平成22年度 第7回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第二部会)

議 事 録



1.
開会/国総研所長挨拶

2.
分科会主査挨拶

3.
議事

(1)

本日の評価方法等について(確認)

(2)
平成21年度終了研究課題の事後評価
@建築物の構造安全性能検証法の適用基準の合理化に関する研究
A建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究
 (総プロ:建築設備の安全性能確保のための制御システム等の設計・維持保全技術の開発を含む)
B建物用途規制の性能基準に関する研究
C 都市整備事業に対するベンチマーク手法適用方策に関する研究

(3)

平成23年度開始予定研究課題の報告
D 再生可能エネルギーに着目した建築物への新技術導入に関する研究
E 都市計画における戦略的土地利用マネジメントに向けた土地適性評価技術に関する研究 -集約型都市(コンパクトシティ)の形成に向けて-

4.
その他

5.
国総研所長挨拶/閉会

平成22年12月15日


1.開会/国総研所長挨拶

【事務局】  時間になりましたので、平成22年度第7回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第二部会)を開催いたします。本日は、13時より16時半までの長丁場の会議となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。 それでは、国総研所長よりごあいさつを申し上げます。

【所 長】 年末の大変お忙しいときにお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
 7月のときにも申しましたが、事前にしても事後評価にしても、しっかりと時間を取って、もう少しブラッシュアップしてからご説明したいと考えております。 本日は直接は関係してきませんが、夏に要求する予算以外の事業に関する予算からも看板研究を引っ張り出したいということで、この時期にもう一度お願いする ということになりました。やはり4〜5カ月が経っていますから、我々が見ていてもいろいろ整理が進んだなというのもありますし、そうでないのもあるかもし れませんが、そのあたりを勘案しながら、是非また忌憚のないご意見をいただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【事務局】 ありがとうございました。

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2.分科会主査挨拶

【事務局】  それでは主査にご挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【主 査】  委員の先生方、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。それから他部会の委員の方にもご参加ありがとうございます。
 今日はやや長くなりますが、非常に大事な事後評価がいろいろございますので、よろしくご検討をお願いします。先生方のご発言、ご意見は非常に重要でござ いまして、是非今後の国総研の研究が一層発展するように、エンカレッジするような感じで忌憚のないご意見をいただければ幸いでございます。よろしくお願い します。

【事務局】 ありがとうございます。
 それでは、進行につきましては主査にお願いしたいと思います。
 

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3.議事

(1)本日の評価方法等について(確認)

【主 査】  それでは、まず議事の最初でございます「本日の評価方法等について」、これをご説明ください。

【事務局】  資料2をご覧いただければと思います。評価の方法等につきましては7月にもご説明しておりますので、簡単に説明させていただきます。
 今回の評価案件といたしましては、事後評価案件の4件をお願いするということでございまして、視点と項目についてはいつものとおりです。なお、別添で分 科会委員が評価対象課題に参画している場合等につきましては、今回該当がございません。また、評価結果等につきましては最終的に主査にご確認いただいて、 ホームぺージで公表させていただくことになっていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 めくっていただきまして、横表がこういう形であると思います。これが本日の議題でして、事後評価と報告課題となっています。事後評価は4本を予定してい ます。報告課題につきましては、これは皆さんがご覧になっていると思うのですが、D、Eにつきましては7月に既に事前評価ということでいただいたもので す。先ほど所長から話がありましたように、7月から若干検討が進んだ部分もございますので、またプロジェクト研究として所の看板研究ということで説明する ということもございますので、改めてこの場で報告をいただいて、意見をいただくということでございます。
 それから、本日の評価の手順ということで、1枚パワーポイントでカラーのものをつけております。評価の流れということでちょっと絵が入っているものでご ざいます。時間につきましては、ここに書いてありますとおり、40分の中で説明15分、質疑20分、評価シートの記入3分、主査の取りまとめ2分という流 れで予定していますので、この流れに従って評価を進めていただければと思います。以上です。

【主 査】 ありがとうございます。先生方、今の進め方に関して何かご質問ございますか。
 それでは、ご承認いただいたということで、順番にやればよろしいわけですね。

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(2) 平成21年度終了研究課題の事後評価

【主 査】  では、最初の事後評価の課題からお願いします。
 

〈事後評価〉@ 建築物の構造安全性能検証法の適用基準の合理化に関する研究

【国総研】 それでは、1番目の課題につきましてご説明させていただきます。題名は「建築物の構造安全性能検証法の適用基準の合理化に関する研究」としています。
 研究課題1番目です。建築研究部と総政センター、2つの研究部の共同で行っています。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ 背景ですが、耐震偽装事件が平成17年度に発生して、それを受けて建築基準法が改正されています。そのとき問題になったのは、検証法自体の適用方法に 曖昧な部分があると。そこで基準法改正では全体的に安全側にシフトしたということでございました。その結果、基準の適用に、やや硬直化した部分が生じまし たので、そういう部分については、適応基準を明確にして設計の自由度を確保できる仕組みを確立していきたいと考えました。
 そこで、本研究では、各種検証法における余裕度なり安全率の実態なりの調査・検討を行いまして、そういったものをより合理的に設定できるようにして、検証法の適用基準の明確化、合理化を図りたいと考えています。これが研究の概要です。

・ 具体的な研究課題の設定に当たってですが、初年度に特定行政庁へのアンケートと性能評価機関等にヒアリング調査を行い、あとは国総研の方で基準法改正後に行った電話相談などを通して、現状での問題点を把握したということでございます。
 それを受けまして、RC造と木造につきまして課題を設定しています。
 RC造については、1番目に限界耐力計算における各種係数の設定とあります。保有耐力計算と限界耐力計算を比較した場合に、限耐法の方が一般的には断面 を小さくできて経済的な設計ができると言われていますが、逆を言えば、従来の保有耐力計算に比較して安全率、余裕度は少ないのではないかという指摘もあり ました。それを受けまして、限耐法におきましてどのように安全率、余裕度を確保させるかということを検討しています。a−2、a−3につきましては、保有 耐力計算の適用に当たり、曖昧さの多い部分として偏心率規定と基礎杭の設計を取り上げました。
 木造については、本研究の事前評価時に小規模構造物についても検討を行うようにという指摘を受けましたので、検討課題として取り上げております。この課題についてはケーススタディを数多く実施しています。

・ これは研究のイメージでありますが、実際の検証法を考える場合に、荷重なり構造特性にばらつきがありますので、ある程度の余裕度を持たせる必要がある と。そうした場合に、特異なケースを想定して、基準法改正時には、こうした余裕度をやや過大に設定しています。そこで余裕度をもう一度見直しまして、より 合理的に設定できるようにしたいということです。
 RC造については保有耐力計算、限界耐力計算を取り上げています。木造については、壁量計算、許容応力度計算、限界耐力計算を取り上げています。

・ 本研究での検討方法でありますが、多くの場合でケーススタディを積み重ねまして、余裕度の把握を行った上で、適用基準の考察・検討を行っています。 ケーススタディにおきましては、試設計建築物群を作成し、数値解析を実施して、それで時刻暦応答解析結果との比較でありますとか、各種検証法相互の比較で ありますとか、着目パラメータに関して感度解析を行いまして、適用基準の考察・検討を行っています。ただし、課題のa−1につきましては、信頼性解析を適 用して、必要余裕度設定のための定量的方法についても検討を実施しています。これは研究項目(1)に対応しております。

・ ここから個別の課題に移らせていただきます。
 初めに限界耐力計算の検討になりますが、限界耐力計算におきましては様々な係数が含まれています。これらの係数は地震動のレベル、地震動特性のばらつき でありますとか、地震応答のばらつき、構造特性のばらつきを多分に含んでいます。このようなばらつきを考慮した結果に、どのように余裕度を見込んで各種係 数を設定するのかということを検討しています。

・ 検討の流れでありますが、はじめに試設計建築物群を作成いたしまして、それに関しまして実地震動を、任意に選択して時刻暦応答解析を実施して、結果を 統計処理して破壊確率を求めています。一方で、信頼性解析に基づきまして係数等の設定手法を検討、提案しています。この提案方法について、時刻暦応答解析 による破壊確率との比較検討を通し、理論的な妥当性を検討した後、信頼性解析に基づきまして限耐法を構成する各種係数の安全率設定について検討を行ってお ります。グラフでは応答のばらつきや等価粘性減衰定数のばらつきの例を示しています。

・ これは提案した手法の概要であります。いわゆる線形2次モーメント法を応用したもので、非常にベーシックな方法であります。ただし、線形2次モーメン ト法に用いる微係数は、解析的に求められないので、スライドの右端のところに示すように、これを求める部分でやや工夫を加えています。確率変数といたしま しては、安全限界変形角、PGA、応答加速度スペクトル、Fh、heqなどのばらつきを考慮に入れています。

・ ここで、各係数のばらつきをモデル化しています。ばらつきの様相は対数正規分布で表せるとして、平均値なり標準偏差を設定して、提案する信頼性解析の方法に基づきまして係数を設定しています。

・ これが結果でありまして、左端のグラフで、直接応答解析から求めた破壊確率と、提案手法による破壊確率を比較しておいて、それで手法の妥当性を確認し ています。その上で、係数の余裕度設定について検討しています。この場合には、heq、すなわち、等価粘性減衰定数については現行基準よりもやや小さめに 設定すべきという結果が得られました。
 こういった手法を積み重ねていくことによって各種係数をより合理的に設定できるのではないかと考えています。これが1番目の課題であります。

・ 次に、偏心率規定であります。保有耐力計算において、偏心率規定のところは、適用方法に非常に曖昧な部分が多いところであります。そこで、時刻歴応答 解析による試設計建築物の応答解析結果とFe値との関係を比較照合して、現行のFe値規定の適用方法について検討しています。

・ 結果のみざっと説明させて頂きます。現行基準に基づき計算されるFe値と動的解析から求められるFe値相当の値を比較しまして、例えば、Fe値の計算結果に与える杭剛性の影響でありますとか、偏心率規定の余裕度について検討を行っています。

・ 3つ目の課題の基礎杭の問題ですが、初めに特定行政庁にアンケートを行いまして、非常に基準の適用において、曖昧な部分が多いということが分かりました。

・ このように数多くのアンケートを実施しております。最終的には基礎杭の基準の適用方法を検討するにあたっては、基礎ばねが上部構造に及ぼす影響等について検討する必要があるという考えに至っています。

・ この課題についても試設計モデルを作成いたしまして、基礎ばねの設定はどのように上部構造に影響するか、あるいは基礎ばねのばらつきをどのように評価すべきかということを検討しています。

・ これは最終的な結果であります。基礎ばねについては必ずしも柔らかめに設定するのが安全側であるとは限らなくて、鉛直剛性にばらつきがある場合には固 めに評価する必要がある場合もある、基礎ばねを硬めに設定する方がDsについては厳しめになる場合もあるという結果を示しています。これによって、基礎ば ねの設定におきましては、上部構造への影響も見ながら検討する必要があるということを示しています。

・ 続いて木造でありますが、これについてはやはり試設計モデルを作成いたしまして、壁量計算、許容応力度計算、限耐法の余裕度、安全率を調査、検討しています。階数をパラメータに選んで、2階建てと3階建てについて、ケーススタディを行っています。

・ 結果でありますが、各種検証法による試設計建築物に対し倒壊まで追跡できる精緻な時刻歴解析を実施して、それで現行基準の余裕度を調べています。2階 建て、3階建てのそれぞれの結果を見てみますと、壁量計算の場合に3階建ての場合で安全性に余裕度がなくなるということが明らかになっています。あとは接 合部設計法を組み合わせた場合についても同様の解析を実施しておいます。

・ それがこのスライドであります。木造の場合については接合部について、N値計算とか仕様規定、あるいはラーメン置換、剛盤法とか多種多様な設計法がご ざいまして、その組み合わせに応じて安全率がまた変わってくる。限耐法の場合には剛盤法みたいな接合部にとってかなり有利な設計法がされても余裕度は確保 できる。ただし、許容応力度計算等の場合には剛盤法みたいものは使えないということを明らかにしています。要は、こういった接合部設計法と全体構造の検証 法で、いいとこ取りはできないという結果を示しております。限耐法を使う場合には接合部の設計に剛盤法を適用するのは妥当であるというように、接合部設計 法と検証法の最適な組み合わせについて結果を得ています。

・ 以上のような検討を踏まえた本研究成果の活用方針でありますが、当面は各種検証法の運用支援のための技術的なバックデータとして活用したいと考えてい ます。例えば、民間等におきまして接合部設計法なり新しい種類の接合部が開発された場合にどのように基準値を設定するかということに使ったり、あとは各種 の技術基準解説書に反映したり、あるいは現在住宅局の方で進めています建築基準整備促進事業での課題設定なり取りまとめ方針等に活用したいと考えていま す。

・  今後の取り組みでありますが、余裕度や安全率は、従来からの経験工学的な知見の積み重ねによって構築されている部分でありますが、本研究では、こうした 部分について、ある程度定量的に把握する試みを行ったと考えています。この部分については非常に恣意的な判断を生じやすい部分でありますので、今後とも余 裕度設定なりのデータの積み重ねなり理論的な研究を継続することによって、将来的、信頼性設計の確立につなげていきたいと考えています。以上です。

