平成21度 第2回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第三部会)

議 事 録


1. 開会/国総研所長挨拶
2. 分科会主査挨拶
3. 議事
(1) 評価の方法等について(確認)
(2) 平成20年度終了研究課題の事後評価
@東アジア経済連携時代の国際物流ネットワークとインフラ整備政策に関する研究
(3) 平成22年度開始予定研究課題の事前評価
Aアジア国際フェリー輸送の拡大に対応した輸送円滑化方策に関する研究
B物流の効率性と両立した国際輸送保安対策のあり方に関する研究
4. 今後の予定等について
5. 国総研所長挨拶/閉会



平成21年度第2回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第三部会)

平成21年7月22日


1.開会/国総研所長挨拶

【事務局】 定刻となりましたので、ただいまから平成21年度第2回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第三部会)を開会させていただきます。

 それでは、議事次第に従いまして、国総研所長よりごあいさつを申し上げます。

【所長】 それでは、一言ごあいさつを申し上げさせていただきたいと思います。

 また評価の季節がやってきまして、お暑い中、また天気が悪い中お運びいただきまして、まことにありがとうございます。中国地方は大分ひどい雨のようでございまして、今日の一番で国総研の砂防研究室長を始め2人が現地へ向かっております。ここにおる中には災害が起こると血が騒ぐ連中もおるかもしれませんけれども、きょう評価していただく課題は、どちらかというと防災の方ではなくて物流の関係のようでございます。1件が事後評価、2件が事前評価、これから予算要求していこうということにかかわることでございます。予算の方は、衆議院が解散になりまして、ちょうど予算案の提出時期が投票日になっているようでございまして、ちょっとどうなるかわからないところがございますけれども、きょうはぜひ率直に御意見をいただきまして、それを糧にまた予算獲得等頑張りたいと思いますので、ぜひよろしく御指導をお願いしたいと思います。

 簡単ですが、開会のごあいさつにかえさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【事務局】 ありがとうございました。


2.分科会主査挨拶

【事務局】 それでは、主査にごあいさつをいただきまして、以後の議事をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【主査】 この評価委員会ですが、私ももう数年やらせていただいておりまして、最近は、国総研全体の研究の枠組みとか方向性も示していただきましたし、研究評価についてもきちんとしたシステムができておりますので、今日もそれに従って、国総研のこれからの研究がますます順調に展開できるように評価を進めていただきたいと思います。

 実は、今日この評価委員会の最中に日食があって、幸か不幸か見ようとしても見られない状態ですので、これに集中してやりたいと思います。所長の挨拶の中では土砂災害だったのですけれども、私の方は日食で、どうも問題意識が違うようで申しわけありませんが、よろしくお願いいたします。

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3.議  事

(1)評価の方法等について(確認)

【主査】 それでは、早速議事に入らせていただきます。

 今日は2つありまして、事後評価と事前評価ということでございますので、まず評価方法についての確認を事務局から説明をお願いいたします。

【事務局】 それでは、名簿の次にございます資料2「評価の方法等について」をごらんください。

 評価の目的といたしましては、「科学技術基本計画」、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」等に基づきまして、公正かつ透明性のある研究評価を行うことで、こうした外部委員会での評価をお願いしているところでございます。

 評価の対象でありますけれども、所として重点的に推進する研究であるプロジェクト研究及び予算要求のため評価が必要となる研究課題を評価対象としております。事前評価、中間評価、事後評価とございますが、今回は、平成22年度から取り組む事前評価2本、平成20年度に終了した事後評価1本が該当してございまして、中間評価についてはございません。

 評価の視点・項目につきましては、事前・事後、それぞれ必要性、効率性、有効性の観点を考慮し、自己点検結果をもとに評価をいただきたいと考えてございます。まず事後評価につきましては、「当初の目標に対する達成度」、「研究成果と成果の活用方針」、「研究の実施方法、体制の妥当性」、「上記を踏まえた、本研究の妥当性」という視点から評価をいただきたいと考えてございます。事前評価につきましては、「研究の背景を踏まえた研究の必要性」、「研究の実施方法、体制の妥当性」、「研究成果の見込みと成果の活用方針」について評価をいただきたいと考えております。

 具体的な本日の評価の進め方について御説明したいと思います。2枚ほどめくっていただきまして、横の表の別添2というのがございます。これをごらんいただければと思います。

 順番といたしましては、事後評価1件、事前評価2件という形で、それぞれ案件ごとに評価をお願いいたします。それぞれの研究課題については担当から御説明申し上げ、委員の皆様で御議論いただき、評価シートがお手元にあると思いますけれども、またコメントシートに記入いただいて、事務局で回収させていただき、主査に取りまとめていただくという流れとなってございます。最初に、事後評価につきましては、説明を15分、評価については質疑を含めて20分、主査のまとめとして、委員の皆様に評価シートに御記入いただき、事務局で回収して取りまとめて、これに5分ということで、全体で1件につき40分ということで予定してございます。続きまして、事前評価につきましてですが、説明を10分、評価につきましては主査のまとめも含めて15分ということで、全体で1件につき25分で予定してございます。

 なお、今回の評価結果の取りまとめにつきましては、審議内容、評価シート及びコメントシートに基づき、主査の責において取りまとめていただき、研究評価委員会委員長の同意を得て国土技術政策総合研究所研究評価委員会の評価結果とさせていただくことになっております。

 なお、評価結果につきましては、報告書に取りまとめるとともに、ホームページ等で議事録も含めて公表することとしてございます。

 1枚飛ばしたのですが、1枚手前の別添1というのがございます。これについては、利害関係者が評価に加わらないようにするということの整理でございまして、今回は該当がありませんことを御報告させていただきます。

 資料につきましての事務局からの説明は以上でございます。

【主査】 どうもありがとうございました。

 ただいまの事務局の説明に対して委員の先生方の御質問はありませんでしょうか。結構ですか。ではそういうことで進めさせていただきたいと思います。

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(2)平成20年度終了研究課題の事後評価


@東アジア経済連携時代の国際物流ネットワークとインフラ整備政策に関する研究

【主査】 それでは、2番目の議事ですけれども、平成20年度終了研究課題の事後評価に入らせていただきたいと思います。

 テーマは「東アジア経済連携時代の国際物流ネットワークとインフラ整備政策に関する研究」ということでございます。

 それでは、御説明をお願いいたします。

【国総研】 それでは、発表させていただきたいと思います。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

 ・  本研究は、平成17年から4年間にわたって、港湾・道路・空港の3研究部で実施させていただきました。

 ・  本研究の背景ですが、大きく2つあります。第1点目は、東アジアの経済は著しく成長していることです。2点目が、関税率の低減等により経済連携が非常に進展しているということです。これらのもとに、当然国際的な貿易構造が大きく変化して、国際物流の増大が予想されます。こうしたことを定性的な議論ではなくて定量的な分析を実施したいと考えました。その結果を踏まえて国際物流インフラの整備を評価して、今後の方向性を検討したいということです。国際物流インフラとしては、ここに挙げています港湾・道路・空港を対象にしております。

 ・  研究の進め方でございますが、大きく4段階で実施しております。

 第1段階が経済連携・成長のシナリオ作成を行いました。これには土木学会の小委員会でのWG等と連携させて頂きました。

 2点目に、経済連携・成長に対応した貿易額の動向を予測しております。これに関しては、国際的に一定の評価を得ていますGTAPモデル、これは次に説明させていただきますが、このモデルを改良して用いております。

 第3段階として、その貿易額に対応して国際流動、コンテナ流動量を予測して、インフラ整備の影響分析をしております。ここで、海上コンテナに関しては港湾研と道路研で新しいモデルを、航空貨物に関しては空港研で新しいモデルをつくっております。

 その結果を踏まえて今後の方向性を検討しております。

 ・  先ほどのGTAPモデルでございますが、アメリカとオーストラリアが中心となってつくったモデルで、世界的にある程度の評価を受けています。今回は日本の地域区分化等の改良して実施しております。

 このモデルの概略ですけれども、国は3つの主体、民間、生産者、政府というものを考えます。このモデルは生産関数を基本にしていますので、入力データとしては人口、土地、生産資本、天然資源、関税を入れます。その結果、出力データとしてGDP、輸出入額等を推計いたします。

 ・  もう1つの貨物流動のうち、海上コンテナに関して説明させていただきます。

 大きく左側にありますように、費用最少化行動を目的とします荷主サブモデル、利潤最大化を目的とします船社モデル、これら2つを考えて、均衡した状態を想定し、その結果としてコンテナ港湾取扱量をローカルとトランシップ量ごとに推計するという流れになっております。

