平成20年度 第3回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第三部会担当)

議 事 録


1. 開会/国総研所長挨拶
2. 分科会主査挨拶
3. 議事
(1) 評価の方法等について(確認)
(2) 平成19年度終了プロジェクト研究の事後評価
@ AIS情報を活用した海上交通による沿岸海域の効率的利用に関する研究
(3) 平成21年度開始予定研究課題の事前評価
A 持続可能な臨海部における廃棄物処分に関する研究
B 小作用・性能の経時変化を考慮した社会資本施設の管理水準の在り方に関する研究
4. 今後の予定等について
5. 国総研所長挨拶/閉会

平成20年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第三部会)

平成20年7月25日

1.開会/国総研所長挨拶

【事務局】 ただいまから、平成20年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会の第三部会を開会いたします。

 

【所長】 本当に朝早くからありがとうございます。先週から全体の外部評価、土木関係、建築関係の旧建設土木関係、本日は港湾等の関係ということで、何人かの委員の方には何度目かのご出席で、本当にありがとうございます。

 これまでもよくお話をいただいておりますが、行政ニーズというか、ピタッと合わせた格好で、いい意味では連携しているのですが、ある意味では国総研の存在がわかりづらいというお話ありまして、できれば、いろいろな分析・評価をしたものが、逆に政策を引っ張るようなことがあってもいいのではないかというご指摘もいただきました。

 それから、志は高く、しかし、成果は、部分でもいいから具体的に出してもらう、それが次の二歩目、三歩目に行けるということで進めていきたいと思っております。

 私も赴任して間もないのですが、中でも話をしていると、この外部評価の委員会で出ているお話は、みんな大切に真剣に捉えている感じがしますので、本日もどうぞ忌憚のないご意見をいただきまして、事後評価のものもそうですし、事前評価のものについてもご議論賜って、それをうまく踏まえてステップアップしていきたいと思いますので、本日もよろしくお願い申し上げます。



2.分科会主査挨拶

【主査】 本日は、3件の議事がありますけれども、事後評価と事前評価がございます。よろしくお願いいたします。

 この場での評価自体は、個々具体的なプロジェクトの評価ですが、先ほど所長からもお話がありましたように、先週、全体の委員会がございまして、国総研設置以来の研究や、その研究システムの状態についても議論させていただいております。したがいまして、そういう全体のことについても今後議論が進めば、ご報告いただける機会があると思いますが、本日は具体的な評価ということでよろしくお願いします。

3.議事

(1)評価の方法等について(確認)

【主査】 最初に、「評価の方法等について」、事務局からご説明をお願いしたいと思います。

 

【事務局】 資料2をご覧ください。「評価の方法等について」でございます。

 まず「評価の目的」についてですが、「科学技術基本計画」、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」等に基づきまして、公正かつ透明性のある研究評価を行うことを目的としております。

 

 次に「評価の対象」でございます。重点研究であるプロジェクト研究及び予算要求上評価が必要とされる研究課題を評価対象といたしております。対象となるのは、事後評価、中間評価、事前評価の3種類ありますが、本日該当しておりますのは、事後評価1件、事前評価2件でございます。

 

 次に、「評価の視点と項目」についてでございます。事後評価につきましては、必要性、効率性、有効性の観点を考慮いたしまして、以下の項目について自己点検を踏まえ、本日ご評価をいただきたいと考えております。当初の目標に対する達成度、研究成果と成果の活用方針、研究の実施方法、体制の妥当性、上記を踏まえた本研究の妥当性ということで、科学的・技術的意義、社会的・経済的意義、目標の妥当性等も含めてご評価いただければと考えております。

 

  1枚おめくりください。事前評価についてでございます。必要性、効率性、有効性の観点を考慮してご評価をお願いしたいと考えているところです。必要性については研究の背景を踏まえた研究の必要性、効率性については研究の実施方法・体制の妥当性、有効性については研究成果の見込みと成果の活用方針を踏まえてご評価をいただければと考えております。

 

次に、「評価の進め方」についてでございます。この後、3件ございますが、1件ずつご評価をお願いすることを予定しております。まず、個別課題ごとに事務局から説明を行い、その案件について委員の方から意見をいただき、評価シート及びコメントシートへのご記入もあわせてお願いしたいと考えております。それに基づきまして主査からご総括をいただく形で、1件ずつ、主査のご総括をいただくまでは一連の流れとして3件行ってまいる予定でございます。よろしくお願いいたします。

 

 なお、次のページの別添1、「分科会委員が評価対象課題に参画している場合等の対応について」ということで対応を整理させていただいておりますが、本日、対象はありませんのでご報告させていただきます。

 

 戻りまして、時間配分についてでございます。「別添2のとおり」となっておりまして、さらに1枚おめくりいただきますと横表があります。事後評価の1件につきましては、説明15分、評価20分、まとめ5分。事前評価につきましては、説明10分、評価15分と予定しておりますのでよろしくお願いいたします。

 

 前に戻りまして、「評価結果のとりまとめ」についてでございます。評価結果は、審議内容、評価シート及びコメントシートに基づきまして、主査のご責任において取りまとめることといたしております。その後に研究評価委員会委員長の同意を得まして、国土技術政策総合研究所研究評価委員会の評価結果として取りまとめさせていただきます。

 なお、「評価結果の公表」につきましては、議事録とともに公表することを予定しておりますのでご了承をお願いいたします。

 

 以上でございます。

 

【主査】 どうもありがとうございました。

 

 今のご説明に対して、何かご質問、ご意見がありますか。よろしゅうございますか。

 これまで何度かやっていただいているので、そのように進めさせていただきたいと思いますが、ご質問がないようでしたら、早速、評価に入りたいと思います。


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(2)平成19年度終了プロジェクト研究の事後評価

【主査】 議事の(2)「平成19年度終了プロジェクト研究の事後評価」でございます。この研究について、ただいまからご発表をお願いします。


 <@事後評価課題AIS情報を活用した海上交通による沿岸海域の効率的利用に関する研究>

【主査】  それでは、議事の(2)「平成18年度終了プロジェクト研究の事後評価」ということで、最初に報告をお願いしたいと思います。

【国総研】  空港研究部長の○○です。私どもから、事後評価ということで、「地域資源・交通拠点等のネットワーク化による国際観光振興方策に関する研究」について報告をさせていただきます。

 まず、お手元にお配りしてあります様式Aに従って、ざっとした概要を私からご説明し、内容につきまして、これを担当してまいりました空港ターミナル研究室長から説明させていただきます。

 まず様式Aの「研究開発の概要」です。観光立国の推進が今叫ばれているわけですけれども、この活動に寄与するために、観光振興という観点から社会資本整備の留意点について整理をし、その中で特に各地域の玄関になる空港を核とするゲートウェイ空間、この利活用の方策を提言していこうというのがこの研究の内容です。研究期間としては平成16年から18年の3カ年、研究費総額が2,000万円です。

 この目標としては、3点あります。観光振興のための地域の取組みのガイドラインを作ること。豊かな観光体験を提供する資源及び交通拠点のネットワーク化の手法を確立していくこと。地域の価値向上のためのゲートウェイ空間の利活用方策についてまとめていくこと。こういうことを目標とした総合的な研究です。

 私どもから見た評価ですが、目的の達成度としては、個別の課題の内容についてはまたご説明したいと思いますが、達成度につきましては、「当初の目標を概ね達成した」という評価を私どもはしております。「概ね」としましたのは、実は、この大枠調査の中で、社会実験とかインバウンドに対するアンケート調査を実施したいとしていたのですが、これについては、残念ながら予算の裏付けが取れませんで代替的なシナリオになったということから、二重丸の「よくできました」という評価には当たらないだろうということで、「概ね達成した」という評価としております。

 それから、ここで出た成果ですが、これは今後のことではありますが、先ほど申しましたガイドラインを、関係の自治体や観光協会、あるいは、空港利用を促進するような各団体に配布して活用していただくとともに、観光においてこの成果を実際に反映していただくために、成果発表の一環としてシンポジウムを、これは私どもの組織だけではなくて、国土交通省の中の観光部なども巻き込んで一緒に行っていく予定です。

 そのほか、この調査の中で、例えば地域の類型によって空港の特性が変わってくるという知見も得られました。こういったことは、空港施設の基準の改定や見直しにも反映していきたいと考えております。

 それから、本研究の実施方法・体制ですが、これは事前評価の折にも委員の先生方からご指導をいただいたところで、自治体や民間事業者、いわゆる観光主体との連携を深めるべきであるというご意見をいただいております。そうしたことを踏まえまして、観光関係者の皆様方や観光関係の専門家のご協力を最大限いただき、その結果、かなり突っ込んだ中身になってきたのではないかと自己分析いたしております。

 それから、観光先進地域において関係者のヒアリングなどを行うことにより、現場における課題を、細かなところまで押さえることができたのではないかと考えております。

 以上を総括しまして、私ども、この研究については成果が得られたと考えております。

 以後、中身につきまして、この検討を一貫して進めてまいりました空港ターミナル研究室長の○○から、パワーポイントを用いてご説明したいと思います。

 それから、この資料は他部会にもお配りしておりましたけれども、他部会からはあらかじめのご意見はいただいておりませんのでご報告いたしておきます。

【国総研】  空港研究部の○○でございます。研究の内容の説明をいたします。

 研究の構成につきましては、お配りしている様式Cという資料で全貌が一覧出来るようになっていますので、それをご覧ください。

 最初に、観光の現状、観光政策・観光計画の歴史について把握し、海外との比較をしました。次に、先進観光地ではどの様になっているかという事例分析をしております。それから、インバウンド関係について少し整理をしています。特に力点を置いて、空港を核としてどのように旅客が動いているかということを整理しました。インバウンドの話と国内の2点やっております。

 アプローチについてですが、「観光」を構成する要素の中で、特に重点を置いて、地域の玄関であるゲートウェイを取り上げております。これについてはデータをとって定量的に分析しました。

 観光地については、先進観光地を事例に有識者の方に集まっていただいてワーキングを開き、ブレストしながらやっていただいております。

 具体的な内容、成果についてご説明いたします。

 まず、観光政策の歴史を把握し、国際的に比較しました。これは、既存の書籍や論文などをもとに整理しました。基本的にインバウンド振興という観点で見ると、戦前から戦後のオリンピックまでは、商品である国土なり空間の魅力をいかに上げるか、受入れ施設の質をどう向上させるか、情報サービスをどう発信するか、ということを一体的に国が主導してやっていたと言えます。ところが、現在の国の観光政策は、基本的には、情報発信に偏っており、やや連携がとれていないのではないかということを指摘しております。

 海外ではどうかということで比較してみますと、発展途上国についてはオリンピックまでの日本のように、国が大きく関与するパターンがあります。先進国ではアメリカ・イギリスのように、政府が観光産業にあまり関与しないところと、フランス、イタリア、スペインのように政府が関与しているところの2パターンあるということが分かりました。今の日本の方向性は、どうもアメリカ的ですが、それだけで良いのか、もう少し社会資本整備などと連携させなければいけないのではないかということを指摘しました。

 それから、先進観光地の事例分析を行いました。これについては、先ほど申し上げたように、ワーキングをつくって議論しました。

 観光振興に対してどう評価していけば良いかということで、評価軸を整理しました。特に、従来ですと来訪者の視点や観光関連産業が豊かになれば良いというような視点が主でしたけれども、それ以上に地域住民の視点が重要であるということ、また、高度経済成長期にはこの黒字のほうがメインだったものが、現在は赤字のところが重要になってきているというように、時代によって評価軸の重要性が変わってきているということを指摘しております。

 それから、この3つの評価軸それぞれがどうも齟齬を来す例が随分ある。逆に、その齟齬を、解決している例もあるということで、その様な事例を整理して、そうしたものを地域の取組みのガイドラインとして伝えていけたら良いかなと考えております。

 インバウンド観光の現状と課題については、既存のデータ等をもとに、現状はどうなっているかという分析を行いました。それから、北海道をケーススタディにして、どんな状況にあるかということのヒアリング等を行いました。

 インバウンド観光振興の現状ですが、例えば地方の入り口空港を見ると、国によって使う空港が決まっていますが、それにしても、数年おきに変化もあるということを指摘しております。例えば、大分や宮崎などは韓国一国が突出していますが、我が国の地方空港の中で唯一と言って良いぐらいインバウンド利用数が減少したりしております。

 利用客の行動形態ですが、特筆すべきは韓国は個人旅行客が多くなっているということです。つまり、アメリカの後を、韓国が追いかけて、その後は、まだ、他はみんな団体旅行ですが、中国、台湾、香港と言ったところが後追いをしています。時代によって旅行形態もどんどん変わってきているということが言えそうだということです。

 北海道は重点を置いて調べたのですが、普通、国内の旅客だと新千歳のイン・アウトがほとんどですが、インバウンド客は地方の空港を使ってイン・アウトしている傾向があるということなどが分かりました。

 このような動向をもとにインバウンド観光における留意点を整理しております。ニーズがどんどん変わるのですが、特に問題なのが行動形態の変化で、個人旅行化に対応する必要があるということです。それから、チャーター便が、定期便化するとどうなるのだろうかというようなことが問題になっています。

