平成22年度 第1回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会
議 事 録



1. 開会/国総研所長挨拶

2. 委員長挨拶

3. 議事

4. 今後の予定等について

5. 国総研所長挨拶/閉会


平成22年6月18日


1.開会/国総研所長挨拶

【事務局】  定刻になりましたので、ただいまから平成22年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会を開会させていただきます。それでは、国総研所長よりごあいさつを申し上げます。

【所長】   本日は、御多忙の中、また天候が非常に不安定な中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
昨年の委員会は、ちょうど今日と同じ日付だったと聞きました。それから1カ月後に所長になりましたので、本委員会としては初めてになります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
その後、いろいろ我々を取り巻く状況が変わりました。
我々としても、国の研究所、さらには国土交通省の機関として国土交通省をしっかりと支えているのだろうかといったことをもう一度考え直さなければいけない時期を過ごしました。
さらに、ご存じのとおり公共事業費がかなり削減されました。当然、我々の研究費もそれに沿って、あるいはそれ以上に削減されたところもございます。
また、来年度の国家公務員の採用がかなり少なくなってしまい、前回も人事ではなかなか苦しいんだというお話をしたかと思いますが、さらに厳しい状況が来てしまうといったこともございます。

こういった状況なのですが、いろいろ新しい政策を打ち出していかなければならないということで、本省の我々に対する期待といいますか、これもやってほしい、これも国総研で対応してくれないかという仕事が実はかなり増えております。
そういったことで去年は悩みも多かったのですが、この辺でこういったマイナスを逆手にとって何かプラスにできないだろうかということをいろいろ考えまして、3月に同じメンバーで懇談会を開かせていただきました。
そのときには、大分荒削りでしたが、こんなことを考えていますという話を聞いていただいて、アドバイスもいただきました。
それからまだ3カ月しかたっておりませんので、それほど纏まったとは言えないかもしれませんが、そのあたりを本日改めて聞いていただければと思います。
この後、まず前段で昨年度1年間の我々の活動状況を数字等にしてお示しいたします。
その後、今年度からこういう考え方でこういう取り組み方をしてみたいというお話を申し上げますので、率直なアドバイスをいただければ非常にありがたいと思います。
長時間になりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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2.委員長挨拶

【事務局】   委員長よりご挨拶をいただきたいと思います。委員長、よろしくお願いいたします。

【委員長】  今、所長さんがおっしゃったように、2つの宿題がございます。昨年どのような成果が上がったかということを全般的にまとめていただきまして、それについての御意見、御評価をお願いしたい と思います。
次は、今後の研究について、どこに重点を置き、どのような方向性で行いたいかという御説明をいただきますので、さまざまなコメント、御意見をいただきたいと思います。
本日は、この2つが課題でございます。皆様、よろしくお願い申し上げます。

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3.議事


 ・平成21年度の国総研における研究活動について
 ・今後の研究の進め方について

【委員長】  それでは、早速ですが議事に入らせていただきます。
議事次第にありますように、まずは「平成21年度の国総研における研究活動について」という昨年の研究の内容、それから「今後の研究の進め方について」、これを続け て説明いただき、議論をいただきたいと思います。
一旦前半部分の説明をいただいたところで短い質問等をいただきますが、基本的には2つをまとめて御議論いただくという形にしたいと思います。

 それでは、事務局から御説明をお願いいたします。

【事務局】  それでは、まず議事の1番目につきまして、前のスクリーンにも映しますが、数字なども出てきまして見づらいかもしれません。お手元にも説明資料をお配りしておりますので、そちらの方もご 覧いただければと思います。
右肩に「説明資料1」とあるA4横長の資料で御説明させていただきたいと思います。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

 ・ 表紙をめくっていただきまして1ページ目でございます。
上段には国総研の役割を示しております。国交省の政策の企画・立案や地方整備局の事業の執行を支えるために、3つの類型、すなわち、政策の企画・立案に資する研究、法令等に基づく「技術基準の策定」に関する研究、事業の執行管理に必要となる「技術支援」、これらに関する研究活動を行っているところでございます。

下の段が、発足以来の定員の推移でございます。全体としては減少傾向にありますが、研究職の人員については維持に努めているところでございます。

 ・ 2ページ目は予算の推移でございます。
上段の棒グラフが人件費や施設費も含めた研究所全体の予算、下段の棒グラフと円グラフが、そのうち研究経費のみでございます。

下段の方をご覧いただきたいと思います。棒グラフに示しますように、研究経費につきましては発足以来100〜140億の範囲で推移しておりますが、近年は平成17年度をピークに減少を続けておりまして、平成21年度は約103億という状況になっております。
また、右の円グラフが研究経費の内訳で、黄緑と緑で示しました行政部費、すなわち自主的な研究経費が全体の約8%、紫の道路整備勘定からピンクの空港整備勘定までの社会資本整備特別会計から支弁されている研究経費が全体の8割以上を占める状況になっております。

 ・ 3ページ目は平成21年度に得られました研究成果のうちの主なものを、先ほどの国総研の3つの役割ごとに整理したものでございます。
本日は、時間の関係もございますので、これらのうち赤書きで示しております5つの研究につきましては、後ほど概要を説明させていただきます。その他につきましては、別途お手元にありますパンフレットの中に記載してございますので、御関心があれば見ていただければと思います。

 ・ 4ページ目は研究成果の施策への反映状況でございます。
平成21年度において研究成果が施策に反映された件数は60件でございまして、例年より若干多めになっております。
また、左下の円グラフはこの60件を国総研の3つの役割別に整理したもので、2番の技術基準の策定に関するものが若干多くなっておりますが、それぞれ同程度反映されている結果になっております。
右下の円グラフは施策反映の対象別に分けたものですが、ガイドライン、マニュアル等が最も多くて29件、法令に基づく技術基準が9件となっております。この60件のそれぞれの具体的内容については、資料3の6ページ以降に記載してございます。

 ・ 5ページには研究成果の発信状況を示しております。
右上の棒グラフが学会誌、専門誌に投稿した件数でして、平成21年度は査読付きが120件、査読無しが504件、合計624件となっております。昨年度と比べまして、査読つきは若干減っておりますが、合計は3割以上増加しております。黄緑色が各年度の研究課題の数で、研究課題数以上の論文発表となっております。なお、参考までに、研究員1人当たりにしますと2件以上の投稿ということになっております。
左下のグラフが英文での発表件数の推移ですが、近年は、査読付き、査読無しを合わせて100件程度で推移しているところでございます。
右下が発表した論文に対する引用率をCiNiiベースで各研究機関別に比較したものでございますが、国総研は約43%と、他の機関と比べても高めの引用率になっていると考えております。

 ・ 6ページがマスコミへの研究成果の発信状況でございます。
左側の棒グラフが新聞記事件数で、平成21年度は142件と、近年では最も多く取り上げられております。
右側の棒グラフは記者発表した件数とそのうち記事になった件数でございまして、平成21年度は28件の発表のうち15件ということで、これも近年では高めになっております。
この両方のグラフを比べますと、左の記事件数が右の記者発表数を大幅に上回っておりますが、これは次に説明しますホームページでの情報発信の充実も貢献しているのではと考えております。
テレビ放映につきましては、ヒートアイランド対策に関する研究が複数の番組で取り上げられております。

 ・ 7ページはインターネットによる情報発信でございます。
右上のグラフが国総研の日本語版トップページへのアクセス件数の推移で、平成21年度は41万7,000件と、前年度より1,500件増加しております。ちなみに、英語版トップページも1,000件ほど増えて、9,400件となっておりました。
なお、今年の4月にトップページのリニューアルを行いまして、研究者向けと一般向けに分けていた入り口を廃止した他、新たに特許・知財に関する情報、研究成果の概要を掲載するなど、よりわかりやすく効率的な情報発信に努めているところでございます。
左下のグラフはトップページの新着情報の件数で、積極的な掲載に努めた結果、平成21年度は85件と、前年度の2倍以上に増えております。
右下のグラフはメールサービス登録者数の推移で、毎月1回、国総研の最新の話題や刊行物の紹介をしておりますが、平成21年度末現在で2,641名が登録されております。
その他、資料には載せておりませんが、講演会、出前講座、一般公開等を行い研究成果の発信に努めるとともに、平成21年度は研究所として広報計画をつくり、対象を意識して計画的な広報活動を行ったところでございます。

 ・ 8ページからが、平成21年度の研究成果の中から5つの事例の概要を説明するものでございます。
まず下水道管渠のストックマネジメントに関する研究です。
下水道管渠は、施設の老朽化や人口減少による料金収入減などを背景にしまして、改築投資計画の策定に必要なツールの提供や調査・改築の優先順位決定手法の開発が現場から望まれております。
平成21年度の研究成果としましては、まずリスク評価による優先度決定手法を提案しております。
左の図でございますが、15政令市へのアンケート調査によりまして、不具合の可能性と影響について、評価項目と重みづけを整理しまして、それを用いて、春日部市において、不具合リスク評価を実施しました。左の図がその結果で、凡例のようにブロックごとの優先順位づけを行いました。
今後はさらにケーススタディによるデータを蓄積しまして、より汎用性のある手法にしていきたいと考えております。

2つ目が、 健全度を踏まえた改築事業量の検討でございます。全国12都市、約17万スパンの管渠内の調査データから、健全率予測式を作成し、それを用いて将来改築延長を予測しました。その結果、50年単純改築予測の上のグラフに比べ、毎年の改築延長は平坦になる傾向が確認されまして、劣化状況に即した改築の意義を裏づけることができました。

 ・ 9ページは東シナ海における漂着ゴミ予報の開発でございます。
近年、漂流・漂着するゴミによる海岸機能の低下、環境の悪化が深刻化しつつあります。
ゴミは漂着前に海上で回収することが最も効果的ですが、これまで発生源や漂流経路はほとんど解明されていない状況でした。このため、愛媛大学、東京大学、産総研と共同研究プロジェクトを立ち上げ、数値モデルによる発生源・発生量の推定、短波海洋レーダーによるゴミ集積域特定技術の開発を行いました。