 ・  国内の流動に関しては、国内を251ゾーンに分けて、道路ネットワークを想定し、国内の65港湾、これ以外に海外の港湾を含めて推計を行っております。

 ・  そのモデルの再現性でございますが、左上が港湾の取扱量の現況値です。これは日本の港湾の多い順からランキングしています。右上に示していますのが従来のモデル、右下が今回つくりましたモデルになります。1つは、赤丸で打ちました上位の方の港湾取扱量の再現性、もう1つ大きいのは、千葉港があります。千葉港の背後は非常に発生・集中量が多いのですが、港の能力が小さいために、現実の取扱量は小さくなっています。通常の時間距離最短モデルです。千葉の多い背後圏の貨物量は千葉港に出るという結果になってしまいますが、本モデルでは千葉港の能力を入れていますので、現状に近い再現性が得られております。これが1点目の現況の再現性です。

 ・  2点目が時系列での再現性です。今回、貨物量に関しては2003年をスタートにしています。一方で、時系列の将来推計の妥当性につきましては、まず98年で一度再現性を行いました。98年を使って2003年を推計し、2003年の現状値とどれほど再現がきちんとできるかというのを時系列の方で再現を行っております。98年のRは0.94で、2003年、5年先を予測して、その現実との比較が0.87、多少落ちておりますけれども、ある程度の再現性は確保されたものと考えております。

 ・  ここから結果になります。

 まず最初に経済連携の結果でございます。経済連携が、ここでは2001年に、例えばシナリオ3、グリーンのところですけれども、仮に全世界の関税率がすべて0%になったときに実質GDPがどれぐらい変化するかという予測を行いました。左下の世界ですけれども、世界のGDPは0.3%。シナリオ3の場合ですが。一方、中国、韓国、インドに関しては1〜2%でございます。シナリオ1、2というのは、全世界すべてにある途中段階の段階を幾つか想定して行っております。実質GDP自体、国によって1%、世界でも0.3%という状況です。

 ・  貿易額で見ていただきますと、全世界に関しては5%、日本、中国、韓国に関してはシナリオ3の段階で10〜20%と、非常に伸びるという結果になっております。

 ・  次にインフラ整備の結果になります。今度は、ほかの条件が一定だとして、インフラが整備された場合、ここでは、2003年段階に道路の42年ネットワークが仮にできたとした場合にどういう結果になるかというのを示しております。新しく地方のネットワークが形成されますので、結果的には地方の港湾ではプラス、一方、全体量が確定していますので、いわゆる大都市圏の港湾はマイナスの結果になっています。

 ・  同じく2003年の段階で経済連携のシナリオが2に進んだとしますと、各港湾のコンテナ取扱量が20%前後、常陸那珂ですと100%近い伸び、約2倍に伸びるという結果になっております。

 ・  次に空港ですけれども、青のケース1というのは、羽田空港の沖合展開が進展し国際化した場合です。その段階でシナリオ2に進んだ場合がオレンジという結果になっております。

 ・  港湾の場合、青のケース、これが2003年段階でスーパー中枢の整備、ここではハードというよりも、入港量が30%減、リードタイムの期間が24時間、すなわち1日になった場合を想定しています。当然、三大湾が対象になりますので、左側、三大湾の港湾に関しては30%近い伸びになっております。それ以外の港湾はマイナス。ただ、海外の港、スーパー中枢港湾の整備をしますので、トランシップを取り戻すという形で、シンガポール、香港港に関してはマイナスの結果になっております。ケース2として、その段階からシナリオ2に進んだ場合を推計しております。

 ・  次が将来です。今までは2001年もしくは2003年をベースにしておりました。これは当初の目的の将来の経済動向を予測しております。GTAPモデルに関しましては、将来を用いて将来を推計することができます。GTAPモデルの現在のバージョンは2001が基本になっております。先ほどの入力値等を使いまして2005の入力をするわけですけれども、ここではアウトプットとしての貿易額が2005で合うようにして、途中のパラメータの設定を行いました。その2005をベースとして各5年ごとに将来の推計を行っております。この将来の推計に関しては、冒頭申しましたシナリオに応じて、短期、中期、長期ということで設定したシナリオに基づいて、ケースとしては、楽観、中位、悲観という形で推計を行っております。

 その結果、これは予測の方の貿易額ですけれども、2001年から2005年に、日本の場合150%、1.5倍になっており、それ以降、2020年に関しては2001年からしますと3倍近い伸びという形になっています。今回のモデルは世界を35の国と地域に分けてそれぞれ行っております。例えば中国の場合、スケールが日本と大きく異なっております。中国の場合には非常に伸びるという推計になっております。

 こうした形で、各5年ごと、2025年までやっておりますけれども、今回は2020年を対象にして、将来の状況を推計しております。

 ・  その結果の一例として、2020年の段階で道路の42年ネットワーク、2030年になりますが、仮に2020年にこれができたと。それから、経済成長に関して、今申しました将来を中位、これが青で示してございます。それからオレンジが悲観ケース、下位として書いてありますが、悲観ケースの場合。さらに2020年段階で経済連携のシナリオが2として進んだ場合、さらに港湾のプロジェクト、スーパー中枢が進展した場合という形で推計しております。ここでは伸び率で示しておりますので、大体200%前後2020年に伸びるということですので、現状の3倍ということになります。

 ・  研究のまとめでございます。

 まず1点としては、当初目的としていました経済成長・連携によります国際物流動向の把握に関して、定性的なところではなくて、ある程度定量的な把握ができたと考えています。

 2点目は、それを踏まえて国際物流のインフラ整備の影響を把握できたように考えております。

 今回、この研究段階でリーマンショック以降の国際金融危機が発生しました。これに関して、対北米依存の外需型から国内内需ということが議論されているわけですけれども、今回の研究のメンバーの中で、この成果を踏まえて、今後の物流戦略はいかにあるべきかというのを考えました。その結果、今回見ていただいた、途中少し早足で走りましたけれども、北米、EUは伸びが少ないのに対して、インドを含めてアジアの伸びが著しいという結果が得られています。したがいまして、単純な国内内需というよりも、アジア内需型、あるいはアジア市場型の施策が必要だと考えています。

 具体的には、アジア域内ネットワークの形成として、例えば高速フェリーネットワーク。これは私の次に新規課題として港湾研究部から提案させていただきます。それ以外に、情報ネットワークの形成によります港湾連携。こうしたものの形成でアジア市場型の政策を打っていくことを1つの研究成果として考えております。

 ・  最後ですけれども、5年前に事前評価で4点留意事項の御指摘をいただいております。

 1点目が、幅広いシナリオでの研究を実施すべきということです。この中で、物流情報化に関してはリードタイムということで対応させていただいています。一方、外国船籍に関しては、モデル化が非常に難しかったので対応しておりません。

 2点目として、かなりいろいろなモデルをつくっております。当然、予測の入力変数であり、係数設定の議論があります。これに関しては我々も途中段階でその議論を広く発表して、御批判、御指摘をいただくことに努めました。結果として、ここにありますように、国総研資料、国内外の学会に発表させていただきました。詳細に関しましては配付資料に列記させていただいています。

 ・  3点目、4点目、これは同じなのですが、将来のシナリオをいかに設定すべきかということで、それを注意すべきという御指摘をいただいています。これに関しましては、先ほどのように土木学会での小委員会、それから科研費での連携、それから国際的な物流WG等によりまして議論させていただきまして、資料をつくらせていただいています。お手元に1冊だけ、分厚い資料で申しわけありませんが、国総研資料を配付させていただいています。この将来シナリオを取りまとめた結果がここに書いてございます。

 ちょうど時間になりましたので、発表は以上でございます。

【主査】 どうもありがとうございました。

  それでは、早速、あと20分ほど評価の時間がございますので、どの先生からでも、コメントあるいは質問をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【委員】 モデルを利用して将来予測を行って、それをもとに政策提言するというのは、これは現在最もあり得る調査の仕方だと思います。そこでお伺いしたいのは、将来に対する予測の不確実性には2つ源があって、1つはシナリオの設定に源がある。もう1つはモデル自体に源がある。そういうことだと思うのですが、そういう点でこの再現性の確認というのを見てみると、7枚目のスライドですかね、このモデルの中にどのぐらい不確実性が含まれているのか教えて下さい。この場合にはシナリオには既に確定した経済指標を使ってモデルを動かしたということですね。

【国総研】 これは現況だけを再現しております。現況をまず再現するということで。

【委員】 モデルで現況を再現するときの経済指標の与え方は、実際の値を与えますから、ここでずれているとすれば、それはモデルの中に内蔵されているということですね。

【国総研】 はい。

【委員】 そういう目で見ると、名古屋と千葉が気になるのですけれども、モデルを地域区分にしたというところで精度が上がっているというお話だと思うのですが、名古屋と千葉が現況と本モデルの現況再現が合っていないような気がするのですけれども、このモデルでもなお現況がうまく説明できない理由というのは何かモデルをつくられた中で感じておられるのでしょうか。

