平成21年度 第3回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第二部会)

議 事 録


1. 開会/国総研所長挨拶
2. 分科会主査挨拶
3. 議事
(1) 評価の方法等について(確認)
(2) 平成20年度終了研究課題の事後評価
@ 建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能表示・認証システムに関する研究
(3) 平成22年度開始予定研究課題の事前評価
A 密集市街地における強調的立て替えルールの策定支援技術の開発
B 住宅種別に応じた省エネルギー評価法の開発
C 建築実務の円滑化に資する構造計画プログラムの技術基準に関する研究
4. 今後の予定等について
5. 国総研所長挨拶/閉会

平成21年度第3回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第二部会)

平成21年7月24日

1.開会/国総研所長挨拶

【事務局】 おはようございます。定刻になりましたので、平成21年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第二部会)を開催いたします。

 それでは、国総研所長よりごあいさつを申し上げます。

【所長】 おはようございます。一言ごあいさつ申し上げさせていただきたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 本日は、非常に暑い中、朝早くからお集まりいただきまして誠にありがとうございます。毎年とても良い御意見等をいただきまして、何とか我々の方も研究を進めて参っておりますが、本日も事後評価にかかわるものが1件と、これから予算要求をして来年度以降の研究のテーマが3件ございます。特に予算要求につきましては、政治の成り行きでどうなるかわからないところもございますが、当面は最善を尽くして、予算を確保すべく頑張りたいと思っておりますので、率直な御意見を賜れば非常にありがたいと思っております。今日も長時間になりますが、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 簡単ですが、開会のごあいさつとさせていただきます。

【事務局】 ありがとうございました。

2.分科会主査挨拶

【事務局】 それでは、主査よりご挨拶をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【主査】 皆様、おはようございます

 この研究評価委員会の第二部会というのは通例年に1回でございまして、今日は事後評価と事前評価の2つございますが、委員の皆様のいろいろな御意見が今後の国総研の活動に反映されるわけでございまして、ぜひ国総研が一層大きく育つように建設的な御意見を賜りたいと思います。長時間でございますが、よろしく御尽力をお願いします。

【事務局】 ありがとうございました。

 それでは、以降の進行は主査にお願いいたします。

3.議   事

(1)評価方法等について(確認)

【主査】 それでは、議事次第に従いまして進めます。まず、議事の(1)「評価方法等について」の確認になりますが、事務局より御説明をお願いします。

【事務局】 名簿をめくっていただきまして、資料2「評価の方法等について」という紙がございます。

 評価の目的といたしましては、「科学技術基本計画」、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」等に基づきまして、公正かつ透明性のある研究評価を行うことになってございまして、本日、外部委員会での評価をお願いしてございます。

 評価の対象ですが、所として重点的に推進する研究であるプロジェクト研究及び予算要求のために評価が必要となる研究課題を評価対象としております。事前評価、中間評価、事後評価とございますが、今回は平成22年度から取り組む事前評価を3本、平成20年度に終了した事後評価1本が該当しておりまして、中間評価の対象はございません。

 評価の視点と項目につきましては、それぞれ、必要性、効率性、有効性の観点を考慮し、自己点検結果をもとに評価をいただきたいと考えております。

 まず、事後評価につきましては、当初の目標に対する達成度、研究成果と成果の活用方針、研究の実施方法、体制の妥当性、上記を踏まえた研究の妥当性という観点から評価をいただきたいと考えてございます。

 事前評価につきましては、研究の背景を踏まえた研究の必要性、研究の実施方法、体制の妥当性、研究成果の見込みと成果の活用方針について評価をいただきたいと考えております。

 具体的に本日の評価の進め方について御説明いたします。少しめくっていただきまして、別添1をめくって、横表になってございます。本日の課題が事後評価、事前評価というふうに並べてございますが、基本的にこういった形で進めたいということでございます。それぞれの研究課題につきましては、担当から御説明申し上げ、委員の皆様で御議論をいただき、評価シートあるいはコメントシートに記入をいただいて、事務局でこれを回収させていただき、主査にまとめていただくという流れになってございます。

 流れとしましては、お手元にパワーポイントの横表で上の方に置いてあったものがあったと思うのですが、事前評価につきましては、評価結果について、説明を10分、評価については主査の取りまとめも含めて15分ということでございますが、下の方に書いております通り、概ね質疑に11分、まとめに4分、コメントシートに書く時間が2分、主査の取りまとめに2分、ということでお願いしたいと思います。それぞれの課題毎にコメントシートがございますので、コメントシートに各委員の方に書いていただければと思います。事後評価についてですが、次のページに、課題の説明に15分、質疑及び評価に係る議論を20分、まとめに5分、でございます。この内訳としまして、事後評価シートに3分ぐらいで書いていただいて、2分で主査に取りまとめをいただくという形で考えてございます。

 なお、評価につきましては、報告書に取りまとめ、ホームページ等で公表することとしてございます。

 お手元の資料に戻っていただきまして、別添1という資料を飛ばしましたが、これは、利害関係が評価に加わらないようにするということの整理でございますが、今回は該当がありませんことを御報告させていただきます。

 資料の説明については以上でございます。

 なお、個別課題の評価につきましては、パワーポイントの様式をお手元にお配りしてございます。若干スクリーンが見にくいということもあろうかと思いますので、お手元で御確認いただきながらプレゼンテーションを聞いていただければ幸いだと考えてございます。

 以上でございます。

【主査】 ありがとうございます。

 それでは、只今の事務局の説明に関しまして質問等はございませんでしょうか。よろしゅうございますか。



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(2)平成20年度終了研究課題の事後評価

@ 建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能表示・認証システムに関する研究

【主査】 それでは、まず事後評価から始めたいと思います。今、御説明がございましたように、説明が15分、その後の意見交換が20分で、最後に5分間で取りまとめるという段取りになっておりますので、よろしく御協力をお願いします。

【国総研】 それでは、建築研究部基準認証システム研究室から、「建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能表示・認証システムに関する研究」ということで、過去3年間に実施してきた研究内容の報告をさせていただきます。パワーポイントの右下にページ番号もございますので、参照しながら説明させていただきます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ 本日の報告の構成ですが、最初に背景・目的等から御説明させていただきまして、大きく2つのテーマがございますので、内容に沿って御説明したいと思います。

・ もう1枚おめくりいただきまして3ページ目になりますが、この研究の背景・目的でございます。

 この研究を始めたときは、平成10年の建築基準法の改正によって性能規定化が進められていました。性能を明らかにして、それに適合する多様な材料や設計法の採用を認めるというのがこの性能規定化の方針なのですが、その際には、性能規定を実現するために、建築材料の性能や品質を明らかにしていく必要があるということが明確になってきているところでございます。

 性能の要求に応じた的確な設計を行うためには、その前提として、建築材料の性能特性や品質の明確化が必要だということが背景にございました。

 そのときに、設計に必要な建築材料の性能特性・品質が、建材生産において明確にされていない場合があるのではないかという懸念がございました。ユーザーユーザーというのは、この場合、設計者あるいは設計者に依頼する建築主ですがと建材生産者の間の性能特性・品質認識にギャップがある。例えば、生産者は美しい木材を供給することを目標としていて、ユーザーの方は種々の強度基準などが必要だというような、伝統的な生産体制の中でギャップが生じているものがございます。また、生産の都合によって特性が決められているもの等々、ユーザーとのコミュニケーションが十分でないものなどがございます。それから、こういった設計に必要な特性がない場合でも、設計は、ないなりに設計するということは可能なのですが、その場合にかなり材料に関する品質の余裕を見なければならないという不合理が生じているという仮説がございました。

・ もう1つの研究の背景・目的ですが、建築材料について、設計で多様な材料を採用しても、工事段階でその建築材料が適切に使用されているかどうかの確認が、施工時あるいは竣工段階で非常に困難である。建材を見ても、設計仕様どおりのものかどうかというのが非常に判断が難しいということがございます。

 この理由の1つには、建材を生産しても、施工現場に至る間に建築の場合は流通、加工プロセスがございまして、建材生産の段階では一定の品質、性能を明示しても、現場に来る間に切断、加工等がなされるということで、こういったプロセスで、1つは当初の性能が現場まで保全されているか、あるいは当初表示した性能情報が現場まできちんと継承されるかというあたりが、建築生産上、建材の種類によっても多様かと思いますが、未確立ではないかということ。それから、間違った材料が使用された場合の影響把握と対応というのが確認ができないということで、非常に困難になっている。トレーサビリティ、それから現物の性能証明性の確保が非常に重要になっているということでございます。

・ こういった問題意識を持つさらに背景としまして、近年、建材をめぐりましては毎年のように社会問題が発生しております。

 平成14年のドイツ製構造用集成材の剥離被害というのは、JASに規定された材料と違う接着剤を違った集成材、ドイツ製の集成材なのですが、これが剥離して強度を維持できなくなったというものでございます。

 それから、フローリング材からホルムアルデヒドの放散基準値が超えていました。これはJIS法違反になったものでございます。

 それから、木造の地震力を負担する耐力壁のボードを留める木ねじが、正しいものとは違うものを、認定書を偽造して商品供給していたという例。

 それから、中国製構造用集成材も同じですが、これは、JAS規格上は適合しているのですが、現場で非常に剥離が生じたというものがございました。

 住宅用塗料においてもJIS法違反の被害が出ております。

 また、平成19年には、エレベーターの支持用の鋼材、構造部分ですが、そこに使用された鋼材が、設計仕様と違うものが現場で使用されていた。これは、エレベーター会社の方の調達の現場と鋼材を供給する供給サイド、鋼材問屋、鋼材商社の間が、現場の認識が非常に甘かったというものでございます。

 それから、昨年でございますが、溶融スラグ、ごみの焼却灰から生産した骨材を混入したレミコンがポップアウトを多量に生じるという被害が生じております。ポップアウト自体は軽微なものだったのですが、上に張ったタイルの剥落危険性がなかなか解消されないということで、これも現場でまだ問題が継続しているものでございます。

 さらに、昨年あるいは今年に入っても、防火材料について、性能評価を受ける段階では性能のある試験体を供給しながら、製品流通段階では違う仕様のものを供給していたというような試験の不正受験問題等々多くの事件が発生しております

 これらについては、実際に供給された相手がわからないというものも多くございまして、何万棟にわたる住宅を調べなければならないケースですとか、トレーサビリティがないために現場が安全確認について、非常に困難を来したという現象がございます。