 また、地方空港でのイン・アウトが違う場合ですが、自治体の枠を越えるとなかなかうまくネットワーク化できない現状をどうするかということが問われています。

 それから、空港を核とする利用客がどう動くかということを分析しております。これについては、空港によっては目的地が一極集中しているものから他県まで広く流動して、イン・アウト空港が違うような行動を起こしているものまでいろいろなパターンがあります。日本国内でこの地域をセットとして考えたら良いのではないかと言うゾーンが選びだせそうだなということを言っております。

 また既存データの分析では分からないところを補うために、別途アンケート調査をして動態を把握しております。それによると、色々な空港で、旅行形態、イン・アウトの仕方、パターンが違うことがわかってきました。

 こういうものがどう影響するかということですが、例えばターミナルビルの計画では、基本的に全国一律で規模を設定していますが、先ほど申し上げたように、使っている空港によって色々なパターンがありまして、それに応じて必要となるものが異なってきそうだということを整理しております。

 そうしたものを利活用方策なりネットワーク化しようということでまとめました。

 評価としましては、予算の関係で、インバウンドのアンケートとか社会実験などはできておりません。こういうものは△印をつけております。それから、重点を置いたようなところは、空港を中心とする観光客の動向とか歴史や課題の整理と言ったところはまあまあできたかなということで評価をさせていただきました。

 以上です。

【主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、委員の先生方から、質問あるいは意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【委員】  最初にガイドラインをおつくりになったということですが、そのガイドラインは、どこに入っているのでしょうか。

【国総研】  ガイドライン自体は今回の資料の中にはないのですが、評価軸を整理して事例分析をたくさんしておりますので、基本的にはそれがそのままガイドラインになるかなと思っております。

【委員】  そうすると、「成果」のところに書いてある、ガイドラインを作成し配布予定というのは、これを配布されるわけですか。

【国総研】  報告書をそのまま配布するか、あるいは、もう少し使いやすいように、わかりやすく書き直すかということは、これから考えようかと思っています。

【主査】  今の点をもう一度整理させていただくと、ガイドラインというと、普通は、1何々、2何々というように、考えるべき項目や、設計の場合はこういうことに留意するとか色々並んでいるようなものを思い浮かべて、○○先生はご質問されたのではないかと思いますけれども、そのような形にされるのかどうかということですね。

【国総研】  そうですね。現在の状況は、報告書も厚いものがありますので、それだけでは使い勝手が悪いだろうと思っています。実際に使う側の立場に立って、もう少しビジュアルにするとか、そういう整理を今、行っているところでございます。

【主査】  よろしいですか。

【委員】  はい。

【主査】  そのほかに何かご意見、ご質問がありますか。

【委員】  どのような研究をされて、どのような成果が上がっているか非常によくわかりまして、実用に使える良い成果が出たと思いますが、研究の事後評価をする立場から申しますと、どのような研究手法を使われたかということをもう少し明示的に示していただいた方がわかりやすかったと思います。

 どういう意味かと言いますと、基本的には、交通計画学の諸手法を使ってこの問題を分析されたということだと思いますが、お話を伺っていると、例えば社会調査における量的調査の手法を使われたとか、それから、恐らく、経済学枠組みのどの部分を使われたとかを教えてください。手法の面でいうと、ヒアリングをされたり文献調査をされたり、質問調査をされたり、恐らく、ネットワーク分析のような手法も使われたと思います。そういう研究における学問枠組みの何を使われたのかということと、どのような方法論、手法を選ばれたかということをもう少し明示的に説明していただけたらと思います。

【国総研】  今回はご説明できなかったのですが、報告書には、関連分野のレビューから始まって、どのようなアプローチをとるかというような整理をさせていただいております。基本的には、ここで少しだけ書いていますが、ゲートウェイ空間については、交通計画的なアプローチで、航空旅客動態調査のデータを使って定量的な分析をしております。観光地については、資料とか文献を中心に有識者で議論して事例評価を行ったというアプローチをしております。もう少し細かくいうと、先ほど先生が言われましたように、ヒアリングを行ったり、アンケートを何種類もやって、それをデータにして分析を進めております。

【主査】  その他にご質問あるいはコメントがありますか。

 それでは、先生方が考えておられる間に1つ。

 研究の中身で、先進観光地の事例を色々調べて、それで有識者の方々に議論していただいたということでしたが、この先進観光地というのは、何カ所ぐらい、どのようなところを挙げられたのでしょうか。どこが先進観光地なのか是非知りたいと思いまして。

【国総研】  別府や熱海などの温泉観光地、あるいは、小樽や函館のような港町であるとか色々なタイプ分けをして行っております。一次リストでは200カ所ぐらいで、データを集めたのが百数十カ所ぐらいです。百数十カ所は資料を集めているのですが、全部を緻密にきちんと調べたのは数十カ所ぐらいです。

【主査】  200カ所とか、しかも、詳細に調べられたものが数十カ所ということだと、相当な分量の分析結果が出てきていると思います。その結果は報告書の中に含まれていますか。

【国総研】  色々な評価軸を整理したり、事例はこう位置づけられるというようなものは載せております。ただ、今のところでも200ページを越えるぐらいの報告書なので、事例を全部入れるかどうかは考えているところです。

【主査】  その他に何かありますか。

【委員】  日本各地の地域資源は、今は観光資源とは言わないかもしれませんが、色々なレベルのものがあって、例えば歴史遺産としての評価のランクも色々ありますね。そうすると、地域資源をどのような観点から、どのような評価をするかによって、旅行をする経路に組み込むか、組み込まないかという判断が出てきますね。こういうことについては、もう3040年前に、日本のネットワークがまだ十分ではなかった時代に、最低限どこを見てもらうかということで観光資源の評価を行った研究があったと思います。今は時代が変わっていますから、あまりに有名なものは知られすぎてしまって、むしろ人が知らないものを見に行こうというような、裏の観光みたいなものが逆に通の観光になったりしています。最近のガイドブックや何かを見ても、昔だったら取り上げないようなものをかえってリストアップして発掘しているような状況があるわけでしょう。

 そうすると、資源性の評価構造が変わったのではないかということが1つ。それから、それをどうネットワークでつなぐかというところで、ネットワークのスピードとか時間、コストとの関係で、どの資源ならば移動のスケジュールに組み込むかという話がまたあると思います。

 もう一つは、お金の問題とも絡みますけれども、旅行者が何日間旅行するつもりなのかによってネットワークのスケールが違うと思います。この議論はどうされたのか、ちょっとお答えを聞きたい。

【国総研】  そういうことは検討の中でも出ました。以前は建設省道路局の調査で、財団JTBが観光資源にA、B、Cとランクをつけたものがあるわけですけれども、今はそうではなくて、先生のご指摘のように、どちらかというとオルタナティブ・ツーリズムということで、何でも資源になります。つまり評価軸として、資源性より地域性がメインになるという認識がありました。数多くの事例で、この観光地はどうして良くなったとか、どうして悪くなったとかいう議論まではしたのですが、それを定量的に論証するというところまでは至っておりません。今後の課題かと思います。

【委員】  いろいろ広範に検討されているので、研究全体を理解することが難しい。それぞれの研究テーマ毎に得られた結論が一体何なのかということを端的にまとめていただけたら、わかりやすくなると思います。例えば、ターミナルの計画に関しては、研究の成果を、こういう事例に生かせるということを整理していただければと思います。アンケート調査の結果も貴重な情報だと思います。今までは、複数の空港をどのように連携して利用しているのかというようなデータは利用できなかったのですが、こういう実態調査を行えば、そういうデータが利用できるようになった。今後、このような調査を行うのであれば、このような内容で行えばいい。というように、取りまとめの仕方を工夫していただけたらと思います。せっかくの貴重なご努力の結果を、できるだけ多くの人に判り易くなるように工夫していただきたい。

【委員】  最初の質問とも関連するのですが、最終的にガイドラインを作成になって各自治体等々に配布する場合、受け取った側はどのように対応するか考えると思いますが、地域の活性化、都市再生のような政策の枠組みの中で今回のガイドラインがどのような位置づけになっているのかを明確にしておくと、ガイドラインの活用がもっと促進されるのではないかという気がします。その辺はどのようにお考えになってこれをお進めになったのでしょうか。

【主査】  今、お2人からコメントと質問が出ましたので、もし、可能であれば2つのお答えをお願いします。

【国総研】  研究テーマ毎の結論については、先生のご指摘のとおり、論文のように最後に結論的にまとめておらず、だらだらと途中で出ていたのでわかりにくかったかと思います。大変申し訳ございませんでした。

 活用の仕方ですけれども、一つは、空港利用促進協議会というものがありまして、空港と周りの自治体とで協議会を作っています。そういう場と連携しながら、実際に何か動かしていけたらいいなと思います。

 地域再生とか土地再生とかというところまで行ければ良いのですが、まずはその辺から取りかかるのかなと考えています。

【国総研】  これはハード整備の者、運行する者、あるいは地元、そういうものがこのガイドラインを共通のお手本としてやっていただきたいという思いがありますので、そうした意味では、シンポジウムなどをしっかりと何カ所かで行っていきたいと思っておりますし、今まで我々は、観光を取り扱っているのは、国土交通省の中に観光部がありますけれども、そことの付き合いを今後は深めて、せっかく、ビジットジャパンという、結構お金を使った運動をしておりますので、そうした中にも組み込まれるように、この成果を生かせるように、関係者等に働きかけていきたいと思っております。

【主査】  他部会の先生も含めて、どなたか他にご意見ありませんか。

【委員】  他部会からの出席で、今日初めてお話しをお聞きして内容を理解しなければいけないとなると大変ですが、結局、本プロジェクトの目的は観光立国の推進と地域活性化ということかと思います。ガイドラインの中身が把握できませんが、このガイドラインはどれくらい目的に寄与できるものに仕上がっているのかということを教えて頂きたいです。このガイドラインに依れば、海外の先進的な観光立国に負けないくらいの国ができるのか、地域の活性化はこれによって推進されるのかというあたりです。もしくは、まだガイドラインが完成していないとすれば、今後どのように研究を進めていかなければいけないか、そのあたりを教えていただけるとありがたいと思います。

【国総研】  今回できなかった点に挙げさせていただいた社会実験というのは、その効果を把握するための、検証という位置づけをしていたわけですけれども、これは再三申し上げましたとおり、私どもは予算を取ることができなかったということで、今後、シンポジウムに限りませんけれども、その成果を末永くモニタリングすると言いますか、今回、ガイドラインを作ったからそれでこの研究は終わりということではなくて、それがどのように使われていってどのような効果をあらわすかという長い研究の一つの節目としてとらえていこうかと思っているところでございます。

【国総研】  拘束力があるわけではないので、これで一気にどう変わるとは思っておりません。ただ、ここでは説明しませんでしたが、持続性がある観光地はどうあるべきかという視点で観光復興を考えるということ、そのためにどのような留意点があるかということが自治体の方にうまく伝えられれば、ちょっと効果があるかなと思っています。

【主査】  評価の項目にも関係することなので、二つほど私からご意見を伺います。

 一つは、色々な項目が上がっていて、それぞれ途中に結果が書いてあるとか、まとまった結果はどうなんですかという意見がありました。一方、研究体制について、何人ぐらいの方が参加されて、どのような研究組織で行われたかについてはご報告がなかったので、それはどのようになっているかということを教えてください。

 もう一つは研究費の点ですが、当初の計画は研究費がもう少し多かったわけですよね。社会実験の話が出ていましたけれども、研究費が当初はいくらで、それが最終的にここに書いてあるように2,000万円になった訳ですが、どのような形で研究を実施されたか。これは評価委員の他の先生方のご意見も伺いたいのですが、今、日本の研究費の配分のやり方は、当初はかなり大きな額を言っていて、徐々に年がたつにつれて減っていって、最後は尻すぼみになるケースが多い。もし、予算がそうなってくると、当初の計画をどこかで見直すとか、目標を変えるとか、研究計画を変更するとかということをやらないと、本当は整合性がないような気がします。

 これは、今の国総研とか研究チームの方のことを言っているのではなくて、研究費をちゃんと保障するほうはきちんとやってくれないと、当初の目標どおりのことはどうしてもできないという意味です。そういうことに対してどう対応されたか。そこをご説明いただいたほうが評価しやすいと思います。

【国総研】  まず体制ですが、研究室は、室長を入れて2人です。任期付き研究員で専門家を雇っていたのですが、途中で任期切れになってしまいまして、最後は私が一人で行っていました。

 そのような体制ですので、まず外の知恵を借りるということで、基本的には、シンクタンク関係、財団法人の日観協とかJTBなどその分野のプロの方とか、大学で観光をご専門にされている方々と、ワーキング、勉強会といいますかチームを組んで議論させていただきました。

 所内的には他の研究室と議論しながら、どのような利活用方策があるか等、一緒に議論しながらやりました。

 予算については、当初は5,400万円の予定だったものが、実際は2,000万円だったということでございます。

【国総研】  今のことで補足します。

 この資料ですが、最後のところに、事前評価時の資料がピンク色の後にあります。ここに事前評価時点での研究予算が記載されております。

 2ページ目ですが、ここに当時のアウトプット、アウトカムという表がありまして、予算がある程度限られた中で、先ほどからご説明がありますように、観光セクターとステークホールダーが良い、入り口の広い、定量的なものが難しい分野ではありますが、特にステークホールダーとしては地域または地域の空港関係をどうしていくかということで、ネットワーク手法とかゲートウェイの空間整備をどうしていくかというあたりのアウトプットを先ほどの手法等でなるべく成果を出していきたいと。