【主 査】 ありがとうございました。それでは先生方、ご自由にご発言をお願いします。

【委 員】 確かに余裕度、あるいは安全率の中に含まれる余裕度がどれぐらいか、個々の安全のための係数に含まれている余裕度は違うという観点ですね。法 律を制定する時点ではそこまで十分に考えないでつくった部分もあるので、今はそれを考え直しているということですが、結局そうやって出てきた安全率、余裕 度、こういう検討を踏まえて値を変えるというようなことまで考えておられるのか。つまり、今のところ安全率が高過ぎると思われるものは、それを少し下げる とか、その反対のことをやるとか、いろいろな事象に含まれている安全率の均一化を図るということは考えておられるのでしょうか。

【国総研】 今はどちらかというと、これまでの規定が厳しかったということで、少し緩和の方向に動かせないかというような世の中の動きがあります。そうい う中で、厳しくする方向での検討というのは頭の中に置いておいて、緩和できる方から動かしていくというのが現実的かなと思っています。
 それから、ここで検討した信頼性だとかばらつきみたいなものに関する考え方をしていない、基準整備等の別途の検討で行われている平均値だけを出してくる ような検討結果を見るときに、ここで得られたばらつきみたいなものについての知見に配慮しながら、そのような提案だとかを受け入れていくかどうか検討した りするのに使っていくというような形を、どちらかというと考えています。
 お答えになっていますでしょうか。

【委 員】 分かりました。実際上の数値を即座に動かすということよりも、個々の数値の中に含まれる安全率を十分把握した上で将来に備えるということだと思うのです。
 多分、構造の人間は私だけかと思いますのでちょっと話しますと、基本的な問題として、構造特性に関係する数字を、理論的に、あるいは何かバックグラウン ドをはっきりさせて決めるのは非常に難しいものがある。さっきありましたような地震のレベルだとか、減衰定数の問題だとか、限界変形の問題だとか、どれも それなりの成果はありますが、最後はばらつきをある程度考えながら誰かが決めざるを得ません。そういう約束事ではないかと思うのです。約束事と言うと言葉 は悪いのだけれど、約束事の感覚があった方が法律を運用しやすいと思うのです。例えば設計震度0.2というのはもう何十年も前に決められことでしょうが、 約束事以外の何ものでもなくて、最初は実際にそれぐらいでやったら良いだろうという、ただそれだけの感覚でつくられたものなのだと思います。今になってみ ると、ずっとそれをやってきたから、もはやそれにクレームをつける人はいないのです。つまり、ある種の合意が形成されているように思うのです。だから、構 造のためのいろいろな数字は、結果的にそれが経済性に反映されるので、厳しくすると不経済になるし、甘くすると危険なものができるかもしれない。だけど、 正確に値を決めるといいましても、その根拠は余りない。だから約束事のような感覚で、それを合意まで持ち上げる必要があるのではないかと思うのです。どう やったらみんなが合意するか、そこのところにエネルギーを注いでほしいのです。何度も何度も言えば合意されるかもしれない。でも、それは失敗の上だと合意 されないので、今までよりは設計が少し簡単にできるようになったとか、あるいは地震で壊れる率が昔の設計されたものよりはうんと少なくなったというような ことを踏まえて決めていかれるものだろうけれど、とにかく国民全体の合意を図る努力を図ってほしいと思うのです。つまり、構造のための数字は合意された約 束事である、その感覚が必要なのではないかと。
 ちょっとこのテーマから外れましたが、前から思っていたことなので今申し上げました。

【主 査】 ちょっと幅広い立場からのコメントですね。
 この研究の例えば目標達成度とか、その辺りは余り仰らないのですが、それは如何ですか。

【委 員】 それは、やはりできたところまでは達成されているし、とにかく安全率のばらつきを含めて信頼性解析を用いたような方法でそれを定量化して、設 定のさらなる定量化に向けて検討すると書いてあるので、それはそれで成果は上がったと思います。今までにこういうプロジェクトはやられなかったように思う のです。数字の信頼性だとかばらつきを考慮して云々というのははじめてやられた問題なので、これからこの種の方法が広く使われていく第一歩になると思いま す。

【委 員】 全くの素人なので的外れな質問になってしまうかもしれないのですが、実際にこういう構造の安全性ということを考えるときには、例えば施工によ るばらつきだとか、あるいは経年劣化によるばらつきだとか、いろいろなばらつきがあって、そういったものにある程度耐えられるということで安全率を決める ような気がするのです。そういう意味で言うと、そういったことについてのばらつき、つまり現実の建築物、ある程度供用を開始してしばらくたったものに関し て得られるそのもののばらつきというのをどれだけ今回の研究が模しているのか、あるいはその中のある特異な部分をやっているのかというのがちょっと分から なかったのですが、これは如何でしょうか。

【国総研】 ほとんど入っていないと私は理解しています。施工のばらつきだとか経年劣化みたいなことは入っていません。ですから、ここで検討した結果とい うのは、それを踏まえた上で、例えば木造であれば、木造の建設だとかそういうのに関係する専門家の人たちに入っていただいて、経年劣化だとか施工のばらつ きだとかいうのを加味した上で、最終的には新たな基準だとか基準の改正だとかいうことを考えるときにはやっていかなくてはいけないというのが現実的だと思 います。その辺りの調査はできればこれからやりたいのですが、なかなか大変な作業になってくるのかなと。

【委 員】 要するに、ここで安全率が高過ぎると出ても、それは高過ぎないかもしれないということになるわけですか。

【国総研】 はい。それは施工だとかそういうばらつきがしっかり入ってこないといけないので。ここはあくまでも、理想的な状態でできているものがどのぐら いの特性を持っているものなのかというような観点から見ています。それから、構造性能についても、同じものをつくってもある程度ばらつきはありますので、 その辺りについても同じような問題があると思っています。

【主 査】 これはあくまでも設計図書の審査、つまり設計段階の審査でもって、その先の話は関知していないわけですね。

【国総研】 技術基準をつくる段階では、施工のばらつきだや経年劣化みたいなものをイメージした中で、先ほどのお話にもありました「約束事」としてここにしましょうと決めて、あとはその決めたレベルで…

【主 査】 この研究は設計図書の検証法の話なのでしょう。

【国総研】 はい。

【主 査】 仰るように構造の体系の前提にはそういうことが入っているかもしれないが、ここで研究しているのは別に施工とか経年とか、そんなことは検討対象にしていないですよね。

【国総研】 はい、ここではしていません。

【委 員】 これは私も全く素人でわからないのですが、本日配布いただいた資料1のところで、自己評価では目標の1とか目標の3の部分について△という評 価をされているのですが、こういう評価をされた理由というか△になった理由というのは、目標が非常に高過ぎたのか、あるいは研究方法において幾つか不十分 な点があったのか、そのあたりをわかりやすく、わかればご説明いただければと思うのですが。

【国総研】 全般的な話は私の方からさせていただきたいと思います。事前評価のシートが1枚紙でついていますね。その裏を見ていただきますと、大分たくさ んのご意見をいただいています。非常にたくさんの課題についてこの中でやっていただきたいというふうに出ています。この辺りも加味した上で、直接担当した 者がそういうご指摘に対して考えるととても◎はつけられないということで、こういう点数になっています。ただし、私は、この研究が始まった後、基準整備促 進事業などが始まっておりまして、別途の予算の中で幅広な検討が進められるようになってきていることを考えると、この研究を始めたことが非常に大きな意義 を持っていたのではないかと考えておりまして、その辺りもうちょっと甘くつけても良いのではないかなというのが私の考えです。

【主 査】 分かりました。今の話に関連して教えてほしいのですが、△と○というのは、例えばこれは4段階の2番目とか3番目とか、そういうルールはあるのですか。

【国総研】 横表の一番下に達成度◎、○、△、 ×ですから、4段階評価ということになっております。

【委 員】 私の理解では、事前評価段階で出た要求には必ずしもすべては応えられなかったという点で自己評価的には△だというご説明ということですね。

【国総研】 はい、そうです。

【委 員】 特に目標1と目標3についてそういう部分があったと理解して良いわけですね。

【国総研】 はい、それでよろしいと思います。

【主 査】 先生方、ほかには如何でしょうか。自分で△をつけてしまうと、こちらも困るね。幾らエンカレッジすると言っても。それから、説明がわからないので、もうちょっと練習してもらいたいですね。

(事後評価シート回収)

【主 査】 これを見ると議論の余地は余りないように思いますが、両方とも2番ということで、先生方、よろしいですか。
 コメントは余り詳しく紹介しませんが、お願いしたいのは、私もさっき申し上げたとおり、委員の方でも理解できるのは構造関係の方だけだから、他の分野外 の委員が分かるような工夫をしていただかないと、そもそもこういう評価はできませんので、それをよろしくお願いします。どうもありがとうございました。

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〈事後評価〉A 建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究
(総プロ:建築設備の安全性能確保のための制御システム等の設計・維持保全技術の開発を含む)

【主 査】 それでは次、建築空間におけるユーザー生活行動についてお願いします。

【国総研】 よろしくお願いします。私の方から、2番目の資料の束の後ろのパワーポイントを使いまして、プロジェクト研究「建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究」についてご説明させていただきます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ プロジェクト研究としてやっていますが、中身は@、Aと、予算上2つございまして、通称「日常安全に関する研究」と呼んでいます事項立て研究、それか ら通称「エレベーター総プロ」と呼んでいますもの、この2つを連携させて行ったものです。総プロの方は、外部評価、また別途の本省の評価委員会があるとい うことで、本日は日常安全に関する研究の方を中心にご説明させていただきます。

・ まずこのプロジェクト研究全体の概要です。2ページです。要は、両方とも建物の中の事故をできるだけ減らしていきましょうということを大目標にして研 究の出発点としています。従いまして、そのいずれも、やり方はちょっと違いますが、事故事例の収集・整理・分析というところから出発いたしまして、建物の 中の転倒、転落といった日常事故予防につきましては、情報提供による事故の予防をしていこうということで、知識ベースと呼んでいます「建物事故予防ナレッ ジベース」のWebサイトの開発を最終的な目標に置きながら調査を進めています。
 一方でエレベーター関係につきましては、その出発時に大きな事故、シンドラー社製の戸開走行事故 があったということもありまして、そういった事故事例の分析とその対策情報から成る情報提供だけではなくて、具体的な基準の強化、追加すべき基準の中身、 あるいは仕様の中身につきましても研究させていただきまして、建築基準法の施行令改正等につながっているという状況でございます。

・ 成果の概要、3ぺージですが、ナレッジベースの方は昨年の夏から国総研のホームぺージにぶら下げて公開しておりまして、3万件ほど、昨日に見ましたら 3万1,000件ほどアクセスがある状態です。実務の方からはデザインレビュー等に活用していますといったような生の声も寄せていただいておりますし、あ るいは投稿された事故情報をきっかけに業界団体の方で自主的にガイドラインづくりに取り組んでおられるケースもあります。その他、公共団体やあるいは建築 士の講習テキストに活用していこうというような動きもあります。
 一方でエレベーターの方につきましては、先ほど申し上げましたように具体的な戸開 走行防止の基準づくりにも取り組みまして、実際に21年9月以降、二重ブレーキ等の基準強化が行われまして、この1年で概ね2万台のエレベーターに既に実装されているというような状況。その他いろいろな基準への反映も、現在行われつつあるということでございます。

・ ナレッジベースで、先ほどデザインレビューに使っていますなんていう声がありましたというお話をさせていただきましたが、4ぺージ、これはシンポジウ ムをやらせていただいたとき、あるいはテストモニターの方からの生の声ということで、そういったお声もいただいています。

・ それでは、日常安全に関する研究の中身につきましてもう少し詳細にご説明をいたします。

・ 6ぺージですが、これは当初の事前評価、それから研究過程での対応ですが、当初の事前評価では、こういった情報が設計者や利用者、生活者に利用されや すいものになるように留意して進めてくださいということでして、そういった意味では、研究過程でも、一般の利用者、さらには設計者の方、あるいは管理者の 方、それぞれ分かるような形で留意事項、対策技術等も盛り込みまして、利用者の特性に応じ、わかりやすいような構築を念頭に置きながら開発しております。

・ 研究の出発点ですが、遡りますと、六本木の回転ドア事故などもありましたし、高齢化が進んでいくとどんどん建物内の転倒、転落といった事故が増えていくだろうということを背景に、そういったものを少しでも減らせないかというのが大きなきっかけです。

・ 調査の最初の方では、ではそれがどれぐらい将来的に増えていくのだろうかという調査をしておりまして、人口動態統計で見ますと転倒、転落が圧倒的に多 いわけですが、建物内あるいはその周辺に限ってみても、年間で2,600人ぐらいの方がこういった転落、転落といった要因で亡くなっておられるというのが 現状です。

・ これをさらに、将来どうなるかということで一定のざくっとした仮定を置いて分析しますと、年間120人ほど増えていって、将来的には5,000人を超える方がこういった要因で亡くなられるのではないかというような将来推計をしています。

