平成22年度 第3回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第二部会)

  議 事 録



1. 開会/国総研所長挨拶

2. 分科会主査挨拶

3. 議事

(1)
個別研究課題の評価方法等について(確認)

(2)
平成23年度開始予定研究課題の事前評価
@高齢者の安心居住に向けた新たな住まいの整備手法に関する研究
A再生可能エネルギーに着目した建築物への新技術導入に関する研究
B都市計画における戦略的土地利用マネジメントに向けた土地適正評価技術に関する研究

4. 今後の予定等について

5. 国総研所長挨拶/閉会



平成22年度 第3回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第二部会)

平成22年7月21日


1.開会/国総研所長挨拶

【事務局】  ただいまより、第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第二部会)を開催したいと思います。それでは、所長の方よりご挨拶をさせていただきます。

【所 長】  本日は、文字どおり猛暑の中、お集まりいただきまして本当にありがとうございます。
 今年度も国総研の研究の評価について、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今年から評価の中身を少し変えさせていただきました。以前は来年度予算要求に係る課題と、国総研所として少し力を入れて進めておりますプロジェクト研究の評価を並行してやっていただいておりましたが、今年度は来年度の予算要求に関わることだけに切り分けさせていただきまして、プロジェクト研究等々、少し時間のかかるものは11月ごろにもう一度機会を改めまして、ブラッシュアップしたものを見ていただくという形にさせていただきました。

 予算なのですが、報道に伝えられるとおりで、来年度の概算要求基準がどうなるか、まだまだちょっと見えないところもございますが、今日いただきます評価をもとにいたしまして、ブラッシュアップして臨みたいと思っておりますので、今日は本当によろしくお願い申し上げます。

 簡単ですが、挨拶とさせていただきます。

↑TOPへ戻る

2.分科会主査挨拶

【事務局】  それでは、主査にご挨拶をいただきまして、以降の議事をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【主 査】  先生方、暑い中お集まりいただきましてありがとうございます。いろいろ評価の仕事が大変多くて申し訳ないと思っておりますが、ひとつよろしくお願いいたします。今日は3つ、高齢者、再生可能エネルギー、都市と、皆様には大変御関係の深いテーマでございます。ひとつよろしく御評価のほどをお願いいたします。

↑TOPへ戻る


3.議事

 (1)個別研究課題の評価方法等について(確認)

【主 査】  議事に従いまして、まず事務局から今日の評価の方法について御説明をお願いします。

【事務局】  それでは、資料の右肩に資料2と書いてございます「個別研究課題の評価方法等について」という資料をご覧ください。
 先ほど主査からもお話がありましたように、1の評価の目的というところに書いております。「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、そういったものに基づいてしなくてはいけない評価ということでございます。

 評価の対象につきましては、2に書いてありますとおり、平成23年度新規予算要求を行うもののみが今回の評価対象でございます。

 視点につきましては、それに従いまして必要性、効率性、有効性について御判断をいただくということでございます。

 2枚ほどめくっていただきまして、本日のスケジュールが表になってございます。3課題ございますが、それぞれ説明時間が10分、評価にかかる時間が15分。15分の中には主査のまとめも含めております。こういった形で3本続いて評価をお願いしたいということでございます。

 大変申し訳ありません。資料2の方に戻っていただきまして、資料2の裏側をちょっとご覧いただければと思います。評価結果の取りまとめにつきましては、それぞれの委員の方に評価シート書いていただきまして、主査の方に集めますので、それを持って主査の方で取りまとめをいただきたいと思います。取りまとめた結果につきましては、研究評価委員会の委員長の同意を得まして最終的な評価結果とするという手続を踏ませていただきたいと思います。

 公表の関係ですが、6に書いてございます。議事録とともに資料については公表いたします。

 それから参考の方に書いておりますが、今後の予定でございます。第5回〜7回と、また分科会を行います。中間・事後評価等と書いていますが、もちろんこの中で新規のプロジェクト研究について改めて評価を行います。11月ごろの開催を予定しておりますので、改めて先生方に日程調整させていただきたいと思ってございます。以上でございます。

【主 査】  ありがとうございます。委員の先生方、今の事務局の御説明、何か御意見、御質問はございますか。

↑TOPへ戻る


(2)
平成23年度開始予定研究課題の事前評価

【主 査】  それでは議事(2)に入りまして、「23年度開始予定研究課題の事前評価」について審議したいと思います。3つございます。1つずつ約25分で進めていただきたいと思います。

〈事前評価〉@ 高齢者の安心居住に向けた新たな住まいの整備手法に関する研究

【主 査】   それでは、最初の課題について説明をお願いします。

【国総研】   それでは、「高齢者の安心居住に向けた新たな住まいの整備手法に関する研究」について御説明申し上げます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ まず研究の社会的背景でございますが、数年後に本格的な超高齢社会の到来を迎えます。現在高齢者の大半は住宅に居住しております。高齢者施設の整備量の頭打ちというような影響もございまして、今後在宅の高齢者、要介護者がますます増加することが予想されております。安心して住み続けられる住まいの重要性がますます増大していると言えます。

・ 高齢者の住まいに関してどのような社会的ニーズがあるのか、2点御指摘いたします。
 1点目は、安心して暮らせる高齢者向け住宅、高齢者住宅が必要であるということでございます。これまでこの紫色のとおり、数種類の高齢者住宅の制度化をしてまいりました。ただ、従来の高齢者住宅は、健常期の高齢者が居住するための住宅を主たる目的としておりまして、要介護度が高くなった場合に安心して住み続けられる高齢者住宅というものは、制度上ございませんでした。このたび、国土交通省政策集にも掲げられているとおり、高齢者住まい法を改正し、医療・介護等のサービス付き高齢者住宅の登録制度を創設することが予定されております。

・ ここで、高齢者住まい法について簡単に御説明申し上げます。平成13年に制定されまして、高齢者の居住の安定確保等を図ることを目的としております。高齢者向けのバリアフリー化された優良賃貸住宅の供給促進、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度、こういうものについて規定をしている法律でございます。今後23年に法改正が予定されておりまして、今御説明申上げたとおり、医療・介護等のサービス付き高齢者賃貸住宅の登録制度というものの創設が予定されているところであります。

・ 社会的ニーズの2点目でございます。自宅に住み続けるためにはバリアフリー改修が必要であるということでございます。財政上の制約の増大等を踏まえまして、在宅介護の必要性が増大しております。高齢者の大半は現在持ち家に居住しておりますが、やはり引き続きできる限り自宅に住み続けたいというニーズは非常に大きいものがあります。一方バリアフリー化の状況は非常に低いものとなっておりますので、バリアフリー化の促進というものが非常に重要になってきておるということでございます。