 アウトカムとしても、その地域の振興あるいは地域の交通ネットワーク、空港を中心としたゲートウェイをどうしていくかというところで、その地域の活性化あるいは地域間競争をアウトカムとして求めていくというような、大きな流れとしては、当初の流れをなるべく保ちつつ、一部分析作業あるいはインバウンド関係の社会実験的なものについてはできなかったこともあるとご理解いただければと思います。

 以上です。

【主査】  どうもありがとうございました。

 今の点で、もし委員のほうから、当初5,400万円の予算だったものが最終的には2,000万円ぐらいになって、それで事後評価でそのことを含めてどう評価するかとか、そのようなことが出てくると思いますが、何かご意見とかそういうものがありましたら伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

【委員】  研究費を値切ると、できなかったことのエクスキューズになりますから言い訳ができることになります。2,000万円ではたとえ不十分に使われても減額がエクスキューズにされてしまう。従って、どの部分はしなくてよくて、どの部分をするべきだという査定をして、お金をつけた部分についてはちゃんとやっていることを評価する必要があると思います。

【主査】  今のは、途中で研究目標や計画を変更するということですか。

【委員】  この部分はできない、この部分はできますということをはっきりと明確に、予算が減った部分で行うべきだったということではないでしょうか。

【主査】  今のような点について、何か他にご意見がありますか。

 これはここで結論を出すという話ではなくて、皆さんの忌憚のないご意見を伺えればということですが、実は、私は他の研究評価の委員会でも最近同じような議論をしました。日本の何年か継続する研究費は、このようになることが多いのです。もともとの予算どおりのものが来なかったのでできませんでしたという場合にも問題になるし、予算が減ったけれどもできたという場合も問題になりまして、じゃ、最初はふっかけて予算を書いたのかという話になってしまいます。そうすると、研究マネジメントの話としては、今、○○先生が言われましたように、予算を減額する、あるいは、当初の予算が確保できなかった場合に、研究計画をどう考えるのかということも考えておかないと、きちんとした成果を必要な予算のもとで行っていくというサイクルにはなかなかならない。それは国総研だけではなくて、色々なところで同じような問題で困っておられると思います。

委員  配付資料によりますと、平成15年度に事前評価が行われているようですが、その後、中間評価は行なわれなかったのでしょうか。予算と計画の整合性は、その頃に行っておくべきだったような気がします。

【国総研】  中間評価・事後評価のルールにつきましては、先ほど説明がありましたように、今回の研究の研究期間は3年ということで、資料2で、中間評価については研究期間が5年以上で、本年度が3年目ということで、今回の研究についてはそういう意味では当たらないわけですが、いずれにしましても、今回のように外部条件が大きく変化した案件につきましては、基本的には、大きなアウトプットと、その上位目標と言いますかアウトカムを満たすという中で調査を絞って行っていくということかと思います。

 そういう意味で、今回の調査につきましては、対象ではなかったということですが、予算という意味での外部条件が大きく変わったということで、今後、事務局としても検討させていただければと思います。

【主査】  わかりました。どうもありがとうございました。

 今の件は、5年継続のプロジェクトであれば中間評価があって、もし予算の変更がある場合にはそのときにきちんと評価をして、研究計画の見直しとか、その様なことをやれば良いと。だけど、今回は3年のプロジェクトだったので中間評価なしに直接事後評価に来たということです。その様な場合でも、研究のマネジメントを進める場合、そのようなことについて何らかの考えるような仕掛けを考えていただければ大変ありがたいかなと思います。

 他にもご意見があると思いますが、時間も参りましたので、お手元の最初の頁にあります事後評価シートに、評価の結果とコメントをお願いします。コメントは、発言されたことは議事録にとっていただいているので結構ですけれども、コメントを書いていただきまして、提出をお願いいたします。

 評価はその場ですぐに行うというのが毎回の方法ですので、パワーポイントを見ながら行わせていただきます。

【主査】  今、皆さんに記入していただいたものは映してあるようなことになっておりまして、まず、研究の実施方法・体制等の妥当性については、「概ね適切であった」が多いので、これは「概ね適切であった」とさせていただければと思います。

 手元に皆さんからいただいたコメントがあるのですが、「やや適切でなかった」という評価をされた理由として、研究者の必要な数の確保、あるいは、そのネットワークをきちんとつくる必要があるのではないかとか、サブテーマ間の相互関係が若干わかりにくい印象を受けたということがありましたので、その様なことで、「やや適切でなかった」というご意見の方も一定数おられたということですが、星の数に従って「概ね適切であった」とさせていただきたいと思います。

 それから、目標達成については、ほとんどの方が「概ね目標を達成できた」とうことですが、「目標を十分に達成できた」という方もおられますけれども、それは先ほど来、議論がありますように、減額された予算のもとで非常によく努力をされたという評価ではないかと思います。予算自体をどう考えるかということについてもコメントが出ておりますので、それはこのプロジェクト評価とは別に、研究所全体の研究マネジメントという問題の課題かもしれません。

 いずれにいたしましても、この目標達成度についても「概ね目標を達成できた」とさせていただきたいと思いますが、そのような評価でよろしいでしょうか。

                 (異議なし)

【主査】  では、そのようにさせていただきます。ありがとうございました。

 それでは、続きまして、中間評価を行うプロジェクト研究「沿岸域における包括的環境計画・管理システムに関する研究」について、ご発表をお願いいたします。

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(3)中間評価を行うプロジェクト研究

     <A沿岸域における包括的環境計画・管理システムに関する研究>

【国総研】  沿岸海洋研究部長の○○でございます。

 お手元にもコピーがありますけれども、パワーポイントに沿って説明させていただきます。

 本プロジェクト研究の名称は、「沿岸域における包括的環境計画・管理システムに関する研究」ということで、平成17年度から平成21年度までの5年間の計画になっております。 先ほど中間評価ということでご質問がありましたけれども、5カ年のプロジェクト研究については3年目に中間評価を受けるということで、今回、中間評価にかかるものです。

 沿岸海洋研究部では、研究部のコアとして防災関係と環境関係の2本立っているわけですけれども、それで申しますと、環境関係、「閉鎖性内湾域の内湾等の沿岸域環境の保全・再生」というコアの研究ということになります。このプロジェクト研究に先立っては、平成13年度から平成16年度まで、「快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究」という研究があったわけですけれども、結果を踏まえつつ、それを発展的に今回の研究に取り組んでいるところであります。

 担当している研究部として、沿岸海洋研究部、下水道研究部、河川研究部の3部。室で申しますと、沿岸海洋研究部では、海洋環境研究室と沿岸域システム研究室の2室、下水道研究部の下水道研究室と河川研究部の海岸研究室ということになります。

 研究の必要性と申しますか、上位計画での位置づけということになるわけですけれども、これにつきましては、そこに出ておりますように、第3期の科学技術基本計画分野別推進戦略の中で、沿岸域の環境について言及されておりまして、流域と海域の連携協働の観点から、主として、海域における持続可能な生態系の保全と利用を実現することとか、海域における生態系のインパクトレスポンスの観点から、健全な水環境と持続可能な水利用を実現する研究の流域と海域の連携協働を図るというようなことが掲げられているものです。

 それから、パワーポイントでは出ていませんけれども、国土交通省の行政ということで申しますと、平成17年3月に、交通政策審議会の答申としまして、「港湾行政のグリーン化」が出ております。この中では、干潟、海浜、藻場等の保全・再生・創出といったことが言及されておりますし、また、それを進めていくに当たって、市民、NPO、民間事業者、研究者等多様な主体とのパートナーシップを図っていくことが大事であるということで記されております。

次は、本プロジェクト研究の枠組みと申しますか、この沿岸域管理へ、どのような問題意識でアプローチして進んでいるかということですけれども、真ん中が沿岸域に関する問題意識ということでおにぎりが出ております。その一番下には、「現象の理解」、場の理解と申しますか、物理過程の理解ということがありまして、このような理解をしていくことによって、影響の伝播の予測・評価が可能になっていくのだろうということがあります。

 その上にCということで「具体的な手法開発」ということで、生態系の形成技術として、例えば干潟を造成していくとかというようなことですけれども、そういう技術、つくり方についての手法開発があります。それから、干潟みたいな空間というのは、いわゆる構造物などと違って非常にデリケートなところがあるので、そこに書いてありますように、順応的管理といった手法を用いつつ、目的を挙げて、それを実践しつつ、モニタリングして評価して、またそれをフィードバックしていくという順応的管理でのアプローチが必要になってくるだろうということになるかと思います。

 それからまた、そのような沿岸海域をどのように作り、使っていくかということになったときには、「あり方論」と申しますか、計画管理のあり方についての議論を深めていく必要があるだろうということになるかと思います。

 そのような中で、例えば東京湾とか大阪湾とか沿岸域ということを考えた場合には、外部からの流入負荷ということで、左上にDとして下水道からの雨水汚濁負荷といったことが問題になってきているという中で、市街地のノンポイントソース、面的な流入負荷に対してどの様な対策をしていくかということが大事なことになってまいります。

 また、左下のAに「河岸保全における自然共生」と書いてありますけれども、隣接して行われていく海岸保全事業の中で、インパクトレスポンスを踏まえた予測であるとかアセス評価が必要になってくるだろうということになっております。

 また、順応的管理とかそういうことを沿岸域でやっていこうとする場合、多様な主体との協働関係をきちんと作っていくという意味で、B「ガイドラインの作成」ということで、研究会や協議会など、そういうアウトリーチ活動をやっていくことによって、多様な主体と連携を図っていこうとしています。

 それから、右のほうにはみ出したような形で出ていますけれども、沿岸域の問題はこれだけではありませんで、深堀跡の埋戻しということで、埋立のための材料を取った深堀跡が、青潮や貧酸素水害の原因になっているということがあったり、また、リサイクル材の利用の問題であるとか、漂流・漂着ごみの問題であるとか、色々な問題があるということが示してあります。

 本プロジェクト研究では、この中で、現象の解明とか深堀跡、リサイクル材の利用などのことはほとんど触れていませんで、@からDまでのことを中心に攻めていくという研究の取組みになっております。

 上位目標ということでは、環境と経済を両立し持続的な沿岸域開発の実現のための計画・管理システムの提言ということになりますけれども、一つはその理念の部分で、流域圏という概念を考えていくということで、沿岸域計画のあり方の検討、循環型社会における包括的環境計画、海岸・河川・都市域における包括的環境計画といったことを検討しています。

 それから、実践という部分では、海の自然再生のための実現手法の検討、これは現地での干潟の造成などを通じたフィールドワークといった話になるかと思います。それから、そういうものを支えていく計画技術とか制度面の提案を図っていこうとしておりまして、順応的管理手法の検討を進めているところであります。それからまた、順応的管理を進めていくに当たっては、観測し、評価していくモニタリングが重要なツールとして出てくるわけですけれども、手法開発、沿岸域における環境伝播のモデル化であるとかモニタリング手法の開発といったことに取り組んでいるところであります。

 研究の実施体制ということで、中央部に「国土技術政策総合研究所」とあり、当沿岸海洋研究部と下水道研究部と河川研究部が記してあります。中心になっているのは沿岸海洋研究部ですけれども、連携の内容として、研究分担者間での打ち合わせ、東京湾シンポジウムの開催・参加、土木学会の海洋開発委員会での特別セッションをオーガナイズしていったことなどが掲げられております。

 あとは、後ほどまた話に出てくるのですけれども、大阪湾の阪南港での干潟の実験の場合には、独立行政法人の港湾空港技術研究所とか大阪市立大学、大阪府の港湾局環境水産部、府立の水産試験所、また民間会社等と共同で作業をしていっているということがありまして、それぞれのフィールドによっていろいろな主体と共同しての研究を進めてきたところであります。

 それから、研究項目ということで、先ほど示しました全体像の中でどのようなことを行っているかということがあるのですが、そこに掲げておりますように、@沿岸域における計画管理の新たな視点の創出、A海岸保全における自然共生・保全評価のあり方の提示、B研究会や協議会などを利用した計画手法に関するガイドラインの作成、C「包括的計画」及び「順応的管理」の具体的な手法開発、D市街地における雨水汚濁負荷量の測定および対策に関する研究ということで挙げております。Aは主に河川研究部で行っておりますし、Dは下水道研究部で行っているものということで、あとの@、B、Cは沿岸海洋研究部が中心となって進めている研究項目になります。

 @として「沿岸域に関する計画管理の新たな視点の創出」ということで、ここでは第一フェーズの実験ということで、大阪の阪南港における約5.4ヘクタールの干潟を造成して、そこで色々と水棲生物がどのように展開していくかということを調べたり、干潟の地形がどのように変化していくかということを調べたりしています。また、海浜部にヨシを移植して、これが生育するかということの実験をしたりというようなことを進めているところであります。

 これにつきましては、今、皆様の間を回していただいております「干潟をつくる」というパンフレットを今年の初めに出しておりますけれども、今までの時点でどのような生物層が出てきているかというようなことで、例えば鳥類につきましては、コアジサシといったレッドデータブックに載っているような鳥が産卵までしているというような状況等がまとめられております。

