます。簡単ですが、ご挨拶に させていただきます。

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【事務局】 それでは、○○主査から一言ご挨拶をお願いしたいと思います。

【主 査】 ただいまご紹介いただきました第一部会の主査を務めております○○です。今日は第2回ということでございます が、来年度実施されるという研究課題が国総研ならではのテーマを設定いただいております。それを是非良い切り口で成果が出るように評価委員会で議論させて いただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

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【事務局】 ありがとうございました。
 それでは、以降の進行につきましては○○主査にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【主 査】 それでは、お手元の議事次第に沿って進めていきたいと思います。それでは、4番目ということで本日の評価方法 等について、事務局よりご説明をお願い申し上げます。

【事務局】 資料2の説明に入ります前に、一緒に配っておりますこの横長のパワーポイントの打ち出し、研究評価委員会につ いてということで、今回、初めての委員の方もいらっしゃいますので、簡単に説明させていただきたいと思います。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ 表紙をめくっていただきまして、国総研の評価委員会についてでございます。1ページでございますが、研究評価の適切 性、効率性につきまして、外部の委員の方々に評価いただきまして、その結果を研究活動や研究体制の整備運営に反映していくということを目的として、政府の 各種の基本方針に準拠する形で設置している委員会でございます。

・ めくっていただきまして2ページ目でございますが、評価委員会の構成を示しております。本委員会と、それから、分野毎 の3つの分科会で構成しております。本委員会では毎年、前年度の研究活動全般に対してさまざまなアドバイスやご評価をいただいて、所全体の研究活動に反映 させていただいているところでございます。そして、本日開催します分科会の方でございますが、ここでは個別の研究課題の評価などをいただいておりまして、 詳しくは次の3ページでご説明させていただきます。

・ 分科会の方では、まず国総研として重点的に推進する個別の研究課題につきまして評価をいただいておりまして、2つのタ イプがございます。1つは本日の議題でございますが、事項立て研究課題、すなわち国総研が自ら課題を設定して直接財務省に予算要求する研究でございます。 2つ目がプロジェクト研究、これは研究開発目標を共有する研究を統合するなどして重点的に推進する研究ということで、言い方を変えれば国総研の顔となるよ うな研究ということでございまして、ここには本省、国土交通省本省から配分されます事業調査費による研究などが対象となってまいります。これらの研究につ きまして、研究開始の前年度に事前評価、終了の翌年度に事後評価をいただいております。
 また、研究期間が5年以上にわたる場合には中間評価をいただいております。これらの評価のうち、事前評価につきましては、事項立て研究課題とプロジェク ト研究で評価時期を分けさせていただいております。概算要求前の評価が義務づけられております事項立て研究課題についてはこの7月に、そして、そのような 制約のないプロジェクト研究につきましては、本省事業部局との調整なども必要なことから、事前検討期間を確保させていただいて、12月に事前評価をいただ いているところでございます。
 全体は以上でございます。

【事務局】 続きまして、本日の評価の進め方についてご説明をさせていただきます。
 本日、対象となりますのは24年度の新規予算要求を行う研究課題、いわゆる事項立て研究課題と呼んでおりますが、そちらが評価対象でございます。この予 算要求、8月の概算要求のために必要な事前評価ということで、必要性、効率性、有効性の観点から評価をお願いするものでございます。
 本日の評価の進め方でございますが、当部会が担当になっております本日の2件の研究課題は、この課題毎に評価を行っていただきます。研究課題の説明とし て10分間、本来であれば共同研究や委託、受託等がある場合には、一定の利害関係がある場合は評価には参加できないのですが、本日のこの2件につきまして は、特段、そういった利害関係にある委員の方はいらっしゃらないということで省略をさせていただきます。
 ということで、研究内容等の説明で10分、それから、その後、研究課題についての評価ということで15分、まず、他の部会、それから、欠席委員等から事 前に伺っている意見のご紹介をさせていただきます。その後、主査及び各委員から研究課題についてご議論をいただいて、その都度、意見については評価シート をお配りしておりますが、そちらの方にご記入をいただければと思います。そして、審議内容、評価シート、事前意見をもとに最後、主査の方で総括を行ってい ただきまして、本委員会の評価対象の2件につきまして、本日、評価を行っていただきます。
 その後、評価結果の取りまとめでございますが、審議の内容、評価シート等をもとに、後日、主査の方で最終的な評価課題の評価結果として取りまとめて公表 する予定となっております。なお、評価結果につきましては、研究評価委員会に報告することとなっております。それから、結果の公表でございますが、評価結 果につきましては議事録とともに公表することとなっております。なお、議事録につきましては、発言者名等については、個人名は記載せずに主査、委員、事務 局、国総研等として表記するものとしております。
 それから、裏側でございますが、参考に本委員会は21日、本日、第一から第三部会までを21日で開催するものでございます。その後また、本日は事項立て 課題の事前評価でございますが、それ以外の事項立て課題の事後評価、それから、プロジェクト研究課題の事前評価、事後評価につきましては、本年11月から 12月頃を予定しておりますので、また、その際には開催の日程調整等お願いすることになっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【事務局】 ご説明どうもありがとうございました。
 何か今の事務局からのご説明についてご質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

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【主 査】 それでは、次の議事、5番目の平成24年度開始予定研究課題の事前評価に入りたいと思います。本日2課題ござ いますが、まず最初にICTを活用した人の移動情報の基盤整備及び交通計画への適用に関する研究ということでご説明をお願いしたいと思います。よろしくお 願いします。

【国総研】 高度情報化研究センターでございます。課題はICTを活用した人の移動情報の基盤整備及び交通計画への適用に 関する研究、少々長いのですが、なるべく研究の中身が分かるように長くしております。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ まず、人の移動情報の収集技術の進展でございます。人の移動情報、皆様ご存じのとおりでございますが、従来パーソント リップ調査や道路交通センサスの統計調査により把握しておりました。ICTの進展がございまして、電子化された鮮度の高い大量かつ広範囲に、しかも、24 時間365日人の移動情報が収集可能になってございます。例えばプローブ、GPS付きの携帯電話やカーナビでデータを収集するとか、もう一つとしましては PASMOとかSuica等の鉄道、バスの交通系ICカード、これは平成25年度から全国で総合利用サービスを実施予定でございます。これらの新しい人の 移動情報の活用により社会情勢に柔軟に対応した行政サービスの提供への期待があると思います。