・ こういったことから考えますと、できるだけ役に立つ情報を提供して、少しでも事故を減らしていこうという研究にどうも意味があるのではないかいうことを再確認させていただきました。
 ただ、建物内の日常事故、特に転倒、転落といったようなものにつきましては、まとまった事例というかデータみたいなものは特にございませんので、まずど うやって収集するかということで、インターネットを使いましてアンケート調査等々でかなりの事例を収集しました。ちょっと使えないものもありましたが、 ざっと1,000件ほどこういったもので集めています。その他、弁護士委員のご協力を得て、裁判の判例でありますとか、あるいは学校関係の団体で収集され た例もありますので、そういったものも事例として収集しています。

・ アンケート調査の結果を俯瞰しますと、13ぺージですが、やはり転倒、転落といったものが全体でかなり多いわけですが、他にもぶつかりとか挟まれといったものもそれなりにございます。

・ 特に年齢別に見ますと、高齢者の方でかなり大きな怪我につながるといったような傾向も見て取れるところです。

・ 裁判判例につきましては、140件ほどの分析を弁護士さんの委員の方のご協力をいただいて行っていますが、用途によって建物の安全水準が違っていた り、あるいは事故当時の状況といいますか、一概に管理者や設計側に責任があるわけではなくて、当然利用側の方にも、使い方、状況によってはかなり過失が認 められるといったようなことも分かってまいりました。

・ こういった事故の事例を個別に見てまいりますと、16ぺージ上の方にございますように、利用者の不注意で生じる事故も多いわけですが、設計や管理段階 で少しでも配慮いただければ予防できるものが多いのではないかと見られますので、そういった意味で有意義な情報を提供していって、少しでも設計・管理段階 での配慮を促していこうということです。

・ このWebサイトの構成につきましては、委員会を構成しまして、専門の先生からもいろいろご意見をいただきながら進めました。事故パターンを提示したり、事例の閲覧機能、さらには投稿機能も備えていこうということで検討しています。

・ 全体集めました事故事例につきまして、いかにわかりやすく情報として提供するかということで、事故パターンごとに分類していって、結果どういう動作が 事故につながったか、原因等について分析した上で、段階的に整理しています。またさらに、事故パターンごとに設計上の留意点あるいは利用管理団体での留意 点といったようなものも記載しています。

・ 全体の構成は19ぺージです。

・ 個別に見てみますと、基本形が20ぺージ。事故パターンから見るパターンですと、トップから入って、「事故パターン」というところに入ると、こういう パターン別の分類が出てまいります。ここで例えばこいつについてもう少し中身が見たいということでクリックしますと、この事故パターンについて、詳細な中 身と、あるいは建設管理段階の留意点といったものも出てまいります。

・ 検索の方でいきますと、これは最初の全体の検索画面ですが、例えば「転落」というところにクリックをして表示をさせますと、転落関係の事故事例、この場合ですと90件ほどが出てきます。

・ さらに個別事例の「詳細」というところを押していきますと、個別の事故の詳細事例まで紹介される。物によっては、画像つきで、具体的にこんなところでこんな事故が起こりましたという情報も提供させていただいております。

・ あと、判例収集でやったものにつきましては、具体的な判例につきましても、これは判決文そのものですと読んでもわかりませんので、弁護士の委員の方に 書き下していただきまして、どういった事件でどういう過失がどちら側に認められたのかといったような情報を掲載させていただいております。

・ その他、投稿機能として、24ぺージですが、事故情報あるいは工夫事例の投稿も受けられるような機能をつけています。

・ さらに国土交通本省、消費者庁のシステムとのリンクも張っています。

・ 普及につきましては、今年の初めにシンポジウム等をやらせていただきまして、これも非常に好評でした。

・ 今後につきましては、事例追加等をしていきたいのと、さらに普及、利用者の拡大に向けて取り組んでいきたいと思っています。その具体的な動きとして も、最初に少しご紹介した多機能トイレのドアで挟まれた事故があったというような例が投稿されまして、それを関係団体に提供しましたところ、ではそのガイ ドラインづくりを検討しましょうということで、今実際にご検討いただいているというようなケースもあります。

・ それから、並行してプロジェクト研究として連携してやっておりますエレベーター総プロについても簡単にご紹介します。

・ エレベーターはご存じのように今では日常的に利用していますが、平成18年に竹芝で戸開走行による死亡事故が発生しました。

・  エレベーターは制ご機構がかなりブラックボックス化しておりまして、そういう中でこういった事故を防止するためにどうしていったら良いかという検討を、関係機関を交えて実施させていただいております。

・ エレベーターの方も事故事例の分析等いたしておりますので、こちらの方はナレッジベースの方にもうちょっとわかりやすい形で掲載するということで、今アップ寸前の状態になっています。

・ その他、エレベーターの方は基準づくりを念頭に置いたということもありまして、国際規格の比較分析等もしておりまして、そこからどういった安全性能を本来要求しなければいけないかという検討をさせていただいております。

・ かなり具体的な部分では、38ぺージまで行きますが、1つは戸開 走行で事故があったということで、戸開走行防止装置。従来の制御回路とは独立した形で戸開走行の検知装置―と言った方が良いかもしれません― の仕様開発をしております。

・  さらに、ブレーキにつきましても、シングルではなくてダブルにするということで、どういった方式が良いのかという技術開発もしています。

・  こういった方式の有効性、さらに性能評価をするときの評価法についても実証実験で確認させていただいております。

・  その他、技術開発としては、設計段階でのリスク評価。

・  あるいは維持保全関係の技術開発もさせていただいております。

・  その他、さらにエレベーター以外、43ぺージですが、エスカレーターやその他の機械装置等々につきましても、エレベーターの成果を応用して検討をしております。

・  さらに遊戯施設につきましては、これも今年の初めに、研究成果の報告を兼ねましてシンポジウムをやらせていただきました。こちらの方は是非もう一回ということで、今、第2弾の企画中です。

・  最後に今後の全体の方針ですが、45ぺージです。1つは、建物事故予防ナレッジベースにつきまして、さらにその中身のコンテンツの充実を図っていきた い。今年度所内の方で少し予算をやり繰りしていただきましたので、追加作業をしたいと思っております。さらに、いろいろな機関・団体等と連携して普及のた めのいろいろな機会あるいは媒体を拡大していくための連携を推進していきたいということが大きな1つ。具体的には、設計者向けの法定講習ですとか公共団体 の広報誌、ホームぺージなどについて、今もご相談いただいている、検討していただいている例も幾つかございます。
 もう1つは、基準やネットワークといった具体の動きにつながる動きの推進ということでございまして、エレベーターのISO対応ですとかエスカレーターの JISについてはこの研究をきっかけに取り組んでいこうということで、体制づくりが、現在進められているところです。自動ドアについては、先ほど申し上げ たナレッジベースをきっかけにしたガイドラインづくりが進んでいますし、遊技施設や学会の方でも関係者のネットワークをもう少しつくれないかということ で、この研究に携わっていただいた方を中心に、そういったものをつくれないかとい検討していただいているところです。
 説明は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
 それからすみません、追加ですが、ナレッジベースの方は休憩時間にでも実物が触れるようにパソコンを準備しております。 どういうものなのかということは、是非 触ってみていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

【主 査】 ありがとうございました。大変良く分かりました。確認ですが、これは日常安全とエレベーター総プロ、両方評価対象なのですね。

【国総研】 本日の評価は日常安全の方ということでお願いしたいと思います。そういう整理だそうです。

【主 査】 上の方だけね。

【国総研】 はい。プロジェクト研究としては総プロも含めてプロジェクト研究になっているのですが、総プロの方は本省の外部評価委員会で別途やることになっております。

【主 査】 そうすると、何で評価対象でないものを説明したのですか。

【国総研】 プロジェクト研究としてはそこまで含まれているので説明する。ということで整理されたと理解しています。

【主 査】 では、委員の先生方、前半が評価対象です。日常安全についてですね。ご意見、ご質問がございましたらお願いします。

【委 員】 研究目的とやられたことの関係を伺いたいのですが、確かにナレッジベースをかなり充実させて、それをかなり公表したということについては非常 によくやっておられると思うのですが、もともとの研究目的というのは日常安全対策の充実を図るということで、対策のところをすごく強調しているような感じ がするのです。あるいは最初のぺージのところでも「評価・対策技術に関する研究」ということで、対策というところをかなり強調しているように思うのです が、実際にどういう点が問題だったかというところまでは多分このナレッジベースですごく出ていると思うのですが、その結果の対策としてどのようにするのが あるのかとか、あるいは可能性の中でどのような形でプライオリティが考えられ得るのかとか、そういう対策に対する貢献の部分というのがちょっと分かり難 かったのですが、そこを教えていただけますでしょうか。

【国総研】 補足でちょっとご説明させていただきますと、途中段階でも少しありましたが、対策技術という意味では、事故パターンごとにどういった対策があ るのかということも並行して調査・検討いたしまして、このナレッジベースの中で、ちょっと見難いですが、建設段階の留意点、管理段階の留意点ということ で、それぞれの事故パターンごとにどういった対策技術があるのかということをナレッジベース上で紹介させていただいているということと、さらに深く調べた いという人のニーズに応えるために、ちょっと画面が用意できていませんが、関連するいろいろな研究でありますとか、国総研を含めて関連するいろいろな既往 の研究につきましても、関連情報が検索できるように、これも事故パターンごとに検索できるように構成させていただいております。

【委 員】 例えば東大の工学系研究科で堀井先生という方がいて、彼は、こういう建築系だけではないのですが、工学的な事故の同じようなデータベースをつ くって分析するようなことをやっておられるのですが、そこのところで対策に関するヒントが得られるような整理の仕方を上手にやっておられるので、参考にされると良いのではないかと思います。

【国総研】 是非勉強させていただきたいと思います。

【委 員】 私も発表を伺っていて、非常に有用なナレッジベースづくりというので、わかりやすくて理解できたと思います。このプロジェクト研究の目標とし ては、こういうナレッジベースを構築するということで十分な成果が得られたと思うのですが、実際この後どうやってこれを運営していくかというのは多分研究 事にはならないとは思うのです。せっかくこういうのをつくられた以上、多分どんどん発展していく、まさにそれこそがナレッジベースの一番有用な点だろうと 思うので、相互応答性も含めて、これをどのようにしていくのか。多分プロジェクト研究でやったという意義はあると思うのですが、これをどうやって発展させ ていくか、何かそういうことについてのお考えとか展望がおありだったらお聞かせ願えればと思います。

【国総研】 このナレッジベースの管理段階でどのようにやるかということだと思いますが、幸い、もう少しつくり込みをしたいなと思っておりましたら、研究 の予算自体はもう終わっているのですが、今年、所内の方で少しお金をやりくりしていただけるということでしたので、中身的には薄いので、本来はこんな工夫 していますとか、あんな工夫していますみたいな投稿をもっといただけばと思っているのですが、こっちから呼びかける等も含めてそういった部分の充実をして いきたい。できれば今年度中にシステム自体の作り込みはしてしまって、中身の情報の追加自体は我々研究者の方でもある程度できますので、来年度以降も引き 続き可能な範囲でやっていければと思っています。

【主 査】 今のは私もお聞きしたいと思っていたのですが、これは事後評価ですよね。事後評価というと、これはいつ終った話なのですか。今年の3月ですか。

【国総研】 そういう意味ではプロジェクト研究全体としては分かり難いのですが、日常安全に関する事項立て研究としては20年度に終了しています。連携し てやっておりましたエレベーター総プロも含めたプロジェクト研究として終了したのが昨年度ということで、今回の評価をお願いしているということです。

【主 査】 そうすると、20年度で終わったやつの評価と考えてよろしいわけですね。

【国総研】 はい、結構です。

【主 査】 その理屈から言うと、その時点で、例えば結果の中にそれ以降のケアをするシステムも含めてやったというような内容になっていれば、ただいま仰った説明は大変高く評価できるのですが、そういうことになっているのですか。

【国総研】 そういう意味では、この当時の調査・研究でそのようになっています。

【主 査】 国総研の方で継続的にケアをすると。

【国総研】 はい。それは当初から我々が自分でできる範囲のシステムをつくるという限定でやっていたので、そのとおりです。

【主 査】 はい。

【委 員】 建物に関する安全ということで、とても有益な研究だと思います。ちょっと教えていただきたいのは、13ぺージの棒グラフで、墜落、転落、転倒という言葉が出てまいりますが、この言葉の定義を最初に確認というか教えていただきたいのですが。

【国総研】 厳密な定義というわけでもないのですが、基本的には、まさに窓から落ちるとか、天窓を突き破って落ちて怪我をした、亡くなられたというような ケースは墜落。それから、転落と言っていますのは、例えば階段からころころと転がっていってしまわれたというようなケースは転落と分類しております。何と なく空間的にごそっと落ちるようなものを墜落、その他のごろごろと落ちたりするようなケースは転落という整理をさせていただいております。

【委 員】 ありがとうございました。良く分かりました。関連で、18ぺージにツリーが出てまいりまして、今回の検討は、今の墜落、転落、転倒という言葉 の中で言えば、転落、転倒に重きを置くというご説明があったと思うのですが、この右側のツリーは墜落、すなわち窓から直接手すりを越えて落ちてしまうと か、そういうことだと思うのです。これは例えば、このツリーの構成比、事故につながる動作の割合ですね、こういうのはどこかで整理されていますか。

