平成22年度 第4回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第三部会)

  議 事 録



1. 開会/国総研所長挨拶

2. 分科会主査挨拶

3. 議事

(1)
個別研究課題の評価方法等について(確認)

(2)
平成23年度開始予定研究課題の事前評価
@港湾地帯における高潮被害評価と対策に関する研究
A国際バルク貨物輸送効率化のための新たな港湾計画手法の開発

4. 今 後の予定等について

5. 国総研所長挨拶/閉会



平成22年度 第4回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第三部会)

平成22年7月 21日


1.開会/国総研所長挨拶

【事務局】 ただいまから、平成22年度第4回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第三部会)を開催いたします。
 議事次第に従いまして、国総研所長よりご挨拶申し上げます。

【所  長】 本日は本当に暑い中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本年も国総研の研究評価につきましてどうぞよろしくお願い申し上げます。
 後でまた説明があるかと思いますが、今年から、本日の評価は来年度予算要求する案件についての事前評価のみにさせていただきまして、従来、プロジェクト研究として評価をいただいていたものにつきましては、もう少ししっかりと中身を練り上げてから、秋が深まったころに改めて評価をいただきたいと考えております。

 ただ、予算なのですが、概算要求の基準も何か揉めているようでございます。薄々聞こえてくるのは一律0.9だという話もあるのですが、何とか頑張って研究予算を確保していきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 簡単ですが、あいさつにかえさせていただきます。

↑TOPへ戻る

2.分科会主査挨拶

【事務局】 続きまして、本日の第三部会の開催に当たりましては、分科会設置規則に基づきまして主査が指名されておりますので、主査にごあいさつをいただきまして、以後の議事をお願いしたいと存じます。

【主 査】 今日は別の委員会にも出ていたのですが、どこに行っても「暑い中を」というようなあいさつになっておりまして、夏は暑い方が夏らしくていいかなとか、若干負け惜しみみたいなことを感じております。
 先ほどのお話で、予算をしっかり確保していただくのは非常に重要ですし、国総研がやるべき研究の中身をしっかり国民の方にわかっていただくような形で実行するということも非常に重要です。この会議はそういう意味で非常に重い責任を負っていると思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

↑TOPへ戻る


3.議事

 (1)個別研究課題の評価方法等について(確認)

【主 査】 早速議事に入らせていただきまして、まず、評価の方法について事務局から御説明をお願いします。

【事務局】 先ほど御説明いたしました配席図の表を何枚かめくっていただきまして、資料2「個別研究課題の評価方法等について」という紙をご覧ください。
 1番「評価の目的」は、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」等に基づきまして、公正かつ透明性のある研究評価を行うということで行っております。

 2番「評価の対象」は、今回は平成23年度新規予算要求を行う研究課題を評価対象といたします。

 3番「評価の視点と項目」は、事前評価に当たりましては、必要性、効率性、有効性について御判断いただきます。

 次に、4枚めくっていただきまして、別添2の横表になっているものでスケジュール等を御説明いたします。本日2件ございまして、それぞれ、評価時間は25分になっております。この中で説明時間は10分、評価時間は15分。この15分の中に主査にまとめていただく時間も含まれておりますので、この15分で評価も含めてよろしくお願いいたします。

 また、資料2に戻っていただきまして、5番の「評価結果のとりまとめ」ですが、評価結果は、今日の審議内容を評価シートに御記入いただきまして、これを主査に御提出いただきます。その後、主査の責任において取りまとめることになっております。その後、本委員会委員長の同意を得て評価結果といたします。

 6番「評価結果の公表」ですけれども、評価結果は議事録とともに公表することとしております。

 参考として、この後の予定ですけれども、一番下の第5回〜第7回分科会では中間・事後評価課題等の評価となっております。先ほど所長から申し上げたとおり、ここでプロジェクト研究の評価も行っていただきます。今のところ、今年の11月ごろを開催予定しておりますので、また委員の先生方には改めて日程調整させていただきますのでよろしくお願いいたします。

 こちらからは以上でございます。

【主 査】 今の御説明に対して何か御質問がございますでしょうか。
 それでは、今の御説明を御了解していただいたということで、早速、次の議事に入りたいと思います。

↑TOPへ戻る

(2)平成23年度開始予定研究課題の事前評価

〈事前評価〉@ 港湾地帯における高潮被害評価と対策に関する研究

【主 査】 本日の議事(2)ですが、「平成23年度開始予定研究課題の事前評価」ということで、最初の課題「港湾地帯における高潮被害評価と対策に関する研究」について御説明をお願いします。

【国総研】 御説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

〔パワーポイント映写、以下、画面ごとに・ の表示〕

・  まずこの研究の問題意識でございますが、この写真を見ていただきたいと思います。これは名古屋港の航空写真で、赤い線で描いてあるところがいわゆる海岸堤防と言われるところです。このように海岸堤防より海側にいろいろな土地がこれだけ広大につくられてきたということでございます。御承知のとおり、台風に伴う高潮が発生すれば、右の図のように、海岸堤防の陸側については守られるのですが、海側については場合によっては水浸しになる可能性もあるということでございます。ここを何とかしたいということでございます。いい言葉がなかったので、ここでは便宜上、「堤外地」と呼ばせていただきたいと思っております。

・  その堤外地でございますが、港湾の利用も多様化してきてございまして、例えば左上には国際展示場、ガーデン埠頭といった、いわゆる一般の人たちが入るような施設もございますし、堤外地にあおなみ線が走っていたり、地下鉄が近くまで来ていたりというようなこともございますので、一般の利用も行われてきているということでございます。また、港湾関係にとりましては、コンテナターミナルや木材埠頭、それから自動車の積出基地といった、自分では動けない貨物も増設されているということでございますので、高潮が来ればこういうところが被害を受ける可能性があるということでございます。