・ ところで、人の移動情報の活用に関する課題でございますが、現在はPASMOならPASMO、同一モードからの人の移 動情報を把握することはできるのですが、単一の人の行動ではなくて、モードを切り替えたりすると把握は非常に難しい。人の移動情報の基盤が整っていない。 少し見にくいのですが、携帯電話とかICカード、それぞれ情報が取れるのですが、情報連携の仕組みがございませんので、複数の主体、モード間の情報を組み 合わせて、1人の人がどのように動いたことを再現するかは現在のところでは困難でございます。そこで複数の人の移動情報を収集できる基盤があるときめ細か な分析が可能になると考えております。

・ 本研究の目的でございますが、今申した人の移動情報を収集する基盤(プラットフォーム)を整備して交通計画等の施策へ の適用可能性を明らかにすることでございます。1つは鮮度の高い複数の人の移動情報を低コストで収集・分析できるプラットフォームを構築いたします。これ により効率よく安価に時宜を得た調査が可能になりまして、既存のパーソントリップ調査とか、センサスを補完して行政サービスの支援のみならず、さまざまな 面の活用が期待できます。現状は先ほど申しましたように、人が動くたびにここの情報は取れるのですが、次の情報はまた違うもので取らないといけないという ようになっております。それをこれから我々の研究で構築しようとしますプラットフォームを使うことによりまして、このように一連の人の流れが分析可能にな ります。このようなことを考えております。これを用いまして、後ほど説明いたしますが、災害に強いまちづくりとか、安全で快適な交通行動、マルチモーダル 等に活用していきたいと考えております。

・ 次に、研究の実施体制でございますが、我々が考えておりますのは、先ほども申しましたように民間の情報等活用いたしま すので、官民の連携した実施体制を考えております。意見交換会や研究会の設置も視野に入れて活動をいたしております。将来的にはこのプラットフォームを使 いまして、コンソーシアムの形も考えております。それで、今年度、この研究は来年度からですが、今年度から事前といたしまして地方公共団体や民間各社と調 整いたしまして準備を進める予定でございます。

・ それで、本研究は3年を予定しておりますが、まず来年度1年目で、人の移動情報の収集方法の調査・検討、具体的には携 帯電話やプローブ等の人の移動情報の収集方法、利用条件等の調査を行いプラットフォームで利用可能な移動情報を整理いたします。2つ目といたしまして、複 数の人の移動情報の組み合わせ分析による算出可能な指標の検討を行います。収集可能な人の移動情報を用いた分析方法や算出可能な指標を検討いたします。そ れと、地図を重ね合わせた効果的な見せ方の方法の検討も行いたいと思っております。
 3つ目でございますが、分析対象及び分析地域、今現在、ICカードはいろいろな地域で使われておりますが、どこが一番よいかということで、次年度に実施 いたしますケーススタディの実施方針の策定をいたします。

・ 2年目でございますが、ケーススタディ分析をいたしたいと思います。平常時と災害時を想定したケーススタディを実施い たします。平常時の例は後ほどまた申し上げますが、例えば観光地とかの訪問者数とか、公共交通の運行数との時間毎の比較とか、あと雨天時の人の交通行動を 検討いたしまして、きめ細かなサービスを検討したい。災害時でございますが、これは特に東日本大震災のデータを用いて分析をしたいと思っておりますけれど も、災害発生後の時間別の人の交通行動の把握をいたしまして、帰宅者困難の支援とかを考えたいと思っております。

・ 3年目でございますが、この2年間のデータをもとにいたしまして、人の移動情報のプラットフォーム、これはお金の制限 もございますが、プロトタイプの開発をしたい。人の移動情報の利用条件等取りまとめまして、実用化に向けた制度設計を行いたい。開発の対象は、ここのとこ ろでございまして、あとは将来的にはこのデータベースとか、汎用機とかいろいろ使って発展させていきたいと考えております。

・ それで、プラットフォームの構築によるさまざまな活用が期待されておりますが、先ほど申しましたけれども、時代に即し た都市構造とか、災害に強い町、安全で快適な交通行動、現状はばらばらのモードでしかとらえられませんが、この研究で構築いたしますプラットフォームを使 いまして、統一形式で人の流れの一連が分かるような形にしたいと思います。

・ 具体的には、まず最初に、安全で快適な交通行動の実現でございます。複数の人の移動情報を用いた分析により、高齢者等 の人の特性に応じた災害時の帰宅手段、経路、買い物難民の実態が把握できます。その情報を活用することで安全で快適な交通行動の実現に寄与、将来的にはで きると考えております。

・ 次に、我が国は本格的に高齢化社会を迎えますが、それに即した都市構造設計への寄与も考えております。詳細な人の移動 情報を用いることで、例えばこれからますます働く女性が増えてまいりますが、子育ての働く人を支援するまちづくりの支援をしたいと考えています。これは例 えば、このデータは晴れと雨の日のルートの違いが取れますので、その辺を考慮したいろいろな計画ができるのではないかと考えております。

・ 次に、これが本来かも分かりませんが、先ほども申しました交通結節点の情報連携によるマルチモーダルサービスの実現で ございます。現在は何度も申しておりますが、主体間で詳細情報を取得、連携ができておりません。それをこの研究を通して組織横断的なターミナルの情報連携 によりまして、パーク&ライドを支援するマルチモーダルの実現に寄与、あとナビゲーション等の既存サービスの高度化に寄与を考えております。

・ また、これからの観光立国として、外国の方をお迎えしないといけませんが、外国の方が迷いやすい箇所とかもこれは抽出 できますので、その辺も考慮したいろいろな行政サービスとか、それとあと最後になりますが、これは個人情報とかいろいろありますので、実現できるかどうか 分かりませんけれども、情報銀行構想や自分情報記録への寄与も期待できると考えております。本研究を遂行する中で、現在、今申しましたプラットフォームの 整備によりまして、さまざまな活用場面を発掘できると考えております。
 以上、簡単でございますが、説明を終わらせていただきます。

【主 査】 ご説明、どうもありがとうございました。
 それでは、本委員会の委員の方からご意見をいただく前に、本日、欠席の委員の方、あるいは他の部会の委員からご意見があった場合にご紹介いただければと 思いますが、いかがでしょうか。

【事務局】 他部会からの意見でございますが、第三部会の○○委員からご意見をいただいておりますので、ご紹介させていた だきます。「防災のテーマでも公共交通機関の人の流れを把握しておくことは非常に重要でありますが、これまで鉄道各社の自動改札機のデータなどの利用があ まり自由ではなく、やむなく交通センサスデータなどを利用させていただいていました。今般、そうしたものを含むより広い観点からのプラットフォームの構築 がなされることは極めて必要性の高い研究と考えます。研究成果は広く周知して使ってもらうような努力をすべきです。需要は多いです。そこを意識していただ くということで有効性にも高い評価をさせていただきます。期待の点数ということです。」

【主 査】 どうもありがとうございました。
 それでは、本委員会にご出席の方々からこの研究課題、ご提案の内容についてご質問、あるいはご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。では、 お願いいたします。

