平成21年度 第1回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第一部会)

議 事 録


1. 開会/国総研所長挨拶
2. 分科会主査挨拶
3. 議事
(1) 評価の方法等について(確認)
(2) 平成20年度終了研究課題の事後評価
@地域被害推定と防災事業への活用に関する研究
A下水道管渠の適正な管理手法に関する研究
B地域活動と協働する水循環健全化に関する研究
C災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットホームの開発
D地方都市再生に向けたLRT活用方策に関する研究
(3) 平成22年度開始予定研究課題の事前評価
E美しいまちづくりに向けた公共事業の景観創出の効果分析に関する研究
F気候変動下での大規模水災害に対する施策群の設定・選択を支援する基盤技術の開発
GグリーンITSの研究開発
H3次元データを用いた設計、施工、維持管理の高度化に関する研究
4. その他
今後の予定等について
5. 国総研所長挨拶/閉会

 


平成21年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第一部会)
平成21年7月15日


1.開会/国総研所長挨拶

【事務局】 皆様おはようございます。定刻になりましたので、平成21年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第一部会)を開催いたします。それでは、国総研所長よりごあいさつを申し上げます。

【所長】 本日は御多忙中、また梅雨明け直後のとても暑い中お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。もう9年目になりますが、毎年委員の先生方に私どもの研究を的確にチェックしていただきまして、非常にありがたく思っております。

今回も事前が4つ、事後が5つということで、かなりたくさんの課題を用意させていただいておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。我々も、既に一度内部の評価委員会というのをやっております。必ずしも全部が順調にうまくいっているというわけではございませんが、今後につながるように率直な御意見を承ればと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

きょうは長時間よろしくお願い申し上げます。



2.分科会主査挨拶

【事務局】 それでは、主査にごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【主査】 おはようございます。年に一度の恒例の長丁場の評価が今年もやってきて、ようやく夏が来たという感じになっております。そう言うと年中行事っぽくなってきているのですが、大事な仕事だと思っておりますので、私は変わっておりませんが、決意も新たに頑張りたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 それと、先生方には長丁場でございますので、ペース配分をよくお考えの上で、余り最初から入れ込み過ぎると後で疲れが出たりしますので、公平性の観点からもぜひよろしくお願いを申し上げてあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【事務局】 ありがとうございました。

 それでは、以降の進行は主査にお願いをいたします。


3.議事

(1)評価の方法について(確認)

【主査】 それでは、議事次第がいっぱいあって大変なのですが、「評価方法等について」の確認から始めたいと思います。お願いいたします。

【事務局】 資料2をごらんください。名簿の後ろになります。「評価の方法等について」と書いてございます。

 まず評価の目的といたしましては、「科学技術基本計画」、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」等に基づき、公正かつ透明性のある研究評価を行うということで、外部評価委員会という形で評価をお願いしてございます。

 評価の対象でございますが、所として重点的に推進する研究であるプロジェクト研究及び予算要求のため評価が必要となる研究課題を評価対象としてございます。

 事前評価、中間評価、事後評価とございますが、今回は平成22年度から取り組む事前評価を4本、それから平成20年度に終了いたしました事後評価を5本、中間評価の対象はございません。

 評価の視点、項目でございますが、それぞれ必要性、効率性、有効性の観点を考慮して、自己点検結果をもとに評価をするということになってございます。

 事後評価につきましては、当初の目標に対する達成度、研究成果と成果の活用方針、研究の実施方針、体制の妥当性、それらを踏まえた研究の妥当性という視点から評価をいただきたいと考えてございます。

 事前評価につきましては、研究の背景を踏まえた研究の必要性、研究の実施方法、体制の妥当性、研究成果の見込みと成果の活用方針について評価をいただきたいと考えてございます。

 具体に、本日の評価の進め方ということで、御説明をさせていただきます。

 本日は、事後評価を最初に5件、それから事前評価を4件の順番で、それぞれ案件ごとに評価をお願いすることにしております。

 それぞれの評価課題につきましては、担当から御説明を申し上げ、委員の皆様で御議論をいただくことになってございます。それぞれ委員の皆様にはお手元に評価シートがございますので、それぞれ皆様で御議論いただき評価シートに記入をいただき、それを事務局で回収をさせていただき、主査にまとめていただくという流れになってございます。

 事後評価につきましては、説明が15分、評価については質疑を含めて20分、主査のまとめとして委員の皆様に評価シート、あるいはコメントシートに御記入をいただき、事務局で回収して取りまとめて5分。全体で1件につき40分で予定しております。皆様、お手元に先ほどお配りしたパワーポイントの紙を見ていただければと思います。それから事前評価につきましては、説明10分、評価につきましては主査のまとめを含めて15分、全体で25分という流れを予定してございます。

 なお、評価詰果の取りまとめにつきましては、審議内容、評価シート及びコメントシートに基づき、主査の責任において取りまとめていただき、研究評価委員会委員長の同意を得て、国土技術政策総合研究所研究評価委員会の評価結果とさせていただくこととなってございます。

 また、評価結果につきましては、報告書に取りまとめをしまして、ホームページ等で公表することとしてございます。

 別添1というのがその後ろの方に資料がついていると思いますが、これは利害関係者が評価に加わらないようにするということでございまして、今回は該当がありませんことを御報告させていただきます。 
 資料については、このとおりでございます。事務局から評価の方法等については以上でございます。

 なお個別課題の説明につきましては、パワーポイントと様式ということで、横にパワーポイントがあって、この後ろに一緒にクリップで綴じてございます。縦に様式がついているという形になってございます。パワーポイントが若干見にくい場合は、お手元の資料を参照いただければと思います。以上でございます。

【主査】 今の確認に対して、何か御質問等ございますか。

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(2)平成20年度終了研究課題の事後評価

〈事後評価〉@地域被害推定と防災事業への活用に関する研究

【主査】 ないようでございますので、早速議事(2)の平成20年度終了研究課題の事後評価に進んでまいりたいと思います。5件ございます。1つ40分ずつということでございますが、最初の第1番目が「地域被害推定と防災事業への活用に関する研究」でございます。説明をお願いいたします。

【国総研】 それでは、地域被害推定と防災事業への活用に関する研究について御説明申し上げます。よろしくお願いいたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに   ・ の表示〕

・ このプロジェクトにつきましては、3つの部・センターで、18年度から20年度にかけて行ったものであります。

・ まず研究の背景でございます。近年、自然災害が多発している中で、財政的な制約がますます厳しくなってきていますので、効率的な防災対策の実施がますます必要になってきていると思われます。そうした防災対策の効率的な実施、例えば優先度でありますとか重点実施とか、そういったことには施設あるいは地点ごとのリスク評価というものが不可欠となります。

 しかしながら、施設によっては評価手法が不十分であったり、あるいは未確立のものがあると思います。例えば、土砂災害につきましては、ソフト対策による効果というものの評価がなかなかやられていない、あるいは水害につきましては、都道府県管理の中小河川などですとデータがないので治水の安全度の評価ができない、あるいは地震、津波による複合災害の評価というのは十分なされていないというのが現状であります。

・ このプロジェクトの目的としましては、大きく2つ挙げております。目的の1つ目としては、種々の災害に対して施設または地点ごとの被災リスクの評価手法の高度化を図ろうということです。具体的には土砂災害については、住民の避難による効果や被災確率を考慮したリスクの評価手法を考えようというものです。また、水害については、先ほど申し上げましたように、データが十分ないような中小河川等で治水の安全度評価を行うための方策、あるいは複合災害として、地震・津波について各種の公共施設の被災度の評価手法をまとめていこうということであります。

 また目的の2つ目として、1つ目の目的である個々の被災リスクに基づいて、防災事業をどうやって合理化して効率的にやっていくかということのための支援方策を提案していこうということであります。

 具体的には、ここでは地震・津波の災害について取り上げました。また、あわせて防災訓練の実施の方法等を提案していこうということで、これらによって防災対策を効率化するとともに、自然災害による被害を軽減していこうというプロジェクトであります。

・ 研究の実施体制でございますが、3つの部・センター、5研究室で行い、全体の研究の進捗でありますとか、管理のために連絡会議を設けて進めております。また研究の水準の向上のために、情報収集あるいは意見交換ということで、関係の学会等から情報の収集等を行いながら実施しました。

 またこの研究では、特に研究成果が実務へすぐ適用されていくようにということで、現場の地方整備局の事務所等と意見交換を行うとともに、成果をフィードバックしながら研究を進めてきております。

・ 研究の成果でありますが、各種の災害についてありますが、ここでは主なものについて御報告させていただきます。

・ まず土砂災害についてですが、警戒避難体制といったようなソフト対策も今重点的に行われているのですが、これらの住民の避難行動、そういったソフト対策の効果を評価できるような方法がなかったということで、このプロジェクトの中では土石流の氾濫計算に、マルチエージェント法を用いた住民の避難計算を組み込んだ手法を開発しております。これによって、土石流の確率ごとに土石流の影響範囲でありますとか、被害を受ける家屋数、あるいは住民の避難の可能性というものを計算して、トータルとしてのリスクの評価手法として提案をしたということであります。これについては、実際どうやって使っていくのかというところを今後検討していく必要があります。

・ 次に水害の関係であります。水害については、都道府県管理の中小河川ではデータが不十分ですので、治水安全度の評価が行えないということがあります。国交省で、1級水系についてはレーザープロファイラのデータを取得して、それに基づきまして100mピッチで河川の横断図を作成し、合理式による流量との比較計算で安全度の評価を行っております。これについては、109水系に対して71の水系で既に計算を実施して、結果を公表しております。

・ 次に地震・津波の複合災害に対するリスク評価の手法であります。これにつきましては、従来地震と津波、両者の影響を一連のものとして評価するようなものは十分ではなかったということで、この研究では共通の地震動あるいは津波に対しまして、まず地震が来てそれから津波が来るといった一連の作用外力として考慮することができるような被害の想定手法をつくりました。それを、海岸・港湾・河川・道路施設という管理者の異なる施設についての被害想定手法として取りまとめました。成果は、「公共土木施設の地震・津波被害想定マニュアル(案)」として公表しています。

・ 地震動としては最大加速度、SI値、震度というものを想定し、これに対して例えば道路であれば地震動で橋梁に損傷が出るかどうかというのをまずチェックします。その後、津波の高さ等を与えまして、波力によって橋梁が流出するかしないかといったことを一連のフローでチェックし、さらに道路施設であれば道路としてすぐ通行が可能かどうか、といったところまで評価をするというものであります。あわせて海岸の堤防であれば、堤防が沈下することによって、その後の津波の波高から浸水の状況等を評価するということであります。こうした被害の想定の手法をつくりました。

・ これがその適用例でありますが、四国地方整備局の事務所の協力を得まして、高知県全体についてこういった被害想定図をつくっております。

・ 続きまして、リスクの評価はされたのですが、ではそれをどうやって防災対策の効率化に役立てていくかということであります。これをフローで示していますが、地震・津波の被害の想定を行い、それでシナリオができるということで、防災訓練の実施でありますとか、あるいは避難場所の確認、孤立する危険区域がどこかというのが特定されて、では事前に施設の補強等をしていくべきものはどれかといった優先度が設定できます。あるいは応急復旧の立案でありますと、例えば被害想定がなされましてがれきの量が算出されますと、それに対してここにはA市、B市と書いてありますが、地区ごとの重機とかオペレーターの量、数でどれぐらい復旧に時間がかかるかというのが推定できます。復旧に時間が非常にかかるようなところについては、余裕のあるところから機材を持っていくとか、あるいは市町村であれば事前の協定等を検討していくといった提案をまとめているところであります。

・ 研究成果の活用ということで説明します。水害でありますと71水系について既に安全評価を行って国総研のウェブで公表しております。地震・津波につきましては、現場事務所と共同でやっておりましたので、既に結果をそれぞれ地震対策で活用されているところですし、また、それぞれマニュアル等をまとめ、配布をしているという状況であります。

 最後にまとめで、本研究開発の妥当性ということでございますが、まず被災リスクにつきましては、それぞれ個々の対象についての高度化はそれなりに図られた、特に地震・津波についての想定手法も構築したということと、一部の成果は既に現場でも活用されているということで、トータルとしておおむね妥当ではなかったかと評価をしております。

 今後につきましては、リスク評価の手法の個々を見ていきますと、対象によって提案手法をつくったといったようなところまでで、今後事業の合理化へ向けた支援策としてどうやって使っていくか、そういったところをまだやっていく必要があるものがありますので、その辺は進めていきたいと考えております。

 さらに、今度は地域全体の防災力の向上という観点からの研究開発ということで、ソーシャルキャピタルの特性に応じた地域防災力向上方策という研究プロジェクトが今年度から始まりますが、そういった地域全体の向上策について進めるとともに、このプロジェクトでは地震・津波という複合災害を取り上げましたが、例えば地震と洪水でありますとか、そういった複合災害に対するリスク評価について研究を進めていきたいと考えております。以上でございます。

【主査】 ありがとうございます。

 それでは、皆様方からの御意見をいただく前に、他部会とか欠席されている方からの意見などはあるのですか。

【事務局】 ございません。

【主査】 ではそれはスキップして、今の御説明に対して御質問やコメントをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

【委員】 個々の研究につきましては大変良い研究をされているなというふうに思いました。それで、最後の複合災害のところで、今回は地震・津波複合災害を対象にされたということですが、津波と水害、または土砂災害と水害などもかなり一緒に起こる現象ですので、例えば土砂災害で出てきた土砂が水害を助長するというような複合的なことも考えられる。そういったことはこれからどんどん進めていかれるのかということを最後にお聞きしたので、といっても、その辺の今後の研究の進め方はどういうふうにお考えかなということと、研究体制みたいなものですね。

 2点目は、この研究では主に2つに分かれて、1つはリスク評価ということともう一つは防災事業の合理化ということで、合理化につきましては地震・津波について今回対象にされたということなのですが、いわゆる土砂災害、水害についての合理化ということについては、今後どういうふうにお考えかなということについてお聞きしたいと思います。

【国総研】 まず1点目ですが、危機管理技術研究センターの中に、土砂災害を担当する砂防研究室と水害を担当する水害研究室、さらに地震防災研究室があります。本センターの中でもそれらを組み合わせた複合災害もやっていけると思うのですが、そこにとどまらず外部ともいろいろ意見交換しながらやっていきたいと思います。

 2つ目の、土砂災害と水害の成果について、防災事業の合理化にどうやって役立てていくかという点ですが、・・。

【委員】 いわゆる合理化の話で、今回地震関係の合理化ということで研究されて大変結構だと思うのですが、水害、土砂災害についての合理化についても今後検討されるかなということをちょっとお聞きしたかったなと思ったのです。

【国総研】 例えば土砂災害では、今回やったのはソフトとハードの組み合わせみた点ですが、そのあたりを進めていくという面があると思います。

【委員】 最後に関連して、複合災害をやろうとするといろんな研究室が共同してやらないといけないということになると思うのですが、ここではいわゆる研究連絡会議というのを開かれてやったということなのですが、これをどの程度の頻度でやられたかということと、この研究連絡会議というものがいわゆる共同研究の中の実質的な行動なのかということだけ少し教えていただきたい。

【国総研】 中心はやはりそうでした。全体で3つの部・センター、5研究室なのですが、全体として集まるのは年数回ということだったと思います。ただ、地震・津波については1つの報告書をまとめるということもありまして、開催回数までは明確ではないのですが、実質一緒に作業をしながら進めてきております。

【委員】 毎回何か言っているようですが、横断的な研究の連携をぜひ進めていきたいなと思って、ちょっと質問しました。

【委員】 今回、横断的な研究をされたということで、これは研究の成果だけではなくて、同時に人間を育てる、研究者を育てていくという面が非常に大事だと思うのですが、プロジェクトリーダーとして、例えば今地震と津波を取り上げて複合的な災害を見渡すような、これまでセクター別にやっていた人たちが一緒に研究することによって複合的な目を持てるようになるという目から見ると、このプロジェクトは人間を育てる、研究者を育てていくという面でも非常に有効であったといえるでしょうか。どの側面で具体的にこういう人材が複合的な目を持てるようになったというような実感をお持ちかどうかというのをお伺いしたいのですが。

【国総研】 なかなか答えが難しいのですが、例えば地震・津波でいくと、海岸から港湾、道路、河川というふうにいろんな施設が入ってきます。例えば地震に対する被害のリスク評価などについても、それぞれのやり方があって、それぞれがいろいろと違うということを横並びで理解することだけでも意味はあったのではないかと思います。

【委員】 このような研究成果というのは、組織として蓄積されるという面と、それから個人の中に蓄積されるというのがあるのです。個人に蓄積されたものを今後とも活用していかれるかなというところが気になっているということです。

【国総研】 地震・津波については、被害想定の報告書はまとまったのですが、いかにそれを事業の効率化に向けていくかというところは今マニュアルとしてまとめているところです。そういう作業とともに、あるいはプロジェクトの報告書をこれからつくりますので、そういったところでも共同的な作業をしながら、なるべく継続的に行くようにはしていきたいと思います。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

【委員】 1つは質問、もう1つはコメントとして2つお聞きしたいと思います。今回のプロジェクトというか研究の課題というのは、防災リスクの評価指標をしっかりつくっていくということと、もう一つはリスクに対する防災の合理化支援方策をつくるということなのですが、全体丁寧には見ていませんが、若干災害対応については地震・津波のところだけが取り上げられていて、土砂災害だとか水害については余り記述がないというのは、そちらの方だけ特化されてその対策の方を考える、研究対応の効率化を考えたという御趣旨なのかというところが1点目。

 もう一つは、全体的に見て自己評価の中でも、後半の津波・地震のところがかなり充実された形で現場にも反映されたという事例も含め説明の中でも重点的に説明されたものだと思います。正直後ろの公表状況を見ても、発表論文はそれに関連するものが多く出ていて、土砂災害と水害については比較すると極端に少ないというように見かけます。一方でレポート類だとかマニュアル類は水害だとかあるいは土砂災害の方にも出ているということで、別の形では成果発表されていると思うのですが、この種の成果というのはマニュアルという形ではなくて、研究レベルでやられておられるので、もう少し国際的な場も含めて研究成果発表を学会の場でするということも非常に重要かなと思うのですが、その点についてお聞きしたいと思います。

【国総研】 1点目ですが、地震・津波の関係がたくさん書いてあってという話ですが、今回なぜ地震・津波を強調して説明したかといいますと、全体については3部、5研究室ですが、そのほとんどが関係したのが地震・津波であるということと、2つの大きな目的を両方対象としていたのが地震・津波であったので、わかりやすいと思いまして、それを説明させていただきました。

 あと研究発表については、ぜひ関係の研究室にどんどん発表してもらいたいと思っております。土砂災害と水害については、方法を今回つくったという段階なので、外への発表が十分でなかった面はあろうかと思いますが、これから海外を含めいろいろと発表していきたいと思います。

【委員】 地震・津波、複合災害の被災度評価書を構築と、とても斬新ないいお話を聞かせていただいたと思うのですが、やはり研究が実際にどう生かされるかというところに非常に興味がありますし、その結果、住民の安全がどう守られるのか、そこまで行くのが研究の最終的な目的だと思うのですね。そういった意味で、ここにも記載していただいていますが、九州地整さんとか土佐の国道事務所さん、紀南の河川国道事務所さん等で地震対策に活用と書いてあるのですが、ちょっと具体的にこの追加のコメントをいただければと思います。

【国総研】 先ほどの説明の中でもちょっと触れたのですが、四国の例では、四国の一部の図面のみを示しましたが、ここにありますように、高知県の海岸沿いほとんど全部についてこういった図面を事務所と一緒になってつくりました。南海地震に対して被災想定をしたものです。先ほどの説明の中で詳しく言っていませんが、地震に対してどういう防災訓練をしたら効果的かといったような点についても研究していまして、手引きもつくって事務所等に配布しております。事務所の方では、まず被災の想定を事業の優先度、補強するのだったらどこからやったらいいかとかいった優先順位の設定のための参考にするとか、あるいは訓練についてはこの春にまだ配布したばかりなので本格的にはこれからなのですが、それも使って、例えば事務所の中でそもそも参集のところ自体が弱いとか、最初の初期の調査のところの仕組みがうまくできていないとか、そういったのをチェックすることでどの部分が弱いかというのがわかるようなものをつくっております。被災想定結果を使って、訓練や事業の中にも反映していくといったような意味で活用されつつあるということであります。

【主査】 質問ですが、この次のスライドをちょっと見せていただけますか。右上の被害想定例というのは、どこかの1地区だけということですか。これは高知県全体でそれということ。

【国総研】 これは高知県全体ではなくて、ある部分を切り抜いて示しています。例としてこういう使い方がありますということを示しています。

【主査】 これは非常に感心していたのですが、ある地区だとするとこれぐらい細かく、想定ですが、ある種の蓋然性を持って推定ができるということはすごいことだなと思いまして、特に復旧日数の試算という点からすると、B市は60日もかかるということで、高知だと尾崎知事は「命の道」という言葉の発案者なのですよね。今ちょっとはやっていますが。そういうことからすると地域力といいますか、そういう意味での重機の各地域での維持をするとか、それのオペレーターの維持をするということから、建設業というのをどう考えるのかとか、そんなことまでつながるような推定結果だと思うのですね。だからそういう意味では、災害時だけではなくて平時ですよね、ソーシャルキャピタルということを書いておられましたが、それはその地域の産業あるいは安全保障装置としての建設業のあり方とか、自治体の役割とか、そういうところにも即広がっていくような、これからの大事なテーマへの糸口がここに1つあらわれているのかなと思いまして感心して聞いておりました。

 それと2番目なのですが、これは別に批判して言っているわけではなくて、ほかのところでもこんなふうにできればいいなと思うのですが、これも国総研としてデータをとって全部やられたわけですよね。中小河川も109の水系、これ全国すべてということですよね。そういうときに、国と地方との役割分担の中でどこまで国ができるのか、すればいいのか、あるいはそのときの役割のあり方というのを考える上で、これは非常に画期的なことだなというふうに私自身は思いました。県は技術力がないので国総研がかわってやってあげるということを、どういうふうにこれから定常的にしていくのかあるいはしないのか、あるいはその中で自治体、県に任せるべきものをどう考えるのかというふうなことですね、これは未来永劫ずっと国総研でやっていってデータ更新等ができればいいと思うのですが、それはなかなか難しいという点から、ここで開発された手法なりシステムなり、あるいは蓄積したデータを今後どのように活用していくのかということに関して、何かお考えがありましたらお聞かせください。

【国総研】 レーザープロファイラのデータは国交省で全部取得をしたものです。この成果自体は、国総研のウェブで公開をしています。一般の方から、うちのあたりはどうなっているのかとか、まだやってくれないのかというような問い合わせがあったという話も聞いています。109のうち71になっているのですが、残りについては、県によってはデータがあるところは自分でやりますというような面もありますので、できるところをやって公開をしているところです。

 今後なのですが、今こういう成果を出しているのですが、次にレーザープロファイラのデータをどのように使っていくかということで、今、国総研と本省、地方整備局間のネットワークをつくって相互に見られるシステムをつくることと、あとアプリケーションをどうしていくかといったことを検討し始めているところでございます。