【国総研】 ありがとうございます。

 まず地域の話は、GTAPに関して国を分けたというところです。コンテナ貨物に関しては地域ではなくて、こちらのモデルになります。

 それで、千葉と名古屋が合っていないということなのですが、これはネットワークあるいは途中のパラメータを幾つか調整してやりましても、最大限やってもここまでだったという結果で、これ以上合わせるのは難しかったということです。

【委員】 パラメータをチューニングしていったところが、全体を見ると合うのだけれども、幾つか合わないところが出てきてしまうと、そのように解釈しておけばいいですね。

【国総研】 はい、そのとおりです。

【委員】 わかりました。どうもありがとうございます。

【主査】 そのほかにどなたか、御意見を。

【委員】 GTAPは、少なくとも北米では非常によく使われており、非常にオーソドックスな構造をしていますので、国際的に定評がある1つのモデルだろうと思います。GTAPはGEMPACKのデータベースがついておりまして、非常に使い勝手がいいというもう1つのメリットがあるのですが、一方で、GEMPACKのデータベースを、かなり思い切った割りきりで作成しているという問題があります。開発途上国におけるデータの整備状況を考えれば仕方がないところはあるのですが、分析結果の信頼性に関しては一定の留保条件を設けることが必要だと思います。

 今後の話としまして、今、いろいろな機関で、GTAPとコンパティビリティのあるような、もう少しカスタマイズされたソフトウェアに関する開発競争が起こっております。このような状況を考慮すれば、今回開発されたソフトウェアを国際的な物流予測の標準パッケージの水準にまで高めていけるかどうかを検討することも重要な課題だと思います。そのためには、GEMPACKと同じように、最適な物流を分析できるようなデータベースが今後つくっていけるかどうか、あるいはアジアの諸国と、少なくともこういうパラメータに関してはプラットフォームで標準化しようとか、そういう話まで進んでいけたらすばらしいなと思うのです。

【国総研】 我々も同じ認識を持っています。

 前段のGTAPに関して実際やってみて、その勘どころといいますか、精度がある程度わかって、モデルの持つ特性がある程度認識できました。

 次に、将来に関しては御指摘のとおりで、これ以外に関しても、国際物流のデータというのは、我々この世界でやろうとすると、必要なデータがないという認識を持っています。ただ、日本の意識では、日本は非常にデータがきちっとしているのですが、その感覚で、今、先生がおっしゃったように、東南アジアを見ますと全然データがなくて、それを進めようとはしますけれども、なかなか難しいなという認識があります。今後は当然進めていきたいという認識は持っていますが、今、国総研主導で動くというところにまではなっておりません。

【主査】 この研究結果の評価では、モデルを使った研究の枠組みとかモデルそのものの妥当性の評価と、出てきた結果がどういう有用性を持っているのかという2つの視点があると思います。後者を理解するために共通で聞いておいた方がいいのは、このシナリオです。9枚目のスライドでS1、S2、S3と書いてあって、締結・交渉中とか、全世界とか、いろいろあるのですが、これは何に関するどういうシナリオなのかというのが、聞いていてよくわからなかったのが1つです。

 2番目は、それ以降の結果の中にケースというのがいろいろ出てきまして、例えば13枚目とか14枚目のスライドでは、ケース1というのが、経済が現状で、空港が羽田空港が国際化緩和したと。その経済シナリオ2。そうすると、言われているシナリオの中には経済シナリオと書いてありますから、先ほどのS1、S2、S3とは別のシナリオが使われているのではないかと思いますけれども、ここで仮定したシナリオは何種類あって、それぞれどのような意味を持っているのかをもう一度整理して教えていただけますか。

【国総研】 まず、シナリオというのは同じ言葉で使っております。ここのシナリオに関しては、経済連携に関して使っております。シナリオ3というのは全世界の関税率がすべて0%になったという状況としています。シナリオ1、2というのは、2001年を基本として、将来というのを2007年をベースにしておりますので、2001年段階から2007年段階までに経済連携のEPA、FTAの締結あるいは交渉に入っているものの国をシナリオ1としております。例えば日本を見ていただきますと、2001年以降2007年までに日本―韓国、日本―インド、日本―ベトナムというのは締結・交渉のレベルに達しております。シナリオ2というのは、さらに2007年段階までに構想段階に入ったものになっています。シナリオ3というのは、全世界を対象としています。

 それから、ケースという言葉は、例えば港湾の場合ですと、インフラと経済シナリオの組み合わせという形でケースを使っております。例えば14ページで港湾の方で見ていただきますと、道路のネットワークに関しては2003年段階を基本として、現状というのは、経済連携をやっていないという状況になります。下のケース2というのが、その中でシナリオ2に進んでいるという状況です。プラス港湾のスーパー中枢のケースが進んでいるという形で、各物流インフラごとに1、2という形で表示させていただいております。

【主査】 ちょっとまだよくわからないところがありますが、例えば9ページ目のGDP(実質)2001というのが私にはよくわからなくて、例えば中国というところを見ると、中国のGDPのパーセントが1.0とか2.0とかになっているのですけれども、これは何に関する中国のどういうGDPが1%、2%ということなのでしょうか。中国の国内のGDPだったら、この時には10%とか、ものすごく成長していて、韓国よりもずっと高い。シナリオは先ほどの御説明でわかったのですが、今度はこの図の縦軸とか表題のGDPというのは何を意味するのかというのを教えてください。

【国総研】 ここでは、2001年に仮に神様が全世界の関税率を0にして安定状態になったときに中国のGDPは2001年にどれぐらい増加しているかどうかを示しています。ですから、2001年に中国はプラス2%ぐらいふえていますよというイメージになります。それが全世界ではなくて、先ほど言った各シナリオ段階の途中だと、例えば2だとすると0.4%ぐらいになっているということになります。ですから、こちらは断面、時間軸を固定しています。というのは、いろいろなパラメータを入れると何がきいているのかわからなくなりますので、ここでは経済連携だけのGDPに対する評価を見ているということになります。

【主査】 わかりました。どうもありがとうございました。

 それでは、ほかにお願いします。

【委員】 この分野は専門外でもあるので余り詳しい質問はできませんが、今のシナリオに関連して、研究目標そのものには明確に記述されていないようなのでお尋ねしたいのですが、将来予測となると、現時点でこういうスケールの問題になると、地球環境問題とエネルギー問題というのは避けて通れないと思うのですが、COの排出云々の議論はまた別途のモデルが必要になると思うのですけれども、エネルギー問題に関連して言うと、いわゆるピークオイルの問題ですね。オイルディプリーションによって燃料費が高騰するという予測があちこちでされていて、これから発見される量もあるでしょうけれども、産出量は減っていくということはエクソン・モービル自体がやっているわけです。そういうところで、こういう貿易は基本的には船に依存しているわけですけれども、そういうビジネス・アズ・ユージョアルと言われているモデルの延長線上で議論できるのかどうか。それはやはり非常に重要なポイントではないかと思うのです。

 もう1つはお金の話で、これは私もよくわからないのですが、為替変動によって貿易量は変わりますよね。それはモデル上どのように扱っていらっしゃるのでしょうか。

 以上、2つというか、3つぐらいの質問です。

【国総研】 為替に関しては、全部ドルベースで計算させますので、やっておりません。すべてGTAPの中のドルを基本にして動かしています。

 それから、前段の議論が一番大きな御指摘だと思っています。これを見ていただければと思うのですが、これは世界のコンテナ取扱量の、1975年が一番古いデータなのですけれども、75年から近年までの伸びを示しています。これは非常に指数関数的になっていまして、仮に11%の伸び率で単純にやりますと、どんぴしゃで合うという状況になっています。当然、普通ですとこのまま伸びるだろうと考えられます。一方で先生から今御指摘いただいたようにいろいろな障壁が出てきます。それをどう取り込むかという形で、将来のケースを設定するという形で皆さんにお聞きしました。オイルの話もありますし、環境の話も含めて、そういうのを取り込んで、モデルの中にありました悲観ケースという、一番いろいろなものが悪くなった場合にどうなるだろうかというものを考えたいという形で行いました。ただ、その結果でもそれなりに伸びるという結果になりました。ただ、ケースの中での悲観ケースというのはまだ甘いといいますか、緩いのかなという認識は持っております。