【委 員】 今ご意見もあったように極めて重要な研究課題だと私自身も思っているのですが、あえて不安だなと思うところを 挙げさせていただくと、今取得しているデータは基本的には個人属性とはリンクしていなくて、片やパーソントリップ調査で取得しているデータはかなり詳細 に、どこに何の目的で行ったとか、そういうことまで聞いていることと、極端に言うと場所と場所、ポイント・トゥ・ポイントでどんな交通手段で行ったしか分 からないデータとどうリンクさせていくのかなというところがすごく悩みどころだと思うんですね。
 広範にいろいろ挙げられている研究は、情報は少ないながらもパーソンなどでやっている既存研究があるので、あまり不安には思っていないのですが、そのプ ラットフォームと言っている部分が本当にプローブとか、ICカードとかで極限まで、どこまでできるというところまで追求された上でミックスというか、 フュージョンというか、そういうステップを踏まれた方が、よりスムーズに行くのではないかなと。だから、最初から結構、プラットフォームだ、集めるぞとい うことよりも、個別にどこまでできるというところは限界と可能性を示された方が良いのかなと思いました。

【主 査】 いかがでしょうか。

【国総研】 貴重なご意見どうもありがとうございます。この調査は個人属性がどこまでとれるかが非常にみそかなと思ってお りまして、最初、あくまでもパーソントリップの補完調査を考えておりますが、我々のところで、下の方に書いてございますが、バスICカードを使ってどこま でできるかというので、平成17年からずっとやっておりまして、特に平成21年、22年、さいたま市と意見交換会を行ったのですが、その時バスのICデー タ、個人の属性までは取得できませんでしたが、バス会社等にいろいろと協力をいただけますと、こういうことができますというご説明を申した時、本当に個人 情報に係わらない部分でしたら、もう少し情報を開示してもいいよというご意見をいただいておりまして、この時雨天時、バスの利用者はどうなるかとか、そう いうところまでは分析できておりますので、先ほどの事前意見にもありましたが、この成果がこれだけ使えて、広く活用できることをうまく広報しながらやって いきたい。それで、我々はまずさいため市で相当こういうネットワークができましたので、ここも1つの広報と考えて、いろいろやっていきたいなと。今年度も この県と、あとバス会社等を交えて、もう少し細かい打ち合わせをしたいと考えております。

【主 査】 他にご質問、ご意見ございませんか。お願いいたします。

【委 員】 スライドの7番に3年目の作業としてプラットフォームと書いていらっしゃるのですが、この研究の一番核になる ところだと思いますし、もう少し早目にされる方が良いのではないかなと思います。というのは、今の質疑応答でもあるのですが、受益者が誰で、そして他の人 たちと連携するにはどうしたらいいかって、インセンティブを付与するには時間がまずかかると思うんですね。ですから、必要性を幾ら積み上げても、またそれ をやっていくうちに時間がかかりますので、むしろフレームワークでも、ごく簡単なスケッチでもいいと思うのですが、どういうような具体的なプラットフォー ムの内容かということは早目の年度で、実装はもしかしたら3年かもしれませんが、技術的にどうするかという問題と、そういう面倒くさいことをすると、それ なりに自分が汗をかけば、それなりに受益者にもなるということをこれを取り巻くさまざまな関係者に理解いただくにはされた方が良いのではないかなと思いま す。
 それで、質問はこの際のひもづけをどうされるのか、要は極端なことを言うと個人が特定できれば、その個人情報等の問題がありますが、非常に豊かな情報に なることも事実ですね。そこまで踏み込まれるかどうかということ。私はすべきだと申し上げています。それだけにここでされている意義というのは、ご説明い ただいたように平時、あるいは非常時の交通計画等だけではなくて、恐らく他の産業セクターも垂涎の、欲しくなる大変大事な情報――大事というか、価値のあ る情報だと思いますので、それだけにできるだけインターオペラビリティを高めて、他の産業セクターにもそういった情報のやりとりについての制度的な裏付け があれば使っていただけることを意識していた方が、逆にこの神輿を担いでいただける方が増えていくように思うんですね。また、あまり手足を縛らなくてもイ ンターオペラビリティを技術的に高めていく、制約条件がなくなっていくように思うので、その辺りご配慮いただくとよろしいかなと思います。

【主 査】 いかがでしょうか。

【国総研】 ご意見、ありがとうございます。1番目のプラットフォームの点ですが、まさにご意見のとおりでございまして、 開発自体、実装自体は3カ年目になるかと思うのですが、この1年目の時にどういった人の情報が収集できるのかというその種類がある程度わかってきて、そこ でフォーマットもわかってきますので、どういった形の統一形式にまとめていこうかというところの検討が1年目からできるかと思います。ですので、そういっ たところの検討をしていく中で、プラットフォームをどのように実装させていくのかという部分についてもしっかりと初年度から検討をしていきたいと考えてお ります。

【委 員】 多分、それぞれの事業者は既に作り込んでしまっているので、少し気になるのは、中身は少しぼんやりしているの ですが、共通フォーマットに変換するというよりは、既存のものは認めた上でそれをつなぐためにはどうしたら良いかという方が多分、現実的だと思います。

【国総研】 そうです。何か標準化をして、これに倣ってくださいということは一切するつもりはなくて、むしろこのプラット フォームでうまく吸収できるというような方法、コネクタをつくるみたいな、そういうようなイメージを持っております。
 2点目のひもづけのところ、まさに我々もそこはすごく重要だなと認識しておりまして、我々としましてもできる限り個人情報のところまで、どこまで踏み込 めるのかというところはチャレンジしていきたいと思っております。特に今年度から、先ほどご説明しましたとおり、地方公共団体、民間各社さんといろいろ交 渉をしていきまして、例えば常に出すのは難しいですが、例えば災害時だったら出しても良いとか、そういう利用条件といったところもしっかりと詰めていきた いと考えております。