・  実際に被害を受けているのかというお話でございますが、このように左側の方は一般的な被害ですが、平成16年に台風16号、18号、23号と来たときに、こういうような浸水被害が起きてございます。これは堤外地というわけでもございませんが、そういう写真でございます。
 右側の方は、20年2月に伏木富山港で木材が2,400本も流出したり、21年におきましては台風18号によってコンテナがこのように散乱したというような被害もございます。

・  たまたまではないかという御指摘もございますが、これは原因がよくわかりませんが、地球温暖化に伴う影響かもしれませんが、近年、毎年のように何らかの災害が起きているというような実態でございます。

・  したがいまして、何らかの対策が必要ではございますが、実のところ、船舶が接岸して荷役が行われる岸壁近傍において堤防等を設けるというようなことはなかなか難しいところです。近年におきましては、これは諸外国の例でございますが、可動式の防護施設のようなものが研究開発され、一部は実用化されてきております。左上はオランダの水門であり、右側はベネチアのいわやる干拓地を守るような浮上式水門のようなものが、右側の方はまだ整備段階あるいは計画段階だと聞いてございますが、このように技術開発も進展してきております。

・  また、日本におきましても、下の方はいわゆる一般的な地盤の嵩上げ等でございますが、左上の方は可動式の防波堤のイメージということです。沼津港で実証試験が行われ、和歌山で一部事業化というところになってございますし、右側の上の方はフラップゲート式の防波堤ということで、日立造船で技術開発が進んでいるということです。このように、何らかの対策をとりつつあるということでございます。

・  もう一回整理させていただきたいと思いますが、「堤外地における高潮対策実施上の課題」は、まず、堤外地が守られていないということが一番の大きな課題でございます。
 次が、もし何らかの対策を施そうとしたときには、当然、費用対効果分析が必要となるわけですが、その際、港湾貨物の散乱であるとか、それに伴う岸壁閉鎖といったような港湾特有の被害に対する評価手法が今のところ確立されていないので、1つはこのあたりの研究をしたいということです。

 2つ目が、では対策を施そうとしたときには、従来型の堤防では困難でございますので何らかの工夫が必要だということです。そのあたりを体系的に取りまとめたものが今のところないので、そのあたりを研究したいと考えております。

 ・  研究の目的としましては、その被害評価手法の開発によりまして費用対効果分析の向上、それから対策を取りまとめることによりまして、より適正な高潮対策の計画立案事業執行に資するような形にしたいと思ってございますし、その波及効果としては、港湾地帯における高潮対策が促進され、その結果として、我が国の物流・産業・地域の活性化、港湾の国際競争力の強化に資するのではないか、あるいは自然災害に対して安全・安心な国土あるいは地域が形成されるのではないかというようなことでございます。

・  研究の実施体制でございますが、これは説明を省略しますが、私どもが中心になり、関係機関と連携しながらやっていきたいということでございます。

・  研究の実施方法ですが、先ほど御説明したところは2番目の被害評価手法の開発と3番目の高潮対策の検討ということですが、その前段として、港湾堤外地の状況把握と課題を整理したいと思ってございます。
 3番目の部分の対策の検討につきましては、対策を体系的に取りまとめる他、ケーススタディとしてどこかの港を選定して実際に対策を検討し、その費用対効果分析をしてみたいと思っています。

 取りまとめに当たりましては、事業制度に対する検討もあわせて行ってまいりたいと思ってございます。

・  最後に自己点検ということでございますが、必要性についてはもう御説明したとおりで、港湾の利用は多様化してきておりますし、浸水被害は顕在化しています。それから諸外国においては例えばハリケーン・カトリーナの例もありますとおり、被害も起きている。地球温暖化の影響も懸念される。こういった状況の中で無防備な港湾堤外地を放置することはできないので、一刻も早く成果を得たいと思ってございます。
 効率性の観点では、先ほど説明をほとんど省略いたしましたが、関係機関と連携して効率的に実施してまいりたいということです。その後、なお書きですが、費用対効果分析をするということでございますので、この調査の費用対効果はあるのかという御質問もあろうかと思いまして、別に十分な検討をしたわけではございませんが、実際に港湾堤外地を有していない港湾はほとんど皆無だろうと思ってございますので、研究の成果につきましてはどこかでは必ず活用していただけるということで、結果が無駄になることはないと思ってございます。

 最後に有効性についてですが、この結果については、費用対効果分析の指針の一部として活用していただくとともに、制度設計の部分につきましては、政策立案者である国土交通省港湾局に使っていただくということでございますし、あわせて、幾つかの対策の取りまとめ等につきましては、その対策を計画立案し、事業執行する全国の港湾管理者等に使っていただけると思ってございますので、ある意味、有効性もあるのではないかと思っている次第でございます。

 私からの説明は以上でございます。

【主 査】 ありがとうございました。
 この研究提案に対して、御欠席の委員だとか他部会からのコメントは出ておりますでしょうか。

【事務局】 意見はございませんでした。

【主 査】 それでは早速、質疑応答、議論をさせていただきたいと思います。今日の委員会は他部会からも先生方にも参加していただいておりますので、他部会の先生方も含めまして活発な御議論をお願いしたいと思います。

【委 員】 パワーポイント集でいうと7ページを見ているのですが、堤外地における高潮対策、それに対する評価手法が確立されていないのはBCのことでしょうか。堤外地というのは適用対象のことですよね。適用対象が変わると、そもそも本質的な評価手法が変わるのでしょうか。つまり、評価手法そのものへの検討については、手法そのものの検討をもう一回やり直す必要があるのでしょうか。その辺の新しさがちょっとわからないものですから、教えていただければと思います。