・ では、どのような技術的課題があるのかということについて御説明いたします。
 まず1点目、医療・介護等のサービス付き高齢者住宅については登録制度の創設が予定されておりますが、その安全性や居住性に関するハード面での技術基準がまず確立していないという問題を指摘しております。具体的には、医療・介護等の必要な高齢者が居住するとした場合の住宅の基準、また提供される医療・介護等のサービス水準に適した住宅の基準、こういった基準の確立が急務であるという認識を持っております。

・ 2点目でございますが、持ち家のバリアフリー改修に関しまして、高齢者の多様な心身特性に応じて効果的な改修手法が異なってまいります。ただ、その具体的な手法が十分確立しているとは言いがたく、また効果的な改修の事例情報も蓄積されていないという状況でございます。

・ 以上の課題認識を踏まえまして、研究の目的と成果の活用について御説明します。
 まず1点目でございますが、医療・介護等のサービス付き高齢者住宅につきまして、必要なハード技術基準について研究をします。登録基準の原案を策定しまして、成果は高齢者住まい法改正に係る省令に反映をいたします。

 2点目でございます。持ち家のバリアフリー改修手法に関しましては、まず多様な身体特性に応じたバリアフリー改修の効果的な手法について研究をします。また、精神につきましては、今後急増が予定されている認知症を取り上げまして、認知症対応改修の効果的な手法について研究をいたします。この成果は、高齢者住まい法の基本方針に基づく技術指針として公表することを予定しております。

・ では、研究の概要について、以下御説明申し上げます。
 まず、医療・介護等サービス付き高齢者住宅の技術基準に関する研究でございますが、まず既存の高齢者住宅の先進事例について、ハード、ソフト両面の調査分析を行い、市場において現状どの程度のハード水準が実現されているのかという評価を行いたいと思います。こうした市場での事例分析結果を踏まえつつ、基準の検討化を行っていきます。

 基準の検討に当たりましては、既存の高齢者住宅、施設のハード技術基準及びその根拠について、想定する居住者等の対応関係の中からまず整理をいたします。その後、新たに供給される医療・介護等のサービス水準、そういうものの水準に応じて基準の上乗せが必要な検討項目を抽出して、技術的知見等の収集を行いながら基準の検討をしていきたいと考えております。

・ ハード技術基準の検討項目のイメージでございます。
 まず多様な身体特性、心身特性を持つ高齢者が居住をするということ、さらには住宅でございますので、住戸内で調理をするために火を使う機会が増えるだろうということを考えております。これは施設と大きく違うところだと思っています。そうした観点から、例えば内装制限だとか、消防用の設備だとか、避難階段の基準等について、従来よりも高い防火性だとか避難安全性の基準が必要ではないかと考えております。

 また共用部分のバリアフリー性につきましても、多様な心身特性を持つ高齢者の移動の安全性や容易性の確保の観点から、高度なバリアフリーの基準が求められるのではないだろうかと考えております。

 さらに住宅としては、住戸の空間計画というものも重要になってくると考えております。入居する高齢者の心身状況に応じて、住戸内の例えばバリアフリー基準だとか機能配置に係る考え方というのはさまざまであろうと思います。今回検討対象とするのは賃貸住宅でございますが、賃貸においてこうした個別対応性に係る基準をいかに確保していくのか、そのあたりの基準の考え方が重要になってくるのではないかと考えております。また、住宅でございますのでプライバシーの水準が要求されます。ただ一方で、高いプライバシー水準はサービス供給の効率性、確実性の点で問題になるケースも考えられます。こうしたことから、サービス供給の観点を含めながら適切なプライバシーの水準だとか、望ましい住戸配置の考え方、こういうものについての検討もしていく必要があると考えております。

・ 続きまして2点目、持ち家のバリアフリー改修の手法については、まず、多様な心身特性に対応した住宅のバリアフリー改修の事例を幅広く収集分析いたします。そして、その改修の効果をきちんと検証していくということをまず考えております。こうした事例の効果分析に基づきまして、改修事例のナレッジベースを作成するとともに、身体特性に対応したバリアフリー改修の指針づくりを行ってまいります。一方認知症につきましては、こうした自宅の改造事例に加えまして、認知症グループホームや医療機関等におけるハード面での対応手法、こういうものの調査分析を行いまして、その結果に基づきまして認知症対応の空間改修手法の指針づくりを行っていくということを考えております。

・ 住宅改修事例「ナレッジベース」の構成イメージでございます。高齢者の心身状況や住宅の種類に応じて、空間的条件や人的、経済的条件の中でどのような改修を実施し、どのような効果が得られたのか。こうした技術情報をパッケージとしてデータベース化し、例えばウェブ上で検索できるようなナレッジベースシステムの構築をしていくということを考えております。

・ 研究の実施スケジュールでございます。まず本省の動きといたしまして、冒頭にも御説明申上げたとおり、高齢者住まい法の改正が23年度に予定され、サービス付き高齢者住宅の登録制度が24年度ごろからスタートする見込みでございます。このため、23年度はまずこのサービス付き高齢者住宅の技術基準を集中的に検討し、登録基準の原案を作成します。その結果は、法律の省令に反映させます。24年度以降は、多様な心身特性に応じた持ち家の改修手法についての研究を中心に進め、その成果として高齢者住まい法に基づくバリアフリー化の促進のための技術指針として取りまとめていく、公表するということを予定しております。

・ 最後に研究実施体制でございますが、本省、厚労省等との連携を進めながら研究を実施していきたいと考えております。その一方で、研究に当たりましては大学等あるいは建研、民間等の知見等を集約しながら効率的に研究を進めていきたいと考えております。
 以上で御説明を終わらせていただきます。

【主 査】  明快な説明、ありがとうございました。
 それでは先生方、御意見、御質問ございましたらお願いします。10分ちょっとたちましたら、お手元にございますシートを私の方に集めさせていただいて、そこで1つずつ結論を出していただきたいと思っていますので、議論を聞きながら御記入いただければ幸いでございます。では、どうぞ。

【委 員】  大変意義深い研究だと思いますし、ぜひ実施していただきたいと思います。2点ほどお伺いしたいと思います。1つは10ページにプライバシーの問題が書かれておりますが、ここの「サービス供給の効率性・確実性の視点を踏まえた住宅のプライバシー水準」の検討というのは、具体的にはどういう方法で何を検討されるということになるのでしょうか。

【国総研】  まず、研究の方法としまして、従来の施設であれば先生も御存じのとおり、例えば相部屋であったり扉が開いたままであったりというようなことが結構多かったと思うのですが、住宅でございますので、共用廊下に対して玄関はクローズされるのが普通だと思います。その場合、一方でサービスをする側とすれば、やはり中の様子を確認したいので、そのためには共用廊下からの視認性をいかにして確保するのか、さらにドアの構造についてどのような基準でつくるのかというところがポイントになると認識しておりますが、そのような可能性について検討していくということをイメージしております。