【主査】 ありがとうございました。ほかにないようでしたら、事後評価シートを書いて、もう書いていただければと思います。集計をして取りまとめに入りたいと思います。

(事後評価シート回収)

【主査】 その間、感想とか何か言いたいことがありましたらお願いしたいと思いますが。どうぞ。

【委員】 将来的に、先ほど砂防と河川の議論がちょっと弱かったという話もあったりして、実際に僕も実はいろんな委員会なんかに出ていると、砂防の委員会だと土砂だけの議論で、いわゆる砂防計画上で安全度を確保するという。でもそれは当然下流につながりますよね、河川の区間に。火山防災なんかやっていてもそんな感じがするのです。その辺の将来的には計画論としても、今言った砂防は砂防だけだとか、河川は河川だけだとかそういった計画論ではなくて、つながったような形の計画論も考えられるという、そんな構想はあるのですか。

【国総研】 砂防と河川というと、ある意味つながっているのですが、必ずしもつながらないところもあります。全体として水の流れとしてつながっていく中で、流砂系というような言葉で代表されるように、流域全体で海岸まで含めていかに全体の水・土砂の流れを一体的に考えていくかということはずっと研究が続けられております。実は国総研のプロジェクト研究の中の継続課題で私がプロジェクトリーダーをやっているのがありますが、引き続き研究を進めているというところであります。本省の全国レベルになりますが、モデル流域を設定して、そこで流砂系全体の土砂の流れをいかにうまく整合させていくかといったことも、事業レベルでもやられているところです。

【主査】 いいですか。集計も終わりましたので、では取りまとめをさせていただきたいと思います。そこに書いてありますように、結論的にはおおむね目標を達成できたなと。これは上も下もそういう結論にさせていただきたいと思います。

 先生方からコメントを具体的にいただいておられまして、セクター別に検討をされてきたものを連携して、そういう体制をきちんとつくって、成果もたくさん出されているということとか、あるいは自治体の役割とかさらに連携の輪をこういうツールを生かして広がりを今後考えてほしいとか、複合災害の対策のプライオリティとか避難方法、避難計画の立案等に具体的に活用していただきたいとか、あるいは私も申し上げましたが、平時にどういう備えをしておくのかということへのインプリケーションをいっぱい含んでいるように思いますので、その辺をぜひ踏まえて今後さらに前向きにやっていただきたい。

 ただ、地震と津波に特に焦点を当てたというふうな御説明をいただきまして、私は資源の有効活用という点からそういう戦略もあるのかなというふうにも思いましたが、先生方の中にはやはりちょっと河川、洪水が弱いのではないのという御意見もございましたので、それはまた今後の研究計画の中に生かしていただければと思いました。それでは、そういう結論にさせていただきたいと思います。

 評価結果については、また事務局と相談して取りまとめさせていただいて、後ほど御確認の意味で、メールで審議をお願いするという、そういう手続を踏ませていただきたいと思います。とりあえずはそういう評価の取りまとめにさせていただきたいと思います。よろしゅうございますね。どうもありがとうございました。では御苦労さまでございました。

【国総研】 ありがとうございました。

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〈事後評価〉A下水道管渠の適正な管理手法に関する研究

【主査】 それでは、2番目の事後評価でございますが、「下水道管渠の適正な管理手法に関する研究」でございます。よろしくお願いいたします。

【国総研】 「下水道管渠の適正な管理手法に関する研究」の研究成果について御説明をさせていただきたいと思います。

 この課題は、下水道研究部が平成18年度から20年度までの3カ年間にわたり実施したものでございます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ まず「研究概要」ということで、研究の背景と主な実施内容について説明いたします。

 下水道施設の老朽化が進む中、下水管渠が原因になっております道路陥没が多発してございます。左の下のグラフをごらんいだたきたいと思いますが、年度別の道路陥没の件数を縦棒グラフで掲げてございます。それから、累積の管渠の延長も一緒に示してございます。ただいま現在全国約40万kmの管渠がございます。その中で年間このところ4,000件規模の道路陥没が発生しております。

 一方、人口減少あるいは少子高齢化という中で、下水道事業に対する料金収入も減少してございまして、下水道事業の経営が非常に逼迫してございます。こういう中で、維持管理、改築に対する投資が急増することを抑制いたしまして、合理的な調査あるいは改築手法を構築することが求められてございます。

 こうした中で、この研究におきましては、以上3つの点を重点的に実施しました。

 1番目が、全国の実態調査、あるいは主だった都市のワークショップを通じまして劣化特性を把握、これを用いまして不具合の評価指標を抽出いたしました。

 2番目が、この評価指標を用いまして、管渠の調査・改築に対する優先度を決定する手法を構築しました。

 3番目は、劣化特性を考慮いたしまして、管渠の健全率予測式を構築いたしまして、管渠調査・改築の将来にわたる必要量を算出する手だてを検討いたしました。

 右下の方にフローがございまして、それぞれ色が分かれていますが、これが今申し上げた3つの点に相当するものとなってございます。これらについて順次詳しく御説明を差し上げます。

・ 1点目、劣化特性の把握でございます。不具合評価指標の抽出ということでございます。これに関しましては、全国の12都市の中から17万スパンの管渠のテレビカメラ調査を中心といたしまして全国のさまざまな維持管理の関連のデータを集めました。ここから劣化特性というものを把握してございます。

 不具合の指標の項目に関しましては、劣化特性あるいは代表都市でのワークショップの中から抽出を行っております。劣化特性の評価指標の項目については、主に下水道の管理台帳、あるいはテレビカメラを中心としました管渠の中の分析から抽出しております。またワークショップでは、埋設管渠のエリア特性の項目を抽出いたしまして、それを評価指標として適用しました。

 この結果といたしまして、指標として取り出したものでございますが、一番下のところに掲げてございますが、経過年数、取付管の本数、これは主に不具合可能性で適用いたしました。それから管径、土被り、これは陥没の重大性で適用いたしました。圧送管、避難場所の有無、救急病院の有無、これはエリア特性の方で適用いたしました。こういう項目を全国の調査等から抽出し、指標化をしたところでございます。

・ 続きまして、ただいま抽出いたしました指標を用いまして、管渠調査・改築優先度決定の手法を確立いたしました。これは、実際にこの指標をもとに代表都市において、ケーススタディを実施して求めてございますが、ここでは3つの観点を私どもとしては考えました。

 1つ目が不具合発生の可能性でございます。これにつきましては、不具合の発生の可能性を主に経過年数あるいは取付管本数、これが主要な説明因子になるだろうということで分析の結果結論づけまして、これを右の上の方のいわゆるロジスティック曲線、こちらの式に当てはめるとうまく説明がいくということがわかりましたので、こちらの方で今例を示しておりますが、このような形でまとめて、いわゆる不具合の発生の可能性を出そうとしております。

 陥没の発生の重大性につきましては、陥没が起こった場合の被害から重大性を求めることにしております。

 エリア特性に関しましては、そのエリアに例えば地滑り区域がある、圧送管がある、あるいは緊急避難場所がある、緊急指定病院がある、幹線がある、こういうものをエリアの中の有無を点数化しました。これは定量化が非常に難しいところでございますので、いわゆる一対比較法でどちらが重要かということをそれぞれで求めまして、点数化をして求めたところでございます。

 右下のところに、1つの適用例ということで示してございます。不具合のリスクということで、赤いところが不具合の計算をした場合の点数が一番大きかったところでございます。その上に凡例で幹線ですとか地滑り、避難場所、病院とかの凡例も出ていますが、こういうものの有無が、こういう不具合のリスクに反映されているところを見ていただけるかと思います。このような形で各自治体のそれぞれのエリアの特性あるいは管渠の埋没、埋設の状況、それに合わせまして優先度を決定手法というものをつくり上げたところでございます。

・ 続きまして、管渠の調査・改築の将来にわたる必要量の算出ということでございます。これにつきましては、劣化特性を踏まえまして、マクロの視点でとらえました。マクロの視点と申し上げますのは、1本1本の管渠はそれぞれさまざまな劣化がございますが、それを追いかけるのではなくて、全国あるいは1つの都市をあたかも1本の管渠であるかのようにとらえまして、それが経年変化でどのぐらい劣化していくかを予測したものでございます。

 右の上の方にグラフがございます。これは私どもが健全率の予測に使う一番もとのグラフでございまして、このプロットしている点がどんどん経年とともに下がっていく、劣化が進行していく、健全率が低下していくところが見ていただけるかと思います。この結果を用いまして将来の事業量を予測したものが、下の右の方の図でございます。比較のために左の方に非常に単純に、建設から経過50年したら取りかえる、こういうケースを200年分やってございます。のこぎり型のピークが4つ出た形になってございます。過去の管渠の埋設がこういう形をしておったのをそのまま反映して、これで申しますとこれはモデル都市を想定いたしまして、年間当たりピークで16km改築をしなければいけないことになってございます。

 右側の図で、私どもが考案いたしましたこの健全率の予測式を用いますと、見ていただけるように、いわゆる平準化が図られるということで、ピークの量で申しましても大体半分ぐらいの年間8kmぐらい、このようになだらかに平準化が行われるとしています。なお、この場合、現在の時点でもまだ改築がされずに積み残した管がございますので、これは最初の10年間で解消するという、そういうシナリオを考えて試算をしたところでございます。ということで、私どもが考えました劣化特性を使いまして平準化というものが図られるということを今回明らかにしたところでございます。

・ これを現在の実際のペースと比較したものが左のグラフでございまして、単純に50年以上経過したものを延長割合で考えますと、約20年後に左側のグラフのブルーの縦棒グラフを見ていただきたいのですが、大体13%ぐらいまで50年以上の管渠の割合というものが増加いたしますが、本研究の予測によりますと、20年間で総延長の約34%ぐらいまで増加するということでございます。ということは、50年で管渠を改築するよりもはるかに多くの改築が必要となるものが現在存在するということでございます。

 右側のグラフは、現在の改築のされ方の実態でございまして、ほぼ平均しますと全体の0.07%が改築されているということでございます。これをもとにしまして、左側のブルーの縦棒グラフの方は計算をしたものでございます。以上が今回の研究の一番メインなところでございます。

・ 今回の研究の成果の活用につきましては、主に参考資料でもつけておりますが、学会等での発表の論文の公表等を多数行っているところでございます。成果の目標の達成度の自己評価といたしましては、おおむね達成されている、あるいはかなり達成されているというふうに評価してございますが、マニュアルの作成につきましては今年度少し残った分がございますので、今年度中に完成をさせる予定ということで、ここは△ということで評価をさせていただいているところでございます。

・ 本研究成果の妥当性に移らせていただきます。3点挙げてございますが、全国的な実態調査に基づいた解析を行いまして、実際の管渠の埋設状況に沿った劣化特性が把握できたと考えてございます。法定耐用年数50年ということになってございますが、これ未満でありましても改築が必要となる管渠が存在するということでございます。これを適切に進めるということで、陥没等の事故の未然防止を進めることを可能にしたと考えてございます。

 また評価指標の抽出におきましては、下水道事業体の維持管理のベテランの職員の方を交えたワークショップによりまして、職員の経験あるいは意見を反映できたかと思っております。これを使いまして、大都市だけでなく技術者の不足しております中小都市へも技術移転が可能となったと考えてございます。

 現在国におきましては、さまざまな制度がございまして、これを支援するあるいは地方自治体におけるいわゆるストックマネジメントの促進にも今回の本研究の結果が活用できる、こんなふうに考えてございます。

・ 成果の活用に移らせていただきますが、2点ございまして、1点目は先ほど御説明しましたマニュアルの作成、これは今年度中に完成させる予定でございます。2点目は、現在の下水道法施行令に管渠の維持管理に関する規定がございませんので、これの追加を提案したいと考えてございます。

 今後の課題といたしましては、今回提案いたしました健全率の予測式のデータは、大都市を中心に集めたものでございますので、中小都市のデータも関係機関と連携しながら収集をしていきたいと考えてございます。また、多くの自治体で管渠の調査が十分なされていないという実態がございます。これは、理由といたしましてはテレビカメラを用いた技術には精度及び速度に課題があると私ども考えてございますので、これの改善に向けた技術開発も行っていく必要があると考えてございます。

 以上、説明を終わらせていただきます。

【主査】 ありがとうございます。

 他部会からのコメントもないということでございますので、早速委員の皆さんから御質問あるいはコメントいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【委員】 今回の下水道の管渠のストックマネジメントにかかわる貴重なデータと、将来どういう対策が必要なのかというか、事業が必要なのかをわかりやすく整理をしたということで、大きな成果が出たように理解しました。実際上先ほどの説明の中で近年の改築実施率の傾向を見ると、0.1%にも達していないということは、単純に100で割ればとんでもない年数じゃないと置きかわらない。100年もつとしても、1%のものが置きかわらないとだめだというようなことを単純に考えると、方法はできたのだが実際上は動いていない。老朽化したストックが累積していくという予測がされていて、問題点は確かに提示はされているのですが、それに対してどう進めていくのかというところが余りにもギャップが大き過ぎます。今後の課題なのかもわかりませんが、そこら辺について何かお考えだとか検討された内容はございますでしょうか。

【国総研】 ありがとうございます。

 いわゆるやりかえ、すべて現在あるものをリプレースする方法、あるいは更生工法と呼んでいますが、そういうものできめ細かく手当をする方法が現在ございます。これの技術的なさらなる革新といいますか、より短時間でより低コストでされる方法が日進月歩で進んでおりますが、それに期待する分野が1つございますのと、この率が低いというのは実際に見られていないというのが逆にあるかと思います。見て悪いところが発見できればそれなりに進むのかなと思っております。管渠の調査の実施率についてちょっとコメントしませんでしたが、40万kmのうちテレビカメラが毎年その1%、4,000kmしか入っていない。これも単純に割ると100年かかることになりますが、私どもの今回の研究で一番の眼目は、この率を何とかしてもう少し上げられないかなと。やはり発見すれば放っておくわけにはいかないかなと思います。ただ、それもやみくもにテレビカメラを入れていくのではなくて、先ほど優先度のお話もさせていただきましたが、やはりここだとあらかじめ、大体皆さん経験的にはお持ちですが、私どもは今回の研究で、ある程度根拠を持ってこういうところはやはり一番重要だと、優先度が高いのではないかという方法を提案させていただいてありますので、より精度の高いといいますか、打率の高いといいますか、そういう形のものを提案させていただいたかと思っております。そういう形でたくさん調査をしていただいて、それが改築率の向上になると、そういうふうなことを考えてございます。

【委員】 多分わかっていないからなのだと思うのですが、教えてください。この指標を、リスクをつくられた結果が、今後優先順位を考える上では重要だというのはよくわかったのですが、そもそものこの予測式がどこかの地域をベースにつくられて、それをまたどこかの地域で当てはめた場合に、例えば陥没地域なんかの結果がうまく説明できたというか、バリデーションができたというか、そういうことはされた。その辺が今回の説明では、この予測式はどのぐらい精度高く優先度を決めるに当たっても意義があるのかというのがちょっと見えなかったのですが、その辺を説明してください。

【国総研】 正直申しまして、まだ十分なバリデーション、検証が行えたというふうには私どもまだ考えられないところでございます。これもある都市での結果で、一応この都市にお示しして、まあ大体こんなものだということの確証は得ているのですが、ではほかの都市で2つ目、3つ目で同じようなパラメーターを使って同じようにうまくいくとは私どもも考えてございませんので、そこはいろんな都市の実態に合わせて、その都市ならではの特性も当然配慮しながら進めていくことは重要だと思っております。ただ、基本的な考え方といいますか、そこのプロトタイプのようなところは、大体こういうことで皆さんやっていただけるのではないかというところは、いろいろなやりとりをしながら私どもとしてはこれでいけるのではないかというところは考えているところでございます。

【主査】 よろしいですか。ほかに、はいどうぞ。

【委員】 先ほどの御説明で、12都市という言葉が出たのですが、その選定の理由、どういう経緯でこの12都市が選ばれたのかなというところと、その12都市と全国のデータとの活用のところ、そこの理解がちょっと私不足してしまったので、追加の御説明をお願いできればなというのと、あと不具合のリスクを決めるときに、敷設からの年数というのももちろん重要な要素だとは思うのですが、それ以外例えば道路上の交通量の問題とか、そういう因子が入っているのかどうか、御説明あったかかもしれませんが、ちょっとお尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。

【国総研】 12都市を選んだのは、正直申し上げて、データがきちっとそろっているところです。特に一番大事だと私ども思っているのは、先ほどの言い方と若干矛盾しますが、どうしても悪いところにしかテレビカメラを入れない傾向がございまして、それですと悪いデータしか集まりませんので、普通のところといいますか、いいところも悪いところも押しなべて調査をしている都市を選ばせていただきました。 それがこの12都市でございます。全国的にこれが代表値かというのは、私どもの一番大きな課題かとは思っておりますが、大体これぐらい集めればある程度の代表性はあるのかなというふうに考えてございます。

 2つ目の御質問でございますが、交通量に関しましては、こちらの図で陥没の重大性ですね、これで実際に陥没したときどのぐらい被害額があるかということを試算してございます。そのときに、交通量も反映した形の式は考えてございます。これは先ほど申しました土被りとかの関係であらわされるものと、交通量から表されるものと両方あるかと思います。両方を考慮する形を、私ども今回提案をさせていただいたところです。

【委員】 これは古典的にはマクロとミクロをどう接合するかという問題になってしまうのですが、御説明の中で「合理的な」という言葉にちょっと私引っかかってしまっています。この「合理的な」という意味は、あくまでもマクロの視点で量的なデータをどう処理するかというときにこういう合理的な視点であって、実はミクロで質的で個別的で経験的なデータの取得とその処理というのは、必ずしも今回の研究では入っていないような気もしたのですが、その点はいかがでしょうか。基本的にはマクロの処理をして量的な予測式を出そうとした、そういうことですね。ですからこれをミクロの一つ一つの個別な事例に当てはめていくというのは、またもう一つ別のステップがあるというふうに考えてもよろしいでしょうか。

【国総研】 私どもこの優先順位を決めるやり方、あるいは先ほどのものも、どちらかというと全国のデータを集めてございまして、その中で取捨選択しておりますので、個別具体の間の事情といいますか、そのすべての因子を拾うというのは最初の段階としては難しいかと思いまして、まずは大所を押さえてございます。先生御指摘のような個別にもう少し立ち入った、それぞれの管の持っている事情といいますか、それにつきましてはこちらの方では十分御説明できておりませんが、それなりには反映させていただいたつもりではございます。まだまだ足りないといいますか、こういう点も重大だというところはまだあろうかと思いますが、それはまた個別具体に考えていければと思っております。

 参考資料の方で、例えば参考資料3で、幾つかの団体と2つの大都市の皆さんと意見交換、ワークショップの中では、その参考資料の例えば11ページをごらんいただければと思います。ここの中でも自治体の方からはこういうような要因があるのではないかというようなことで御指摘はいただきました。ただ、これをすべて点数化といいますか、定量化をして組み立てるのはやはりなかなか大変だなということで、主だった一番どこでもデータがある経過年数ですとか、取付管の数ですとか、土被りですとか、管径ですとか、そういうものがまずは説明因子になるだろうと、そういうふうに考えたところでございます。

【委員】 済みません、授業をしておりまして遅刻いたしまして申しわけありません。この話は最初から聞かせていただきましたので、素人の質問を1つと、それからコメントを1つさせていただきます。

 成果の妥当性というところに「法定耐用年数」という言葉が出てきます。建築屋にとって法定耐用年数というのは、固定資産税を払うときの税法上の法定耐用年数だと思うのですが、そうなのかどうかということと、それは別に壊れるということとは全く無関係に出てきている数字だと思うので、何ゆえそこの話とリンクするのかがちょっと素人にはわからないので、御解説をいただきたいというのが1点目です。

 それから2点目は、不具合リスクというものの一番上からやりますというお話をされていますが、「リスク」という言葉をお使いになった以上、順位づけしているだけではなくて、アクセプタブルなレベルはどこで、よりリスクが上がったからここの部分は修理しますよという方が話の筋としてはわかりやすい。例えばお金が幾らでもありますから幾らでも修理してくださいといったときに、ではどこまでを許容範囲にして、どこから先のものはやはり修理しなければいけないというふうに決めなければいけないかというのがあるので、そういうときにどうされますかということがコメントです。

【国総研】 1点目の「法定耐用年数」という言葉をここでは使っておりますが、私ども下水道の、特に土木構造コンクリート施設、この管渠も入りますが、これに関しましては50年を決めて、これはある種何といいますか、おっしゃるように実際には実態としては壊れるものもあるし壊れないものもあるのですが、1つの決めといたしまして通用している数字でございますので、これを1つの目安としていただいているところでございます。

【委員】 法律は何の法律ですかという質問なのです。税法上の法定耐用年数ですか。

【国総研】 地方公営企業法等で。

【委員】 別の法律があるのですね。済みません、それを知らないだけですから、これは単純な質問です。

【国総研】 それから2点目のリスクで委員御指摘の、こういうイメージでしょうか、ある敷居値を超えたらもうすべてだめになるといいますか、そういうようなイメージでとらえさせていただいたのですが、これはある意味で確かに単なる計算で押しなべてそこに重みがほとんどないような形で今回はやっておりまして、おっしゃるように、あるところを超えたらもう何があっても全然だめということもあり得るかと思うので、そこは今後また実態を見てさらに研究をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

【主査】 ほかは、いかがでしょうか。

 済みません、今の話とも絡むかもわかりませんが、4枚目のスライドを見せていただけますか。細かい話で恐縮なのですが、この右上の式はある経過年数ごとのグループでこれぐらいの比率になるという、そういう集計のものですね。

【国総研】 はい、そのとおりです。集計の結果、マクロに見たものでございます。

【主査】 ですから、個別のリスクへの対応は、必ずしもできていなというふうに考えてよろしいですね。

【国総研】 当然この分布がある分布を持ったものでございますが、この式が一番ヒットするというものでやらせていただいたものでございます。

【主査】 本当の意味でのアセットマネジメントとかマネージということを考えると、やはり個別の箇所性というのが物すごく重要になると思うのですが、今後はそういうふうな方向にやりたいなみたいな、そんなことはお考えですか。

【国総研】 はい、正直一番悩んだところでございまして、個別のものを集めますと非常に膨大なデータ、先ほど40万kmのものをすべて私どもが把握してやるというのはかなり不可能かと思うのですが、具体的には先ほど来ありましたように、実際にはミクロで見てみないとそれぞれの一番適切な対策はできないというのがございます。私どもはまずは全体としてこういうことになっているのではないかということをまず詰めさせていただく手法を提案させていただいたと思っていまして、より個別具体のところはまたそれぞれの下水道事業者の方といろいろと相談しながら、この考え方が使えるところは使っていただくし、また独自のものがあればそれを入れ込んでいただく、そういうことを目指したいと考えてございます。