 それから、第二フェーズの実験ということで、もう一つ出ておりますのは、東京湾の芝浦アイランドの南護岸ということで、小さな護岸部ですけれども、そこで護岸の天端を少し削って、そこに水を引き込んで、そこで干潟と言ってもそれほどの規模もないのですが、小さな水辺空間を作って、そこでの生物生成の状況をどのように助けられるかといったことについての実験をしています。

 それから、「海岸保全における自然共生・保全評価のあり方の提示」ということで、これは海岸保全施設の整備は海岸の生態環境に与える影響範囲などを事前に評価・予測するための手法の構築ということで、平成17年度、18年度とモデルの構築まで進めてきておりまして、これは今年度、管理手法の提案といったところまで持っていこうとしているものであります。

 それから、Bが「研究会や協議会などを利用した計画手法に関するガイドラインの作成」で、真ん中の2つ、「海辺の自然再生に向けて」と「東京湾シンポジウムの報告書」が、一般の人への周知を図っていくと言う観点でのものです。それから、干潟をつくるというのは、その研究成果をコンパクトにまとめたものです。それから、これはまだ試し刷りの段階で、お手元に回せていないのですけれども、「順応的管理による海辺の自然再生」ということで、これは実践ハンドブックという位置づけで取りまとめたものです。

 Cとして「『包括的計画』及び『順応的管理』の具体的な手法開発」ということで、これは東京湾の京浜運河部での自然再生の可能性を見るということで、いろいろと運河部での生物の調査等を行ったということで、1)2)3)と書いてありますけれども、モデル化、形成技術の開発などを進めてきております。

 Dにつきましては、市街地における雨水汚濁負荷量のノンポイント負荷対策ということで、時間がないので一言だけ申しますと、右下の雨水浸透ますを使うことによって汚濁負荷を削減する効果が出てくるだろうということで、これについての現象を把握するとともにガイドライン的にまとめていくことを進めているところです。

 現時点までの研究の成果ということで研究成果ハンドブック、手引きなど、アウトリーチ活動ということで掲げておりますけれども、アウトリーチ活動のところはかなり活発にシンポジウムとかワークショップを進めていることが伺えるのではないかと思います。

 最後ですけれども、「研究成果の活用方針および今後の方針」ということで掲げてあります。そういうことで、我々としてはこの2年間でそれなりの成果が出てきていると考えているところですけれども、今後さらに研究を進めていくということで、計画管理の高度化のモデルを提示する、海岸保全における保全評価のあり方の提案、包括的管理や順応的管理についての手法開発の指針の確立、制度的なフォローアップの提案、市街地における雨水汚濁負荷の制御方法と言ったことで、さらに引き続き研究を継続していきたいと考えております。

 以上です。

【主査】  どうもありがとうございました。

 他部会の委員からの意見とか、そういうものは何かありましたか。

【国総研】  特に他部会からの意見はいただいておりません。

【主査】  わかりました。ありがとうございました。

 それでは、これは中間評価ということですので、これまでの研究の進行状況、今後の計画で見直したり強化したりするべき点がないかどうか、継続が妥当かどうか、について評価していただくわけですけれども、ご意見あるいはご質問をお願いしたいと思います。

【委員】  十分に理解できていないところもあるので的外れかもしれませんけれども、環境の計画管理という場合、どのような環境の水準を達成することを念頭に置くかと言う議論があると思います。お話を伺ったり資料を見る限り、環境の悪化を防ぐための色々な対策であるとか、あるいは、失われた環境を回復する方法であるとか、環境のモニタリング技術とか色々なものが組み合わされてくるというお話はわかりましたが、将来的に環境を計画的に、ある方向に導いていくことが一つのスタンスだとすると、どのような環境水準に持っていこうとするか、これは政策でもあるのでなかなか難しいと思いますが、それはどのような方法だとどれくらいの時間なりスケール、あるいは、色々な組み合わせが必要かという議論が必要ではないかという気がしますが、その辺のところについての議論はいかがでしょうか。

【国総研】  研究課題を担当しております海洋環境研究室長の○○と申します。研究課題の中身にもかかわることですので、私から簡単に回答させていただきたいと思います。

 環境がどうあるべきかというところが、まさに研究テーマの一つとして今取り組んでいるところですけれども、管理水準につきましては、この研究課題の中では順応的管理手法を導入していこうとうたっております。その順応的管理手法の中で、管理目標と言ったものを明確に掲げて、それに対して徐々にやり方または評価の方法を見直しながら進んでいくということで、今この研究の中で明示的に、このような環境条件を目指すための研究をしておりますという形ではお示しできていませんけれども、その目標自体も、みんなで事前に話し合いをして、大きな目標を掲げて、例えば東京湾であれば生物の多様性が豊かになって、また、人々がなおかつ利用ができるようにというような文言で示されるような大きな目標を立てて、それを具体的に何で評価できるのかというところの繋がりを導こうということを考えております。

 そういうことで、例えばどの様な影響がどう伝播していくのかという河川研究部でされている研究とか、1番でご紹介していますけれども、生態系をつくるときにはどの様な目標を、どれくらいの期間で達成できるのかというような要素の、後々に大きな目標が与えられたときに対応ができるようにということでパーツを揃えているというようなことを、現在行っております。

 最後にご指摘の、どれくらいの目標だったら何年でできるのかというのは、まさにお答えしたいところではあるのですけれども、そこまではまだまだ研究が立ち至っていません。ただ、何年ぐらいは見ていないと評価ができないのではないかということを、実は、先ほど、実践ハンドブックをお見せしましたが、例えばアサリを対象にしたら何年ぐらいその場所を見ないとその変化がわからないとか、珊瑚礁を対象にしたら何年ぐらい見なければいけないだろうということを一つずつ抽出して提案をしていくという作業を始めているところでございます。

 以上です。

【主査】  どなたか他にお願いします。

【委員】  最初のところで、PDCAのサイクルで研究プロジェクトを動かすという研究所全体の方針についてご説明がありました。中間報告のやり方にも一工夫要るのではないかという気がしています。何をどこまでやる計画だったものが、どこまで達成できたのか。あるいは、それを踏まえて次にどう改善するのかという論点の整理が必要だと思います。そうでないと、「研究継続の妥当性」を評価するのが非常に難しいと思います。ご説明を聞いていて、よくやられておられると思いますが、そういうことは研究を遂行されているご本人が一番よくわかっておられると思います。そのような取りまとめの仕方をすると、PDCAのサイクルが動くようになり、後半の研究プロジェクトの改善が達成できるのではないでしょうか。

【主査】  どうもありがとうございました。

 今のことは非常にごもっともなご意見だと思います。例えば、さっきの事後評価の課題では、最後に事前評価のときの資料がついていましたね。例えば、当初は何を目標にしたけれども、それがどこまで来たとか、そういうようなことを見せていただければ途中経過もわかるし、今後の進み具合も評価できるというお話でした。

 これは今後、色々と工夫していただければと思います。

【委員】  3番目のスライドのおむすびのところで、幾つかのこれから行う取り組みが出ていたと思います。このうち2番、4番、5番については、これまで蓄積された水工学の手法がありますから研究が順調に進んでいくだろうというのは私どもとしても疑わないところですが、特に3番と1番。3番のほうは、最近、科学技術社会論ですとか、科学技術の公衆理解であるとか、専門家と一般市民とのコーポレーティブな活動をどうしていくかという議論が進んでいますので、3番も恐らくある程度の成果ができると思いますが、1番のところだけ、どのような手法でそのようなものを分析していけば良いのかという手法がないような気がします。このままいくと、それぞれ他の2番、3番、4番、5番で出てきたものを羅列して終わってしまうことになるという心配があります。

 例えば、合意形成手法のようなものに基づいて、色々な専門家が議論することによって、つまりこの研究成果を踏まえて議論することによって総論が出来上がるとか、何かそういう、1番に関するもう少し具体的なイメージがあれば、今、教えていただければと思います。

【国総研】  全体のあり方論は、まさにご指摘のとおり、きちんと進めていく手法論から私たちはなかなか持ち合わせていないところがありまして、手さぐり状態です。ただ、先ほど簡単にご紹介しました順応的管理というものについて、具体的にどのようなあり方があるのかという議論を少しずつ進めてきております。それが、河川研究部と共同で土木学会のシンポジウムの場を借りて特別セッションというものを行って、我々はこのように考えているけれども、皆さんはどう考えておられるか。または、それはあり方ですから、定義とか、その中に含まれてくる概念を一つずつ検証するという作業がありますが、その作業途中の表なり文言なりをご披露して、その特別セッションの中で議論を進め、それをまとめるということで、少しずつ技術者間の合意形成、順応的管理のイメージの形成を図る、そのようなやり方を今試しているところです。

 これが、学会のような専門家が集まれるような場所が提供されている人々の間では有効ですけれども、それが、一般の方も含めて、または政策担当者を含めて同じような議論ができるのか。一部、東京湾シンポジウムという名前のシンポジウムを毎年1回ずつ継続している中で、さまざまなパネル討論をしてみたり、個別の発表に対してのアンケートをとってみたりというようなやり方のトライアルをしながら、今、まさに考えているところという現状です。現状のご報告しかできませんけれども、そんなところです。

【主査】  私からもお聞きしたいのですが、質問は2点ありまして、研究課題がどのように連携を保っているかということと、3つの部が協力されているというのは、具体的にどのように協力されているかということです。

 最初の、研究課題の相互の関係ですが、環境と言いますと、相手は、地形だったり、波や流れという物理的な環境だったり、生物生態系だったり、水質ということもありますね。スライドの7、8、9、1011という具体的な@からDまでのテーマを見させていただきますと、@とBは東京湾、大阪湾ということですから、主に干潟とか内湾の環境、しかも生態環境であることがわかります。Aは、海岸保全ですから、必ずしも干潟だけに限らず、砂浜の海岸とか、場合によっては岩石海岸などもあるかなと思います。Dは、雨が降った日の最初のフラッシュの汚染されたものをどう処理するかということに関係しますから、これは明らかに水質汚濁の発生源の対策ですよね。どれも最終的には沿岸環境に関係することはわかりますけれども、それらが相互にどのような関連で研究をされていますかというのが最初の質問です。

 2番目は、プロジェクト研究ということなので、どのように研究体制や情報交換、共同研究などを進めておられますかということです。

【国総研】  1点は、沿岸域を捉える上で地形という目で見なければいけない、地形の広がりを見なければいけないということですので、下水道研究部では、川の上流から、人々が水を利用して海に至るまでの経路について研究をしています。沿岸海洋研究部では、それが実際に海域に出てきた後、主に内湾域ですけれども、内湾域で、ご指摘のとおり、干潟とか浅場が中心になっていますが、そこら辺で何が起こっているのか。また、そこで干潟を再生したり創出したりというときには何をしたら良いのか。その地形での局所的な干潟の造成という視点での研究をしております。

 河川研究部の海岸研究室は、それが海域まで出てきたときにどのように広域にまで広がっていくのか、また、多様な現象にまで広がっていくのかということが、インパクトレスポンスという名前を使っていましたけれども、影響が伝播するということで、海岸線に沿った方向軸での現象の広がりという面を主に担当しています。まずは空間的な広がりから下水道研究部、沿岸海洋研究部、河川研究部という役割分担といいますか、守備範囲を考えております。

 そして、それをまとめるあり方とか手法開発については、これは共通する部分ですので、どこの研究部も、それぞれ自分たちの守備範囲の中の手法開発をしていたり、また、あり方の提言を個別に出してきている現状ですが、それを最終的には、このプロジェクト研究の中で一気通貫の大きなおにぎりにまとめられたらという野望を抱いているところです。

 具体的にどのような繋がりでやっているかと言うことですが、まず研究分担者の打ち合わせが1年に1〜2回という頻度で、「最初の目的はこんなところだったよね、今はどういうことをやっているのか」というような情報交換会をしております。外に向かって、自分たちはこう考えているけど、(先ほどのあり方論の研究手法にも通じますが、)シンポジウムを開いたり、学会での特別セッションを開いたりというときに協働で作業をして、その中で情報を共有し、連携を図ると。直接、ある研究テーマについて共同でがんがんやっているという状況ではないのですが、まず情報を共有することを前提とした緩やかな連携の手法を実践しているつもりでございます。

 以上です。

【国総研】  ちょっと補足します。

 資料2のところに、先ほど申し上げましたカラーのペーパーがあります。この中で、いわゆる達成すべき状況とか、実施すべき行動とか、そういう上流部分、あるいは、関連の調査もやりながら、具体的には研究者間の連絡あるいは学会等での意見交換ということになっております。

 それと、先ほどご質問がありました計画的な面につきましては、これは資料にもありますが、当然、包括的計画ということで、東京湾の再生計画とか色々なマスタープランがある中で、それに対してどういう取組みをすべきかということと、それを順応的にマネジメントを管理していく手法を並行して考えていると理解しております。

 以上です。

【主査】  お伺いしたのは、包括的な環境計画とか管理、順応的なマネジメントの方法論を確立することは重要なテーマなので、関係する研究者の方がそれぞれの今までの経験とか知識を持ち寄ってうまく一つのものが出来上がればいいなと考えるからです。もちろん、それぞれの研究所ごとに、従来から得意とするフィールドや対象があるので、そこからそんなに離れることはできないというのはわかりますけれども、やはりそのような壁を越えて、一つのターゲットに向けてどう協力していくかという経験を積み重ねていかれるのが良いのではないかというのが、質問をした意図です。どうもありがとうございました。