【委 員】  現実の住宅計画の中では、今のような方法しか当面は採れないのかもしれませんが、本質的には住宅のつくり方に問題があるわけです。だから、今ある住宅をどうするかと考えるのではなくて、もう少し住宅計画そのものに対してフィードバックしていくような考え方が必要であるとともに、現在、介護保険等のサービスを受けて生活されている方のニーズから言うと、プライバシーを守りながらサービスを受けるのは大変深刻な課題ですので、そこは住戸内の計画も含めて検討課題があると思っております。どこまでここでできるのかはよくわかりませんが、そういう、より本質的な問題を持っているということを含んだ検討をやっていただきたいと思います。
 それからもう一つ、後でQOLという言葉が出てくるのですが、バリアフリーやストレスフリーという技術思想そのものが、必ずしもQOLを向上させるとは限らないという議論があって、そこも単純にバリアフリー化の基準を決めて、最低限のものをやるという議論は良いのですが、それを強めていくことがQOLとの関係でどういうことになるのかということについても、より深い考え方を持って研究に当たっていただきたいと思います。以上でございます。

【国総研】  はい、ありがとうございます。

【主 査】  ありがとうございます。どうぞ。

【委 員】  私も非常に重要な研究だと思いましたが、1、2点ちょっと疑問というか、御指摘したいところがございます。
 1つは、住宅改修事例のところで、いろんなナレッジベースでのことをやられるというのは結構なことだと思うのですが、バリアフリー化とあわせて、自宅の改修の場合には耐震補強とか省エネ対策とか、おそらく他の効果も必要だし、パッケージ化することによって、より費用節減効果があるということが想定できると思います。そういうことをどのように考えられるのかというのが1つ。

 もう一つはサービス付き高齢者住宅のハード技術基準というのは結構だと思うのですが、これも理想的には望ましのですが、市場の関係で本当にできるのか、あるいは大都市のようなところで、ある程度の負担が可能な階層とそうじゃないところだったら、どういう対応があるのか、あるいはハードの技術基準においても、最低限のミニマム型とスタンダード型、望ましいものと、おそらく幾つかの段階性があるのではないかと思うのですが、そのあたりのお考えがあれば、お聞かせ願いたいと思います。

【国総研】  御指摘どうもありがとうございました。
 まず1点目の改修事例につきまして、耐震だとか省エネのパッケージ化をどう考えているかという御質問でございますが、もちろんバリアフリー化だけを進めるよりも、耐震、省エネも合わせてやっていくことがより重要だと我々も重々認識しております。ただ、その耐震改修あるいは省エネ改修につきましては、別の研究が同時に進んでおりますので、今回の事例ではまず、主にこのバリアフリー改修事例を集めることを考えております。ただ、このナレッジベースの中でバリアフリー改修と省エネや耐震改修を一緒にしたという事例があれば、それは積極的にナレッジベースとして取り上げていって、そういうものは一体とすることによる効果がいかに高いものであるかということをきちっと示していきたいと考えております。また、取りまとめる予定の指針でも、バリアフリーだけを考えるのではなくて、高齢者が自宅に住み続けられるためには、御指摘のありましたように他の改修も同時にやっていくことが必要だということをきちっと記述したいと考えております。

 2点目のハード技術基準については、御指摘のとおりサービス基準があまりにも高い基準になってしまって、市場で全く普及しないのであれば意味がないことだと我々は思っております。そのためにまず、既存の高齢者住宅とか制度の先進事例の中で、どの程度のハード基準が実現されているのかを、市場の実態を重々認識した上で市場の意向をきちっと調査をし、その中で学術的あるいは技術的に求められる水準と、市場で達成できるであろう、そのバランスをとりながら、基準の検討をしていきたいと考えております。

 それと、基準は何段階かに分かれる可能性があるのではないかという御質問ですが、今回は少なくとも法律上の制度化をする登録基準でございますので、制度上は最低基準を設定することになろうと思います。ただ、最後の研究の実施のところで書かせていただきましたとおり、まず登録基準をつくって、その後、登録された事例の中で、もう少し高い基準がつくられていれば、そういった事例を分析しながら、事例の松竹梅ではないですが、そういう表示的なところについても少し整理していきたいと考えております。以上でございます。

【主 査】  ありがとうございます。いかがでしょうか。

【委 員】  火事のことが出ているのはこれだけなので、まずコメントです。ハードの話が出ていますが、現在、国内には3,000万台ほど住宅用火災警報器がついております。3,000万台の投資に対して統計的に何が言えるかというと、火災の規模は少し小さくなりましたが、死亡率は変わりません。僕はずっと反対派なのですが、そういう意味でハードを整備したから一体何が起こるのかということについて、どうやって評価するのか、それから評価の軸をどうするのかという問題があります。 たまたま今出ているスライドで言うと、ある住戸で火事が出て、その住戸の人が自己責任的に焼け死んでしまった場合と、火災のせいで隣の部屋の人が死んでしまった場合とでは、実はものすごく大きなレベルの違いがあるのですが、それをどうやってハード的に評価していくのかというあたりが、クリアになってないのですね。そういうのをどのようにお考えになっていくのかというところを、お聞かせいただければと思います。

【国総研】  例えば、今回考えておりますのは、建築基準法のようないわゆる世の中の最低基準というのとはまた別で、上乗せの登録の基準ということを考えています。その際に、そういった火災が生じたときの被害、それが自己責任なのかあるいはそれ以外のものでカバーすべきものなのかという観点からつくるかどうかというのは、今回の御指摘を踏まえて今後の検討計画の中で考えていきたいなと思います。御指摘ありがとうございます。

【委 員】  簡単に質問させていただきます。改修効果の検証が3年目ぐらいになされる予定になっているようですが、予算を拝見しますと、あまり多くはないと思われます。どうやって改修効果を検証される予定なのか、説明をお願いできますでしょうか。

【国総研】  まず改修事例につきましては、高齢者や障害者の住宅改修に取り組んでいる団体等の協力を得まして、紹介いただいた改修事例を中心に収集してまいります。それら事例において、例えば実際高齢者のお宅に伺って、あるいは設計した人にヒアリングをして、改修することによって要介護だとか要支援度が改善したのか、また維持しているのか、あるいは本人だとか介助者のその後の行動がどのように変化したのかというものを、インタビュー形式で情報を蓄積していくという方法を考えております。

【委 員】  得られた結果は、基準に反映されて、今までのバリアフリー基準よりも高度な基準が必要であるという形になるように推察されますが、その基準は新築の方にも反映されるご予定でしょうか。

【国総研】  基本的にこちらで考えておりますのは、既存住宅のバリアフリー改修について考えております。ですから、新築については、とりあえず今のところは対象にしておりません。