【主査】 それと、最初の委員からの御質問とも絡むのですが、12都市は比較的データがきちんと整備されていたということですが、こういった管渠の本当の状況とか台帳の整備ということが本当に必要であるということをある意味では物語る、そういう調査だなと思ったのですよね。これは下水道だけではなくて、例えば道路なども台帳があるのですが使えない、そういう状況でございまして、ですから、こういった本当の現状がどうなっているかというインベントリーの整備をきちんとしないと、さらにその上でのきちんとしたマネジメントが非常に危うい状況である。これから整備よりは維持管理の時代であるということをよく言われるわけですが、そういった面での問題点が出てきてしまって、当初考えられておられたところまでなかなか厳しい状況にあるのかなという気もしたのですが、その辺の御感想はいかがですか。

【国総研】 主査御指摘のとおりだと思います。現実的にはなかなか、こういうふうに台帳をつくるということは、下水道の法律の中でも明記されておりますが、実際にはできていないというものがございます。先ほどここで下水道法施行令に維持管理に関する規定というふうにも書かせていただいておりますが、やはりある程度法律のような形できちっと下水道事業者の方にお願いしない限りは、実際にはこういうデータを集めてそれをきちっと管理していくということは進まないかと思いますので、この点をぜひ実現できれば、この研究を機会にできればというふうには、私どもとしては考えております。

【主査】 ありがとうございます。

 ほかにいかがですか。

 それでは、御意見もないようでございますので、評価シートの記入と回収及び集計をお願いしたいと思います。

(事後評価シート回収)

【主査】 これもいつもどおり、多数決ということではないですが、両方とも上から2番目のそれぞれ「概ね適切であった」「概ね目標を達成できた」という評価にしたいと思います。ただ、これは研究グループだけの問題ではなくて、データがそもそも非常に不十分な状況にあるという、そういうことが逆に発見できたとか、あるいは維持管理とかリスクという観点から、マクロでは非常に寒い状況にあって、緊急の対応が求められているという、そういう現実が明らかになったという意味での評価は高いと思います。ただ、限界があるのだが、今後ミクロの視点からの質的データとか、本当の意味でのリスク評価をきちんと踏まえた個々のところのマネジメントにどう展開していくかということも課題として指摘されているようでございますので、その辺また非常に大事な問題だと思いますので、邁進していただければなというふうな取りまとめにしたいと思います。よろしゅうございますか。
はい、ありがとうございます。

 では、どうも御苦労さまでございました。

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〈事後評価B地域活動と協働する水循環健全化に関する研究

【主査】 それでは、次の事後評価でございます。「地域活動と協働する水循環健全化に関する研究」、これはプロジェクト研究でございます。御説明をお願いしたいと思います。

【国総研】 それでは、研究の結果につきまして、私の方から説明させていただきます。

 「地域活動と協働する水循環健全化に関する研究」ということで、3年間私どもと下水道研究部の方で協働してやらせていただきました。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ まず研究の背景でございますが、水循環を取り巻く問題の顕在化、いろんな意味で都市の人口あるいはさらに集中といった問題、あるいは過疎化、高齢者、最近の気候変動の問題等々、水循環を取り巻く問題は非常に多岐にわたっております。そういう中で、健全な水循環の再生に向けて地域と一緒に取り組んでいくことが必要だということはいろいろなところで指摘をされているわけですが、ここにありますように15年10月には各省との連絡会議の中で、「各主体の適正な役割分担を踏まえて、住民や事業者等が自主的に取り組むことを推進するとともに、行政も含めた連携が必要である」というような提言をいただいております。ただ、具体的にこれをどういうふうに、地域活動が行われているところがどういうふうに連携をしていくのかというような仕組み、あるいはその地域活動の核になるような力、そういうものがあるのではないかということで、そのあたりを詳細に分析して、今後水循環の健全化に向けて地域活動と連携していくときの参考としていただくというような形で進めたわけでございます。

・ 調査の対象は、ここにございます8つの地域、水循環の健全化といいましても多岐にわたりますので、水利用あるいは水路、河川、森林といった維持管理、親水空間といった8つの地域を、「手作り郷土賞」とかいろんな顕彰制度や何かで有名なところを用いましてやらせていただきました。

 ここにありますように、主に山口の椹野川、グランドワークの三島、徳島の新町川、こういったあたり少し重点的にも調べております。

・ 研究の流れでございます。研究の流れは、ここにありますように水循環の健全化という問題について、その8つの地域等へのヒアリングそれからアンケート、そういったものから具体的に施策・活動の効果はどういうものがあったか、どういうふうな項目があり、そしてまたそこについては、若干下水の方もでございますが、具体的に費用対効果というようなことの算定をしてみようというチャレンジをしてみました。

 その中で、その次に地域活動にかかわる住民の意識や行動に関する分析ということで、さらに突っ込んで、具体的に住民がそういう活動に参加していった、あるいは参加をするきっかけになったというあたり、どのような要素があるのかというあたりをヒアリング調査して、さらにもう少し、これはグランドワーク三島ですが、アンケート調査をしてさらに深く分析をさせていただいた。そしてその後に、具体的に共通の地域で追加のヒアリング調査などをしまして、水循環健全化施策の活動はどういうふうなフローがあるかというのを整理いたしまして、最終的にはここにあります「地域活動と協働した水循環健全化のための技術資料」というようなものをまとめるようなことをチャレンジさせていただきました。

・ まず第1点目の水循環の健全化施策の活動効果の抽出と算定でございます。先ほど言いました8つの地域におきましてヒアリング等を実施いたしまして、3つの効果があることが整理されました。

 1つは、水循環の健全化に直接かかわる、つまり親水整備とか森林保全というような効果。もう一つは、もう少し活発なところでは活発な活動、継続的・安定的・広がりのある活動が行われるようなもの。そして3つ目には、水循環以外の広がりということで、交流の場の提供というようなことまで行われている地域があるということでございます。

 ここで少しこれを数値化できないかというチャレンジとして、下水道の方で下水処理水による親水整備。先ほど言いました8つの地域では、横浜市しか実は下水道処理水をやっているものがありませんでした。具体的にここでは余り突っ込んだ算定はできなかったものですから、具体的に多度津町という香川県の方でやられている例がありますので、生態系の保全、親水性の確保、水辺の維持管理、交流機会の提供というこの4つについて、費用対効果をコンジョイント分析によってやらせていただきました。

 その結果がここに出ております。具体的には、水循環の直接効果の中では、生態系の保全というのが4,400で、非常に高い値が出ております。また活発な活動という意味で水辺の維持管理という問題についても4,000以上の非常に高い値が出ているというような状況でございました。これを1つのモデルとしまして、下水道の方では費用対効果のマニュアルの中にこの経済的評価手法として反映をしていただいているということでございます。そういった意味で、水循環の健全化施策に関して定性的、定量的に示すことができたと思っております。

・ その次に、具体的にヒアリング調査をして得られました断片的な言語情報から、共通の指標があるのではないかという仮定を立てました。それがここでは「地域活動支持力」と呼んでおります。それを具体的に三島というところでアンケートをしまして、さらに突っ込んでその4つの項目が妥当であったのか、あるいはその4つの項目が具体的に大きく影響しているのかどうか、どういうところに影響しているのかということを、因子分析をさせていただきました。また4つの地域の地域活動との関連という問題について相関分析を実施させていただきました。

・ 1つは断片情報として得られてものは、4つぐらいに分けられたなと思っております。1つは川の汚いことに対しての感覚の問題、あるいは散策する人がいる。それからもう一つは、信頼される人と知り合いの人がガレージや水を貸してくれたりするとかいうような問題。もう一つは、水辺のごみを自然と拾う、マナーにかかわるような問題。もう一つは、つき合いで活動に参加する人がいるというネットワークに関連するような問題があるなということで、この4つがあるのではないかと思います。

・ ただ、ここでほかの事例としてソーシャルキャピタルという指標がございます。その中で、「信頼」「規範」「ネットワーク」というこの3つの指標を出していただいて、それに大体沿っているなとは思ったのですが、新たに「関心」という、つまり先ほど川を見たときにどう思うかというあたりのことが1つのファクターとしてあるのではないかということで、ここにありますような「関心」という項目を加えまして、「関心」「信頼」「規範」「ネットワーク」、この4つをここでは「地域活動支持力」、地域住民が元来持つ地域活動を支えるといいますか、生み出すような力というような「地域活動支持力」という仮の名前としてやりました。

・ そこで、三島という地区でさらに突っ込んで、大体3割ぐらいのアンケートの回収をしました。自治会に参加しているか、NPOに参加しているか。

・ あるいは13の項目として4つの項目に関連すると思えるものを、住民の代表者等と意見交換をしながら、13の項目について絞ったわけでございます。

・ ここでそれぞれの4つの項目についての因子分析をさせていただきました。住民の意識や背後にはどういう影響を及ぼす特性があるなということで4つを仮定したわけですが、それがどういう関係にあるのか、どういうふうにつながっているのかというあたりを分析させていただきました。

・ そこで13の項目、並びかえといいますか、因子ごとの分析に関連するようなことをして整理をいたしまして、各特性が住民の意識や行動に与える影響の度合いの値というのを整理させていただきました。その結果、このように第1因子、第2因子、第3因子、第4因子として、マナーの問題あるいは信頼の問題。先ほど関心と呼んだのですが、むしろこれは愛着というような問題、地域を愛するという問題になっているのではないか。それからネットワークというのは、むしろもう少しかみ砕きまして、地域内外の人とのつき合いというような問題になるのではないかということとして、これも解釈をいたしました。

・ つまり整理いたしますと、先ほど4つの「規範」「信頼」「関心」「ネットワーク」というものをヒアリング等の断片情報で整理をさせていただいたわけですが、これで本当に因子として妥当なのか、あるいは地域活動へ影響を与えている度合いとして大きいのかどうかというあたりを因子分析することによって整理をさせていただくと、少し違った傾向が見られて、規範は行動規範、ほとんど同じです。信頼も信頼です。それからネットワークも人のつき合いということでほとんど同じですが、関心というものがやはり地域への愛着という、この愛着ということに変更した方がいいのではないかというあたりのスライドをさせていただいたわけでございます。つまりこの4つが地域活動にかかわる特性ではないかという整理をさせていただきました。

・ また一方で、先ほど言いました4つの項目と地域の活動、自治会、NPOあるいは源平川という川の活動というものとの参加の度合いというものの相関はどうなっているのかという検討をいたしました。

・ その中で、自治会のものは、やはり行動規範と関係があるという傾向が見られました。値としては0.48という数字でございますが。またNPOとか川の活動といったものについては、愛着ですとかあるいは信頼、つき合い。比較的愛着という度合いが0.5以上という数字が出ておりますから、非常に強いということが見てとれるわけでございます。ですから、そういった意味で、水循環の健全化管理のNPO活動としては、こういう信頼、愛着、つき合い、つまり愛着、つき合いといったあたりが非常に大きなファクターとしてなっているということでございました。

・ これを先ほど言いましたように、具体的にどういうフローになっているのかというあたりを分析させていただきました。これはほぼ直営でやらせていただきましたが、青いところは行政、緑が外部の目、地域の状況は赤、それから地域の活動がどんなふうに広がってきているのかというところを黄色で示しました。徳島のあたりでも、こういう行政の整備がきっかけになって、外部の目があることによって中心的な人が生まれて、地域の住民そのものの愛着がどんどん広がっていったというような形で、大きな取り組みになりました。

・ また都田江川でも同じような、若干もちろん流れは違いますが、あるいは度合いは違いますが、それぞれこういうふうになっていきました。つまり報道でやられたのは、こういう整備の段階ではなくて、地域活動が非常に活発になってきたということで報道があって、外部の目があって、これによってさらに大きな広がりになっていったということがあります。

・ これを少し、全体として共通と言えるのではないかと思って整理をしてみました。1つは、行政が親水整備等々やったことが、外部の目があることによって、地域の愛着あるいはつき合いというものによって活動が出てきて、中心的な人が出てくるという中にあってさらに高まって、これが中心的な人の活動だけではなくて、賛同者の活動になり、そしてそれがもう少し広がって、こういうことによって信頼が確保されてきたことによって大きな広がりになっていきました。場合によっては、ここで外部からの目といいますか、マスメディアというようなことによって、「地域活動支持力」が増大していく流れというのは、こういう流れがあるのかなと分析をさせていただきました。

・ 1から3をまとめます。先ほど言いましたように、愛着、つき合いというものが水循環の健全化活動・施策につながっている。この「地域活動支持力」という中でもこういうものがとりわけ多い。先ほど言いましたような愛着というものが非常に強いということとともに、愛着、つき合いなどの「地域活動支持力」によって地域活動が広がっている。地域内において、こういう継続・安定・広がりのあるような地域活動が実施されていくというような流れになるだろうと思っております。

・ それを具体的に4番として、技術資料として、これはまだ生煮えなのですがまとめたいなと、目次をつくり、内容を整理しております。そういった中では、先ほど言いました「地域活動支持力」というものに少し着目して、どうなのかというあたりを整理して、また先ほど言いましたヒアリング、アンケート等の各地域での事例を事例集的にここに載せていきたいなと思っております。

・ 例えば技術資料の中では、きっかけはどういうふうになったか、後方支援、愛着に働きかけるような施策はどんなものがあったかなというような行政の施策、あるいは活動内容ということでルールを守れというのではなくて、地域の環境に関する所有意識が生まれるような、地域全体への愛着が生まれるようなこと。これは1つの例ですが三島の源平川では下水の接続率が非常に低かったのですが、清掃を開始したということもあって広がりが増していったという。これだけではないのかもしれませんが、下水道の接続率が100%になったという形になりました。

・ そういった意味で、この成果としましては、この技術資料を行政の方に、ホームページだけではなくて技術資料を配布することによって、これから行政としてどう取り組んでいくかという試みのところについて整理をしていくという形。それから、参考としてホームページにも出していきたいと思って、先ほど言いましたような施策の提言があります。そういうものの技術的な支援になればと思っております。

 以上でございます。それで、おわびを申し上げなければいけないのですが、1枚だけお配りしました、前にお送りした資料の中で、成果の様式が抜けておりました。全くこれは私どもの不手際でございます。ここにありますような状況になっております。以上でございます。

【主査】 ありがとうございました。

 それでは、御質問、御意見等を承りたいと思います。いかがでしょうか。

【委員】 大変興味深く拝聴させていただきまして、大変おもしろい研究をされているなと思いました。いわゆる円熟した地域をつくっていく上で、行政がどう携わるかというような話が少し見えていると思うのですが、18ページのスライドで最初に行政政策があって、そこからどんどん発展する絵がかかれているのですが、最終的に一番右側になればいいということなのですが、その発展の過程でいかに国が何かを支援するとか、具体的にそういうことは研究面では考えられているのでしょうか。勝手にどんどん発展していくわけではないと思うので、国としてこういったところを特に重点的にやる必要があるとか、そういうような点はいかがでしょうか。

【国総研】 ありがとうございます。

 今回はどちらかというと、先ほど言いました8つの地域を中心に事例を整理させていただいたということで、事例から出発したということで、いわゆるやったもの、つまり親水整備だとかあるいはこれは河岸、徳島ではイベントをやっているとか、こういうような側面的な支援、あるいはこの都田江川では広報といった、同じことかもしれませんが、というようなことをやっていただいたというようなことで、どちらかというと8つの方から見られるような事例を整理をさせていただいたという形で、新しい制度あるいは新しい施策としてどういうものがいいのかというあたりまでは追求はできなかったというふうに、その辺は反省をしています。

【委員】 最初のデータが既に活動が活発なところを対象にして調べている結果ですので、いろんなところがそういうような活発な活動ができるように持っていくために、どうするべきかということを、今後また検討していただきたいと思います。

【国総研】 わかりました。

【委員】 社会調査の方法論についてちょっとコメントを申し上げたいのですが、これは基本的には現場で何が起こっているのかということを調べるために、最終的には量的な分析をしたいということでアンケートをとられたということなのですが、現場で地元の住民がどう行動されるかとか、どういう動機連関で行動を起こされているかということを分析するためには、むしろ現場のリアリティの分析手法としては参与観察とか、エスノグラフィの方法とか、質的データを取得してそれを解釈的なアプローチで分析するという質的データの分析の手法の方が、リアリティをより深く理解できる可能性があると思います。もちろん社会科学の分野では、量的な分析と質的な分析を併用してやるということになっていますから、今回の研究は量的な分析方法を使われたということでいいのですが、もし次に同じ問題を分析されるときには、ぜひ質的な分析を使ってみられるといいというふうに思います。

【国総研】 ありがとうございます。

 今回量的なものが中心ではあるのですが、ヒアリングとかそういうことで補完をしながら、先生がおっしゃる質まではちょっといっていないのかもしれませんが、ある意味では質を少し加味できるように調査させていただいたかなというふうには思っております。

【委員】 ここに最適な検討方法と書いてありますので、ぜひお読みいただいて。

【国総研】 わかりました。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

【委員】 ○○委員の質問と絡むかもしれないのですが、地域の支持力というのを4つに分けられて、いわゆる今までの、これが多分目玉というか、本研究における売りの部分だと思うのです。これで仮に具体的に地域を評価した場合に、例えばその4つの支持の特性のどれかが劣っているとかどれかがまさっているとか、それに対して行政がどういう形で例えば劣っている部分を盛り上げていくかとか、そういうスタイルになるような気がするのですが、最後の方のまとめがいま一つそういう形になっていなかったのが気になりました。その辺はどうなのですか。

【国総研】 済みません。おっしゃるとおりだと思います。最後の取りまとめとしての、技術資料だけではなくて、行政として何が望ましいかという提言というか、具体的にどうすべきか、あるいは劣っている場合にどうすべきかというところまではちょっと踏み込んで検討まではできていないというのが実態ではございますが、先ほど言いましたこのあたり、いわゆる行政施策としてどういうものがよかったな、あるいはこういうことが非常にこの場合はいいよというようなことを示すのを、少しさらに掘り下げるような形で技術資料の書き方も工夫しながら、できるだけ取り入れていただくような施策を入れていきたいなと思っております。

【委員】 最後の方のまとめるときに、その4つの支持力を具体的に示されているので、それぞれにおける地域の分析と、それに対して行政側としてこんなことができるかということを書いていただくと、流れとしていいのかなという感じがしました。これはコメントです。

【国総研】 はい、わかりました。

【委員】 水循環の健全化にかかわる地域活動の主体者として、「地域住民」という言葉が出ておるのですが、そのとおりだなと思うのです。とても興味深いおもしろい研究をしていただいていると思うのですが、この地域住民という定義というか中身が、そこで生まれた人とそこで住んでいる人、そこで働いている人、何かそれによって大分この住民の中身が変わるのではないかと思うのですが、そういった論点での要素はこの中に入っているかどうかの確認をちょっとしたいのですが、いかがでしょうか。

【国総研】 今回は、実際にこの地域に住んでいらっしゃる方あるいは活動していらっしゃる方、その方たちにやらせていただいているということでございます。

【委員】 我々も今CSRとかいう言葉で、河川清掃とか会社としてやる場合もあるのですね。そういうときに、やはり地域の住民の人とどうかかわるかとか、あるいは住民のこのアンケートの中にもあったとは思うのですが、やるのはとてもおっくうなのですが、やった後の達成感、これが物すごい大切だと思うのですよね。ですから、そういうのも要素に入ってくると、より汎用性のある計画になるのではないかと思いますが。

【国総研】 わかりました。ありがとうございます。

【主査】 ほか、よろしいですか。

 では私もちょっと意見申し上げたいのですが、非常におもしろい大事な研究だと思うのです。それだけに何か研究グループの思いが先走り過ぎているような気も若干あって、特に、今日御説明いただいたところは定量的な分析が中心だったからだと思いますが、相関分析ですよね。そこで示しておられるこういうメカニズムですよというのは、時間軸上の因果分析なのだが、必ずしも定量的分析から明らかになっているとは言えないような面もあると思うのです。それを補完するのがインタビュー調査であったりすると思うので、その辺やはり研究ですから厳しい態度も必要だと思いますので、その辺これからの課題として、大事な研究だけにしっかりやっていただければなと思いました。

 それとの関連で言うと、こんな例があるかどうかわからないのですが、やったが活発でなかったところとの比較検討というのも大事な視点かなというふうなことを、○○委員のお話を伺いながら感じておりましたので、参考にしていただければと思います。

 よろしいですかね。では、ちょっと早目でありますが、評価シートを書いていただいて、集計していただければと思います。

(事後評価シート回収)

【主査】 ありがとうございます。これもそれぞれ「概ね適切であった」、「概ね目標を達成できた」という、そういう評価かなと思いました。○○委員のご意見と私のものも関連していると思いますが、データの扱いとか深度化とかいうことをやってくださいとか、技術資料をもうつくられたのでしたっけ。

【国総研】 完全ではないですが、まだ今やっています。

【主査】 ですから、そういう点にぜひ配慮していただいて、さらなる充実をいただきたいという御意見もいただいておりますので、よろしくお願いします。ただ、非常におもしろい大事な研究だということでは、皆さんそういう意見をいただいておりますので、今後の展開としても、そういうことも加味してやっていただければというふうな取りまとめにしたいと思います。文章については、また後ほどということでお願いしたいと思います。そのような方向で取りまとめたいと思いますが、よろしゅうございますよね。

どうもありがとうございました。

午後0時01分 休憩

午後1時00分 再開


【主査】 再開させていただきます。



〈事後評価)C災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットフォームの開発

【主査】 「災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットフォームの開発」についての御説明をお願いします。

【国総研】 「災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットフォームの開発」につきまして、本研究は、高度情報化研究センターの情報基盤研究室と危機管理研究センターの水害研究室が共同で研究しております。本日は、取りまとめを仰せつかりました、私の方から報告させていただきたいと思います。

 あわせまして、説明の途中で、お配りしております参考資料という形で、パワーポイント以外に、A3版で折り畳んだ参考資料も適宜使いますので、よろしくお願いいたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ まず、本研究の背景でございます。これは皆さんも覚えていらっしゃるかと思いますが、平成16年に台風が10個、最多上陸して、そのときに新潟・福島豪雨で独居老人等、災害時、要援護者に非常に大きな災害が起きたという形がございまして、これが大きな行政課題となっております。これを受けまして、行政としましては、平成17年の防災基本計画に掲げておりますように、避難準備情報の活用等を風水害編に明記するとか、ハザードマップ等を通じた洪水予報等の伝達方法、避難場所の周知徹底等につきましても、風水害対策編に明記するという形をとっております。

 本研究の中では、安全で安心して暮らせる国土づくりを推進するため、社会基盤としての必要な、正確で確実な災害情報の伝達の仕組みを検討したいと。特に要援護者に対して可能な限り早い段階から避難行動に移るために必要な情報を提供するための、国土交通省が実際の情報の活用等、プラットフォームと言われるものを検討しようということでございます。

・ まず1個目が、災害時要援護者のため緊急情報提供サービスという形を大きな検討項目として設定しております。実際上、情報システム等を用いて業務改善を図ろうという形を考えたのですが、当然、この業務改善をするためには当該業務のモデリングから対象業務内容を明確にして、最適化したシステム設計が必要だろうと思います。