【国総研】 堤外地という言い方をしているのは、あくまでもそこが守られてないという問題意識があるということでございます。したがいまして、仮に堤内地に港湾があったと仮定しても、同じように、そこでの違いは基本的にはないだろうと思ってございます。ただ、まだ研究が進んでいない部分としては、港湾貨物みたいなものが散乱したときにどの程度被害が生ずるのかといった話については、まだ定量化されていない部分がございます。
 もう1つは、それに伴って貨物が岸壁の全面を埋め尽くしたとすると、それによって岸壁の閉鎖であるとか、フローによって、例えば、ある企業の生産活動が止まるといったような部分の評価については、今のところ確立されたものはないのではないかと思っており、そのあたりを検討してまいりたいと思っております。

【委 員】 私、津波と高潮の研究をしておりますと、従来の堤防のつくり方というのは、堤内地と堤外地を確定して、堤内地は守ると。堤外地については水が来ても仕方がないというふうに、形を区切る、バウンダリーをきちんとつけるわけですね。ただ、生活上の利便で、段々堤外地に人間の活動が侵食して出ていっちゃうということがあって、災害対策上、非常に困ることなのですね。
 この研究計画で一般の方々に誤解を与えてはいけないのは、堤外地を堤内地のように扱うような研究をするつもりではないということです。堤外地はあくまでも堤外地であって、ただ、堤外地に起因するような災害というのがあり得るし、堤外地における経済活動も無視できないので、堤内地とは全く違うけれども放置するわけにはいかないのだと。そういうスタンスを守らないと、いつの間にか経済活動が伸長して堤内地を外側に拡張していくみたいな印象を与えますので、その辺をきちんと切り分けるという言い方が必要なのではないかと思いました。

 ただ、例えばカトリーナの場合ですと、堤外地においてフローティング、浮体が暴れ出して堤防に大きな影響を与えるとか、いろいろなことがありますので、堤外地を無視しろと言っているわけではなくて、堤内地と堤外地は違うのだということをもちろん踏まえて、その上でやるのだということをもう少し強調していただければと思いました。

【国総研】 ありがとうございます。実はその議論がありまして、「堤外地」という言葉はできれば使わないようにしたらどうかという話もあったのですが、なかなかいい言葉が浮かばなかったので、ここでは堤外地という言葉を使わせていただいたということでございます。御指摘を踏まえつつ、研究はさせていただきたいと思ってございます。

【主 査】 今の点なのですが、最初の方の資料で赤い線が引いてあって、海岸堤防の外にもいろいろたくさん埋立地とか人工島などがありますよね。でも、名古屋だったらば、ここに昔の伊勢湾台風みたいなものが来るというのは当然想定されているのだろうから、こういう埋立てをするときにその部分をどう守るかというのは当然設計されていてしかるべきだと思うのですが、現在はこういう施設の防災に対する設計指針や考え方はどういうふうになっているのですか。

【国総研】 少なくともコンテナターミナルの前面とかそういったところについて、いわゆる一般的な高潮に対して守っているような高さは有しておりませんし、現実的にも浸水はある程度するような設計になっていると思ってございます。ただ、だからだめなのかということですが、ここから先はどういう影響なのか、よくわからないのですが、近年において例えばコンテナが散乱したり木材が出ていったりというような被害も顕在化しておりますので、そのあたりのところはきちんと対応していく必要があるのではないかと思ってございます。これまでは港湾貨物を取り扱うという観点もございますので、ある意味、そういったところまでは守れなかったのだろうなと思います。

【主 査】 もしそうだったら、技術的な対策、評価法と同時に、そういう部分をどういうふうに考えて設計するかとか防災基準を決めるか、その制度的な対応がすごく重要になるのではないでしょうかね。そこの部分までこの研究のスコープの中には入っているのでしょうか。場合によっては、法律を変えるとか設計指針をつくるとか、そういうようなことがぜひ必要なのではないかと思うのですが。

【国総研】 今、現時点においてその部分まで含めて検討しようかという点では、なかなかそこまでには至っていないというのが現状でございます。少なくとも法律上の観点で、例えば、今ある埠頭みたいなものは何らかの形で対応しなければならないのだろうなと思ってございます。その方法としましては、港湾法でも、海岸保全区域を指定して海岸法で対応するというようなことも法律的には大丈夫なのだろうと思ってございます。今回の検討の中では、既存のこういった施設を守るための対策について取りあえずまとめたいと思っているところでございます。

【委 員】 今の点は、私も気になったところなのですが、実際にいわゆる堤防の外側というのは河川でもあるわけで、そこに農地があったり家があったりという既存事実がそのまま残っている場合があるのですが、それは逆に言うと、冠水頻度が高いというリスクを承知でという話になりますよね。そういう差のある土地なのですよということが条件で、その後のいろいろな開発整備が行われてきたのかどうかというところが、どこまで安全性を見てあげるかという議論からもあるはずなので、その辺が今の制度なり技術基準の扱いの説明の中ではよくわからなかったというのが1点です。
 もう1つ、評価の対象としての御研究の提案に対してちょっと気になるのが、事前意見を述べよということで資料を送っていただいた第一部会の「災害対応を改善する津波浸水想定システムに関する研究」というのがあるのですが、津波と高潮、その他とは、現象としては確かに違うのですが、海面が上がってきて陸側に乗っかってくるということ自体は似たようなものなのですね。こういう浸水想定というところをきちんとやった上で多分被害評価という話になると思うので、その辺での共通性、ダブり、連携というのはどうお考えなのか、ちょっと気になりました。

【国総研】 前者についてはなかなかお答えが難しくて、十分に御説明ができにくいところではございますが、いわゆる港湾でございますので荷役活動が行われるという前提のもとに、これまで高さとかそういったものを決めてきたのだろうと思います。したがいまして、ある種、そういうリスクも高い土地であったといったことも事実なのだろうと思います。しかしながら、最近こういった被害が顕在化している、あるいは気候変動等もあるというようなことも踏まえると、また何らかの対策が、やろうと思えばできるような技術開発も進展してきたという前提の中で、こういったところの対策について検討してまいりたいと思っているところでございます。