【主 査】 他にいかがでしょうか。どうぞ。

【委 員】 私もこれは有意義な研究、重要だと思うのですが、4つほど質問がございます。先ほど○○委員も少しおっしゃっ ていたのですが、限界を示す必要があろうかと思うんですね。というのは、他の分科会での委員が避難行動の時にすごく役に立つだろうという話の時に、恐らく 何かリスクがあるような状況を想定した時に人の流れがどう変わるか。シミュレーションをやることにも使えると思うのですね。ということは、シミュレーショ ンをやるということは、何らかの数学的なモデルなり、行動モデルみたいなものが実はあって、それは今までのデータベースの中で作られてきた。 これがもし できると、もっと詳細なことができるという時に、このデータはいろいろな横並びですべてとれるのだけれども、この集計項目が大事で、先ほど例えば○○委員 が言っていた目的別には分けられないとか、パーソンにはできたのだけれども、こっちはできる、こっちではできるんだけれども、パーソンではできないとい う、そこの限界等、例えば既存研究で、今まで多分、今後の課題として皆さんペーパーで書かれていると思うんですが、今回はデータ制約があるのでこのモデル で終わった、逆に今度、そのデータが出てきた時に実はこういう集計が欲しかったんだよと逆に戻ってきてしまう場合があると思うのですね。そこら辺を十分考 えた上でつくられないと折角作ったけれども、こういう時は使えるが、こういう時には使えないという話にならざるを得ない。
 2点目は、計画の問題なのですが、ずっとこれまで都市計画、私は専門ではないですが、交通計画、都市計画のパーソントリップベースというのは大都市の場 合、多いという時にどう整合をとっていけるのかなと。要するに10年おきぐらいに調査をやっているときにどう変わったという時系列変化をとらえるときに、 今回、新しいデータベースが加わったときに過去を振り返られないわけですね、簡単に言えば。そこら辺の整合とかどう取り扱えばいいのかということを少し検 討されておいた方が良いのかなと。
 今、大都市のことを触れたのですが、私、地方都市に住んでいる時に、地方なんていうのは本当にこんなIC化が進んでいるのかなという気がするんですね。 もちろんSuicaぐらいは、仙台ではもちろん、私も持っていますが、バスでそんなのおばあちゃんたちが使っているのかなという気がするんですね。ですか ら、大都市と地方部と、このデータ制約的なものがかなりあるのではないかなという、そこら辺どうお考えになられるか。これは適用範囲を考えられるときに非 常に重要になってくるだろうと。
 最終的に我々エンドユーザーとして、もしこのデータがあれば使いたいという時に、データベースをどうやって公表されるのか。例えばパーソンだったら、あ る程度細かい集計をお願いするときは委託書というか、お願い文書を書いて事務局などに印鑑をもらっていという手続を踏むのですが、これをどのようにお考え か。国総研の中でクローズドすることはないのだろうとは思うのですが、どのようにオープンにしていくのかなと。これはやっぱり使われた方が良いわけで、そ こら辺についてお考えがあれば教えていただきたい。
 以上です。

【国総研】 どうもありがとうございます。最初の限界を示す必要、我々も過去の研究等、当然、調査いたしまして、どのよう にやっていけば良いかというのを今年度からいろいろな資料を集めて研究を実施したいと思っております。
 計画の問題ですが、この調査はあくまでもパーソントリップに取って代わるとはまだ考えておりませんで、パーソントリップ調査はパーソントリップ調査、先 ほど○○委員からもございましたが、やっぱり目的別とかいろいろなことがとれますし、しっかりした調査でございますので、それをこういう時はどうなのだと いう補完で使える調査をまず目指しております。
 3番目の地方都市ですが、これは最初はバスICとか考えておりますが、プローブデータと、あと携帯電話ですと地方都市でもかなり取れますので、その辺を 使っていろいろ考えていきたいと思っております。
 4番目のデータベースの公表でございますが、ちょうどこの4枚目のスライドが出ておりますが、過去に動線解析プラットフォームというのを国総研が作って おりまして、これは東京大学と共同研究へ持っていき、現在、東京大学でコンソーシアムをつくられて、民間の方を含めていろいろと使われております。この データベースもそのようなことを考えております。それで最初から研究体制になるべく多くの方に入っていただこうと。大学が抜けておりますが、当然、大学の 方にもお願いしたいと思っております。
 以上でございます。

【主 査】 予定の時間が来ておりますが、追加で必要なご意見があればご発言いただければと思います。お手元のコメント シートの方に書いていただくこともできると思いますが。
 どうぞ。

【委 員】 最後に。非常に貴重なやるべき課題だと思いますが、後ろの方に社会的貢献ということで4つほど書いてございま すが、多分、社会貢献をするために、今の議論だとどこまで詳細な情報がとれるかということを中心にされておりますが、逆に目的に応じてはそこまでとれなく てもいいでしょうと。それをやるためにはこれが絶対必要だから、これは言い訳をせずにというか、必ず集めますよという、そういうスタンスがあった方が、あ れもこれもというわけにはいかないのでと思いますね。だから、その辺のところを明示していただければ今後の情報の集め方も非常に楽になると思いますし、あ まり細かく集め過ぎても結構大変過ぎると思います。そういう私の意見です。

【主 査】 どうもありがとうございます。
 まだ、コメントシートに記入をいただいておりますので、記入が終わった方で引き続き質問だとかあれば、ご発言いただける時間だと思いますが。
 私の方から少し30秒ぐらい使わせていただいて。私自身も非常に重要な課題でチャレンジングなテーマだと思うのですが、きっとこういった話はアメリカな ど海外で研究が進んでいるように思うので、初年度の時点で、どういった形で進められているかというのは、もう既に大筋は決まっているのかも分かりません が、改めて海外も含めて関連研究のレビューしていただくといいかなというのを追加でコメントとして申し上げたいと思います。

【委 員】 もし時間があるのでしたら。

【主 査】 よろしいですよ。

【委 員】 最後の方にチラッと書いていらっしゃるんですが、実は観光の分野の交通行動というか、観光行動みたいな情報と いうのは、ほとんど整備されていないんですよね。観光協会やJTBが行っている2年に一度ぐらいの、たかが1,000人ぐらいの情報しかなくて、それで日 本の観光はこうですなどということを言っているのですが、是非こういうのが個人毎に大体どんな格好でみんな動いているのだろうとかというのが分かるとすご く広がる。観光だけではなくてそういう分野は他にもたくさんあるのではないか。意外と発見できていないところがあるのではないかなと思うので、是非そうい うところにも追求されるともっと広がるかなと思います。お願いします。