国総研では、このうち短波海洋レーダーによる表層海流観測を担当しまして、リアルタイムの漂流物の集積判定手法を開発したところです。
これらの研究の結果、ゴミ発生場所、時期、量の推定が可能となり、例えば五島列島に漂着するゴミについては、台湾沿岸、長江河口以南の中国沿岸域で夏季に多く発生していることも判明しました。また、流れが変動する海洋上でのゴミ集積域の特定方法も開発いたしました。これらの成果によりまして、効果を定量的に予想しつつ効率的な清掃事業を立案することが可能となります。
今後は、本研究で提案した手法を用いて、各地方整備局が運用している漂流ゴミ回収支援システムの高度化を図っていく予定でございます。

 ・ 10ページは自転車走行空間の設計のポイントでございます。
自転車交通につきましては、自転車対歩行者の事故がここ10年で3.7倍に増加している中で、自動車や歩行者から分離された走行空間は全道路延長の約0.2%にとどまっております。
また、近年は地球環境問題や健康面から自転車利用が世界的に注目されております。
このような中で、全国98地区がモデル地区に指定され、自転車走行空間の整備が進められようとしておりますが、これまで我が国には確立された設計手法がなかったため、本研究に取り組んだものでございます。

自転車走行空間につきましては日本では事例が少ないために、海外の先進事例も含めて調査し、関係機関と調整を進め、研究成果を「自転車走行空間の設計のポイント」として、国土交通省・警察庁連名で全国98のモデル地区に発出したところでございます。
これは自転車走行空間の具体的な取り扱いについて国交省と警察庁が共通見解を示したもので、現場での協議・調整の円滑化が図られ、モデル地区での自転車道整備に大きく貢献しているところでございます。

今後は社会実験中の成果をもとにリバイスしていく予定でございます。

 ・ 続きまして、エレベーター等の制御システムに関する研究でございます。
エレベーターは、現在国内に約70万台設置されておりまして、1日に約6億人が利用しております。
こうした中、平成18年に東京都港区で発生した挟まれ死亡事故や大阪府吹田市で発生したジェットコースターの事故を踏まえまして、設備の安全性を確認するために、制御システムについて総合的に調査研究を行ったものでございます。
平成19〜21年度に調査・実験を行いまして、安全目標の設定、設計指標、維持保全技術、評価検証技術などについて検討いたしました。
行政的、社会的なニーズが非常に高いことから、中間成果についても逐次施策に反映しておりまして、特にドアが開いたまま走行することによる挟まれ事故の防止のために必要な保護装置の設置やブレーキの二重化につきましては、平成21年9月の建築基準法施行令改正に反映されたほか、JISの原案にも反映されております。
今後は、情報提供の取り組みとして、研究成果を建物事故予防ナレッジベースにより情報公開することを予定しております。

 ・ 最後の例が、舗装温度解析プログラムの開発による空港舗装の交通開放に関する研究でございます。
一般に、夜間施工で行われます空港舗装につきましては、舗装温度が高いうちに航空機が走行しますと轍掘れが発生しますので、供用開始までに50℃以下に下げるよう基準で規定されております。しかしながら、大規模空港では、近年、深夜便の増加に伴いまして、十分な施工時間を確保することが困難になってきております。一方で、舗装の温度管理は現場の経験に頼った状況であったために、現場からは精度の高い舗装温度予測手法の開発が強く望まれておりました。
この研究では、空港アスファルト舗装の施工中・施工後のアスファルト混合物温度の変化を、右のグラフに示しますように、複層施工においても精度よく推定するプログラムを作成いたしました。
この結果、空港アスファルト舗装工事におきまして、現地の気象条件や材料、施工時間を考慮した最適な施工計画の立案が可能となり、今後予定されております羽田空港の大規模な舗装の改築などに貢献するものと考えております。
資料1につきましては以上でございます。

【委員長】  ありがとうございました。

 先ほど申し上げましたように、議論の時間はまとめて取りますが、御確認、短い御質問等がございましたら、どうぞ。よろしゅうございますか。

 それでは、引き続き資料2についての御説明をいただきます。今度は「今後の研究の進め方」です。

【事務局】  「今後の研究の進め方」について御説明させていただきます。

 ・ まず、最近の国総研を取り巻く情勢です。これは先ほど所長がごあいさつの中でも申し上げましたように、3月に懇談会を開かせていただいた時から3カ月の間にさまざまな動きがございました。これをもう一度ご説明させていただきます。
次に、それらの動きを踏まえて、研究をマネジメントしていくポイント、さらに、それらのポイントを踏まえて研究を進めていく具体的テーマを幾つか例示いたします。

 ・ 最初の図に示しているように予算が大幅に削減されました。先ほど所長の挨拶にありましたように、国総研の予算は2種類から成っています。緑色の部分が、道路の予算、河川の予算、港湾の予算等々で、こういう研究をしてもらいたいという目的を明示して国交本省から国総研に移される予算です。
それに対して、この赤い部分は、国総研が自からこういった研究をしたいと財務省に要求している予算です。
3月に御説明させていただいた時点で、赤い部分は今年度の予算額がわかっていましたので、この部分を行政部費と呼んでいますが、22年度は21年度に比べて約7%減と御説明させていただきました。
その後、4月1日に道路とか河川の予算が全部決まりまして、それを踏まえて、道路局、河川局から、こういったことを国総研で検討してもらいたいと予算が来たわけですが、その額が大きく減っていました。
29%、約3割の減です。国総研の予算全体で見ますと、赤い部分はそう減らなかったのですが、本省から移される予算は大きく減っています。
これが今年度の予算の状況です。

 ・ 次に人の話でございます。5月21日に「定年まで勤務できる環境の整備に向けた公務員制度改革を推進」する旨の閣議決定が行われました。従来は50代前半でやめていく人が多かったのですが、公務員の定年は今のところ60歳であり、60歳まで勤務できる環境の整備に向けた公務員制度改革を推進する。
このことを逆に言うと、50代半ばではなかなか辞めにくい状況になります。

一方、来年度の新規採用は21年度の6割程度にとどめる、国交省の具体的に数字は62%ですが、新規採用者数については非常に厳しい状況になっております。
このような人事の方針が、今後どのように推移していくのか、長期的な動向は分かりませんが、少なくとも、若手の研究職員を確保していくことは、これからますます厳しくなるだろうと予想されます。これまで、この会議では若手の研究員を育てていかなければいけない。
人材の育成をどう考えていったらいいのか、という課題を御相談させていただきましたが、これからは若手の研究職員の確保そのものが、ますます厳しくなるだろうということが、新たな方向として見えてまいりました。

 ・ もう1つは事業仕分けです。昨年度の事業仕分けは事業を対象に行われましたが、今年度は独立行政法人及び財団法人等を対象に行われました。
その中で、独立行政法人建築研究所が事業仕分けの対象になりました。事業仕分けが行われる直前に、こういったことを論点に事業仕分けを行いますということでペーパーが配られました。

 ・ そのペーパーがこれです。議論のテーマとして、「国、独立行政法人の間でどのように研究や実験を分担するのが最も適当か」、つまり、国土交通省の機関である国総研も建築に関する研究を行っているのだから、建築研究所との役割分担を明確にすることが必要ということです。
実際の事業仕分けでは、必ずしもこのテーマを中心に議論が進んだわけではありませんが、独立行政法人と国総研、財団法人と国総研、国交省と国総研、これら組織間の役割分担のあり方については、厳しくチェックされているという認識を、我々は常に持たなければいけないと思っています。

 ・ なお、これは前回の懇談会でお示しした図で、国総研はあくまで国土交通省の内部の機関であり、行政部門、実施部門をサポートするのが役割である。
一方、独立行政法人は現場実務のニーズに対応した基礎的な調査研究を行うと御説明させていただきました。

 ・ 次に、国総研が各種のデータに関与する機会の増大です。プローブデータなど大きな情報量を持つデータが登場してきているということや、財団法人等の外郭団体が担ってきたデータ管理業務がオーバーフローしていることなどから、データの維持・管理に関する国総研への要請が大きくなってきています。
これに対して、こういった動きをむしろ負担ではなくチャンスと考えて、データをもとにした管理・分析を新たな研究ジャンルに位置づけていくべきと思っております。

 ・ こういったいくつかの状況を踏まえ、では、我々は何をやっていこうかということを次にご説明します。1つ目は、課題の発掘に向けた研究者の意識の転換です。
国交本省から流れてくる予算が大きく減ってきているのですが、我々としては、外注に頼っていた部分、コンサルの人たちにお願いしていた部分のうち、大事な部分はできるだけ内部化することで、我々自身の基礎的なスキルをアップしていく、むしろ、そういう契機にしていくべきと思っています。

また、我々はデータの取り込みを図っていますので、そのデータを見て、データをもとに、今、何が起こっているのか、我々自身が自分の頭で考えて課題を見出すということも大事です。
具体的には、今年度、若手の研究者に対して、1年に1枚はオリジナルのグラフを工夫してつくるよう、指導していきたいと思っています。この取り組みは始めたばかりですので、まだ多くの事例が挙げるわけにはいきませんが、この後で、1つ2つ御紹介させていただければと思います。

 ・ 2つめは人事の話です。
これまで、どういう形で若手の研究者を育てていったらいいかという課題を、毎年のように御相談させてもらってきました。
もちろん、それは非常に大事なことなのですが、今後は、国総研が純粋培養で研究者を育てていくのではなく、行政の経験をした人たちが国総研の研究者としてやってくる。
そういった行政との間の人事のやりとりが、ますます増えてくるのではないかと思っています。
そういう中で、むしろ行政経験を主とした研究職員が増加することを前提に、国総研の研究のあり方を考えていくことも、これからの大きなテーマだろうと思っています。

行政を中心にやってきた方は、当然、豊富な行政経験を持っています。
それから、現場の道路や河川がどうなっているのかという実感も持っています。
データを扱う機会が増えていることと、豊富な行政経験を持っている人が増加することを併せると、これからは、与えられた問題を解決するだけでなく、より広い視点から何が問題なのか、問題そのものを提起していく、あるいは行政上の課題に直結する施策提言につなげていくという観点が、我々国総研の研究においてより重要になってくると思っています。

 ・ 我々は一体何を行う組織なのかを、常に意識しなければいけないということを、3つめのテーマとして挙げました。
つまり、国総研は国土交通省の内部組織としての認識に基づいて、これからも研究活動を進めていかなければいけない。ですから、本省の求める緊急の課題を解決する研究活動や本省の施策提案をサポートする資料づくりを、今、我々がやっているわけですが、こういった業務も国総研の重要な研究活動である、場合によっては、ある意味、国総研の中心的な研究活動であると評価し位置づけることが、これからの我々の認識の中では非常に大事ではないかと思っています。