【委 員】  高齢者対応のバリアフリー基準としては、新築も既存も同じだと思うのですが。

【国総研】  まず既存住宅の持ち家の改修については、これは基準化をするものではなくて、効果的なバリアフリーの手法を事例情報として市場に情報開示していくことを目的としていて、基準化する研究ではございませんので、そのような方法をとろうと考えております。

【主 査】  よろしいですか。

【委 員】  ちょっと確認させてください。先ほど基本的に最低限の守るべき基準を考えたいという話もありましたが、いろんな介護、必要の程度が違う人の住む賃貸住宅ということになると、どのような方が入るか分からないわけですから、どうしても安全側で設計するため基準が厳しくなって、値段が高くなる可能性が高いですね。ですから、それで庶民の手の届かないようなものになってしまっては意味がないわけです。したがって、策定しようとしているものが必ず守らなければいけない最低基準という考え方になじむものかどうか、ちょっと気になったところです。むしろ何か目標みたいな形の言い方が合っているのではないかという気もしました。

【国総研】  御指摘ありがとうございます。御質問いただいたとおり、今回目標としているのは経済階層でいくと中流の方、つまり普通の年金暮らしの方が住み続けられるサービス付きの高齢者住宅ということを目標にしております。これよりも高いところでは、例えば介護型の有料老人ホームなどがありますが、入居時に数千万円の入居時一時金が必要ということで、なかなか庶民の住宅としては普遍化しないという問題があります。そういうことを考えておりますので、御指摘いただいたような点も含めて、マーケットの中で普及するような基準というものを考えていきたいと思っております。御指摘ありがとうございます。

【主 査】  ありがとうございます。先生方、よろしいですか。
 それでは、ぜひ評価シートにお書きいただきまして、事務局の方にお渡しいただきたいと思います。

(事前評価シート回収)

【主 査】  ありがとうございます。1人を除いて「全員実施すべき」となっておりまして、1人だけ「一部修正して実施すべき」という結果でございます。ということで、これは「実施すべき」という結論にしたいと思います。先生方、よろしいですか。
 事務局、先生方から大変詳しいコメントが出ておりますので、これは一部修正ではございませんが、十分反映して研究の具体的な作成をお願いできればありがたいと思います。先生方、どうもありがとうございました。

↑TOPへ戻る


〈事前評価〉
A 再生可能エネルギーに着目した建築物への新技術導入に関する研究

【主 査】  それでは2番目のテーマに移りたいと思います。説明をお願いします。

【国総研】  それでは、「再生可能エネルギーに着目した建築物への新技術導入に関する研究」について説明いたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ まず研究の背景でございますが、御存じのとおり、地球温暖化対策基本法案であるとか、新成長戦略等で日本の低炭素化をさらに推進する必要性が指摘されてございます。特に最近は、再生可能エネルギーの利活用を推進するよう明記されているのが特徴でございます。また、エネルギー起源COの部門別排出状況でございますが、特に民生部門においては他部門と比較しましてCOの排出量比が増加しているという傾向が見られます。このことから、民生部門のCO削減のために、再生可能エネルギーの導入可能性を検討する必要があると着想いたしました。

・ 再生可能エネルギーとは、自然界で起こる現象から取り出すことができ、一度利用しても再生可能な枯渇しないエネルギー資源のことでございます。例えば水力、バイオマス、太陽光・太陽熱、風、そういったエネルギーでございまして、これらは技術的には7,600EJの資源量があると見積もられておりますが、現在ではその1%弱しか利用してございません。また世界中の一次エネルギーの換算が402EJであるということから、世界のエネルギー需要の20倍は賦存しているということが見込めるわけでございます。

・ このような再生可能エネルギーでございますが、実際には余り使われてないということで、さまざま使いづらい理由があるのではないかと推察いたします。特に建築的な視点から考えますと、3つの課題が挙げられるわけでございます。
 まず1番目としては、建物の敷地内において再生可能エネルギー利活用を推進するための基本的な情報がまずわかっていないということでございます。それは、その敷地内にどのような再生可能エネルギーがどれだけあるのかということ。その再生可能エネルギーを取り入れるための設備や、あるいはそのためのコストといったものも一般の方々にはよくわかっていないというところがございます。

 2番目としましては、現行の省エネルギー基準におきまして、再生可能エネルギーを利活用するための設備機器というものが登録されてないということでございます。これらの機器の省エネルギー効果、省エネ評価の枠組み、またそのための実証データというものがそもそも不足しているという状況が挙げられるかと思います。

 その3として、そういう中でも再生可能エネルギーの利活用施設は少しずつ増えつつあるわけでございますが、その機器の組み合わせであるとか運転方法だとか、あるいは現地データをつぶさに分析した事例というのは少ないというような状況が挙げられるかと思います。

・ これは現在の省エネルギー基準の枠組みでございますが、用途といたしまして、住宅とビルなどの非住宅、この2つがございまして、基準の対象としましては、開口部であるとか断熱といった外皮と、空調等の設備機器がございます。この黄色で塗りつぶしました設備機器に関しまして、再生可能エネルギー利活用の観点から関連設備機器を位置づけようというのが本研究のねらいでございます。

・ 具体的には3つの検討項目から成っており、最初に、建築物における再生可能エネルギー利活用の可能性の調査といたしまして、再生可能エネルギーの地域潜在量、経済性、用途等を踏まえて、設備の種類、特徴を整理するということを実施いたします。
 2番目に、建築物における再生可能エネルギー利活用のための実証実験として、再生可能エネルギーである太陽光、地中熱、そういったものを取り上げまして、モデル住宅内に機器を設置し、実生活を踏まえた実証実験を行う。実証実験の結果に基づいて、省エネ効果を明らかにするというのが2番目の課題でございます。

 3番目は、再生可能エネルギー利活用施設の使用・保全に関する留意点の検討でございまして、官公庁施設等における実績データの分析、数値モデルの検討などから、これらの施設の使用・保全に関する留意点の整理でございます。

 これら3つの検討内容を取りまとめまして、最終的には再生可能エネルギー利活用のための手引き、これは官公庁施設のための手引きの作成であるとか、また省エネ法基準への反映といったものにつなげていきたいと考えております。

・ 最初の柱でございますが、まず再生可能エネルギー、新エネルギーについては、再生可能エネルギー協議会でこのように整理されております。石油、石炭、水力、こういったものは既に実用化されているもの、使いやすいエネルギーでございますが、そこからさらに下っていきますと、次第に普及レベルが十分ではないものに移り変わっていきます。発電分野として、太陽光、風力、廃棄物発電、そういったものがあり、熱利用分野として太陽熱、温度差エネルギー、廃棄物熱利用、そういったものが水力とともに再生可能エネルギーというふうに位置づけられております。また新エネルギーの観点からしますと、燃料電池であるとかクリーンエネルギー自動車、そういったものも再生可能エネルギーとともに新エネルギーとして位置づけられる場合がございます。本研究では、この赤字で示した太陽光発電であるとか風力発電、そういったものが建築物、建築敷地内における再生可能エネルギーの対象になるのではないかというふうに考えてございます。