 いざ、この研究を始めますと、実際、自治体が置かれております状況や取り組み状況の進捗がなかなか整っていないということで、統一的なマニュアル等の運用は非常に困難であろうということがわかりました。ただし、災害時要援護者支援計画が各自治体で、内閣府の指導で始まっておるのですが、立案に当たりまして利用できる注意点や情報取得と利用の重要性や手法について記載したガイドライン的なものを参考資料としてつくられたというふうに考えております。以下、この後、その詳細について入っていきたいと思います。

・ ここでちょっと、参考資料の1ページ目を開いていただきますと、「災害時要援護者」という一言で申し上げているのですが、この支援策の普及状況に関する調査としまして、現在、支援の取り組みと課題の整理、それから情報提供経路上における判断やルール、あと、水害を例にしました情報提供に必要なリードタイムというものを調査の中で整理しております。

 参考資料の3ページ目を見ていただきますと、左側にグリーン、黄色、赤の箱があろうかと思います。A3版で織り込んだ資料でございます。ここでは、文献などから、災害時要援護者支援取組事例、39市町村と1災害事例が、よく取り組んでいるという形でございまして、それのフェーズ分析を行っております。ここに要点がパワーポイントで紹介されているのですが、実際、要援護者支援の取り組みとしては、まず連携相手として支援者ですね、要援護者だけではなくてその支援者というものを非常に意識したものが多いことと、対応フェーズの中心は、まず要援護者を把握することと、発災後はその方々の安否確認が中心であることがわかっております。ただし、この中で我々として1個気になるのが、実際河川管理者からの情報伝達体制の取り組みとか、情報収集に関してはまだなかなか自治体さんの中ではそういうことを意識しているのはちょっと少ないという形が課題であろうかなと思っております。

 あと、参考資料の3ページ目の右側に、市町村や施設管理者が抱える課題という形で整理しているのですが、実際にアンケートをしますと、避難判断に関する課題は、Gに「避難準備情報等の発令」ということで、河川情報単独で避難判断をすることは非常に難しい場合があるとか、B番に「情報伝達体制の整備」ということで、個人に対して情報を直接伝達できる設備をまだ持っていないとか、そういう課題が多く出されていることが認識されました。

・ 続きまして、これは河川管理者から要援護者等に災害情報を伝達するため、基本的にどういうふうに流れるかという形をモデル的に整理したものです。基本的に、国土交通省河川管理者から自治体さんを経由して、またはマスコミさんを経由して、あとはホームページ等で情報を発信しております。

・ これにつきまして、もう少し情報提供目的や提供内容を出しているかと。これはパワーポイントは小さいので、参考資料の4ページを見ていただきますと、もう少し大きな字で書いてございますが、四角の中でどういう情報を出しているか。あと、それぞれ、行政機関やマスコミさんなどでどんな判断やルールで情報を流しているかというものを整理しました。これはこの後で、情報共有または提供するための手法を考えているのですが、そのときに参考するために現在のあり方を整理したものです。

・ 続きまして、話はずれるのですが、いざ実際、自治体さん等がリードタイムをどういうふうに把握して提供しているかということを調査したものが、この結果でございます。参考資料では2ページにございます。例が少ないのですが、実際、洪水予報を受診してから配信作業までの時間では、おおむね10分と言っているのが57.9、30分というのが42.9ですが、7つの事例しかないもので、これがすべての機関ができるわけではないだろうと思っています。これは行政機関の中での配信の時間なのですが、いざ、実際それがユーザーに届くまでの、避難に要する時間を検証しているのがあるかというと、基本的にほとんどの自治体さんは、要援護者まで何分で伝わるかという形を検証していないということで、行政なりに早く情報を提供してくださいということの迅速性が求められているのですが、今後、ここら辺の時間を意識しながら提供すべきだろうという形がアンケート等から把握されました。

・ さて、次に行きまして、要援護者と私たち申し上げているのですが、災害時の要援護者の定義というのはなかなか決まっておりません。当然、援護者の形がわからなければ、どういう形態で情報を出せばいいのかということはわかりません。ここにございますように、本来であれば、援護者というときに法的には視覚障害とか聴覚障害とか肢体不自由とかあるのですが、これ以外に当然、寝たきりとか一時的にけがをしているとか、または年齢層的な形で乳幼児とか児童とか、こういうことも災害時には要援護者になり得るだろうと考えております。ここら辺を意識して、新たな個人の属性を考えた要援護者というものを定義、分類する必要があるのではないかという形で整理しました。

 また、情報を受けるときの障害、それから受けた後に判断ができるか、避難行動ができるかという形で定義をしてみました。これがその表でございます。参考資料としましては、大きな絵が6ページにかいてございます。ここに、聴覚と視覚とあるのですが、縦型が、耳が聞こえるか聞こえないか、右側が見えるか見えないかということなのですが、当然、この中で目の見えない方に対しては聴覚器、音声で伝えるという形が重要ではないかということで、それぞれの障害状況に合わせた情報の提供の仕方を整理してみました。また、行動ができるかできないかという方に対しても、どなたに伝えて、どういうサポートをすればいいのかということで、判断、行動基準について整理してみたものでございます。

 ただ、ここら辺につきましては、なかなか、個人を差別化するという形も言われておりまして、各自治体さんも、要援護者を決めるときに各人に手を挙げてもらうとか、問題があると言われておりますが、基本的にこういう大きな分類でできるのではないかという形を整理したものがこれでございます。

・ 続きまして、災害情報の利用フェーズという形で整理したものが、参考資料の8ページ目にございます。見ていただきますと、縦側に提供か、または集めておくべき情報、横軸に各フェーズで使うという形がありまして、特に個人情報等がかかりますのが◎で括った下の方にあるものですね。この表でございます。特に災害時要援護者といいますと、氏名、住所、連絡先、性別という形で非常に大きな問題がありまして、ここら辺は、各個人にはっきりと聞くということで問題があるということで、各自治体さんが悩みながら取り組んでいるということがありますが、こういう情報を前もって整理する、または発災時に初めて封を開けて共有するという形で取り組んでいるということで、各利用フェーズごとの必要な情報を整理してございます。

・ あわせまして、情報を提供するに当たりまして、今回ではこちらでは災害時に日本人ばかりではなくて当然、外国の方もいらっしゃるだろうということがありまして、ここで日本語読解能力に対応したサインの例というものを整理してみました。これは海外では一部使っている例があるようですが、ピクトグラムエリアとサインエリアという形で、状況を簡単に表示するエリアとサインエリア、特にこのサインエリアでは○かびっくりマークか×かという形。さらに、色によって危険度が高いか低いかという、こういう建物の中で逃げる場所のマークをよく見かけるのですが、会議では、こういうサインを使って、どのエリアはどうなのかという提供する例があるということで、今回研究の中で情報提供等、共有する場合に、こういうサインが使えるのではないかという形で考えてみました。これはあくまで、国総研、我々が考えただけで、まだ関係者と、これを実際に使うためには標準化という形でいかなければならないと思うのですが、海外等で使っているということもございまして、こういうサインというものを整理したものです。

・ 続きまして、これは大きな課題の中で情報変換仕様、マルチプラットフォームをつくるということなもので、変換仕様とか通信とか、また端末の検討ということを考える中で整理したもので、実は、災害時要援護者施設、例えば福祉施設等の管理者に対しての調査では、水害時に有効な情報がハザードマップに載っているということが知られていない。または、河川情報防災計画に反映しているシステムも少ないということがアンケートでわかりました。今後、これらにつきましても行政として、もう少し適切に提供していく、または説明していく必要があろうかということがわかりました。

・ また、災害情報発信のための機関ということで見ますと、これは市町村について整理したもので、詳細は参考資料の14ページにございます。実は、ほとんどの自治体が、災害時の情報伝達に認識を持っているのですが、河川情報を地域住民に伝えていないとか、少ないとか、河川情報の用語を用いた情報伝達を計画している例が少ないということがわかりました。ただし、要援護者施設の管理者のニーズとしては、避難の判断に河川情報や川の状況を利用する例が多いということがわかりまして、ここら辺につきましては、そういう情報がわかるように我々の方がきちんと提供するという形が必要ではないだろうかということがわかりました。

 いざ、実際、提供するためのシステムということで、これは既存の技術を使いました電子メールに地理情報を含んでつけて添付して送れば、まず内部の防災担当者セクションと福祉部局との間で情報がきちんと共有できる。少なくとも、送った形がシステムでデータベースに登録して、届いたかどうか、既達かどうかということをクロスすれば、従前、防災担当者と福祉部局との間の情報共有はうまくいっていなかったということが、少なくともこれでうまくできるだろうということでございます。データベース的に情報を、地理空間情報連携仕様という形で、GeoRSSとかRSS2.0を使う形と、提供したい情報を電子メールという形で送れば、少なくとも既存のファイアウォール等の設定を変更せずに送れる。送られた内容をデータベースに自動的に登録できる仕組みをつくれば、地理空間情報上で共有できるであろう。場合によっては、どこが浸水しているエリアだとか、添付ファイルも情報提供できると考えます。

・ あわせまして、これを拡張しまして、さらに構文解析というものを乗せていけば、行政等の、情報発信者側から受信者側、例えばテレビとか携帯電話の通信メディアとか、または一般ユーザーに対して、こういう情報を提供していければ、端末側で、乗ってきている情報を活用して、目の見えない方では自動的に音声を呼び出すと、そういう形のサービスができるのではないだろうかということで必要な機能を整理したものがこれでございます。

・ 最後です。本研究は、ここに掲げましたように、TからXまであるのですが、実は予算等の関係もございまして、今まで説明しました形で、情報システムの開発の機能要件まで検討したのですが、いざ、実際に仕組みをつくって、自治体さんとの協力を仰いで実証実験をして、これが有効であるということまではできなかったという状況になっております。

・ また、あわせて研究実施体制ですが、地方自治体や報道関係者、河川管理者等へヒアリングとアンケートを実施し、災害情報学会や福祉関係の研究者と個別にコンタクトを取りながら意見を伺ったということで、直接連携して研究したということではなくて、私ども2つの研究室が研究しながら、ヒアリング、アンケート、それから意見交換という形で研究したというものでございます。

 以上で、本研究の成果と、基本的にはガイドライン案なるものをとりあえずつくったということと、先ほど申し上げました、提供すべきプラットフォームの機能仕様等を整理したということでございます。

 少し時間が長くなりましたが、説明は以上でございます。

【主査】 ありがとうございました。

 それでは、御質問、御意見等をいただければと思います。

【委員】 研究全体を見渡すと、システムの開発の部分は非常によくやられたと思うのですが、分析枠組のところで、分析がいわゆる方法論的個人主義ですよね。人間を一人一人としてとらえるという個別性パラダイムが強過ぎて、関係性が全く無視されているような気がします。要するに、地域社会の中でその人がどう扱われているか、それから家族とどういう関係性を持っているか、それが要介護者の定義分類の中に入ってきていないというのはちょっとおかしいなと思ったのですが、いかがでしょうか。

【国総研】 今おっしゃったところは、調査の段階でも多種多様な意見がございまして、まとめるまでに至らなかった部分でございます。どうしても、情報提供というものに対する性状把握という点で、まず、初段のところとしてこのくらいの整理をして、実際に現場で使ってみて、実証してみて、それに不足する分というものを補っていこうと思った部分について実施できなかった。なので、おっしゃるとおり、その関係性のパラダイムの部分についての整理は非常に弱いものとなっているというふうに認識しております。

【委員】 今、社会調査の主流というのは、だんだん関係性をどう解き明かすかということに移っていますので、次回はぜひそちらを試みてください。

【国総研】 ありがとうございます。

【委員】 要援護者のいろいろな特性を考慮しながらマルチプラットフォーム等も開始されたということで、よく理解できたのですが、これがしっかりと機能するかどうかという検証はやっていないということで済まされているのですが、情報の受け手側の立場に立って、こういったシステムがどうなのかということを、研究の過程でも少し考えられていたのではないかと思うのですが、サービスを提供する側として特徴を見て、こういうサービスを提供するということと、受け手側として、そういうもので十分であるかという、立場を逆転して考えられたというようなことは研究の中でないのでしょうか。

【国総研】 当然もともと、当初から今先生がおっしゃったような形で、実際に自治体さんの協力をいただきながら、福祉部局間でその情報共有がうまくいくのかということと、こういう形の情報提供したときに、福祉部局はうまくそれで理解できるかとか、そういう仕組みをつくって、一部、ここに掲げました空間情報連携仕様というものは、本研究とは別の研究課題でもやっておりまして、それを一緒に使うという形でやっていたのですが、実際仕組みに乗せて特定の自治体さんに合わせる形でできるかどうかということを調整してきたのですが、そこまで行かなかったし、できれば今後やっていきたいと思っております。

 それから、これは先ほど簡単に言葉で説明してしまったのですが、発信者がどういう情報を乗せるか、各機関の間でどのように加工しているか、または意識をしているかという形を整理しまして、基本的にここで意識しているものを、先ほど提示しました機能仕様の中のっかってくれば、あとは端末側、それぞれアプリケーション側で考えてくれるのではないかと考えています。仕組みの構築まで行っていないということで、できれば今後何らかの形で、ほかの研究とも絡めながら自治体さんの協力をいただければやっていきたいと思っているところです。

【委員】 自治体から一番末端のところという話はここには入っていないのです。末端というのは援護の必要な個人への情報として。

【国総研】 当然そうですね。自治体さんから援護者施設の方とか、または受けてもらえる方に対して、これでわかるかどうかという形を、おっしゃるとおり、100%の人にはできないでしょうが、協力していただける方がいらっしゃれば考えていきたい。最終的には、その方がターゲットといいますか、その方の評価でどうなるかというふうに考えておりますので、やっていきたいと思っております。

【委員】 研究成果の達成度みたいなものを評価する上で、こういういいものをつくっても実際に機能しなかったら問題かなということで、その辺の見通しはどうかなということで質問させていただきましたが、今後まだ検証しないといけないということで理解してよろしいですか。

【国総研】 はい。

【委員】 2点、情報の発信側と受信側について。また素人で申しわけありません、発信側についてはよくわからないのですが、河川が氾濫するかもしれないというのは、国交省が持っているデータだけでというか、河川をだれが管理しているのかよくわかっていないので、国交省が管理している河川のデータだけで予測ができるのかというのが1点目の質問です。

 2点目は、今度は受信側の話で、ここは私の専門ですが、消防庁というのが逆に言うと避難をさせるとか、させないとかというときに一番絡んでくるわけですが、国交省から直接動けない人に向かってデータを発信するという方法論は、実際の社会の中ではなかなか実現されないのではないか。何となく消防が出てきて、避難しろとか、あそこにはああいうのがいるから引き取りに行こうぜという話になっていくときに、ダイレクトに情報が行く話と、実際によく働く連中との間の、実際には三角形に情報が伝わったりすることはどういうふうにお考えなのかということを質問したいと思います。

【国総研】 まず1点目、基本的には地域住民に逃げろというのは首長さん、市町村長さんの話なもので、例えば洪水ですと、河川管理者である国土交通省と気象庁が共同して洪水情報等を発します。その情報を基本的に自治体の首長さんに伝えて、首長さんが判断して、逃げろと、いわゆる避難勧告などを地域住民に出すという形になります。当然、今先生がおっしゃいましたように、関係機関の間で、こういうことをやりますよという形の情報提供といいますか、共有はしております。

 参考資料の一番最後に、こういう絵が1枚ついているかと思います。ここの中で情報共有の一例として、左下の方に報道関係の隣に警察・消防等、医療機関等ということで、こういう機関の間でも緊急情報の発信または共有システムの共有という形で提供していくというふうに、こういう形の組み方をすればできるのではないかということで考えておるところでございます。

【委員】 情報というものと人というのは実際リンクしているわけで、インターネット上だけでぱぱっといくのかなというのがひっかかっているわけです。

【国総研】 今の質問に補足させていただきたいのですが、国交省側からすべての情報について要援護者にダイレクトということは、この研究の中では当然考えてございません。そのために、@−2、パワーポイントで示して、参考資料にも大きいものをつけておるのですが、国交省側から出ていく情報というのはどういう経路をたどるかということと、その途中でどういう判断が入っているか、どういう判断基準によってその情報を加工して判断して、避難命令などを出していっているのかということについて、現状のものを調べてございます。それに従った上で、どういうシステムというか、どういう機能を持った方がいいかということになると、どうしても国交省からダイレクトに住民に行くということではなくて、当然ながら、河川が今こうなっていますよという情報については、情報として提供するということは可能ですが、避難をしなさいとかここに逃げなさいというものについては、市町村マター、その消防防災部門とかそういう関係者が主体的に判断される部分なのなかと。国交省側が考えることは、その人たちがいかに判断しやすいのか、いかにそういう情報として適切なタイミングで必要な情報が入ってくることが必要なのかということについて研究した部分で、焦点がぼけてしまって申しわけなかったのですが、そういう整理をしてございます。

【委員】 発信側の話で、例えば都市河川というのも国交省が管理しているというか、日本じゅうで、どんな河川がもうすぐ氾濫しそうだということを一括管理されているのですか。これは全くの素人の質問です。

【国総研】 すべての都市河川が国でということではなくて、例えば鶴見川などは京浜河川事務所で管理しておりますし、それ以外の都市河川を県さんが直接管理しているものも当然ございます。

【委員】 そういう場合に、果たして一括で発信ができるのかというところが、住民側から言えば、川だからみんな同じだと思っているわけですね。というか、そちら様はみんな、一級河川だとか二級河川だとわかるかもしれないが、受ける側からいえば、川ですよね。そういう問題は、発信側でもう既に仕事は終わっているのでしょうかということをお聞きしているのですが。

【国総研】 基本的に、県さんの管理している河川であれば、県さんが関係する自治体さんの方にやっている。

【委員】 情報の発信元で別れているということですね。

【国総研】 はい。

【委員】 最終的に事後評価の各機関で書かれた目標達成度のところに、御自分の方で、目標の達成度は不十分であると考えられていると書いておられるのは、きっと一番最初にかなり具体的な画像だとか文字情報、音声による情報伝達を行う仕様を提案するという当初の開発目的がかなり意欲的で、ちょっと高目に設定したがゆえに、最終的に自己点検評価すると、そこまではいっていないと。ただ、基礎的なところは達成できたものの、こういう事後評価になっていると思います。言いかえると、3年間の中で勝手に最初の目標を変えることがいいかどうかは別なんですが、1年目が終了した段階で、ある意味、今の段階では当初目標を達成するレベルではなくて、その前段階の、ここまで達成することが非常に現実的だし、それに向かってどこまで進むのかということを、ある段階で自己点検、再点検をして設定し直せば、ある意味、ごまかしなのかもわかりませんが、十分説明がつくのであれば、新たに設定された目標に対してどこまで達成したのかというような書き方をしていただいた方が、最終的な評価をするときにやりやすいのかなと思いました。というのが感想です。

 具体的に目標を達成していないというよりは、その中でどこの点が今回の研究の中で従来にない特徴的なところなのかということを1つ言っていただくと、私も評価を記載するときに助かるので、よろしくお願いします。

【主査】 同感でございまして、口頭で「予算不足で」とおっしゃいましたよね。その辺の自己点検とか本当のところの理由は予算不足だけですかというのを逆にお伺いしたいのですが。

【国総研】 予算不足も1つですし、もう一個が、当初スタートしたときに災害時要援護者マルチプラットフォームという形で情報家電を使っていきましょうとかいう、非常に具体的に書いていたのですが、多分、情報家電の通信機能を、我々がメーカーと関係なく、全く独自につくっても多分だれも使えなくて、そういうものは携帯電話とか既存のサービスを使うべきだろうということがありまして、プラットフォームと言いながら、先ほど説明しました、どういう情報を乗せたければ、あとは端末が考えてくれると。使える技術は使えばいいじゃないのという形が1点と、もう一個、「要援護者」と一言で言っているのですが、実は多種多様であって、それぞれ自治体さんに要援護者にどんな情報を出すのというときに、目が見える人、見えない人、体が動かない人、全部考えなくてはいけないわけですね。それをとりあえず書いてしまえば簡単かもしれませんが、だれかが整理しないと、各自治体が全部みんなゼロから考えると。少なくともあそこまで書いておけば、それが正しいかどうかは、先ほど説明しましたように、個人の差別化という形の課題も出てくるのですが、ある程度、注意喚起としてはできるのではないかということで整理したのが、我々としてはとりあえず、今までの要介護者に対するこういう問題の中に一歩は進んだのかなと考えております。

 ガイドラインで終わりではなくて、当然、これを自治体さんがつくってみて、これはいいが、これはわからない、全然こんな判断は違いますよということを、今後自治体さんと意見交換しながら、意見をもらいながらどんどんブラッシュアップしていく。または、介護保険の認定の仕方が変わってくれば当然考え方も変わってくるだろうし、そういう形で国土交通省が災害という大きな課題のときに、これに対して一歩、何らかの研究をしてきたということで、この成果を協力していただいた自治体さんに提供して、またそこで評価をもらえれば適宜いけるのかなというふうに考えております。

 あと、○○委員のおっしゃった、具体的に書いているものがあって、実証実験までやって、だからこの機能はいいよねというところに持っていかないと、成果ではなくて、描いた餅で終わっている部分が多少ある、大分あるもので、実際にその仕組みを構築して自治体さんで評価して、こういう課題があるが、大分いいんじゃないのというコメントをもらえれば自信をもって言えたのですが、そこまでいけなかったということなので、△をつけさせていただきました。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

 よろしいですか。

 それでは、評価シートに記入していただいて、集計ということで進めていきたいと思います。

(事後評価シート回収)

【主査】 実施方法とか体制等の妥当性については「概ね適切であった」。評価の結果については「余り目標は達成できなかった」という方向で取りまとめさせていただきたいと思います。

 厳しく自己反省されていらっしゃいますので、余りむち打つようなことはせずに。本当に大事な研究だと思うんですよね。それでもって、これから成果、基礎的なところを今後さらに活用していただくような方向について、委員の方からいろいろなアイデアをいただいております。例えば個別ではなくて地域のコミュニティーの関係性の中で考えていくべきであろうという話がありますし、検証をぜひ十分して、その上にさらに発展をしてくださいという御意見も、私も含めてありますので、そういう観点を中心にした評価コメントを書かせていただきたい、そういう取りまとめをしたいと思っておりますので、御了承いただければありがたいです。よろしいですね。

 はい、どうもありがとうございました。

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〈事後評価〉D地方都市再生に向けたLRT活用方策に関する研究

【主査】 最後の事後評価ですが、「地方都市再生に向けたLRT活用方策に関する研究」でございます。お願いいたします。

【国総研】 「地方都市再生に向けたLRT活用方策に関する研究」ということで、平成18年度から20年度にかけての研究でございましたが、成果を説明させていただきたいと思います。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ まず背景でございますが、地方都市では、都市の外縁化に対して鉄道・軌道網が対応できなくて、利用者が減少しています。