・ この調査では、こういったことについて海外でどういう対応をしているかということについても検討しております。

 これはヨーロッパの調査について書いておりますが、ヨーロッパでは欧州委員会でConstruction Products Directivesというのが1989年に制定されております。少し下に書いてございますが、建築等における重要な性能要求にかかわる建設製品については、欧州の統一規格をつくり、その認証システムを定め、CEマーク、適合表示のルールをつくり、さらに市場でその供給製品の調査を実施するということが、これは実行レベルではいろいろな議論はあるのですが、制度的には統一的に規定したものが確立しているという状況がございます。性能要求としましては、構造耐力及び安全性これは構造ですね火災、衛生・健康・環境、使用時安全、騒音対策、省エネ・保温性、サステナビリティというような観点で、建築の性能要求に関連する建設製品類についてこういったような指令が欧州委員会から出ております。

 この欧州委員会の指令に従って各国が国内法を整備しているわけでございますが、CEマークの表示などのルールを任意と解釈している国があって、統一がとれていないということで、現在、CPDルールの義務化を目的として、Construction Products Regulationsという、欧州のルールでは一歩高いレベルでの規則化をするという動きがございます。本年の4月に欧州議会で可決しておりまして、今、最終プロセスというところまで来ていると聞いております。この中では特に市場調査などについての重要性が参考になったところでございます。

・ 次に、そういった背景、外国の状況等を踏まえまして、どのような建材の性能表示・認証システムが必要かということの要件をまず整理してございます。

 材料の性状や、生産・流通・施工体制が異なる多様な建築材料に対して、特定の材料だけに適用できるということではなくて、一般的なシステムを確立する必要があるだろうということ。それから、先ほどの欧州のルールのように、要求性能に対応したものとして材料の特性・品質が確認され、表示されること。当然ですが、公正、的確に行われること。手続ばかり過度な負担を求めるものでないこと。それから、単に生産者だけでなくて、流通ルートを通じて現場に至るまでの信頼性が確認できるシステムが必要であろうという要件の整理をしてございます。

・ 次に、最初の方にございました、生産段階で確認される建築材料の性能特性項目というものが設計法にうまく適合しているかということを確認しているものでございます。特にケーススタディいたしましたのは、構造安全性に関して、検証法としては、建築基準法に定められる仕様規定、許容応力度計算等々の検証法に対して、材料の性能評価としての、例えば木造であれば、比重、ヤング係数、曲げ強度、せん断耐力、引張耐力、剛性等の性能評価指標というのが製品ごとにどのようになっているかというのを約80規格、JIS70規格、JAS10規格について調査いたしました。その結果、規格そのものが不在であるものですとか、性能特性情報が不明であるもの等が散見されたということでございます。

・ また、実際に幾つかの建材についてケーススタディをしております。

 まず、木ねじの大臣認定書が偽造されたということもあって、木ねじというものが一体どういうふうに流通しているかということを検証しております。木ねじというのはJISに定められているのですが、JISというのが一般流通品になっていないという状況ですとか、必要なデータがない。これについて、性能に応じた性能表示ができるようなJISに見直していくというケーススタディをしたところでございます。

・ 次に、木材につきましては、こちらもJASは規定されているのですが、実際にはそれが流通しないということについて、その原因や対処方法についてスタディしたものでございます。

・ さらに、鋼材につきましても、先ほどの、生産者から現場に来るまでの加工手続が多いというものがございます。大規模プロジェクトですと、現場から注文して鋼材を生産するというケースが一般的でございますが、建築のように多様なプロジェクトがありますと、市場流通品を加工するということがございますので、特にこういった問題のあることがケーススタディの中でも明らかになっております。

・ 6番目は、設計で建築材料を特定してから現場で施工するまで、あるいはその信頼性を高めるための工事監理や建築主事等の検査等のプロセスを整理しただけのものでございます。

・ こういったスタディを通じまして、本研究成果といたしましては、材料の性能評価・表示システムの枠組みといたしまして、建築物の性能要求と、それに対応した設計法を明確化すること。建築材料に求められる性能特性・品質を設計法に応じて明確化していくこと。これらを実現するために、建築材料の生産者と設計者あるいは基準作成部局のコミュニケーションをさらに強める必要がある。研究・生産準備段階からこれをしないと、生産者は生産の都合というものもございますので、このあたりで十分なコミュニケーションが要る。製品規格を作る段階では、現在、JISの原案作成委員会などでも関係者が集まることになっているのですが、その段階では既に生産システムが確立しているケースもございますので、できるだけ早い段階でコミュニケーションが必要だということを整理しているものでございます。

・ もう1つが、施工者が受け入れる建築材料についての品質認証システムのフレームワークといたしまして、施工者と建材供給者の責任関係の明確化、建材供給者における性能情報の継承システムの確立、信頼性を高めるために施工者から建材供給者へ示すスペックの明確化、これらの連続性を確保していくこと、それらの資料の保存期間の設定ということを掲げております。

・ こういったフレームワークに基づきまして、幾つかの基準案、あるいはガイドラインというものを検討しております。あるいはJISの認証手続等への反映をしているところでございます。レミコン、ねじ等につきましては、現在策定中の規格や今後改善すべき規格の提案等をしているところでございますし、この秋に建築構造用鋼材の品質証明のガイドラインを公表することになっているのですが、そういったところへ本研究の検討成果を反映しております。それを確認するための工事監理ガイドラインあるいは確認審査検査要領の作成についても本研究の成果を反映しようとしているところでございます。

・ 最後になりますが、こういった検討を通じまして、今後の検討課題といたしまして、建築の性能要求と関係する建築材料の性能特性というのはまだまだ明確になっていないところがございますので、これを一層明確化していくということ。それから、業界において流通・加工段階における性能・品質証明というものをきちんと業界慣行として確立していただくということ。そういったプロセスの中で、昨今の情報技術を十分に活用していく必要性、またその反面、そういったものの認証検査に係るコスト、あるいはそれを実施する担当者の能力等も検証していかないと実効性が出てこないであろうということ。さらに、その一環として、効率的な方法として試買試験などの市場調査のあり方、あるいは、現在、故意で危険な建築材料を供給した者に対するペナルティというものが行政法的には整備されていない部分があるということ。それから、建材というのは国際流通いたしますので、欧州等国際的な表示・認証システムとの整合性あるいは日本からの提案を図っていくことが、本研究の今後も継続していくべき課題として明らかとなったところでございます。

 ちょっと駆け足になりましたが、こういった研究を過去3年間、建築研究部で実施して参りましたことを報告いたします。

【主査】 ありがとうございます。

 それでは、これから20分間、御意見、御発言がございましたら、お願いします。

【委員】 今、拝見いたしまして御努力に敬意は表します。しかしながら、たまたま御説明いただいた範囲で私もかかわり合いを持っているものですから、やや辛口の感想を申し上げることをお許しください。

 御案内のCPR等々については、欧州がどんどんこういったものを作っておりまして、これにかかわる国際規格、ISO規格でもどんどんボールが投げられてきています。日本が少し後塵を拝している感がありますので、こういった御研究は、できればもっと早くしていただきたかったということがあります。常に欧州の後を追っていても、産業自身にとっても、国全体にとっても具合が悪いので、できれば先手をとって、こちらから提案していくようなことをしていただきたかったという繰り言を、まず申し上げます。

 そういう意味では、欧州のこういった動きの中で唯一日本が優位性を持つとすれば、御説明の中にもありましたが、今、トレーサビリティに関わる技術は日本に存在して、いろいろな試行が始まっていますので、こういった日本の経験を踏まえて、むしろ日本の方から日本発で提案を、EUを含めた国際規格、むしろISOの方に引きずり出して行うようなことを今後お考えいただきたいということも思う次第です。

 それと御説明の中に、幾つかの建材の現状などについて分析があるのですが、このあたりの掘り下げをもう少ししていただきたかった。もし誤解していたらぜひ反論いただきたいのですが、例えば木材については、低いことも事実なのですが、そういう外形的なことに本質があるのではなくて、例えばJASという規格が、建築を使うユーザーからしますと、含水率もヤング係数などの材料の力学的性状も全く保証していない規格ですので、使えると言われても、ユーザーはむしろ、内容をちゃんとしてほしいと思っていて、枠組みだけの議論をしていくと、JASを使わないことが悪というようなことだけが先行してしまって、実務者から見るともっと困った状況になってしまう恐れもないわけではないので、どこの使い勝手が悪いのか、どこを直すべきかというようなことも、実務者にもっと踏まえて、枠組みの議論をしていただくといいと思うのです。そのあたりについて、もし時間があれば、ぜひ補足していただきたいと思います。

【国総研】 では、私の方から回答させていただきます。今おっしゃったような、実務者側がどういうような理由でJAS材を使わないかということを「ケーススタディ(木材)」というところでは書いております。規格適合要求阻害要因の分析ということで、いろいろな実務者から意見を伺いまして、例えば、JAS材を使ったところでメリットがないですとか、生産者に対しても調査いたしまして、コスト的に負荷がかかるにもかかわらず同じ値段でしか流通できないとか、そういう意見をいただいております。結局、JASの方も、建築材料として必要な所要の性能が必ずしも明確ではなく、経験則的に、1つのこの特性値を満足すれば、例えば曲げを満足すれば圧縮引張が満足されるというような経験に基づいて決まっているというようなことがあるのですが、必ずしも曲げが必要でない部位にも曲げ性能を要求しているとか、建築材料として必要な要求事項が整理されていないといいますか、そういうことが分かってきました。JASとして改良する余地があるのかどうかというのは、JASを所管しているのは農林水産省ですから、そちらの問題かもしれませんが、建築材料としての特性要求というのは一応整理されているということでございます。

 それから、JAS規格そのものに含水率の保証がないというお話でしたが、含水率は品質の中の1つでございまして、建築材料として使用する部位によっては、含水率が高くても使える部位がありますので、必ず要求しているわけではないというような位置づけだと私は理解しております。よろしいでしょうか。

【主査】 どうぞ、委員の皆様。

【委員】 私もこのテーマは大変重要だと思いますが、パワーポイントの15枚目を見せていただけますか。それとあわせて、机上配付された縦型のA4の資料の3枚目のところの「研究の実施方法」の(5)というのとこれを見比べると、基準案というのは、材料性能評価・表示基準案、性能品質認証システム承認基準案の試行的な開発と書いてありますが、今の御説明だと、いろいろ検討したのをいろいろなところに反映しましょうということで、ここの初期の実施方法の区分(5)と、お話の内容がちょっとズレているかなと思いましたので、ここの研究区分の(5)に合わせて御説明を受けるとすると、実際にどういうことを作成されたのか。これだと、いろいろなところに反映しましたというのはよくわかったのですが、それそのものの基準案を作成しているというところはどこまで進んでいるのでしょうか。