【主 査】 評価シートが全部集まってまいりました。ほとんどの方が実施すべきというご意見で、1名ほど一部修正すべきと いう表現はございます。しかし、内容的には実施すべきであろうが、今日出ていた意見に関してもう少し研究目的だとか、あるいは最終的な形というものを明確 化しておくべきだろうというご意見でございます。
 既に各委員の方から出てきておりますが、非常に重要な課題である。日本の新しい展開であるとか、あるいはイノベーションということに関してこの情報基盤 ができることは非常に重要だろうということがすべての方が評価されている点でございます。気になる点としては、先ほども出ましたが、どのような情報がどこ まで入手できて、最終的にそれがどういう形で利用されるのかということをある程度明確にすることが重要であって、特に初年度なりにしっかりと見定めない と、最終的には3年たったときに中途半端になってしまわないようにというようなご意見があります。
 あとは、個人情報ですのでプライバシーの関係への留意。いかにその情報基盤を利用していただくのかという最終的な公開のあり方だとかアクセス権、そう いった制度設計というものをしっかりとしていただくことが、いろいろな分野において活用できる研究成果になるというようなことがまとめとして申し上げるこ とができると思います。期待できる研究課題ですので、是非しっかりとした体制をつくっていただいて、特に民間会社との関係がございますので、双方にとって メリットがある形が必要ですし、それがさらにオープンになると、その出した企業以外にもメリットがあることに対してどう配慮するのかも大きな課題だと思い ますので、是非有意義な形の成果が出るように進めていただければと思います。
 全委員のご意見のまとめとしては十分ではないかも分かりませんが、実施すべきであろうということと、先ほども申し上げた幾つかの点に留意していただい て、研究をしっかりと計画を立てていただいて、申請いただいて実行に進めていただきたいというように評価させていただきたいと思います。よろしいでしょう か。それでは、今申し上げた内容を留意して研究を進めていただけるようにしていただければと思います。どうもありがとうございました。

【国総研】 どうもありがとうございました。


【主 査】 それでは、2番目の課題でございますが、「超過外力と複合的自然災害に対する危機管理に関する研究 〜想定外 に備えて〜」という題目でご説明をいただきたいと思います。お願いいたします。

【国総研】 それでは、説明をさせていただきたいと思います。河川研究部と危機管理技術研究センターからの提案テーマでご ざいます。どうぞよろしくお願いいたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ まず、本研究のねらいでございますが、今回の東日本大震災によります甚大な被害の経験を踏まえてという課題でございま す。研究のねらいとしましては、従来、十分に考慮されていませんでした超過外力と、それから、複合的な自然災害、ここでは想定外災害と呼ばせていただいて おりますが、その災害の発生と影響を明らかにしまして、これに対する危機管理対策を提案していきたいというものでございます。
 こちらに絵を示してございますが、従来、ある想定レベルを考えて、それに対する対策というものを行ってきているわけでありますが、確率が低いわけではあ りますけれども、実際に起こり得る領域があります。外力がどんどん大きくなっていく領域ですとか、あるいはここでは地震、洪水、火山、高潮、斜面崩壊、と いった災害がございますが、これが同時に、あるいは連続して起きることによって災害が複合化して、重大化、複合化、重畳化、複雑化、いろいろな影響が出て くるということでございます。こういった領域をもう少しきちんと着目して危機管理対策というのを検討していきたいという課題でございます。

・ まず、研究の背景でございます。これはもちろん、東日本大震災の影響でございます。想定を超える津波によって甚大な被 害が生じたわけでございますが、もともとご承知のとおり、宮城県沖ではほぼ100%に近い確率で宮城県地震というのが起こるということでございました。そ れをはるかに大きく超える巨大地震が起きたということと、想定津波を超える津波が起きたということで非常に甚大な影響を受けたというのはご承知のとおりで ございます。
 さらに、地震によって地盤の沈降が起きることによって、高潮に対する浸水の危険度が高まったり、あるいは防災施設が被害を受けておりますが、それによっ て雨期の洪水被害危険度が増大する、こういった複合的な影響というのが出てくるというものでございます。東日本大震災の大きな教訓の1つとしまして、従来 の経験ですとか、想定を大きく超える規模の災害に対する備えですとか、あるいは低頻度として考慮されてこなかった複合的な災害に対する備えというのをもっ ときちんとしておく必要があるのではないかというのが教訓と考えてございます。

・ 現在、例えば中央防災会議、学会ですとか、あるいは復興構想会議等から今回のこの震災の経験を踏まえた防災・減災のあ り方というのが提言されてございます。これらにおきましては1,000年オーダーで起きるような地震も考えて災害対策を考えていくべきだということがござ います。この中には実際に起きた事象に対して、それをきちんと解明して、それに対する対策を考えていくといった既往実績からのアプローチという観点と、実 際には過去に起きていないかもしれませんが、起こり得るということに対して予測的なアプローチによって対策を考えていく必要があるという指摘が出ておりま す。
 さらに、想定はあくまで1つの想定でありますので、この中には不確実性があるということでありますので、さらにこういった不確実性に対してもきちんと準 備をしておく必要があるという提言が出されているかと思います。こういった災害事象に対して国土基盤を強くしていく必要があるということで、多重防御です とか、あるいは復旧しやすい、こういったような対策を図っていく必要があるという提言が出されたものでございます。こういった各種の提言の大方針に基づい て、私どもとしてもいろいろ研究を具体化していきたいというものでございます。

・  さらに、想定はあくまで1つの想定でありますので、この中には不確実性があるということでありますので、さらにこう いった不確実性に対してもきちんと準備をしておく必要があるという提言が出されているかと思います。こういった災害事象に対して国土基盤を強くしていく必 要があるということで、多重防御ですとか、あるいは復旧しやすい、こういったような対策を図っていく必要があるという提言が出されたものでございます。こ ういった各種の提言の大方針に基づいて、私どもとしてもいろいろ研究を具体化していきたいというものでございます。
 本研究の成果としましては、こういった危機管理対策の構築の方法論を提案し、具体的にモデル地域等に適用しましてどのように効果が見込めるかというのを 評価したいというものでございます。それから、基幹防災施設の整備のあり方というのを提示し、こういったことを技術的な手引き、あるいは提言という形で出 していきたいと考えております。成果につきましては、想定外災害というものを本格的に組み込んだ防災・減災対策を実施するにはどうしたらいいかといったこ との検討材料として使うとともに、東日本大震災の中長期的な復興にもできるだけ反映できるような成果となるように目指したいと考えてございます。

・ 研究内容でございますが、大きく4つ考えてございます。1つ目は、まずこういった超過外力ですとか、複合的な自然災害 ではどういう事象が起きるのかというのを先ほどございましたように予測的なアプローチと、それから、実際に起こったアプローチとして分析したいというもの でございます。次には、こういった災害発生が超過外力と複合的な災害によってどういうようなシナリオが起きてくるかといったことを構築する手法と、その影 響度がどのように大きくなっていくかを定量的に評価するような手法を提案したいというものでございます。3つ目が、こういった事象に対してどういう対策が 取り得るかということで、危機管理の方策、あるいは特に洪水との複合的自然災害の方に着目しまして、基幹防災施設の整備のあり方、こういったものを対策と して提案してまいりたいと考えているものでございます。

・ まず、最初の課題でございますが、被害の災害事例の収集と整理分析ということで、先ほどございましたように既往実績の アプローチと、それから、予測的なアプローチという2つの観点で実際に起きた事象と起こり得る事象を考えるというものです。災害による進展、いろいろなイ ベントがあるかと思いますが、そのイベントで何が起きて、どのように進展して、それがどう波及していくかということを分析したいと考えております。災害の 事例としましては、ここに幾つか書いてございますが、超過外力、それから複合災害、特に洪水等の複合化でございますが、こういった点を調べてまいりたいと 考えております。