 また、鉄道・軌道の経営は厳しくて、解決策の1つとしてLRT化が期待されています。

 国としても、集約型と都市構造の実現、地球環境問題等への対応から、LRT施策に力を入れてきています。

 既存ストックの活用という観点から見ますと、大都市圏では鉄道間の相互乗り入れが進んでいるのですが、地方都市では、近年、整備が進んでいません。

 一方、海外について見ますと、ドイツでは、LRTの地方鉄道乗り入れが進んでいる状況がございます。

・ そういった背景を踏まえて、我が国においても、地方都市の再生、活性化のためにLRTの地方都市への乗り入れを実現することに貢献したいということで、次の3つの点、すなわち、1点目として整備効果の定量的把握手法の検討、2点目として「LRTの地方鉄道乗り入れに関する計画策定マニュアル」の策定、3点目としてハードウエア技術開発の方向性の検討について検討を進めてまいりました。

 方法については、海外の先進事例の研究、国内の状況を検討してございます。

・ まず最初に1番目として、「整備効果の定量的把握手法の検討」ということですが、まず海外の方からコメントいたしますと、先進ドイツを中心とした、フランスへのヒアリング調査等を実施して、その検討結果を、その研究成果全般にわたって活用させていただいております。ここに示しておりますのは、一番進んでいるドイツにおけるLRT地方鉄道乗り入れ技術、トラムトレインと呼ばれておりますが、御紹介しておきたいと思います。

 まず、上の図ですが、青と緑の線が地方鉄道というか、ドイツの広域鉄道で、赤い線が路面電車網、トラムで、カッセルという都市は20万ぐらいの都市なのですが、中心部を中心にトラムが走っていると。その外縁部にかけて鉄道が伸びているのですが、ここでとまっていて、中心部に乗り入れができていないということで、郊外から中心部へ人が行くときには乗りかえなければいけないということに対して、両方の規格に適合するような開発、インフラを改良して直通運転を実現することによって、乗りかえなしの移動が実現しているというものでございます。

・ 続きまして、まず日本で導入を進めるに当たって的確な需要予測をして、その上で効果を出して、さらに事業の採算性等も示すことによって推進が図られるわけですが、そのための一歩として需要予測手法を検討しました。

 まず、現在、乗り入れにかかわるLRTの検討の状況等の課題を見まして、それの解決を図ろうとしたということが第1点でございます。具体的には、LRTの新設の検討を見てみますと、いろいろな条件がある中で導入ルート一本に絞ってから、いろいろなフィージビリスタディをする中で、ところが実はよく見てみると、新たに道路に路面電車を入れると渋滞を起こしてしまうということで、そもそも入れられないといった例がかなり見られるということで、そうではなくて、詳細なフィージビリスタディに入る前に自動車交通への影響とか導入空間といった点を並行的に検討した上で、進んでいく方法がつくられるのではないかということを目指して、ケーススタディをして開発を提案してみました。

・ これが提案したフローなのですが、まちづくりの条件とか交通の基本的な条件を整理した上で、道路交通への影響とか導入空間についての影響を踏まえて、その比較の段階で利用者とか拠点間所要時間とか、概算事業費、まちづくりへの位置づけと並行して自動車への影響とか導入空間について、そこで絞ってからさらに先に進むというフローを提案しました。

・ 続きまして、そういった絞られた後で、さらにもう一つなのですが、なかなか今まで検討が行われていないという状況がありまして、というのも、PT調査のゾーン等を活用した例、かなりゾーンが大きいので精度は高くないという現状もあったと。LRTの乗り入れということになりますと、既存路線はほぼ確定していることが多いですし、その周辺の駅勢圏の状況も把握しやすいということから、より詳細な予測手法として、利用者の以降を把握することによって、居住者の利用意向などを把握する手法を開発したいということで、これにつきましては、既存の似たような事例が幾つかございましたので、そういった事例を幾つかレビューして整理を行ってございます。

・ 続きまして、整備効果についてですが、まず評価項目としてどういったものがあるだろうかということの整理ですが、まず最初に、都市内鉄道における評価項目としてこういったものがあるという成果が既存の成果としてありまして、こういったものが使えるのではないかという仮説を置きました。

・ ドイツのハイルブロンというところで入手した効果の一覧でございますが、こういった項目が先ほどの6項目とほぼ合っているということから、先ほどの都市内鉄道の評価に使えるのではないかという整理をさせていただいております。

・ 続いて、整備効果の把握ということですが、では実際にどのような整備効果があるのかということについて、海外の事例で見てみました。

・ カールスルーエというところの事例でございますが、この西の方の小さなまちのところにトラムトレイン、郊外ですが、ここがカールスルーエに直接乗り入れることで60分から35分に短くなったということで、あわせて都市開発も行った結果、人口も17.6%ふえたとか、地価も上がって税収も上がったと、このような成果が得られたということです。

・ ここはドイツのハイルブロンというところで、中心部はこの辺で、もともと鉄道はここにあったのですが、外縁部にあり、都心部にLRTを新設して、ここが鉄道に乗り入れるようにしたということで、ハイルブロンの都市圏全体で利用者数が伸びたということで都市内の開発が進んだ、このような事例を把握することができました。

・ こういったパーツの整理を含めて、マニュアル策定に向けてこのような検討をやっております。

・ まず、どんな導入パターンかということをイメージしなければいけないということで、我が国における既存地方鉄道とか路面電車の現状を整理しました。地方鉄道については、鉄道駅が市街地の中心から離れて設置される場合が結構あることと、あと、商業機能が郊外に立地する傾向があり、中心市街地の衰退の深刻化が見える。あと、公共交通機関も利用者が少なくなっている。路面電車については輸送力が非常に低い。収益も上がっていなくて老朽化も進んでいるといった状況がある。

・ こういった状況を踏まえて、しかも、LRT化に変えていこうという動きを踏まえて整理させていただいたのが、地方鉄道に乗り入れパターンとして、1つ目が、既存の路面電車と鉄道をつないで、既存の路面電車の車両が地方鉄道に乗り入れるパターン、もう一つが、LRT路線を新たに中心部に整備して、既存の地方鉄道につなぐというパターンが考えられるのではないかというふうにターゲットを絞りました。

・ 続きまして、乗り入れ路線を検討する上で大事な都市政策との連携はどうあるべきかということを整理しまして、先進事例、ドイツの例に倣ったのですが、ドイツでは、地域計画法によって法定計画の中で分散型地域構造を構成する要素として中心地、開発軸を位置づけているということがわかって、例えば今回ヒアリング等を行ったカッセル、ハイルプロン、カールスルーエなど、中心地の中でも上位中心地という位置づけが与えられている、そういう計画上の位置づけがあって、その上で、カッセルの例をとりますと、カッセルの都市圏がございまして、そのカッセルという都市が上位中心地で、その周りにいろいろな中位中心地が広がって、それを結ぶところを開発軸、交通軸を強化する軸という位置づけが計画されていて、ここにトラムトレイン網が走っていると。実際に、トラムトレインは中心地を強化する軸として位置づけられている。そういうことをドイツではやっていることがわかったということでございます。

・ これは福井の例でございます。福井駅があってJRがあって、今この辺を路面電車が走っているのですが、ここに三国芦原線というのが走っているのです。これをこうつけかえて、ここで路面電車が乗り入れできるようにしようという計画は進んでおりますが、市が出した都市交通戦略という中で市街地を誘導する軸の強化として乗り入れの路線を位置づけている。そんな例もございました。

・ こういう国内外の事例を踏まえますと、乗り入れに関して都市政策との連携のあり方としては、コンパクトな市街地を誘導する公共交通幹線軸の強化のツールとして位置づけることが大事ではないかといったようなことを整理させていただきました。

・ さらに進めて、いろいろ検討を進めていく上で事業調整の問題が出てくるかと思いますが、その上で大事な点を海外から拾ってみたのですが、トラムトレインの乗り入れで、既存の市街地を超えて広域的な範囲に及ぶといったことから、いろいろな関係者が関係してきますが、ドイツでは、そういう広域の範囲について周辺の自治体、州も含めて、州が計画から事業にわたるまでの調査権限を得ていると。場合によっては、運輸連合というところに事業の責任を負わせるといったようなことが制度として整っていて、カッセルの例は運輸連合というところが事業責任者になっているのですが、制度的に事業調整を行うという仕組みが整っていて、すぐに参考になるというわけではないのですが、いい例ではないかというふうに考えます。

・ フランスでは、今トラムトレインの検討が進んでおりますが、ここでは運輸連合と呼ぶような組織はないのですが、アルザス州という広域的な組織がリーダーシップをとって進めている実態があって、参考になるのではないかということで整理しました。

・ 続きまして、最後にハードウエアに関してでございますが、同じ鉄道と軌道ですから、同じシステムが違うものを一緒にするのは技術的な課題がございます。例えば、導入空間でありますと、道路用地にあるものと鉄道。あと速度についても40km/h程度のものから、鉄道の方が早いですし、車体幅も広い、床面も高いところにある、こういった違いをどう解決するかということが大事でございまして、まずドイツの例なのですが、ドイツでどういうふうに克服しているかということを整理しました。例えば車両限界については、こういったところは車両側の可動ステップを装着して、プラットフォームとの間を埋めるとか、そういういろいろな技術的課題が大体克服されていることがわかりました。

・ こういったことを踏まえて、我が国に当てはめて整理してみました。導入パターンは2つ整理しましたが、それぞれのパターンごとに車両とか施設整備、それらの項目ごとに調整、技術開発の方向性について整理させていただきました。

・ その整理を見る前に基本的な諸元でございますが、赤い部分が鉄道の車両限界。緑の点線が路面電車トラムの建築限界に当たるものでございまして、これを見ると、基本的には鉄道の中に入っているのですが、こういった下端、上端において少し注意すべき点があると、そういった基本的なところを紹介させていただいております。こういったところを踏まえて、先ほどの技術開発の方向性を整理しまして、その一部例示でございますが、例えば車両限界、建築限界については、軌道、鉄道においても、こういった車両性能があるものを踏まえて、鉄道区間をLRVが走行する場合には基本的には余り問題がない。下のギャップだけ気をつければいいと。LRVが両方走行する場合は、ドイツと同じように車両にステップ等を設備する必要があるといった、例えばこのような整理をしてございます。

・ これは同じですが、プラットフォームという観点から見たときにいろいろ整理させていただきまして、これはドイツの例ですが、施設の側で解決する方法もあるよということを書いている、このような整理をいろいろな項目にわたってさせていただいているということでございます。

 以上、多岐にわたる項目について整理させていただきまして、最終的にマニュアルの策定まで目指したのですが、国内事例の状況等を踏まえて、マニュアルに含むべき内容について整理させていただいたというところまでが今回の我々の成果というふうに考えてございます。

 以上でございます。

【主査】 どうもありがとうございました。

 御意見、御質問等、いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【委員】 限られた研究費の中で広範な海外事例も含めて御研究いただいたということで、とても興味深く拝聴させていただきましたが、1点お伝えしたいと思うのは、タイトルが「地方都市再生に向けたLRT活用方策」なんですね。ですから、LRTという媒体を使って地方の都市を元気にしよう、再生しようというところが、タイトルから言うと本来のイメージなんですが、例えば7ページのフローで見ますと、これは需要予測のフローだから当然といえば当然なんですが、流れはLRTの定量的な分析、需要予測のためのフローでありまして、私が最初申しましたタイトルからすると、この一番下が実は、これ小さいのですが、LRT導入ルートの比較評価になっているのですね。ルートを比較して決めて、その結果、もう一回その下に地方都市再生への影響みたいなものがあって、そうするとまた需要が変わって上に上がってくると、何かこういう格好でスパイラルアップして、考えている都市の再生あるいは活性化に寄与するというところが、もうちょっとそちらにも少しお時間を割いていただいたらよかったかなというふうに思います。

【国総研】 御指摘、ありがとうございます。

 今のは需要の予測というところの途中段階までの御紹介で、その先は評価項目を整理して、そのための効果の予測という評価、そういったところの手法の開発を経て初めて都市再生の評価ができるので、そこまでを目指したかったのですが、そこについては、項目を整理したり、幾つかの特に海外の事例を、数値が出ているものをサーベイしたというところで終わってしまっているというところで、これからの課題として残ってしまっているということでございます。

【委員】 研究の背景の中に、最終的な合意形成まで含めて視野に入れた研究をしているというお話だったので、外国の事例の調べ方についてコメントを申し上げたいのですが、外国の事例を調べるというのは基本的には比較研究の系譜に入る研究だと思います。そうすると、今回、フランスとドイツについて調べられたのは、基本的にはハードの機能比較と社会制度の比較ですよね。一般に比較研究で言われているのは、ハードの機能と社会制度だけを比べただけではなくて、その社会のあり方自体を比べなければいけない。それは、最後に合意形成を目指すというところで非常に重要なところになってくると思うのですが、ドイツの社会の地域性、それから文化的な背景という言い方もできると思いますが、そういうものを踏まえた調査をしないと、最後に地方都市に持っていって合意形成まで目指すというところで、外国の事例を持ち出すのが浮き上がってしまうという可能性もあると思いますので、本来の比較研究の手法を使われることが重要なのではないかと思いました。

【国総研】 御指摘ありがとうございます。

 今の点につきまして、そのとおりでございまして、日本に導入する場合に気をつけなければいけないのが、まず文化的背景といいますと、計画にその路線も位置づけているということでございますから、ドイツの都市計画として、それが割と当たり前にやられているという世界が1つあって、ドイツでやっているから日本でもやればいいじゃないかというのはなかなかいかないかなという点はあるかなとは思います。

 あと、実は文化ということもあるのですが、資金面でのドイツ、フランスもそうですが、州とか、交通税とかそういった面での差がどうしても背景としてあって、我が国においてもLRT等に対する支援制度、資金面の補助制度ができてきていますが、まだまだその辺の差があるということなので、ある面、土俵が違うところで、そこを余り申し上げないで紹介したというところなので、そこも、比較という点では承知しなければいけないかなと思います。だた、だからと言って、日本では難しいと言っていても始まらないので、できる範囲は取り入れたいなという意識をもって調査して整理させていただいたということでございます。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

【委員】 こういうのを動かすときは、もう少し大きな枠組みが要るのではないかというか、特にEU関係というのは、例えば地球温暖化対策も含めた全体的に大きな流れがありますよね。削減目標も着実にクリアしていくような。こういう問題というのは、例えば日本の中の温暖化対策とか、ひとまずドイツやフランスなどではそれは位置づけられていないのでしょうか。

【国総研】 温暖化対策との関連で、グラフを見ると公共機関の利用率がぐーんと上がっていて、車は郊外に置いたまま、公共交通機関を利用して都心に入ってくることができるといったような、そんなシステムなんですね。ドイツやフランスの事例では、そういった温暖化対策の中心としてこれがやられているというより、都市の再生ということでやられているという面を主に捉えて整理しました。

 ドイツ、フランスは温暖化対策ということも含めていろいろな税制とか補助制度などが導入されているということはあると思います。ただ、具体的にそこは調べてはおりません。

【主査】 私が知っている例では、ドイツのフライブルグなんて、公共交通を環境都市の中で大々的に位置づけていますね。対象には含まれていませんでしたが、非常に大きな関心だと思います。

【委員】 失礼な質問なのかもわかりませんが、1−3のところで、こういったLRTの導入の効果の評価項目があって、ドイツの事例等を整理されたというのが重要な成果なのかなと思います。言いかえると、こんな評価はもう既にドイツではされていて、ただ、その報告書を見れば書いてあるのではなかろうかというような気もします。今回新たに研究されて事例成果をしたのは、日本に適用したときにはどうなるのかなという付加価値をつけて整理されたのでしょうが、そこら辺は、どういうところが新しく整理されたのかなということを確認させていただきたい点が1つ。

 もう一つは、2の方のマニュアルの策定という目標を掲げたが、先ほどの説明だと、マニュアルには至っていないというように自己判断されておられる。きょう示されたスライドでは、マニュアルに入るべき項目は並んでいるという気がするので、十分にはできていないというように判断されているのかなと思います。2点目はどういう見解なのかということを御説明いただければと思います。

【国総研】 ありがとうございます。

 まず1番目でございますが、こういった評価項目につきましては、いろいろなところで見ればわかるということではなくて、これ自身の成果は出回っているものではないという認識はございます。しかしながら、御指摘がございましたように、その評価項目を得ました、いろいろな評価成果も得られています、ではこれを我が国にどのような適用性というか応用方法があるかといったところまでの整理は、御指摘のとおり、そこまではできていないというのが実情でございます。

 2番目につきまして、マニュアルの策定ということですが、マニュアルの策定ということでございますと、海外だけでなくて国内でのいろいろな検討が積み上がって、そういった成果もレビューした上で、日本に合ったような形で実際に自治体等がこれを見たら、これに従ってやっていけば検討が進むといったようなものが恐らくマニュアルのイメージかと思うのですが、当初思ったよりも国内事例といったもので参考になるものがなかなか積み上がらない状況であったので、数少ない自治体に対して研究成果のマニュアルというところまででなくて、取りまとめた技術資料的なところまでということだと思います。そういったものを、検討の進んでいる先進自治体等に示しながらブラッシュアップしていくことが、この3年間では精いっぱいかなというところで判断いたしまして、結果としてはマニュアルというところまではできていなくて、盛り込むべき内容を取りまとめた技術資料の整理といったところまでかなということなので、自己評価としては△とさせていただきました。

【委員】 私自身もマニュアルが単につくれることがいいと思っているという意味ではなくて、もしマニュアルの策定を目指したが、実際上はいろいろな事例を整理して、その策定に向けて役立つ技術的な資料になった、事例集になっているとは思うのです。だけど、策定を目指してやった限りにおいては、できなかったとしても、ではどこが足りないからこうだというように、ただ事例集で押さえましたではなくて、やはり掲げた目標に対して、そこに至るには何が足りなくて、これが次の研究として展開されれば進むのですよというようなメッセージがあるのがいいのかなと思ったものですから、そこら辺コメントしたくてお聞きいたしました。

【主査】 ほかにいかがですか。

 少ない研究予算を考えると、コストパフォーマンスは結構高いかなという気もするのですが、例えば4つの都市を対象に選ばれたのですが、今日本の中で路面電車のある都市は19都市しかないわけですよね。限定されているということを考えたときに、4つの都市の選択が本当にふさわしかったのかという気が若干します。例えば、ハイルブロンというところは都市人口が12万人で都市圏人口が89万人。19の都市の中にこんな特性を持った都市はないわけですよね。そのような問題をどうするのだろうかとか、あるいは行財政制度の違いというのも、よく御存じだと思うのですが、えらく違うので、その辺を単純に、効果がありますと言っていいのかなという気もしますしね。その中には、地球環境問題とか人の環境意識とか、都市そのものに対しての意識の違いというのはあると思いますので、その辺、もう少し深堀りしていただければよかったのかなというふうにも思います。

 もしほかに御意見がないようでございましたら、評価シートに書いていただいて、また集計をしていただきたいと思いますが。

 それと、質問なんですが、事前評価時の評価シートを見ますと、私、多分このとき利害関係人であったため、別の委員の方におまとめいただいておるのですが、事後のときは私の名前でまとめてよろしいのですか。もう、関係人でなくなったということでよろしいんですよね。

【事務局】 そういう認識をしております。

【主査】 はい、わかりました。ではそのようにさせていただきます。

(事後評価シート回収)

【主査】 分かれましたね。実施方法等については「概ね適切であった」というふうにさせていただきたいと思います。評価の結果は、2と3が4・4でありますので、ちょっと議論させていただければなと思いますが。

 コメントを結構たくさんいただいておりまして、地域の特性とか文化的背景、社会経済、行財政制度も含めてちゃんと比較しないよというのをいただきましたし、3つのパートが独立色が強過ぎるということもいただいておりますし、マニュアルもまだなのではないという厳し目の意見など、成果発表も少ないよとか、厳し目のコメントが並んでおりますが、どうしましょうか。

 私は、こういうのは専門ですので身内には厳し目にした方がいいのかなとも自分で考えたりしておるのですが、主査の判断で、評価の結果については3にしておいた方が、自由記述でいただいたコメントの内容と方向性も考え合わせるといいなというふうに思ったのですが、そういう方向でよろしゅうございますか。

【主査】 では、実施方法については「概ね適切であった」と。しかし、目標達成度については「余り目標を達成できなかった」ということを基本に取りまとめさせていただきたいと思います。あと、個別のコメントについては先ほど申し上げたとおり、ぜひ、これから地球環境問題とか都市の活性化とかモデリティの公平性ということを考えた上では、すごく大事なテーマでありますし、期待されているテーマではありますので、そういう方向でぜひ頑張っていただきたいというエールも込めてコメントを加えてとりまとめさせていただきたいと思いますので、よろしいですね。

【主査】 どうもありがとうございました。御苦労さまでございました。

 それでは、事後評価が全部済みまして、不合格なしということで、多少厳し目の意見もございましたが、よくやっていただいたということで、事後評価は済まさせていただきたいと思います。

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(3)平成22年度開始予定研究課題の事前評価

【主査】 これからは、22年度開始予定研究課題の事前評価でございます。説明をいただいて、ぜひ、こういうふうにした方が良いのではないかという方向でのコメント等も含めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。


〈事前評価〉E美しいまちづくりに向けた公共事業の景観創出の効果分析に関する研究

【主査】 それでは、最初でございますが、「美しいまちづくりに向けた公共事業の景観創出の効果分析に関する研究」についての御説明をお願いいたします。

【国総研】 それでは「美しいまちづくりに向けた公共事業の景観創出の効果分析に関する研究」について、来年から3カ年の予定で行いたいということでございます。

 それでは説明させていただきます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ 景観の問題でございますが、まず研究の背景としまして、御存じのように、「美しい国づくり政策大綱」が平成15年にできて、あるいは「観光立国行動計画」、「景観法」が平成16年にできましたし、「観光立国推進基本法・基本計画」ができました。また、「歴史まちづくり法」が昨年、平成20年にできまして、そういった意味で、地方公共団体が主体となりまして、景観の問題についていろいろな制度が整ってまいりました。下にありますように、昨年度末で景観の行政団体が393に上っております。また、計画の策定団体は163ということで、かなり伸びてきているという状況でございます。

・ また、景観の施策につきましても、いろいろな形で景観法に定められている景観重要公共施設制度、あるいは公共事業、直轄事業を中心にした公共事業において景観をどうするのかというような基本方針あるいは事後評価の手引き、景観形成ガイドライン、景観規範事例集というものを国総研で昨年まとめております。

 そういった意味で、景観創出の考え方、あるいは手続・手法といいますか、そういうものはかなり育ってはきているなという認識はございます。

・ ただ、一方で、これは今年の国土交通白書でございますが、皆さん、国民の方は非常に重要だという認識を7割ぐらいの方は思っておられるのですが、実際に満足度を見てみますと、非常に満足しているのは1割にも届いていないという状況でございます。このあたり、非常にギャップがあるなというふうに考えております。そのあたりがどういうふうなことなのか、あるいはどういうふうなことにすれば推進することができるのかというあたりが研究の背景でございます。