【委 員】 オランダとかベネチアの例が出ていますが、実際にコンテナ船が入るような大きな港で、20mぐらい掘るようなところで水門をつくっている例とか、そういうものが現実的にあるのかということと、これを見ますと対策のB/Cのように見えたので、その対策に現実性がないと評価の意味がないと思ったのですが、今の議論を聞いていて、場合によっては堤外地の利用規制の評価というか、どの程度厳しい規制をすることに意味があるのかという、堤防をつくることを前提にしない分析を想定されているのかなと思ったのですが、どうなのでしょうか。

【国総研】 対策につきましては、どちらかというとハードで大きな絵ばかり提示させていただきましたが、対策を体系的に取りまとめるに当たっては、ハード、ソフト両面の対策をある程度網羅的にまとめたいと思ってございます。その中でこういうところではこういうハードのでかい対策が必要であり、こういう場合においてはむしろソフト面での対策が有効ではないか、といった検討の結果が出てきて、いろいろなところで、いろいろなバラエティーに富んだ対策がとれるような形になれば良いのではないか思っているところでございます。

【委 員】 大きな港に水門はあるのですか。

【国総研】 今のところ、我が国においてこの手の可動式のもので整備し始めたのは、和歌山が1つ、それから沼津港はどちらかというとちょっと小さ目の港でございますので、それぐらいがやっと実用化したところでございます。すべてがこのような水門の前面でふさぐというようなことばかり考えているのではなくて、可動式のものを岸壁の近傍に設けるであるとか、そういった、もう少し安いような対策みたいなものもあわせて検討したいと思っているところです。

【主 査】 今の御質問の関係で1つだけ。和歌山では水深幾らぐらいのところにつくっているかとか、そういうことが今の御質問の1つの趣旨だったわけですよね。10mを超えるようなところでつくっておられるのですか。

【国総研】 まだ計画段階でございまして、来年度から試験施行と聞いておるのですが、水深的には10m以上のところだったと思います。

【主 査】 そろそろ時間なのですが、よろしいでしょうか。
 それでは、先生方にすぐに評価シートを書いていただいて、それを集めて、私が最後に提示しなければいけないということなので、よろしくお願いします。

(事前評価シート回収)

【主 査】 今いただいた評価ですが、実施すべきとされた委員が2名、一部修正して実施すべきとされた委員が4名ということですので、一部修正して実施すべきという評価にさせていただきます。
 それで、一部実施して修正すべきという意見のほとんどは、堤外地の位置づけをどう考えるか。堤外地に対して要求される性能は堤内地と同じものなのかとか、先ほどから問題になっている区別の問題が多いので、後でここに書かれているコメントを読んでいただきまして、そこを明確にしていただきたいと思います。

 ただ、同時に、実施すべきとされた委員の中にも、技術研究、それから実際のこういう技術的な対策だけではなくて、施設とか設計基準とか、そういうものとセットにして3倍ぐらい予算をつけるべきだとか、そういうような意見もありますので、重要性は非常に理解されているのですが、少しスコープを広げてやってくださいというような意見だと思います。

 それから、気がついたことでもう1点申し上げたいのですが、3年間の間の目標が比較的抽象的な表現になっているので、何をどこまでやるのかということを少し具体的に、例えばこういう設計基準を示しますとか、読んだときに、これを3年間やればここまで成果が出るのだなというのがわかるような形で、もう少し具体化していただければと思います。

 そういう結果でよろしいでしょうか。

 それでは、第1のテーマにつきましては、そういうことにさせていただきます。

↑TOPへ戻る

〈事前評価〉A 国際バルク貨物輸送効率化のための新たな港湾計画手法の開発

【主 査】 次に「国際バルク貨物輸送効率化のための新たな港湾計画手法の開発」ということで御説明をお願いします。

【国総研】 御説明をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。

〔パワーポイント映写、以下、画面ごとに ・ の表示〕

・  まずバルク貨物輸送でございますが、石炭・鉄鉱石・穀物等を“ばら”の荷姿で船倉に直接積み込んで大量・安価に輸送する形態になってございます。

・  世界の主要な荷動きを示したのがこちらですが、日本は石炭・穀物で世界1位、鉄鉱石で世界2位の荷揚国になってございます。ですが、鉄鉱石で世界1位の荷揚量を誇るのは中国で、世界の荷揚量の約6割を占めております。穀物につきましても、大豆を含めると中国の方が日本より多い状況になっております。

・  中国・インド等の新興国の旺盛な資源需要によりまして、バルク貨物は今後も継続的に増加するだろうと思います。こちらが現状ですが、どの品目も大体4から5割ぐらいは今後10年ぐらいで伸びるだろうと予測されております。その大量の貨物の増加を支えるために大量の船がつくられている状況にございます。こちらは、現在就航している船を5年間ごとに切ったものと、現在建造中の船、3から4年以内に市場に出てくるだろうと思われる新造船の隻数を比較したものです。どれだけ多くの新造船が現在つくられているかということがおわかりになろうかと思います。特に8万から12万トンの、拡張後のパナマ運河に対応した新船型、それから20万トンを超える超大型鉄鉱石船が急激に増加してくると見込まれます。
 こちらは船の大きさと運航コストを比較したものですが、船が大きくなると、同じ貨物を運ぶのに運航コストが低くなるということで、こういう状況がありますので、どんどん大型の船がつくられる状況にございます。