【国総研】 御指摘の部分が事後評価の自己点検の採点でちょっとマイナスをつけたところなのですが、本研究は非常に多様な建材を扱うということで、当初の要件設定では包括的なシステムを検討しなければならないという認識だったのですが、実際にはかなり建材というのが個々の事情によって生産システムも流通システムも異なるという中で、このケーススタディ、試行的開発については各材料に着目せざるを得ないということがございました。実際にこの開発と、一方で起きています社会問題に対する産業界あるいは行政も含めた対応というのが、研究を待たずに動いているという実態もございまして、我々が産業界の意見を聞きに行くと、まさにガイドラインをつくっている最中なわけでございます。そうすると、私どもの方で試行的に開発するということと、産業界に意見を聞きながらといっても、その場で動いているものと同時並行していることがございまして、むしろ一緒にやっていくことが成果に対する近道だという、これは若干言いわけになるのですが、研究と実際に動いているスピード感というところの問題がございまして、実際、成果としては、御指摘のとおり、研究として取りまとめることよりも、実務で動いていることとタイアップして結論を出していく、成果を上げていくということになってしまった傾向がございます。

【委員】 そうすると、16番目のパワーポイントを見せていただきますと、今後の課題とありますよね。そことどうつながっているのですか。

【国総研】 フレームワークというスライドでも御説明したと思いますが、今回の検討では、今申し上げたような、実務とタイアップしたような成果といいますか、反映という形をとったのです。先ほどのお話にもありましたように、少し先手を取っていくといいますか、現在動いていない分野でリスクがあるようなところについては、グッドプラクティスの確立に働きかけていくために、研究・調査をむしろ先行させていくというような取り組みが課題と考えるところでございます。

【委員】 3年間研究をやられて、自己評価でマイナス点をつけられているところを責めてしまうのも申しわけないのですが、この研究では、最初に設定した目的と最後に得られた結論とが堂々めぐりをしていて、結局、同じことを言っているのだなという気がしてならないのです。最初の目的設定の段階で、多分、結論は既におわかりの内容ではなかったかなという気がしています。このプロジェクトを始めるときにコメントさせていただいたのですが、JISやJASと、国交省が設ける性能基準との間で齟齬が生じないようにするにはどうすべきか、それが多分ポイントで、なるべくダブルスタンダードは設けないようにしていただきたいというお願いをしたことを覚えておりますが、結局具体的にどこをどうすればいいのかというもう少し突っ込んだ検討をしていただくとよかったかなと思います。その場合、先ほどおっしゃったような軋轢が業界内にはあるので、そこを克服するためにはどうすべきか、そのあたりがちゃんと見えてくると、こういう建材の問題が起きにくくなるのではないかと思います。ただ、背景として言われていたことは、この研究の内容とはあまり関係のないことが多く、例えば偽装不正行為ですが、これに関しては、トレーサビリティの問題であると思います。この研究で取り上げた問題は非常に重要なので、立て直しをされて、追求すべきところをきちんと追及する方向で検討し直していただければと思います。

【主査】 ありがとうございます。これは事後評価で、一応終わったのを評価なので、もう一遍弔い合戦をやれということでございますか。

【委員】 このままだと不幸な状況がずっと続くので、ぜひ関連省庁とも踏み込んだ協議をしていただきたいということです。

【主査】 今のところが一番問題だと思いますね。国交省だけでやれる範囲というのは限定的でございますからね。最初のところで○○委員はそれを御指摘されたとおっしゃったが、私も、スタートラインでそこをどう整理してスタートしたかということは今になってみると感じますが。

 委員の皆様、他にございませんか。

【委員】 素人質問なのですが、建材の供給者の中には、例えば高炉メーカーとか非常に大きな会社から町工場まである。だから、性能の明確化といっても、新日本製鉄なんかは容易にできるだろうが、弱小の会社が同じようなことを求められたときにどういうふうなアクションを起こすかというのがちょっと私にはよくわからないのです。そこまで求めることになるのでしょうが、その筋道をちょっとお聞きしたいなと思います。求めるのか求めないかということですね。

【国総研】 具体的な成果として、この研究自体の成果というか反映という形になりますが、今まさにおっしゃった鋼材の品質証明のガイドラインというのを関係団体と一緒に国総研で作っております。新日鐵など比較的大きい高炉メーカーもありますが、電炉は若干小さいところもあります。今回の品質証明のガイドラインは、中小メーカーの品質証明の負担というものが、特に流通経路段階の零細中小企業に出て参りますので、問題になってきているところでございます。それにつきましては、調達側のゼネコンが、まずそういった図書を仕様書上明確にしないと、そのための作成経費が乗ってこないということがございますので、まず要求するものを明確にする、品質証明書なるものを確定していくというところからガイドラインができて、それを作成するための負担というのも、関係団体に入って、中小でも対応可能なものにしていかなければいけないという整理をしているところでございます。逆に言うと、大手は既に、ある程度やっているので、まさに中小が対応できるものを作っていかなければならないということでございます。

【主査】 他には。

【委員】 素人の発想なので大変申しわけないのですが、コメントです。

 私、今のお話を聞いていて、木ねじがJISのものがほとんどないということで非常に驚いたのですが、逆に言うと、私なんかは東急ハンズで物を買うときに、必ずしもJISだとか何とか見ていませんよね。もしそういうデータがあればありがたいですが。例えば東急ハンズで素材を買いに行ったときに、電気製品だったらほとんど全部マークがついているのですが、建築に関するものだけマークがついていないというのだったら、それはやはり消費者の側から文句を言わせて、そっちの方向で変化をさせる可能性があるのに、なぜそれをしないのかなというのがちょっと気になりました。

【国総研】 建材の場合は、一般消費者がエンドユーザーではなくて、専門家がエンドユーザーであるものが多くて、最近、セルフビルドが出てきた製品については消費者保護的な観点があるのですが、専門家が調達するときは品質証明を別途生産者に確認するというアプローチがどうも慣行であったような印象は受けるところでございます。今回の鋼材でもそうなのですが、建設業者、受け入れ側がきちんと品質証明書を求めるというアクションを起こさないと生産流通側も表示していかないということは認識されているところでございます。

【委員】 とても興味深い研究だと思います。ありがとうございます。

 この研究の建築物の規模について、大きな建築物と小さな建築物、あるいは発注者が個人である場合もあろうかとは思うのですが、今回のこの研究が、今の建物の規模によって何か違うところがあるかということと、特に今後の検討課題のトレーサビリティといいますか、故意で危険な建築材料を供給した者に対するペナルティ、ここがとても大事だと思うのです。特に個人の場合は、自分が了解したものが使われているかどうかがとても心配なのですが、そこら辺について教えていただければと思います。

【国総研】 縦割りというわけではないのですが、建材生産について、私ども国交省といたしましてはアプローチが常に問題になるところでございまして、例えば溶融スラグ問題でも、JISを偽装して危険なコンクリートを供給した業者に対してはJIS法違反ということで、JIS表示資格を剥奪するということはあったのですが、それ以上のペナルティが行政法上はないということがございます。このあたりは関係省庁とも相談をしていかなければいけないところでございますが、実際には、そういったことをやった会社は倒産しておりますので、民事的なペナルティないし詐欺罪等の一般的な刑法で処理されているというのが現状かと思います。

【主査】 ありがとうございます。

 大体時間が来ているようでございますが、特段の御意見ございますでしょうか。よろしゅうございますか。

【事務局】 各委員の方には事後評価シートがお手元にあると思いますので、記入をいただければと思います。

【主査】 3分ぐらいでやっていただいて、後の2分ぐらいで事務局がまとめて、その後2〜3分で私が講評すると。

【事務局】 取りまとめということでお願いします。

【主査】 ということで、委員の皆さん、よろしくお願いします。


(事後評価シート回収)


【主査】 結果がこれでございますね。上の方の、研究の実施方法、体制等の妥当性は「概ね適切であった」という形で、こちらに大変多くの意見がございますので、これで問題ないかと思います。

 下の方の目標達成度は割合票が割れておりまして、目標を「概ね達成できた」と「余り達成できなかった」ということでございます。私の見解では、2で「概ね達成できた」と思いますが、いかがでございましょうか。これは多分2と3の中間ぐらいで、2に近い2というぐらいの印象がございますが。 委員の皆様からやや辛口のコメントがございましたが、今後チャンスがございましたら、さらにこれを国交省の行政に活きるような形で。例えば、部品に関してはBL制度があって、相当やっているわけですね。例えばこの研究に関して、建材に関するBL制度みたいなものをつくるとか。やはりあれは国交省の行政の裁量内でつくっているわけですよね。建材ストレートにいくと、○○委員や○○委員がおっしゃいましたが、どうしたって他省庁とぶつかって、非常に活動できる幅に限界があるかと思うのです。

 ということで、上と下は「概ね適切だった」ということで、委員の皆様、よろしゅうございますか。はい。ありがとうございました。

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(3)平成22年度開始予定研究課題の事前評価

【主査】 それでは、これで事後評価を終わりまして、これからは事前評価でございます。事前評価は全部で4つございまして、これからは説明10分に討論15分でしたか、少し短くなります。よろしくお願いします。

【事務局】 事務局の方から、事前評価につきましては、先ほど主査からお話もありましたので、説明時間10分の時点、それから質疑で11分間、まとめでコメントシートに書いていただく時間2分、全体のトータルで25分の終わりの時間、それぞれベルを鳴らさせていただこうと思いますので、よろしくお願いいたします。


A 密集市街地における協調的建て替えルールの策定支援技術の開発

【主査】 それでは、最初が「密集市街地における協調的建て替えルールの策定支援技術の開発」。説明をお願いします。

【国総研】 「密集市街地における協調的建て替えルールの策定支援技術の開発」ということで、都市研究部都市開発研究室から御説明申し上げます。


〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕


・ まず、ざっと研究の概要について御説明申し上げます。

 研究の目的ですが、密集市街地における整備・改善の加速化を目的とした「協調的建て替え特例手法」の活用促進を図るというものであります。この「協調的建て替え特例手法」につきましては、また後ほど御説明申し上げます。