・ また、研究の必要性としましては、土木学会の方から、景観政策に関して、公共事業と地域は連携した、一貫性のある景観形成を強く要請して、戦略的な地域づくりの推進に向けてというような提言をこの4月にされました。また、18年ですが、基本方針を出しましたときに、各地方整備局といいますか、各現場等からは、その地域が事業によりどのように変わったのか、地域にどれだけ貢献したのかという評価をしていかないといけないなという問題認識、指摘がございました。そういった意味で、美しいまちづくりというものに対して効果を意識した直轄事業といいますか、公共事業における景観創出あるいは景観施策の活用が求められるというふうに思っております。

・ また、研究の必要性として2番目としては、これまでの公共事業に関わる景観施策というのは、個別事業の枠の中で景観の質的向上を図ることが中心だったのかなということ等ありまして、課題は、公共事業の景観創出が、美しいまちづくりにどのような効果を及ぼすのかというそのメカニズムあるいはその効果というものが十分明らかにされていないのではないかということで、そのあたりを十分検討していく必要があるという認識でございます。

・ そのため、先ほど言いました公共事業の景観創出が、美しいまちづくりに及ぼす効果と発現メカニズムを解明する。そして、来年、再来年等、「美しい国づくり政策大綱」の政策レビューが行われることになっておりますので、本研究成果も生かしていきたい。それとまた、行政の話もございますので、連動して、「景観検討の基本方針(案)」を初めとした景観施策・制度の改正に反映していきたいというようなことを考えております。

・ 研究の目的ですが、まず1つは、いわゆる効果・発現メカニズムを解明する。そしてこれはどちらかというと、解明というのは単にメカニズムを解明するというだけではなくて、直轄等の公共事業の各段階においてどういうような景観創出の取り組みを進めれば、そういうふうに結びついているのかというところまでを掘り下げて検討したいと思っておりまして、そこで、最終的に美しいまちづくりに向けた景観向上の“みちしるべ”というものを作成していきたいと思っております。

・ そのときに御指摘があろうかと思いますが、いろいろな施策があるが、実際に本研究ではどういう位置づけなのかということかと思います。説明では十分ではなかったので、繰り返し、少しレビューをさせていただきたいと思いますが、今まで、直轄事業の創出の関係の公共事業の創出については、先ほど言いましたようないろいろなガイドライン等は出ております。他方、景観法に基づいている景観については、景観の重要施設あるいは景観の計画をつくるということがあります。また歴史まちづくり法で歴史的風致地区 向上計画というものをつくるということが行われている。この間を、要するにメカニズムを解明して、この間を埋めるようなものを“みちしるべ”として示せないかというのが、今回の研究のねらいでございます。

・ 今回の研究は3年の計画でございますが、3年のうち前半部分については、先ほど言いました土木学会等での景観デザインの事例として80ぐらいございますし、景観重要公共施設が50ぐらいございます。その中から20ぐらいの事例を選んで、アンケート、ヒアリング、あるいは現地に行ってつぶさに調査をしていきたいと思っておりまして、それで、効果の発現がどういうふうな形になっているかということを分析させていただきたい。これを1年度目にしたい。

 2年度目は、その分析プラス具体的に“みちしるべ”をつくってしまおう、素案をつくってしまおう、そして今回の研究の目玉でもあるのですが、ちょっと早いのですが、この“みちしるべ”を素案に基づいてケーススタディを3つか5つぐらいやってみて、その反省を含めてその“みちしるべ”を直していきたいというようなことを3年度目にチャレンジしていきたいと思っております。

 あくまでも本当にイメージでございます。景観施策の取り組みというのは、効果としては意識、活動、空間ということでいろいろな効果があると思います。取り組みとしては、もちろんイベントから日常的な問題、あるいはまちづくり云々、計画づくりいろいろあろうかと思いますが、それがここにありますような構想、計画、設計、施工、維持管理のどの段階、◎はイメージとしてつけておりますが、どの段階で、どういうふうに取り組んだらいいのか、あるいはどういうふうに取り組んだら非常に効果があったかというところでやりたい。例えば今申しましたような分析の詳細な把握、それから、関係を分析する。そして各段階にどういうような取り組み、実施段階の整理をしていくというようなことをやっていきたいと思っています。

・ そして、先ほど言いましたように、構想、計画、設計、施工、維持管理の段階で、どういう段階から参画をいただくか、あるいはそれがどういうふうにつながるかというあたりを調査していきたい。結果としてこんなイメージを持っています。

・ “みちしるべ”のイメージですが、ちょっと早いですが、“みちしるべ”としては、具体的に実用的な“みちしるべ”になるように、こういうことはやっていけないという“べからず集”、あるいはこういうことがいいですよというものを知恵袋として示すような具体的な、実用的な“みちしるべ”にしていきたいと思っております。

・ 先ほど言いましたように、研究成果はレビュー、あるいは各政策の改正等に反映する、あるいは実務、各現場での応援にしていきたいと考えております。

・ 体制は、もちろん環境研究部が中心でございますが、本省との関係の施策の関係、現場との関係、それから学会・大学等、随時意見交換をしていきたい。

 さらに、港湾の関係、空港の関係、それから独立行政法人とも意見交換しながら研究を進めていきたいと思っております。

【主査】 ありがとうございました。

 それでは、これに関しては事前評価の方は若干違いまして、最初の2枚紙にございましたが、10分説明していただいて、15分でディスカッションしてということになっていたと思いますが評価を11分で議論していただいて取りまとめ等で4分ということでございますので、御意見、御質問等お願いしたいと思います。

【委員】 これを見ると、いかにも公共事業がまずあって、その公共事業の結果、その機能の分析をしようとしています。機能にはもちろん、社会の凝集性を高める順機能と、反対の作用をする逆機能というのがあって、この場合には順機能が非常に多いのだということが前提になった研究のように見えます。話のストーリーとしてはそうではなくて、日本社会の変動から出発するべきです。それは近代社会がポストモダンの社会に変わっていくプロセスの中で、社会基盤施設の役割も変わってきているのだということです。我々が今つくっている社会基盤施設というのは、そのポストモダンの多様な価値観の中でどういう役割を社会の中で実際に果たしているかということを分析して、それを“みちしるべ”にして、これからの社会変動の中でどんな社会基盤施設を設計してくべきかについて考える、こういうストーリーの方が、いかにも自分がつくっているものがどう役に立っているかということを考えるのではなくて、社会の変動の中で自分たちの役割も変わりつつあるのですが、それを今、現実の社会では本当にどういう機能を果たしているのかということを分析してみますということで、最初に社会変動を踏まえてなんだということを宣言した方が理解を得られる枠組みになるのではないかと思いました。

【国総研】 ありがとうございます。

 タイトルの「美しいにまちづくりに向けた」というところは、確かに思いとしてありまして、社会変動といいますか、地域によって文化もいろいろ違うと思いますから、その辺も踏まえたものは当然やっていかないといけないのですが、ただ、公共事業を現場で進めるときにどういうふうに結びつけるかということで困っている事例を見聞きすることが多かったものですから、そういった意味で、その思いが先に出てしまったような形になっているのかもしれません。

【委員】 始まりが、公共事業ではなくて、ストーリーの始まりは社会変動です。それに対して、今やっている公共事業をどのように変えていこうかというのを問題意識として持っているからこういう研究を進めるのだと、そういうストーリーがいいと思いました。

【国総研】 参考にさせていただきます。

【委員】 シンガポールと比べて、ガーデンシティと言われますね。東京のまちは本当にごみ箱を引っくり返したようなまちだと、よく揶揄される状態もありまして、私としては、ぜひ「景観」というキーワードで今後の研究をされるというのはとてもいいことだなと思います。

 それで、先ほどの直轄と、今お話にもあったのですが、これから新たにつくる事業と既にあるものをどうするか。例えばもう既に汚いものがあるとすれば、何かそういうふうな分けもやっていただけたらいいなと思いますが、そこら辺はいかがですか。あくまでも対象はこれからのものかどうかというところの確認をさせていただきたいのですが。

【国総研】 新設だけではなくて管理も含めた形でもちろん進めていきたいと思っています。今、御指摘のありました再開発をどの程度入れ込んでいくかというあたりは、時間といろいろな問題もありますが、ぜひチャレンジしていきたいと思います。

【委員】 スライドの6ページ、「研究の必要性」というところで、個別事業の枠の中で景観の質的向上を図ることが中心であったと、これも確かにそうだと思うのですがね。それをこの研究で変えようとするのでしょうか。その場合ですと、同時に事業が複数並存するような都市とか場所を選ぶということになると思うのですね。ここの問題意識は、道路と、それ以外の何かがあったときに、それがマッチするような美しいまちづくり、景観にしようということですよね。

【国総研】 はい。

【委員】 そういう事例はどういうところがあるのか。まあ、たくさんあるのかもしれませんが、例えばこれから想定しようとされるときに、マルチ事業というか複数事業があるようなところで、それを同時に景観の面からデザインを考えていこうというような典型的な事例があるかどうかをお聞きしたい。

 もう一つ、国総研の中の実施体制なのですが、これは環境研究部だけのような御表現ですが、ほかの部局とか道路の部局とかも御相談になって進めていくというようなことはいかがでしょうか。国総研の外のそういった部局と連携されるというお話はお伺いしましたが、国総研の内部でまず議論が必要なのではないか、あるいは一緒にやっていくことが必要なのではないかと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

【国総研】 初めの方の話としましては、例えば沖縄の記念公園、首里城の周辺でやったものですが、公園整備とあわせて、周辺の道路、河川の整備、それからまちづくりの整備というような形で景観に関係していろいろ広がっているようです。例えばこれは福島西道路で、こういうような公園とか、あるいはこれは池の整備ですが、そういう整備になっている事例でございます。また、これは津和野川ですが、これは川の整備をすることによって、それがインパクトになって、いろいろほかの事業にも波及していったというような事例ですので、そういった意味で、この3つが代表しているというわけではもちろんありませんが、そういう複数の事業に絡むようなものを選定していきたいと思っています。

【委員】 そういう事例が既にもう幾つもあって、そうしたときに、そういう事業を実施した後でどういう効果があったかということを分析しようというのがねらいですか。

【国総研】 そのあたりがねらいです。

 それと、2つ目の国総研内部でございますが、景観そのものについては環境研究部が主体にやっているのですが、事業を進める、あるいは事業の役割、インパクト云々という話でいきますと、当然、道路、河川あるいは港湾といったいろいろな研究部とディスカッションしながら、意見交換しながら進めていかないとできないと思っています。そのあたりは適宜、そういうことを含めて意見交換をさせていただきながら進めていきたいと思っています。

【委員】 建築を出て、土木の講座にも行った立場として、6枚目のパワーポイントの一番最初に課題と書いてあるところで、この文章は一般の人が読むと、なかなか厳しいかなと思うのですが、「公共事業の景観創出が、美しいまちづくりにどのような効果を及ぼすのか」というので、この窓から外の景色を見て、美しいまちづくりに公共事業の景観創出があるはずがないですよね。そうすると、まちの定義とか公共というか、先ほど事例が出たので余計言いたいのですが、川だとかそういうのであって、まちではないのではないか。まちの一部であって。土木の人が一生懸命頑張っていて、建築屋はいつもさぼっていてこんな汚いまちをつくっていて、僕は、それについての反省をしていないわけではないのですが、土木の人がまちと言っているのは、まちではなくてまちの一部なのではないかと思うんですよ。まちづくりと言われたら、やはりまちづくりですよね。まちというのはまさか、道路とか公園とかだけではないから。だから、まちの要素を公共事業で一生懸命きれいにするから、その結果としてまちがきれいになるのだという言い方をした方が一般の通りがいいのではないかと思いました。

【主査】 その点について、こんなふうに考えたらどうかなと思っているのですが、「公共事業の景観創出」と書いてあるわけですね。それと「景観創出の取り組み」と、そういうキーワードが2つあると思うのですが、中身は多分若干違っていて、「公共事業の景観創出」というのは例えば公共施設そのものが景観構成要素となる場合もありますよね。みっともないものはつくりたくない。街並みを壊すようなものはつくりたくない。あるいは例えばポートオアシスとかトルパとか道の駅などが、周辺ににじみ出す効果、まちを誘導していく効果もあるでしょうとか、あるいは公共事業の過程の中でPI等をいろいろやって、そのコミュニケーション等によるそういう意識を高められるという効果もあるでしょうし、あるいは風景街道ということなども入れていただければありがたいなと思うのですが、地域づくりとか。あるいはこの中でぜひ電線なども対象に入れていただければなと思うのですね。そういう話と、景観創出の取り組みというのは、例えば規制とか誘導とか意識啓発、これは行政、市民相互のコミュニケーションによる意識啓発というのもあるのだと思うのですね。 そういうことを総合的に考えて、具体の場でやるという意識が、多分“みちしるべ”をつくって、そこでいろいろなことを現実の場でまちとして考えていくという、そういう言葉であらわされているのかなと思ったのですが、そういうふうにもう少しプレゼンをされると、例えば今の話にもスパッと反論できたりするのではないかと思ったりしたのですが。

【国総研】 ありがとうございました。

 私のプレゼン自体が、公共事業がまずありきで説明しているような感じになってしまって、今委員の皆様方がおっしゃったように、美しいまちづくりに向けてどうするのか。先ほど○○委員からも御指摘のあったようなことも踏まえて、少し整理をして研究を進めていきたいと思います。

【主査】 ですから、切り口をどう設定するかというのは極めて重要だと思いますので、その辺の「仮説」とか「メカニズム」という言葉があるのですが、メカニズムの中身が、これを見ていますと、例えば9ページとか11ページのチャートにはちゃんと示されているようではないような気もします。その辺、もう少し工夫していただいて、予算獲得に取り組んでいただければいいのかなと思いました。

【委員】 「研究の背景」で、最初に国民が満足しているか、していないかということで、どちらかといえば満足というのが半分弱ぐらいあるので、このアンケート結果というのはどういう内容なのか、ちょっとわからないのですが、その辺の、国民がどう思っているか。不満に思っている点は何かとか、こういう点を改良したら満足するのだと、そういうことも含めた研究になるのでしょうか。

【国総研】 御指摘のとおりでございまして、このあたり、どちらかというと、満足というのを入れると4割ぐらいになってしまうというあたりも含めて、もう少ししっかりしながら、この辺のバックボーンなども含めて調査していきたいと思っています。

【委員】 単純な調査だったら満足と言ってもいろいろなレベルがあるだろうし、よくわからないので、少しその辺の詳細な検討も必要かなと。どういうふうな満足度なのかという、その中身ですね。

【委員】 事例調査をされるということで、14ページに「みちしるべのイメージ」というのがあるのですが、その中に合意形成とか意思形成のプロセスなどについての事例とともに提示しようという部分があります。これは日本全国で今合意形成に関する会議みたいなものがたくさんあります。たくさんあるのですが、うまくいっているのはほんの一握りで、もう大喧嘩になってしまい、合意が全然形成されないとか、そういうのがあるのです。ですから、うまくいかないものは余り役に立たないのですが、ただ、うまくいかないのは、なぜうまくいかなかったのかという分析の対象にはなるのです。また、うまくいっているのも幾つかあるのです。そのうまくいっているのと、うまくいかないものの違いを分析して、うまくいくためには何が必要なのかということがわかるような事例にしていただきたいと思います。ただ事例だけピックアップすると、もう決裂したようなものばかりが出てきてしまうという心配がありますので、その辺はバランスをとって事例を選んでいただきたいと思います。

【主査】 ありがとうございます。

 ほかにございますか。

【委員】 確認というか、私なりに解釈すると、計画案そのものを研究するのか、計画案のつくり方、そういう手続みたいなものを研究するかというと、どちらかというとこの研究は後者になるのでしょうか。すなわち、合意形成とか意思決定プロセスに着目する。土木の景観のまちづくりへの影響を考えていくわけですが、まちづくりというのもどちらかと言えば、街の景観というよりは、まちをどういうふうに元気にしていくか、そこで楽しく、皆さん方がまちを使っていくかというプロセスの問題のような気もするのですが、いかがでしょうか。そういう意味でいうと、これはあくまでも計画案ではなく計画手続きを研究する、“みちしるべ”というのはその計画手続そのものであると理解しました。どういうハードとハードをつなげれば、どういういい景観ができるかという時間をとめた空間計画の話ではなくて、むしろまちづくりプロセスを勉強するのだという理解でいいですかね。

【国総研】 そういうことです。プロセスを中心にやっていきたいと思っています。

【主査】 ほかにございませんようでしたら、コメントシートをお出しいただければと思います。

 様式に書いていないのですが、「推進すべき」とか「修正して推進すべき」とか、僕自身も書いてなかったのですが、そういうふうに一言どこかに書いていただくと、次の例からは取りまとめが楽になりますのでお願いしたいと思います。

(事前評価シート回収)

【主査】 コメントシートを拝見いたします限り、やめちゃえと書いてあるのは全然ありません。全くございません。重要な研究で推進すべきだということです。ただ、まちづくりとはどう考えるのだとか、合意形成のプロセスをちゃんとしなさいよとか、内容を充実させる方向でのコメントが多うございますので、我々の評価としては「推進すべき研究である」というふうに取りまとめさせていただきたいと思います。

 内容的には、すごくたくさんの御意見をいただいておりますので、評価シートにはこういうものを、一部紹介しましたが、盛り込んだ取りまとめにさせていただきたいと思いますの。

 どうも御苦労さまでございました。

 それでは、ここで休憩が10分ということですが、予定どおり2時55分から最後のセッションを始めたいと思います。

 では休憩します。

午後2時47分 休憩

午後2時55分 再開

【主査】 再開したいと思います。

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〈事前評価〉F気候変動下での大規模水災害に対する施策群の設定・選択を支援する基盤技術の研究

【主査】 「気候変動下での大規模水災害に対する施策群の設定・選択を支援する基盤技術の研究」、これはプロジェクト研究でございますが、説明をお願いいたします。

【国総研】 では、よろしくお願いします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ ことしの4月に気候変動適応研究本部ができまして、これがその中核的な研究としていきたいという、そういう位置づけになります。

 まず懸念ですが、もう既にいろんなところで言われていますように、現時点での気候予測モデルを使いましても、日本全国で100年後と今とで比べますと、雨が5%、10%、あるいは25%ふえるという予測が出ています。もちろん予測に不確実性はありますが、これを想定しなければいけない。雨の量自体でいくと、この程度かということなのですが、安全度、破堤判断が起こる危険度でいくと1/30で整備していたものが20年に1回の確率に減ってしまう、あるいは1/200年という目標を設定していたプランが1/120の安全度に落ちてしまう。かなり大きな差が出ます。これはやはりゆゆしき問題を起こす可能性がある。まずはこの問題があります。

 それから、もともと我が国は沖積平野を高度に使っていますので、まだまだその利用に比して治水整備の水準が低い。もともと厳しい条件にこれが加わるということで二重苦である。これが基本的な構図だと考えております。

・ もうちょっと詳しく見てみます。この研究は基本的にまずは洪水災害自体を考えてみようというふうに位置づけております。そのときに何も治水整備しなければリスクがどんどん上がっていって、今この辺まで来ているかな。我々明治以来、本格的に治水整備をして、何とかリスクを下げて下げて下げてきた。これからも最終的な目標に向かって、そして段階的目標を具体的には目指して、安全度をどんどんと着実に下げようとしていた。ところが気候変動の外力付加によってこういう矢印になってしまうかもしれない。すなわち問題は、ここにありますようにリスク低減の進捗が滞る、あるいは目標への到達が先延ばしになる。さらには、そもそも目標に到達できない可能性も出てきた。そこをどうするか、ここが大きな問題だと認識しております。

・ もちろんこの適応の難しさがありまして、そもそも現在ぎりぎりの制約で政策を立てておりますので、現時点の目標を達成しようとすると相当きついな。やはり従来の治水施策に革新が求められるのではないか。それから、やはり予測。急速に進歩していますが、経験知に比べますと不確実である。これをどう反映させるか。この2点が大きな隘路かと思っております。この研究では4つの項目。豪雨予測の精度向上と信頼性把握、施策オプションの拡充、それから災害発生頻度の制御に加えて、生じ得る災害の内容を考慮する、質を考慮する、きめ細かなリスク評価を本格的に導入することが必要だろう。それらを踏まえて、やはり新たな治水計画論に踏み込まなければいけないのではないかと考えております。

・ 既往検討の成果と隘路ということですが、気候変動の予測モデルは急速に進んでいます。今も文科省でこういう革新プログラムというのが、国総研もこの中に入って一緒にやっていますが、これができたとしても不確実性は残る。これが1つです。それから適応策については、国内外で施策のオプション、メニューはいろんなところで提示されておりますが、まだまだメニューの提示にとどまっている。どんな場所にどういう組み合わせでそのメニューを適用していくかという、いわば計画手法がない。それからリスク評価については、ごく大ざっぱに言うと勉強段階で、実務にどう使えるかどうか、これはまだ見極められていない。それから「統合的水資源管理」、極めて重要なキーワードで、これからもそうだと思いますが、我々としては実務に向けて概念、概論と実践事例紹介との間をつなぐような、ここが非常に今求められているのではないか、こういう位置づけを考えております。

・ というわけで、ねらいとしては3つのことを考えております。実務に使える施策オプションを拡充していく。従来のいわゆる河川事業の枠にこだわらずにオプションを拡充していくということと、それからもろもろのいろんな施策の組み立て手法を検討する上での根幹技術として、リスク評価法を確立していこう。そして、それらを踏まえて適応策の、計画書をちょっと大胆な言い方ですが、そのたたき台ぐらいを提示する。具体的には施策群を設定して選択をする、これを支援する基盤技術をつくりたいというのが3つのねらいとして絞り込みました。

 ここにいろいろ、この研究を進める上で特にこういうスタンスでいくのかなということを羅列的に書いております。施策オプションは、新規開発よりも、メニューはもういろいろ出ていますので、有用性の見極めに重点を置く。それから実行可能性の吟味を重視。このために行政が今まで随分経験してきた現場がありますので、その実情を研究に合わせてその情報を再度編集する、これが非常に重要かな。それから、ケーススタディでより実践に近い形で具体的な数字をもとに議論するということと、個々の個別の手法開発をキャッチボールさせるということが重要で、そういう意味で流域を類型化して代表流域での検討をしていく、このあたりが重要だと考えております。

・ これは研究計画で、まずは水害リスクの予測評価手法を開発しましょう。それから施策オプションの選択法とその組み合わせに関する研究をしましょう。それから統合的な施策、まずは治水でどういうことが必要かという手法をある程度構築してから、他の目的にかかる施策、環境であるとかその他の施策とどういうふうに組み合わせられるかということをその上で考えていって取りまとめをしようというのが、全体の流れでございます。

・ 幾つか重要なポイントだけ説明します。まずリスク評価法であります。これはお手元の参考資料に少し細かい図面をつけておりますが、要するに発生の確率とその確率で起こる被害の大きさの関係で、今はこういう曲線のレベルにあるものが、本来だったらここまで安全度が上がったものが、気候変動によってここにとどまってしまう。それを頑張って同じように青のa案にまで、同じような目標を達成するのか、それとも少しやり方を変えて、この曲線自体のあり方も少し考え方を変えて、c案とかb案のように変えて総合的にどれがいいかを判断していく。そういう方法を最終的には計画書に組み込みたいということで、この曲線を評価できる、そういう手法を開発していきたいというのが、このリスク評価手法のポイントになります。