・ それから、超過外力の一例として示させていただいておりますが、例えば地震の場合ですと神戸の地震がございましたが、 この際は、当時としては過去に記録されていないような強い地震が起きて激甚な被害が起きております。それから、海外の事例でございますが、トルコですとか 台湾では10メートル規模の断層変位が地表に出て、それが大きな影響を起こしたり、今回の大規模地震と想定を超える津波、こういった地震が起きており、こ ういったものを調べていきたいと考えております。
 それから火山の方でございますが、これは現在も進行中のものでございますが、新燃岳の方で爆発的な噴火が起きて土石流等の危険度も高まっており、現在、 実際に対策等が進められておりますが、この辺も危機管理という観点で調べたいと思っております。あと、降雨の方につきましては、これはいろいろ多数の事例 があるわけでございますが、一例として示させていただきましたのは2009年の山口の例でございますが、この際はご承知のとおり老人ホームが被災を受けた ということで、災害弱者が影響を受けるといった例として示させていただいております。

・ 複合災害の方でございますがこれも例がございます。今回の東日本大震災でございますが、地震と津波あるいは地盤沈降に よって浸水危険度が高まる、こういった複合的なものが起こるものですとか、あるいは海外の方の台湾の例でございますが、台風による大雨によって洪水が生じ て斜面の深層崩壊が生じたり、ダムができてそのダムの決壊で洪水が起きる、こういったような連続的な災害に至っています。それから、安政の大地震のところ でございますが、大鳶・小鳶の大崩壊ということで、これによって天然ダムができて洪水が起こるといった複合的なものです。火山につきましても天明の大噴火 ということで火砕流と、それから、天然ダムと洪水、こういった同時あるいは連続して起こる複合災害があろうかと思っております。

・ 2つ目の課題でございますが、災害の発生シナリオの構築手法と、それから、リスク影響度評価、手法というのを提案して いきたいというものでございます。地域によって地形、土地利用、人口構成などを考えた上での災害発生シナリオ、超過外力の複合的な災害を考えた上でどうい うシナリオが出てくるのかといったことを構築できるような手法を提案したいというものでございます。左下の方に少し簡単な絵がかいてございますけれども、 イベントが、例えば地震が起きますといろいろな事象が起きてくる、これは河川施設等について書いておりますが、こういった事象が起きて、それによってまた 被害が起きてその被害が地域社会等に影響するといったいろいろな波及をしてくるわけでありますが、そういった点での災害シナリオ等を考えていく手法を提案 していきたいというものでございます。

・ それから、このシナリオに対しましてリスク分析を行うということで、ここには定量的に災害の種類、大きさ、範囲などを 評価するものです。これも少し真ん中の図で示しておりますが、1つの例としては、これは人的な被害の例でございますが、リスク評価をしていくような手法で 検討していきたいというものでございます。それから、災害、リスク評価をする際につきましては、当初は意図していないような施設が災害の防災に対して効果 を出すというような事例もあるということで、これは1つの例としましては岩手、宮城の地震の際の荒砥沢ダムが土砂が崩壊した際に土砂をとめたというような 事例もございますが、そういったものも考えた上での効果というのを評価していきたいとともに、ハード技術、ソフト技術を踏まえてリスク分析をするようなこ とを提案したいと考えてございます。

・ それからあと、災害のイベントのことでございますが、地震の場合はいきなりボンと来るということでございますが、災害 の種類に応じて時間とともに変化してくるというような事象がございますので、こういったことも考えた上でのシナリオといったものを考えていきたいというも のでございます。火山につきましては、降灰エリアが拡大しますとハザード・エリアが変わってくる、さらに土石流等の発生する危険も同じような形で増大して くる、こういった時間とともに変化してくる事項も考える必要があるのではないかと思っております。それから、水害についても同様でございますが、ある点で 破堤したとしますと、それがどんどん浸水が到達するまでには場所によって時間がかかりますので、こういったようなリアルタイムなことも考えた上でのシナリ オというのを考えていく必要があるのではないかと考えております。

・ それから波及構造の方でございますが、これも実際に被害が起きてそれによっていろいろな機能障害が出てくるわけであり ます。これは一例としまして、例えば地震によって施設に被害が起きて、その施設の機能被害によっていろいろ波及してくるという例を書いてございます。この 中でも特にその被害によって非常に大きな影響が出てくるものに特に着目してやっていく必要があると考えてございます。水害の例では、これは地下空間が浸水 する、こういったことも起きる事象についても洗い出していくといったことが必要ではないかと考えてございます。
 それから、次の対策の方でございますが、対策の考え方としましても、そのリスクや影響等を最小化していくという考えが必要になるわけでございますが、そ の際の評価としまして、先ほどございましたような1つの指標として、人的被害に対するリスク評価を行いまして、これを低減させるために有効な事前対策、緊 急時対策、あるいは危機管理方策といったものを提案していきたいというものでございます。この右の方の絵がございますが、この赤線が許容できるようなリス クというように仮定しますと、これを超えるような、右下の方の点線で書かれているところでございますが、超えるような事象が複合化によって生じたとします と、これをこの許容範囲までおさめるためには、赤い矢印としてどういう対策があり得るかといったことを検討していきたいというものでございます。

・ それからあと、超過外力に対してですが、対策は多段階で考えていく必要があるのではないかと考えてございます。いろい ろなレベルがあるかと思いますが、ある設計想定といいましょうか、従来のレベルを超えて、それから、ある粘りで抵抗できる領域と、それから、それを超えま すと劇的に災害が大きくなる、そういったレベルの話と、あと最後には最悪シナリオ的な、人命が優先される、こういったような多段階の形で対策というのを考 えていく必要があるのではないかと考えてございます。

・ それから、対策の効果を評価する際でございますが、人的被害を最大限軽減するということはもちろんでございますが、そ のほかの観点というのを含めた上で対策の評価を行っていくというものでございます。

・ 研究体制でございますか、国総研では河川研究部と、危機管理技術センターの災害に関係しております研究部で対応したい と思っています。あと、本省等々と相談をしながら、また、海外の災害事例等につきましては海外の専門研究機関等とも情報交換しながら進めたいと考えてござ います。
 以上でございます。