・  鉄鉱石の輸送に焦点を当てます。こちらにお示ししましたのが北東アジア向けに超大型船、30万トンを超える鉄鉱石船で輸送する計画が顕在化しているものでございます。基本的に、積出国はブラジルになってございまして、その多くが中国の鉄鉱石会社向けです。特にこの中で目を引くのが、ブラジルの資源メジャーであるヴァーレの40万トンクラス、28隻となっているものでございます。
 こちらは、通称CHINAMAXと言われていまして、史上最大の鉄鉱石船となって、現在建造中です。

 こちらはヴァーレによる鉄鉱石の輸送計画です。ヴァーレによりますと、ブラジルからマレーシアのテルクルビアというところまでは、この40万トンCHINAMAXでシャトル輸送いたします。マレーシアで積みかえて、東アジア諸国へはもう少し小さな船で運ぶという計画を持っております。注目すべきは、その中に日本が入っていることと、一方で、中国本土については色がついていないということで、ヴァーレ社は、CHINAMAX、中国に関しては直航で持っていきたいという思想がこの資料から読み取れます。ヴァーレが中国に対してCHINAMAXに対応した港湾整備をしてくださいという要請をしているという情報もございます。

・  翻って、我が国のバルク貨物対応の港湾施設です。我が国のバルク貨物対応施設の多くは高度成長期に整備されたもので、現在、時代遅れになりつつあるものです。主要製鉄会社の最新の製鉄所をリストアップしたのがこちらですが、1971年に操業を開始した新日鐵大分が最新という状況です。1960年代に就航していた最大の鉄鉱石船は12万tクラスですので、現在の20万t、30万tに比べて非常に小さいという状況です。
 こちらは、現在の状況を世界の鉄鉱石船と日本の鉄鉱石バースを同じ水深の軸で比較してみたものです。まず、世界で就航している鉄鉱石船、20万tを超えるVLOCと言われるものにつきましては、現在就航船は、その4分の1が18mを超える水深を持っています。新造船になると、それが4分の3に増えまして、4分の3は18mを超える水深を保有することになります。一方、青い棒が日本の鉄鉱石バースの許容水深でございますが、16mまでしか対応していないバースが一番多いということで、ほとんどは18m対応までとなっておりまして、今後のVLOCの新造船にはとても対応できない状況にございます。こういう状況がございますので、現在、拠点港湾の選択について国交省で検討されている状況にございます。

・  ここで従来の港湾施設の計画手法を御説明いたします。港湾の計画におきましては、このように船が着くバースの全長あるいは水深、それから船が航行する航路・泊地水深であるとか面積、幅、こういったものを定めます。具体的には船の諸元が大きくなると、それに対して比例的に港湾施設の諸元が大きくなるという考え方をとっております。こちらに技術基準の一部の例を抜粋しておりますが、これは航路の水深の定め方です。うねり等の状況によるのですが、船の最大喫水の1.1倍から1.2倍を航路水深としなさいという基準になってございます。すなわち、最大喫水が増えれば、それに対して比例的に航路の水深が深くなるという考え方をとっています。超大型船になりますと非常に大きな諸元を持ちますので、比例的に港湾施設は非常に大きな規模になってきます。港湾施設の規模が大きくなると、コスト、整備費用というのが等比級数的に増大しますので、超大型船対応には多大なコストが必要になってくる状況にございます。

・  そのような状況を踏まえまして、研究の目的ですが、超大型船が我が国港湾へ寄港可能とする必要があるという状況の中で、限られた財源において効率的な整備を可能とする港湾の計画手法を開発するものでございます。こちらにイメージ図を示しておりますが、従来の手法に対して超大型船に特化した、超大型船の特性を踏まえた形とするものによって、港湾施設の縮小を図ります。さらに、超大型船というのは1港ですべての貨物を揚げるわけではなくて、2港、3港で揚げることが想定されますので、一部の貨物を降ろした状態、減載船に対しての設計とすることによって、さらに一部の諸元を小さくすることが可能と考えています。これらの施設の諸元を小さくすることによってコスト縮減を図って効率的な整備に結びつけるものでございます。

・  研究の概要でございます。まずは、超大型船の諸元、港湾施設のデータの収集、分析を行います。続きまして、超大型船の詳細諸元データに基づいて、超大型船が航走したとき、あるいはさまざまな外力を受けたとき、どのような動きをするか、その船体運動の定式化を行います。その結果を踏まえて新たな計画手法をつくりまして、具体の港湾においてケーススタディを実施する。また、2港目、3港目、一部の貨物を降ろした減載船につきまして、これに対応した計画手法を作ります。全体を含めまして、最終的に技術基準の改訂案として取りまとめをいたします。
 見込まれる成果でございますが、本研究の成果によって、新たな港湾の計画手法が構築され、超大型船対応の整備が促進されるというものでございます。

・  自己点検結果でございます。まず必要性につきましては、新成長戦略におきましても、拠点港湾の整備が続けられておりますが、早急に超大型船に対応した拠点港湾を整備しなければならないという状況にございます。本研究は安全性に支障のない範囲で効率的な整備を促進するものでありますので、その必要性は非常に高いと考えております。
 効率性ですが、港湾計画研究室につきましては、従来から技術基準の計画分野について大学・学会等に連携協力をいただきながら策定をしてきております。本研究所につきましても、その人脈、ノウハウを生かして効率的な研究実施体制をとっていきたいと考えています。

・  年度計画と研究費配分については、こちらのとおりです。
 最後に有効性ですが、本研究で開発します新たな計画手法というのは、技術基準の改訂案となる予定でございますので、今後の我が国の港湾施設整備全般に適用されるため、研究成果の有効性は非常に高いと考えています。