【委員】 今のお話なのですが、まず為替レートに関してですが、購買力平価を用いて需要関数を作成しています。したがって、短期的な為替変動とはちょっと違う世界だと思います。もう1つは、オイル価格が非常に上がったという問題ですが、GTAPではレオンチェフの投入産出係数を使っていますので、それは短期的に技術が一定であるという仮定のもとで成立する。中・長期的に、技術選択があって投入産出が変わってくるという話になってくると、大幅な、感度分析をやり直すとか、そういうことが必要になってくる。モデルの適用範囲をきちんと言われればいいのではないかと思います。

【主査】 よろしいですか。

 私の方からまた続きの質問ですが、例えば結果Gと書いてあるH42ネット+将来というのを見ると、これは縦軸は、経済ということだから、取り扱い貨物の量とか、そのように考えていいということですか。

【国総研】 港ごとの港湾取扱量の伸び率になります。

【主査】 だから、東京だったら、100%とか150%ということは、今と比べて2倍以上になるということですよね。大阪にしても、神戸にしても、3倍とか4倍とか、すごい伸びになっているというわけです。

 今後実際にそれだけの貨物が伸びるとして、逆にそれを東京港とか大阪、神戸で受け入れるような余地があるのかどうかとか、それから、結果のグラフとしてはこういうグラフなのかもしれないけれども、最後の始めるときのコメントに「他分野のシナリオアプローチによる研究成果を有効活用すべき」と書いてあるということは、このモデルではこういう結果が出てきたのだけれども、先ほど出たような石油とか為替レートというのは非常に不確定的なものなので、余りそういうものを多々述べるということは難しいかもしれませんけれども、ほかの分野でのいろいろな将来予測とか、この出てきた結果をインフラ整備に生かすときにはどういう意味合いがあるのだとか、そういう考察を示すところまで行くのが最終的なこの研究のゴールなのではないかと思います。今回得られた予測結果が次にどういう意味を持っているのかというところまで研究の中では結果として述べられているのでしょうか。

【国総研】 後段の方に関しては、まさに昨年度で終わってちょっと考えているところでございます。そういう意味ではまだそこまで終わっていないところです。

 それから、前段の方の、例えば2〜3倍に伸びるという形になるのですが、これがそんなに伸びるのかということと、実際にどう対応できるのかという点があるかと思います。先ほどのように、世界全体が伸びになります。これは逆に日本の伸び率で、90年代から2000年にかけても非常に伸びております。先ほど、日本全部で再現しますと8%ぐらい、特に90年代からに関しても5%という非常に高い伸びをしています。かつ、日本は過去20年ぐらいを見ても2倍3倍に伸びているという形で、ある程度伸びるという認識は持っています。

 それからもう1点、ではそんなに伸びたときに港の規模から対応できるのかという点ですが、先ほどの伸びというのは、ローカルという背後から出る貨物と、トランシップとう港で積みかえる貨物の2つを組み合わせて表示させていただいています。

 これがローカルだけの貨物になります。そうしますと、日本は、先ほどの伸びと同じような、海外と同じような形になっていたのですが、当然、背後の経済が伸びる東アジア圏のローカルの貨物の伸びに対して国内の貨物の伸びは低くなっています。ですから、トランシップの量をいかに取り扱うかという形で、今後の展開が、背後のみならず、よりトランシップ、積みかえをベースにした港の展開を考えていく必要があると考えております。

【主査】 お願いします。時間の関係もありますので、最後の質問ということで。

【委員】 研究のまとめのところに、定性的なこれまでの話を定量的把握に高めたというような論調があるのですが、今のトレンドは、定性的から定量的というよりも、量的分析と質的分析の違いという方がトレンドとしてはあると思うのです。どういう意味かというと、この量的なモデルを使ったものは、シナリオの設定とモデルの適用性の問題でいろいろな仮定を置きながらやっていますから、当然に適用できるものと将来の不確実性が大きいものというのを含んでいるわけです。その結果を現実の社会に照らして解釈して質的な分析をしないと、実際に政策に結びつけることはできないと思うのです。ですから、もう少しバランスをとって、量的なモデルの結果と、それを解釈して現実の社会でどう応用すべきかという質的な分析を併用しないと、最終的に説得力のある政策をつくれないのではないかと思いますので、将来的にはそういうことを考えていただきたいということでございます。

【国総研】 ありがとうございます。御指摘を踏まえて、今後、引き続き頑張って勉強したいと思います。

【主査】 どうもありがとうございました。

 まだいろいろ御質問とか御指摘はあると思うのですが、将来この結果をどう生かしていくかというような方向のコメントもいただきましたので、時間もありますので、ここで結果を集約させていただきますので、委員の先生方、それぞれ準備をお願いいたします。

(事後評価シート回収)


 まとめていただいている間に時間があるので、もう少し言いたいことがある先生もおられれば、さらに前向きの御質問、コメントをいただければと思いますが、いかがでしょうか。

【委員】 先ほど、研究のまとめのところでは、モデルをつくることとシナリオをつくって予測するという目標を書かれているので、目標は達成されているように評価しているのですが、予測してモデルの結果が出たから、じゃあ整備はどうするのとか、今後どう展開するのかだとか、今の状況はどうなのかという判断をすることがもっと大事だと考えます。その意味では今年度それをされるということですので、非常にいいのかなと思います。

 ただ、研究のまとめのところで、アジアは大事だということは確かにモデルでわかったような気がしますけれども、ではなぜ高速フェリーネットワークなのかだとか、なぜ情報ネットワークなのかということは、きょうお聞きした内容からは直接的には評価できなくて、それがモデルの中に組み込まれていて、それが入ることによってこんなに伸びが出ますよという論理展開がないと、最終的な研究のまとめに若干飛躍があるように私は感じました。もしそれが重要であるのであれば、ぜひそういった成果を具体的な形で提示いただくのが非常にわかりやすいのかなと思います。

【国総研】 ありがとうございました。

【主査】 いい御質問をありがとうございます。実は次の事前評価の最初の課題にそういうようなことがかけられていますね。ちょうどいい御質問だったかなと思います。

 何かほかにありますか。

【委員】 日本というアジアの辺境に位置する国が貿易を拡大していこうとしたときに、何かそういう観点で障害となるようなこととか克服すべきこととかはないのでしょうか。

【国総研】 アジアといっても、今、東アジアを想定しています。そうすると、日本、中国、韓国ということに考えて、インドが出てくると議論は別なのですけれども、日本、中国、韓国という意味では、辺境というよりも、近い距離でお互いにいかに連携をとるかということになると考えています。

【主査】 この事後評価については、集計した結果を今表示させていただいて、この場で評価結果とおおよその評価のコメントについてまとめさせていただくというのがルールになっております。今見ていただきますと、研究の実施方法・体制等の妥当性というのは、「適切であった」と「概ね適切であった」がまじっております。「適切でない」とか、そういう意見はなかったので、これは適切であったということだと思いますが、表示されている星の数で、数が多いということで、「概ね適切であった」とさせていただければと思います。目標の達成度も同様でございますので、概ね目標を達成できたという評価にさせていただきたいと思います。

 今回はコメントをたくさん書いていただいておりまして、国際的な研究体制で今後研究を進めることに期待するとか、モデルの開発に対するコメントもたくさんいただいております。それから、先ほど来いろいろ出ておりますけれども、この定量的なモデルの予測結果を政策提言に結びつける方向の研究を期待するというようなコメントも出ておりますので、そのような今後の研究の進展方向に対するコメントをいただいたということを付記した上で、概ね適切であったということで評価させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、そういうことにさせていただいて、具体的な文言につきましては、事務局とも御相談の上、後日私のところで取りまとめをさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、次の議題に進ませていただきます。

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(3)平成22年度開始予定研究課題の事前評価


Aアジア国際フェリー輸送の拡大に対応した輸送円滑化方策に関する研究

【主査】 次は平成22年度開始予定の研究課題の事前評価でございます。

 最初に「アジア国際フェリー輸送の拡大に対応した輸送円滑化方策に関する研究」につきまして、これは新規の課題の説明ということでございますので、よろしくお願いいたします。

【国総研】 よろしくお願いいたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

 ・  本研究につきましては、22年度からの3年間で実施する予定でございます。

 ・  まず本研究の背景となります国際フェリーについて若干御説明させていただきます。

 フェリーというのは、御存じのとおり、貨物だけでなく旅客も運びます。ドライバーあるいは一般旅客も運べる船舶でございます。国内と国際があり、今回研究対象といたしますのは国際フェリーでございます。

 フェリーの特徴は大きく3つございます。1点目は、コンテナ船などに比べて高速航行が可能であるということ、荷役も効率的であるということ、将来的にはトラックが直接輸送も可能であるというような特色がございます。また、輸送の安定性・安全性が高いということ。そして環境にもやさしいという特色がございます。