 ・ これらの点を踏まえて、では今後どういう形で研究課題を考えていくかを次にご説明いたします。
1つのテーマに深く取り組み、蛸壺的に発想を深めていくというのも大事ではありますが、むしろこれからは、研究課題の周りにどんな状況が展開しているのか、周辺にはどんな関連研究があるのか、周辺の状況も含めた全般的なシステムとして考える。
それから、視点もさまざまな視点から考える。例えば道路をつくる、道路を管理するといった観点だけではなく、それを経済的な面から見たらどうなるのか、あるいは、道路をつくる側から見たらこのように見えるが、道路をつくることに反対している人から見たらどのように見えるのか、そういういろいろな視点から考える。
さらに時間軸、目先のことだけではなくて、長期的に見たらどうなのか、今、とりあえずやらなければいけないことは何なのか、そういった時間軸の観点を持つことが必要です。

こういった観点から課題をブラッシュアップし、何が問題の核心なのか、次の時代には何が大事な課題になるのかを見出し、問題を提起していく研究を打ち出していきたいというのが、今、我々の考えているところです。

 ・ この後、では具体的にどんなテーマを、今、我々は考えているのか、具体的な事例を示させていただきますが、ここで先生方にひとつお願いがございます。
従来、プロジェクト研究として、こういう課題を研究していきたいということを分科会の方で御評価させてもらっています。
この分科会は従来7月に行っていました。なぜかといいますと、財務省に対して次年度の予算を概算要求するのが8月なので、それまでに評価をいただきたいという事情で7月にバタバタと評価をいただいていたわけです。しかし、今年は、先ほど述べましたように課題をブラッシュアップしていく期間をいただきたいと思っております。ですから、概算要求課題、つまり予算要求を伴うものについては従来どおり7月に御評価をいただきたいのですが、それ以外に、我々がどんな研究テーマで取り組んでいくべきかという、プロジェクト研究等の評価については、11月前後に改めて分科会で御評価いただければと思っております。

従来はプロジェクト研究等の研究課題の審議・事後評価を7月の分科会で実施するタイトなスケジュールでやってきたのですが、それぞれの課題について、分野横断的、継続的に多様な視点からブレーンストーミングする場を設けて、何回か繰り返し議論していきたい。
議論の観点としては、先ほど申し上げたような、時間軸を入れたり、さまざまな視点を入れたり、周辺にどんな問題が起きているのか、システム的に考えたい。

また、ブラッシュアップする能力の向上、視野の拡大を促すために、外部の方の講演会をお聞きしたり、現場で何が起きているのか、現場との交流などもやっていきたい。
こういうことをやって11月前後にプロジェクト研究等の評価を頂く場を設け、改めて具体的な内容についても御相談に乗っていただければと思っています。

 ・ 今の段階ではまだ始まったばかりですが、プロジェクト研究としてどういうテーマを考えているのか、とりあえず7つテーマを挙げていますので、それらの概要と、今後どんな問題認識で研究に取り組む のか、具体的な内容について引き続き御説明させていただきたいと思います。

【事務局】  ここから先はまた小さな字が出てきますので、お手元の説明資料2の方もあわせてご覧いただければと思います。

 ・ まず最初に、気候変動適応研究本部の取り組みでございます。
地球温暖化によりまして水害リスクの増大が予想されますが、そこから生命・財産を守ることはまさに国土交通省が解決すべき課題でございます。
社会資本整備審議会におきましても、緩和策と適応策を組み合わせて水災害に適応した強靱な社会を目指すという答申がなされ、また、国際的にはIPCC第5次報告書に向けた貢献も必要となっております。

この問題につきまして、国総研では、研究分野がここにありますように非常に多岐にわたるため、昨年度、気候変動適応研究本部を設置し、本省と連携をとりながら取り組んでいるところでございます。
研究の達成目標は大きく2つで、1つ目が、各種の水災害のリスク評価手法を開発し、河川外での施策なども含めて適応策の最適化手法を提示すること、2つ目が、個別の流域ごとに実現可能性を踏まえた実践的な適応策を立案することとしております。
研究に当たりましては、社会情勢の変化なども踏まえ、従来施策の有効性と限界についても確認した上で、従来施設の整備拡大だけではなく、河川外での施策など、災害に強い社会構造への転換という視点からも研究を進めていきたいと考えております。

 ・ 2つ目が電気自動車の普及への対応でございますが、近年、地球温暖化対策を背景に電気自動車の開発・普及が加速しております。
トヨタ自動車もアメリカの電気自動車開発メーカー・テスラとの共同開発に乗り出し、また、技術面でカギとなっております充電施設につきましても、3分50%の急速充電が視野に入ってきております。
電気自動車は、道路インフラや低炭素なまちづくりなど、インフラ関連のさまざまな分野に影響を及ぼすことが予想されます。今後、幅広い分野にまたがる検討が必要になってくると考えております。

このような中で、国総研としましても、喫緊の課題について今年度より着手しております。電気自動車の普及に当たっての大きな問題として、利用者にとって充電施設がどこにあるのか分かりづらいという問題がございます。この問題を解決するため、国総研としては、本省と連携を図りながら、そのカギとなる統一的なデータ仕様を策定するとともに、位置情報を一元的に収集し確実に提供する仕組みを構築するために、民間との共同研究に着手したところでございます。
電気自動車は技術革新の目覚ましい分野でございますので、常に最新の動向を視野に入れながら検討を進めていきたいと考えております。

 ・ 次が、社会資本のライフサイクルを通した環境評価技術の開発でございます。
我が国のCO2排出量に占める建設分野の割合は、2000年のデータによりますと、直接排出量こそ右の円グラフのように1%にすぎませんが、資材の生産や輸送なども含めた最終需要で見ますと左の円グラフのように約18%もの割合を占めておりまして、この削減のため、平成20年度より総プロで本研究に取り組んでいるところでございます。
左は、ライフサイクルアセスメントの取り組みが、研究・施策の導入・技術開発・効果の発現へと進んでいくことを示しておりますが、本研究は、この中の赤枠、すなわち論理的・技術的な基盤づくりを中心としつつ、活用方策についても検討するものでございます。

 ・ 次のページでございますが、検討分野が多岐にわたることから、土木学会の環境評価研究小委員会に4つの委員会を設置して検討を進めております。
研究の内容は大きく4点で、環境負荷の評価範囲の統一などの理論の構築、環境負荷原単位のデータベースの整備、構造物の環境負荷量を算出しLCA事例を蓄積すること、そしてLCAの活用方策の検討でございます。
本LCA研究成果が、施策の導入、技術開発を通じて環境負荷削減に貢献するものと考えております。

 ・ 続きまして、プローブデータを活用した交通円滑化に関する研究でございます。これはデータの分析・発信にかかわる研究業務の強化の事例でございます。
本件は3月の懇談会でも御紹介いたしまして、まだ時間が余りたっておりませんので十分な成果はこれからですが、今日は分析例の一部を御紹介したいと思います。
道路交通のサービスレベルをよりユーザーの視点に立ってきめ細かく評価し、施策に反映したいという行政ニーズを受けまして、国総研では、プローブデータなどの効率的な取得方法、データの加工方法、実務への活用方法を検討しまして道路行政運営を支援するとともに、データの詳細分析によって道路ユーサーの実感にマッチするようなサービスレベルの基準検討や施策提言をしていきたいと考えております。

 ・ 次のページでございます。ここから分析例を2例ほど紹介いたします。
まず、北海道における月別の平均旅行速度を国道と道道で比較してみました。
左のグラフでは、12月から2月に著しい速度低下があり、それが国道よりも道道において著しいことがわかりました。
また、右の図は、速度低下の上位10区間を示したもので、これまでこの種のマップは渋滞マップだけでしたが、このような速度低下マップも作成できることになります。

このように、プローブデータの特徴であります通年観測により平常時と異なる交通状況の把握が可能になり、効率的な原因解明・解決を行うことができると考えております。

 ・ 2つ目が定時性評価への活用例でございます。
大阪・京都間に供用しました第2京阪道路によりまして、並行する区間の渋滞が解消されております。
右のグラフのグレーが供用前、赤が供用後でございます。
従来一般的に用いていた所要時間の短縮効果で見ますと8分でございますが、プローブデータの特色であります毎時の観測を生かして95%タイル値による定時性の向上を評価しますと、11分の短縮であることがわかります。

このようなプローブデータの活用につきましては、今後さらに詳細な検討を進めていきたいと考えております。

 ・ 続きまして、建物事故予防ナレッジベースの取り組みでございます。
高齢化の進展によりまして、今後、非住宅系の建物における事故死者数は最大で年間5,500人に達するものと推計しております。
社会的に大変重要な問題でございますが、従来の規制的手法のみで対応するには限界がございます。

そこで、国総研としては、研究機関の特性を生かしましてナレッジベースの開発に取り組み、事故情報の収集・分析の結果を昨年ホームページに公開したところでございます。
その反響は大きく、アクセスは公開9カ月で2万件を超える状況になっております。

今後は、このナレッジベースをさらに充実させますとともに、得られた幅広い情報を体系的に施策につなげていきたいと考えております。
具体的には、建築基準法の技術基準や業界規準へ反映すること、教育・啓発ツールとして活用すること、消費者庁との連携、シンポジウムの開催、このような広範な活動を展開していきたいと考えております。

 ・ 次がメガリスクに対応した空港整備・管理のあり方でございますが、ここでメガリスクとは、大規模火山噴火と巨大地震を想定しております。
火山噴火につきましては、今年4月のアイスランドの火山噴火によって社会経済に大きな影響があったということが記憶に新しいところです。
これまで国総研では、1つの空港がリスクにさらされた場合の代替輸送の確保につきましては成田空港と羽田空港において検討を進めております。
このようなメガリスクが発生し、同時に多数の空港が完全閉鎖するという事態に対応した代替輸送の検討はこれまで行われておりませんので、今後の重要な研究課題と考えております。
その際には、社会経済活動の継続や国際競争力を確保するために必要となるサービス水準の設定などにつき、多方面の専門家の意見を伺い、検討を進めていく必要があると考えております。