 研究の内容ですが、密集市街地における街区性能の簡易予測・評価ツールの開発。ここで言う街区性能というのは、防火安全性能、住環境性能(日照・採光、換気・通風)のことを意図しておりますが、そういったものの開発。2番目としまして、街区性能の実態と住民ニーズの把握。3番目、街区性能の目標水準と協調的建て替えルール策定ガイドラインの検討と、大きく3つに分けております。

・ 続きまして、研究の背景でございます。

 密集市街地というものが全国で約2万5,000haございます。東京、大阪が多いわけですが、その中で特に重点密集市街地というものが国によって指定されております。全国で8,000ha。ただ、その中で、最低限の安全性を平成20年で確保できているものが35%にとどまっております。最低限の安全性が未確保なエリアというのが58%に上っておりまして、都市再生プロジェクト等では、密集市街地の防災性向上のための整備・改善の加速化が求められております。

・ 続きまして、密集市街地における老朽木造住宅の建て替え阻害要因、法的側面からの建て替え阻害要因ですが、左下にポンチ絵がございます。これは密集市街地をイメージしているのですが、おまんじゅうに例えまして、「ガワ」と「アン」と、外側と内側に分けて呼ぶことが業界的にございます。その中で、「ガワ」の方では、公共主導、事業手法による集中整備、お金を投下して整備をする。主要生活道路ですとか公園ですとか、あるいは道路・公園と一体となった不燃化建て替えをするということで防災性の向上に努めているわけですが、特に「アン」の部分では狭隘道路と狭小敷地で主に構成されているので、建築基準法集団規定、具体的には接道規定ですとか道路斜線制限ですとか建ぺい率制限等が厳しく作用して、事業採算性も低く、建て替えが困難な状況になっております。

・ このグラフは、全国の密集市街地を抱える市町村にアンケート調査を行った結果なのです。高齢化とか資金不足といった社会的・経済的要因が建て替え阻害要因として大きく認識されてはおりますが、それに次いで、接道不良ですとか、敷地が狭小であるといった法的・物理的要因が大きな建て替え阻害要因になっているという認識がされております。

・ これは御案内かと思いますが、接道規定が制約となって建て替えが困難なケースで、4m未満の二項道路には接するのですが、中心線から2mのセットバックが、敷地が狭いのでなかなか困難であるというケースですとか、もともと接道幅が2m未満だというケース、それから、通路であって建築基準法の道路ではないというようなケースで、そういったものが建て替え阻害要因になっているケースですとか

・ これは道路斜線が制約となって建て替えが困難なケースで、現状ですと2階建てなのですが、狭いので建て替えで3階化したいというような場合でも、道路斜線制限がひっかかって十分な3階化による建て替えができないというケース等がございます。

・ そういう状況の中で、「協調的建て替え特例手法」の活用が有効であると考えております。

 これはどのようなものかといいますと、大規模な除却型の共同化事業、スクラップ・アンド・ビルドの共同化事業ではなくて、地権者の合意を前提に一般の建築規制を性能規定的にローカルルールに置き換えて、そのローカルルールに従って、区域内の各敷地で協調的に個別に建て替えを進める手法であります。「協調的建て替え特例手法」の例としましては、斜線制限を適用除外とする街並み誘導型地区計画、建ぺい率制限を緩和する建ぺい率特例許可、接道義務を緩和する三項道路、複数建築物を一体的に規制する連担建築物設計制度、接道義務を緩和する43条ただし書許可等がございます。これにつきましては、参考資料3の方をご覧いただければ詳しい説明がございます。

・ 協調的建て替えといったときにどのようなことを行うかといいますと、ここにございますように、高さ制限とか階数制限をしたりとか、道路境界線からのセットバック(壁面の位置の制限)、工作物の設置の制限、隣地境界線からの壁面の位置の制限ですとか防火上の構造の制限等々の規制を組み合わせてローカルルールを作ります。

・ このような「協調的建て替え特例手法」というのは、このグラフの2つ棒がありますが、上の方ですが、建て替え促進に効果があると認識している地方公共団体が65.2%に上っております。効果があると認識されているというわけなのですが、運用基準の作成が困難である、規制の根拠とか効果が不明だといったことで活用を躊躇しているというのが74.8%もございます。従いまして、こういった特例手法を用いても必要最低限の街区性能を確保できるといった科学的根拠を示すこと等によって、活用に踏み切る後押しが必要であると考えております。

・ 仮にそのような手法が活用できる、必要最低限の街区性能が確保できるといった場合でも、では、各密集市街地で確保すべき街区性能の水準というのはどの程度なのか、どの程度の水準の環境性能が確保できればいいのかといった定量的な指針が示されていない、指針を示す必要があるということが1つ。それから、協調的建て替えルール、いろいろ代替案があるわけですが、その代替案それぞれによってどのような街区性能が確保できるのかという簡易な予測・評価ツールの開発が必要である。現状で既存の高度なシミュレーション手法というものはあるわけですが、その活用というのは非常にお金がかかるということで、財政難の地方公共団体にとっては極めて高価であるということがございます。

・ そこで、再掲になりますが、今回の研究では、簡易予測・評価ツールを開発したりとか、街区性能の実態と住民ニーズを把握することによって目標水準を設定したり明確化したりとか、ガイドラインを作成するということを成果にしたいと思っております。

・ 研究の方法ですが、大きく3つに分かれております。ツール開発、実態把握、指針作成とあります。

 まず1つ目のツール開発の方ですが、防火、日照、採光、換気、通風といった各性能項目につきまして、既存の高度で専門的な予測・評価手法というのはあるわけですが、そういったものを簡易化、統合化して簡易な予測・評価ツールを開発するということがまず大きな1つ目であります。

 2つ目につきましては、密集市街地と一くくりに申しましてもいろいろなパターンがございまして、接道不良型、狭小敷地型、あと長崎とか北九州みたいな斜面地型、旧漁村型といったものがございます。それぞれにつきまして街区性能の水準を実測したりとか、その実測された水準に対して住民がどの程度満足しているのか、あるいは不満に思っているのかといったものを把握したいと思っています。

 そういったものを踏まえながら、「協調的建て替え特例手法」の技術的基準案を作成すること、密集市街地の類型ごとに街区性能の目標水準案を作成すること、最後に、協調的建て替えルールの策定ガイドラインを作成することを予定しております。

・ 調査フローはこのような工程で行いたいと思っております。

・ 今申し上げた中で、街区性能の簡易予測・評価ツールの開発イメージです。1つ目としましては、いろいろな街区形態がございますので、その街区形態に対応した街区性能に関するデータベースを、実験ですとか既存のシミュレーション手法で作成したいと思っています。そのデータベースを用いて評価項目ごとの簡易プログラム要素プログラムと称しておりますがを開発する。それを統合して、検証、フィードバックするというイメージでおります。

・ これを具体的にどのように活用するかですが、計画・設計、性能予測、性能評価の各ステージを通じて活用したいと思っております。

 まず、計画・設計のところですが、複数協調的建て替えルールの案が作成されます。その建て替えルール案に基づいて複数建物のデータ(形態、構造、配置)と地域条件を簡易予測・評価ツールに入力することによって、屋外の各測定点の環境性能の予測値を出力する。最後、性能評価として、それら出力された予測値がどの程度の水準の環境性能なのか、どの程度の機能を有する性能なのか、目標性能水準を満たすかどうかといったものを評価しながら、その評価結果をもとに地権者合意形成を図るという活用イメージを抱いております。

・ それをポンチ絵にしますと、このような形になります。左上が計画・設計で、複数の案を作ります。右上のAのところで、それぞれのデータを入力することによって屋外の各測定点における環境性能予測値というものが出てきます。それがどの程度の水準なのかといったものを、別途階級表みたいなものを用意しまして、それと照らし合わせながら性能評価をして、地権者合意形成を図る。場合によっては案の見直しを行うということを考えております。

・ 研究成果と成果の活用でございますが、冒頭申し上げたように、簡易予測・評価ツールを開発すること、街区性能の目標水準案を作成すること、協調的建て替えルール策定ガイドラインを作成すること、技術的基準案を作成すること。そういった成果を地方公共団体に提供することによりまして、建て替えルールの策定を支援したりとか住民合意形成を支援することによって、密集市街地の建て替え促進と防災性の向上を図るといったことが期待されるわけでございます。

・ ただ、こういった「協調的建て替え特例手法」ばかりで密集市街地を埋め尽くすというイメージではございませんで、事業手法との役割分担というものが必要になっていると思います。ここに書いてございますように、「協調的建て替え特例手法」の意義・役割は、あくまで「アン」(街区内部)の改善が1つ、それから民間の建て替え誘導をすること、地権者に受け入れられやすい手法であるということ、再開発的な整備手法は一定の限界があること、お金がかからない、逆にこういった手法を使うことによって地権者が事業に協力できるといったことから、メリットがあると考えております。

・ こういったことで、「ガワ」は公共主導、事業手法で集中的整備をする、「アン」では「協調的建て替え特例手法」を使って民間の建て替え誘導をするという役割分担を考えております。

・ 最後に実施体制ですが、政策的な研究ですので、国交省の住宅局と密接に連携して実施したいと思っております。地方公共団体、都市機構、それから環境工学の専門家の方々、プログラム開発技術を有する民間企業の方々と連携したいと思っております。

 以上でございます。

【主査】 では、委員の皆様、御発言をお願いします。

【委員】 大変重要なテーマを扱っていただいていると思いますが、1つは、協調的建てかえルールを支援するということを考えたときに、定量的な環境指標が十分ないためにこれが進まないというふうに基本的には考えておられるわけですね。そういう側面もないわけではないのですが、それ以外の要件もたくさんあるわけですね。つまり、環境の指標があるかないかということよりも、多分、例えば43条のただし書きのようなものを根拠にしてこういうことをやらなければいけないというようなことが、ポリシーといいますか、どういうまちの将来像をつくっていくのかというようなことを支援するような法制度というのが必ずしも全体として体系的に整っていないというようなことが根本的にあって、宅地政策といいますか、そういうことがないというのがまずあると思うのです。例えば、協調的建てかえをやっても、その後どんどんそのまちがよくなっていくということもあり得るが、また同じことが繰り返されていくというような、そういうまちの将来像も考えられ、場合によっては、このただし書きが使われていくことによって悪くなっていくということも現実にはあって、そこがやはりポリシーという観点から見ると非常に弱いといいますか、方法的にも弱いし、そういうものを体系的に取り組むというようなことができていないというところが根本的にあるように思うのです。そういうことに対して定量的な指標という、非常に技術的なもので取り組むというところが、本当に宅地政策をきちっと体系化していくというような方向に対して貢献していくことになるのかどうかという、そのあたりが1つは気になります。