 以上でございます。

【主 査】 どうもありがとうございました。
 これに対して意見は出ていますか。

【事務局】 こちらも意見はございません。

【主 査】 それでは、早速、御質問、御意見がありましたらお願いします。

【委 員】 超大型船に合わせた、バルク船に合わせた計画手法ということなのですが、ここに書いてある船形のデータとか船体運動のことなどは、ゼロから我々がつくっていくという話ですよね。超大型船に向けた岸壁の整備というのはもちろん世界のあらゆるところで行われなければいけないわけで、そうすると、実際にこういう計画手法も外国で先行してやっている可能性が高いわけですよね。それ自体の調査はやらないのでしょうか。つまり、場合によったら外国の方式をそのまま持ってくれば簡単に、ほんのちょっとの修正を加えるだけで我々のものができちゃうかもしれないですよね。その辺の計画手法自体の海外の調査とか情報入手などはここに含まれないのかなというのが疑問なのですが、教えてください。

【国総研】 まず、船形の話につきましては、一部基本的な諸元については、新造船についても入手可能な部分がございます。そういう意味ではゼロからというわけではなくて、いろいろなデータは使えるものは使っていきたいと考えます。
 それから、海外で既にそういう計画がされているのではないかという御指摘ですが、海外で一部先行的に、こういう超大型船に対して計画を既に進めているところがございます。ただ、港湾の基準と申しますのは、海外と日本と全然違った形になっておりまして、例えばヨーロッパであれば、10km、20kmといった長い河川のような、穏やかな航路の状況になっていますが、日本では防波堤で守らないといけないような海域になっていますし、例えば風力がどのくらいの状態で船は航行するかといった航行関係について全然違うので、従来から港湾施設の基準につきましては海外と日本というか、国際標準なるものが実は存在していません。船の航行につきましても、基本的には、大洋を走るのは普通の船長さんがやるのですが、各港湾に入りますと、パイロット、各港湾をよく熟知した方々がそれぞれやりますので、そういうところでも違うということで、なかなか、海岸の港湾のものをそのまま直接持ってくるのは難しいだろうと考えています。

 一方で、では何も役に立たないかというと、そうではありませんので、実際にどういう状況のもとで、どういう計画がなされているのかというのは、本研究の中でも収集して生かしていきたいと考えています。

【委 員】 バルクキャリアを受け入れる体制を整えることは非常に大事だと思うので必要性はあると思うのですが、よくわからないのは、計画基準と計画手法を考えるとおっしゃっているのは、要するに日本のどこであればこれが受け入れられるかという、場所の選定をするための基準づくりのように思えます。そういうことではなく、この港湾のこの辺だったらバルクキャリアを受け入れる岸壁なり、オイルだったらパイプラインで引っ張ればいいのだといった、つまり立地選定が可能かどうか、そういうことに使える基準をつくるということですか。
 とすると、結局、どこが候補になり得るかという議論と、候補になり得るところをこれに対応するためには、どれぐらいコストがかかって、その立地条件が需要地に対してどういう場所にあるかという、そういう議論も必要になってくるような気がするのですが、そこまでは視野に入っているのでしょうか。

【国総研】 立地の選定にかかわる話ではないかという御指摘であろうかと思います。立地の選定につきまして、現在の状況では、バルクの拠点港湾につきましては現在公募中という状況にございます。選定をどこにするかということをまず国交省で検討してもらいまして、その委員会で現在公募中という状況です。ですので、まだどこというところは決まっていません。その選定候補が出てきた段階で、その候補について検討して、年末を目処に拠点港湾を選定するというのが現在のところのスケジュールです。実際に整備が始まるのは平成24年度からになりますので、選定された港湾についてどうするかというのは、来年度調査に入った段階のときから、ある程度連絡しながら、あるいは連携をしながら、調整をしながら進められるだろうと思っておりますので、どこに拠点港湾が選定されるのかというのは今年度中に終わってしまいますので、そこについてはなかなか、この研究でどうこうという話ではないのですが、そこの中にどういう施設をつくるかということについては十分関与していきたいと考えております。

【主 査】 今の点に関連して、アウトプットが技術基準の改訂案というのは非常に明確で良いと思うのですが、逆に、非常に大型のバルク船が入れる港というのは、今、選定とおっしゃっていましたが、一般論としていろいろつくるというのではなくて、もうこの港のここをどう改修したら、改良したらいいかという話になるわけですよね。それに対して、この技術基準をつくるということなのですか。もう候補が決まったら、その港をどうしたらいいかという個別の問題を考えるような研究になるような気がするのですが、その関係はどうなっているのですか。

【国総研】 大型船に特化した話でありながら技術基準というのはどういうことだという御指摘だと思います。基本的には技術基準の中の一部の特別なバージョンというふうに考えます。そういう意味では大型船に特化した部分になると思いますが、一方で、現在選定されている拠点港湾以外のところが後から手を挙げたときに、この考え方が使えるようなものであろうと考えております。そういう意味では、超大型船に特化したものをつくろうと思えば皆さんがこの形でできる、という技術基準の特別バージョンをつくって、そこは今回の拠点港湾だけではなくて、日本でやりたければ、他でも同じようなやり方でできるというような形になるのではないかと思います。

【委 員】 コンテナ輸送などですと、ハブ・アンド・スポークスみたいな拠点港湾が必要なのですが、バルクですから、基本的にはポイントツーポイントで、出たところから必要なところに持っていくということですよね。大きな埠頭にしちゃうと対応できる港が少なくなってしまうのですが、日本は特定重要港湾以外にも重要港をこれまで営々と整備してきて、それなりにポイントツーポイントのポイントとしてバルク輸送を受け入れられるような港が地方にもあるのですね。この流れに乗ってしまうと、どこかの特定な港1つにとにかくバルク輸送が集中して、その後、国内にどうやって輸送するのかという問題が出てきちゃうと思うのですが、これまでの日本の社会資本のストックも考えて、有利な戦略を選び取るとなると、必ずしも大きな港1つをドンとつくるという可能性もないわけではないと思うのですが。その辺は、そういう可能性はないのですか。