・ それを整理したのがこの表でございまして、これらの再生可能エネルギーに関しての基本的な調査を実施しまして、また現在の省エネルギーの区分とも対応させながら、これらの再生可能エネルギーの地域潜在量、特に建築敷地内、並びに経済性などを技術資料として集約していきたいと考えております。

・ 2番目の作業内容でございますが、これは実証実験でございます。向かって左側が自動車の効率の10・15モード燃費というものでございまして、市街地を想定として3回実施して、郊外を対象とした1回の走行パターン、これによってアイドリング状態であるとかトップスピードであるとか、あるいは加速、減速、そういったものをシャーシダイナモ上で人工的に再現して、ガソリンの消費量から燃費として数値化するというようなことを自動車の業界では実施しているわけでございます。一方建築物におきましては、エアコンディショナーの計画がこのように数値化されて公表されていますが、実際には計画の倍、半分の効率で運転されているというふうな状況でございます。この辺が大変変動が激しいわけでございますが、その理由としましては、外界気象が絶えず変動したり、生活行為あるいは日射の侵入など複雑な物理現象が背景にあると考えられます。

・ そこで、本実証実験におきましては、外界気象条件、生活行為、そういったものをモデル住宅に付与いたしまして、それぞれのモデル住宅にさまざまな設備を投入いたしまして、その際にエネルギー消費あるいはCOP等を計測し、そこから再生可能エネルギー量を算出し、最終的には省エネ法告示の技術基準におけるエネルギーに関する項目を追加する、そういった流れを考えてございます。

・ 3番目は、再生可能エネルギー利活用施設の使用・保全に関する留意点の検討でございます。こちらは官庁施設の事例でございますが、太陽光発電の装置だとかあるいは地熱の利用施設、そういった官公庁施設から再生可能エネルギーの関連機器の実績データを入手いたしまして、そこから運転の最適化等の数値計算などを実施し、最終的には再生可能エネルギー利活用施設の使用・保全に関する手引きの作成をしたいと考えております。

・ これは既往の研究との関係を示したものでございます。

・ これはポンチ絵でございます。
 発表は以上でございます。

【主 査】  ありがとうございました。それでは先生方、御意見、御質問をお願いします。

【委 員】  今日の建築物というカテゴリーなのですが、具体的には住宅とオフィスなのでしょうか、あるいは官公庁施設なのですか。住宅といっても、このポンチ絵ではどうも戸建て住宅風なのですが、集合住宅と戸建て住宅ではだいぶ様相が違うのではないか、あるいは建築物というのでどういう用途や規模、あるいは単機能型なのか複合型なのか、それによって大分違うのではないかと素人的に思うのですが、そこら辺はどのように考えていらっしゃるのか。
 それから、こういう設備機器を設置することで再生エネルギーの利用効率は高いと思うのですが、その設備機器のコストがえらく高いと、そのエネルギーを使ったとしてもなかなか回収できないという問題があると思います。その辺をどのように考えていらっしゃるのか、お聞きしたいのです。

【国総研】  この研究では、建築物と書いてありますが、住宅とビルと両方やることにしています。

【委 員】  住宅の場合は戸建てだけなのですか。

【国総研】  住宅の場合、実証実験は戸建てレベルでしかできないと思うのですが、省エネ基準への反映という点に関しましては、集合住宅の方も視野に入れながら実施したいと考えております。
 もう一つ、コストとの関係ですが、再生可能エネルギーはいろいろ良いところはあるのですが、やはりコストが最終的な障壁になるかなと思っておりまして、その辺はさまざまな政府の補助制度と連動しながら普及を見ていくような形になろうかと思います。国総研では、差し当ってと言いましょうか、これらの再生可能エネルギー機器の省エネルギー効果というものをきちんと数値化するというところをまずやって、それとともにCASBEE等の、あるいは住宅やエコポイントなどの諸制度と連携しながら社会普及の検討も並行して実施していこうと考えてございます。

【主 査】  いかがでしょうか、他にございませんでしょうか。

【委 員】  1点、再生可能エネルギーの利活用の可能性を調査するという項目があるのですが、これは、現在既に導入されている先進的な技術の調査というように認識いたしました。既に適用された技術を寄せ集めて手引きをつくるということは、先進的な技術を一般化するということであると考えてよろしいのでしょうか。この研究自体の目標が、何か新しいものを作りだそうというわけではないように思えたのですが、いかがでしょう。

【国総研】  もちろん最新の再生可能エネルギーの技術に関しては、建築分野というよりは他分野の方で相当、機械工学の方とか進んでおりますので、その中で製品化されたものを建築サイドから見直して、それを従来の省エネルギー基準と対比させながら、この再生可能エネルギー機器はこれぐらいの省エネ効果があるぞということを2番目の柱で数値化していくというのが、本研究のねらいです。

【委 員】  スライドにはなかったのですが、例えば水素エネルギーみたいなものもあると考えてよいのでしょうか。今、「他の分野」とおっしゃったので、他の分野ですと、他にもいろいろなエネルギーを使われていると思うのですが、先に紹介された内容は、既に建築に適用された事例の調査でしかなかったと思いますが、今の説明からは、他の分野の技術の建築への取り込みが可能かどうかという観点での調査と理解してよろしいのでしょうか。

【国総研】  そうですね。水素も大きく見れば再生可能エネルギーの文脈の中に入ってくるとは思うのですが、この課題の中ではもうちょっと遠いかなと考えておりまして、水素が太陽光発電からゼロカーボンで生成されるような機械が本当に社会的にも普及し始めたらぜひとも取り組みたいと思うのですが、現在は市販ベースで製品されているものを対象にして考えていきます。今は天然ガスから改質する燃料電池は少しずつ普及しておりますので、それはそれで違う課題で取り組んでおりますので、違った角度からまた基準に乗ってくるのではないかと思っております。

【委 員】  同じような質問なのですが、7ページ、8ページに新エネルギーと書いてあって、その再生可能エネルギーのうちの水力と地熱がちょっと遠いところにいるのでやらず、残りの新エネルギーはやりますというのはわかりますが、例えば太陽光とか風力とかいうのはかなり技術論的には先に行っていて、不勉強だからよくわかりませんが、廃棄物とかバイオマスはまだ、そういうレベルなのかなと思っています。そのような中で、この研究で本当に目指したいところはどこなのかというところを、もうちょっとはっきりされた方が良いのではないでしょうか。例えば10ページで見ると、これは地熱を使いますというイメージですよね。