 もう1つは、現実の協調的な必ずしも建てかえとは限りませんが、まちづくりの議論の中で、例えばこういうものを取りまとめていくコーディネーターとか、あるいは特に細街路とか袋路の始端部の住戸の同意を得るというのは根本的に難しいわけですね。そういう問題は、環境の定量的な指標を出したところで解決しない。そこがネックになって進まないというのはかなり今までの経験でわかっていて、そういうことに対してこの研究がどのような位置づけになるかというのをもう少し明確にしていただければと思います。

 それから、私は京都から来ていますので、京都の特殊性かもしれませんが、町屋の保全や再生の議論の中では、例えば43条のただし書きで、接道不良の場合、ただし書きの適用の対象になるかどうかということを判断した上で、建て替えないで、対象を改修して保全するとか再生するとか、そういうことが現実に言っている意味わかりますかね。ダミーの建て替えの申請を出して、接道条件だけについての適合性というものを審査会で判断してもらって、実際には建て替えないでそのことによって融資がついたりするわけですね。かつ、接道条件についての一定の判断が下されるということで、そこの保全、再生をするとか、そういうことも現実には保全、再生の現場では行われているのです。そんなことも含めて、建て替えだけではなくて、密集市街地の問題の中には、改修とか再生とか、そういうものも含んだ事業が現実には進んでいるということも含んで検討いただければと思います。

【国総研】 ありがとうございます。3点あったかと思います。

 まず1点目のお話ですが、密集市街地の再生産を招くのではないかという御懸念ではないかなと思いますが、公共団体の方もそういった懸念をしているところも確かにございます。また、マスタープランがないということもあろうかと思います。そのような場合は別途プログラムを立てて、各公共団体で密集市街地の整備方針みたいなものを立ててやっていくべきではないかと思います。

 2点目の、行き止まり道路の始端部の部分の地権者合意が得られるか得られないかみたいな話も承知はしております。今回の研究というのは、あくまで特例手法を適用するに当たって、いろいろ条件があるわけですが、その条件を判断するときに、そして建て替えルールを作るというときに具体的に規制をどのようにかけるかといったときの根拠がなかなか分からないという声に応えるものでございまして、実際にそれを適用できそうだということで、適用して当てはめた場合に、地権者間で有利、不利が生じる。その調整というのはまた別途考えるべきことだと思っておりますが、今回の研究の中でガイドラインを作成しますので、その中で対応できるように検討できればなと思っております。

 最後に、建て替えだけではなくて、改修ですとか保全ですとか、そういったものも密集市街地の中ではあろうかと思いますので、御意見を踏まえながら検討していきたいと思っております。

【国総研】 ちょっと補足させていただきたいと思うのですが、○○委員が最初におっしゃった、建て替えの全体イメージというのでしょうか、マスタープラン的なものがない段階でということ、本当にそういう面があろうかと思います。今回は、やはり密集市街地の対策としてのワンパート、研究所としてできる1つの部分の研究の提示ということで、全体としては、密集市街地問題は国の大きな施策でございますので、担当部局が、先ほど進捗率が悪いということも御説明したのですが、今後どうするかということを、恐らく今年、来年ぐらいで、どのように持っていくかということが、行政的施策としての検討が同時並行的に進むと思います。そちらの方がまだ私どもでここで御説明できないということで、大きな密集市街地のあり方論についての御説明が十分できないという中で、先生のような御指摘も出てくるのかなと思っておりまして、そこは住宅局の方と既に十分お話し合いをさせていただいておりまして、今後、政策面とどう絡んでいくかということで、引き続き連携をとっていきたい。その中で、そういう御指摘についても検討して参りたい。

【主査】 簡単にお願いします。

【委員】 要するに研究が3つあると。ツールの開発と実態把握、どちらも分析的作業ですから、やればできるのですが、3番目のガイドラインの策定というのは、法的な制限の緩和とか、そういうものを含む政策的な決断ですね。分析から決断を導くプロセスというのがちょっと説明にはなかったので、私にはわかりにくかったのですが。どういうロジックをつくるかですね。

【国総研】 「協調的建て替え特例手法」、先ほど5つばかり触れましたが、その制度自体は現時点でありますので、それをどのように使ったらいいかという、分かりやすく説明するとマニュアルみたいなものだとお考えいただければと思います。ガイドラインと申していますが、マニュアルみたいなもので、その中でどれくらいの目標水準を目指して整備していけばいいかとか、あと、もうちょっと端的に言いますと、簡易予測・評価ツールをどのように使ったらいいかも含めて、そのガイドライン、マニュアルを作成していきたいと思っております。

【主査】 他にございませんでしょうか。

 では、○○委員、また追加がございましたら、どうぞ。

【委員】 追加というよりも、最初の話は、私はマスタープランというふうに必ずしも考えていなくて、法制度の体系そのものの問題点があると思っていて、そういうものの改善に対して、ここでやられようとしている事柄がどういう位置づけになるかということを全体をやっていただきたいということを言っているのではなくて、位置づけを明確にしていただきたい、そういう趣旨で申し上げた。3つともそういうことです。ここでやろうとされていることが全体の密集市街地問題の解決に対してどういう位置づけかということを、より広い視点から位置づけていただきたい、そういう趣旨で申し上げた次第です。

【主査】 ごもっともな御指摘かと思います。

 1つ私の方から質問したいのですが、防火、日照、採光、通風、換気と5つございますよね。通風、換気というのがわからないのですが、通風というのは確かに市街地の性能が決めるのですが、換気は建物の性能で、どうしてこれが必要なのか。

【国総研】 自然換気というイメージでおります。

【主査】 それは通風という言葉で代表できるということですかね。

【国総研】 通風というのは、どれくらいの風速で風が吹くかということで、換気というのは、ある一定の評価空間の中で風がどれくらい上空風のフレッシュエアと入れかわるかといったものをイメージして、分けて言葉を使っております。

【主査】 ほとんど理解できないですね。

 委員の皆さん、御意見ございませんでしょうか。

【委員】 とても重要な研究だと思います。私、この研究を具体の市街地というかまちづくりに生かすためには、やはり住民の合意が一番大事なところだなと思うのですが、基本的には、なぜ密集市街地の整備がなかなか進まないかというと、やはり同じ場所に住んで、安全に住みたい、お金もできれば払いたくないというようなところがあると思うのです。今ある協調的建てかえのルールをさらに動かすための仕組みづくりというふうに理解したのですが、やはり「アン」と「ガワ」のバランスといいますか、「アン」をやることで「ガワ」もよくなる、そしてあなたたちの安全が守れる、なおかつコストは、ゼロとは言いませんが、非常に低廉なコストで対応できる、こんなストーリーがもしできるとすれば、密集市街地の活性化といいますか改善が急速に進むのではないかなと、こんなふうに思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

【国総研】 ありがとうございます。

【主査】 よろしゅうございますか。

 それでは、時間が来ておりますので、委員の皆様、採点をお願いします。これは、実施か一部修正か再検討か、そこだけはっきりさせればよろしいわけですか。

【事務局】 総合評価としてそこが大事になりますので、そこを書いていただいて、あと下の段の方にコメントなりを書いていただければと思います。


(事前評価シート回収)


【主査】 このテーマの重要性は皆さん十二分に認めておりまして、先ほどの皆様からの御意見によりましても、「実施すべき」か「一部修正して実施すべき」か、私は基本的に「実施すべき」でいいと思うのですが、ほんの細かいところで、役所の言葉で「一部修正して」というのは結構大幅修正を意味しているわけでございますよね。ですから、小さな言葉の問題は、「一部修正」とはしないで、皆さんの御意見をいただくと、「実施すべき」という大枠でよろしいかと思いますが、いかがでございましょうか。はい。ありがとうございます。では、そのように進めさせていただきます。

【国総研】 ありがとうございました。

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B 住宅種別に応じた省エネルギー評価法の開発

【主査】 それでは、次は「住宅種別に応じた省エネルギー評価法の開発」でよろしいわけですか。

【国総研】 「住宅種別に応じた省エネルギー評価法の開発 住宅の建て方や新築・改修に応じたエネルギー消費量による評価法の開発」というタイトルで、新規事項立てとして3年間を想定しておりまして、住環境計画研究室より説明及び対応をさせていただきます。よろしくお願いいたします。


〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕


・ まず研究の背景でございますが、京都議定書目標達成のため、エネルギー消費量の実質的な削減量の定量的評価というのが求められております。しかしながら、住宅においては躯体性能断熱性能ですが住宅設備を総合的に扱ったエネルギー消費量の定量的評価法というのがこれまでなかったという背景があります。

 そこで、つい最近の平成21年4月の省エネ法改正によりまして、新築の戸建て住宅を対象としまして、躯体性能に加えて設備も込みの総合的なエネルギー消費量の評価が導入されたということになりました。こちらは住宅全体での消費量ということで評価するということになっております。ただし、まだ他に新築の集合住宅や既存住宅というのが膨大なストックがございますので、やはりこちらの方も対応していかなければいけないということがありまして、消費量による省エネルギー性能の評価法ということで同じように考えていかなければいけないのではないかという背景でございます

・ 研究の目的でございますが、住宅のエネルギー消費量の削減に向けまして、集合住宅や既存住宅の改修にも対応できる、エネルギー消費量による総合的な省エネルギー評価法を開発し、省エネルギー施策に反映するということでございます。

 この図を見ていただきますと、内容ですが、現状というのが左上にございまして、戸建て住宅の新築でその評価法がある。実際に新築の集合住宅ということになりますと、主な構造が違ってくるとか、例えば断熱材というのが住戸によって状況が変わって、その性能が変わってくるということとか、あるいは住まい方という、世帯の構成なども変わってくるということでございます。

 続きまして、下の方で、これは戸建ての絵ですが、改修の場合は、新築との違いは、まず、全体を評価するというよりも部分の設備の改修ということで、部分と全体の関係をどうとらえるかということでまた難しくなってくるということと、あとは、集合の改修ということもさらに視野に入ってくると、いろいろとやることが多いという話でございます。