・ それから、リスク評価手法の関連でさまざまな対応の、いろんな状態の表現があるわけですが、その被害を表現できるリスク手法を開発していこうというのがこれになります。これは個々のリスクというよりも、いろんな被害があります。直接経済被害、人的被害、間接経済被害、いろんなものがあります。いろいろな政策手段がどのリスクをどれほどさえぎるかということを全体で表現できるような、そういう方法論をつくりたい。それによりまして、単に構造物的な手段と非構造物的手段が代替になるのだとか、そういう単純な議論ではなくて、その地域にとってどのリスクをどの程度減らしたいのか、それにはどの方法を組み合わせるのがいいのかというのを、こういう図面をかきながら議論が客観的にできるような、そういう手法をつくっていきたいというのが、このサブテーマの目的であります。

・ それから施策オプションの拡充ですが、随分メニューが出ています。ここの例にも挙げてありますように、既存施設の高度利用であったり、河道・堤防管理の高度化と、古くて新しい課題ですが、河川氾濫の起こり方を戦略的に制御する。これらの話です。こういったものをもう一度適用条件、それから実現を可能にする条件の整理も含めて掘り起こすというのが、ここのテーマ、サブテーマAの1つでございます。

・ 先ほどケーススタディということを申し上げましたが、流域の類型分類をして代表的な流域圏を設定する。まだこれは仮の設定ですが、こういうタイプ、こういうタイプ、こういうタイプ。それぞれで実際にそのケーススタディに近いことをやってみて、先ほどのどういう施策の組み合わせがどういう効果をもたらすかということを、具体の数字で判断していこうということをやってみたいという、そういう考えでございます。

・ そういうことを通じて、ここにありますようにさまざまな種々の適応策を組み合わせたパターンを施した場合の効果を算定する。それから長期的な流域圏の状況変化。人口だとか土地利用、こういったものがそもそも施策効果にどう影響するか。逆に言うと、これらをコントロールするということが、この気候変動対応に意味があるかどうかも逆に見極めたいというのがここでございます。それでもなお残るリスクに対してどういう手があるかというのを考えていって、最後にその統合的な施策、先ほど申し上げた環境的なものとかその他の施策と、この治水を軸に考えた施策とはどういう親和性、背反性、統合化方策があるのかということを議論して、具体の統合化の1つの道筋をつくっていきたいという、この4つの項目をこのサブテーマAで考えています。

 最終的に、類型の流域圏にはどのような適応策が向いているかということを判断するための処方箋を書くための基本的な枠組みを提示する。それからできましたら、これが国際的にどんな普遍性あるいは日本独自の個別性を持っているのか、この辺をはっきりさせたいということでございます。

・ これが時間軸でございまして、もう既にいろんな予備研究が済んでいます。それをまずプロジェクト研究開始にぶち込むということと、大体の計画手法のイメージは今年度中、これはまだ予備段階ですがつくっていきたい。それである程度3年でやっていくわけですが、国交省の社会資本整備審議会で20年6月に5年を目途にしっかりした方法論をつくるぞという、これに間に合わせるであるとか、IPCCの適応策が今度はメインになりますが、その報告書へのインプットであるとか、これはちょっと河川局で今別途動いている話ですが、こういう非常に洪水に苦しんでいる国のベストプラクティスを共同で事例集をつくろう、こういう取り組み。内外の取り組みにうまくマッチさせるよう、シンクロさせるようにその都度アウトプットを出していきたいという計画を時間軸では考えております。

・ この研究は、狭い意味では統合的な研究です。この適応本部はその主たる構成要員である河川研究部であるとか、それから危機管理センターでそれぞれ個々に関連する研究をやってきております。あるいは環境研究部でも河川でさまざまな環境の研究をしています。それらをこういう形で全体を組み合わせながら統合化するところに、狭い意味でのこの研究プロジェクトを使っていくというわけですが、全体としてはこれがすべて適応策の1つの大きなプロジェクトという意識でも見ていきたいというわけで、当然海岸の対応策というのも入ってきますし、個々の河川のさまざまな、もう既に施策オプションの拡充という話をしましたが、それがどういうふうにうまく入っていくのかという話とか、土砂管理であるとか環境の話とかがどういうふうにこことうまく統合するのかということを、これらの資産を生かしながらこの研究にうまく統合化していきたいと、そういう組み立てを考えております。

・ これはごらんのとおりですが、冒頭に申し上げましたように、気候変動の適応研究本部ということで、少なくとも国総研の中では部横断的にこの研究を統合的に進める体制をとっていくということと、気候変動については文科省の革新プログラムとも十分連携をとりながらやっていくということで、ある程度統合的な研究体制をとるということを考えております。以上でございます。

【主査】 ありがとうございました。それでは御質問、御意見いただきたいと思います。いかがでしょうか。

【委員】 大変重要な課題でありまして、ぜひ推進していただきたいと思っております。分析をするときに、どうしてもシミュレーションというものが必要になってくると思います。水害、特に洪水の場合は、そういったシミュレーションモデルはイベントモデルでやっていくのかなという気はするのですが、しかしながら利水、水資源とか環境を考えるときは長期の流出モデルといいますか、長期のシミュレーションモデル、流域モデルが必要であると思います。この気候変動シナリオを考える期間、10年から100年ぐらいの長い間の期間ずっと稼働するような分布型モデルで、当然施策が流域の部分で行われるわけですから、分布型モデルでそういう施策群を組み込めるようなものが必要ではないかと思うのですが、そのあたりの展望はどうでしょうか。今ダム流域なんかで分布型モデルをどんどんつくっていくという方向にはあると思うのですが、それもイベントモデル的なものが多いかなと思うのですが、長期的にかつ分布型のモデルをつくっていくというようなことがこの研究でもやっていけるかどうか。

【国総研】 まず御推察のとおり、この研究のメインの舞台は洪水対応と考えていますので、基本的にはイベントに対して流域がどういうリスクを持っているかということをシミュレーションベースにやっていきたいと考えています。その点ではイベントモデル中心にします。

 それとは別に、例えば気候変動下での渇水リスクの評価、対策の提案。これは狭い意味での本研究のプロジェクトではありませんが、関連の研究として別途進めておりまして、そこでは例えばダム管理等において分布型モデルを適応するという研究をしております。先ほどもちょっと御説明しましたが、ある程度治水を軸にして、例えば事前放流をやるとかそういう幾つかの水資源管理とバッティングするような施策を1回構築した上で、一方でこれでやっている渇水リスクを軽減するための対策とすり合わせたときに、どういうふうに先ほど申し上げたようなバッティングがあるかとかと、どういうふうに統合化できるかというところで、2つの研究を組み合わせるような方法を今は考えております。その点におきましては、これも含めて100年全部分布型でやるということは現時点ではまだ考えておりませんが、逆に施策同士を組み合わせたときに、それがいよいよどういうふうに整合をとるかというところでそういうことが必要になれば、その時点でそういうことも検討しなければいけないかなという、それぐらい今は考えております。

【委員】 先ほど不確実性という言葉が出たのですが、不確実性はシナリオを設定するときとそれからシミュレーションをするときとそれぞれあると思うのです。やはり問題は、シナリオ設定の方の不確実性が大きいと皆さんが思っている点だと思います。私が津波の研究をしていると、地震学者が次々にシナリオを変えるのです。どの断層が動くかというのを毎年新しいのを持ってきて、これについて津波の対策を立てろと言われると、幾らシミュレーションをしても対策が次々に変わってしまいます。実はこの地球温暖化の問題も、シナリオの部分の不確実性をどれだけ小さくできるかというのが最後に問題になると思うのですが、その辺はどういう御見解をお持ちでしょうか。

【国総研】 100点の答えはないのですが、ちょっといいかかげんな言い方をすると、最大限使うが使われないようにしようというのがスタンスです。例えば、まだ非常に初歩的な段階ですが、不確実性が起こる可能性は低いが、もし起こったら大変なことになるというシナリオがあったとします。あるいは不確実性、多分これぐらいは起こるかもしれないね、そこそこのリスク増があるというのを比べたときに、では前者のものについて後者のものと多分同じ施策にはならないのだと。そうすると、外れたときにどうなるか、空振りをしたときにどうなるかを見据えながら、その外れてもさほど損にならないような施策が果たしてありやなしや。例えばもともと洪水のためだけではなくて、地域政策であるとか先ほどの利水の話もありましたが、他の目的にもこれぐらいやっておかなくてはいけなかったねというものがあれば、それと組み合わせて、万一治水の方のリスクがそれほどでなかったとしても、その投資はむだにならないというような、そういう施策の選択のところで不確実性を踏まえての振り分けみたいなのができないかというぐらいをヒントにしながら、その不確実性というものを政策担当者が主体的に考えられるようなものができないかというぐらいの議論を今はしているところであります。

【委員】 もう一つその件で伺いたいのですが、不確実性が最後に問題になってくるのは、地域ごとに施策を組み合わせる時になります。最後にどれにするかというのは、基本的にはその地域の人がどれを選び取るかという問題になるのですが、もちろん地域住民の方々は我々が科学的な方法と言っている方法の不確実性を知っているわけですよね。そうすると、不確実性を加味した上で施策の選択をやることになります。これが起こる、これをやると何年後に何が起こるという課題を突きつけられて、その上で合意形成をするということになるのですが、例えば私のカトリーナの高潮調査のときに、ずっと各自治体に聞いて歩くと、自治体によって対応の仕方が違うのですね。とにかく死ななければいいからみんな逃げろというところと、逃げる必要はない、ここで頑張れというところと、自治体によって差が出てきてしまうということがあります。これは結局は国が決めることではなくて地域が決めることになるのですが、それに対して国はどういう役割を果たすのですか。オプションを提示して、これはこのぐらいの不確実性があって1000年に1回全滅するのだったら甘受するという地域の人がいたら、それでもいいと思うのか。国のスタンスは、そのときにどうなのかということを、気にしているのですが。

【国総研】 そこは大変重要な議論で、今の時点ではこういう議論をしています。すなわち、多分その議論は、どこまでの、あえて言うなら構造物的な手段での対応をして、その結果どういう性質のリスクが残っているかにかかわってくると思うのです。例えば連続堤がきれいにつくられていて、どこでもあふれるかもしれない。そのどこかであふれるということを、とても河川管理者は事前に予知し得ないぐらいきれいに整備してしまった。そうすると、どこでもあふれますからみんな注意してねというレベルで、それ以上責任を果たしようがないので、そのときには、もし万一あらゆる場所であふれて破堤氾濫したときにどういうことが起こるかというしっかり情報を提供して、あとは個別にちゃんと判断できるような環境を醸成するというのが、まず基本になると思うのです。逆にいろんな事情があって、ある特定の場所が結果としてあふれやすくなった。それがある程度事前にそれなりの可能性で予見できるとするならば、そこに対してそのレベルとか系によりますが、それに対してもある程度河川管理者が積極的にその氾濫源に対して対策をとっていかなければいけない場合があるかもしれません。そういう場合には、相当能動的に、こうやらなかったらあなたは大変なことになるよとか、これぐらいお金、ちょっとこれは言い過ぎですが、例えば政策論としては、これぐらいお金を使いますから輪中堤防つくりましょうよと言わなきゃいけないかもしれません。その辺の幅をもともとの河道がどれぐらい頑張れるかの質によって変えていくような戦略をしていくのかなというのが、今議論していることで、まだまだ先はあると思うのですが、そういう議論をしています。

【委員】 今のお話をお伺いして、結局土地利用の仕方について、やはり施策を考えるということもこれは入ってくるのかなと思いました。50年先、あるいは私自身はよく理解していませんが、この気候変動に対応する河川改修を何年計画でやるのかというその計画期間によりますが、多分建物なんかの耐用年数はその計画期間より短いでしょうから、土地利用をうまく誘導してやっていくこととの組み合わせで、相当安上がりな河川改修計画になる可能性がありますよね。

 オランダで交通が便利か便利じゃないかというので、A、B、Cのランクを付けて、土地利用をコントロールするやり方があるのですが、ここではそういう河川の危険性に合わせて土地利用を誘導していくというのはかなりおもしろい話になるのではないでしょうか。

【国総研】 そこは、まずは非常に自然体に、今世間で大体出ている、これぐらい人口が減るよとか、地域分布はある程度の言われていることを踏まえて、何もしなければこれぐらいになるだろうというときに、その人口が変わるとか土地利用が自然に変化していくことでリスクがどう変わるかをまず出す。あるいは少しシナリオ分析的に、仮に土地利用が河川防災担当者と見て都合のいいような方に誘導できたとしたら、それはどれぐらいの感度で住民が安全を享受できるのかという感度分析をしてみる。そこまでは多分できると思うのですが、問題は、もし後者が結構感度分析上効くとなったときに、ではそれをどう誘導できるのか、そこがやはり最後のネックになっていて、果たして土地利用の規制をするためにどんな条件が必要かということをこの研究の中でもよほど考えないと、またある絵空事の提案で終わってしまうので、そこにおいては全面的な土地利用の施策はとてもできませんが、例えば過去の既往の施策の中である程度氾濫を許容するようなことを地域が納得した事例であるとか、やろうとしたができなかった事例のように、非常に先鋭的にその問題に取り組んだ事例について、それができた、できないの条件を何とか引っ張り出して、そこからそういう土地利用の規制に一歩踏み込むための何か具体的な条件を整理できないかということを、今の段階では考えています。

【委員】 研究体制のことで少しお聞きしたいのですが、まずこの気候変動適応研究本部について、もう少し説明と、それからかなり多岐にわたる内容が入っていて、なかなかこれちゃんと遂行するためにはいろんな人が参画しないといけないと思うのですが、それが国総研だけでなくて外部の人も多分入ってこないと、なかなかちゃんとできないのではないかなという気がします。例えば研究所外の方の参画の仕方とか、その辺のお考えについてもう少し説明していただければ。

【国総研】 様式Bの、済みません、ページを振ってなくて申しわけないですが、研究概要書という表紙があるのが、裏側に効率性のところで研究体制というのを書かせてもらっています。気候変動適応研究本部というのは、具体的に言いますと関連する研究部が4つの部から成っておりまして、河川研究部、河川環境という、これは環境部の中の河川環境研究室ですが、環境部、環境研究部、下水道研究部、危機管理センター、少なくともこの4つが入って統合的に研究を進めるということなので、いわゆる河川技術的なハード的なものと、それから環境的な側面と、それから都市あるいは水質にかかる下水道的な知見と、それから水害とかその地域のいろんな氾濫、避難対策等のソフト的なもの、水害研究室が危機管理センターでやっておりますが、そういうもの。それらは統合的にやるという体制をつくっております。それから文科省の、先ほどもちょっと言及しましたが、気候変動につきましてはここにありますようなプログラムに国総研は入らせていただいて、最新の気象モデルの結果が逐次入るような体制はとっております。

 その上で、先生御指摘のように多分足りなくなると思いますので、ここではまだ書き切れておりませんが、外部のさまざまな有力な知見をどういうふうに協働してやっていくかということについて、さらに考えて参りたいと思っております。ありがとうございます。

【委員】 その辺、しっかりしてやってください。

【主査】 いかがでしょうか。6月18日に研究評価委員会というこの分科会の上の委員会でも、この研究本部ってすごいねと、一生懸命やってくださいよという非常に高い評価をされていたということを思い出しました。それと、気候変動に対する総合的研究という観点からも、すごく重要なテーマだと思うのですね。ですから私の個人的な意見としては、ぜひ推進していただきたいと思います。

それで、本音ベースのお話を伺いたいのですが、この別紙の方で総研究費が9,000万円と書いてありますが、研究本部で、しかもこんなでかいテーマのものが本当に大丈夫かしらと思います。その辺はどうですか。

【国総研】 9,000万円はこの黒枠のところということで、逆にある意味で事業の範疇でやる個別については、もう2〜3年前から随分やっておりますし、今後も連続的に研究が進んでおりますので、むしろこの9,000万円はそれをちゃんと今申し上げたようなシナリオを軸に統合していくところに重点的にお金を使う。この辺はそれこそ適応本部の力を使いながらやってねとお願いするように思っております。

【主査】 わかりました。ありがとうございます。ほかにございますか。

 もしなければ、コメントシートを記入していただいて集めていただいて、取りまとめの方に進んでまいりたいと思います。

(事前評価シート回収)

【主査】 ありがとうございます。全員「実施すべき」というふうに明記していただいております。個別の御意見も結構いただいております。例えば、自治体への適用を考えた場合に、類型化とか処方箋の作成が必要なのではなかろうかとか、シナリオに含まれる不確実性の問題をちゃんと考えろとか、人的被害と経済被害もちょっとよく考えてくださいとか、土地利用もちゃんと考えてねとか、一々紹介はしませんがコメントをいただいておりますので、こういうコメントについては取りまとめの段階で盛り込ませていただきたいと思います。推進すべきという取りまとめにさせていただきたいと思います。どうも御苦労さまでございました。

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〈事前評価GグリーンITSの研究開発

【主査】 それでは、次の御研究は「グリーンITSの研究開発」でございます。準備ができたら御説明をお願いいたします。

【国総研】 「グリーンITSの研究開発」について、御説明申し上げます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

・ 研究期間は来年度から3カ年を考えております。

 まず高度道路交通システムと呼んでおります、ITSというものについて若干御説明申し上げたいと思います。ビーコンと呼んでいる道路側に立てたこのアンテナと車の中に取りつけた車載器との間で情報のやりとりを行いまして、ここに示しておりますもろもろのサービスを実現していくという、システムでございます。

 これまで私どもで取り組んできたものとしましては、現在普及が既に進んでおります。

ETCあるいはVICSサービスといったものだけではなく、ここにありますような安全運転支援サービス、あるいはインターネット接続などのサービスを車の中に取りつけた1つの車載器で実現するための研究を行ってきております。ちなみに、この車載器は今年の秋ぐらいから一般に市販化される予定と聞いております。また、これらのサービスの通信手段につきましては、ETCと同じ周波数帯の5.8GHz帯DSRCの通信技術を活用し、先ほど申し上げました安全運転支援などのサービスの実現を図ってきたというものでございます。

・ 具体的にこれまでの成果の事例を紹介します。これは合流支援システムでありますが、合流してくる車の存在を路側に設置したセンサーが検知いたしまして、その情報をこの本線側の車に対して情報提供用DSRCアンテナで画像と音声により警告する、こういったシステムでございます。特に首都高など都市高速では合流区間が非常に短こうございます。そういう意味でこういったシステムが非常に有効だということがわかってきております。

・ 来年度からのプロジェクト研究を立ち上げるに当たっての背景について御説明いたします。御承知のように京都議定書の目標であります温室効果ガス排出量の1990年比6%削減、これが掲げられておるわけであります。国交省ではこの目標に向けまして道路施策を始め各種の施策によりまして、CO2排出の削減を現在推進しているところであります。下側のこのグラフにありますが、運輸部門におきましては2001年をピークに着実に減少してきております。2001年に車のグリーン税制等が施行されたということ、また車の総量も、このころから横ばいあるいは減少傾向になってきているということもあって、こういう傾向が出てきているわけであります。しかしながらこの右側の円グラフにありますように、まだまだ運輸部門のCO2排出量が約83%を占めているということもございまして、さらなるCO2排出量削減に向けた取り組みが喫緊の課題になっているということであります。

・ こういうことから、道路整備事業などの従来のハード系の施策とITS技術の活用をあわせまして、効果的な取り組みを可能とするようなことが期待されております。情報通信技術は日進月歩進んでおるわけでありますが、環境負荷低減に資するような施策についても、これらの技術をうまく活用してシステムの構築をやっていくということが喫緊の課題になっていると考えております。

 この研究を進めていく上では、●の1番目にありますが、これまでの成果であります5.8GHz帯のDSRCを用いた路車間通信技術のさらなる活用を行っていくということ。それとあわせまして、下側の●にありますように、新たな通信手段についても視野に入れたいと考えております。具体的に申し上げますと、地上放送のデジタル化に伴いましてITSに割り当てられる予定の700MHz帯電波通信や、進歩が非常に目覚ましい次世代携帯、こういったものの活用というものも視野に入れたいと考えております。

・ 以下、4つのテーマを掲げております。1番目は自動車交通の円滑化・効率化によるCO2排出量の削減です。

 具体的に3テーマを掲げております。1つ目として路車協調システムの高度化による走行支援として、利用者のニーズに応じて必要なときに必要な情報をきめ細かに提供するシステムを考えております。これは従来のシステムでは対応できていないものであり、これまで開発してきた路車間システムを基本にして、さらなる開発をしていきたいと考えております。

 2つ目は物流交通の円滑化であります。これについては物流システムの効率化に必要な情報提供等を考えております。現在NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のエネルギーITS推進事業において、隊列走行等について研究が進められております。これらを考慮して、道路側として必要な研究開発を進めていきたいと考えております。

 さらに3番目は大型車対策であります。大型車に起因する事故は影響が大きなものがあります。事故が1度発生すると大きなネットワーク上の麻痺につながることから、大型車の安全対策について、さらに取り組んでまいりたいと考えております。

・ 先ほど申し上げました路車間協調についてもう少し補足したいと思います。これまで実用化してきたシステムは、基本的に利用者の属性にかかわらず同一の情報提供を行う、いわゆる放送型のシステムです。これに対して、ここで開発するシステムは、1人1人の利用者にとって必要となる情報を必要なときに提供する、すなわち、各ドライバーが道路交通に対して適切な行動をとる上で必要となる情報を提供することによって適切な行動を促していくものでございます。具体的には以下の2つのタイプを考えておりまして、1つはリクエスト型、1つはコミュニケーション型と言っております。リクエスト型というのは、利用者のニーズに対してそれに応じた情報をその車にのみ提供するという、そういう1対1の対応型の情報提供システムということであります。

 一方、コミュニケーション型というのは、複数の車両と道路側との間で情報をやりとりすることにより、最適な行動をとっていただくというものの実現をねらったものでございます。

・ 2つ目のテーマ、エコカーの走行支援であります。御承知のとおりハイブリッドカーあるいは電気自動車、こういったものはこれからどんどん右上がりで伸びていくと期待されているものであります。ここで考えている内容を説明します。例えば、従来のカーナビに対応したディジタル道路地図は、道路に関するノードとリンクの情報を搭載しているだけですが、それに加えて道路の勾配や線形、そういった道路の条件をディジタル道路地図に付加してあげて、車の制御と連動させて最適な駆動制御を行えるようなシステムを考えていこうというものであります。あわせまして、最適な経路案内システムの開発を考えていきたい、こういったものでございます。

 また、電気自動車の関係なのですが、電気自動車というのは給電が走行上大きなネックになるということが想定されるわけであります。電気自動車の利便性向上を目指す上で、ある程度停車時間がかかる給電中にさまざまな情報が送受信できるようなシステムを検討していきたいと考えております。