【国総研】  そうです。

【委 員】  そうすると、先ほど申し上げた7ページ、8ページあたりとはちょっと矛盾しているのかなというのと、ご自分でもお分かりかと思いますが、6ページの研究内容(1)番、(2)番、(3)番とあって、(1)番が終わらないで何で(2)番ができるのだろうという質問をしようかと思いました。おそらくこの研究でやりたいのは2番のそれぞれの機器のCOPみたいなものを比較して、これならいけるというところを出したいのですよね。

【国総研】  (2)番が本丸で、(1)番はその前段というか、その背景として全体的にレビューしておくという。

【委 員】  そういうことですよね。その辺のやりたいことが、もうちょっと明確な方が良いのではないかという気はしました。以上です。

【国総研】  (1)番目の柱は、おそらく全部やるのは大変だと思うので、(2)の中でかなり絞って実施されることになると思います。

【主 査】  私の方から二、三お願いを。まず、結構いっぱい研究があるから、既往研究は十分レビューしておいてください。それから、例えば地中熱ヒートポンプとか太陽熱給湯とか、海外でものすごく普及しているのに日本で普及してない自然エネルギーがいっぱいあるのです。それはなぜかということを調べて、ぜひそのバリアを除くような方法をやっていただけるとありがたいですね。
 それからもう一つ、いずれにしてもこれは新しいマーケットなのですよ。それをどうつくるかという、そういう視点も持っていただけるとありがたいですね。

 それから、まず公共建築に率先して入れる手だてを考えていただけるとありがたいですね。公共建築にね。

 それから、海外では、割合保守的な団体が、すべて再生エネルギーで賄えるというようなレポートを出し始めておりまして、IIASAなどですね。だからこれも国全体として、建築分野においてどのぐらいを再生エネルギーで賄うか、そういうロードマップといいますか、目標も示してくれるとありがたいですね。たくさん言い過ぎましたが。

【国総研】  1つ1つ大変有用な御指摘だと思いますので、どこまでできるかわかりませんが念頭に置きたいと思います。ありがとうございます。

【委 員】  これまでの国総研の研究の蓄積がうまく活きる研究になるといいと思います。そういう意味では、発電分野ではなくて熱利用分野の方に重点があるのかなと思いました。発電分野はそれぞれについて多額の投資が行われ研究が進められています。太陽光発電1つとっても、たとえばそれが戸建ての上にあるのか、大きな建物の上にあるのか、敷地の上に置いてあるのか、という問題は建築との関係で議論する意味があるのでしょうか?
 熱利用分野でしたら、建物のつくり方、地下室の使い方とか、いろいろこれまでの国総研で勉強されてきたことがひょっとしたら活きるかもしれません。より提案型のオリジナルな結論が出てくるのではないでしょうか。発電分野の方の話は、相対的に熱利用分野と比較において効率が良いとか悪いとか、そういうベンチマークにはなるかもしれませんが、オリジナリティはなかなか出しにくいわけでしょうから、余りそちらに力を割いても、国総研の特色が何か出てこないような気がしました。以上です。

【主 査】  大変貴重な御指摘ありがとうございます。よろしいですか。
 それでは先生方、シートに御記入をお願いします。

(事前評価シート回収)

【主 査】  「実施すべき」が3、「一部修正して実施すべき」が4ということでございます。多数決というわけではないのですが、先ほどからのいろいろ御意見も伺っていますと、「一部修正して実施すべき」ということでいかがかと思いますが、先生方の御意見はいかがでございましょうか。
 これは多数決的でよろしいのですか。私は「実施すべき」に○をしましたが、半々ぐらいのものだから。やはり多数決ではないのですが、先生方の意見も配慮しまして「一部修正して実施すべき」という結論にしたいと思います。先生方、どうもありがとうございました。

↑TOPへ戻る


〈事前評価〉B 都市計画における戦略的土地利用マネジメントに向けた
土地適性評価技術に関する研究

【主 査】  それでは3つ目の課題に移りたいと思います。よろしく御説明をお願いします。

【国総研】  では、「都市計画における戦略的土地利用マネジメントに向けた土地適性評価技術に関する研究」について御説明いたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ 政策との関連は、「都市のコンパクト化」ということをまず取り上げておりますので、ここから御説明を入らせていただきたいと思います。コンパクトシティというのは、自動車にだけ依存しないような都市構造といいますか、いろんな交通機関が選択できる、あるいは行政サービスコストも少なくて済む、サービス自体も少なくて済む、あるいは維持管理の経費も少なくて済む、また、ひいては低炭素化につながるような都市構造ということで、現在の国土交通省の新成長戦略にもこういう言葉で掲げられているところです。
 このコンパクトシティを進めるには3つの観点があるだろうと思います。1つは「都市機能の集約」ということで、まちなか居住を誘導するとか公共交通の利便性を向上するというようなことがございます。その他に「都市の郊外部への拡散の防止」ということで、抑えるところを抑えるという部分。それから「非効率地域からの撤退」ということで、既に非常に非効率に拡散してしまった開発を整理していく、こういう問題もあると思います。

 それについて、スライド2ページ一番上の「都市機能の集約」というところは、ここは既にいろいろな形で取り組まれていることもありますので研究の対象とはしておりません。その下の「郊外部への拡散の防止」とか、あるいは「非効率地域からの縮退」というところが現状では不十分なので、ここを狙って研究の対象としたいということでございます。

・ では、何が不十分なのかということでございますが、それをスライド3ページより示してございます、政策としては「都市のコンパクト化」ということを推進しておりますが、現実には、「都市の拡散」が継続してございます。その例として1つ出したのは和歌山市なのですが、和歌山市は県庁所在地でありながら既に人口減少が始まっているという珍しい例ですが、多くの都市が今後このようになっていくだろうと思います。棒グラフが人口なのですが、減少してございます。そして棒グラフの中の水色が人口集中地区、DIDでございますが、このDIDの人口も減少してございます。ところが、折れ線グラフはDIDの面積ですが、いまだに微増しています。そして46人/ヘクタールというようなDIDの要件ぎりぎりの人口密度にまで減ってきていまして、この人口の低密度拡散、特に郊外部への人口の拡散が問題だということでございます。

・ それはどのような状況なのかということを見てみますと、スライド4ページに和歌山市の都市計画図を示しました。この色のついているところが市街化区域であります。色のない白いところが市街化調整区域です。丸をつけたところが、市街化区域と市街化調整区域の境界のところに当たりますので、ここの写真を見てみます。

・ それがスライド5ページですが、市街化区域と市街化調整区域のちょうど境界のところを黄色に示しているのですが、左側の市街化区域の中もかなり空き地といいますか、農地も含めた空閑地が多く、逆に市街化調整区域の中でも小規模な住宅開発のようなものがばらばらと行われているということがございます。これはあえてかなりひどいところを出していますので、こういうところばかりだというわけではないのですが、多かれ少なかれこういう現象が各地方都市でいまだに見えるわけであります。