【主 査】 ご説明、ありがとうございました。それでは、今日欠席の委員の方と他の部会からの委員からのご意見があればご 紹介をお願いいたします。

【事務局】 はい。それでは、ご紹介させていただきます。第三部会の○○委員から意見をいただいております。「このテーマ は震災を受けて国総研が取り組むべき最優先テーマであり、その必要性は申し分なし、効率性も広く国内外の研究機関と連携することを期待して問題ないと思わ れます。有効性に関しては、国土交通省は土木建築に係る設計の基本を設計にかかわる技術標準の基本ルールとして位置づけています。この中では信頼性の考え 方を基本に置くことや作用についての分類を行うことなどを述べていますが、この研究課題が展開する内容は各種ハザードに対する希有な事象のハザードシナリ オを提示することであり、この設計の基本における偶発作用の内容をより深く明らかにしていくことにつながると考えられます。
 偶発作用は確率統計的手法による予測は困難であるが、社会的に無視できない作用と述べるにとどまっており、また、想定外の作用への対処としては、構造物 の設計に際して局部的な破壊や構造システム全体に対して致命的な影響を及ぼすことなど、原因に対して不釣り合いに大きな被害を招くことがないようにすると 述べるにとどめています。こうした基本ルールの内容を社会的要請に合わせて改善していくこともぜひ視野に入れていただきたい。設計に与えられた想定内の条 件に応じて構造物の形を決めることに加えて、危機管理の発想を加えることができれば、このテーマの有効性は極めて高いと言うことができる。」という意見を いただいております。

【主 査】 どうもありがとうございました。
 それでは、今日ご出席の委員の方々からご質問、あるいはご意見をいただきたいと思います。どなたからでも結構ですので、いかがでしょうか。

【委 員】 2点ほどコメントと質問をさせていただきます。まず、1つは非常に大事な研究とは思うのですが、災害自体が非 常に多様性があると言うのも変ですが、さらには複合災害まで視野に入れる、ケーススタディ的にいろいろな、東日本大震災をはじめとして10件以上ですか挙 げられて非常に盛りだくさんな感じがするのですが、そのようにたくさんやっていくということが実際有効なのでしょうかというのが1点。
 もう1つ、研究の成果として出てくる対策についてのコストの評価というのは必要かなと思うのですが、その点いかがでしょうか。

【国総研】 まず、既往の災害をたくさん調べるというのは、一応、リストアップをさせていただいております。複合ですと か、それから、超過をしていくということによってどういう影響が出てくるかという点に着目して調べたいと思います。東日本大震災についてかなり詳しく調べ ていく必要があると思うのですが、それ以外の方につきましては複合化ですとか、超過によって出てくる影響がどういう点があるかというのに着目して調べたい と思っていますので、すべての災害をすべて網羅的に調べるというようには考えておりませんので、できるとは考えてございます。
 それからもう一つのコストの件でございますが、もちろんご指摘のとおりかと思っております。対策をするにしましても、当然ながらコストがかかるというこ とでございますので、この辺のどのレベルにすることが影響を最小化するとともに実現可能かといったことはやはり考えていく必要があると思っております。 ハードでやる分と、それから、もちろんソフトでやる分ということがどの境界なのかというのはやはりコストでかなり決まってくるのではないかと思っておりま す。先ほど時間がなくてバタバタと説明してしまいましたが、この軸の中にやはりコストというのを入れて評価したいと考えてございます。

【主 査】 よろしいでしょうか。他にいかがですか。○○委員お願いします。

【委 員】 私も大変重要な研究だと思います。それでタイトルが気になっていまして、風呂敷を広げ過ぎで副題を入れた方が いいのではないか。これは終わった後、評価を問われるときに、これは本当に大事なテーマですし、3年でできるようなぐらいではなくてもっと奥深い大きな テーマだと思いますので、後々のことを考えると何か副題か何かつけておいた方が、焦点を絞ったところ、にじみ出るようなところがあった方が良いのではない かと思います。
 それで、私の意見は課題の立て方というものが複合災害に対するイマジネーションを高めていくという意味ではとても良いことだと思うのですが、ただ、予測 可能性とか、その予測可能に基づいてシミュレーションして災害が減災できるというか、ミティゲーションできるという考え方そのものが今揺らいでいることが ありますので、はやり言葉で最近レジリエントという言い方もしてきていますけれども、復旧可能性ということを考えていくと、リスク評価だけだとどうしても やはり捨てがたいところがたくさん出てきてしまうと思うのですが、災害復旧可能性から考えるとやはりここの地域だけは浸水してもらったらもう復興すらもで きなくなるよとかいう逆の発想というのはあると思うんですね。
 ですので、この課題3の4のところに全体が何となくまだ予測をできるだけ、足りなかったか予測して、そのためのミティゲーションをするような、もう少し 3、4辺りにリスク評価もするのだけれども、それとは逆にもっとすごいことが起きた場合でも復興可能性を高めるために、レジリエンスを高めるために置くよ うな考え方を課題の3とか4に入れていかれると味が出てくるように思いますので、何か実施上参考にしていただけたらと思います。

【国総研】 ありがとうございます。参考にさせていただきたいと思います。

【主 査】 他にいかがでしょうか。どうぞ。

【委 員】 私も相対的にはこれは重要な研究テーマだと思うのですが、3つ質問がございます。まず第1点目に○○委員も おっしゃられたこのコスト面のアプローチをしないとゼロリスクもあり得ないですけれども、ゼロリスクのような強いものをつくればいい、それには莫大な金が かかる、そういう話になってしまいますので、そちらの面からのアプローチも是非積極的に入れていただきたい。
 2つ目、あと2点は具体的な質問なのですが、12ページなどは波及の例というのでパッと書いてある。項目がずっと羅列してあるんですね。ところが、こ れ、言われたら確かにそうなのですが、1次波及効果、交通障害、救急車云々という、これはすべてディメンジョンが違うんですよ。何台とまった、何分とまっ た、幾ら損失したとか、これはどこで統一するか。概念的に何かリスク関数みたいものをポーッと1本引っ張っておっしゃるんですが、こんなに簡単な話ではな くて、幾つかの被害要素、被害の要因があるわけですね。これをどう統一してお考えになられているのか。これ、リスク分析で極めて決定的な、特にこれは複合 的な要因が考えられるので重要な問題だと思うんですね。
 それごとに、またこの研究の中でリスクプレミアムというのをどのようにとられておられるか。これをしっかりしておかないと世界的なリスク研究の中でリス クプレミアムの概念をどうとらえているかによって価値が半減する。逆に言うと数が倍増する可能性が非常に高いんですね。まず研究を始めるに当たって、そこ ら辺のレビューをしっかりされておいた方がよろしいかなと思います。