【国総研】 説明が悪くて申し訳なかったのですが、最初の将来予測をする段階では、人口動態統計でいきますと転倒、転落といったものがかなり多いだろうと いうことで、そこに的を絞って現状分析あるいは将来予測をさせていただいたということです。その後、アンケート調査等につきましては、転倒、転落だけでは なくて、建物、その周辺の日常事故ということで調査をさせていただいていますので、転倒、転落以外のものもかなり入っています。こういったツリーにつきま しては、そういう意味で他のパターンのものも含めてパターン整理をさせていただいておりまして、全体で110パターンほどの分類をつくらせていただいて、 そこに約800件の事故事例が分類ごとにぶら下がっているとご理解いただけばと思います。多い少ないは一概には言えないというか、もともとがアンケートで すので、そこまでは余り念頭には置きませんでした。

【委 員】 ありがとうございます。すみません、最後に、私は非常にこれに興味があって、何回もご質問して恐縮なのですが、転倒、転落で階段の手すりの話 がございますね。既存の建物、既存不適格というのですか、昔の建築基準法のときにつくられた建物で、例えば飲食店で非常に多くの人が集まるようなところで 手すりがないのがあるのですね。今回の研究で、例えばそういうところの階段の素材とか手すりがないことによる転倒事故が多いから、それを強制的につくらせ る、付けてさせる指導につながる、このような観点からでは如何でしょうか。

【国総研】 私どものスタンスとしましては、どちらかというと個別のビルごとの管理者、設計者の方に、設計をされる過程でこういう部位についてはどういう ことに気をつけたら良いのか、過去にどんな事故が起こっているかというようなことを提供させていただいて、一工夫、例えば手すりをつけるというようなこと もその1つだと思いますが、そういった工夫をしていただければと思っておりまして、そういう意味で言うと、いわゆる行政手段、法令による規制も含めた行政 手段で何かしていこうということはこの研究自体では余り想定していなません。むしろ、こういう対策は、一律の手段よりは、それぞれ建物ごとの個別解だろう と、事例を見ていても思いましたので、できるだけ事例も含めたきめ細かな情報を提供することで、個々の設計者あるいは管理者、利用者の方にもう一工夫何か できないかということを考えるきっかけにしていただければと考えています。

【委 員】 今の転倒や墜落に関係するのですが、11ぺージの棒グラフは、タイトルを見ると転倒、転落だから墜落は含んでいないのですね。

【国総研】 はい、そうです。

【委 員】 だから高齢者の死亡の比率が高いということなのでしょうが、子供に限ると、墜落、窓から落ちるのがよくあるのですが、それがこういう死亡者の数のグラフに含まれないのは何故なのでしょうか。

【国総研】 そういう意味で言うと、最初の初動で推計した段階ではかなり粗くやってしまったといこともあろうかと思いますが、もとが人口動態統計を使って いますが、そちらの方で死因分類みたいなのがありまして、それをもとに分析をかけています。そちらでいきますと数的には転倒、転落に分類されているものが 圧倒的に多かったというのが実情でして、本来は墜落みたいなものも当然あろうかと思いますので、もっときめ細かな分析をするともう少し違った要素もあった のだろうとは思います。

【委 員】 墜落による死亡者数の調査はしておられるのですか、おられないのですか。

【国総研】 この研究ではしておりません。

【委 員】 理由は何故ですか。

【国総研】 この研究の主眼というところで言うと、最初のこういったグラフは、将来的なトレンド、ボリューム感をどれぐらいで見るかというところで想定し た初期の調査ですので、もちろんこれが研究のメインであれば、ご指摘のようにもっと丁寧な分析かが本来は必要だったのだろうと思います。我々の方ではここ までの粗い推計でこの調査では終わらせてしまったということです。

【主 査】 1つ私の方からお聞きしたいのですが、最初に浅見先生から対策に結びつくのかというようなご質問があったかと思うのですが、例えば今の11 ぺージの転落の統計なんかで、バリアフリー住宅とそうでない住宅で明確な差があるのかどうかとか、そういう住宅のタイプに関連づけた分析というのはされて いますか。

【国総研】 そこまでの分析はしておりません。そういう意味で言うと、年齢階級ごとの死亡率をとって、それをエイヤで引き伸ばしてみるということで推計していますので、そういう意味では、ご指摘のとおり、かなり粗っぽい推計だということです。

【主 査】 粗っぽいと言っているのではないです。今回はこれで結構だと思いますが、せっかくここまでやったのだから、将来、バリアフリーというのは国の 極めて大きな政策でやっていますから、何かエビデンスがあった方が良いわけで、こういうところからこれだけの効果があるのだということをお示しいただけれ ば政策の有効性も非常に強くなってくると思うのです。よろしくお願いします。

【国総研】 はい、参考にさせていただければ思います。

【主 査】 よろしいですか。それでは、先生方、コメントお願いします。

(事後評価シート回収)

【主 査】 上の方(実施体制の妥当性等)は良いが、下の方(目標の達成度)は接近していますね。先生方、何かご意見ございますか。
 特になければ、この結果どおりにして、上の方は1番、下の方は2番ということでよろしいですか。―どうもありがとうございました。

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〈事後評価〉 B 建物用途規制の性能基準に関する研究

【国総研】 それでは、続きまして「建物用途規制の性能基準に関する研究」ということで、都市計画研究室から説明させていただきます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ まず研究の目的から振り返りますと、都市計画・建築規制における建物用途規制の方法を性能規定の考え方で合理化するということに向けて、定量的に予測・評価する技術的手法を開発するということでございました。
 具体的に何が困っていたかということについて言いますと、例えば、公衆浴場の用途の規制の規定では「公衆浴場」と書いてあるだけなので、一般の銭湯と スーパー銭湯の区別ができずに住宅地でトラブルがあるということですとか、新規用途の登場や技術革新、例えば機械化された配送センターみたいなものは工場 と扱われるので明快な判定基準がないとか、少数残存する既存不適格建築物があって、それがもとで都市計画の規制が緩く指定されてなかなか適正化が図れない とか、あるいは知的創造産業や新たなサービス産業を良好な居住環境と両立させながら一般市街地の中で育むという視点も今後求められるとか、こういったこと が背景にありました。

・ 説明の仕方で、法律改正を私たちがどのようなイメージで考えているか、ちょっと踏み込み過ぎかもしれないのですが、その方がイメージをわかっていただきやすいと思うので、そういう説明をさせていただきます。
 これは都市計画図で、地図に12色の用途地域という色が塗られているわけです。

・ その12色の用途地域という色は、この緑からブルーまで短冊のように建築基準法の別表第2というところに書いてあるわけですが、これは建築確認のみで 無条件に建てられる用途のリストということで、名前だけが列挙されているということです。その他は、例外的な許可というものはございます。しかし例外的に しか扱われないということになるわけです。

・ これを私どもは、踏み込んで言うと想定する法律の改正案ですが、2段書きにしまして、建築確認のみで無条件に建てられる用途のリストと、そうではなく て技術審査をして条件付きで建てられる用途のリストに分けて、その他の例外的許可と、これを便宜的に確認用途、認定用途、あるいは例外的な許可ということ になります。認定という言葉はひょっとすると予定された許可ということになるかもしれませんが、このような3段書きにしようということを1つイメージとし て持ったわけです。

・ これをもしやると、12色の短冊にものすごく細かく分けてきたものをもう一回大きく粗く整理をすることができて、難しい問題は技術審査で対応していく ことができる。さらに簡素・合理化できる可能性があるということです。こういうことを展望したときに、この技術審査をどういう基準でやったら良いのかとい うノウハウを考えることがこの目的だったわけです。

・ 研究の成果目標としてこのように登録してあります。「建物用途が市街地環境に及ぼす影響項目の体系的整理」というのが1番目。2番目が「建物用途が市 街地環境に及ぼす影響の測定手法及び評価指標の開発」。3番目が「建物用途が市街地環境に及ぼす影響の実測・分析」。4番目が「用途地域における市街地環 境の実測・分析」ということでございました。

・ これからのお話をするに当たって、建物用途が及ぼす外部影響というものを簡単に分類していきます。
 発生源というのが表の左側にありますが、まず建物内の活動から発生する外に対しての迷惑です。それから屋外の活動から発生するもの。その他に建物の出入 りという交通に関するもの。それからその他ということで、心理的な影響などがあるわけです。私どもはその中で建物の出入りに着目しました。何故かという と、建物の中の活動は、例えば音であれば防音構造にすれば良いとか、何らかの解決方法をやろうと思えば技術的にできるわけです。ところが、建物への出入り ということは、これは必ず出入りをしますので、外との関係なので、根本的には対処できない問題であるわけです。ここに着目してこれからお話をしていきま す。

・ 建物の出入り交通による外部影響の実測・分析と評価指標の開発ということをまずやりました。

・ 出入り交通に着目した理由をいま一度申しますと、A、B、Cということで、Aが、すべての建物用途に共通する外部影響原因であるということ。Bが、外 部への排出を防ぐことはできないということ。Cは、住宅地の場合、屋外騒音の大部分は車両交通が原因であるということ。こう考えていくと、今回建物用途の 性能を考えるときに、外部影響を判定する場合の代表指標としてこの出入り交通がとれるのではないかと考えたわけです。

・ そこで、これから実測のことをやっていきますが、十分な時間がとれないので手短いにまとめていくことになりますが、グラフに書いてあるのは、横軸、X 軸が24時間の時間です。縦軸がこの建物に出入りした人数になります。このグラフに書いてあるのは、スーパマーケットの大きいもの、小さいもの、それから コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、ファストフードということになりますが、こういうことで24時間の出入り交通をまず見てみました。出入り交 通による外部影響というのは、ピーク時と深夜、早朝といったところの特性が外部影響ということで重要なわけです。

・ これを他の用途に見たわけですが、縦軸のスケールは一緒です。一緒なのですが、先ほどの食料品とかに関係したものとは別に、スーパー銭湯とかビデオレ ンタルとかゴルフ練習場というのを見ています。これも住宅地にある生活関連の娯楽用途になるわけですが、こんな感じになる。

・ さらに24時間の影響をファストフードとかコンビニとかファミレスに限って見てみますと、ピークのパターンとかピークの影響の大きさとか、こういうものが随分違ってくるわけです。

 何が言いたいかというと、容積率というのは床面積だけで物事を扱っていますが、用途の種類や特性によって交通の出入りの影響というのはまるで違うパターンがあるということを申し上げています。

・ その上で、そうするとそれをどうやってまとめていくかということになりますが、このグラフは箱ひげ図を使っています。箱ひげ図ですので、いろいろな用 途とか面積とかが横軸に並んでいて、来客数の実測が縦軸に来ています。ひげの上下が最大値、最小値になりますが、最大値、最小値は結構外れ値みたいなのが 出てきますので、上の四分位と下の四分位で見ていくとイメージがつかみやすいだろうということでこのようにやってみました。大体このくらいの範囲に収ま る。例えば180と書いてあるということは、1分間に3人来るということを意味しているわけです。そのくらいの頻度でやるわけですが、いろいろ用途によっ て違いがある、このようになっています。

・ さて、それではそれをだんだん評価していくことへ入っていくわけですが、地域類型による生活環境の要求性能、つまり性能を考えなればいけませんから、 性能と、これは等価騒音レベルの値ということで、騒音規制法を参考にしながらこちらの用途との関係で考えてみました。4つ色が塗ってありますが、要は、性 能で考えれば、「特に静穏を保持する」「静穏を保持する」「騒音を防止する」「著しい騒音の防止」と、簡単に書くとそういう4段階で考えて、活動時簡帯、 くつろぎ時間帯、深夜、どのくらいのデシベルになるのかということをやりました。このスタディは、成果目標の4の「用途地域における市街地環境の実測・分 析」に対応しています。

・ どう対応しているかというのが次のところですが、生活道路― 生活道路というのは幅員11m未満の裏の道路ということですが、そこにおける通行量と騒音レベルを実測いたしました。幹線道路についての実測の結果というのは山のように資料があるのですが、裏の道路でやった資料というのは多分ほとんど例がないと思います。
 これを実測していって、その結果をA、B、Cとまとめたのですが、時間がないのでBだけを紹介します。例えば静穏な生活環境の確保ということをするに は、少なくとも車両の平均速度が35km/h以下、かつ歩行者プラス自転車の通行量が80人以下に加えて、車両の通行台数が25台以下ということが必要だ と書いてあります。いわば、自動車の平均速度であるとか、人数であるとか、車両の通過台数であるとか、こういうものを見ながら騒音をはかったということで す。

・ その測ったものをグラフに落としたものがこれでありまして、35km/h以上走行速度があると55dbは確実に超えるわけです。問題はこの左下の黄色っぽいところ、ここだけがある意味で住宅地の騒音レベルを確保できるエリアなのではないかということです。

・  そうすると話は車両の方へ移るわけです。先ほどまで出入りの人の数だったのですが。このグラフは、先ほどの出入りの人の数でやったものと全く同じ用途について車両で見ています。