 ・ 最後の事例ですが、これは国総研の外交的な活動ということで、研究ではなく取り組みと御理解いただきたいと思います。
社会資本整備に関する外交的活動としましては、従来は、欧米からの知識の吸収、アジアでの援助工事の単発受注というのが典型でしたが、国内建設市場が先細る中で、アジア市場を視野に入れて考え方を変える必要に迫られております。
また、我が国には長大橋やトンネルをはじめ、すぐれた技術が多数ございますが、これらを各国に適用するためには、適応性の課題をクリアしていくことが不可欠でございます。
このようなことから、国総研としましても、国際的な研究活動の目標や設定を再検討する必要があると考えております。

 ・ 次のページでございますが、国総研の対アジアへの取り組みとしましては、従来、アジア研究所所長会議がございましたが、戦略的な取り組みとなっていないのが実態でございました。
そこで、今後は、重点国に対し2国間の研究連携を展開していこうと考えております。
具体的には、継続的な取り組みとするために、相手国のキーとなる組織と覚え書きを交換し、中堅・若手主体のワークショップを開催するなど、複数の連携ラインによる強いネットワークを形成していきたいと考えております。
また、技術の適応性を高めた共同研究の成果がスペックとして相手国の計画に書き込まれていけば、新たな市場参入にもつながっていくと考えております。このような新しい考え方で、既にインド、インドネシア、ベトナムの3カ国を対象に取り組みを始めているところでございます。

簡単ではございますが、説明は以上でございます。

【委員長】  ありがとうございました。
それでは、70分ほど時間がございます。御自由に御意見、御質問をいただきたいと思っております。
一応、前半は昨年度の成果についての御評価をいただき、後半は今年度はこういう方向で研究を進めていきたいという御提案についての評価となっておりますが、できるだけその2つの意見を、これは前半の意見ですが、これは後半の
と言っていただきますと、取りまとめは楽ではないかと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、どうぞ。何度ご質問、御意見をいただいても結構でございますので。

【委 員】  研究員と行政職員の変化のグラフを見せていただいて、厳しい中で研究員については維持されているということに関して、行政の方も大変でしょうけれども、非常に敬意を表したいと思います。
それと関連して予算のことが気になっていて、どのグラフからも明らかですが、本来的に国総研に配置される予算が比率としては少ないですよね。
それに関して、事業費から来る研究経費が大多数で、そこがいろいろなもののあおりを食って減っているという状況だと思うのです。
これは今言ってすぐ変えられる話ではないと思うのですが、事業費が減っているからこそ、ちゃんと調査も研究もして賢い選択をしないといけないのですが、世の中は逆で、事業費が減っている以上に調査研究費が減らされているという状況ですよね。
そういうところを切りかえていくために何をすべきかというのを、この評価委員も研究の重要性とか、そこでの国総研の果たすべき役割というのは相当程度浸透してきておりますので、お互いに考えて何か発信するようなことを、ぜひ委員長にもお考えいただければと思いました。
いろいろなところでそういう主張をすべきだろうと思いました。

それと、前半の方で、政策への反映ということで、ガイドラインとかマニュアルとか基準についてこれだけありましたよというデータをお見せいただいて、これが増えつつあるよということなのですが、後半の方で事務局から説明があったように、研究成果から得たいろいろな考え方とかアイデアをコンサルタントとして行政部局の方に実際にいろいろアドバイスされていますよね。そういうことを何か評価できる方法はないのですか。私が知っている範囲でも相当あります。そこが大事なので、そこをうまく表現する方法を考えられたら如何かなと思いました。
それが多分、人材育成の話とかインハウスコンサルタント化とか、いろいろなところへつながっていくような気がしました。

【所 長】  ありがとうございます。
一番苦心している辺りのお話だったかと思うのですが、今まではどちらかというと、非常に大きなお金はあるのですが、本省各部局からの要望・要求が非常に大きかった。
我々はどういう気持ちで働いているかというと、本省の仕事は研究ではなく仕事、こなさなければいけない仕事であると。
仕事は仕事、研究は研究で、ようやく1割2割の隙間の時間の中で研究者としての形を取り繕っているようなところが私からは見えたものですから、それでは幾ら何でも苦しかろうと思いまして、むしろ行政の要望への対応と研究とのベクトルをもうちょっと近くできないかなと。
だから、所内でよく、本省の下請だとか手伝いだとか言われても卑下するなと言っております。大事な仕事なのだから、本来業務なのだから。ただし、その代わりしっかりやれと。
本省が要求しているよりも、できれば一歩でも二歩でも、場合によっては本省が言っている以外のソリューションとかいろいろなことも考えて提案しろ、そうしたらその部分は重要な研究業務だから、所としてもちゃんと評価して、できるだけ見届けるようにすると私からは言っています。
そして、最後はそれを数字として評価すること、これは課題としてまだ残るかなと思っております。これはまた工夫していきたいと思います。

【委 員】  今の件に関連するのですが、今まで研究は研究、仕事は仕事という考え方があったとおっしゃったのは、研究と仕事は遊離していたということでしょうか。
もう1つは、予算的に、治水勘定とか道路勘定から来るお金と、研究所として要求しているお金、それから他省庁の競争的資金、そういう研究的資金とそれぞれの事業勘定予算にかかわるものとは、仕事上といいますか研究上といいますか、仕事も研究も非常に近いエリアのものだということを指向していった方がいいというのは我々も同意するのですが、お金の面でも区分があったのでしょうか。

【所 長】  研究と仕事、これは全員とは言えませんが、大雑把に言って、河川系の人間と道路系の人間と大分ニュアンスが違っております。
最近は少し似てきたようなところがあるのですが、いずれにしても、かなり期限を切られて何がしかの資料の形で本省に返さなければいけないという物理的にかなり大変な仕事を各研究者は持っていたはずです。
それを研究だと意識してやっていてくれれば研究になっているところもあったでしょうが、かなり重い負担と考えていたところが大きかったのではないでしょうか。
それを見て、何か研究の方にシフトできないかなというのが、今回いろいろ申し上げている提案でございます。

【委 員】  そうすると、お金の面でも一般的にそういう認識があったと。このお金は仕事だ、このお金は研究だというような。

【所 長】  お金についてはもう1つ説明を足さなければいけないのですが、事業に絡むところは、既に各部局がこの事業をやるということが決まっていて、現場で事業が行われている、これに対しては事業に絡めた調査費というのがあります。
建前上も事業に対してつく調査費ですから、好きなことをやってもいいかというと、やはりどこか限定されるところがございます。

それ以外に行政部費というのがありますが、1つは直轄の事業を持っていない分野、住宅とか、あるいは下水道の大半は地方自治体ですから、そういうところは同じような検討でもそこで何とかやりくりする必要があります。
それ以外に、今はどこの事業にも属さないのですが、先を見て今のうちにやっておきたいというのを財務省に説明して、予算をもらってきてと。これはある意味では本省からの仕事で押しつぶされそうな人間にはなかなかできないところで、それでも歯を食いしばってやっているところもありましたが、大体関係としてはそんな関係になっています。

ですから、 予算はそれぞれの色づけがある。
本省との関係でどうしてもこなさなければいけない、というのは余りいい言葉ではないのですが、業務の中で何とか一歩でも二歩でも進めようという研究もしております。
その割合が部署によって広がったり、つぶれてしまったりというのが今までの状況ではなかったかなと思っています。

【委 員】  分野によって大分違うと思うのですが、私は河川に非常に近いので話をしますと、河川だとフィールドからいろいろな研究材料が出てくるから、いろいろな事業で研究材料が集まってきて初めて研究も成り立つし、一方で現場の話では、それを一般化したり普遍的なものに仕上げていくということが研究の部分になっているので、事業関連から来ている研究費から研究的な成果がかなり上がっているし、それなしには研究成果が上がらないのではないかという分野もあるし、確かに今おっしゃった話を聞いていますと、分野によってかなりさまざまなのかなという気がします。
もう1つ は、河川はそれがうまくやれるところなのかもしれないのですが、やはり工夫しなければいけないのは、こういう行政に関わるところでは、行政の一つ一つの課題から普遍的な、あるいは一般的なものを見出すというような研究の仕組みをうまくつくっていくとうまくやれるのではないだろうかという気がします。
それから、 私は総合科学技術会議などでの議論で、社会基盤に関わる科学技術というのは国土交通省がやっていると思うのに、ほとんどの金が国土交通省ではないのですね。他のところの予算の方が圧倒的に大きいわけです。
それはなぜかというと、ほとんどのものが事業費から来るお金で、それをベースに研究成果を積み重ねてきた。それが本当の科学技術研究成果なのだということがうまく認められるような仕組みにしないと、今度は何でもかんでも科学技術予算になったら、それは文部省のお金に回してしまえばいいじゃないかとか、そっち側で仕切ったらいいじゃないかというようなことにもなるのですが、やはり事業費ベースでないとなかなか研究できないものを本当に科学技術予算で見えるようにできるのかというところが大きな課題ではないかなという気がします。

非常に複雑な話で、私もまとまらないまま話をしました。

【所 長】  総合科学技術会議の話になると我々は何となく疎外感を感じるのです。
何か手を挙げようとしても、国土交通省は事業費をたくさんお持ちなのでしょうという話がすぐ返ってくる。
そこに事業と関係ないような提案をすると、何か現実から遊離したようなことになってしまうので、我々もまだ全然うまく解決できない課題として持っているところです。

【委 員】  そこは突き破る1つの問題でしょうね。総合科学技術会議に対して、国交省がやっていることが科学技術なのだと。

【委 員】  今のお話の関連で思ったのですが、ちょうど今、第4期の科学技術基本計画の策定作業をやらせていただいている最中なのです。
そこで一番課題になっているのが、今のやりとりの中での重要な部分、科学技術をしっかり前進させるのはいいけれど、それを如何に活用して現実社会をきちんと変革していくべきかということだと思っています。
そういう課題自体は明確に出ているわけですので、今後の実際の制度設計とか予算配分とかいうときにぜひ強調していただくというところが重要なのではないかと思っております。
文言的にはその課題設定というのは今回かなり入れ込みましたし、特に新政権のグリーン・イノベーション、ライフ・イノベーションに関して明確に実現させるというところもかなり入れ込んでありますので、そういう意味では今までのやり方と大きな変革期に来ているのではないかと感じています。
よろしくお願いいたします。ぜひその辺は獲得していただいてという感じがいたします。