【主 査】 何か。

【国総研】 コストの件はぜひ検討してまいりたいと思っております。あと先ほど波及の例が少し安易な例であったかもしれま せんが、実際に何が起きているか、この中で、これが起こると非常に影響が大きいというのを見逃さないために波及的なものをピックアップしていきたいと考え ておりました。これは少し今のご指摘を踏まえて検討したいと思います。
 それから、今のリスクの評価の件ですが、この辺は今ご指摘いただきましたので、複合的にした場合にはどのようにしていくのかといった点等々踏まえて、今 のリスクプレミアムの考え方等をきちんとレビューして研究に反映したいと思います。

【国総研】 最後のリスクプレミアムの件なのですが、確かに災害が起きたときにそれを防げておければもう少し価値が高いと いったことをプレミアムという形で評価しなさいというご指摘だったと思いますが、まずはこの複合災害の方では人的被害、これをいかに抑えられるかというと ころにまず焦点を絞ってやっていきたいと思っています。もう少し超過を考えて既存の施設を頑張っておけばこれだけ減るのではなかろうかという努力の点をで きるところはどこなのかということをはっきりさせたいというところに今回ちょっと課題を絞っていきたいと思っています。B/Cだとかいうときには、確かに リスクプレミアムを入れると、よりはっきりした効果が出ようかと思いますが、まずは本当に大きな超過外力、複合化を考えたときに最低限、人命は守りたいと 思った時にどういった行動をするかといったところに焦点を絞っていきたいなと考えているところでございます。

【主 査】 他にいかがでしょうか。どうぞ。

【委 員】 これは非常に貴重な、本当に今後やるべきことなのですが、まず1つ、タイトルがちょっと気にはなったのです が、これは想定外という表現を使われていますけれども、これは場合によっては誤解を招く可能性もあるのではないかという危惧がありました。まあ、内容は別 によろしいのですが。
 もう一つ、複合的自然災害というように表現されていますが、この複合という言葉が意外と何となく限定されているようなイメージもするんですね。なぜかと いいますと、地震が起きて津波、それが複合ですよというように言っていますが、実際の災害というのは要するにそれとプラス社会基盤ですね。インフラとか、 地域とか、その素因と組み合わさって起きるので、それがまさしく複合災害なのかというようなところが分かるようにしておけばいいかなと思いました。
 あと最後、線を引っ張っています社会的許容リスクというラインが引っ張ってある図がありましたが、多分、これが「えいや」と引くわけにもいかないし、ど のように設定してというのが、この説明のところがかなり慎重にしておかないとあまりよろしくないかなというその点だけですね。
 以上です。

【国総研】 タイトル等についてはまた検討させていただきたいと思います。それと複合化、これも含めて表現に注意したいと 思います。最後の、多分13ページの「えいや」と入った赤線のこと、おっしゃるとおりでこれはどう設定するのかということは、これだけで重大な研究課題だ ということは認識しております。あまり赤の線は意識せずと言ってはおかしいですが海外のものができていますので、それを見ながら、むしろ、青い線でこの点 線のように膨らむところをどう小さい側に持っていくかというところに重点を置いて評価していきたいなと考えております。

【主 査】 はい。ちょうど時間も参りましたので、皆様、コメントシートの方にご記入いただいて、もし記入のお済みの方で 追加でご質問、ご意見があればお願いしたいと思います。
 私から1つ。複合的な災害として、今回の東日本大震災ではもう一つ原発の問題があったのですが、今回のテーマとしてはそれを排除して津波であるとか地震 であるというスタンスを明確にされておられると思うのですが、それで理解は正しいのでしょうか。

【国総研】 はい。

【主 査】 これで全部ですかね。少しコメントシートを見させていただいて、もう既に幾つかご意見が出ておりますが、全体 では3名の方から一部修正して実施すべき、残りの方々はすべて実施すべきということでございます。是非このテーマについては展開していただければと思いま す。もう既に幾つか重要なご意見が出ておりますが、今ざっと見ているだけなので明確に追加のまとめをするのが難しゅうございますが、全体的に感じる点を申 し上げます。非常に重要なテーマなのですが、何かテーマが非常に大きいわりに具体性が弱いと感じる点があります。研究されることで将来に非常に役に立つこ とは皆さんも認識されておられますが、具体的な方法論というものをしっかり明示していただくことが重要であろうということと、同時にそれによって最終的に 何が具体的に出てくるのかが明確になるとよいかと思います。
 要は、社会的なアウトリーチという言葉もありますが、具体的に何が出て、従来のこういった災害リスクに関する研究成果に対してどこが新しいオリジナリ ティがあって、だからこそ複合災害に対して、なおかつ想定していない、かなり確率の低い、不確実性の高い災害が起きた時にどう生かされるのかというところ を明確にしていただくことが重要だということです。コストについては、もう既にご意見が出ていたと思いますので、是非それを含めて、研究の再構築というん ですか、再検討していただいて研究を進めていただければと思います。というようにまとめさせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。
 それでは、これで2課題終わりましたので、第一部会で担当する研究課題の評価は終わらせていただきます。

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【主 査】 今日、評価いただいた課題の評価書、最終的な作成については、今日の議事録をもとに作成したいと思います。取りまとめにつ いては、それを参考にしながら、私が最終的にまとめて完成させるということでご一任いただくということでよろしいでしょうか。それではそのように進めさせ ていただきたいと思います。第一部会、課題は終わりましたが、何か全体を通じてご意見がございましたら、委員の方からご意見をいただきたいと思います。い かがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、平成24年度開始予定研究課題の事前評価は、これにて終了させていただきます。
 それでは、その他ということで事務局から何かございましたらお願いいたします。

【事務局】 評価書につきましては、先ほどのお話のとおり主査とご相談の上最終的にまとめさせていただきたいと思います。議事録につき ましては、別途委員の皆様方にメールで内容確認の方をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、報告書につきましては国総研資料という形で出版する、それから、ホームページ上にて公開するということで予定しておりますのでよろしくお願いいた します。
 以上でございます。

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【主 査】 それでは、これで分科会の事前評価の議題を終わりということでよろしいでしょうか。

【事務局】 はい。それでは、国総研所長より一言、閉会に当たってのご挨拶を申し上げたいと思います。

【所 長】 本日、たくさん貴重なご意見を本当にありがとうございます。お気づきだと思いますが、2つともかなり野心的なというか、 チャレンジングなテーマだと思います。できれば我々の研究の成果で一歩でも二歩でも進めば、世の中に少し違う景色が見えてくるようなのをできるだけやりた いという思いで所としても応援しているところでございます。
 特に後半のテーマは非常に奥深いわりには準備期間がどうしても、何度も実はブラッシュアップしているのですが、足りないというのは我々もそう思っており ますので、何とか所としても支援体制をつくって具体的に研究が始まるまでの間にもっと内容の絞り込みとか、体制とかいろいろ検討していきたいと思いますの で、今後とも引き続きご指導いただければありがたいと思います。今日はありがとうございました。

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