・ 次も同じ用途について車両で見ました。

・  そして箱ひげ図も車両について見ていくということになりますと、結構特徴が出てきます。

・  それでまとめたのが、この「ピーク時の業態別車両負荷(2)」と書いてあるところなのですが、これは駐車場のある、なしとかドライブスルーがあるとか、 そういうことでまとめていったわけです。このスペックを入れますと、駐車場があると、集客用途に関してはそれだけで確実に住環境のレベルをほぼ上回るとい うことが判明しているということです。

・  そこで、こういうスペックになるのではないかと。静穏な居住環境と日常生活の利便の両立を図る用途配置のあり方はどうしたら良いかということを、@、A と書いてありますが、@は、自動車アクセスを予定する集客・サービス用途の立地は商業系の集積地域または通行量の多い道路、交通の分配機能を有する道路沿 いに集約する。これで安全な自動車の出入りと十分な駐車台数の確保ということを許可条件として求めるということになります。逆に住宅地の区画道路のエリア では、自動車交通の混入を抑制し、静穏な環境を特に維持すべき地域内というところについては、近隣の住民が徒歩や自転車でアクセスできる用途以外は原則と して立地させないということをするべきではないかと。そうすると、駐車場の設置というのは自分用とか身障者用以外は原則認めない。大雑把にこういうことに なる。

・  そして、今度は台数とかを審査するに当たっては計算が必要になるので、ピーク時―ピーク時が問題になるわけですので― 車両負荷の算出ということで式が書いてあります。式で書くとあれですが、実際に書いているものは、ピーク時の駐車場需要であるとか、ピーク時の来訪者数で あるとか、自動車分担率、1台当たりの乗車人数、平均滞在時間、あるいは従業員の駐車台数とか、ドライブスルーの来訪台数とか、このようなものです。本研 究では、このNpと書いてあるものとかMsと書いてあるものとかを実測してデータを得ていることになります。

・  その実測したデータで関係式をつくってみるということで、必ずしもすべての用途についてできたわけではないのですが、この一番代表的な生活関連の店舗についてみるとこういう式になったということです。200m2〜1,000m2 のところについてこういう式で当てはめればうまく乗るのではないかということです。ちなみに、1,000m2 以上は大規模小売店舗立地法の審査基準というのがありますから、この分野についてはそこに委ねても良いのではないかと。それで、うまくすりついたので、ああ、よかったなと思っているわけです。

・  その他、店だけではなくてやりましたということを軽くだけ言います。生活利便用途関連の物流ということで、コンビニが1軒あると、それは配送センターから運ばれてきます。その配送センターには食品工場から運ばれてきます。

・  それらも見ていったわけですが、コンビニ・ファストフード向け配送センターの大型貨物車の発生集中量を時間別に見てみると、午前3時ごろにとてつもなくトラックが集積していたりというようなところがあったりということがこれで出てきたりします。

・  それほどではないのですが、食品工場というのも朝方や夜の時間帯に結構トラックが出入りするものだということが出てきます。

・  このようなことをやってきまして、ちょっと説明の時間がないのですが、出入り交通指標による性能要件というので下に書いてある字は、今説明してきたことをまとめたということです。

・  それは交通だったのですが、交通以外の影響項目についてもいろいろと実測・分析と体系的整理をしましたので、どんなことをしたかということだけ簡単にぱっぱと説明させていただきます。

・  1つ目が公害苦情の用途地域別傾向ということで、自治体の環境部局ですが、こういう苦情は建築に来ないで環境部局に来ますので、環境部局に寄せられた公害をデータでもらって、これを分析したということです。それで、苦情の要因というのでやるとこういうことです。

・  それを用途別に発生用途でやると、このような形に出てきました。

・  公害苦情における騒音の測定値を今の苦情のベースで見てみると、環境基準の値をちょっと超えたところで一番苦情が発生しているということが示されていま す。ということで、我々としても騒音規制法の基準というのはこれを使って良いのではないかということを確認したということです。

・  それから心理的な立地許容度ということで、人の心にもよるところがあるということで用途の再分類をしていったわけです。これはWebアンケート調査とい う方法で130種類の用途について聞いたということをしました。一番ポイントは、Bの赤いところですが、「近くにあってほしいが、すぐ隣や向かいは迷惑な ので困る」という用途が何なのかというところであります。

・  これを洗い出したのが、例えばこういうグラフに書いたものであったということです。この場合、建築基準法だけをにらまないで、建築基準法対象外の施設です。

・  例えばこれは自動販売機とか、そういうものについても130の中で聞いてみたということです。

・  もちろん、その迷惑な理由は何かということもあわせて聞いていくということをしました。

・  その結果、現行規制と立地許容度の照合というのがこの表に書いてありますが、これは低層住宅地の例で、現行の規制では立地不可で×と書いてあるところ と、○で立地可と書いてあるところがあります。その右に行って、立地許容度ということで、○、△、×ということで、○、×が逆転しているように見えます が、これは逆転しているわけではなくて、明らかに○ で両方○というのは省いたので、ここに書いてあるのはちょうどボーダーに当たる用途なのですが、そうすると、今は立地不可だけれど、○にして良いのではな いか、あるいは立地可なのだけれどもやはりダメなのではないかという用途と、それに対して△用途、条件付きの立地可というところ、先ほどの別表で言えば2 段目に入る用途がこんなものなのではないかということを整理したということです。

・  また他の調査ですが、用途が近隣の不動産取引価格に与える影響ということで、不動産関係者に値段はどうですか、この用途はここに立地するとどうですかと いうようなことを聞いてみました。用途によって集積のメリットがあるものもありますから、違いが出てきたということです。

・  また別に一般市街地における騒音が地価に及ぼす影響ということで、ヘドニックアプローチのこともやりました。これは実は私どもがやったということではな くて、本省との連携で、本省主催の検討会への協力として私ども国総研は実測をずっとやってきましたから、実測調査を分担してやったということです。

・  いよいよまとめですが、これをどうやって判定するかということについて判定チェックシートというのを提案させていただきました。お手元に参考資料というのがありまして、3枚ぐらいの紙なのですが、判定チェックシートの試案をつくっています。

【主 査】 大変わかりやすい説明をありがとうございました。先生方、ご意見をお願いします。

【事務局】 申し訳ありません。この件につきましては、本日欠席されている委員の方からも、予め意見をいただいていますので、ご紹介させていただきたいと 思います。2枚目以降の、研究内容を書いている様式Bでございます。これの3ページ、自己評価ということで、「上記を踏まえた、本研究開発の妥当性」とい うところに、これはすみません、事前に紹介していただいたところに、その中の表現で、「研究開発の実施に際しては、建物用途規制等の知見についてノウハウ が必要不可欠であったが、幸いなことに地方公共団体の建築指導部局並びに環境保全部局のものが得られた」というような表現があったことから、研究開発に現 場の協力が得られたことを成果として強調している、これについては、通常であれば改善方向にそうした協力が得られないことを示唆しているのか、もしそうだ としたら、その部分を改善することの方が研究開発により有効ではないかというご意見をいただいております。

【国総研】 ただ今のご意見については既に訂正させていただいていまして、そこだけ読みます。「研究開発の実施に際しては、データの実測を専門業者への外 部請負とし、分析は専ら所内のスタッフが行った。これにより、本研究開発は効率的に執行できたと考える」ということです。

【主 査】 お聞きしたいのですが、全般通じて、この用途規制の問題は非常に騒音に強く着目してやっているわけですか。

【国総研】 事前評価のときにも委員の方からご指摘があったのですが、やはり代表指標をしっかりと考えてやった方が実務に落ちるのではないかということがございました。実際にいろいろやって…。

【主 査】 質問に答えてください。音を中心にやっているのですか。

【国総研】 騒音以外のことも調べましたが、それは大体環境省の環境基準とか、あるいはそれのガイドラインとかでいけばいけるなということが確かめられたので、それは苦情調査で洗ってみましたが、今日はご説明の中では騒音に絞っています。

【主 査】 最後のまとめの40ページのこれも特定影響項目と2トラックになっていて、片方が出入り交通ということで、まとめ自体も判定チェックシートも出入り交通を非常に強く扱っていると理解してよろしいわけですか。

【国総研】 はい。

【委 員】 非常にわかりやすいご説明で、研究の方法も妥当だったと思います。騒音に絞られたというのもそれなりに理解はできるのですが、例えば端的な例 では、コンビニエンスストアなんかではデリバリーの車が日常的に一般道路に駐車して、生活道路に近しいようなところにコンビニエンスストアがある場合、見 通しが悪くて非常に危険度が高いのですね。車の出入りとか、向うからやってくる車が見えないとか。そういう意味では、必ずしも騒音に帰着できないような用 途の規制の問題というのはあると思うのです。そういうのが今後の課題としてあると思いますので、今回はまとめとしては非常によかったと思いますが、定量化 できない要素なのかもしれませんし、騒音問題だけではない要素が幾つかあるのではないかなと思います。それから立地基準に関しても、弁護士事務所とか何か でも評判の高いところだと非常に集客力が高くて、やはり駐停車の問題が出てくるとか、なかなか定量化が難しい要因があったりというのをこれからどうチャレ ンジしていくかというのは是非、検討課題としてやっていただければなと思っております。

【国総研】 ありがとうございます。私が詰め寄られて騒音でしょうと言われて、「はい」と答えて、何かその足りないところをうまくご示唆いただいたのだと 思うのですが、騒音を1つの判断指標にしながら、出入り交通というか、建物から出てくる交通に着目して、その中で特に自動車、やはり現代文明は車両に依存 していますから、その自動車と住環境をどのようにうまくやっていくかというところが最終的なポイントなのです。だから、騒音を防止すれば良いのではなく て、自動車の出入りとか人がたくさん来るとかいうことと、居住環境と立地や物理的なつくり方、あるいは時間的な制限、深夜営業をさせないとか、それは条件 だと思うのですが、それは建築がやっているので建築として見ていないところはあるのですが、これは用途としてはアクティビティなので用途だと思うのです。 そういうことをしっかり入れていくことによって、より市街地環境を良い方向へ導くような制度設計へ変えられる要素があるのではないかと。もう一回言いますと…。

【主 査】 簡単にお願いします。

【国総研】 すみません。騒音ということで詰め寄られましたが、要は、むしろ交通を中心に据えたということです。

【主 査】 私の例で言うと、住宅地の中に豆腐屋ができて非常に困ったとか。用途規制の問題にかかって。住宅地に豆腐屋、あれは、法律上は問題ないそうで すね。私ちょっとだけ、騒音に絞らないにしても、出入り交通という交通に余り偏ってしまうと、用途規制全体のバランスが狂うのではないかという心配をする のですが、それは如何ですか。

【国総研】 それでは、判定チェックシートの表を見ていただけないでしょうか。この判定チェックシートというのを考えたのですが、一番上の四角は計画概要 なので諸元が入るだけです。2番目のところは「特定影響項目のスコーピング」ということで、共通的ではなくて特別に調べなければならない項目があるかとい うことで○をつけていっていただきます。この中には音以外のこともみんな入るようになっていて、これに○がついて、しかも審査が要るということになれば、 その次のページで、それはどうしたのだということを審査していく。そういうふうになっています。

【主 査】 分かりました。ほかに如何でしょうか。

【委 員】 とても斬新というか、おもしろい研究で、聞かせていただきましてありがとうございます。幾つかご質問させていただきたいのですが、最初に14 ページの表で、この研究の建物の用途の対象なのですが、弁当から漫画喫茶、レンタルビデオ、コインランドリー、スーパー銭湯、ゴルフ練習場、ペットショッ プ、動物診療所と書いてありますが、これが今回検討した建物用途のすべてかどうかというところを最初に確認させていただきたいのですが。

【国総研】 すべてではありません。交通の影響をはかったものの中から半分ぐらいピックアップした感じであります。

【委 員】 分かりました。それで、その結果が22ページの幹線道路沿いの敷地の絵と少し中に入った区画道路沿いの絵に変わっているのだと思うのですが、 先ほどご説明あったかもしれませんが、この下側の住宅地の中にある区画道路に面した建物の用途というのは、今の分類の中のどれがこちらに適するということ になっているか、ご説明があったかもしれませんが、再確認をお願いしたいのですが。

【国総研】 用途という指標もありますが、基本的には駐車場の設置を自分用と身障者用以外にはしないで、小規模な店舗となるのではないかと思います。用途 の種類でやっていきますと、種類が増えればキリがないので、これは共通的にそういう見方をしてはどうかという提案にしています。

【委 員】 小規模店舗というと、具体的には小さなスケールのコンビニエンスストアとかそういうことになりますか。

【国総研】 コンビニエンスストアは大体150m2〜200m2ぐらいなのですが、そのくらいが大きさとしては大きい方かなと思います。

【委 員】 コンビニというと、先ほどのご説明にもあったように、商品の搬出入の車が出入りしますよね。それはやむを得ないと。

【国総研】 そこが一番大事なところですね。商品の搬出用の車について苦情が非常に多いのは夜中というか深夜なのです。ピーク時には来ないでくれというこ とを店主が言うので、お昼時とかお弁当が売れるときにはぶつかりません。必ず他の時間に来るのです。他の時間に来るのですが、深夜配送ということをやられ ると随分いろいろなことが起こります。そこをやらないでくださいという条件をつけて、場合によっては認めても良いとか、こういうことではないかと思ってい ます。