【国総研】 御指摘の部分は、拠点港湾をどう選定するかというところに関わるので、私のところでどこまでお話しできるかというところがあろうかと思いますが、現在のところの私の理解としましては、大型船で運ぶことによって、従来よりコストが下げられ、一方でコストを下げるという先に、2港、3港を挙げている形で、現在、小さな船が入っているところも、拠点港湾に入った後、2港目で入れる、3港目で入れる、そういうスタイルで、日本全体である程度コスト削減を図りたいというのが現在の考え方だと思っております。例えば、減載船という形になっておりますが、長さとか幅は変わらず、水深が浅い形になっても多少は入りやすいので、それで、現在の拠点港湾の整備でも、連携港湾を選んで募集していただいても結構であるという形で基本ストックを生かしつつ、ある一方では拠点港湾を整備する、という形でコスト減を図りたいというのが、現在の考え方だと思います。

【副所長】 彼は今、遠慮して答えたのですが、実は国内の二次輸送の効率性、それから2港揚げ、3港揚げの効率性、そういう物流経済みたいな研究も実は彼が研究しておりまして、現在、本省での政策立案に役立てているところでございます。

【委 員】 勉強のために教えてほしいのですが、鉄鉱石を運ぶような例が出ていたのですが、そうすると、かなり特定の者の船が使う港だったり航路だったりしますよね。ある意味、私道みたいなもののような気もするのですね。それを、何で基準を決めてやるのかなと。その人がお金を出してくれるのだったらつくりますが、その人が出したくないと言ったらつくらないという、そういう性質のものではないかと思うのです。よく工場などに物すごく大きなトラックが走る私道がありますが、それは本人が決めればいいことであって、役所が決めるというのはどういうふうな論理になるのでしょうか。
 今日の研究からちょっと外れちゃうかもしれないのですが、何か基準をつくると言っているから、公的な基準をつくろうと思っているのですが、それは民間の人がつくりたいかどうかだけの話になると思うのです。

【国総研】 いわゆる船会社、荷主が決まっているものについて、そもそも基準があるのかどうか、要るのかどうかという御指摘だと思います。制度面からまずお話しさせていただきますと、港湾法の五十何条かにおいては、港湾施設というのは基本的に技術基準に準拠しなさいとなっておりまして、最低基準、ここで言っている基準と少し違うのですが、例えば港湾の航路については船舶の喫水以上の深さを持ちなさいといった最低限の技術基準があります。これは船舶があまねく、安全に航行できる港にする必要があるからだと理解しています。
 一方で、ここで基準と申し上げているのは少し範囲が広くなっていまして、港湾の基準の体系は、基準という、守らなければいけない部分と、同解説といいましてガイドライン的な部分がございます。それを両方合わせて私どもが計画基準いう言い方で通称していまして、その辺で口が滑っているようなところがあるかもしれません。ここで基準と言っていますのは、どちらかというと最低限の基準ではなくて、大型船が入れるときにどのくらいの施設が必要であるかというガイドライン的なものになろうと考えています。それは、現在の基準・同解説の中にも含まれているものでございます。そういう意味では、日本の港湾でこういう船を受け入れるときには、どのくらいの施設が必要であろうというガイドライン的なものというふうに御理解いただければ妥当というか、この状況に一番近いのかなと思います。

【国総研】 何で国の基準が必要かというのについては、例えば建築基準がありますね。これは個人の住宅であっても、一定のレベルの安全性なり防火性なりを求める。それは個人のものではありますが、一旦火災が起こるとか、いろいろな被害が起こった場合に、個人の責任だけでは済まない、あるいは個人の安全を考えたら最低限一定のレベルのものは満たしていただかないと、社会として困るということで多分やられているのではないかと思うのですが、港湾も一緒で、例えば大型船を使う企業だけがその港を使っているわけではないですから、そこで事故を起こされたりすると困るわけです。ですので、少なくとも最低限の安全性、そういったものは求めざるを得ない。今の法律の体系でもそれは満たしていただくということになっていく。それをやるということであります。

【主 査】 今の議論の前提に、4ページに製鉄会社の最新の製鉄所として、新日鐵大分とか福山とか住金鹿島とかありますよね。この中で、その製鉄所だけが使う専用港湾とか、そういうのはあるのですか。みんなそうではなくて、公共的な港湾の一部をこれらの製鉄所は使っているということなのでしょうか。

【国総研】 これらの製鉄所のための岸壁は、これらの会社のための専用のものがあります。一方でこれらの港湾にはすべて公共部分あるいは他の会社が使っている部分もございますので、例えばここで大型船が航路で座礁したということになれば、他の会社に対しても、あるいは他の使用者に対しても当然迷惑がかかるということになります。

【主 査】 そうすると、ここで言われている技術基準というものの中身は、例えば外郭堤防、防波堤とか、そういうようなものから、航路の使用だとか泊地、旋回するときの面積、長さだとか、それから個々の岸壁の仕様とか、そういうのも全部含む話なんですか。

【国総研】 基本的に含んでいるのはこちらの船に関する部分の計画で、今御指摘いただいたところの防波堤につきましては観点がございますので、それ以外につきましては、基本的に船が入る部分については計画の範囲に入っているということです。

【主 査】 今の御質問に直接答えるわけではないのですが、港湾の施設というのはそういう仕分けになっていて、どの部分を対象にしようとしているというのは今のような話だと思います。