・ 研究のスケジュールとしては、今申し上げたように、大きくは2つ、3年間のうちの、まずは新築の戸建てに続いて集合住宅がすごく急がれているということで、これは22年度のうちに何とか完了させる。改修については、先ほど申しましたような、評価の枠組みを新たに考えなければいけない部分と、集合住宅の改修まで視野に入れると、早目から2年強をかけて行う。そして、それぞれ完了した時点で省エネ基準等への反映を視野に入れていくというスケジュールで考えてございます。

・ 具体的な研究内容に入る前に、その前提として、住宅プランや世帯構成・生活スケジュールなどの住まい方と総合的なエネルギー消費量の関係について説明させていただきたいと思います。

 まず、住宅プランと住まい方の図が載ってございますが、住宅プランというのは、床面積とか間取りが違いますと、例えば暖冷房、照明、換気エネルギーというのが変わってくるということが影響します。戸建て、集合、それぞれまた面積、間取りが違ってくるということもまた影響してくると思います。

 続いて住まい方についてですが、世帯構成・生活スケジュールというのが、例えば4人世帯、2人世帯と変わってくると、こういったプランとスケジュールが変わります。例えばこれはある調査の事例ですが、上は東京の戸建て住宅の消費の設備ごとの割合で、下は集合住宅の設備ごとの割合で、その割合が変わってくるのと、全体の消費量そのものも戸建てと集合で違ってくるということで、単に戸建ての方法をそのまま集合に適用するわけにはいかなく、要素ごとのバランスをしっかりと考える、前提プラス計算方法という考え方が、住宅プランや住まい方の前提が非常に重要になるということでございます。

・ これを踏まえまして、研究内容ですが、まず大きく1つ目、新築集合住宅についての評価法の開発ということで、まず@です。住宅のエネルギー消費量に基づいて簡易に評価するためには、躯体・設備性能に加え、住宅プラン、生活スケジュール等、今申しました住まい方の設定が必要ということでございます。

 そこで、構造や住宅規模、間取り、世帯、住まい方など、住宅エネルギー評価と関連が深いと思われるパラメータに注目しまして調査を行って、類型化を行うということを広くやろうと思っています。大きな違いとしては、例えば省エネルギーに関することとして、戸建てと集合で暖冷房負荷の計算方法が違うとか、あるいは周辺の断熱性能のユニットごとの考え方が違うとか、そういうことで戸建てと集合での性能が違う。あとは、世帯は、戸建ての場合は例えば4人を標準として考えていいと思うのですが、集合の場合は、賃貸も含めまして4人、2人、単身といった幾つかのパターンに分かれるという、バラエティーがあるということでございます。

・ こういった調査を踏まえまして、プランと生活スケジュールというのを、例えば間取り、あるいはスケジュールということに大きく要約して集約しまして、幾つかのタイプで新築集合住宅についての評価用モデルというのを次の段階で作成いたします。

・ これらの段階を踏まえまして、最終的にB、集合住宅の省エネルギー評価法を開発するということでございまして、これは実証実験により計算法、評価法というものの実際の妥当性を実測、例えば右の写真は暖冷房機器ですが、これを実際に運転させてみて、いろいろな気候のもとで実働の効率を見るということで、メーカーカタログの定格効率ではない、本当の実際に使った上での消費量の違い、影響というものをちゃんと評価法に反映させるということでございます。これをツールとして簡易に使えるような形にまで何とかしたいということでございます。これが大きく1つ目の、新築集合住宅のエネルギー消費量に基づく評価法の内容でございます。

・ 続きまして、既存住宅の改修のエネルギー消費量に基づく評価法でございますが、こちらはまず@、住宅・設備機器の年代別の調査と類型化という作業を行います。これは、実際に既存住宅の場合は、改修をするのが、全体というよりも部分の場合が多分多うございますので、それまでの既存の状態を把握する必要があります。ただ、実際に住宅の場合は、そこに住んでいる方がいらっしゃいますので、建築年代がわかるということで、そこから躯体の性能、設備の性能、両方ともおよそ推定をする、そのための年代ごとのいろいろな住宅の設備と躯体性能の調査を行って、それを類型化するという作業を行います。

 それを踏まえましてA、消費量検討モデルを新築と同じようにやるのですが、これは、ただ、タイプとして3つに分かれていますが、これも今度は年代別にやらなければいけないということで、作業が新築よりもかなり多くなるということでございます。

・ このような前提作業を踏まえまして既存住宅改修の評価法を最終的に開発することを想定しておりますが、これは年代別に考えますが、新築との違いで多分わかりやすいと思うのでこんな図をつくったのですが、新築では、躯体の性能、設備の性能、全部それぞれきっちり評価していって、合計の消費量を出しまして総合的に評価をする。それに対して、右の方の改修につきましては、改修する部分と改修しない部分というのがございます。改修する部分というのは新築と同じように評価ができる部分が多うございますが、しない部分については先ほどの調査に基づいて推定していかなければいけない。ただ、改修する部分としない部分というものの組み合わせをバランスよくやらないと、総合的な評価をするときに有利、不利というのが多分生じてしまうということで、ここの部分をしっかりと精度よくやっていきたいと考えています。

・ 実施体制としては、国土交通省住宅局、経済産業省と情報共有、連携をしまして、独立行政法人建築研究所、北方総研、大学等と共同研究等、それから民間企業等と情報交換などをしながら効率的に進めていきたいと考えております。

・ 以上のような進め方を踏まえて、最終的に出てきた成果は、エネルギー消費量に基づく総合的な省エネルギー評価法を広く住宅種別に応じてつくれるということなのですが、これを今後の省エネルギー基準や税制優遇措置等の対象範囲を拡充する際に活用していきたいと考えております。

 以上でございます。

【主査】 ありがとうございます。

 それでは、御質問、御意見がございましたら発言をお願いします。

【委員】 時間が必ずしも長くなかったので、私の理解が十分でなかったところがあるのですが、これは何のための評価法なのでしょうか。というのは、要は住宅におけるエネルギー使用の改善という、運用改善をするためのものなのか、建物という箱の持っている性能の評価をするためのものなのか。一口にエネルギーの使用量の評価方法といってもいろいろあると思うのですが、そこはどういった目的の評価方法なのでしょうか。

【国総研】 これは新築の戸建ての省エネ評価法が省エネ法でできたということでございます。これは、ある基準の想定している総合的な消費のレベルというものの例えば0.9掛けとか、その部分に対して例えば何年後までに達成できるか、クリアできるかということで。

【委員】 では、逆に、誰がユーザーなのでしょう。例えば住宅にお住まいの方がこれを使って、自分の家はエネルギーを使い過ぎだなとかいって反省しながらやっていくための評価方法なのか、それとも政策担当者が何か考えるのか、とにかく、誰がユーザーで、何を目的とした評価法なのでしょうか。

【国総研】 この評価方法の対象ですが、住宅を建てる方を対象としています。住む方ではなく建てる方です。と言いますのは、住む方というのは、1,000人いたら1,000通りの住まい方があるので、そこら辺をこうと決めるのは難しいということなので、そこら辺はデフォルトで、こういう住まい方をするということをした上で、どういう設備を入れるか、どういう躯体を入れるかというものを評価しようという体系になっています。

【主査】 今の○○委員の御質問は的確な御質問だと思います。省エネルギーというのは、何らかのアクションをして、どれだけエネルギーが節約できるかということなのですよね。これは、今のお話ですと、シェルターか機器かライフスタイルか、3つしかないのですよね。今おっしゃっているのは、シェルターを例えば断熱化したらどれだけエネルギーが節約できるか、そういう評価法をつくろうということなのですか。

【国総研】 シェルターと機器をどうしたらいいかという評価方法で、ライフスタイルはおいておくという評価方法です。

【主査】 要するに設計基準をつくろうということなのですか。省エネ型住宅の設計基準を。

【国総研】 設計基準といいますか、建物、設備も含めてどういうものを建てれば省エネになるかという基準をつくって、それを税制優遇措置とかに反映させていきたいと考えております。

【委員】 実際に国の政策として住宅にかかわるエネルギーの使用量を減らすことは急務なのですが、画一するのはやはり運用……、個性的とおっしゃったのですが、千差万別、ライフスタイルでいろいろあるのですが、そこのぶれ幅が大きいし、そこはコントロールのしようもないしということですし、また、特に既存建物については、ねらっていらっしゃるような改修とかはすごくコスト対効果も低くて、むしろまずは運用改善にどう切り込んでいくかというところがチャレンジングな領域だし、意義もあるところだと思うのです。そこではないように理解したので、やや残念に思っております。

【委員】 新築戸建て住宅では既にエネルギー消費量の評価が導入されているので、それとは違うものを対象に研究を行うということなのですが、新築であって既存であっても、戸建てであっても集合住宅であっても、評価システムは論理的には多分同じであると私は理解しています。集合住宅だから、改修だからといって、計算手法そのものが違うわけではないと思うのです。入力データは違うかもしれませんが。また、気になったのは、年間予算が6,000万円であり、こんなに本当に必要なのかというところですが、どういうふうにこの予算を使われるのか、説明をしていただければと思います。

【国総研】 予算については資料のBのことと思います。これは3年間ではなくて、新築と既存それぞれでということで、年度ごとにはもう少し少なくなります。年度ごとでは3つに分かれ、3年間になるので、もう少し少なくなりますが、予算としては基本的に、実際の使い方も踏まえて実証していきます。先ほどの実証実験というのが、実際に実在の建物でいろいろな機器を導入して、暖冷房の機器だけではなくて、その他の照明から何からすべてを集合住宅の生活スタイルそれぞれに応じて全部再現して、消費量を回路別にはかっていくというところに、新築でその実験をやったときも資金がかなりかかっておりまして、その辺で見込んでいるということでございます。

【委員】 今の説明ですと、新しい住宅を建設する費用も含まれてしまうというように解釈できますが、その場合ですと、逆に6,000万では足りないという気がするのですが。

【国総研】 新しい住宅というよりは、その住宅の中に機器を導入するという、その機器の部分ということです。設備と。

【委員】 住宅は誰がどう用意されるのですか。

【国総研】 質問を戻らせていただきますが、先ほどの質問ですと、ライフスタイルという、居住者の使い方というのがあって、そこら辺だけを変えれば、あとはエネルギー消費量の計算方法というのは今までと同じものが使えるのではないかというような質問だったと思うのですが、いろいろな住宅設備がありまして、ここに出ているのは例えば給湯器なのですが、どれくらい使うかによって、エネルギーを計算する方法自身も変わってくるというような機会が多分にございますので、そこら辺……