【委 員】 研究をされるに当たって、法律のイメージだとか、ある意味では全体のスコープあるいは研究の位置づけを見ながらやるというのは非常に良いなと 思って感心して聞いておりました。交通量に絞ったというのは、ある意味では交通量というのがいろいろな意味での複合指標の代表的な指標になり得るからとい うことだろうとは思いますが、それ以外にごく限られたところであり得るのが、例えば悪臭だとか、あるいはある種の危険性、爆発だとかそういうものの危険性 だとか、そういうのはあり得ると思うので、それはまた今後もしかしたらやられるのかなと思いました。 特に安寧な住宅地という意味で考えますと、住宅地に 関連する人だけが来るのか、それとも外部の人が来るのか、外部の人が来る場合にどのぐらいたくさん来るのかというのが1つの指標になり得るのかなという気 がするので、もうちょっとざくっとした指標なのですが、実は結構、特に一低専というか昔の低層住居専用地域、第一種住居地域とか、そういうのだと何となく そういうのが出てくるのかなと思いました。
 それから、最終的にこの許容度、例えば37ページなんかにあるのですが、こういうのを見ますと、恐らく個人的に自分で何か有用であると思うものについて は若干許容度が高くなっているのかなという気がするのです。今はどちらかというと迷惑面を考えて規制すべきだというように議論しているのですが、多分最終 的な判断としては、だけど役に立つからまあ良いか。みたいな、ちょっと言葉は悪いですが、そういう部分もあると思うので、いかにそれぞれの居住者の役に立 つかというところを加味すると、この許容度という比較的心理的なものが説明できるのかなと思うのです。だから、今後の拡張としてはそういうところがあるの かなと思いました。以上です。

【主 査】 よろしいですか。もう一回出入り交通の音の問題ね、これは電気自動車になれば全部片づくわけですよね。昔イギリスでは早朝の牛乳配達に電気自動車を使っていたそうですが、それはどのようにお考えですか。

【国総研】 それは予想される質問として考えておりました。今は音で測っていますが、仰るとおり、電気自動車になると音は随分と 低減します。しかし、交通の安全ということで考えれば余り変わらないし、逆に音がしないからさせるようにする技術もあるようです。そうであれば、車との折 り合いをどうつけていくかということについて、代表指標は変わらないと思いますし、今つくってきたところは、私たちが自分で見ながらやっているので、直感 的にはこのくらいのレベルが一番あるなということを見極めてやっています。ですから、全く技術が変わってしまったときに、音で言ったのは昔のことでしょう と言われたときにどうするかまでは、まだ考えていないのですが、車に着目するというのは間違っていないと思っています。

【主 査】 よろしいですか。それでは先生方、評価をお願いします。

(事後評価シート回収)

【主 査】 先生方、如何でしょうか。上は1番、下は2番でよろしいですか。ありがとうございました。

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午後2時53分 休憩

午後3時04分 再開


【事務局】 それでは、よろしければ再開させていただければと思います。

〈事後評価〉 C 都市整備事業に対するベンチマーク手法適用方策に関する研究

【国総研】 都市整備事業に対するベンチマーク手法適用方策の研究に関して説明いたします。

  〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ まず研究の背景と目的ですが、海外においては行政サービスの改善手法であるニュー・パブリック・マネジメントが非常に導入され始めまして、実績を上げ 始めております。一方、我が国の都市整備事業を見ますと、厳しい財政事情などでより効率的な実施が求められている一方、市町村などにおいて担う技術者が不 足しているといった状況がございます。こういった状況を踏まえまして、我が国の都市整備事業にニュー・パブリック・マネジメントの中核技術であるベンチ マーク手法などを適用し、効率的実施、事業効果の早期発現を図るといったことが目的です。

・ 研究の内容は、ここに示した項目に沿って出しました。

・ まず対象とする都市整備事業についてですが、既成市街地における土地区画整理事業を対象にいたしました。それは全国で約40haくらい実施されている といったぐあいに非常に広範囲に行われている、都市整備事業の中の代表的な事業であるということである他、最近は既成市街地へ整備の必要性がシフトとして いるといった状況がございます。

・ こういった状況を踏まえて、対象とする土地区画事業をこのように抽出いたしました。

・ 分析対象期間ですが、事業の認可前、着手から認可までの間についても、合意形成など執行管理上非常に重要な期間でもありますので、通常の事業期間にその期間も加えて、かつ全体を4つの段階に分けて期間を想定いたしました。

・ 次に都市整備事業の特性を見てみますと、いろいろあるのですが、例えばほとんどが市町村施行であるといったような特徴が見られます。

・ 続いて、これら地区を対象にベンチマーク指標の想定について検討してみました。まずいろいろな土地区画整理事業に関わるさまざま指標について並べてみ て、それに対して、ベンチマーク指標に求められる要素と事業に求められる要素、これらの要素を整理して、さらにそれ以外の要素を勘案してベンチマーク指標 候補を抽出してみました。下にありますように、まず事業の全体的な評価という観点からは、効率性に関しては事業費と事業期間、効果に関しては地価変動等が 考えられます。事業のある時点における評価という進捗に関する評価ということを考えたときには同意率とか移転戸数率、こういった指標が抽出されました。な お、ここでは指標に求められる要素として6つ挙げておりますが、とりあえず今のところは3つしか勘案してございません。この青字で書いてある残りの3つに ついては続いて説明いたします。

・ まず指標値の入手容易性に関してですが、これは効果をあらわす指標、地価変動率等が該当するのですけれども、これらについてはいろいろ検討したのです が、入手可能性について課題が多いことがわかって、結局分析には至りませんでした。続いて、横並び比較が可能ということですが、事業費、事業期間について 特性の異なる地区間の比較を可能とするために、各地区の事業の難しさを表わす難易度といったものを把握して、それによって標準化するということを考えまし た。そういったことで指標候補は、難易度を考慮したこの2つの指標を想定いたしました。

・ 最後に、PDCAサイクルの適用という観点で見ますと、これら2つの時点が考えられまして、まず事前・事後評価という観点での指標でいきますと、事業 全体を総括する必要があるということで、総括的な指標である総事業費と総事業期間といったものを用いてベンチマーク指標を想定しました。もう1つの場面で ございます進捗管理の観点では、先ほども申し上げておりますが、進捗管理のための指標として下記にありますような指標を想定いたしました。

・ 続きまして、具体的なベンチマーク指標の開発に入っていくわけですが、ここでは先ほどの事前・事後評価、進捗管理の2つの場面を想定して指標を策定してまいりました。

・ まず事前・事後評価におけるベンチマーク指標ですが、総事業費、総事業期間の難易度を表わすと考えられる指標のうち、これら5つの指標について、総事 業費との間にはやや強い相関、総事業期間との間にはある程度の相関が見られたということで、これら5つをまず難易度指標候補といたしました。

・ 続きまして、総事業費に関する難易度ということで、ここにあります5つの指標をより詳しく見てみますと、要移転戸数について決定係数がかなり良いとい うことで、これを総事業費の難易度としてベンチマーク指標、この赤字のものといたしました。下の図はこの指標に関しての全国地区の傾向をあらわしたもの で、この直線は要移転戸数から見た総事業費の全国における平均的な傾向を表しています。いわばこの直線がベンチマークと考えられるのではないかと思いまし て、この直線よりも上にあるか下にあるかで各地区のおおよその立ち位置が確認できるということになると思います。例えばこの直線よりも上にある地区であれ ば、その地区は全国平均的に見て事業費が高いと判断されるという性格のものです。

・ 続きまして、総事業期間について見てみますと、難易度はこの要移転戸数と施行面積にいたしまして、この2つをベンチマーク指標といたしました。何故こ の2つにしたかは後で述べたいと思います。同様に図で見てみますと、例えばこの左であれば要移転戸数から見た総事業費の全国における平均的な傾向をやはり 直線に表しておりまして、これがいわばベンチマークで、こちらが面積の観点から見たベンチマークということで、これら2つをあわせて見ることによって総事 業期間についての全国から見た各地区のおおよその立ち位置が確認できるというものができました。

・ なお、その難易度をどうやって選定したかですが、先ほど見ました5つの決定係数が大体0.2くらいで並んでおりますので、まず性格の似た指標を集約し て2つの難易度といたしました。全般に相関が弱めですので、1つに絞らないで2つの性格の違った指標を適用することで相関の弱さを補強することができると 考えています。

・ 続きまして、進捗管理におけるベンチマーク指標を作成しました。まず作成の考え方ですが、先にこのような指標を想定しておりましたが、もう少し細かく 考えてみますと、進捗管理の対象期間がこの例にありますように限定される傾向がかなりあるということがございます。次に、当然、これは進捗を扱うわけです ので、時系列の変化、進捗カーブといったものの想定が必要で、さらに、ここでは横並び比較ということを考えますので、そういった場合には全国における平均 的な進捗状況をあらわす進捗カーブを設定する必要がございまして、そうしますと全国各地区の進捗に関するデータが必要だということがございます。

・ こういったことを踏まえて、進捗管理におけるベンチマーク指標のイメージを整理してみました。右の図がそれですが、全国の平均的な進捗図です。これは 仮換地指定から換地処分を評価対象期間とした例ですが、横軸が評価対象期間の最初の部分を0として、評価対象期間の最後の部分を1として、縦軸が進捗指標 をあらわすということで、この赤い線がいわゆる進捗カーブでございまして、これはアンケートなりによって全国のいろいろな実績データから設定しようとする ものです。アンケートについては後で述べますが、結局この設定できた進捗カーブといったものがベンチマークと考えられると思います。この線よりもり上にあ るか下にあるかで、全国の平均的な傾向から見た進捗状況が判断できます。例えばこれでありますと、この時点で下にありますので、全国の平均的な傾向から見 て進捗がおくれていると判断されるというものです。なお、この進捗管理で難易度をどのように反映しているかということですが、このts、全国の平均的傾向 から見た評価対象期間を求めるときに、総事業期間の難易度であります施行面積、要移転戸数をここで入力するということで考慮しています。

・ これらイメージを具体的に適用して、進捗管理におけるベンチマーク指標を作成いたしました。5つございまして、左が指標名で、右が指標の算出の仕方、紫色のローマ数字はその評価対象期間を表しています。

・ それぞれ説明しますと、まず1つ目の事業への同意率。これはある地区内の事業への合意者数の地区内の地権者数に対する割合を表したものです。横軸が期 間、縦軸が同意率で、このいろいろな色でプロットされているデータはアンケートで集められた実績の進捗データでございまして、この分布の状況からこの進捗 カーブを二次曲線などで描いてきました。なお、これでいきますと同意率というのは、着手段階は0%で、認可段階ではなかなか100%になっていないという 実態を踏まえて、評価対象期間は換地処分まで延ばしております。

・ これは事業そのものではなく、仮換地計画などに対する個別事項に対する同意率です。

・ これは使用収益を開始した宅地の面積率です。

・ これは移転戸数率。

・ これは執行済み移転費の移転費に対する割合で、これはコストに関する進捗指標なので、使うときには移転戸数率とか総事業費の動向とあわせて見ることが望ましいと考えています。

・ 先ほど申し上げたアンケートのところで、進捗カーブに当たってアンケート調査でどのようにデータを収集したかということですが、全363地区の施行者に対して調査いたしまして、約半分近くから何らかの有効な回答がございました。

・ この設問にありますこれらの項目を一応指標としたのですが、このハッチのかかった部分が割とデータが多いということで、これらを用いて先に説明いたしました進捗カーブの設定を行いました。

・ これらの成果を活用いたしまして、各地区の施行者が進捗管理について自己評価できるチェックシートの案を指標ごとに作成いたしました。

 これは移転戸数率の例です。この上半分を表していますが、まずこの黄色いセルの部分にその地区の値を入力します。これで施行面積と要移転戸数を入力します。

・ これは下半分ですが、まさにここに4つのセルがありますが、ここに各地区の値を入れていきますと、緑の値、ここに全国平均的な値が集録される。例えば このCiとCsiというものを比べますと進捗に関する比較ができるといったものです。これはすぐ評価できるというものです。なお、ここで分布図を一緒に載 せていますが、何故かといいますと、全国の平均的な値、その指標値はあくまでも目安でございまして、全国の分布の中でその地区がどういう位置づけにあるか ということもあわせてご認識いただくことで、より正確に自分の地区がどういう位置にあるかということを確かめていただこうという意図があるものです。ここ までが解析してからベンチマーク指標です。

・ 続きまして、成功・失敗要因の分析についてですが、まずここで事業段階ごとの成功要因・ノウハウの整理を行いました。具体的には、4つの段階ごとに、目標でありますとかそれぞれの段階における活動内容を整理いたしました。

・ 続きまして、全国各ノウハウ抽出のために、全国25地区からヒアリングを行いました。

・ それらの地区の結果から成功・失敗要因を抽出いたしました。それと、別途、先ほどしましたベンチマーク指標による各地区の優劣評価もいたしまして、これらの結果を合わせまして、事業費に関する要因、事業期間に関する要因などを抽出いたしました。

・ これが抽出・整理をした例です。この線よりも上の2地区については平均的に見てちょっと期間がかかってしまっている地区ですが、それらについての要因がここに書かれています。下の3つはその逆です。