・ ハイブリッド車につきまして、具体的な話をさせていただきます。現在のカーナビに対応する道路地図は、先ほども申し上げましたが、道路のノードとリンクに関する情報だけが入っているわけです。それに道路の勾配等の情報を付加し、その情報と車の挙動とを連携させてモーター駆動とエンジン駆動の最適な組み合わせを構築するシステムを考えております。さらに、先ほど申し上げましたが、普及が想定される電気自動車の給電スポットが走行上の大きなポイントになろうかということで、給電スポットの情報も加えて最適な経路案内を実現していこうと考えております。

・ 3番目の柱でありますが、自動車交通量そのものを抑制するような施策をITSの側面から支援していきたいということで、2つ掲げております。1つは公共交通の利用を促進するための情報提供システムの開発、もう一つは道路利用に対する課金、いわゆるロードプライシングに適用可能なICTの検討も行っていきたいと考えているところであります。

・ 公共交通の利用促進については、時間の関係で詳細については省略させていただきますが、自動車交通を公共交通に誘導する情報提供システムというものを考えていきたいと考えております。

・ 最後、4番目の柱でありますが、環境負荷低減効果の推定や評価手法であります。具体的に申し上げますと、道路管理に必要となるCO2排出量のモニタリング手法等の開発を考えております。例えばプローブ情報を活用して、CO2排出量をリアルタイムに、路線単位や地区単位で推定できるような手法の開発が1つであります。

 もう一つは、一般のドライバーが環境負荷低減効果というものを実感できるようなシステムの提案も行っていきたいと考えております。

・ 以上、4つの柱について概略御説明させていただきました。最後に体制についてはここに書いてあるようなことでございます。以上であります。

【主査】 どうもありがとうございました。御質問、御意見等お願いします。

【委員】 少しだけ心配なのですが、研究対象のシステムとCO2の削減というのは、そんなに強くは関連してないですよね。そのところで、羊頭を掲げて狗肉を売るというようなことが言われないように、CO2の削減だけが環境にやさしいわけではないで、効率のよい交通システムをつくること自体が環境にいいということですから、余りCO2を強調されない方がいいように私は思いました。

【国総研】 グリーンITSということで若干CO2を前面に出したテーマ設定の仕方をしているところも確かにあるかもしれません。おっしゃいますように当然、交通の円滑化、交通の効率化、そういったものを介してCO2の削減に寄与する、そういう認識は十分持っております。

【主査】 ほかにいかがですか。

 2点ほど、細かい点も入れるともうちょっとあるのですが、どなたも質問とかコメントをなさらないのでやらせていただきます。1つはDSRCは今のもので言うと中心にならざるを得ないと思うのですが、そうした瞬間に高速道路上に限られてしまうという問題がありますよね。高速道路だけじゃなくて、交通量の多い幹線道路なんかでも適用できれば、効果は着実に増加をするので、その辺をぜひ、難しいとは思いますが、いいアイディアを出していただければなと思います。

 それと、電気自動車ということが書いてあって、こういうことも大事だと思うのです。多分こんなことを言うとメーカーの方に怒られるかと思いますが、高密度のバッテリーはメンテナンスが非常に難しい技術ですよね。よくパソコンで発火したりしていますよね。ですから、電気自動車が出てきたときにそういうマネジメントとか安全性管理という観点から、どこにどういるかということを常時把握していくということはすごく大事なことになってくると思うのです。そういう意味でぴったりなので、こういうこともあると思いますが、その辺もぜひ、書いていいかどうかわからないですが、考えておいた方がいいのかなと思いました。

 それと、リアルタイムのCO2排出量とかエコルートの提案システムというのは、実はメーカーさんでは実用化されていますよね。僕はびっくりしたのですが、日産の方に伺ったのは、日産のカーウィングとかという形態を通して情報をもらえるシステムがありますよね。あれでやると自分の車の燃費情報が中央のコンピューターに行ってしまうのです。多分ホンダもそれと同じようなことをしていて、今ホンダのナビゲーションではCO2最少ルートを選べますなんて、そんなオプションもできますので、研究体制の中にメーカーさんも入っていますから、ぜひその辺足並みをそろえられて、本当の意味での官民共同研究に仕立てていただければありがたいなと思いました。

【国総研】 補足的に説明をさせていただきます。

 1点目の御指摘、一般道への展開については、道路局の中でも議論されています。まずは国直轄の道路からになるかと思いますが、災害の危険の予告等、道路管理上ドライバーの方に出したい情報から提供を始めることになると考えております。また、警察庁等において開発が進められているシステムとの連携も検討が必要と考えております。

 2点目の、EV車の存在の把握という観点については、これまで念頭になかったので、研究の中に取り入れさせていただきたいと思っております。

 それから、燃料消費量の把握については、自動車メーカーそれぞれにおいて取り組みをされていること、また車内LANに燃料消費情報が流れていることは認識しております。これまで自動車メーカーとは協力できていませんが、ISOの場で、自動車と外部機器との接続標準化の動きも出てきている等、今後取り組みが進められる方向になってきているのかと思います。

 あと、特定の車の燃費消費量から、情報の得られない車まで含めて拡大することにより、全体の消費量を推定するやり方も同時に勉強しないといけないと思っています。

【主査】 ありがとうございました。どうぞ。

【委員】 日本全体のCO2の削減計画の中で、ITSでこれだけ頑張って削減できるというのは、何かあるのですか。そういう項目はないのですか。

【国総研】 今の計画では、京都議定書の目標達成計画においては、道路の施策全体で年間800万トン分を削減することになっております。その中でVICSの普及による渋滞回避によって、そのうち240万トンを削減することになっております。単純な情報提供だけでもこのような効果が得られるとすれば、ITSによるさらなる削減も可能ではないかと思っております。

【委員】 最終的には、そういうマクロの目標にどれだけ貢献できるかみたいなのは、この研究を通じて出てくるのですか。

【国総研】 施策の効果評価もあわせて最後に行うこととしております。具体的にCO2の削減にどれだけの効果があるのかは、最初の委員の御指摘にもあったとおり、検討すべきところはあるのですが、研究を進めていきたいと思っております。

【委員】 専門外ですが、ここで開発しようとされるシステムを国内での社会実装を目指しておられると思います。海外でも展開できるようなものなのでしょうか、あるいは日本の道路環境ならではのものなのでしょうか。海外でも展開できるとしたら、CO2削減にしても全世界的に貢献できるわけで、日本の技術が、国総研が開発された、あるいは日本の企業等が開発した技術が世界にも貢献できるということになるのだろうと思いますが、その辺の見込みというか、そのあたりはどうですか。

【国総研】 最初に御説明を差し上げましたように、この研究開発の基礎になりますのが5.8GHzのDSRCを使った通信システムです。これは研究開発段階から国際標準を意識して進めておりまして、通信方式自体は既に国際標準化されております。ですから、このプラットフォームによってシステムを組めば、基本的には世界各国どこでも展開できるようなっております。

【主査】 よろしいですか。でもこれ、ちょっと嫌味を言わせていただくと、5.8GHzのDSRCというのは随分前の技術ですよね。多分これでETCができて実用化されてから同期間に、携帯のメディアは2回ぐらい変わっていると思います。だから通信技術はそれぐらいでばーっと進んでいるのに、いつまでこれなのという、そんな感じがあるのですが。

【国総研】 2つフェーズがあると思っております。このプロジェクトは3年間を予定しているということを最初に御説明をさせていただきました。3年間のうちにもうめどをつける、形にするようなものは今のDSRCのシステムを使ってやっていきたい。コミュニケーション型、リクエスト型の情報提供等については、DSRCだけでは難しいと考えております。米国では無線LANをベースにした通信技術を採用していますし、700MHz帯電波通信も利用可能となってきていますので、そういうものも並行して活用していこうと考えております。

【主査】 ありがとうございました。余計なことを言ってしまいましたが。

 それでは、コメントシートをもし御記入していただいているのであれば、送っていただければと思いますが。

(事前評価シート回収)

【主査】 いただきました。推進してよいというのと、推進すべきというのと、一部修正して実施すべきという、若干ニュアンスの違うコメントをいただきました。やはり予算規模も相当大きいので、あえてそういうことを意識して書かれたと思うのですが、それが評価委員の側からすると少し総花的な印象で全体がわかりにくいので、もうちょっと絞ったらどうという御意見もございました。それと、目標をもう少し明確にしていただければ評価もしやすいということでございましたので、その辺取り入れた取りまとめコメントにしたいと思います。参考に研究を推進していただければと思います。どうもありがとうございました。

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〈事前評価H3次元データを用いた設計、施工、維持管理の高度化に関する研究

【主査】 最後まで来ました。「3次元データを用いた設計、施工、維持管理の高度化に関する研究」でございます。御説明をお願いします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに・の表示〕

【国総研】 ・ 「3次元データを用いた設計、施工、維持管理の高度化に関する研究」については、これも来年度から3カ年取り組むということで、プロジェクト研究として採択をお願いしたいと考えております。このテーマは現在国土交通省で進めておるCALS/ECの一環で、設定をさせていただいたものでございます

 若干、CALS/ECについて御説明申し上げたいと思います。このCALS/ECというのは、もともとはアメリカの国防総省で膨大な情報データをいかに効率的に共有化して管理していくかという形でシステム構築がなされたものが発端になっております。建設システムで取り扱う諸々の情報を電子化して、そして電子化された情報データを、ネットワークを介し、組織や各事業段階をまたいで共有あるいは有効活用することを目指した取り組みでございます。もう少し具体的に言いますと、公共事業では取り扱う情報データが膨大になり、かつ省内外で関係者がたくさんにまたがるわけですが、その関係者間で電子化した情報データをうまく共有化して生産性の向上等につなげていこう、こういう取り組みでございます。

・ CALS/ECは、これまで10年以上取り組んでおります。これまでの成果について、赤で囲っているものを御説明申し上げます。例えば、建設システムの中で取り扱われる設計の電子データの様式を統一化することによって、その電子データがスムーズに関係者間で出回り利活用して頂ける環境を作ってきたり、あるいは下のところに「2次元CAD」と書いていますが、CADというのはコンピューターで行ういわゆる電子製図のことですが、このCADにより電子化された設計データを使い、図面修正や発注図面作成が簡単にできるようなシステムを作ったり、あるいは一番下側ですが、測量機器の1つであるトータルステーションに電子化された設計データを入力することで、土木構造物の出来形を効率的に管理できる手法の要領を策定するなどの取り組みをこれまで行ってきました。

・ 来年度からのこの研究なのですが、立ち上げるに当たっての背景を若干御説明いたします。製造業の自動車産業を例にとりますと、既にXYZの3次元座標データで設計データが電子化され、それを以降の下流側のプロセスで活用して、このプロセスの自動化が行われて、ロボット生産の方につなげていくシステムが出来上っております。それにより55%ぐらい労力が削減されてきているわけです。

 車の場合はこうですが、建設の世界においても設計から施工、更に維持管理へ至るまで設計データを3次元化した形で電子化して利活用することによって、生産性の向上が大きく期待できるのではないかということを、我々は問題認識として持っているということでございます。

・ 具体的に申し上げますと、これは現在の状況なのですが、我々の建設生産システムは、2次元レベルで設計データのやりとりが行われているというのが現状であり、せっかく設計データを電子化しても、利用場面がなかなか広がっていってない状況にあります。

 下に3つ吹き出しを書いておりますが、例えば、工事の発注時に施工予定数量、盛土量とかコンクリート量などの数量を算出して予定価格を出すことになりますが、そういう施工予定数量の算出、集計、書き写しなどに多大な手間が実はかかっているという状況にあります。あるいは、情報化施工というところで書いておりますが、情報通信技術を使って施工を効率化するような取り組みが現在行われつつあります。この情報化施工に際しまして、機器に設計データをインプットしなければならないのですが、そのインプットする際に人力によって入力するというような手間がある等、現時点においては、まだまだデータの活用場面で問題、改善すべき点が多々あります。

・ もう一つ、施工の段階におきまして、民間大手企業で一部情報化施工という取り組みが行われており、これからこの情報化施工は右上がりで、普及が進んでいくことが期待されているところであります。しかし、発注者側に、民間サイドで行われた情報化施工から得られたデータを用いて、監督とか検査を行うための基準とか仕組みが現在まだ整備されていない。つまりは、発注者サイドでの監督とか検査の技術基準がまだ整備されていないという課題があります。

・ そういった点から、行政サイドの方でもCALS/ECアクションプログラムで、あるいは情報化施工推進戦略で、こういった記述されているような提言がなされているということでございます。

・ 本研究では、そういったことから3つ柱を掲げております。1つは2次元設計データを3次元化する手法の策定を行っていきたいということであります。2つ目は、その3次元化したデータが、実際の現場でうまく利活用できるのか、問題点がないのか、そういった現場での検証を行っていきたいということです。3番目は、先ほど申し上げましたが、これから普及が期待されております情報化施工に対応した、発注者サイドの監督あるいは検査技術基準をつくり上げていきたい。この3つの柱を掲げてプロジェクト研究に取り組んでいきたいと考えております。

・ 具体的に申し上げますと、1番目のテーマにつきましては、2次元の設計データを3次元化する手法の策定であります。図に示しておりますように、これは道路の盛土構造の場合の事例ですが、左側にあります平面線形とか縦断線形あるいは横断形状、こういった2次元世界でのデータを、右側にありますような骨組み構造で3次元形状が表現できるような手法を検討していきたいということでございます。当面は情報化施工での利用ニーズの高い道路土工と舗装、それと河川土工という3つの工種に絞って検討をしてまいりたいと考えております。

・ 2つ目の柱、3次元データが実際の現場でうまく利活用できるのか、問題点がないのかという実証・検証を行っていきたいということであります。これについては1番目に、モデル工事を選定して実際問題点がないのか、うまく利活用できるのか、そういう検証を行っていきたい。

 2番目は、特に3次元データを利活用する1つの場面として、維持管理段階でうまくこの3次元データを利活用できないかという1つの問題認識を持っております。具体的に言いますと、維持管理段階で点検結果とか修繕記録といった履歴情報を、3次元の立体画面上でうまく重ね合わせることによって、うまく視覚的にわかりやすく管理が維持管理の方に持っていけないか、そういったことができないかということを、実証実験を重ねながらやっていきたいということで考えています。

 3番目は、先ほど申し上げましたが、3次元の設定データから予定価格を計算する上で必要となるコンクリート量とか土量とか、そういった諸々の数量を自動的あるいは出来るだけ効率的に算出できるような方法を検討していきたい。

 以上、3つの課題をここでは掲げております。

・ 大きな柱の3番目ですが、情報化施工に対応した監督検査基準を作っていきたいということであります。例えば、盛土締め固め工の場合ですが、現行の基準は砂置換法であり、締め固め土を複数点で密度管理によって行っています。それに対し右側にありますように、締め固め土の品質管理に際し、ローラーに加速度計とGPSをつけまして、締め固め強度の度合いを施工しながら取得できるような、面的な加速度データ等を監督とか検査に活用できるように、発注者サイドでの技術基準というものを構築していきたいと考えているところでございます。

・ 以上のことから、本研究の成果としては、先程から申し上げておりますが、アウトプット@、A、B、Cということがありまして、具体のアウトカムとして例えば@、A、Bと書いておりますが、特に大規模土工で設計から施工において3次元データで100%流通できるようなものをアウトカムとして目指したいということ。あと、これは試算なのですが、道路土工等で本研究成果の導入効果は年間20億円程度コスト縮減ができるのではないかというようなこと、ヒアリング等でつかんだ数字ですが、あるいは施工の管理日数が2割程度削減できるのではないか。こういったようなアウトカムが期待できるのではないかということで考えております。

・ 最後に研究体制ですが、国総研を初めとしまして、これは独法の土研とも連携を特に密にしながらこの成果を取りまとめていきたいと考えておるところでございます。以上です。

【主査】 どうもありがとうございました。これについてコメントをいただきたいと思います。いかがでしょうか。

【委員】 従来、事業を発注したときに得られるデータを、行政側、国交省側は報告書とかあるいは成果物があればそれでOKと、データの方は民間のコンサルタント会社がずっと持っているとか、そういう状況がありました。結構あったと思うのです。あるいはディジタル化して、納入されてもそれはCD−ROMに入ったままお蔵入りしているとかいうことがあったと思うのです。発注してその成果物として3次元データをちゃんと手に入れて今後の管理に生かしていくというふうな、そこの流れはもう既に確立していると見ていいのか、あるいはやはりそこも問題なのか、そのあたりはどうなのですか。

【国総研】 時間の関係で省略しましたが、コンサルタントさんに設計していただいて、その成果、特に図面関係は、ここに書いていますがSXF形式と我々は言っておりますが、こういう形式で電子納品をしていただくように共通仕様書の中でも明示し義務化させていただいております。従いまして、設計の図面関係については、既にこのデータフォーマットもはっきり統一化して、我々発注者側の方に納めて頂くようにしているということです。それを発注者側は受け取って、次の工事段階などにその図面を生かしていかなければならないのですが、例えば、工事発注用の図面に修正して、その図面でもって施工業者さんと契約をして、このとおり施工して下さいということで、発注者側は発注用図面に加工しなければいけないのです。発注者側としては100%このSXF形式で図面は電子納品していただいているのですが、それを次の施工段階にこれが100%活かされているかというと、必ずしも現実としては未だそこまで行ってない。まだ現場サイドで、それから下流のところでは必ずしも標準化されたとおりに図面が流れていないというのが現状であります。だから、我々の問題認識として持っているのは、もっともっと研修とか現場での指導などを通じて、その辺が徹底するように、まだまだやっていかなければならないと、そういう問題認識に立っています。

【委員】 大学で学生に教えている立場からすると、これまで2次元で表現された図面からどうやって3次元の空間的なイメージを学生が持てるか、それは教育のときに非常に大事なことだったのです。それが3次元で最初から表現されていると、技術者にとっても物理的なイメージを把握するのが非常に容易になりますので、これは大変な朗報だと思います。1つ気になるのは、データのフォーマットなのです。かつて東京湾環境情報センターというのをつくったとき、私その情報収集の委員会の委員長をやっていたのですが、最大の問題はデータのフォーマットをどうそろえるかということなのです。それは各機関がつくってきたデータをどうやって集めるかという話でしたから、異なるフォーマットを許容せざるを得なかったのです。その結果XMLというフォーマットに沿ってメタデータ、どうやって書かれているかというメタデータをみんなが添付してくるというので解決したのです。

 今回その3次元のデータについて、2次元のSXFというのがどういうものか私よく知らないのですが、既に製造業の方で3次元のデータが流通していますし、それから既にCADでいろんなデータフォーマットがあると思うのですが、恐らく互換性がないフォーマットをこれにすると国土交通省が言うと、国土交通省は困りませんが、ほかのところが使うのに困るのではないかと思うのです。ですから幾つかのフォーマットを許容して、それがどんなデータ形式なのかということを書いてあるXMLのメタデータを添付するという方法の方がみんなは困らないような気がするのですが、その辺はどうされるのですか。このSXFというのは既にみんなが使っていて全然問題なく流通性の高いものであるから、それに準じて3次元もやると、そういうふうにお考えなのでしょうか。

【国総研】 貴重な御意見ありがとうございます。CAD、製図の図面もいろんなベンダーさんが開発した製図のソフトウェアがあるのですが、それぞれいろんな特徴がありまして、それぞれいろんな特徴があるものをSXFというものに変換するようなシステムがございます。SXFというのは国際標準でもう定められておりまして、どの会社のソフトウェアでつくられたものでもこのSXF、発注者側には統一されたフォーマットで変換できるシステムになっておりますので、2次元では発注者側はどんなソフトであれ、きちんと標準化されたものがいただけることになっております。3次元のデータにつきましても、SXFという標準的なもので納めていただくような方向性で考えておりますが、ただ、SXFに変換するときに少しプログラムのエラーが出るなど細かい問題点はありますので、3次元で納めていただく場合にそういった細かいエラー、プログラムで変換したときの細かいエラーがないようなこともチェックをしながら研究開発、3次元でもできるように進めていきたいと考えております。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。システム開発としては非常に画期的でいいと思うのですが、きょうの午前中で言うと下水道のデータはどうなっているの、よくわからないという話がありましたし、午後からも道路の管理の枠を超えた補修健全性という観点からすると、データどうするかというのが非常に大きな問題ですよね。今義務づけをしているとおっしゃいましたが、それは直轄だけの話ではないのですか。

【国総研】 直轄だけではなく都道府県など義務づけしている地方自治体もあります。

【主査】 ですね。とすると、例えば現場でさっきの下水道のような話とか道路管理のそういうデータがあったときに、どうして統一されないのかとか、どうして使っていただけないのとか、その辺の分析もいいシステムをうまく使っていただくためには必要になるのではないかなと思うので、その辺もなかなか難しいと思うのですよね。日本は公文書管理の法律が今までなかったような国ですから。そういうDNAが欠けているのではないかなと思う面もあるのですが、非常に難しいとは思いますが、ぜひどこかに入れていただければと思いました。

【国総研】 そこら辺り、そういう問題認識を持って、現場検証ということで先程の柱の2つ目に申し上げましたが、そういう中でやっていきたいと思います。

【主査】 よろしくお願いいたします。

 それでは、もしほかに御意見等なければ取りまとめに入りたいと思いますので、コメントシートをまた送っていただきたいと思います。

(事前評価シート回収)

【主査】 全員が実施すべきであるという評価でございますので、ぜひお願いしたいと思います。地方自治体でも使用可能にするとか、受注者側の労力を下げるため、あるいはこれは普及を広範なものにするためにも必要だと思いますが、データの互換性の検討とか、本当に経費節約がどれだけなるのだろうかとか、使ってみてのお得感とか、そんなこともぜひ検討していただければなというふうな御意見をいただいておりますので、そういうことを盛り込んだ評価書をつくりたいと思います。そういうことで、よろしければ事前評価はこれで終了したいと思います。どうも御苦労さまでございました。

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4.その他


今後の予定等について

【事務局】 今後の予定等についてでございますが、今ほど主査よりお話がありましたとおり、本日の議事録あるいはその評価結果については、最終的に主査にお諮りして取りまとめていただくということでございます。また皆様方にメールを使って照会をさせていただければと思ってございます。また最終的な報告書、議事録についてはホームページで公開をすることとしておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

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5.国総研所長挨拶/閉会

【事務局】 それでは、最後に所長よりごあいさつを申し上げたいと思います。

【所長】 本日は長時間にわたりまして、いつもそうなのですが、熱心な御審議本当にありがとうございました。我々のやっているそれぞれの研究の本質と課題がとてもクリアになったような気がしております。事後評価について今回の評価いただいたことなのですが、現在継続中の課題とかこれから始める課題についても、今日お話しいただいたようなことをぜひ活用させていただきたいと思います。また事前評価でこれから予算要求する項目につきましても、大分心強いいろいろなお知恵を授けていただきまして、ぜひこれから我々の方で予算獲得の方は頑張りたいと思います。

簡単ではございますが、お礼のごあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。

【事務局】 ありがとうございました。

それでは、これで研究評価委員会分科会第一部会を閉会いたします。なお資料につきましては、机の上に置いておいていただければ、事務局の方で送付をいたしますので、よろしくお願いいたします。

 長時間の御審議、本当にありがとうございました。


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