【所 長】  多分、いろいろな研究機関を並べると、我々のところは一番ニーズ側の研究機関だと思います。
ですから、ニーズがどこにあるのかをきちんと特定して示すというのが我々の一番大事な仕事で、それを何とか科学技術研究の中で認めてもらえるような表現の仕方でつくっていくというのがこれからの課題かなと。
先ほどの説明の中で問題提起という言い方をしましたが、まず最初に問題に気がつくというのがすごく大事な仕事ですし、その中で問題を特定する。
実は研究というのは問題を特定できたらかなりの部分終わっているのではないかと思うぐらい大事な仕事だと私は思っていますので、できればその辺に力を入れて、認めてもらうような努力はしていきたいと思います。

【委 員】  今出ていた議論の確認ですが、説明資料2の1ページで、毎年の予算が減ってきていますが、例えば平成21年度で見ると100億円ぐらい予算があったということですね。
250人の研究者の方で100億円だと、1人の方が4,000万ぐらい研究費を持っている。
1人の研究者が4,000万を本当に全部研究で使うとするとものすごく大変で、そういう意味では、いろいろな現場の問題を解決するために国総研が請け負って、それをさらに再委託するとか、そのマネジメントとか、たくさんあったのではないかと思うのです。
だから、まさに書いてあるとおり、30%減ったというのをすごくがっかりとらえる必要はなくて、本来の研究に戻るチャンスだと考えた方がいいのではないかと思いました。

ただ、その ときに問題なのは、先ほど先生がおっしゃったように、国総研の研究費として配分されているのは7億何がしで、それ以外は事業費の中の調査費として来ている。
研究をやるのだったら、科学技術振興費というのですか、研究費として出てくる予算をきちんと位置づける必要があるということだと思うのです。それをどうやってやるかという工夫がいるところだと思います。

2番目は、これも出ている話ですが、現場から来ている話の中から研究のニーズを見つけ、研究を進めていく材料やフィールドを得るというような形で考えるということだと思うのですが、もう1つは、頼まれている仕事の範囲を超えて、もうちょっと長期的あるいは広い立場から答えを返すというようなことをやるともっと視点が広がるのではないかと思います。
先ほどから出ているグリーン・イノベーションの話をちょっとだけさせてもらうと、説明資料2の12ページの今後の研究例で、それぞれ今までにない視野の広い研究に取り組まれるというのでいいと思います。
最初の適応の話では、グリーン・イノベーションの中では適応は適応だけに終わらなくて、社会システムのグリーン化という大きなテーマの中で、気候変動に強い社会をつくると同時に低炭素とも結びつけて、それから自然共生なんかとも結びつけて、気候変動への適応をとることが同時に将来の国民の生活の豊かさを保証するような方向にしようじゃないかということです。
国交省としては水災害のリスクに対応するというのがメインのテーマだというのはわかりますが、それだけにとどまっていたら、やはり堤防をつくらなければいけないといった話になる。そうではなくて、もっと地域のあり方自体を低炭素社会にふさわしい国土像へとつくっていき、その中に適応の話も含まれているというように、少し位置づけを大きくして出した方が、今のグリーン・イノベーションの話の中には位置づけやすいのではないかと思います。

次の13ページの電気自動車の普及の話も、次の車が電気自動車だからそれに合わせたインフラ整備というのはちょっと枠組みとしては小さくて、今は、それこそスマー トグリッドだとか、スマートエネルギーグリッドを提案していて、電気だけでなく、熱とかガスとか、そういうのも入れて、情報技術と結びつけて地域のインフラを変えるようなことをガス会社の人が言っているのです。これも、地域の姿自体、いわゆる国土像自体をどのように変えるかという形で問題提起すれば、国総研としての位置づけも非常に高くなります。
そういう研究はダイレクトに総合科学技術会議が進めようとしているグリーン・イノベーションの研究に結びつくので、最初から従来の枠組みを超えて問題提起できるような形で打ち出すのがいいと思います。

【委 員】  事業仕分けのことでお伺いしたいのですが、国民レベルですと、ちょっとニュースに載った部分で、ダブっているところが精査されているのだなというぐらいの情報だったのですが、今回のこの発表の中に国総研としての危機感と決心のようなものがどこかに出ているかと思っていたところ、やはりちょっとわからないのです。事業仕分けはもっと進むと思うのです。
また、国民レベルですと、こういった経済が逼迫してきたときに、研究とかそういう部分が今日明日にも必要でないものというような感覚でとらえられて減少していくというのでは、逆に将来に対する不安、リスクは大きくなる。でも、その部分が伝わってこないで終わった事業仕分けだったと思うのです。
ですから、こういった国総研の評価委員会のようなところにも、そういうものを踏まえた上での、自分たちは、このようなことがあったが、それに対して、決意表明ではないですが、研究が減るとかそういった部分に関しては、もう少し国総研からの意思をどんどん発表していくべきだとまず思いました。

それから、平成21年度の活動の5ページを見て、結局簡単にわかるのは、論文がどれだけ出たかとか、研究成果としてはそういう形になるのでしょうが、こういうことだけですとなかなか理解は得られないだろうと思うのです。
一般的に見ると、土木研究所とダブっていますし、建築研究所とダブっていますし、港湾とダブっている、国土地理院ももちろんそうなのですが、このダブっている部分と、次年度の「今後の研究の進め方」の方で、例えば空港がございましたね。リスクとして巨大な地震がというようなことへの。
20ページの、ポイントを踏まえた研究課題例、メガリスクでというところですが、重要なのは、もちろん研究なのですが、これから生き抜いていくために、現状をどうとらえているのでしょうか。
各地方空港がこれだけ非難を浴びているわけですよね。つくってしまって何なのだと。
そういうことに対して、例えばプライベートジェットの時代というのが来るかどうか。
ホンダの方なども、いろいろ触手を伸ばそうとしてもまだ先とかいう状況を言っていますが、国総研としてもっとやった方がいいのではないかという気がするのです。
そういうときに港湾空港技術研究所との兼ね合いはどうなのかということが見えないのです。
研究すべきものを外部に頼らず中から発想してどんどんやっていくということをおっしゃった割には、そうした場合に空港の方の研究所が、それはうちの範囲だからということになるのか、それを超えてでもやっていかないと将来がないのか、その辺のことも教えてほしいのです。

【所 長】  実は、独法の各研究所とはもともと一緒だったところが9年前にバサッと切られたところがありますので、完全にダブっていないかというと、それは一部グレーのところもあると思います。
我々も最近は随分離れてきたなと感じていまして、隙間があいているのではないかというのを逆に心配しているところもあります。

空港の話だと私は余りうまく答えられませんが、例えばいろいろな技術基準、私も昔は技術基準をいろいろいじっていましたが、あるものを整備していくときに、国としてどんなレベルのものをつくっていくか、その基準をどういう形でつくって、どう運用すると国内の業界もこのように動いていくし、良い方へ行くだろうというようなおことを考えるのは我々のところです。
同じ技術基準でも、では具体的に設計法はどうするのか、どんな材料をどう使ったらいいのか、その辺は独法の方という仕分けになっています。その辺が、分かれた当初は、この間まで隣にいた人間が向こうとこっちになっていますから、変わっていなかったのですが、さすがに10年近くたちますと大分変わってきております。
我々は余り心配していないのですが、やはり外から見ると一緒じゃないかと言われる、常にそこから言われるので、常にわかりやすい説明の仕方を考えておく必要があります。

むしろ一番いいのは、成果として、ここはこんな成果が出る、こういうものが出てくる研究所だというところまで行けば余り言われなくなるのではないかと思って、お聞きしておりました。

【国総研】  説明資料2の3ページ、4ページで、独立行政法人建築研究所と国の国総研との関係が独法仕分けのときに議論になったわけです。このときにはもちろん建築研究所が説明したわけですが、建築研究所で説明して皆さんに大いに理解をいただいたのはシックハウスのときでございます。
建築研究所というのはアカデミックな研究をずっとやっています。ですから、要素技術の研究は建築研究所がやっていて、シックハウスのときも、どこの研究所もやらなかったものですから、国に準ずる機関として建築研究所が、シックハウスの原因となる物質の特定とか測定方法とか、十数種類について研究したわけです。
それを建築基準法の基準に落とすときに、例えば大工さん、工務店さんもいますから、やさしく使えるような基準でないといけない。
それから、どういう種類の有害物質を基準にするかというのも、社会的な妥当性とか合理性を勘案して建築基準法の基準にしなければいけない。
そこで十数種類の中からホルムアルデヒドとクロルピリホスという2種類の物質に限って基準法に落としたのが私どもの研究所、社会的な規範をつくるときにどこに落とすのが妥当かという研究をしたのがまさに国の機関としての研究所だったわけです。

建築研究所は、まさに要素技術としてどんなものでもアカデミックに研究していく、それを社会的な規範に落とすときには私どもの研究所が妥当性を勘案して落とす、こういう仕分けの作業をさせていただいたわけです。

【所 長】  私自身は長年構造物の分野で仕事をしてきました。
実は、私の片方の頭では、これからは社会資本が古くなってどんどん老朽化するから早目に対策をしようと。そして結論は、長持ちさせるのが最良の方法だろうというのを考えていて、こっちの頭では、具体的に、どう壊れたらどう直そうか、どう証明しようかと、1つの頭でやっていたのです。
それを9年前に、ここを分けろと、右脳と左脳を分けられてしまったのです。だから、本当に今の形がいいのかなというのは、長くいる人間は、あるいは本気で考えていただいている議員の方々は薄々気がついているところがあるのです。
ただ、表面上はどうしても今の組織の形で、せっかくこの形になったのだからこの形を生かしてやるのだということで進まなければいけないので、基本的にはその方向で努力していきたいとは思っております。

ただ、難しいのは、先ほど予算の話もあったのですが、今年の科学技術振興調査費はどういう作戦で持っていくのがいいのかが全く見えないのです。
どういうヒアリングをされるのか、誰にヒアリングされるのか、予算を取りに行く側からは何も見えない状況なので、これから何カ月かの勝負になると思いますが、その辺はまた見極めていきたいと思っています。