・ では、なぜ都市の拡散が続くのかということを考えてみたのがスライド6ページですが、これは都市計画ばかりが原因ではありませんで、モータリゼーションの進展、すなわち道路整備が進み自動車に乗る人が増えることによって、都市の諸機能の立地条件が平準化しているということが1つございます。また、新開発というのは再開発よりも安くできる。これは撤退したりいろいろ整地したりする費用が要らないからですが、それによって市街地の中に空き地をつくりながら都市の拡散が進行するという現象がおこります。しかしそれだけではなくて、的確な開発規制ができていないということがございます。2001年から地方分権ということもありまして、条例での規制緩和が、特に市街化調整区域の開発規制の緩和が可能になってから、市街化調整区域の開発許可件数が増加しているところ、この新しい制度で増加したところが棒グラフの赤や茶色のところでございます。こういうことで的確な都市開発規制を行うことが必要だということでございます。

・ スライドページのグラフはCO排出量との関係で、「都市の拡散をとめないとCO排出量が下がらない」ということを参考までに出したわけですが、横軸が人口密度、縦軸が1人当たりCO排出量で運輸旅客部門です。当たり前でありますが、人口が疎なところの方が1人当たりの排出量が大きいということがグラフになっているということでございます。

・ スライド8ページは「研究開発の必要性」ですが、時間もございませんので、今のようなことを受けまして一番下の赤いところ、土地利用を適正化する行政判断に明快な根拠を付与できるような汎用的な技術手法というものの開発が急務ではないかと思い至ったわけでございます。

・ スライド9ページは「研究の構成」でありますが、1、2と書いてありますが、大きくは1がメインストリームです。「土地の利用・保全の適性や優先度の評価手法」を開発したいということでございます。土地の都市的利用と保全の優先度ということを明快に評価していくような手法を構築したい。それと同時に、2は、近年の重要課題に対応した土地適性評価手法ということで、特出しで3つの話題。「都市基盤の非効率地区の抽出手法」。これは撤退をしていかなければならないようなところがどこなのかということです。それから「市街地内の緑の機能評価手法」ということで、緑を土地利用の面からどう評価したら良いか。あるいは「水害に強い都市づくり」に向けた都市の保全優先度評価手法ということで、ダムに頼らない治水というとちょっと言葉が言い過ぎかもしれませんが、そういうような方向というものを都市で受けるときにどんなふうに考えていったら良いかということ。これら3項目を特出しでやってみたいということでございます。

・ スライド10ページは、「評価手法のイメージ」ということで、ここが研究の中身そのものなのですが、これを一つ一つ説明する時間がないので、右側にポイントだけ書きました。要はインプットとアウトプットがあるのですが、アウトプットは行政判断の一歩手前のところまで、都市計画とか開発許可とかいうことはそれぞれの権限を持った者がやるものですから、その一歩前までのところを研究でやりたいと思っています。インプットのところは、都市計画基礎調査等、既に保有しているデータと書きましたが、要はこの研究はデータをつくることに時間を費やしたり、労力を費やすものではなくて、既にデータはかなりあるという現状があります。そこで、データを加工して土地ごとの利用適性を客観的に評価する、こういう技術を開発していくことに労力を使いたいと思っております。

・ それを説明したのがスライド11ページの絵なのですが、「研究により何が変わるか」と書いてありますが、左側が「現状」ということで、地図を非常に細かく塗り分けた絵がございます。これは現在既に自治体が法律に基づいて行っている都市計画基礎調査の中身でございます。各自治体は今でもこれだけのデータを持っているのですが、現状の使い方は下の円グラフが象徴しているように、集計して全体を見てみるということがせいぜいでありまして、その他には、具体的に都市計画の色塗りを変えたりするときに既存不適格建築物となるものがあるかどうかというチェックぐらいにしか使っていません。それを右側に示す「もくろみ」としましては、このデータを分析加工していくことによって、即地的な判断や評価に利用できる技術をつくっていきたいと考えてございます。

・ 時間がなくなってきましたので簡単にまとめますが、ヒントとなったのは韓国の都市計画法の抜本改正というときに用いられた「土地適性評価」の手法でございます。韓国は都市計画法と国土利用計画法の統合ということをしたのですが、それを支えたのが土地適性評価という手法でした。これは韓国の国の研究機関である国土研究院というところが開発し、それを本省が指針にして出したということでございました。これが1つのヒントになったということでございます。

・ スライド13ページは先ほど申し上げたような3つの研究事項でありますが、詳細なので割愛します。

・ スライド14ページは「効率性、成果の即効性」ということで、データ類を開発することではなくて、それは既に持っているものを使用するということでございます。
 今まで御説明したことで内容は尽きております。成果は結局私どもの方でガイドラインのレベルとして取りまとめて、これを本省からの都市計画運用指針に反映していくということでございます。以上でございます。

【主 査】  ありがとうございます。それでは先生方、御意見、御質問をお願いします。

【委 員】  なぜ都市の拡散が続くのかということで、具体的なデータとか写真をお見せいただきました。確かにモータリゼーションなどもありますが、基本的にはやはり地価の問題ではないかと思うのです。土地の値段が安いから、どんどん外に行くのではないか。そうすると、この研究結果が行政のいろいろな規制の運用に結びつくとしても、市街化調整区域のような枠組みを温存していては、やはり解決しないのではないか。市街化禁止区域だったら良いと思うのですが、現在のようなあいまいな制度の中でこの研究成果の実効をあげようとしても難しいのではないか。ですから、はっきりコンパクトシティというか、都市のコンパクト化を推進するというのであれば、市街化禁止区域に向けた研究という方がよろしいかと思います。以上、参考意見です。何かコメントがあればお願いします。

【国総研】  ありがとうございます。私ども研究機関なので、制度をどうするかというところまでは、ここまで出かかっても申し上げにくいところがあるのですが、いずれにしてもきめ細かく対応していかないと解決の出口はないと思うのです。ご指摘の市街化を禁止するところや、規制を強化していくことも含めて考えていく。そういう意味でこの研究を役立てていきたいと思っています。

【主 査】  今の御指摘、表現はともかくも、ごもっともだと私も感じます。他には。

【委 員】  非常に重要な研究テーマだと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。今回の研究は比較的客観性を重んじるという形で、物理的な特性などの側面で土地の利用度等を分類するということで、それはそれで重要だと思うのですが、もう一方で先ほどの御指摘のように、社会経済的な要因や、農地などが持っている主体の条件によって相当違ってくると思いますので、今回の研究はそこまで広げる必要はないと思います。ぜひこの研究成果をステップにして、次の社会経済的な要因とどういう関係を持つかということも少し考えながら研究を進めていただければなと思います。