【委員】 それは新築の戸建て住宅で導入されている評価法とは考え方も違うようなものなのかどうか、そこがポイントだと思うのですが。

【国総研】 端的に言うと、新築の戸建てで導入されている、4人世帯で今やっているのですが、世帯数が違うと計算方法というのは変わってくると考えております。

【主査】 今、世帯人数が変わると変わるとおっしゃったのですか。世帯数が変わると、とおっしゃったのですが。

【国総研】 世帯人数です。済みません。

【主査】 確かにそれはそうなのですが、そこまで細かく方法を組み上げたとしても、さっき○○委員も私も言ったのですが、もっと大きな要因で、ライフスタイルのばらつきというのは物すごく大きいわけですね。だから、日本全体を省エネというのを考えた場合に、そこのところを置いておいて、施策として国としてはこれだけCOを減らさなければいけない、そういうときに活用できるような手法になるのかどうかがわからないのですが。

【国総研】 おっしゃるとおりで、先ほどのライフスタイルの振れ幅というのは非常に大きいので、そこら辺もちゃんと、例えば居住者の啓蒙等も含めてエネルギー消費量は削減していかなければいけないと思っておりますが、ただ、省エネ法の法体系としましては、居住者のところに踏み込むことは現状ではちょっと難しかろうということで、この研究内容としましては、居住者の住まい方というのは最初から一定のあるものだということで計算するということでさせていただいておりますが、今後、ライフスタイルが変わったらこうなるとかいうような検討も実施していかないといけない課題だと考えております。

【主査】 他に御意見ございませんでしょうか。よろしゅうございますか。

 それでは、委員の皆様、評価をお願いします。


(事前評価シート回収)


【主査】 大半の委員が「一部修正して実施すべき」という形になっておりまして、申し訳ございませんが、そういう形で。それから、委員の皆さんのコメントを見ますと、研究の意義が十分理解できないとか、もう少し再整理して枠組みを明快にしてほしい、そういう感じの御意見が多いようでございまして、委員の皆さん、「一部修正して実施すべき」という形で評価したいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。それでは、それでお願いします。

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C 建築実務の円滑化に資する構造計算プログラムの技術基準に関する研究

【主査】 続きまして、3つ目の「建築実務の円滑化に資する構造計算プログラムの技術基準に関する研究」でございます。よろしくお願いします。

【国総研】 それでは、建築研究部構造基準研究室より説明させていただきます。題名は「建築基準の円滑化に資する構造計算プログラムの技術基準に関する研究」とさせていただいております。


〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕


・ まず、研究の背景につきまして、2枚目のスライドを用いまして説明させていただきます。

 今日の構造計算の実務では、ほとんどの場合で構造計算プログラム、いわゆる一貫処理プログラムが使用されております。平成17年の構造計算図書偽装問題は、この構造計算プログラムの出力の偽装であったわけですが、そのために、平成19年の基準法改正では、プログラムの大臣認定制度が創設され、プログラムによる構造計算の信頼性を確保するとともに、入力条件や計算過程の改変を防止する措置がとられております。認定によりプログラムの信頼性が事前に保証されれば、その分、本来でありますと、建築確認審査業務を円滑化することが可能となります。

 しかしながら、現状においては、必ずしもプログラム認定の効果を十分には生かし切れていない状況にあります。その理由といたしましては、構造計算プログラムを作成するには、計算手順を詳細に定めていく必要がありますが、現状の構造基準においては、モデル化等の方法を構造設計者に任せている部分が多いため、プログラムにおいてもいろいろな判断の入り込む余地が多分にあり、そのために、個々の確認案件ごとに慎重な審査が必要となっていることがあげられます。

 本研究では、今よりは技術基準をより詳細に定めまして、プログラムの自動計算で取り扱える範囲を広げて、確認審査の円滑化につなげていきたいと考えております。

・ 本研究の周辺状況につきまして、3枚目のスライドを用いまして時系列的に説明させていただきます。

 プログラムの大臣認定制度は平成19年度に創設されまして、その後半に1件目が認定されております。その間、国総研といたしましてもさまざまな技術支援を行ってまいりました。現状のプログラム認定においては、先ほども御説明したとおり、モデル化等の詳細が必ずしも標準化されていない部分があります。また、現状では構造種別もRC造、S造に限定されております。

 一方で、このスライドの一番下にありますが、平成20年度より、住宅局主導で建築基準法に基づく構造基準の合理化のために建築基準整備促進補助金事業が開始されております。これによって、RC造の接合部等の基準がより明確化される予定でおりますが、その成果が大体平成22年度あたりには出てくる。従いまして、本研究におきまして、そういった補助金事業の成果も活用しながら、スライドで示しております黄色い部分につきまして検討を行いまして、最終的に技術基準の原案を作成して、認定制度の充実に反映させていきたいと考えております。

・ 以上に示しました研究の背景等のもとに本研究の目的を4枚目のスライドのように設定しております。

 本研究では、建築構造のモデル化方法や自動計算フロー等、プログラムが従うべき構造計算の技術基準を詳細に定めることといたします。これは、設計者によって高度な工学的判断がなされることを前提とした現行の構造基準に対し、プログラム開発に適した技術基準を検討するものであります。

 そのために、スライドの下半分にありますように研究内容を設定しております。4番目は技術基準の取りまとめになっておりまして、上3つにつきまして具体的に次のスライドから説明させていただきます。

・ まず、研究内容の1番目であります。建築物は多種多様でありますので、モデル化等を詳細に決めるには、ある程度範囲を限定する必要があります。そのために、架構形式等を幾つかに分類いたしまして、現状でばらつきの大きな要因となっております基礎ばね、非構造部材の取り扱いを明確にする検討を行ってまいります。また、適用範囲を決めるに当たっては、ある程度の範囲で不整形性を考慮できるようにします。現在、プログラムの構造計算で問題となっている不整形のパターンをスライドの下半分に示しております。これらの検討においては、同時に、現在プログラム間で生じているばらつきの要因を究明いたしまして、その対応策も計算フローに反映していきたいと思っております。

・ 6枚目のスライドでありますが、このスライドは研究内容1につきましてもう少し具体的に検討の内容を示したものであります。

 不整形性の例といたしましては、立面形状のほか、部材、平面形状についても示しております。ここに示しますように、現状でのばらつき要因を解消するため、基礎ばね等の取り扱いについて、自動計算で扱える範囲において、技術基準を明確に示すということにしたいと思っております。しかしながら、本検討後においても、やはり自動計算のみでは安全性が担保されず、別途、建築確認時の詳細な検討が必要なものは残されるものと考えております。

・ プログラムの自動計算のみで安全性の検証が可能なものと、建築確認時の詳細な審査が必要なものの関係を示したものが、このスライドのポンチ絵となります。本研究によりまして、この黄色い部分を今よりはもう少し拡張していこうと考えております。

 研究内容2では、より広い範囲の建築物に対しプログラムの自動計算で取り扱えるか否かを検討いたします。架構形式等いろいろなパターンが存在しますので、作業量も相当の量になると考えております。プログラムの技術基準をより実用的なものとするには、当然ながら建築実務の面からの意見も取り入れる必要があります。

 そのために研究内容3を設定いたしまして、設計者、プログラムメーカー、建築確認担当者の意見聴取等を行う予定でおります。

・ 活用効果であります。本研究の活用効果でありますが、プログラムが従うべき構造計算上の技術基準を明確化することでプログラムの利用効果を向上させるとともに、これにより民間における構造計算プログラムの開発を促進できると考えております。その結果、建築設計や確認審査業務等に要する時間を削減いたしまして、民間建築活動の円滑化に寄与できるものと考えております。

・ 9ページ目は研究成果をイメージで示したものであります。本研究によりまして、プログラムが有する理想的な形態に現状をより近づけようと考えております。プログラムの認定範囲を広げまして、自動計算でできる範囲を現状よりは広げることを目標としているということでございます。自動計算でできる範囲では、構造計算の信頼性の確保と審査の簡略化の両方を期待できると考えております。

・ 本研究の年度計画でありますが、研究内容1と2につきましては相互にフィードバックを行いながら進めます。また、研究内容3は随時これらと並行して行い、設計者、プログラムメーカー、建築確認担当者等に意見聴取を行いまして、技術基準の実用性が確保されるようにいたします。

・ 最後に、研究体制について説明いたします。国総研が真ん中にありますが、建築基準作成部局であります住宅局建築指導課とは緊密に連絡を図りたいと考えております。共同研究の相手先としては、建研、JSCA等の民間団体、数値解析を専門とする大学の先生方を考えております。一部の作業につきましてはコンサル等への外注を考えております。

 以上で本研究課題の説明を終わりにいたします。

【主査】 ありがとうございました。

 それでは、委員の皆様、御発言をお願いします。

【委員】 認識が間違っていたら○○委員に後から修正していただきたいのですが、多分いろいろな行政上の御事情で「構造計算プログラム」というタイトルが入ってきていると思うのですが、その点私は疑問がございます。むしろこの中で取り上げていらっしゃる、複雑な構造物をいかにモデル化するかとかいった点や、あるいは設計者がどのように構造物をモデル化して構造計算しているかという点がわかりづらいところがあるので、それをどう見える化するかというあたりは本質的な課題だと思いますので、そこはやるべきだと思うのですが、ただ、ここでされているように、計算プログラムそのものの機能向上をしても、これは賽の河原に石を積むようなことではないかなと思います。
 といいますのは、今、構造設計の現場で起きている課題というのは、計算プログラムそのものというよりは、それを適切に使いこなせる人材や、出てきた結果を工学的に判断できる人材の絶対数が問題で、やはりその育成や確保というところに多分行政的な課題があるかと思うのです。それに加えて、現在の計算プログラムは、私がにわか勉強でさせていただいた4年前の状況ですと、少なくとも大臣プログラム認定というのは、あるパラメータ、つまり入力値を与えて、その出力が適切であれば認定されていくというのを基本的な論理にしていて、ソースコードまで、アルゴリズムまでさかのぼって検証しているわけではありませんので、その点の中途半端さというのがいろいろな意味で課題があるように思うのです。そういうわけで、私は、課題の設定そのものが、いろいろな御事情があるように推察はするのですが、見直すべきではないかなと思います。