【委員長】  今のお話で、4ページの場合も、この図からは国総研と独立行政法人との違いが全くわからないので、ここに書いてある内容をわかるようにしてください、というのが言い分なのです。
だから、極端なことを言えば、先ほども話に出ましたように、独立行政法人、要素技術と書いて、国総研、政策技術というようなことで並べて、キーワードで極端に書いてしまえばわかりやすくなるのではないかと思っているのです。先ほどから、極端にそう言ってもいいんじゃないかと感じたのですが。

【所 長】  この図は、ある局面であえて描いたのです。国総研というのは国そのものなのです。さらには国交省そのものなのです。
だから、それがいかにも独立行政法人と同じように考えられて、独立性みたいなことを言われると・・・。
我々は本省がよりよい仕事をするために技術面でサポートするというのが最大の任務ですから、その辺を説明しようと思って、国交省を1つの四角に入れた絵を描きました。
それが今の説明には一番良い図ではなかったので、申し訳なかったのですが。

【委員長】  それはそれでいいのです。ただ、やはり研究部門ですから、研究部門のところは形容詞がいるわけです。その研究というものの形容詞がいるわけです。
だから、国総研そのものの図で良いですが、ここにキーワードを並べていただきたい。
「要素技術」と「政策技術」でも何でも良いですが、そういうキーワードを並べていただくと多分わかりやすくなるのではないかということですよね。

【委 員】  そうですね。何でも平易にということではなくて、今、どのように税金が使われていくのかということはだんだんシビアになっていまして、私が心配するのは、必要な研究ができなくなってくるとか、そういうことでは困るので、これはこういうレベルでやるところで、ここはこうなるということを納得できるように出していくことが今後の予算獲得にも重要ですし、国民が納得をしていただけないという状況が起こっていますので、これは重要だと思ったのです。
それから、そのことをすることで逆に国総研の皆さんの意識改革が必要だと思いました。
つまり、当然頭の中では分かれている、だから皆さんの中では自分たちの存在感は当然なのでしょうけれども、意識改革していくべき時期だと思いましたので、あえて申し上げたのです。

【委員長】  左側にはちゃんと政策の立案と書いてあるのですね。
だから、右の方の言葉がもう一つ違いが目立つような、先ほど言われた「要素技術」なんていう言葉が良いかどうかわかりませんが、そういう目立つ言葉を書くといいのですね。

【委 員】  私は、自分の中では、基礎医学をやる人と臨床の人の違いみたいなのがあるのかなと何となく思っていたのです。そういうことなのか、あるいは違うのか、よくわからないのですが・・・。
もちろん臨床の人も基礎医学はやるでしょうし、基礎の人も臨床はやるのでしょうけれども、ただ看板はそのようになるのかなと。

説明資料1の方を見まして、3ページの赤い字で書いてあるのがやったことですよね。
それでは黒い方はやっていないということなのですか。

【事務局】  説明したのはこの赤い部分ですが、これはすべてやってございます。

【委 員】  わかりました。私は、黒はいつやるのだろうと思って。そうではないのですね。わかりました。すみません。
それから、今度は今後の方の説明資料2ですが、私はここにいらっしゃる技術系の先生方と違うものですから、昨年の評価を見まして、特に6ページに書いてあるのを見ると、「今後の研究マネジメントのポイント」というのがその後ずっと書いてありますが、私はこれが普通のような気がして、今までこうではなかったのかなと結構驚いたのです。初めてこうなるのかと。
そうだとしたら政権交代でガーガー言ったのもそれなりに意味があったのかなと思ったのですが、是非こういうポイントでやっていただきたいと思いました。

それで何点か。
行政との人事交流ですが、この行政との人事交流というのはすべて土木の人に限る人事交流なのか、全く土木系の中の往復なのか、それとも他の、例えば都市工学も入るとか、事務屋さんも来るとか、そういうことがあるのでしょうか。
あと、私が思っていたのは、社会資本、要するに国土、ここの名前は国土技術政策総合研究所ですから、やはり国土について考えていただきたい。
今は国土庁もなくなってしまって、「国土」という言葉が余り出てこなくなったのですが、国土の有り様みたいなことをお考えになるときに、社会資本をどうやっていくかということだけではなくて、美しい国土をつくるとか、将来の国土のプランがある中で、中期的、長期的、短期的にどのような計画があって、それに関してはさまざまな言葉があるのでしょうけれど、どういった研究だったり調査や手当てをやっていくのか、というようなトータルの図がこれだと何となく入りづらくて、1つずつのことがいろいろ出てくるという感じが私はしたのです。

特に、今後のポイントを踏まえたいろいろな研究というのもそうなのですが、こういうことがあるのでこういうことをやっていきたいという、1つずつはとても重要だと思うのです。
でも、今は社会資本整備を書くときもアウトカムから入るじゃないですか。ですが、「こういう研究がある」という供給者側からの発想になってくると、何回もここに出ていますから私はわかってきているのですが、知らない代議士の先生とかに見せるときは、もう少し結果が見えるような、何に資するのかということをもうちょっと強調した方がいいのではないかという気がしました。

それから、どこがやるのかはわからないのですが、私は観光なので、国土をきれいにするというのは一体誰がやってくれるのでしょうか。
美しい国土づくりというのが昔はやりましたよね。安倍さんかだれかわからないですが。あれはどこかに行ってしまったのですが、ぜひ長期的に研究を進めていただきたいと思います。これはお願いです。

【事務局】  まず人事の件でございます。
今、国総研には大きくいって土木の分野と港湾の分野と建築の分野があります。
例えば土木でしたら道路とか河川が含まれますが、土木の人間が建築に行くことは原則としてありません。ですから、本省の河川・道路といった部局と、国総研の土木の分野で人が行ったり来たりして、あるときは行政に携わり、またあるときは研究に携わっているというのが実態です。

【委 員】  例えば港湾なんかを考えるときに、言い方は悪いのですが、ドンガラをつくるというような時代ではないですよね。そういった場合に、ハードの部分だけの研究でいいということなのですか。
それはまた別のところでやるとかいうことですか。

【国総研】  むしろ国総研は現在、全国にどれぐらいの規模あるいは配置で港の機能を持っていくべきかというような研究をやっております。

【委 員】  ということは、そこは全部土木の人だけがやる。

【国総研】  土木系の技術をベースにした研究者がやっておりますが、土木屋は同時に経済屋でもありますので。

【委 員】  別に悪いと言ってるわけじゃないですよ。たまには違う人が入ってもいいということです。

【事務局】  国土の問題をできるだけ多様な視点、特に観光というご指摘もございましたが、トータルの視点で取り組めばどうかというご指摘がございました。
例えば道路をどうするか、河川をどうするかという課題は、原則として治水特会とか道路特会の予算で検討するわけですが、それを横断した、例えば美しい環境をどのようにつくっていったらいいだろうかとか、地震が起きたときにはどんなメカニズムで災害が起きるのだろうかといったテーマは、まさに赤い部分の予算を用いて、国総研として取り組んでいくものと思っており、実際、そういったテーマを対象に予算を要求しているところです。

【委員】  私にしたら、最初に国総研の見学をさせていただいたときに痛く感動した覚えがあるので、皆様すばらしい研究をしているというのはすごいなと思いました。これは最初に申し上げておきたいのですが。ただ、この書き方はそのことがわかりづらいのです。何も知らなくて短い時間で説明するときに、研究とアウトカムとか、そういうものをもうちょっとわかりやすく表現する工夫が必要かもしれません。

【事務局】  国総研の場合、国交省の組織の中の一部なので、国交省の政策の立や技術基準の作成支援が、私たちの研究のアウトプットとなることから、どうしても外部の成果がわかりにくい形になっていると思います。

【委 員】  ただ、今、社会資本なんかは随分わかりやすく書いていますから、その辺はまねしてもいいのではないかと思います。

【事務局】  わかりました。

【委 員】  説明資料1の成果の発信状況というところで、論文であるとかプレスとか、いろいろ増えているというところで、恐らく外部発信あるいは露出というところは意識されて頑張っておられるのだろうと思っています。
常時一般の人たちが見るとすると、ホームページがあると思います。
国総研のホームページを見ますと、バナーがものすごくたくさんありまして、小さな画面にものすごい情報を詰め込んでいるという感じがして、決して見やすくないなという印象です。それと、例えば「研究活動」の中で「研究成果資料」というところを見ますと、タイトルがワーッと出てきて、これも、それぞれやった成果と現在の重点取り組み課題との関わり、どう貢献したかという視点で見ると、テーマが羅列的に並んでいるだけでよくわからないのです。もう御承知かもしれませんが、日本原子力研究開発機構の地層処分研究開発部門というところが、
JAEA KMS、ナレッジマネジメントシステムというシステムを試行的に立ち上げています。
そこを見ますと、研究開発で得られた知識を社会的に共用化する、共有化するというようなコンセプトで、非常にわかりやすい。例えば検索システムであったり、いろいろなディベートをするようなシステムであったり、データベースであったり、非常にわかりやすくつくり上げていこうとするところが見えていました。
このようにやると外部的にも非常にアピール効果があるのではにでしょうか。
そう思って見ると、説明資料2の中で、建築のナレッジベースでこういうことをやると皆さんは注目するのだろうなと。こういう工夫をしながら、皆さんが利用できるような形にしてアピールすると非常にいいのではないかと思います。
国総研のホームページを見ますと、そもそも取り扱っている内容がものすごく広く、むしろ部署ごとに分けてしまってもいいのかなというぐらいに多岐多様にわたって、何か迷子になりそうな感じもしましたので、その辺は少し工夫された方がいいのではないかと感じています。

【事務局】  済みません、ホームページについては4月にリニューアルして努力はさせていただいているつもりでございますが、御紹介があったホームページも参考にさせていただきながら工夫していきたいと思っております。

【所 長】  うちのホームページから、たくさん情報をダウンロードして使っていただくととてもうれしいのですが、同時に、出ていることから類推して、国会からの資料要求とか、いろいろなのも来る、そういうタイプの研究所でもあるのです。本省に関係することが多い。
ですから、どうしても、これは出していいだろうかというのを本省にお伺いを立ててからというところがあります。できるだけ上手に表現して思い切って出すようには指導しておりますが、行政に近い分だけ多少その辺が臆病になっているところはどうしてもあるかなと思います。その辺は難しいところでありますが、できるだけたくさんの情報にアクセスしていただけるような方向で努力していきたいとは思っております。