【国総研】  ありがとうございます。せっかくのご指摘なので、そこまで踏み込んでやれるように実施の時によく検討してみたいと思います。

【委 員】  大変意義がある研究だと、特に即地的な評価とか判断を可能にする、見える化について検討するというところが重要だと思いますが、最初の方のコンパクトシティをめぐるいろんな議論というのがやや垢にまみれたというか、結局どういう観点で検討をするかというところが重要だと思うのです。そのためには、もう少し地域の個別性に配慮して、先ほどの、なぜ都市の拡散が続くのかというところにも関連しますが、個別の事例についてもっと踏み込んだ詳細なケーススタディの上で、この作業をやっていただくということが私は重要かなと思います。そのあたりも、研究方法上御検討いただけたらと思います。

【国総研】  全くそのとおりだと思っています。いろいろな地域があるので、手法自体の流れは共通であっても、それを公共団体なりに示したときにうまくワークするのかが大事なので、いろんな地域のケーススタディをやるというところに、結構それなりに予算も必要だと思っておりまして、その方向でやりたいと思ってございます。

【委 員】  効率的に土地を使うということと緑豊かに快適に住まうというのは、少し矛盾するところでもありますよね。人々の好みもありますし、若いときは郊外で暮らしますが、年をとったら都心というような選択肢があっても良いかもしれない。そうすると、こういうコンパクト化ということで、先ほどの話のような規制をどんどん入れていくことになると、それがまた悪さをする可能性もあるのかなと思いました。おそらくこの研究は、その後の政策をどう打っていくかということとものすごく関係することなので、それを意識しながら進めてほしいと思うのです。大事なのは行政が面倒を見てある地域には公共施設をつくるよ、水害を防ぐよ、でも、それ以外の地域はもうやらない、交通が不便でもコミュニティバスなんか導入しない。それは土地が安くて自分で不便なところに住んだのだから勝手に自分でやりなさい、それが嫌だったら都心に行きなさいということだと思うのです。役所の方が政策として自ら何をやるかというところが大事です。

【主 査】  いやいや、大変大事なことです。ありがとうございます。

【国総研】  政策の方向を考えたり、今後の規制のあり方もよく考えながらやらなければならないと思っていますが、同時にこの研究自体はニュートラルというか、政策と非常に直結した研究ではありますが、やや語弊があるのかもしれませんが、研究自体は土地の評価をできるだけ客観的に多角的に示していって、それを行政判断につなげていきたいと考えています。今は土地を客観的に評価するものがないので、ご指摘の議論が、政策の実施においてある意味アバウトになったりするような面もあるのではないかと。そのために開発をとめるべきところがとめられなかったり、あるいは推進すべきところに力が入らなかったりというようなこともあるかもしれない。客観的に出せるようなものをつくりたいというつもりで、研究を組み立ててございます。

【主 査】  スライドの9番に「研究の構成」と出ていますよね。この@、A、Bというふうに。先ほどから説明を聞いていて、最初はコンパクトシティの話が出たから、そういう話かなと思ったら、別にそうではなくて客観的な土地の適性評価手法をつくろう、そういう話なのですね。

【国総研】  はい。研究に極めて近くなるとそういうふうになってきますが、政策としての現下の課題としてはコンパクトシティ。

【主 査】  さっきから多くの先生が、行政判断として都市をどう持っていくかという、そういうお話をされているのですが、あなたの回答は全部、これは適性に評価するデータをつくるのだという、そういう回答だと思うのですね。何か、そういう政策判断みたいなことは入れないことをやろうとしているのだと回答されているように思うのですが、そう理解してよろしいわけですか。

【国総研】  政策判断自体は政策を実施しようとする主体がやるわけですが、その判断をするときにどこまでどの程度何をしたら良いかということの判断に資するような客観データを用意することで政策を支援したいと思っています。

【主 査】  もう一つ、Bに関連で、水害とあるでしょう。何か唐突な感じがするのですが、それは今の一連の話とこの水害とが結びつくのですか。

【国総研】  災害については現在もハザードマップなどがあると思うのですが、都市全体としてエリアでもって災害をできるだけ少なくしていこうと考えてたときに、開発を抑制していく判断をしていくべき区域があるかもしれないということです。これはアウトプットが○か×かを一律に決めるよりは、どちらかというとグラデュエーションをつけていきたいと思っています。そういう意味で、今までの水害との関係よりも一歩踏み込んだ内容を考えたいと思って、こういうことを入れました。

【主 査】  今の話も、あなたの前半は災害全般の話で、突然水害に限定するのですが、なぜその災害全般から水害に突然限定されるわけなのですか。

【国総研】  災害全般に関しては、一般的に災害の多いところはなるべく開発を抑制しようという大きな方向がこれまでもあるのですが、ここでは近年の重要課題ということで、特に他のいろいろな部局の動きと連携して、都市分野の方も受けて立てるような研究の体制を構築しておくということが必要ということで。水害が重要ではないかと思って、特出しをしたということでございます。

【主 査】  ありがとうございました。先生方、いかがでございましょうか。
 それでは、評価シートに御記入をお願いします。

(事前評価シート回収)

【主 査】  「一部修正して実施すべき」が1名、あとは全部「実施すべき」でございます。ということで、実施すべきということで進めたいと思います。先生方、よろしいですか。
 どうもありがとうございました。それでは、これで今日の3つの課題が一通り終わりました。研究にあたっては、先生からたくさんコメントがございますので、御記入のコメントあるいは口頭でのコメントを参考にしていただきたいと思います。

↑TOPへ戻る


【主 査】  この後、この評価書というのは作成するのですか。説明してください。

【事務局】  どうもありがとうございます。本日の意見を取りまとめて、評価結果として取りまとめたいと思います。評価結果につきましては、主査に取りまとめをお願いして、最終的な形にしたいと思います。本日の議事録等も踏まえて、作成するに当たっては主査と相談をしながら取りまとめたいと思ってございます。

【主 査】  そういうことなので、一部修正が1つございましたが、その辺を含めて、議事録も含めて、あとは私の方にお任せいただくということでよろしいですか。
 はい、どうもありがとうございました。それでは、ここで事務局にお返しします。

【事務局】  御議論ありがとうございます。一部修正が一つございましたので、それは先ほど申し上げましたとおり主査と詰めながら進めていきたいと思っております。
 なお、本日の議事録につきましては公表することになっておりますので、また確認をさせていただきたいと思っております。報告書につきましても、最終的に取りまとめた上で国総研のホームページにアップをしていくということになっておりますので、よろしくお願いいたします。

↑TOPへ戻る


【事務局】  それでは、所長より挨拶をお願いします。

【所 長】  本日も長時間、大変御熱心な御審議ありがとうございました。我々にとってもありがたい御指摘たくさんいただきました。御指摘、アドバイスにより内容をブラッシュアップいたしまして、今後の予算要求なり研究のスタートにつなげていきたいと思っておりますので、今後ともよろしくどうぞお願いいたします。ありがとうございました。

【事務局】  それでは、本日の評価委員会分科会をこれで終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

↑TOPへ戻る