・ それらの成果をまとめまして、成功要因・ノウハウ集の案というものを作成いたしました。ここにそれらの掲載されているポイントを紹介しています。

・ さて、今までの検討内容につきましては、自治体等に対してアンケートとかヒアリングで試行してまいりました。これは例ですが、既にご説明申し上げまし た同意率に関する指標の例でございまして、事業への同意と個別事項への同意、2種類作成しましたが、当初は我々は事業への同意のみを想定しておりました。 しかしながら、試行を通じまして自治体等の意見を踏まえて、このように2つにいたしました。例のご紹介でございます。

・ こういったことで最終的にベンチマーク指標の運用指針素案を下記の項目のように策定いたしました。これらの体裁を整えて今後本省協議等を踏まえて自治体等に配ってまいりたいと考えています。

【主 査】 ありがとうございました。それでは、先生方、ご意見、ご質問をお願いします。

【委 員】 大変貴重な取り組みだとは思うのですが、それから既成市街地の区画整理ということに対象を絞られて、これからの時代状況を考えたらそちらの方 の重要性が高まってくるという問題認識は非常に分かるのですが、やられた事例が既成市街地の区画整理といっても相当多様で、多分、タイプによって状況が違 うのではないかなという気がするのです。例えば、比較的住宅系の既成市街地と商業系に近い既成市街地、再開発型に近いようなところだと状況が違うのではな いかとか、タイプに応じた分類をされないと、ざっくり全部同じようなベンチマーク指標でとらえ切れるのかというのが、説明を伺っていて素朴に感じた疑問な のですが、その点については如何ですか。

【国総研】 ここにありますように、例えば今の住宅系とか商業系ということですと、下の事業特性別というところで書いておりまして、減価補償金はちょっと 違いますが、上の4つ、これは土地利用高度化地区というのは再開発事業と合併で、密集地区というのは旧密集事業との合併で、中心市街地地区というのは商店 街近代化、経産の事業との合併、これを扱っておりまして、ここにあります指標ではこのようにあらわれておりまして、それぞれ見ました。ベンチマーク指標と いう形で最終的にこれが生かされていないというのは、こういった地区を横並びの比較を何とかしたいということがありまして、最終的な結論のところには生か されていないということです。

【委 員】 そういう意味で、タイプごとでのベンチマーク指標のことも考えていただく方がより実用性が高まるのではないかなという気はいたしますが。

【国総研】 ここに表れてはいませんが、実はその分析はやっています。

【委 員】 今回は発表されていないということですね。

【国総研】 はい、そうです。

【委 員】 分かりました。

【委 員】 ただいまの委員とある意味では同じ感想を持ったのではないかという気もするのですが、まずベンチマークを設定することの意義がよく分からな かったのです。3ページに「ベンチマーク手法とは」と書いてあって、数値基準を設定して、目標の設定や実績の計測を行うことで、もちろん進捗管理は重要な のでしょうが、最終的には行政サービスの改善を図る手法と書いてあります。ということは、ベンチマークとの比較でポジションが分かったときに、どういう努 力をすれば良いかということを知らしめることが重要だと思うのです。例えば、同意率が低いからというので、もっと各戸回れということなのかどうかというこ とを考えると、そういうものはかなり地区特性に依存して変わってくる気がするので、そういう意味で言うと、単純に2つの値の関係だけを見るのではなくて、 複数の値の関係を見ることでその値から適切な理解をして、どのような対応をしたら良いのかというのが分かるようにする。そのためには恐らく、タイプ別とい いますか、場合によっては、この指標がこういう値の場合はこういうカーブになるというようにカーブ自体を制御するような仕組みにしないと、本当の意味での 有益なものにならないのではないか。例えば事業費みたいなのがありましたが、事業費なんていうのははっきり言って立地にかなり依存するわけです。それをい かにも事業費が高いと難しいかのように言ってしまうのですが、必ずしもそうではない気がするのです。そういうのが結構見え隠れしているので、実際のベンチ マークのつくり方がやや粗かったのかなと思うのと、有益になるためにベンチマークをどのように工夫したら良いかということをもう少ししてほしかったなと。 その前にシステム化しても、そのシステムは余り有用にならないような気がするので、そのあたりを工夫してほしかったなというのが正直なところです。
 それからもう1つ、ベンチマーク指標ということでグラフを拝見しましても、はっきり言ってこの曲線に乗っているとは思えないような曲線が幾つかありまし て、これは多分全然違う性質のものを合わせてしまっているから全く曲線に乗らないと思うのです。曲線に何となく乗っているような感じのものもあるので、そ れはもしかしたら適切かもしれないのです。ですから、システムに走る前にもうちょっとベンチマークのところを工夫して、あるいは分析して、場合によっては それぞれの事情に返っていくということも必要だと思うのですが、そういう検討をしていただきたかったと思います。

【国総研】 ありがとうございます。まず、もう少しきめ細かな視点でというところで、指標につきましては横並び比較ができるというところにこだわって、あ る程度相関が出るものということでいろいろやっていったところ、実際のところなかなか相関が出ない、しかも何を外れ値にして外せばどう出るかみたいなこと をいろいろやったのですが、なかなか出ない、実質苦労したところで、場合によっては、全国比較、一律というところにこだわり過ぎたかなというところもあります。
 あと、もうちょっときめ細かくというところは、むしろ各ヒアリングで同意率を上げるためにどういう工夫があったかということを具体的に聞いておりまし て、実際はそちらの方でいろいろな要素は詰まっているのですが、肝心の指標の方がある面単純なものとなってしまっているところは私としてもちょっと残念 だったなということはございます。ただ、ヒアリングしても、各地区の施行者はこういう進捗管理を他の地区でどうやっているというのはなかなか意識していな いというところで、こういった目安があるだけでもかなり助かるという意見もヒアリング等では聞かれましたので、それなりに役に立つものはできたのではない かと考えています。

【主 査】 私、よく分からないので教えてほしいのですが、例えばスライドの31番ですね。これは縦軸が期間で、横軸が移転コストですね。これは今度ここでつくったシステムを適用した結果なのですか。そうではなくてまだデータの段階なのですか。

【国総研】 このもとのデータは、本省が有しているデータを活用して、ここにプロットしたものをもとに作成しておりまして、この5地区の例示がありますが、これは実際にヒアリングした地区からのものです。

【主 査】 タイトルが「成功・失敗要因と指標による優劣評価抽出例」とあるのですが、これで優劣評価しているわけですか。この31ページのスライドは。

【国総研】 この直線がありまして、この線よりも上がある面劣っていて、下が優れている。どういう意味で優れているかというと、期間が全国の平均的な傾向から見て長くかかっているか短くなっているかという観点です。

【主 査】 そうすると、このタイトルの成功・失敗という話と優劣というのはどういうことになっているのですか。これから成功・失敗要因というのが明確に分析できるのですか。

【国総研】 これは、ある面で客観的な指標で見た地区と、必ずしも各地区にそういう評価結果を伝えていない場合もあるのですが、それぞれの地区で苦労した 点とか要した期間についてはどう思うのか、長くかかっているとすればどうしたら良かったとか、うまくいったと思えばどういうことがあったとか、事細かに聞 いて、その結果として、うまくいった要因とか、うまくいかなかった理由とか、そういったものを後から当てはめているといったことです。

【主 査】 例えば、これは期間と移転コストの2つを選んでやっているわけですね。狙いはもうちょっと直線の周りにぐっと集まってくるようなことを想定されていたわけですか。そうではなくて、このように非常に広くばらついていますが、これは予想どおりなのですか。

【委 員】 いろいろごちゃ混ぜにし過ぎてしまっているだけだと思うのですが。

【国総研】 本当はもっと相関が強く出てほしかったなと。全く相関があったら、逆にそれは良い地区、悪い地区ということにならなので。事業費に関してはか なり相関が出ているのですが、期間に関してはまさに各地区の事情といったものがあるということが入ってしまっているかなという気はします。ただ、それでも 何とか使えるのではないかと判断しています。

【主 査】 他に先生方、ご意見、ご質問ございますか。よろしいですか。

【事務局】 主査、すみません、1点だけ。これについても欠席された委員の方からご意見をいただいておりまして、先ほどとほぼ同じような話なのですが、同 じく様式Bの自己点検結果のところに、「研究に際しては、土地区画整理事業に精通した民間調査会社等との連携、地方公共団体等の協力が不可欠であったが、 これを得ることができた」という表現がもともとあったものですから、研究開発に現場の協力を今回得られたことを成果として強調しているが、これは通常であ れば改善の方向に協力が得られないことを示唆しているのか、そうであれば、そうした部分を改善することの方が研究開発により有効ではないかという、先ほど と同じようなご意見をいただいています。

【国総研】 そのご意見を踏まえまして、様式Bの方の表現は誤解を招く表現であったということで、協力を得られたということを強調する意図でもなかったので、少し表現を変えています。

【主 査】 今の話は、もう事前意見は反映済みということですか。

【国総研】 反映させていただいたものをお配りいたしております。

【事務局】 資料はそういう形になっています。

【主 査】 またつまらないことを言うようですが、これは今日が正式の委員会だから、これを踏まえた上で対応した方が、筋は通っていると思うのです。委員会を開く前に事前に対応するというのは手続上理解できないのですが。

【事務局】 その辺りはしっかりと整理をしたいと思います。

(事後評価シート回収)

【主 査】 これは非常に明快で、上も下もほとんど議論の余地はないと思いますが、上は2番、下も2番ということでよろしいですか。― どうもありがとうございました。それでは、これで事後評価はひととおり終わったわけですか。

【事務局】 これで終わりです。

【主 査】 ありがとうございました。

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(3)平成23年度開始予定研究課題の報告

【主 査】 それでは、事後評価が終わりましたので、次の議題の説明をお願いします。

【事務局】 報告事項になります。これは先ほど冒頭でご説明しましたが、既に評価はいただいたものです。時間が経過しましたので、その間検討など進んでい るところがあります。また、所としての看板研究ということで位置づけたということもありまして、ご報告をさせていただくものです。

【主 査】 この報告事項というのは既に評価は終わっているということですか。

【事務局】 既に評価をいただいております。

【主 査】 終了課題ということでしょうか。

【事務局】 いえ、23年度から開始するものでして、実施してよろしいという評価をいただいたものです。

【主 査】 我々は何を伺えばよろしいのですか。

【事務局】 報告ですので、ご意見をと思っております。7月から今に至る間に少し検討が進んだ部分がありますので、ご報告させていただければと考えております。

【主 査】 7月に委員の先生からご意見をいただいているから、それを踏まえてさらにブラッシュアップしたと。

【事務局】 はい、そういうことです。


〈事前評価〉D 再生可能エネルギーに着目した建築物への新技術導入に関する研究

【国総研】 それでは、説明致します。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ 大分前の話だったので、内容を一応確認したいと思いますが、研究の概要ということで、1番、建築物における再生可能エネルギー利活用の可能性の調査、 第2番目の内容として、建築物における再生可能エネルギー利活用のための実証実験、第3番目としまして、再生可能エネルギー利活用施設の使用・保全に関す る留意点の検討、こういう内容を含めた課題です。

・ 前回の評価委員会でこのようなご指摘がありました。

 主な内容は、新しい再生可能エネルギーの研究をするのではなく、それを使ったシステム全体の効率みたいなものをしっかり把握し、それが省エネ関係の技術 基準として位置づけられるような情報をとりなさい。それから、そういうことを普及させるためにはしっかりコスト情報も把握しておかなければいけません。ま た海外での事例なんかもあるので、そういうものを調べてください。こういう内容でございました。あとは様式のどういうところが変わったかということだけが 赤字で書いてあります。「海外と普及状況等が異なり、導入コストの回収年数など」というような言葉を加えたりしております。

・ そういうことがただ淡々と書いてあります。

・ 7月以降は、所内で内容についてより深く検討するために幾つかの会合を開きまして、所内のプロジェクト推進経費というのを少しいただきまして、先ほどのこういうこともやりなさいとご指摘のあった事項について、既に、今年から少し調査を始めております。

・ 国内外事例とか、JIS等の資料収集だとか、コスト情報についても調べております。所を代表するプロジェクト研究と位置づけておりますが、建築研究部 では省エネ関係のこういう技術基準類に関わるような将来に向けた研究をずっとやっておりますので、建築研究部としても代表する研究として位置づけたいと考 えています。そのような観点から、プロジェクト研究にしてもおかしくないのではないかと考えています。 以上、簡単に説明させていただきました。

【主 査】 ありがとうございました。 先生方、何かご意見はありますでしょうか。

【委 員】 私は専門ではないのですが、たまたま海外事例のことで、今回やや偶然だったのですが、今月の上旬にドイツに行ってきて、そのときルール地域 で、ルール地域というのは旧産業地域なのですが、今、環境に対するいろいろな取り組みをやっていて、その1つの取り組みとしてイノベーションシティ・ルー ルというプロジェクトをやっています。いろいろなコンペをやって、その中で、ボトロップという人口十数万ぐらいの非常に小さな町なのですが、それが既成市 街地で大々的に再生エネルギーを使ったりとか低炭素化というので非常に注目を集めていて、日本の企業もパナソニックなんかがそこに立地していこうなんてい うことを考えているみたいです。多分ネットで調べられれば英語でも情報が出ていると思いますので、ボトロップ―Bottrop だったと思いますが― というところで非常に先進的な取り組みをやっていて、ヨーロッパでも非常に注目されている事例なので、インプットしていただければと思っています。