 その他に何かありますか。

【委員】  このような環境問題は、色々な地域の住民の方々の色々な意見があると思いますので、そこのところをきちんと押さえながら実際にシンポジウムを開いたりしながら行っていただいていますので大変結構かと思います。

 この先の話ですが、スケジュールと言いますか、バーチャートのところで、防災拠点における水質・底質改善に関する研究が今年度から始まるようなスケジュールになっていますけれども、今までのご説明ですと、その防災拠点とはどのようなものを対象にして、どのあたりを狙うのがこの水質・底質改善になるのかというところを教えていただければと思います。

【国総研】  ご質問ありがとうございます。この研究課題は私のところで担当しておりますので、私からご説明差し上げたいと思います。

 実は、具体的な場所が決まっておりまして、東京湾の川崎になりますけれども、扇島という埋立地があります。そこに広域の防災拠点を造くろうということが計画されております。これは、防災拠点としては、何かあったときに役立つようにヘリポートや物資の備蓄基地を造ることになっていますが、いざというとき以外に、365日のうち350日、またはそれ以上をずっと防災拠点として待機しているだけでは、あまり効率的に場所が活用できていないということで、普段はここを親水公園として使っていこうと。それも、埋立地の中に堀込みの潮入りの池ができておりまして、そこを活用して、普段はそのような環境施設として利用する、防災と環境をマッチングしたような施設計画となっており、それをうまく維持管理していきたいという思いがあります。

 そのような意味で、その防災拠点の中にある潮入りの池の水質や底質など、そうしたものをふだんの活動の場にふさわしいような状態に保ちながら、いざというときの防災拠点にする。実は、防災拠点にするためには池の水深が深くないといけなくて、池の水深を深くすると有機物がたまりやすくなって水質的には厳しくなります。そのようなコンフリクトがありますので、これをいかにうまく使っていくかというチャレンジの研究テーマになっております。

 以上です。

【委員】  研究実施体制図というものが出ておりますが、例えば水産総合研究センターとか国立環境研究所とありますね。これは私も詳しくないのですが、農水省とか環境省とか、そのようなところが関係あると思いますので、研究プロジェクトの後半部分ぐらいでしょうか、そのような省庁との連携もよく行ったほうがよろしいのではないかと思います。

 先ほど、どの辺を目標にして研究するのかという話がありました。一般の大学の研究室ではなくて、ここで行う研究は、社会的なそれなりの位置づけがあります。例えば、ここから環境基準が出てくるかもしれないと考えると、非常に重要な研究だと思います。その意味でも、プロジェクトの後半部分は是非多くの関係者と連携して行っていただきたいと思います。

【委員】  配付資料の2のA4の最後のところで、「研究成果及び活用」という表がありまして、その@に「沿岸域に関する計画管理の新たな視点の創出」とあります。これは中国の制度を勉強されたと。どのような視点でおやりになったのかということと、海外との連携では、別に中国の大学とか組織があるわけではなくて、どのようなお考えでこのようなことにタッチされたのかということをお聞かせ願いたいと思います。

【国総研】  ご質問ありがとうございます。中国の沿岸海洋管理制度の取りまとめということで挙げておりますけれども、おむすびでいうと、@のあり方論みたいなところで、包括的な沿岸管理のあり方を考えていく参考にしようという趣旨で、東アジアの近いところでの状況を調べようということで、マンパワーとかも限られている中で、まず中国について、ここは近年積極的な沿岸域についての取組みが目立つということもありますので、そのような中で中国の制度はどのようになっているか調べたということです。

 例えば、中国について調べて面白いと思われたことは、沿岸の海域を利用する権利を一種の入札のような形で売ると言いますか、貸すと言いますか、そのようなことをしていたりします。そうすると、極端なことを言えば、漁業で使うか、埋め立てるかということを競るということも行っているということが知見として得られたりしています。

 これについては、また他の手法で調べるとか、他の国について調べようかということも含めて今検討をしているところで、中国しか行っていないのは、特にここをやりたいということではなくて、マンパワーも限られている中で、とりあえずここだけ行ったということです。

 以上です。

【主査】  どうもありがとうございました。時間もだいぶ過ぎておりますので、先生方、中間評価シートに評価とコメントを記入してください。今発言されたことについては記入していただかなくて結構です。

【主査】  近隣だと、中国と韓国は、沿岸管理制度が日本よりずっと進んでいます。中国では、きれいに区域を分けて、ここはこのレベルで守るところと。さっきの目標みたいなものを決めて。それから、利用する区域については、入札でだれが使うかを決める。それがどううまく機能しているのかはわかりませんけれども、前に調べたときにびっくりしました。国全体で決めているんですね、それに従って、日本の近海にもいろいろ調べに来られると。

 韓国もそうですよね。韓国も日本より進んでいますよね。

 皆さんの評価結果は前に映されているとおりです。最初の項目と2番目の項目は1票差ですけれども、以前から多数決で行っていますので、最初の項目である「研究計画実施方法・体制等の妥当性」については、「適切である」と評価をさせていただきたいと思います。

 コメントを見ましても、積極的に交流を図っているとか、市民レベルにもきちんと発信しているとか、そのような評価が書かれていました。

 それから、研究の進捗状況も、先ほど来のコメントにもありましたが順調であると。それから、その評価に基づいて、今後、計画どおりに研究を継続していただきたいということですので、どうぞ、最終的に良い成果が出るようにご努力をお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

 それでは、ここで10分ほど休憩いたします。

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(4)平成20年度開始予定研究課題の事前評価

<B内湾域における里海・アピールポイント強化プロジェクト>

【主査】  そろそろ時間になりましたので再開したいと思います。

 議事の(4)、「平成20年度開始予定研究課題の事前評価」ということで、3題の評価をしたいと思います。

 最初に、「内湾域における里海・アピールポイント強化プロジェクト」について提案をお願いします。

【国総研】  海洋環境研究室長の○○と申します。新規の予算要求にかかわる課題ということで、「内湾域における里海・アピールポイント強化プロジェクト」というタイトルの課題についてご説明申し上げます。

 このアピールポイントという言葉については、全国海の再生プロジェクトで、東京湾、大阪湾、伊勢湾、広島湾といったところで、海の再生のための行動計画が立案されているところですが、その中で、目標達成のイメージをより明確にしようという目的で、対象地域の中から数カ所または数十カ所のアピールポイントを選び、そこで取組みを推進すること、また、中間評価において評価ポイントとすることを目的として作られた場所です。

 これは東京湾再生のための行動計画のアピールポイントですが、左下に表がありまして、例えばお台場周辺では、市民が水と親しめる憩いの場を創り出す、みなとみらいでは市民に開かれた魅力的な親水ゾーンを創るということで、「市民」という言葉がたくさん出てきます、使うことを前提に置いた環境再生の拠点といったものにアピールポイントという名前がつけられております。

 また、里海という言葉ですけれども、里山、里地は一般の名詞にかなり近いということで辞書にも載ってくるようになりましたが、里海に関しては、2002年とか03年ぐらいからさまざまな方々が言い始めて、里山とか里地と同じように、人と自然が共存できる場所、そうした視点で見た海辺を指す言葉ということで、アピールポイントに通じるものがあるかと思いますけれども、どちらも自然再生だけではなくて、人がどのように使うかということも考えた言葉であることをご紹介したいと思います。

 海辺の環境は大切ですね。また、沿岸域・湾域の再生は統合的に取り組まなければいけませんね。というような大きな方針も出てきておりますし、環境保全と経済成長、または開発と言いかえてもよろしいかと思いますが、そうした両方のバランスをとりながら進むことが大切だという話も、先ほど○○部長から紹介申し上げました国土交通省の交通政策審議会の答申等でも出ているところでございます。

 そして、今年度閣議決定された環境立国戦略の中では、戦略の6番目、7番目に、「豊かな水辺づくり」とか「協働による地域環境力の強化」という中に、里海とか連携という言葉がたくさん出てきております。これを実現していかなければいけないという思いでこの研究を立ち上げました。

 研究の大枠を立てておりますけれども、「環境分野の豊かな生態系の保全と創出」の中に位置づけてスタートさせたいと思っております。

 具体の研究テーマとしては、プロジェクト研究として中間評価をこの前の時間で行っていただきましたけれども、沿岸域という場を理解して、それを再生するためのメニューを作成して、それをシステム的に推し進めていこうという流れで大きなプロジェクト研究が進んでいますが、その中の個別研究として、こうした事項立ての研究といわれているものが進んできています。

 今まで、あり方とかつくり方といった視点で、海辺を再生するときに、海の中ばかりに注目するのではなくて、運河部も注目に値するというようなこと。また、干潟を造っていくときにテラスを作る、また、水たまりを作るという言い方もできるかと思いますが、そうした技術が有効そうであることがわかってきまして、何とか、自分たちの身近にそのようなアピールポイントなり里海の拠点みたいなものができそうだと、では、それができたときにどのように使っていくのか、それを今回の提案である里海・アピールポイントの強化プロジェクトという名前で研究を推進していきたいと考えております。

 ですから、メインとしては、そのアピールポイントをどのように使うかということで、一番下に書いてあります住民参加のメニューづくりというところが研究のメインになりますけれども、これは予算要求ですので、一つの研究として一体的に全段階、技術的な保証もなければいけないし、あり方といったものも含まれなければいけないということで、今まで行ってきたことと少し重なりますけれども、あり方とか評価手法、また、その作り方とか、技術的なことも研究の中に含まれています。

 それを少し模式的に書くと、事例を調査したり、環境のモニタリング、生物のモニタリングといった技術的なメニューをだんだん作っていく中で、それを住民の人たちとどのように使っていくのか。環境モニタリング、生物モニタリングは研究者の側から提供できるツールの一つだと思っています。住民の方々からも参加する際の色々な、彼らなりの寄与の仕方、あり方、かかわり方がきっと提案されてくるのではないかと期待しております。

 成果の見込みとしては、全国海の再生プロジェクト等の推進により政府方針へのバックアップとなるのではないかということ。また、市民の方たちが自ら、何とかそのような海辺に近づきたいという思いを少し後押しすることができるのではないか。これを広く経験として、みんなの知恵として残すために、さまざまなシンポジウムやパネル展、(パネルの形にして記録を残すことは、やり方として意外に有効ではないかということを最近思っておりまして、)のようなところで広く情報交換、共有しながら、アピールポイントの使

い方と言ったものを、標準化、ガイドラインというところまで到達することはなかなか難しいかと思いますが、有効な事例をきちんと紹介する、体系立てて紹介するということがアウトプットとして得られたらという思いで、研究の計画を立てているところです。研究自体はこれからですので、今、その手前まで来ていますということをご紹介したいと思います。

 これは一つ前の研究課題になりますけれども、干潟を取り戻すプロジェクトの第二フェーズになります。実は、東京湾の芝浦アイランドという、運河部の中にある島の護岸が再整備されることになりまして、そこに、地域の人たちが、まちづくりの拠点となるような、何か人が集まるような場所をつくりたいという思いが地域の方から挙がりました。

 フェーズ1の研究で、潮だまりとか人工の構造物など、そのようなものを活用して干潟を造っていくことが有効でもあるし、技術的にも可能であるということがだんだん蓄積として溜まってきましたので、この護岸の水たたきという平たい部分のところですけれども、写真では干上がっていますが、満潮になると水没するような位置関係にあるところです。ここに潮だまりを造り、そこがきちんと生物の棲み処として機能するかどうか、そんなつくり方の研究を現在進めております。

 「モニタリング調査」と書いてありますのは、みんなが下を向いて拾っていますけれども、この池の中に魚が集まります。この水を掻い出して、そこに何匹の魚がいるかをみんなで丹念に拾うというような調査を進めております。これは池を作ってから約1カ月後の調査でしたけれども、ハゼで約200匹、ボラの稚魚が150匹ぐらいが、この4m×9mぐらいの小さな池に集まっている状況がわかりました。

 そのような調査を自分たちだけで行っていても、蓄積はできますが、市民の方々に情報が伝わらないということで、体系的にではないのですが、機会があるたびに、例えば近くの小学生にその様子を見ていただく、少し参加者を募って一緒に調査をするという試みを始めております。

 潮だまりの中に砂を入れて、また、入れた砂の中に池を掘ってなどということを、つくり方の面で少しずつ技術を高めていこうという試みを行っているところですが、これができたら、この後はどうやって使っていくのか、管理していくのかということが大きな問題として残ってきております。それがこの次の研究で、メインのテーマとして取り組みたいと思っているところです。

 今回の事項立て研究、「内湾域における里海・アピールポイント強化プロジェクト」は、政府から、市民から注目されているこの里海・アピールポイントに対して、あり方とか技術的な研究が進んできましたので、ぜひ次の段階の、どうやって使うのかというところへ研究テーマを広げていきたいという思いでおります。

 市民が主体的に参加できる活動のメニューを具体的に示し、色々なところでそれが活用できるような形に残す、情報共有することを最大のアウトプットの目標にして研究を進めていきたいと思っております。