 国際フェリーの現状を紹介させていただきます。フェリーですから、本来であれば車両がそのまま出発点から終点の目的地まで行ければいいのですが、現在、国際フェリーにつきましては、自動車の安全基準や道路の構造基準の相違、ナンバープレートの問題等ございまして、それぞれの港湾で積みかえを行っております。それによって若干時間のロスがございますけれども、それでもコンテナ船に比べれば輸送時間は早くなってございます。将来的にはこれらの課題をクリアし、出発地から目的地までシャーシを一貫して運ぶことが研究されております。昨年5月に日中韓物流大臣会合でシャーシの相互乗り入れ実現に向けてWGを設置するということが合意されております。このように、船舶や車両の方では政策的に研究が進んでおりますので、港湾の方でも早急にそれらに対応する必要があると考えております。

 ・  特徴をもう少し具体的に御紹介させていただきます。コンテナ船あるいは飛行機の貨物輸送がございますが、フェリーというのはそれらの中間に入るものと理解しております。時間的に見ても、コンテナ船よりは速いのですが、航空よりは遅いということ。費用につきましては、コンテナ船よりはやや高いですが、飛行機よりは相当安くなっているという状況でございます。

 事例@ということで、上海−博多間で現在運行されているフェリーの事例を御紹介いたします。中国と日本を結んだ場合、日数で見れば、コンテナが1週間程度かかるのに対して、フェリーであれば3日程度、航空よりは若干かかりますが、コンテナ船の半分程度であります。費用については、コンテナ船よりは8割方高くなりますが、航空から見れば大幅に安くなるということでございます。

 現在、アジアの物流はコンテナ船が中心でございますが、速く運ぶ荷物については航空が利用されています。フェリーについては現在それほど使われておりませんが、近年伸びは大きくなっております。2000年と2006年を比較いたしますと約1.5倍の伸びになっております。特に中国は目覚ましく伸びており、同じ時期で約7倍の伸びとなっている状況でございます。また、国内であれば、船舶、航空以外に道路、鉄道等の輸送機関もあるわけでございますが、現在、国際物流ではほとんどコンテナ船と航空しかないという状況でございますので、今後このフェリーというものがその中間的な役割として大きく伸びることが予想されているところでございます。

 ちょうど先週新聞に載った事例がございます。カシオ計算機のメーカーが、従来は航空便を使って香港から関空経由で鈴鹿の流通センターに送っていたものを、今後、順次、中国国内の鉄道、それからフェリー、そして国内もトラックまたは鉄道を使って物流を変えるという記事が載っておりました。これにより、二酸化炭素の排出量削減、環境対策に資するということもございます。もう1点、費用もこれにより20%以上削減できるようです。ただし、輸送日数は、航空で運んでいた3日が7日になるということですが、それでも十分対応できるということでございます。

 その他、先ほどの上海―博多フェリーの例など見ますと、通常は物流コストを抑えるためにコンテナ輸送している例でも、いざというときに、納期を間に合わせるとか気象の影響等により、実際には航空機を使う例が多くなる。そうすると、コンテナ船と航空輸送によってトータルの物流コストは結構高くなってしまうという例がございます。そういう場合にはフェリーというのは1つの大きな選択肢になると言われております。

 ・  現状の我が国の国際フェリーの概要でございますが、現在12航路で、週27便が運行されています。ちょうど先月6月に、この中で青と黒の線で書いてあります、日本、韓国、ロシアを結ぶ航路が2航路新たに開設されました。このように国際的なフェリー航路が注目されているところでございます。特に、ロシアのウラジオストクやトロイツァに向かうフェリーというのは、単にロシアと結ぶということだけではなくて、その背後にあります中国東北地方、ここが今後非常に経済発展が期待される地域であり、その地域との物流が直結できたということで、非常に期待されているところでございます。

 ・  このような背景をもとに整理いたしますと、まずアジア地域内の貨物量が非常に増大しているということ。それにより高速航行や荷役の効率化が期待されている国際フェリーのニーズが高まっているということでございます。また施策面では、国土形成計画でアジア物流一貫輸送網の構築というものが位置づけられております。先ほど申し上げた日中韓物流大臣会合でもシャーシ乗り入れ取り組みなどが進められているところでございます。

 ただ、一方で、現在まだ航路が少ないということでは課題もございます。国際フェリーについては少ないということもあり、港湾の技術基準も未整備でございます。また貨物量予測が不十分で航路の見通しも立ちにくく、さらに国際フェリーができたことによってどういう波及効果があるかということの分析も不十分でございます。

 ・  そこで、研究の目的といたしましては、まず国際フェリーに関する技術基準をつくるための技術資料を取りまとめることが第一の目的でございます。

 次に、国際フェリー輸送の貨物予測のモデルを開発することと、それによる地域経済へのインパクト評価を行うためのツールの開発を行うということを考えております。

 それらを使って我が国のゲートウェイ港湾の比較検討や国際フェリー航路網の拡充に向けた施策評価を行いたいと考えております。

 ・  具体的には、研究は4分野で構成しております。1点目が港湾施設の要件の検討、2点目が国際フェリー航路網予測ツールの開発、3点目が地域経済へのインパクト評価ツールの開発、4点目がそれらを使ったゲートウェイ港湾の比較検討と国際フェリー航路網拡充に向けた施策評価と、4項目で考えております。

 成果としては、これを港湾の技術基準に反映させること、あるいは国際フェリーに関する施策に生かすということを考えてございます。

 ・  具体的な研究内容でございますが、1点目が国際フェリーの船舶動向や港湾施設の要件、諸元等の分析でございます。国際フェリーについては、コンテナ船と比較して喫水は浅いがバースは長いという特徴がございます。これらを整理したいと考えております。そして基準にできるものをまとめていきたいと思っております。

 ・  2点目の航路網の予測ツールでございますが、現在の輸送経路や利用輸送機関の動向を分析し、国際輸送機関の選択、あるいは航路成立可能性を検討できる予測モデルを構築したいと考えております。

 ・  3点目のインパクト評価ツールでございますが、陸上輸送コストの縮減や利用者効果に加えて、港湾利用に関わる企業あるいは地域経済への波及効果を検討するツールを開発して、我が国の国際競争力の向上や環境への影響等も評価するツールを開発いたします。

 ・  4番目として、これらの貨物予測のツールや経済への影響評価ツールを利用して、将来の国際フェリーの増加の動向を予測すること、それに伴う輸送コストや環境負荷への影響も予測することを考えております。また、各種施策として、先ほど申し上げたシャーシの相互乗り入れや港湾の整備等の施策を行うことにより、どの程度施策の効果が出るかということも評価したいと考えております。

 ・  これらの研究を、国総研港湾研究部が中心となり、フェリー運航会社や港湾管理者、自治体、本省や大学、学会等と連携しながら進めることを考えてございます。

 ・  研究の有効性としては、港湾の技術基準へ盛り込む資料を収集すること、今後の我が国の物流政策や港湾計画作成に活用できるということで、有効であると考えてございます。

 以上、簡単でございますが説明を終わります。

【主査】 どうもありがとうございました。

 それでは、15分程度の時間でございますが、御質問、あるいは研究の目的や方法に関するコメントをいただければと思います。いかがでしょうか。

【委員】 大きく4つの研究項目が紹介されました。港湾施設に関するデータ収集、航路の予測、地域経済分析、最後に港湾政策的なものという、言わば国総研の定番スタイルです。この3番目の地域経済へのインパクトという部分ですが、今回はここまでやらなくてもいいのではないか、というのが私の意見です。地域経済への波及効果とありますが、そのほとんどは恐らく直接効果の移転分ですし、もし波及効果を本格的にやるならば、間接的な技術効果、即ち環境への被害などを細かく見ていかなくてはならない。労力も資金も大変です。国際フェリーのためだけであるならば、直接効果に集中して簡便な形でやっていただいても十分説得力があるのではないか。研究項目・内容の絞り込みによって、研究費の効果的な使用を心がけていただく方がよろしいのではないかと思っています。

【国総研】 御指摘も踏まえまして、私どもは、まず2番の航路網予測ツールを開発することが大事だと思っております。また、フェリーの航路が新しくできますとその地域の経済も活性化するということもございますので、そういった点についても検討したいと思っておりますけれども、委員からの御指摘もございましたので、3番の評価ツールの開発につきましては、やり方については進めながらもう少し考えていきたいと思っております。他の分野でも同様な研究が進められておりますので、そういう研究も活用しながら、予算も有効に活用して進めていきたいと思います。