【委 員】 ますます素人的な質問になるのですが、船がどんどんどんどん大きくなっていけば、港湾もまたどんどん変えなければいけないというのは、素人としては本末転倒な感じがします。2ページ目の右下のグラフは、何でこんなスケールの違う、30の3分の1のところが10ではないか、そういうふうにスケールを書き替えてみると、30ぐらいが頭打ちなのかなと思うのですが、まずはどこが一番大きくて、それ以上には多分ならないよという見通しがないと、50のものをつくったら、また50に合わせて全部やるのですかとか、100になったら100になるのですかと、素人としてはどうしてもそういうふうになる。それは先ほどの根本先生のお話と本当はリンクしていて、建築の例を引かれたのでちょっと反論すれば、高さ制限をかけていた時代があるわけで、その時は当然高さでもって頭打ちをしていたわけだから、限界値をどうするのかな、というあたりのお考えを聞きたいのです。

【国総研】 船はどこまで大きくなるのかという御指摘、まずこの図について、船形になっていない理由は、船を大きくしていけばいくほどコストのメリットというのがだんだん小さくなってくるということですので、航走するときにある一定のエネルギーが必ず必要になりますので、小さいところから少し大きくすればメリットは高いですけれども、17.2万トンと30万トンというのはそれほど大きな、小さい船形ほど大きな差は出てこない。ですから、どんどん大きくすればするほど、それほどメリットは大きくないということですので、大量に荷物を確保する危険性、それから、それだけのメリットが出る航路距離を見ながら船会社とか、あるいは荷主は入れるかどうかという判断をしてくることになる。
 どこまで大きくなるのかということでございますが、これは正直、わからないところがあります。1つの例として御紹介できるのは、タンカーの例を御存じかと思いますが、かつて、石油ショックの前まではタンカーというのは100万トンぐらいまでは出るのではないかと言われていました。30万トンを超えて50万トンを超えて、55〜56万トンまで出ました。ところが、30万トンを超えると、タンカーというのは満杯でマラッカ海峡を通航できないということで、日本に持ってくるときに2日間ぐらい余分にかかるという制約条件があって、現在では30万トン程度の、いわゆるVLOCというところまで、あるいはVLCCというところまでで止まっています。貨物があって、それだけのメリットが出るのであれば、どんどんどんどん大きくなりますが、一方で、それはどこかで限界が出てくるというのも状況でして今のところは40万トンが最大級ということで考えています。

【主 査】 時間が来ているのですが、非常に重要というか、これが最後だということもありますので、さらに何か御質問があれば、もう1〜2、お受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 あと、検討される中身についてもう少し具体的にお伺いしたいのですが、例えば5ページで、港湾施設の技術基準の例というので、航路では最大喫水の1.1倍とか、ある程度基準が出ているわけですよね。船が大きくなってもそうだと思うのですが、その際に、さらに超大型船の運動特性とかそういうものを調べなければいけない理由は何なのでしょうか。つまり、もうこういう基本的な考え方があるのだったら、大きくなったらなった分だけ、もとの数を増やしてやれば、ほぼ自動的に対応できるということにはならないのかということなのですが。

【国総研】 大型船になったときにこの基準が使えないのかどうかということが、まずあろうかと思います。それはほぼ自動的に、この形であれば、どのような船に対しても基本的に使えるという形、考え方でつくられているのがこの基準です。一方で、どうして例えば1.1倍という深さが必要になるのか、1.15倍という深さが必要になるのかということをもう少し突き詰めて設計しようというのが今回のやり方でございまして、すべてをやっているわけではないのです。船が動揺することによって航路の深さが必要になり、船がどれだけ動揺するのかというとことを船体の運動から解いていけば、1.1とか1.15という中でもう少し細かく突き詰めることができます。それによって、もし、この船の大きさと形と動揺がわかれば、「沈下度」というのが出てきて、普通は1.1でやるところが、1.08というところで済むのではないか。そのような計画方法を示したいというものでございます。

【主 査】 わかりました。その他、よろしいでしょうか。
 それでは、時間が来ていますので、評価シートに御記入をお願いします。

(事前評価シート回収)

【主 査】 ただいまの結果ですが、実施すべきという御意見の委員の方が4名、一部修正して実施すべきという方が2名でございました。それで、実施すべきという評価にさせていただきたいと思います。実施すべきという方の中にも、例えばもう意見が出ておりましたが、諸外国の実情をよく調べて、そういうものと比べてやるとか、あるいは民間企業と公的な港湾整備の関係とか、いろいろ出ておりました意見がここに書いてございますので、それを十分参考にしていただいて、さらに良い計画をつくっていただければと思います。
 どうもありがとうございました。

 以上で、本日の議事はすべて終了いたしました。2件でございましたが、非常に定番を超えたような御意見をいただきまして有意義な議論ができたと思います。

 それでは、御協力いただきました皆様、どうもありがとうございました。この後の進行は事務局にお返ししたいと思います。

【事務局】 ありがとうございました。

↑TOPへ戻る


4.今後の予定等について 

【事務局】 事務局から一部連絡を申し上げます。

 この後、評価書につきましては、主査と御相談の上、最終決定をさせていただきます。議事録につきましては、先ほど申し上げたとおり、公表することになっておりますので、また別途改めて皆様方に連絡等をお願いしたいと思います。報告書も、最終版のものは国総研資料あるいはホームページ等で公表することになっておりますので、今後も引き続き御協力をいただければと思っております。

↑TOPへ戻る


【事務局】 それでは最後になりますが、国総研所長から閉会のごあいさつをいただきます。よろしくお願いします。

【所 長】 本日は長時間に渡りまして熱心な御審議、本当にありがとうございました。

 私もこの分野は素人なのですが、聞いているうちに日本のインフラ整備も産業もかなり成熟化したがために問題がいよいよ難しくなってきたのかなというような気もいたしました。そういったことも踏まえて、いただきました御意見を参考に研究内容をさらに改善していきたいと思っておりますので今後とも引き続きよろしくお願いします。

 本日はどうもありがとうございました。

【事務局】 それでは、以上をもちまして、平成22年度第4回研究評価委員会分科会を閉会とします。本日はまことにありがとうございました。

↑TOPへ戻る