 以上でご紹介を終わります。

【主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、新規課題の事前評価ですので、目標の設定あるいは研究手法の妥当性、そのようなものにつきまして評価をお願いしたいと思いますので、ご質問あるいはコメントをお願いいたします。

【委員】  この取組みは、活用の主体は2研究室で、住民の方は個別にそのプロジェクトに、その日だけ参加するというような参加の形態をお考えでしょうか。

【国総研】  それは幾つかメニューがあるかと思っております。今、この写真でご覧になっていただいている、青い帽子をかぶっている子どもたちが集まったのは、イベント的に集まって見ていただくということをしています。右上のほうに少し人が集まっている写真がありますが、この人たちは、こういうプロジェクトをやりますから、1年間に5回なら5回、色々な活動をしますから連続で参加してくださいというような呼びかけをしています。

 実は、どちらの方が良いのかということもわかりませんし、どちらも良いところと悪いところがあるだろうと思いますので、やり方は限定せずに、色々なことを行ってみて、どのような方法で参加していただくのがよろしいのか。大勢の人を集めるにはイベント的にどっと一回で行う方が集まるでしょうし、深く理解していただくためには継続的な取組みが必要なのかなという思いはありますけれども、色々なことを試したいと思っているところでございます。

【委員】  このような活動ですと、この10年ぐらいの間に沿岸域のNPO活動が非常に盛んになって、色々なNPOの主体があると思いますが、そのようなものと協働で行うというよりは、まずはあくまでも研究室が主体で行っていきましょうと。私は、恐らく、その方が研究の手法としては正しいと思っているのですが、その辺はどのようにお考えでしょうか。

【国総研】  やはり地元のNPOの方を抜きにこのような活動を開始することはできませんので、それぞれの場所でご協力いただいたり、参加していただいたりするNPOの方がおられます。また、場合によっては、逆にNPOが主催されているイベントに我々が乗り込んでいって、我々の手法を少し試させていただくなど、どちらが主従になるかということがあるかと思いますが、基本的には、自分たちが研究をしているフィールドに皆さんをお招きして、どう使ったら良いでしょうかということを問いかけるようなことを、自分たちがやってみたいという思いが強くあります。

【委員】  今、湾の話として出ていますけれども、恐らく、このアピールポイントというのは、例えば道路とか河川の分野でも研究されている可能性がありますし、逆にされていないとすれば、ここで行ったものがさらに他の分野に広がりを持ち得ますよね。研究の効率性、有効性を考えるならば、国総研の総合力を生かした形でもう少し広げてできるのではないかと思います。

 それから研究的な要素として、評価の仕方もあるのですが、一方では、これは一種の住民参加のまちづくり、協働型のまちづくりだと思います。そのような観点にまで踏み込んで研究することも可能かなと思います。

【主査】  どうもありがとうございました。

 研究の方向性のことですけれども、今ご発言がありましたように、まちづくりや都市計画、あるいは、住民参加という方向の研究もあれば、先ほど中間評価をした沿岸の包括的な管理というものの中で、例えば、里海というのはどうして里海と呼ばれるのかなと考えてみると、もともと里山のほうが有名ですが、里山は手つかずの森林ではなくて、人が色々入って利用したり、草を刈ったりするということで、生態系の遷移がある程度抑えられている、人間が手を入れるがために維持されている独特の生態系ですよね。だから里海も同じことで、何もしない自然の物質循環や生態系をそこに取り戻すのではなくて、人間が利用することで、人間にも良いし、そこにある生態系も良い状態が保たれるという関係を作ろうということですから、新しい生態系の管理や形成のあり方という方向の研究もまた成り立ち得ると思います。

 そうすると、先程の2番目の研究とこれとの研究の位置関係はどう考えるかというのは、どのようなのですかね。

【国総研】  本日の2番目にご紹介させていただきましたプロジェクト研究は、大きな傘となる研究テーマをご紹介したものです。その下でこれも一つの要素として行われる研究ですから、そのあり方なり、実際の技術的な研究、プロジェクト研究で行なわなければいけないある部分を担務するということで、見た目は重なっているところがあるというのはそのとおりでございます。

【主査】  そうすると、Aの包括的な管理で出てくるガイドラインの中には、当然、里海づくりとかアピールポイントという問題もガイドラインの中には含まれると考えて良いですか。

【国総研】  この研究がうまくいった暁には、ぜひ、含んだものを作らせていただきたいと希望しております。

【主査】  そうですよね。特に都市域に近いところだと、そのようなものが入ってこないと、本当は包括的な管理のガイドラインにはならないと。そのような関係にあるという理解でよろしいですか。

【国総研】  はい。

【主査】  わかりました。どうもありがとうございました。

【委員】  研究予算ですけれども、これは全くソフトのお金ということでよろしいでしょうか。先ほど砂を入れたり、何とかという、アピールポイントそのものを改造するようなコストが必然的に出てくるのではないかと思いますが、その辺はどのようなお考えでしょうか。

【国総研】  実は、それは○○委員からもご指摘があったところで、この方法は、ソフトとしては色々な場に応用できるはずだというご指摘がありましたが、そのとおりです。そのソフトの面については、それほどお金がかかる話ではないのですが、海辺の自然再生またアピールポイント、里浜づくりで一番大きなところは、活動ができる場を、特に都市域で再現しようとすると、先程のように、護岸のところに手を加えなければいけない。または、それを観察するために、水の中ですから、ただ見に行っただけではわからなくて、水質計を持っていったり、水温計を持っていったりしないと実際の現象がわからないというようなところがあります。実は、海の特殊事情で、何かをしようとするとお金がかかるということがあります。ですから、予算要求の中では、ある程度の地形改変に、人手だけでは立ち行かない地形改変のお金とか、また、そのような観測機材、分析をしなければいけないので分析費とか、そういったものが含まれておりまして、ソフトの研究だけという面から見ると、高めに予算要求が設定されているというのは、そういう理由でございます。

【主査】  どうもありがとうございました。そのほかに何かご意見がありますか。

 よろしいでしょうか。

 これは事前評価ですから、事前評価につきましては、先ほどのような評価をして○を付けるのではなくて、お手元にあります票に先生方のコメントを書いていただいて、3課題が全部終わったところで事務局の方で集めることになっております。評価自体は、この場で、今、先生方から出た意見なども含めて、このプロジェクトを推進することに対して我々は賛成する、あるいは、何かこのようなことを付け加えるべきだとか、このように変更すべきだとか、そのような議論をした上で評価をすることになっております。

 今、皆さんのご発言を伺いますと、Aのプロジェクト研究の一部、あるいはそれを補強するものという位置づけでもあるし、国総研が行っている他の分野、まちづくりや住民参加、道路、都市計画などとも関連性がある研究で、進めること自体については異議がないと受け取ったのですが、いかがでしょうか。それにさらに付け加えてコメントすべきことがありますか。

 それでは、先ほど私がまとめましたように、基本的にはこの研究計画に従って推進をしていただくことにしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

 次は事前評価の2題目ですけれども、「港湾の広域連携化による海上物流への影響把握と効果拡大方策に関する研究」につきまして、研究計画のご説明をお願いいたします。

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<C港湾の広域連携化による海上物流への影響把握と効果拡大方策に関する研究>

【国総研】  港湾計画研究室長の○○といいます。「港湾の広域連携化による海上物流への影響把握と効果拡大方策に関する研究」について発表させていただきます。

 1番目に、大きな全体の枠組みを示させていただいております。最初の認識は、我が国の企業が国際競争力を確保するために国際海上物流の強化が必要であるということです。この強化の具体的方策の一つとして、港湾の広域化・連携化方策を考えています。これにつきましては、一般論ではなくて、大阪湾において関西経済連合会を中心に、平成19年度から、4つの港を一つの開港にすることが具体的に進んでおります。

 研究としては、大阪湾を対象に一つの開港になることで海上物流への影響、これはメリット・デメリットがありますけれども、これを把握することと、その連携化による効果を拡大するための方策を検討したいと思っています。その研究成果につきましては、大阪湾の効果を確認することと、他の湾域への施策展開につなげることだと考えています。

 1点目の、物流を強化する必要理由ですけれども、特に東アジア圏域での域内流動量が非常に増えています。これはよく知られていることです。ここでは一つの例を挙げていますけれども、多品目・多頻度に動いています。この国際海上物流を支えているものは何かというと、一番主要なものがアジア圏域内でのコンテナ船による海上輸送です。

 そのコンテナ航路については、北米、ヨーロッパ、アジアとよく知られているものがありますが、一方、東アジア圏域だけのコンテナ航路を見ていただきますと、図にありますように、幾つかの港、それぞれ10港ぐらいずつになるのですけれども、山手線のようにまわり回って寄っています。ここでは、自分の地先にいかにアジア航路を呼ぶかがポイントになります。

 次に広域連携化の必要理由ですけれども、ここでは東京湾と大阪湾を挙げています。日本の主要湾域は、複数の港湾管理者が陸域と水域を分けて管理しています。実は色々な法律がありまして、左側の京浜港は、港湾法では、東京港、川崎港、横浜港と3つありますが、関税法では一つの港になっています。どのようなことかというと、一回入るたびにトン税という税金が取られるのですけれども、これは一つですから、東京、川崎、横浜港と寄っても税金は1回しか取られません。

 ところが、右の大阪湾の場合、大阪港は一つですが、尼西港、神戸港という形になるので、大阪港に寄って神戸港に寄ると税金を2回取られる形になります。その結果、関西が考えているのは、東京湾のように、港湾法ではなくて関税法として一つの港にしようということを考えているわけです。

 その違いが具体的にどう出ているかということで、先ほどのアジアコンテナ航路は、主要なコンテナ航路とは違って小さなコンテナ船になるので、規模も小さいわけですけれども、その入港税のトン税がこう変わってきます。大阪湾、京浜港、アジアのコンテナ航路が寄っているコースは80ぐらいになります。大阪で78、京浜港で81になります。そのうち2港に寄港している割合は、京浜港では69、全体の85%になります。ところが、大阪湾は同じくらいの78ですけれども、例えば大阪、神戸の2港に寄っている例は66%で20ポイントも下がっています。もちろん、関税法の議論だけではないと思いますけれども、少なくとも、ここにありますように、関税法に基づくトン税の取られ方が違うということが効いているのではないかと言う認識を持っています。

 このため、一開港化にするために、例えば机上の議論だけに終わってしまうのですが、関西経済連合会の中の国際物流戦略チーム、ここにありますように、産学官の主要な部隊が色々な施策を進めています。

 その一つとして、もちろんスーパー中枢の阪神港の整備もありますけど、この広域連携化の推進という形で、今年の4月から、湾内の2港に寄港する場合の入港料は半額にしようと。それから、先ほどの一開港化については、今年の12月までに諸手続を完了して、来年からは一開港化にするという動きがあります。

 こうした状況で、現に一開港化の流れがありますので、これを踏まえた具体的な研究ですけれども、1点目、大きな話として、海上物流への影響ということでプラス面、マイナス面を分析したいと思っております。プラス面については、先ほどのコストが低減するので、当然、2港寄港率が増加するだろうということで、この点を分析をしたい。それから、マイナス面に関しては、2回寄るので船舶航行での輻輳化が生じるのでその現象を効率的に把握して分析したいと思っています。

 それから、海外の港湾に関してもあわせて比較・分析をしていきたいと思っています。これは近畿のほうの推計ですが、この動きで、半額とトン税の形で全体の15%ぐらいコストが減ると見ています。

 プラス面として、2港寄港することは、それはそれで良いことですけれども、もう一つは、今までは、例えば大阪港にしか寄れなかった場合、神戸港の荷物が大阪まで行っていたものが、それが神戸港に寄ると地先に行けるということで非常にメリットが出てきます。いわゆる、むだな内陸輸送料が減少します。これにつきましても、今考えている研究期間の平成20年にコンテナ流動調査が実施されますので、これにより分析できると思っています。

 海上物流の方ですけれども、AISというシステムがあります。これは、船の動きを、レーダーよりもより正確に、船の特性・特徴を含んで把握することができます。神戸港の事務所のところにこの装置がついていまして、その分析例です。

 これは昨年の8月10日のデータですけれども、動きを把握することができます。これを使って、今、現に2港寄りの例を挙げていますが、2港化、この動きがある前と後では輻輳化がどれくらい進むか、それが非常に影響があるほどのマイナス面なのか、それほどないのかというあたりについて分析をしたいと考えております。

 もう一つが、こうしたソフト以外に、より半減化あるいは一開港化以外に海上物流の情報提供をより進めたいと考えております。実際、地元の方、いわゆる物流関係者に聞きますと、先ほどの例で、これはアモイ港から出てきて大阪港に入る動きがあります。実際、コンテナ船の動きを見て、荷役の準備とかトラックの手配をしたいのですけれども、本当にアモイを出たのか。あるいは、いつごろ着くのかということは不明です。ここらあたりに近づいてくると、トラックの手配、荷役の準備で効きますので、それを支援することができます。荷役の需要を分析して、船の動きを把握して伝えるシステムを考えたいと思っています。

 研究計画・予算・体制等ですけれども、期間につきましては、来年度から3カ年、予算としてはもちろん今後、色々と調整がありますけれども、年間1,000万円程度。体制につきましては、先ほどの国際物流戦略チーム、特に近畿地整の港湾空港部との連携を図って進めたいと思います。