【国総研】 まず、人材とプログラムの関係でありますが、やはり確認審査の業務量を考えますと、ある程度はプログラムの自動計算でやっていかないと十分にこなせない部分がある。この課題でも、すべての建物を自動計算でやることは考えておりませんで、今よりは少し広げた範囲でモデル化を決めたい。そうしますと、建築確認業務がオーバーフローしないで、ある程度は処理できる。特殊なものについては専門家にちゃんとした構造計算を見てもらって、建築確認時に設計者と1対1の対応で見てもらいたいと考えております。したがいまして、すべての建物についてプログラム処理できるとは考えておりませんで、今よりは範囲を少し広げてやりたいと考えております。

 あと、入力と出力の関係でありますが、これは非常に悩ましい問題で、ばらつきの問題がありまして、同じ建物について解いても実はプログラムによりばらばらな値が出てしまうというのが現状です。したがいまして、この研究でモデルの標準化を検討して、プログラムの準拠すべき標準を決めたい。当然ばらつきはある程度許容されるものでありますが、余りにもばらつきが大きい部分については標準モデルを参考として今よりはばらつきを抑えたいと考えております。

【委員】 2枚目を見せていただきたいのですが、これは質問というよりもコメントでございます。2枚目の右側の下のピンクのところですが、こういうお考えが基本的にあるかどうかというところを再度確認したいのですが、私は地盤の方をやっていますので、こういう発想では安全性は担保されないなと私自身は思っていまして、やはり専門家の力がどこかに介在しておくということが安全性を担保するので、確かに実務の円滑化という問題と多少競合するところはあるにしても、これで本当に安全性が担保されますかというところをもう一方でちゃんと議論しておく必要があるのではないかというふうには思いました。

【国総研】 今の御質問ですが、多分この2ページ目のスライドの右下の部分の記載内容についての理解の仕方が違うのかなと思います。今まで、建築基準やその解説は、専門家が介在しながら、設計していく上で必要な最低限の情報を提供してきたということなのですが、それらを計算プログラムに組み込みますと、当然、計算プログラムの結果に対して専門家が常にウオッチしていないと、ちゃんとした結果が出てこない場合があるという問題がありました。そのため、大臣認定プログラムを使ったとしても、使う側も審査する側も専門家がちゃんと見なければいけないわけなのですが、もし計算プログラムの適用対象を少し絞って、しかも非常に簡単化した使い方でも構わないような場合であれば、技術基準の適用をもうちょっと細かく決めてあげることによって、性能があまり変わらず十分安全なものがつくれると考えています。

 例えばピロティーの建物があります。1階が駐車場になっているものがたくさん壊れています。今、建築基準ではどのような扱いをしているかというと、ピロティーのものはこういうことに気をつけなさいというようなことが書いてあります。それよりも一歩進んだ細部については専門家が判断することになっているのですが、もしピロティーというものをやや狭い使い方でも、こういうふうにプログラムの上で定義できますよということを決めてあげれば、それほど難しい工学的判断をしなくても、ある種のピロティーについては自動的に計算プログラムで扱えます。実際に計算プログラムは構造設計の確認審査の中で70%か80%か、ほとんどのケースで使っているわけですね。その中で、今1件目だけ大臣認定されていますが、あと3〜4件が現在大臣認定のための性能評価中です。これらが大臣認定されると、全体の確認審査の中で60%、70%は大臣認定プログラムを使用して行われることになります。ただし、どうしても今ご説明したみたいな形で、専門家がより多く介在することを前提として大臣認定プログラムが認定されているので、確認審査の7割ぐらいの建物に対しての大臣認定プログラムが使われたとしても、1割ぐらいは非常にシンプルに審査できるかも知れませんが、残りの6割ぐらいは専門的な知識がある人が慎重に見なければいけない状況となることが予想されます。それに対して、ここでの検討をすれば、つまり、少し詳細化して技術基準を書いてあげて、それを計算プログラムに載るように書いてあげれば、今1割ぐらいといっていたものが、2割、3割と、比較的当たり前の建物について審査がシンプル化できるのではないか。そのためにはこのような研究が必要ではないか、そのように考えております。

 長くなりまして申しわけありませんでした。

【委員】 そういう意味では研究の重要性はもちろん十分あると思います。つまり、評価する人に非常に多大な労力がかかるから、画一化できるところはやって、モデル化がはっきりしているところは画一的な方法でそれをソフトに乗せる。それはチェックなしでも認める。だけど、千差万別の建物があるから、画一化できない部分は当然あるではないですか。その線引きなのですよね。つまり、こういうソフトが生まれると、設計者はやはりソフト頼みになるから、その中で扱っていないものは結局はつくれない。しかも、扱える範囲がやはり限定的で、みんなが合意できるようなモデル化が可能なものしかきっと扱えないと思うのですが、そうでないものもたくさんあって、そうでないものは、結局はそういうものを使っている建物が排除されていく方向に向かうのではないか。つまり、設計者はソフト頼みですからね。それを一番恐れるのです。広げれば広げるほど画一化できるが、そうするとリスクが増えるでしょう。本来広げられないところまで広げようとすると答えにばらつきが起こるから、ある程度限定しないといけないではないですか。今度、限定すると、それをはみ出すものが抑制される、つくることが自制されるという、そのジレンマを感じるのです。だが、この研究の重要性は感じます。

【国総研】 私たちは行政の方の研究機関なので、スタンスが違うということしかちょっと申し上げようがないのですが。

【主査】 今、認定プログラムはいっぱいございますね、大臣認定の。私、よく事情は知らないのですが、これがもしできたとしたら、今ある現行の大臣認定プログラムというのはどうなるのでしょうか。

【国総研】 現在、大臣認定プログラムは1社のものだけあります。NTTデータ。全体のほんの数%以下しかシェアがありません。実際にこのプログラム(NTTデータ)を使って申請されたものの1割が図書省略と称する大臣認定プログラムとして使われていて、あとの9割は一般の非認定プログラムと同じ扱いとして使われているのです、性能評価を受けていても。今後について考えているのは、他のメーカーも大臣認定を受けてきますが、性能評価はプログラム全体について行う。その一部分について、この範囲だったらおおむね間違いがないという、つまり少々のバグが起こっても間違いがないというような範囲を決めて、その部分を性能評価を受けたプログラムの大臣認定利用の範囲とし、その外の範囲は性能評価を受けたプログラムの大臣認定以外の使い方というような扱いにしたいと考えています。そのコアの部分(大臣認定利用の範囲)を少しずつ広げたいと思うのですが、今すぐはなかなか広くは採れないので、こういう研究も通しながら、別途行政的にも検討はしております。そのコアの部分を少しずつ広げていって、例えば10分の1ではなくて10分の3とか4ぐらいまでそういうコアがつくれればいいなと考えています。ですから、10分の6の部分については、さっき○○委員がソフト頼みとおっしゃいましたが、そうではなくて、性能評価を受けたプログラムを有効に使いながら、より複雑なものにも使っていただけるのではないかなと考えております。

【主査】 委員の皆様、ほかに御意見ございませんでしょうか。

 それでは、時間が来たようでございますから、評価をお願いします。


(事前評価シート回収)


【主査】 委員の皆様の御意見を集約しますと、「実施すべき」という御意見が多うございます。ということで、このテーマは「実施すべき」で進めたいと思います。よろしゅうございますか。

 コメントをご覧いただいてわかりますが、委員の皆様から大変貴重なコメントがございますので、今後それを反映する形でお進めいただければありがたいと思います。そういうことでよろしゅうございますか。はい。どうもありがとうございました。

【主査】 これで一通り終わったわけでございますが、今日評価いただいた課題の評価書、これは一応オフィシャルな書類をつくるわけでございますが、課題ごとに委員の皆さんからいただいたコメント等を含めて議事録をつくるわけでございますね。皆さんにお集まりいただくのは大変なので、議事録の確認は私にお任せいただくということでよろしゅうございますか。はい。では、そういうふうに進めさせていただきます。

 全体を通じまして何か委員の皆様御意見はございますか。

 やはり説明のうまい人は評価もいいようでございまして、同じ内容でも下手だと悪くなるから、ぜひ練習していただきたいと思います。いつも言うのですが、しゃべる立場と聞く立場は違うわけでございまして、それから書き言葉と話し言葉と聞き言葉は全然違いますから、これから皆さんいろいろなところで、大きな舞台で研究するわけでございますから、説明の仕方にぜひもっと磨きをかけていただきたいと思います。

 委員の皆様、特にございませんか。全体を通じて、少し気楽な御発言でも結構です。まだ少し時間があるようでございますが。せっかくのチャンスでございますが。よろしゅうございますか。

 それでは、今日の委員会はこれで終了したいと思います。委員の皆様、大変熱心な貴重な御意見、いずれも大変建設的でございまして、今後の国総研の活動に貢献するものだと思います。本当にありがとうございました。

 それでは、事務局、お願いします。

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4.今後の予定等について

【事務局】 ありがとうございました。

 私の方から今後の予定について御説明させていただければと思います。主査の方からも御発言がありましたとおり、委員の皆様には本日の議事録あるいは評価結果について最終的に主査にお諮りをして取りまとめをさせていただくということになっております。後ほど委員長に同意をいただいて、委員会の結果ということにさせていただくということになってございます。

 また、本日新規の案件、事前案件、それから事後と2つやらせていただいてございますが、予算の要求の関係から、新規の、事前に評価をいただいたものについては急ぎで取りまとめをさせていただきたいと思いますので、そのあたりはまたメールでやりとりということになろうかと思いますが、どうぞよろしく御協力いただければと思います。

 最終的な報告書、議事録についてはホームページに公開することとしておりますので、よろしくお願いいたします。

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5.国総研所長挨拶/閉会

【事務局】 それでは、最後に国総研所長よりごあいさつを申し上げます。

【所長】 本日は長時間にわたりまして、いつもながら熱心な御審議、本当にありがとうございました。

 最初の事後評価を聞いていまして、私、自分の経験を思い出しました。JISというのはインダストリーのスタンダードであって、ユーザーのためのスタンダードでは必ずしもないと痛感したことがございます。そういった限界があることを、我々のコントロールできる限界があることも念頭に置いて成果の活用をしていきたいと思っております。また、事前の4件については恐らく担当者は非常にありがたいアドバイスをたくさんいただいたと思っております。かなり大幅に修正しなければいけない部分もあるかもしれませんが、予算要求を初め今後のステップに向けてブラッシュアップしてまいりたいと思いますので、今後ともどうぞ御指導よろしくお願いしたいと思います。
簡単でございますが、終わりのごあいさつとさせていただきます。本当にありがとうございました。

【事務局】 これで平成21年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第二部会)を閉会いたします。

 本日は長時間の御審議どうもありがとうございました。

午後0時05分 閉会

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