【主査】 ありがとうございました。

【委員】 この研究はいろいろな段階を踏んでいるのですが、結局、難しいところはフェリーとコンテナと航空の選択と思います。これは行為選択の問題ですから、原因と結果の因果律を場合によっては個々の意思決定者のモチベーション、動機の連関に置きかえていかないと、なぜフェリーを選ぶのかという解明ができないと思うのです。それは恐らく量的な分析では無理で、例えばフェリーに乗りかえつつある場所があるとすれば、そこの調査をするときには、なぜそうしたのかという因果連関から動機連関まで我々が解釈できるような分析をする必要があると思います。調査の方法に質的な分析を取り入れると行為選択の部分はうまく把握できるのではないかと思いました。

【主査】 ありがとうございました。

 よろしいですか。

【国総研】 ありがとうございます。開発の段階で使いたいと思います。

 事前に調べた段階では、特に物流関係者はコスト削減ということに対して非常に綿密な検討を行っているようでございます。場合場合によって最適な輸送ルートを選択しているようでございます。その辺については十分押さえておく必要があると思っておりますので、今の委員の御指摘も踏まえて開発したいと思います。

【主査】 そのほか、委員の先生方から。

【委員】 今の御質問に非常に関連していると思うのですけれども、国際フェリーの航路網予測モデルができると、今回提案の高速フェリーがどう機能拡大するのかというところがポイントです。だけど、実際上はまだ多くないので、そのモデルが本当に正しいかどうかという検定だとか検証がなかなかしづらい。そうすると、実際に使われる側の行動のアンケートなのか調査みたいなものが必要で、その因果関係を明確にしなければいけないということになると思います。今お聞きしていると、経済とコストと時間だけではなく、さっきのカシオのように環境負荷に対してどう配慮しているのかというような、もう少し幅広に、逆に行動をコントロールするような形のアンケート及び国としての方向性みたいなものをあわせてこの研究の中で実施していただくと魅力的な研究活動になるのではないかなと思います。そこら辺の調査方法等では何か工夫を考えておられるのでしょうか。

【国総研】 3番のところで外部的な効果についても述べておりますけれども、環境問題についてもできるだけ研究したいと思っております。

【委員】 私自身は、環境がどれだけよくなった、ではなくて、ある程度そういった要因が利用者側に働いている時代が来ているし、それを誘導するような方向性を国総研としてはお持ちであるという立場をとられることでプロジェクトの意味が出るのかなという意味で、調査だとかモデルの構築の中でそういった要素を入れられることが魅力的かなと感じたので、申し上げました。

【国総研】 わかりました。

【国総研】 モデルをつくる上で大きく2つアプローチがあると思っています.1つ目は、統計データをベースに、航空で運ばれている貨物とかフェリーで運ばれている貨物を、どこからどこに行くのにどの輸送手段で運ばれているか、それを集計したレベルで、どの機関がどのように使われているかというのをまず分析しようと思っています。その段階でコストとか時間、あるいは環境負荷も考えられているかもしれないのですが、そういう要因でどう説明ができるかというアプローチはするのですが、集計したレベルでは委員御指摘のようにCO2がどれだけのウエートを持っているかなどというのは多分出ないと思っています.そこでもう一方では、もう少しミクロな、実際の荷主さんがどういう行動でどう使っているかということについて、アンケートをするなり、時間、実際のお金、環境などをどうウエートづけして選んでいるかという分析をしたいと思っています.このマクロとミクロのアプローチを併用しながらやっていくのかなと思います。ミクロだけでやりますと、最後予測するときに、将来的にどうなるかという将来量を出すときに困るものですから、そこのミクロ側の分析とマクロ側の分析をうまく併用しながらチャレンジしていきたいと思っております。

【委員】 2のテーマと3のテーマが相当密接につながっていると思うのです。フェリーの市場が十分に成熟していれば、コストとか時間の条件を変えればそれなりの予測はできるだろうと思うのですが、シャーシの問題もしかり、制度的な問題であるとか、まだ実現していないことが制約になって市場が発達してきていないというところが多いと思うのです。だから、モデルを構築する場合、仮想的なシナリオを作成し、それに対するステート・プリファレンスについて質問する、そういう聞き方をせざるを得ないと思うのです。そういう意味で、今回の研究計画では予測のツールの開発という側面を前面に出しておられますけれども、それとあわせて、その前の段階で、政策評価というのか、どういう政策をつくればもっと前に進むのかとか、シナリオ開発にも重点を置いていただいた方がいいのではないか。シナリオ分析を行うことにより、結果として、それが3の課題、すなわち、どういう産業が発達してくるのか、どういう機能が必要になってくるか、そういう課題を分析することと結びついてくるのではないかと思います。そういう意味で、だれに対してアンケート調査をするのか、その辺が非常に難しいので、綿密な調査計画を立てていただきたい。コストと時間を変数とする選択モデルを作成すればよし、というような方法を採用すべきではないと思います。

【国総研】 御指摘ありがとうございます。今の御指摘を踏まえて十分研究計画を練りたいと思います。

【主査】 時間も決められた時間になってまいりましたので、まだ御意見もあるかと思いますけれども、私自身のコメントと、その後、全体の評価をさせていただきたいと思います。

 コメントというより、1つ質問ですが、フェリーの輸送が急速に立ち上がってきているという現実があるわけですから、それに対応して研究を組み立てるというのはぜひ必要なことなのではないかと思います。この研究目的を見ていると、フェリーを使うためには新しい港湾施設が必要なのだというフィジカルな整備とフェリーの利用とを結びつけると書いてあります。具体的に港湾の施設の基準に入っていないと書いてあるので、それを入れるような研究までされるのかどうかというのが1つです。

 2番目は、今、モデルの話がいろいろ出ているのですが、これまでもこのようなモデル、いろいろな経済モデルとか物流モデルが開発されたと思うのですが、最終的にはそれが政策評価だとか具体的な施策の展開の中で使われるというのが国総研の研究の大きな目標だと思うのです。ですから、従来いろいろ開発されたものがどの程度活用されているのか、今回つくられるモデルがぜひそういう実際の政策評価に使われるような方向に具体化されるというのが非常に必要なことなのではないかなと思います。

 先ほどの事後評価の話の中でもありましたけれども、研究成果であるデータが出ましたというのは、そこまではいいのですけれども、ではそれが実際の施策の展開の上でどういう意味を持っているのかというところまで提案されるとか、意味合いをきちんと述べるというところまで行くと、かなり政策的な意味がはっきりしてくるのではないかなと思うのです。そのような方向まで結果が出ることを私自身は期待しております。

 ということで、最後は私の質問とコメントでした。今皆さんからいただいたコメントあるいは御質問では、多くの先生方が、研究を進めること自体については意義を認めたり、あるいは特に問題はないということだったと思います。必要性については、進めるということで、それを進める上で、新しい問題なので、モデルの考え方とか、あるいは2番目の目標と3番目の関係とか、そういう点で進める上で工夫しながら効率的に進めていただきたいという御意見がございました。最後に研究成果の有効性ですけれども、それは先ほど私が申し上げましたように、実際の施策に展開できるような活用の方針を考えていただきたいと。その上で、先ほど委員の方からも御指摘がありましたが、単にモデルの結果が出てきたというだけではなくて、その背後にある事業者とか利用者の意識、そういうところをしっかり踏まえてやるのが重要なのではないかというような御指摘だったと思います。そういうことで、委員の方のコメントはいろいろあると思いますが、今のような形で必要性、効率性、有効性をまとめて、進めていただくということでよろしいでしょうか。

 それでは、そのようにさせていただきたいと思います。


(事前評価シート回収)


【国総研】 1点目の御質問にお答えしてよろしいでしょうか。

【主査】 お願いします。

【国総研】 基準に反映させるかということでございますが、今回、国際フェリー船舶の諸元を調査いたしまして、それを基準に反映させることを考えてございます。

【主査】 わかりました。 
どうもありがとうございました。
 
済みません、1つ途中で聞くのを忘れてしまったのですが、後になって申しわけないのですが、本日欠席の委員や他の部会の委員からの御意見はなかったということですかね。

【事務局】 ありませんでした。

【主査】 どうもありがとうございました。最初にそうおっしゃいましたね。

それでは、議事を進めさせていただきまして、次の事前評価に移りたいと思います。

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B物流の効率性と両立した国際輸送保安対策のあり方に関する研究

【主査】 次の事前評価も物流に関係しておりまして、「物流の効率性と両立した国際輸送保安対策のあり方に関する研究」についての御説明をお願いします。

【国総研】 それでは、「物流の効率性と両立した国際輸送保安対策のあり方に関する研究」と題しまして、説明させていただきます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