 具体的な研究の実施内容ですけれども、一開港化の影響と2港寄港の実績の推移・把握につきましては、各種データの活用に加えて、連合会、近畿地整とのヒアリングあるいは打ち合わせを行って把握したいと考えています。それから、2港寄港に伴う内陸輸送量の変動分析については、コンテナ流動調査等各種データ、これは最新のものが出てきますので、これを使いたいと思っています。それから、海上交通の輻輳度の推移についてはAISで、近畿地整のデータが使えるので、これを使いたいと思っています。支援システムについても、連合会にこのような荷役関係の方々が入っていますので、その方々の要望・効果をヒアリングして進めていきたいと思っております。

 研究成果につきましては、広域連携化の効果を確認するということ、それから、拡大方策を提案していきたい。他の湾域への施策展開につなげたいと考えております。

 発表は以上です。

【主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、ご質問あるいはコメントをお願いします。

【委員】  先程の里海のときにも気になったことですが、この研究は関西経済連合会から委託を受けたとか、そういうものではないですよね。要するに、全額国費の自主研究ということですね。そうだとすると、これが研究成果の普遍性というか、何かの基準になるとか、大きな政策、全国展開の政策の支援になるとか、そのようなものをもう少し強調した方が、国総研の位置づけとしてもよろしいような気がするのですが、その辺はどのようになっているのでしょうか。

【国総研】  研究の方では、伊勢湾、北部九州を想定していますけれども、地元の関係があるので、あまり強く言って良いのかということがありますが、そこは考えているところです。

【主査】  今、伊勢湾と北部九州という話でしたが、このような一港化と言いますか、一つの港のように関税を扱うということをすると、日本の他の港湾でも非常に大きな効果があるとか、その時に、このような方式にすればもっと効率が良くなるという提案が出てくるのであれば非常にすばらしいと思います。

 例えば、神戸港、大阪港でそのようなことを行ったら、この程度改善されましたというのは、例えば研究項目の1だと、約15%の低減になるのではないかというのは、この図から見るとかなりはっきりしているような気もします。だから、こと大阪湾に関してやることと、それがもっと他の港や日本の港湾の効率化、海外との取引の活性化、そのようなものにつながるという方向の研究展開は何か考えておられますか。

【国総研】  はい。先ほど、15%は試算していて、これは行政的にそう変わらないと思います。今ご指摘のお話は、それで実際に、理想としては東京湾近く、20ポイントぐらい上がるかと思っていますが、本当にここまで行くかどうかの確認があります。これが、このとおりであれば理想どおりになりますし、10ポイントぐらいしか上がらないとすれば何が違うのか。逆に、それをさらに上げるために、先ほど言った3点目の支援方策というものでより援助できるのではないかと考えております。

【主査】  今ちょっと言ったのは、大阪湾についてはそれで良いでしょうけれども、そこで出てきた結論が、日本の他の港にも波及して、良い示唆を与えてどんどんそのような方向に進むようになるとか、改善が進むとかいうような展望は出てくるでしょうか。

【国総研】  そこはまだわかりません。これで20ポイント上がってくれば一開港化の効果は説明できると思います。一部の規模はそこまで行くだろう、行ければそれだけ強く押せますし、行かないのであれば次の手を考えなければいけないと思います。

【委員】  要は、研究をされて、アウトプットとしてどのようなものが出てくるのかということだろうと思います。単に実態を分析したというだけでは、他のところに使えるというところまではなかなか行かない。この調査をされて、どのような成果を出そうとされているのかということが抽象的なので、なかなか判り難いのかもしれません。

【国総研】  説明が不十分でした。一番は、一開港化にした結果、大阪、アジア圏域のコンテナが増えることが確認できれば、他のところでも展開できると思っています。行かないならば、それをさらに進めるためにはどのような方策、具体的には物流支援システムを考えていますけれども、それをさらに追加すれば、例えば10ポイントしか上がらなかったものがさらに上がっていくことを説明できればと考えています。

【委員】  そこのところで、最終的には、それぞれの船が何を選ぶかという行為選択が問題になりますね。今のところは予測をしようと思っておられないのですが、分析をした結果によって、それぞれの船の行為選択に関する情報が得られて、将来の予測ができることになると非常におもしろいと私は思ったのですが、いかがでしょうか。

【国総研】  行為選択というのは?

【委員】  要するに、安くなれば2港に寄るようになるとか、それとも、安くなってもそれとは関係なくて1港で終わるのかというのは、それぞれの船が下す判断です。どっちの行為を選択するのかということが今のところは予測できないと思っておられますが、これを分析すると、その予測ができるようになるという研究なのではないかと思いました。

【国総研】  予測できないと言いますか、規模という意味では、東京並みにいくだろうと。安くなれば上がると思っています。現にいかなかった場合には、どうしていけなかったかということを分析したいと思っています。

【委員】  その分析の結果が、将来の行為選択を説明できるとおもしろいですね。

【国総研】  わかりました。それはそう思って研究します。

【委員】  皆さんがおっしゃられたことと同じことになりますが、我々、経済学などでは、例えば船がどこの寄港地に寄るかという寄港地の選択モデルを作るということがあります。そのときに色々な条件を出しておいて、その条件が変わったときに選択がどう変わるかということを予測できるようなモデルを作るわけですけれども、これはそのうちの例えばトン税が下がったことによる寄港地選択の変化みたいなものを、一般的に言えば、そういうフレームワークの中で捉えていくのが妥当ではないかと思います。

【委員】  研究予算の話ですけれども、3年で1,000万円ずつで、2つのテーマで半分ずつというのは、いかにも粗い研究費の推定だと思いますが、どのくらい精査された数値と理解してよろしいですか。

【国総研】  まず全体枠については、そういう意味では前年度並みといいますか、枠があるので、積み上げというよりも、枠から決まっているところがあります。それから、今、テーマごとの予算については、細かく詰めているわけではありません。ざくっと見ているということになっています。

【委員】  効果の拡大方策の検討という研究項目があるのですが、その中で支援システムを検討されるということが、私には理解できません。効果拡大ということは、たぶん、寄港が2つになることが、もっと大きな目的である日本経済に何らか寄与する方向に働くということだと思いますが、そのことと支援システムであるAISを使うことが、どのようにリンクするのかということが、いまひとつ理解できないのですが。

【国総研】  時間がなくてはしょったところがあるのですが、港の使い勝手で、先ほどからお話がありますように、入港料が安くなれば当然増えるだろうということと、もう一つは、それとは別に使い勝手のところがあります。大阪港に入るときに、大阪から神戸でも良いのですが、この例でいきますと、前の港からここに入ってくるときに、どれくらいに到着するかがわかると非常に入りやすくなるというのは、荷役関係者の人たちから言われています。ここにありますように、アモイを出て、いつごろ大阪港に着くということがリアルタイムに、バス停で言えば、前の停留所を出ましたよ、あと10分ぐらいしたら着きますよという情報が得られれば良いと考えています。

 神戸のデータはかなり先の、四国の沖あたりまで取れます。そうすると、その段階から情報がつかめれば、あと3時間ぐらいで神戸港に入ってくるという形で支援ができれば、利用者の方からすると、神戸港は入りやすいとか、大阪港は使いやすいと。さらに、そこに先ほどいったトン税が減ってくれば、今以上にもっと使ってあげるかという形で支援できるのではないかと考えております。

【主査】  いかがでしょうか。そのほかに何か。

 これは、先ほど、研究費はざくっとそのように分けましたということですが、研究の提案の中では、研究の計画と言いますか、どのような研究をどのような方法、どのような形で行うかということがあって、それに対応して研究費が決まってくると思います。研究の実施方法については、かなり精密に検討されているということでしょうか。そこを予算化するところでは、まだ若干精査する余地があるとしても、そこのあたりはどうでしょうか。

【国総研】  実施方策としては、ここに書いています。ただ、お金のところは、例えば実施方策でAISを使ったソフトの開発の部分とか、細かい積み上げができないということと、それから、コンテナ流通の分析等に関しても細かい詰めをしていないので、そういう意味ではざくっとした言い方をさせていただきました。

【主査】  その他に何かありますか。

 よろしいでしょうか。

 これのコメントは、また是非お手元のコメントシートに書いていただきたいのですが、評価ということで、今、色々な先生方から出たコメントは、大筋で2つほど、今後十分に検討してきちんとしたものにしていただきたいという要望があったように思います。

 1点は、研究の目標です。今、主にご説明があったのは、実際に一開港化したときにどのような変化が起こるか、その実績を評価分析するということだったわけですけれども、それを大阪湾の事例にとどめないで、例えば将来の寄港地の選択モデルの開発に生かすなど、より普遍性あるいは日本の他の港の港湾行政に生かせるような形で展開するという方向性を考えるべきではないかということが多くの方から言われたと思います。

 2点目は、研究計画の中身の熟度と、それを研究費の形できちんと積み上げるときに、それの整合性についてご検討くださいということが指摘されたと思います。

 しかし、東京湾と大阪湾を比べると依然として差がありますし、そのような方策を講じることによって日本の港湾のあり方の効率性を高める可能性がある。そのような意味では重要な意味を持った研究であるという点については、特にご異議がなかったので、今言ったような2点について、さらにきちんと精査していただいた上で研究を進めていただくということでいかがかと思います。いかがでしょうか。

 よろしいですか。

                 (異議なし)

【主査】  では、そういうことでよろしくお願いいたします。

 それでは、事前評価の3番目、「エアラインの行動を考慮した空港需要マネジメントに関する研究」について、研究計画のご説明をお願いいたします。

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 <Dエアラインの行動を考慮した空港需要マネジメントに関する研究>

【国総研】  空港研究部です。「エアラインの行動を考慮した空港需要マネジメントに関する研究」のご説明をしたいと思います。

 研究を担当する○○主任研究官からご説明を申し上げますので、よろしくお願いいたします。

【国総研】  「エアラインの行動を考慮した空港需要マネジメントに関する研究」というタイトルで進めさせていただきます。

 まず、研究の必要性につきまして、航空局の交通政策審議会航空分科会等でも既に5年前に言われていることですが、空港整備が概成したということで、今後は既存の空港を利用していくためのマネジメント政策がより重要になっているということが言えます。また、我が国の航空市場、特に国内航空市場につきましては、かつては需給調整、運賃規制等が厳しかったわけですけれども、現在、実質的にほぼ自由化されており、そうした航空市場の中ではエアラインの自由度、行動の自由度が高まっているということが言えます。したがって、政府の政策に対して彼らが自由に行動をとれるということが言えます。

 とはいえ、従来の実務的、これは行政実務で用いられている航空政策の分析手法という意味でですが、需要予測モデルと言われるものですが、そちらの手法では、エアラインの行動が外生として与えられております。したがって、政策を打ったときに、供給者であるエアラインがどのように反応するかという、そこの変化が分析できないという大きな課題を抱えております。ですので、適切な政策効果評価を行うためには、運賃設定や便数・路線設定、そうしたエアラインの行動変化も明示的に考慮した評価手法が必要であると言えます。

 これを受けまして、本研究の目的と概要ですが、上のとおり、航空政策とエアラインの行動の関係、ここに特に焦点を置いた分析モデルを構築することが1点。それを活用して、空港需要マネジメント政策のオプションの提案とあわせてそれらの効果の推定を行うということ、そうしたものを受けて今後の政策検討、政策立案の支援を行うといったことを最終的な目標としております。

 また、本研究では、「空港需要マネジメント」という、あいまいとも言える言葉を使っていますが、ディマンド・マネジメントという言葉は米国のテキストブックなどでも記述されており、一般には、混雑空港への乗り入れ制限、空港間の需要配分といった、空港の需要を管理するような政策を総称していうと定義されていますので、これを用いています。

 「需要」という言葉に関しては、本研究では、空港は公的なインフラ供給ととらえ、広義の需要として、そこに乗り入れてくるエアラインの乗入れ需要と旅客需要を主に対象として考えております。

 また、「空港需要マネジメント」という言葉につきましては、容量管理政策、機能分担政策、需要喚起等、新規のものではなくて既存の空港利用にかかわる政策一般、航空輸送にかかわる政策一般、これを「空港需要マネジメント」として定義したいと考えております。

 研究の中身ですが、大きく4つのメインボディから成っております。1つ目が「航空市場の動向分析」ということで、これは研究期間を通じて、航空市場の情報、政策の情報といったものを収集していくことを考えております。2点目が、研究としてもメインとなるモデルの構築の部分。3つ目が「空港需要マネジメントに関する政策レビューとケーススタディ」ということで、これは政策シナリオとしてどういったものがあるかといったことの情報収集、プラス、すべてのものがモデルで表現できるわけではないので、そうしたものに関しては政策レビューを綿密に行うことによって、定性的に過去の政策がどのような効果を及ぼしたか、あるいは、その実現可能性がどうであったかといったこと、こういったものをまとめることの検討をしております。そして4つ目が、実際にモデルを用いて政策効果分析をする。色々な政策主体について効果を推定するといった部分です。

 これらのアウトプットを受けて、さらに行政への活用を通じて、最終的には、都市部の空港であったり、地方空港であったり、航空モビリティ向上につながるといったことを期待しております。