実はリニューアル前はもっとひどくて、私も全然欲しいものにたどり着けなかったので、大分直してもらったのですが、もう一回ぐらい頑張るとよくなるのではないかと。
ただし、研究所をつくったときに研究所を2つに分けたものですから、そのあたりのサポート体制がかなり貧弱になって、その中でかなり苦心してやってくれて いるかなとは思っております。

【委 員】  説明資料2の最後の21、22ページの「アジア建設市場での国総研の外交的活動」というところですが、これは非常に重要だと思います。最近ますます日本のインフラの輸出とかいうので重要視されていますね。
質問と意見があるのですが、1つは、「国総研の外交的活動」と書いてありますが、こういうのは国総研として独自にやるという方針なのでしょうか。
例えば水システムの輸出だったら、経済産業省でそういう勉強会を立ち上げたりしてやっています。そういう政府として何かやるという枠組みの中に国総研が入っておられるのかどうかというのが質問です。

意見の方は、個々の機関、国総研とか○○省とか○○研究所とかが個別に当たるよりも、そういう関係者が強いところを持ち寄って、みんなで力を合わせてやる方がずっと効率的ではないかと思います。
大手ゼネコンの方といろいろ話をしていて、今、海外に出ていくのに何が一番大切なことを聞いたら、海外の契約について知っている人間がいない、契約で失敗するとすごく大変な目に遭うという話でした。
だから、こうやって技術の方でどんどん進んでいくのは良いのですが、やはりパッケージが必要です。国総研独自で努力されるのは非常に重要だと思うのですが、もうちょっと政府全体として何をやるかという視点も必要なのではないかと思います。

【委 員】  非常に大事だと思うのですが、国総研でできることとしてほしいことは結構いっぱいあって、上流側からいろいろ見ていくと、例えば技術基準をどうするかというところが、メコン開発とかアジアネットワークなんかを見ていると、物すごく焦眉の急務なわけです。あるいはITSなんか。そういうところは国総研が非常に活躍できるでしょう。あるいはファイナンスとかリスクのマネジメントみたいなものをどうするのだろうとか、国総研の力を生かした人的ネットワークをどうするのだとか。そういう上流から下流までの中でできることとすべきことを切り分けて考えた方がいいのだろうと。
そういう中で国総研の強みは何だろうかということを考えていただくといいのではないか。これはその辺がどうも不透明ですよね。

【所 長】  ここは国総研からの視点だけで書いていますので、そういうところはあると思います。
まさに昨日ですが、前原大臣がヘッドの国際大会議がありまして、実は国総研の所長もメンバーには入っておりました。
今現在、国総研に期待されているのは、先生が仰った国際基準、ITSとか港湾の話も入っていました。
昨日はそういったところを国総研にはぜひ頑張ってくれと言われました。
ただ、それ以外の具体的な案件をどうしようか、仕事を取りに行くのはどうしようか、昨日もその辺の非常にデリケートな話が結構出てきていまして、例えば仕事を取るのだったら、仕事を立ち上げる、あるいは育てるその前から動かないと実際にはなかなかうまくいかないとか、先ほどの契約発注の話で言うと、本当にそこに住んで、そこである期間仕事をしていないとなかなか身につかないとか、そういう議論もありました。そういう全体を含んだ中で国交省全体として動き出しているところです。

【委 員】  政権が代わったから若干様子が異なるかもしれませんが、水の安全保障みたいな話がありましたね。ああいうときにも国総研がどんな役割をするのかというのは大事なことだったのだろうと思うのです。
確かに今言われたように国総研として何をやっているのかということをここに書いていただくのは大事ですが、大きな流れの中で何があるのかということを横並びでしっかり見る。
それから、先ほど言われた上流から下流まで見た見方。横並びもありますね。
例えば、
ICHARMの話とか、土研にもユネスコの組織があるし、そういうものと横並びでどう連携するのかという話と、海外進出みたいな日本の戦略として進出していく場合の上から下までの手当てというような、その中で位置づけるということも大事ですので、そういう観点を入れたレポートをつくっていただくことも大事かなという気がします。
それはそれで、先ほどから気になっていたことは、事業費から来るお金と、いわゆる科学技術費として出てくるお金が緑のバーと赤いバーで示されていて、先ほどは、今年度実施する課題が幾つか書かれていましたよね。説明資料2の「3.ポイントを踏まえた研究課題例」、赤いバーで示された科学技術としての考え方の予算の中でどんなテーマがあるのか。
例えば、先ほど、美しい国土とか、災害に強いとか、グリーン・イノベーションとか、ライフ・イノベーションとか、大きな枠の中で赤い予算で一体どんな基幹的な研究テーマがあるのか、それをサポートする事業勘定から出てくる研究テーマはどのようになるかというフロー図というか枠組み図みたいなもの、科学技術予算でどんなテーマを持っているのか、それをサポートする現場の調査から出てくる研究がどのようにあるのかという組織図というかフロー図みたいなものができると、今度は、事業費の幾らの部分も将来的には科学技術予算化もできるねというような話が進んでくると思うのです。
その辺、赤いお金の分だけのしっかりしたテーマ枠組みというのは設けられているのですか。

【事務局】  河川とか道路の部門で具体的になっている課題については、河川あるいは道路の事業費がありますので、それを横断するテーマ、あるいは一歩先をにらんでやるべきテーマを考えております。
具体的に言いますと、防災と環境です。新規に要求する個々の事項については、改めて御説明させていただき、評価をお願いしたいと思っていますが、来年度予算の防災関係で考えている課題は2つ。
1つは津波、もう1つは地震です。津波というのは、例えば津波が来たときにどこまで海上が遡上するか、どこの水門を閉めればどのぐらい効果があるのか、そういったメカニズムを明らかにする。
これは道路であれ河川であれ、すべてに施設管理に共通するテーマです。
こういうテーマを赤い部分の予算で研究して、その成果を踏まえて、道路をどう管理していくか、河川はどう管理していくかは事業費の部分でやっていく。
地震でいうと、大きな地震が起きたときに、どこの橋、どこのダムがどういう影響を受けているかを、ある程度瞬間に予測する。
即時予測の考え方を整理すれば、次のステップとして、道路であれ、河川であれ、具体的な対応に結びついていく。そういう考え方でこの赤い部分の予算を要求しようとしています。

住宅・都市関係には直轄事業費はありませんので、ほとんどの分野を赤い部分で賄うことになります。
先ほどから何回か話題に出ております、新成長戦略のグリーン・イノベーションやライフ・イノベーション、あるいは国交省成長戦略の柱に住宅・都市分野がありますので、それらを念頭に置いて、よりよい住宅を供給していく、あるいは、建築基準法が改正されて以降、審査が長引くことで建築のマーケットがシュリンクしていますので、こういった問題をクリアしていくために必要な研究を赤い部分の予算でやりたいという方針で整理しているところです。

【委員長】  今おっしゃったことはどこかに資料がありますか。ありませんか。やはり要りますね。例えば、この辺にありますよとかいうのでもいいのですが・・・。

【所 長】  実は今、来年度の予算をどういう仕組みで要求するのかがまだ固まっていないのですが、うちのスタンスを議論している、そんな状況でしたので…。

【委員長】  今のお話は今からのお考えですが、本省からの事業費の中で委託みたいな格好で来ている内容がどんなものであるかということの内容自身を、まずどこかにリストアップしていただいて、それと今回対応する研究とがどう連動するかとか、その辺のフローがわかると今のお話が理解できるようになってくると思うのです。これが今度はやはり要りますね。

【委 員】  そうですね。将来展望を考える中でも必要なフローになりますね。

【委員長】  そこがあると大分全体が見えるようになるかもわからない。

【委 員】  一言、今の関連なのですが、国土交通省の政策に直接か関わっている場合、こちらの研究内容というか、政府がこの1年間でいろいろな、例えば温暖化対策にかかわるさまざまな施策を2本も3本も4本も、非常に目標値を高めているというかスピードを速めている感じがしますので、できるだけ早く、いかに今ある研究を、総合力を持ってきちんと生かしていくかとか、そういう視点も入れておいていただけるとありがたいと思いました。総合力というときに、国土交通省がやっている研究と他の省庁がやっている研究と合わせるともっと活きるのではないかとか、先ほどアジアの研究でのいろいろな連携の話が出たのですが、国内での研究でも役割分担とか連携とか、例えば国家戦略局で政策に直結したこういう研究のところまで話し合うような場を提案してつくっていただくとか、そういう流れをつくっていただくことも大事なのではないかと思いました。
あと、先ほどフィールドから研究材料が出たものをいかに研究に生かしていくかというようなお話も出ましたが、科学技術の方の研究にしろ、今は産官学民といかに連携した研究体制をとって、いかに研究成果が現場で早く生かせるような研究をするかというのが今年の目標になっているわけですので、そういうところに研究テーマをしっかりはめ込んでやっていただくというのが大事なのではないかと感じました。よろしくお願いします。

【事務局】  すみません、先ほど資料はございませんと申しましたが、ございました。
資料4というのがお手元にございます。分科会の予定についてという資料です。
ここに事前評価の対象課題が8つ書いてございますが、これらのテーマがグラフの赤い部分で実施するテーマです。先ほど私が勝手に整理してしまいましたが、例えば2番にあるのが津波の研究、8番にあるのが地震の研究です。
こういった課題に必要な予算を赤い部分で要求していきたいと考えています。
これについては7月21日に具体的な内容をご説明して、事前評価をいただくということを考えています。

【委員長】  これは一種の自主研究としてということですね。

【事務局】  はい。赤い部分はそうです。

【委員長】  赤い部分というのは、向こうのパワーポイントで。それで考えておられるテーマはこういうテーマであると。この事前評価は先ほどの自主研究のところですね。

【事務局】  そうです。

【委員長】  本省から依頼する調査とは違うのですね。

【委 員】  最初の予算のところが約7億円あったのですが、7億の全部をこの1〜8までに使うのですか。

【事務局】  話がどんどん小さいところに入っていって恐縮なのですが、この赤い部分は21年度でいうと8億200万です。
これが、こちらの円グラフでは緑の部分になります。黄緑色とモスグリーンの部分を合わせて8億200万です。これがさらに2つに分かれているのは、自主的な研究の予算にも2種類あって、特に大事なテーマを対象に力を入れてやろうという部分と、私たち自身が基礎的な研究をしなければいけない、そのためには研究施設を維持しなければいけないし、本も買わなければいけない、学会にも出なければいけない、そういった本当に基礎的な部分に要する予算に分かれます。
大事なテーマに取り組む予算が約4億円、生活費の部分が4億円ということで、内訳は半々です。
具体的にテーマを立てて研究する分については、その都度財務省に要求します。
具体的にどういったテーマを立てて要求するかは、評価委員会の分科会で事前に評価をいただいていいます。その分科会は来月行う予定です。
そこで評価していただこうとしているのが、先ほど挙げた8つのテーマです。