【国総研】 どうもありがとうございました。

【主 査】 ありがとうございます。他にございませんでしょうか。

【委 員】 私も同じような意見で、このテーマはとにかく大きくて重要だから、日本の大きな企業は大概どこかにこの担当の部署を持っていると思うのです。 だから、そういう人たちからの意見聴取、あるいは研究の中の委員会の委員にするとか、いろいろな策を講じてなるべくデータを引き出す、彼らが出そうとする か分かりませんが、その努力を払われたら良いのではないかと思います。

【国総研】 どうもありがとうございます。余計なことを言ってしまうと、別途総プロで低炭素水素総プロというのをやっておりまして、そちらでも大手のゼネ コンの方たちに参加いただいたりしながら情報提供いただいていますので、そういうチャンネルを通してこういう関連の情報についても集められるようにしたい と思います。

【委 員】 どちらかというとゼネコン以外の方がよりノウハウがあるのではないかと私は思うのです。

【国総研】 分かりました。

【主 査】 さっきの機器の話について、私の方から一言。この再生可能エネルギーは、7月からかなり進展した話としては、地球温暖化対策基本法というのが 閣議決定しまして、国会に出したけれど時間切れでつぶれてしまったのですが、また同じものを出すと言っています。その中で、再生可能エネルギーの前例を書 いているということを言っていまして、もしそれが国会を通ると全く景色が変わってくるのですね。そのときに、ある意味では、前例を書いているとなると、建 築分野としては相当の責務が出てくるわけです。例えば全国何千万戸オーダーで太陽光発電乗せなければいけないとか、そういうときに、例えばそれに対する技 能労働者は大丈夫かとか、あるいは工務店の技術レベルは大丈夫かとか、いっぱいあると思うのです。
 もう1つは、再生エネルギーを非常に大量導入しようとすると、今、スマートグリッドという形で、電力系統の研究もここ数カ月、半年ぐらい非常に進んでい まして、そのスマートグリッドが普及するためには、建築サイドでスマートメーターとかスマートハウスとかBEMSとかHEMSとか、そういったものの整備 も必要になるわけで、再生可能エネルギーそのものというよりも、その周辺の状況を睨んで、建築でどう対応しなければいけないか、そういう形の研究も是非 やっていただきたいと思います。

【国総研】 どうもありがとうございました。ご指摘は参考にさせていただきたいと思います。

【主 査】 よろしいですか。

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事前評価〉 E 都市計画における戦略的土地利用マネジメントに向けた
土地適性評価技術に関する研究 -集約型都市(コンパクトシティ)の形成に向けて-

【主 査】 それでは、次のEをお願いします。

【国総研】 続きまして、もう1つのプロジェクト研究課題を都市研究部の方からご説明申します。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ タイトルは「都市計画における戦略的土地マネジメントに向けた土地適性評価手法に関する研究」、副題といたしまして「集約型都市(コンパクトシティ) の形成に向けて」としております。従前、事前評価として行政部費の要求時にご評価いただいたものは、タイトルは上に書いています「研究」まででしたが、今 回はプロジェクト研究ということで、所の重要な研究として打ち出していくに際しまして、タイトルからですと趣旨が若干わかり難いということもございました ので、ここにありますような副題をつけたということが、変更というわけではないのですが、補足的なものの1点です。
 それから、プロジェクトの実施体制といたしまして、これは、従来は予算要求部局としての都市計画研究室がほぼ単独でご説明させていただいたのですが、プ ロジェクト研究とするに当たりまして、部横断的に取り組む必要があるだろうということで、他研究室の参画も得て、また他研究室のこれまでの成果なども十分 参照しながら進めていくという体制を整えたものです。

・ 以後、研究内容につきましては、現段階では特に大きな変更はございません。これは従前の外部評価に使用いたしました資料の抜粋です。

 ポイントといたしましては、コンパクト化といったときに、いわゆる都市機能の集約以外に、郊外部への拡散防止、非効率地域からの縮退というような大きな課題がありますが、従前不十分であったこのあたりについて検討を進めていきたいということが背景です。

・ 検討の必要性といたしましては、コンパクト化を進めていくというのは、今はやはり都市における重要な課題と認識しておりまして、そこにおきまして開発 と保全のめり張りをどのように考えていくかということから、研究の構成として、土地の利用の保全、適性や優先度の評価手法というものを基本的に開発してい こうということです。

・ 具体的には、これはまだイメージですが、土地それぞれの性格付けなり、そういった土地のデータを標準化いたしまして、それに重み付け等で評価を加えて全体の評価システムを形成していきたいというものです。

・ 続きまして、外部評価委員会後の対応ですが、外部評価委員会では特に地域の個別性に配慮しながらケーススタディなどを行う必要があるのではないかとい うご指摘もいただきましたので、予算要求上ケーススタディを積極的に実施するという項目を要求したということに加えまして、10月の本省主催の地方公共団 体の会議におきまして今後の研究の協力をお願いして、ケーススタディを円滑に進めるような体制を進めてまいりました。また、最後の○は、先ほど申しました ように部内全体で取り組む体制をつくったということです。

・ 最後、本プロジェクトの視点につきましては、今申し上げたことを順次文章にしたものでして、プロジェクト研究に当たりましてまとめたものです。特に3 番目のところで、コンパクトシティという観点から言いますと、本研究がすべてを覆うことになるわけではございませんので、非常に新しい取り組みとは思って いますが、従前、都市研究部で研究しておりました都市の将来像アセスメントといったような都市構造、もうちょっと大きな視点からの研究などの成果も十分参 照しながら進めてまいりたいということで、体制の整備を図ったものです。以上です。

【主 査】 ありがとうございます。
 先生方、ご意見ございましたらお願いします。

【委 員】 前回の外部評価のときに発表された資料なのかもしれないのですが、5ページに土地種目別の適性評価というのがありまして、ここに「Σ(点数× 重み)→絶対評価点」と書いてあります。ちょっとこの意味が分からないのですが、例えば自然環境用地として考えたときのランクと、農林業用地としてのラン クと、建築等用地としてのランクというのはそれぞれ別個に出るというイメージなのですか。それとも全体としてある点数がついて、その点数で仕分けるという ようなイメージなのですか。ここは結構重要そうな感じがしなくもないのですが、ちょっと意味がよく分からなかったのですが。

【国総研】 今の答えから言うと、それぞれについて出るということです。利用目的別に適性度を計るということをしていきまして、つまり、地図が何枚もレイ ヤーで、ある角度から見たときにはこういう地図、例えば農業の利用から見たときにはこういう地図、あるいは住宅として見たときや開発として見たときにはこ ういう地図、自然環境の保全として見たときにはこういう地図となっていくのではないかと思っています。

【委 員】 実際に、例えばコンパクトシティ化というときには恐らく建築等用地というのはだんだん縮小していくわけですが、それぞれの用途で縮小していっ て、場合によっては建築等用地の中でもいろいろ変わっていく。そうすると、変えやすい土地とそうではない土地とか、単純に適しているかどうかというのも非 常に重要な評価なのですが、もう1つは、どういうのには変え易いけれど、どういうのには変え難いだとか、あるいはこういうのには絶対合わないよと。例え ば、別途安全・安心の委員会などでは、水害になりそうなところとか、そういうことだと思うのですが、あるいは公共交通との近さだとかそういうのがあると思 うのですが、何かそういう、1つはグレーディングみたいなのでしょうけれども、もう1つは、どういう方向は適切だけれど、どういう方向は余り適切ではない というようなことも、もし可能であれば評価できると、非常に意味があるものになるのかなと思いました。

【国総研】 とても大事なご示唆をありがとうございます。これはグレーディングでスタティックなところを強調して書いていますが、それだけではなくて動態 的な要素も入れるべきだということだと思いますが、私もそう思います。そういうことについても反映できるように検討したいと思います。

【主 査】 前回はこのハイフンの副題がついていなかったのですか。

【国総研】 私どもの理解としては、前回は行政部費の要求事項としてのご説明で、通常そういった場合には副題をつけずに要求してございまして、プロジェク ト研究として所の研究として表に出していくに当たっては、タイトルから、趣旨と申しますか、コンパクトシティのための基礎的な研究だということが大変分か り難いということもありましたので、今回プロジェクト研究に当たって副題を添えさせていただいた次第です。

【主 査】 私ももとのタイトルはさっぱり理解できなかったのですが、副題がついて大変よく分かりました。ありがとうございます。
 1つ、これは評価されるわけですね。コンパクト化を評価しようというわけですね。先ほどの浅見先生の5ページなんかを見ると、点数をつけて評価しようというわけですね。違うのですか。

【国総研】 ここに書いてある評価手法は、このペーパーではコンパクト化を評価するのではなくて、それぞれの土地ごとに、その土地は何に向いていて、何に 向いていないか、あるいはどういう方向に行くべきで、どういう方向には行かない方が良いか、そういうことを評価していきます。

【主 査】 これはタイトルがコンパクト化の評価手法となっている。コンパクトということではないのですね。

【国総研】 ここの評価手法はコンパクト化ではありません。

【主 査】 コンパクト化とか、そういうトータルでも評価しようとされているわけですか。

【国総研】 それは全体としてなるということです。

【主 査】 そのときに、評価の尺度みたいなものは、金額換算するのか、あるいは、例えば最近ですとCO2 とか低炭素とか。金額換算が一番一般的だけれども、何か共通手法を使って評価しようとするのか、項目ごとにばらばらとやっていくのか、その辺りは如何ですか。

【国総研】 それはこちらにノウハウがありますので。

【国総研】 先ほど「既に終了した」という紹介があった課題についてですが、実は今年度一杯までの期間で実施しておりまして、来年度の事後評価課題となる 「都市の将来像アセスメント」という課題となります。その課題の中で将来の都市構造を評価することに取り組んでいまして、社会資本整備重点計画における重 点4分野である暮らし、安全、環境、活力に、行政サービスコストを加えて評価指標の開発を進めています。

【国総研】 先生が仰る点については先ほどちょっと申したのですが、この研究そのものはコンパクト化を目指してというタイトルはつけているのですが、その 中のある一部の土地というものに着目した面からのコンパクト化に向けたメッシュのシステム手法をつくっていこうということで、仰るような都市全体のCO2 の削減量あるいは人口の増減がどうなるかといったようなもう少し大きな都市構造的な視点については、現在都市研究部でそれなりに取り組んでいますので、そ ういった成果も参照しながら、この研究としての妥当性と申しますか正当性というものを検証しながらやっていきたいと考えています。

【主 査】 分かりました。上のメインのタイトルの「土地適性評価」、この辺りがメインになっていると。

【国総研】 はい。

【主 査】 ありがとうございました。

【国総研】 ありがとうございました。

【主 査】 どうもありがとうございました。期待しておりますので頑張ってください。

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4.その他

【事務局】 どうもありがとうございました。評価案件4件と報告案件2件ということで進めさせていただきました。最終的な取りまとめにつきましてはいつも のとおり主査とご相談させていただきまして、また議事録等につきましては出席委員の方にもご確認していただくということで取りまとめをしていきたいと考え ています。また、取りまとめた結果につきましては議事録等も含めましてホームページに公表するということで考えておりますので、予めご了解いただければと 思っております。

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【事務局】 それでは、最後になりますが、所長よりごあいさつを申し上げます。

【所 長】 本日も長時間に渡りまして熱心なご審議、本当にありがとうございました。
 これで12月の3つの分科会のご審議を無事終わらせていただきました。また、途中にありましたが、3つの部会それぞれ個性があって、今回も少し審議の方 法等の原則がうまく通っていなかったりしてご迷惑をおかけしましたが、このあたりはまた、反省材料にして、以降うまくできるようにしたいと思います。
 今回は初めて、以前は7月あたりに翌年始める課題の事前評価を終えてしまって、あるいは4月に終わったものの事後評価を7月にご報告してということで、 このあたりはもう少し時間を取った方が良いのではないかということで今回のようなやり方をさせていただいて、7月は予算に関わることだけやらせていただい たということだったのですが、新規に関しましては、その後内部でも何度かブラッシュアップの機会を設けたりしたこともあって、それなりに手ごたえを感じて おりますので、これは今後も続けさせていただきたいと思っております。逆に事後評価の方は時間がなくて、まだまとまっていませんという言い訳が立たないこ とになっていますので、いろいろご指摘いただいたことをしっかり受けとめて、今後行政等に反映していきたいと考えています。
 それから、この時期に設けたのはもう1つの狙いがありまして、通常は今頃になると予算がどのようになりそうかなというのが大体見えてくるのですが、どうも新規課題についてはかなり厳しい査定が出てきそうです。
 ということで、今日もいろいろ有益なご示唆をいただきましたので、できるだけ効率的に成果が上がるようにまた頑張っていきたいと思いますので、今後ともご指導をどうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

【事務局】 これで平成22年度第7回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第二部会)を閉会いたします。長時間の御審議、どうもありがとうございました。

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