 ・  研究期間は22年度から24年度の3カ年を予定しております。

 ・  まず背景でございますが、2001年の9.11に米国で起きました同時多発テロ以降、全世界でテロに対する警戒と危機意識が非常に高まりました。それで、SOLAS条約という国際港湾及び国際船舶の安全対策についてまとめた条約が改正されまして、その中で、ここに出ておりますISPSコードという、各国の政府・海運・港湾が協力し合って船舶及び港湾施設の保安強化を目的とした規定ができているところでございます。現在、特に輸出国の港湾におきまして、事前情報から検査対象となる貨物を特定するといったこと、それから輸入側においてコンテナのX線検査等が行われているところでございます。下段に行きまして、部外者によるコンテナ開封の防止や、開封したときに異常事態が感知できるようにするようなこと、それから各物流施設において不正侵入を防止する、あるいはコンテナ輸送状況を追跡して分かるようにする、あるいは税関等で貿易文書あるいは輸出入貨物情報の管理を行うといったことが実際に行われていたり、今後の対策として提案されているところでございます。

 ・  これまでの研究で分かったことは、各国それぞれで保安対策を行っている訳ですが、通常時の対応といたしまして、港湾等での貨物検査が非常に強化されている方向にございます。まず、WCO、世界税関機構におきましては、国際貿易の安全確保及び円滑化のために、SAFEという保安対策の枠組みをつくるということになっております。次に、アメリカにおきましては、輸出側の港湾におきましてコンテナ貨物を100%事前にスキャニングするといった法案が通りまして、平成24年から実施される予定になっております。それから、中国とEUにおきましては、今年度から貨物検査のために船積の24時間前に輸出入貨物の情報を税関当局に提出することを義務づけるといったことが行われようとしております。こういった貨物検査が強化されることによりまして、港湾において貨物が滞留するといったことや、事前に情報を提出しないといけないということで荷主の負担が非常に増えることから、輸送効率が悪化することが懸念されております。そういったことから、物流効率を阻害しない貨物検査方法の確立が急務になっているところでございます。

 それから、これまでの保安対策はテロを事前に防止するための対策の検討が主体だったのですけれども、テロ発生時にどうしたらいいかといったことが実は検討されていないという状況でございまして、実際テロが発生したときには、下に書いておりますとおり、各国が独自に過度な保安対策を実施するようなことが予想されます。実際そういったことが行われますと、貿易が長期にわたって中断されたり混乱の発生が懸念されるといったことが予想されます。それから、我が国においてテロ発生時の対応が検討されていないことから、我が国においてもテロ発生時の対応の確立が急務になっているということで本研究を行いたいというところでございます。

 ・  4ページに参りまして、研究の目的でございますけれども、物流効率に配慮した国際輸送保安対策を確立する観点から、我が国の港湾を中心とした国際輸送保安体制のあり方を検討しまして、これを国内の港湾管理者への指針として、輸送保安対策のガイドラインといったものを作成したいと考えております。

 それから、輸送保安対策を実現するには国際的な連携・協調が必要なことから、本調査の結果をもとに、APEC等国際的な政策対話の場において政策提言を行うといったことを目的としております。

 ・  5ページに参ります。まず通常時の課題ですが、港頭地区での貨物検査に着目します。今先ほど申し上げたとおり貨物検査が非常に強化される方向にございますので、強化されることによって港湾物流にどういう影響を与えるかといったこととその要因を抽出し、その影響をどうやって緩和したらいいかといった方策を検討したいと思っております。

 方策の例として、まだイメージですけれども、適切な物流導線の設定。それから滞留・蔵置貨物増加に備えたスペースをどう確保したらいいか。それから貨物検査と港湾保安対策の連携をどう強化したらいいかといったことを考えましてガイドラインを作成したいと思っております。

 ・  6ページに参ります。テロが実際に発生したときには各国の連携が必要になってくるわけですけれども、保安対策上のリスクを適切に判断しながら、貿易をどうやって円滑に普及させるかといったことを考えていきたいと思っております。実際に、今、シンガポールとアメリカで一部検討されているようなことを参考にしたいと思っておりまして、シンガポールではテロに対する情報を共有し、過度な保安対策を防止するという、貿易復興計画が検討されているところでございます。アメリカでも、リアルタイムでリスクの低い貨物を港湾等で特定し、それらを優先的に代替路等を使って輸送を再開しようといったことが検討されています。このようなことを調べまして、具体的にどうやって実施方策を考えていったらいいかを検討して、ガイドラインを作っていきたいと考えております。

 ・  7ページに参ります。先ほどから申し上げています国際的な連携ですが、各国との協調等が必要になるわけですから、テロ発生時にどういう情報を共有したらいいかということ、それから保安レベルをどう設定したらいいかといったところの連携について考えていきたい。それから、リアルタイムで貨物管理を行う際にどういう連携が必要かといったこと。それから貿易や貨物情報の共有においてどういう連携があるか。それらすべての実施体制の構築についてどういう連携があるかといったことを検討して具体策を考えまして、国際会議等で政策提言を行って、日本が国際的イニシアチブを発揮してリーダーシップをとっていくというようなことを考えております。

 ・  8ページに参ります。実施体制でございますけれども、国土交通省の港湾局と連携・調整することで実現性の高い政策提言を行うといったことを考えております。それから、実際に現場でテロ対策を講じております港湾管理者、コンテナターミナル、あるいは海上保安庁、税関との連携・調整にも留意して行いたいと考えております。

 ・  9ページでございますけれども、今申し上げた内容を3カ年にわたって行いたいと思っております。最初の1年目、2年目は国際輸送保安対策の最新の動向について情報を収集いたしまして、実施上の問題点を把握します。それから、通常時における貨物検査の強化が物流に与える影響を分析して、物流の効率性と両立した国際輸送保安対策のあり方を検討し、その影響を緩和する方策を考えていきたい。23年度からは、テロ発生時におきましても同じように物流の効率化と両立した国際輸送保安対策のあり方について、関係者がとるべき対応あるいは連携のあり方について整理していきたい。最終年度は国際的な連携・協調のあり方に関する検討ということで、各国間の情報共有、あるいは保安レベルの設定等について検討を行って、まとめていきたいと考えてございます。

 ・  最後のページですけれども、この成果をどのように活用するか。繰り返しになりますけれども、国内の保安対策を行っている関係者へのガイドラインを作成すること、あるいは国際会議等での政策提言を行っていくというようなことを考えております。通常時は、貨物検査強化に対応するための港湾側の対応のあり方、テロ発生時は、同じように港湾保安等関係者の対応のあり方といったことをガイドラインとして取りまとめる。それで、国際的対話の場において、国際的な連携・協調のあり方を政策提言し、例えばAPEC海事・港湾会合というのがありますけれども、そのような場を通じましてイニシアチブを発揮していきたいと考えてございます。

 説明は、以上でございます。

【主査】 どうもありがとうございました。

 それでは、御質問、コメントをお願いします。

【委員】 研究の目的自体からするとちょっと的外れかもしれませんが、現状でも日本は貨物検査はかなり厳重にやっていると思うのです。というのは、たまたま私の家内がこの間家具を輸入したときに、税関でX線検査と開梱検査を受けて、非常にコストがかかったのです。これは現状で既にやられている仕組みだと思いますけれども、新たに保安体制を組むことによって何らかの輸入コストみたいなものが追加でかかるようなことがあるのでしょうか。もしそうだとすると、研究体制の情報収集の相手として輸出入業者とか商社の意見も聞くべきではないかという気がするのですけれども、いかがですか。

【国総研】 既に事前に情報提供を義務づけられたりしているところがあったりするものですから、そういうコストが実際運賃に上乗せされたりしていることはございます。そういう意味でコストについても考えるということでございますので、関係者に対してヒアリングを行ったりする際には、商社とか、実際に具体的なことを想定しながら調査を実施してまいりたいと思います。

【主査】 そのほかに。

【委員】 テロ発生時のことですが、テロ発生時に何が起こるかというリアリティをどう把握するかというところが対策の立て方に非常に大きなデータを与えてくれると思うのですが、どう集めるかということが問題です。実は、私の研究室の社会人のドクターの学生がいるのですが、2004年の12月に大津波があって、スリランカで津波のときの応急対応をどうしようかというシステムをつくったのですが、たまたまJICAの専門家としてその災害対策本部に居合わせたときに地震が発生して、スリランカに津波が来るかもしれないという事態になりました。結局大した津波は来なかったのですけれども、そのときにスリランカ政府の対策本部がどう対応して、それが住民にどう伝わったかというのを調べることができたのです。テロというのはほとんど起きないので、そのリアリティを我々が把握することは無理かなと思っているかもしれませんけれども、そういうたまたま偶然という機会もありますから、現実に起きたときに、何が本当に起こって、何に齟齬が生じたかというのを把握するための仕組みをある程度こちらが考えておく必要があるのではないかと思います。国土交通省から各国の大使館に出向している人たちが何人もいますし、恐らくこの研究の過程で各国にヒアリングに行かれると思うのです。たとえそれが予行演習であっても、それなりに彼らがテロのリアリティをどう分析しているかという参考になりますので、先ほどの社会人学生の話はたまたまその騒動のときに立ち会ったということなのですが、それはそれほど確率の低いことではないという前提で、起こったときに、もしくは予行演習でもいいですし、現実にはテロではなかったけれども、それに対してどう動いたか、そのレスポンスが把握できるような例を幾つか収集しないと、なかなか当座の対策が立たないと思うのです。ですから、リアリティを把握できるような例をどこかで探してくる、そして場合によっては人を派遣しておくとか、そういうことをお考えいただけたらどうかと思いました。