 また、本研究と従来手法との違いです。これは冒頭に申し上げたことと重複しますけれども、これは模式化したもので、従来の行政実務で用いられている航空需要予測モデルは、モデルに対するインプットとして、政策シナリオだけではなく、航空のネットワーク、便数、運賃、こうしたエアライン側の行動ファクターをすべて外生として与えて、最終的に、例えば旅客のモデルだと旅客需要を出すといったものでしたので、逆に、こうしてしまうと政策によるエアラインの反応が分析できない、市場がどう変わっていくかということが分析できないという課題があります。

 本研究で、政策シナリオはもちろん検討するわけですが、モデルの中で、その政策に対してエアラインのファクターがどう変化するのかといったことを分析するモデルを構築していくことを考えております。これらを用いて、定量的な政策評価を行うとともに、それが万能ではありませんので、そうではないものに関しては、先ほどの研究のパートでもお話ししましたように、政策レビュー等により定性的あるいは経験的な評価も行うことを考えております。

 どのようなことができるのかというモデルのイメージですが、モデルを回しますと、アウトプットとして出てくる、例えばこれは国内の空港ネットワークの例ですけれども、それぞれの空港路線の需要、便数・運賃といったものがアウトプットとして出てくるような定量モデルを開発します。それをどう使うのかと言いますと、まずターゲット時点の再現、モデルで再現を行う。それに対して、何らかの政策を打ったときに、その後の状態をモデルで再現して、それがどう変わったのか、これで政策効果を推定するということを行います。特に本研究では、航空の需要マネジメントということで、アウトプットが幾つか出てくるわけですけれども、特に路線の便数であったり、旅客需要であったり、こうした空港需要を主な評価アウトプットとして考えております。

 また、研究の効率性、有効性に関わる部分ですが、基本的に、実施体制としては我々単独で実施することを検討しておりますけれども、当研究部では基礎的なこうした空港ネットワークの分析に関する研究蓄積があります。これは後ほど少しご紹介しますけれども、プロトタイプのモデルを既に開発しておりますので、それを今後、分析したり、政策に合わせてモデルを変えたり、マイナーチェンジしたり、そうした形で改良していくということで、完全に失敗するリスクは少ないだろうということで効率的だと考えております。

 また、政策シナリオ案の検討に当たっては、実際に政策立案担当部局である航空局との連携を密にすることによって、彼らがこれからどのような政策を考えているか、何を問題としているかと言ったこと、これを常にタイムリーに捉えていくということを考えております。

 また、有効性に関わる部分ですけれども、これがどのように活用されていくかということで、今後の交通政策審議会航空分科会において、先ほど申し上げましたような空港需要マネジメント政策関連課題が議案となる可能性が高い。これは何故かと言いますと、昨年から今年にかけて行われております現在の審議会においても、こうした政策を今後考えることが重要だと言われておりますので、当然、今後の審議会においてもまたそうしたことが議論される可能性が高いと考えられます。それがわかっていますので、行き当たりばったりではなく、事前にこうした政策案の効果の推定を行うことで、今後の審議あるいは政策立案において有効に、効率的にそうした審議を行うということで、本研究の成果をそこに突っ込んでいくことで有効に活用されるのではないかと期待されます。

 こちらは実際の航空市場のスケジュールと本研究のスケジュールを照らし合わせたものですけれども、実際に本研究の研究期間とあわせて、新しく空港の状況も関わってきまして、別途行っている航空需要予測においても、将来、神戸とか福岡とか、このようなところで容量の問題が顕在化してくるだろうと言われておりますので、このあたりで本研究が念頭に置いているような政策課題が議題になってくると思われますので、ここにちょうどタイムリーに結果を提供できるのではないかと考えております。

 先ほど、効率性の部分で、我々が既にプロトタイプのモデルを作ったというお話を少し申し上げましたけれども、一応、プロトタイプのものとして、エアラインの行動も考慮した形でのモデルを作っておりますが、これはそのまますぐに本研究のターゲットに使えるものではありませんので、これをマイナーチェンジしていくことで目的に合うように変えていくと言ったことを検討しております。

 以上で説明を終わらせていただきます。

【主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、ご質問あるいはコメントをお願いします。

【委員】  大変興味ある研究だと思います。もしこれができたら、政策の論議にかなり役立つのではないかと思っています。

 若干質問ですけれども、このような理解で良いですか。これは、例えばシナリオがあって、将来の航空需要を予測するのだけれども、それと同時に、エアラインの行動モデルみたいなものがあって、需要量とネットワークと便数とか運賃まで同時決定になるのかな。

【国総研】  ご指摘のとおり、モデルは以前に構築したモデルでありまして、既にモデル全体の中で同時決定をされる形のものを検討しております。運賃と供給便数、旅客数、そうしたものがモデルの中で決定されるという枠組みです。

【委員】  もう一つの質問は、例えばスライド4などで、現状と政策適用後とあるけど、例えば伊丹で、ペディメータで、ここから遠いところの大きい機材は入れませんみたいな、そのくらいの政策メッシュまでシミュレーションできる。

【国総研】  そうですね、おっしゃられるようなことは、まさにイメージしているところで、モデルは、ネットワークもアウトプットに入れるようなことを書いていますが、ネットワークは所与で与えまして、そこがどう動くかと言ったものをモデルで計算しますので、ペリメータであったり、容量規制だったりというのは、外的な条件として容量政策を与えたり、飛ばしてはいけない路線を切ったりすることで、それぞれのアウトプットを比較するという形で効果の比較をするということを検討しております。

【委員】  もう一つ質問です。基本的に2社で、クールノー均衡で反応を見ますという形でやっていって、その結果として運賃も決まるみたいな、そのようなモデルですか。

【国総研】  まさにおっしゃるとおりのフレームワークです。

【委員】  細かいところは疑問があるのですが、大体の様子はわかったので、やってみたらおもしろいなと思いました。

【委員】  私もこのモデルはよくイメージできなかったのですが、これは分析モデルと書いてありますけど、実際にやることは、航空会社の行動選択がこのモデルの中で決まるのですね。

【国総研】  はい。モデルの中で、選択モデルが中にサブモデルとして入っていまして、それも出てきます。

【委員】  その下のほうに、要するに、この行動の決定の仕方は最適化をするということですけれども、航空会社の行動がどのくらい複雑だと思うかによってモデルの立て方が違うのですが、どのくらいのパラメータが入りますか。複雑ですか。それとも、単純なパラメータによって彼らが選ぶ形ですか。

【国総研】  複雑か、単純かと言う問題に関しましては、モデルですのでかなり単純化して作ってあります。こちらのプロトタイプのモデルでは、ロードファクターが最も高くなるように最終的に選択されるといったことになります。それを決めるパラメータは複数用意しておりまして、複雑と言えます。けれども、行動規範は単純なものとなっています。現在のモデルはそのようなものです。今後また改良して変えていくかもしれませんけど。

【委員】  実証的にどこまで行うかということが問題になってくると思います。国で行われるのだからできるだけ実証的に行っていただきたい。特に、データが高いので、そう思います。まともにデータを買おうとすると、この予算ではとても全部を購入できない。だからターゲットを絞って行っていかざるを得ない。大学とか民間では、高すぎてちょっと手が出せない。だから、是非、仮想的なデータを用いて研究するのではなくて、できるだけ地に足がついた研究を行っていただけるとありがたいと思います。

【国総研】 まさにおっしゃるとおりだと思います。我々も、現在のところは国内のマーケットを基本に考えているわけですが、国際まで手を広げると本当にデータが高くて大変ですので。国内に関しましては比較的、政府のデータなども揃っておりますので。細かく市町村レベルのアクセスデータまで行うとやはりコストがかかりますので、そのバランスを考えると、今回提示したような研究予算になるのかなというところで、その中で、大学等ではできないような、できるだけ綿密なデータを使って行っていきたいと考えております。

【主査】  今、データが高いとおっしゃったのは、旅客がどこからどこに飛んだとか、そのようなデータと言う意味ですか。

【委員】  多くのデータがオープンにされていない。国際的な動向に関する情報に関しては、ある特定の機関が販売をしていますが、非常に高額です。

【委員】  将来的に国際線で行うとすると、単純なクールノー均衡ではいけないのでかなり難しいのではないかということが一つあります。

 それと、さきほど申し上げたのは、日本の2社でも、クールノー均衡でも良いのかもわからないけど、価格競争をしているところがあって、その辺はモデルでどうシミュレートするかということがあるかなと思います。

 もう一つは、これは私からの提案ですけれども、逆に、我々などはソフトの人間で、政策をやっていると、例えば航空会社はどう反応するだろうかとか、どう考えるだろうかということを、それなりの蓄積はあるけれども、同時に、率直にいうと、エアラインが客観的にどう反応するかという、そういう情報を直接入れられることが必要ではないかと思います。それで、国の機関でいろいろインタビューするのは大変かもわからないので、私どもがやっている航空の政策研究会などがあるので、そういうところを活用されたら、その辺の情報の流通はうまくいくのではないかと思っていまして、その辺は具体的に相談させてもらったら良いかもわかりません。

【委員】  国総研が行う研究は、港湾政策とはよくリンケージしていると思いますが、航空政策とはあまりリンケージしていないような気がします。交通政策審議会があって、こういうものは将来こうなるだろうと書いてありますが、航空政策の現場との連携をよくとっていただきたいと思います。

 恐らくあまり長期的に見ることなく、しかも、何かテーマや課題があると、運輸政策研究機構などについ相談してしまうような体制だと思います。そこで航空政策当局に対しては、国総研でこういうところまで踏み込んで研究が進んでいるということをよくお話しして、十分に調整しながら進めていった方が、良い研究ができるのではないかと思います。

【主査】  どうもありがとうございました。

 他の部会の方からのご意見は何かありましたか。

【国総研】  失礼いたしました。他の部会から特段のご意見はいただいておりません。

【主査】  わかりました。

 それでは、今、委員の先生方から出されたコメントは、このような研究は必要であり、ぜひ推進してほしいと。特に、大学の研究者ではアクセスできないようなデータとか、航空政策に直接リンクするような要素があるので、そのような点を生かして、是非進めていただきたいという結論であったと思います。

 では、そのようなことでよろしくお願いいたします。

 事前評価の課題につきましては、3つの案件についてすべて評価を終わりましたので、お手元にある評価用紙の中にコメントを書く欄がありますので、コメントがあればそれに書いていただきまして、事務局で集めていただきたいと思います。

               (評価コメントの記入)

【主査】  5つの課題につきまして、非常に活発で建設的なご意見をいただきまして、どうもありがとうございました。本日、評価をいただきました課題それぞれについて評価書を作成して公表することになるわけですけれども、本日の議事録を確認しながら作成させていただくということで、事務局のお手伝いをいただきながら、最終的には私がチェックをしてまとめさせていただくことをお認めいただけますでしょうか。

                 (異議なし)

【主査】  では、よろしくお願いいたします。

 本日の審査はすべて終了しましたが、全体をお聞きになられて、研究マネジメント、審査の進め方等について何かコメントがおありの方がありましたら、それをお願いしたいと思います。ご意見はいかがでしょうか。

【委員】  本日のご説明は主に研究の目的がどこにあって、何を明らかにしたいかという研究設問を中心に述べられている場合が多かったのですけれども、それだけではなくて、どのような研究枠組みを採用されていて、どのような学問的方法論を選びとって研究をしていくのかという、理論と方法についてもきちんと説明していただきたいと思う場面がありました。

【主査】  ありがとうございました。

 そのほかに何かございますか。よろしいですか。

 審査の最中にも、例えば中間評価においては、当初の計画とその進行状況との対比とか、そのようなご意見もありましたので、事後評価、中間評価、新規の課題、それぞれの特性に応じて、次回以降そのような評価を行えるように資料の準備などをよろしくお願いしたいと思います。

 委員の皆様には、本日の議事の進行にご協力いただきまして本当にありがとうございました。

 この後の進行は事務局にお返しします。よろしくお願いします。

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5.今後の予定について

【事務局】  どうもありがとうございました。それでは、事務局から何点かご連絡を申し上げます。

 議事録につきましては、取りまとめを行った後に委員の先生方にご確認いただいた上で主査にご確定していただくことになります。

 評価書ですけれども、先ほど主査からご説明がありましたとおり、主査にご一任という形になっておりますけれども、本部会の評価書、他部会の評価書もありますので、あわせて決定次第皆様方に送付をさせていただきます。

 報告書につきましても、議事録及び評価書が決定された後に取りまとめた分科会の報告書という形で、今後作成していきたいと思っております。

 なお、本日お渡ししました資料ですけれども、後ほど郵送させていただきますので、そのまま、机の上に置いていただければと思います。

 以上でございます。

6.国総研所長挨拶

【事務局】  最後に、○○国総研所長よりご挨拶を申し上げます。

【国総研】  長時間にわたりまして、非常にご熱心にご審議を賜りまして大変ありがとうございました。

 評価ということだけではなくて、今後に向けた積極的なご提案もいただきまして、大変ありがたく存じている次第でございます。いろいろご指摘賜りました点、なかなか難しい課題の部分もございまして、さあどうしようかと悩んでいるものもあることは事実ですけれども、また中でも議論いたしまして、きちんとお答えできるように、できないものはできないと申し上げますが、きちんとさせていただきたいと思います。

 本日は本当にありがとうございました。


7.閉会

【事務局】  以上をもちまして、平成19年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会第三部会を閉会いたします。

 本日は、誠にありがとうございました。

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