【委員長】  よくわからないな。

【委 員】  研究評価というのは、赤いバーで示された部分のお金を有効に使えているかどうかということかもしれないのですが、国総研の特徴は、事業費からも物すごいお金が来ていて、それがどのように生きているかということ、それがどのようなバックグラウンドになって、研究があって、その研究が今度は逆に事業費とかかわっているところにフィードバックされているかということが国総研の大きな特徴でしょう。
赤いところだけ評価していてもおかしな話ですね。

【所 長】  質問をいただきながら話があっち こっち行ってすみません。先にこれを片づけさせてください。
去年までは、予算要求の時期と、個別の比較的大きな課題としてやっていたプロジェクト研究の事前審査の時期を一緒にしていましたので、どうしても小さな赤いところだけが国総研を代表する研究であるかのように見え過ぎていました。これは反省しなければいけないぞと。
黄緑のところだってかなりのエネルギーを使っているのだから、その部分も含んだプロジェクト研究をきっちりブラッシュアップして、時間をかけて秋に見ていただこうというので、少し時間を変えたのです。
ですから、来年度以降、我々の代表的な研究ですという中には緑の方のウエイトがかなり、予算をたくさん使っている部分が出てくるはずなのです。私が期待しているので、どうなるかというのはわからないのですが。

【委 員】  赤とどれだけ連動しているかというようなフィードバックもあれば…。

【所 長】  あるいは、赤と緑を違う名目で要求していますが、プロジェクトとしてはもう少し大きなテーマとしてまとめてやっていると、私は理想をそこに置いているのですが、うまくいくとそうなってくるのではないかと期待しているところです。

【委 員】  まさに最初に言われた仕事と研究の一体化ということですね。

【所 長】  ええ。

【委 員】  向こうに出すときにはきちんと分けて出さないといけないのですか。自主研究と予算を割るところ。

【所 長】  予算上は分けないと、ごちゃごちゃにした途端に蹴飛ばされしまいます。いかにこの予算の趣旨に合った要求であるかということを述べない限り予算確保はできません。

【委 員】  某研究所の評議員をやっているのですが、そこの評議員の人は、うちは博士をつくるためにやってるんじゃない、勝手な研究なんかさせるなと言った先生もいるのです。
そういうイメージを持たれないように、例えば、これはさっきおっしゃった成長戦略会議の5つの項目に随分当てはまると思いますので、そういった向こうの論理をうまく使うということも、もうちょっと考えてもいいのではないかと思うのです。
例えばさっきの国際化のところも、国際化というのは成長戦略会議の一つの柱になっていましたよね。そこにうまくあてはめて表現を工夫すると、もうちょっとよくなるのではないかと。
これで言うと、国総研の外交的活動とか、ちょっと表現が悪いなと。ポイントを踏まえた研究というのは当たり前だと思ってしまうのです。だから、表現の仕方とか、くくり方とか、フローのつくり方を整頓するだけでも随分わかりやすくなるような気がするのです。それに、昨年度とは大分違うと思うのです。だって、今年の成長戦略会議は大臣が主導しているわけですよね。

【所 長】  今の話と、先ほどの、各省庁にまたがるような話をどのようにしていくのかという話は関係あると思うのですが、はっきり言って、今まで本省にとって国総研は余り見えていなかったと思うのです。
言い方は変ですが、おまえらは黒子でいいのだと、そういう感じがかなりあったのです。
最近は我々もかなりいろいろ言うようになってきましたので、その辺のやり方は少しずつ、我々も逆に意識しないといけない、出ていかなければいけないと思います。
ただ、どうしても本省を乗り越えて各省庁というのは研究フェーズだったら幾らでもやっていますし、いいと思いますが、実際に政策につながるようなレベルになってくると、当然本省が前に出ることになります。
そこはうまく使い分けて対応していかなければいけないと思っています。

【委 員】  国総研が大きな将来に向かう研究をして、マクロの存在で大きな展望を持って研究していくというところは非常に重要だと思うのです。
でも、どんなに大きな理想や成果も、究極は国民の生活に結びつくわけです。
そういうことで言うと、例えば平成21年度の10ページなのですが、自転車走行空間の設計のポイントのような研究ですね、3.7倍に増加していたというのはなるほどと。
国民が非常に危機意識を持っている1つは自転車に追突されることなのです。ただ、国総研からさらにどこへつながるのかというところがこれではわからないのですが、実際に危険を感じるのは、大きな交差点のちゃんと整備された道路よりも、普通の歩道なのです。
普通に歩いているところで自転車が無言のうちに来ても、人はすっと斜めに動きますから、ぶつかってしまう。赤ちゃんを連れている人はベビーカーが本当に危なかったとか、いろいろな話を聞くのですが、こういった実生活のところへ、ここから先つながっていくのでしょうか。
「今後は、整備済地区での運用状況を基に「設計のポイント」の改善」というと、結局は大きな道路で新しくつくったところだけが整備されていくのかと。そしてまた国民が離れるわけです。本当に危ないのは歩道も何もわからないようなところなのだとか、そういう声が聞こえてきそうで、例えばそういったところは小さいからうちには関係ないとおっしゃるのか。
せっかくの成果がそこまで来ているのですが、最終的な国民の生活の一歩手前で、はいここまでです、うちは大きなことを研究しますと言われているような気がしてしまうのです。
今はわかりやすく自転車の例で申し上げましたが、こういったことがそこかしこに見えたものですから、どのようにお考えなのでしょうか。
国総研はここまで、ここからはこういうところがあるのだと言ってくれると、すごくすっきりして、研究の意味があると評価するのですが。

【所 長】  これ自体は、インフラを担当している国総研が、上を走る人の教育から何からすべて一人で全部やれる話ではないので、政策を動かしていく仕組み、省を超えたことが必要だと思います。
それから、いつもそうなのですが、国総研は名前負けしているところがありまして、どこまで行っても本省各部局とのつながりで仕事をしているものの総合でしかない。
それを全部考えている人間、統括できる人間というのも実はいない。私も一生懸命頑張って、今回のレポートにも巻頭で書きましたが、少し国土全体を見渡そうよ、もうちょっと高い視点から物のいろいろな関わりの中で自分の仕事をやろうよと、ずっとここのところ、嫌がられているかもしれないのですが、言い続けているのです。

【委 員】  今の委員の先生の御発言は非常にうれしかったのですが、私はこの政策全体がどうしても間違っているとしか思えないのです。
そういうことを国総研から本省に向かって発するなんていうことは考えられないのですか。
こんなことをしたって全然減らないし、よくならないし、国土交通省ってこういうところなの、道路局ってこういうところなのという悪イメージが蔓延すると思うのです。

【所 長】  今はチャンスかもしれないですね。

【委員長】  では考えておいてください。

【委 員】  ぜひお願いいたします。

【委員長】  そろそろ時間がなくなってきましたから、オーバーしていますので終わらせていただきたいと思います。
非常にいい結論が出てまいりましたが、最後に1つ。いろいろな形で大変な対応だったのですが、本省からの依頼と、本省の依頼に対応しつつもう一歩先を超えた研究との並行的な形、典型的には今の自転車の様なパターン。
これを変えるとしたらどうすればよいのだろうという問題提起がそのまま来ている状況があるのではないか。
この点について所長が何度もおっしゃっていましたが、前回も今回も、その点に焦点を当てた整理の仕方をすると、より鮮明に個々の任務とか個々の成果がわかってくるのではないか、というのが、1つの一致した御意見であったように思います。

また、いずれも国総研の御活躍につきましては、平成21年度のもよくやっておられるという評価であったと思います。
今後の進め方については、こういうテーマはあると思いますが、しかし批判すべきところは批判すべきではないかという点で、もう一歩突っ込んでいただきたい。このような評価であったと思います。
こんなところではないかと思いますが、今日は評価委員会ですので、今のような感じで取りまとめをやらねばなりません。
皆様方の御意見を後からいただいても、それは対応できると思いますが、最終的には御一任いただきたいと思います。よろしゅうございますか。


それでは、今日はどうもありがとうございました。

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4.今後の予定等について
 

・今後のスケジュール

【事務局】  ありがとうございました。
事務局からの連絡事項は、実は資料4でございました。
先ほどご覧いただいたかと思いますが、7月に予算の関係で個別研究課題の分科会を行います。
その後、今のところ11月を予定しておりますが、プロジェクト研究および個別研究課題の事後評価について分科会でやらせていただくことになってございます。
あとは資料4をご覧いただければと思います。

なお、本日の議論につきましては、後ほど議事録を取りまとめまして、後日メールで内容の御確認をさせていただきたいと思います。
評価結果の取りまとめは委員長と相談させていただいた上で、公開を予定しております。
ホームページにも資料と議事録を載せていきたいと思っておりますので、またお手数をおかけしますが、どうか御協力いただければと思っております。

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5.国総研所長挨拶/閉会


【事務局】  それでは、最後に所長よりごあいさつを申し上げます。

【所 長】   本日は長時間にわたり本当にありがとうございました。良い意見をたくさんいただいたのですが、しっかり全部にお答えできずに大変申し訳なく思っております。単に議事録をつくるのではなくて、もう一回改めて勉強してみたいと思います。お話を聞きながら、片一方でいろいろ実際に動かしている立場としては限界を感じておりましたが、何とか少しでも期待に答えられるように工夫しながらまた1年間頑張っていきたいと思いますので、今後ともぜひよろしくお願いしたいと思います。
本当にありがとうございました。

【事務局】  それでは、研究評価委員会をこれで閉会させていただきます。
皆様、長時間にわたっての御議論、ありがとうございました。
       

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