【主査】 お願いします。

【委員】 私は非常に重要な研究だと思います。ぜひ実施していただきたいと思います。

 まずシステム全体としてのヴァルナラビリティといいますか、そういうのをきちんと見渡していただきたい。要素の分析も大事ですが、それ以上にシステム全体としてのリスクを分析することが重要です。例えば、クリティカル・インフラストラクチャーに関する議論がいろいろなされるようになってきた。いわゆるシステムとしてのクリティカリティというか、あるいはヴァルナラビリティがどこにあるのか、そういう視点が必ず要ると思います。

 2番目としまして、いわゆるメタ保安システムというのか、保安システム自体の保安を考えなければいけないということです。それがなぜ重要な視点だといえば、対象とするのが自然が起こすリスクではなしに、人間が起こすリスクだということです。システムの弱点がねらわれやすいので、ボトムアップといいますか、システムの弱点、あるいはシステムの保安システムの分析というのか、これをきちんと考慮に入れておくことが必要である。なかなか今までそういう研究はやられていなかったのですが、ぜひすばらしい知見を出していただきたい、世界をリードしていただきたいと思います。

【主査】 何かあれば、お願いします。

【国総研】 自然災害と違って、これは確率論的にできるものではないということは十分認識しておりますので、今御指摘いただいた、人を派遣しているときに実際に災害が起こったというような例も調べたり、リアリティの発揮に向けてそれは十分考慮していきたいと思っております。

 それから、システム全体ということですけれども、我々はもちろん港湾局ですから港湾エリアを考えますけれども、この保安対策はサプライチェーン全体を考えないといけないという認識はございますので、そういった意味でも、先ほど商社の方にも聞くべきだというお話もありましたとおり、単に港だけにとどまらず、この影響はすべての物流に波及することですから、さまざまな関係者からの情報を収集し、あるいは意見を聞いてまいりたいと思っております。

 それから、保安自体の保安といったことも、人間が考えるということで、おっしゃるとおりでございますので、どこまでできるか分かりませんけれども、その点につきましても頭に入れて進めたいと思います。

【主査】 私も、こういう研究は国総研でなければできない研究、大学ではとてもできないような研究です。しかも国としても非常に重要なので、ぜひ実施してやっていただければと思うのですが、1つ、こういうのは余りない研究なので、方法論ですね。今の御発表の中で、動機や成果が出てきたらどのように活用できるかというのはよくわかったのですが、どうやって研究するかというのはなかなか難しいですよね。それは何かモデルをつくるというわけにもいかないでしょうし、掲げられているテーマにどのように取り組むという計画はどうですか。

【国総研】 基礎的な最新情報をまとめるだけでしたらインターネット等を活用すればわかるのですけれども、ただ、それだけでは分からないところがありますから、シンガポールやアメリカといったテロ発生時のことについてもいろいろ検討を行っているところについては直接話を聞いたりすることが必要かなと思っています。

 あとは、なかなか想定が難しいことなので、そこはいろいろ試行錯誤しながら考えていきたい。今のところ具体的な知恵はないのですけれども、専門家の意見を伺いながら、1年目はとにかく情報収集に当たって、今おっしゃったようなことも念頭に置いて、方法論についても御意見をいただきたいと思います。

【主査】 委員の先生に伺うのも変なのですけれども、こういうのは、例えばリスクマネジメントなんかで、さっきの脆弱性評価、システムのどこに脆弱性があるかというのを特定していく手法とか、あるいはシステム全体のとらえ方とか、そういうようなアプローチの方法というのは何かあるのですか。

【委員】 いろいろな分野で検討はされていますね。例えば道路であると、リスクマネジメントのマニュアルというのをPIARCで、日本が幹事国になって検討しています。その辺をいろいろ調べられたら、脆弱性とか、基本的な概念を抑えることができる。テロに関するリスクに対するマニュアルに関しても、たしかカナダがつくっていたのではないかと思うのです。ただ、公表政策というか、どこまで発表するのかというのが一番大きな障害になっています。カナダは随分オープンに発表していますが、それに対して国際的な批判もいろいろあったと記憶しています。

【主査】 ほかにもまだ御意見があるかと思いますけれども、それはコメントに書いていただくことにいたしまして、時間も予定された時間を少し過ぎておりますので、書いていただけますでしょうか。


(事前評価シート回収)


 ほとんどの委員の先生方の御意見が、実施すべきということでございます。重要で、こういう備えをやる必要があるという認識ですので、ぜひ前向きに取り組んでいただければと思います。

 それに当たっては、どういう方法でやったらいいとか、先ほどのクリティカル・インフラストラクチャーの指摘とか、たくさんのコメントをいただいておりますので、そういう御指摘を踏まえて、より取り組みの中身を具体化しながら取り組んでいただければと思います。

 では、そういう方向でまとめさせていただいて、評価につきましてはまた後ほど事務局と相談の上、私の方で取りまとめさせていただきますけれども、それでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

 それでは、本日の第三部会で担当する研究課題の評価はこれで終了でございます。

 本日評価していただきました評価書の作成については、課題ごとに評価を取りまとめて、議事録等を確認しながら取りまとめをさせていただきますので、先ほどお願いいたしましたとおり、私に御一任いただければと思います。

 これで本日の議事はすべて終了いたしました。

 最後に、皆様から全体を通じて御意見等がありましたら、お受けいたしますけれども、いかがでしょうか。よろしいですか。

 それでは、皆さんに大変御協力いただきまして、本日は非常にスムーズに議事も進行いたしましたので、これで進行を事務局の方にお返ししたいと思います。どうもありがとうございました。

【事務局】 どうもありがとうございました。

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4.今後の予定等について

【事務局】 それでは、簡単に事務局より御連絡を申し上げます。

 先ほど主査からお話がありましたように、議事録については委員の皆様方に確認をいただいた上で主査に確定していただくこととなります。 

評価書につきましては、先ほど主査に一任となりました。
なお、本委員会委員長の合意を経て最終決定されることとなります。

 また、他の分科会において作成された評価書もあわせて、決定次第送付させていただきます。

 報告書につきましては、議事録及び評価書が決定された後、これらを取りまとめた分科会報告書を作成いたします。

 公表につきましては、議事録、評価書、報告書について公表することとなりますが、議事録におきましては発言者名を伏せた形で公表いたします。

 本日配付さしあげましたお手元の資料につきましては後日郵送させていただきますので、そのまま机の上に置いていただければ結構です。

 以上でございます。

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5.国総研所長挨拶/閉会

【事務局】 それでは、最後に国総研所長よりごあいさつを申し上げます。

【所長】 本日はというか、本日も熱心な御審議を本当にありがとうございました。

 御審議を聞かせていただきながら私も何となく感じていたことがあって、我々の世界は背景についてはそれなりにしっかり把握しているように思うのですが、成果が出た暁にどうしたいとか、こういうふうに使いたいというところが若干、きょうも御指摘が幾つかあったように思いますが、弱いかなという感じがいたしました。きょうもいろいろ御意見をいただきましたので、今後、例えばモデルができて満足するのではなくて、その先のことをもっと語れるように指導してまいりたいと思っております。

 また、事前の評価につきましてはたくさんよいヒントをいただいたと思っております。また一部は勇気づけてもいただいたと思いますので、これからブラッシュアップいたしまして、何とか予算獲得するべく努力したいと思います。また、その後、うまくいきましたら、研究のスタートに向けていろいろ勉強していきたいと思っております。

 また、いずれは中間・事後の評価もいただくことになるかと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

 長時間の御審議に御礼を申し上げまして、終わりのごあいさつとさせていただきます。本当にどうもありがとうございました。


【事務局】 以上をもちまして平成21年度第2回研究評価委員会分科会を閉会いたします。本日はまことにありがとうございました。

午前11時47分 閉会

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