平成20年度 第1回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第一部会担当)

議 事 録


1. 開会/国総研所長挨拶
2. 分科会主査挨拶
3. 議事
(1) 評価の方法等について(確認)
(2) 平成19年度終了プロジェクト研究等の事後評価
@流域における物質循環の動態と水域環境への影響に関する研究
Aヒューマンエラー抑制の観点からみた安全な道路・沿道環境のあり方に関する研究
B受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究
C四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発
(3) 平成21年度開始予定研究課題の事前評価
Dソーシャルキャピタルの特性に応じた地域防災力 向上方策に関する研究
E侵食等を考慮した治水安全度評価手法に関する研究
F汽水域環境の保全・再生に関する研究
G都市におけるエネルギー需要・供給者間の連携と温室効果ガス排出量取引に関する研究
H品質の信頼性を考慮したライフサイクルコストの評価手法に関する研究
I集約とネットワークの観点からみた地域連携の効果分析に関する研究
4. 今後の予定等について
5. 国総研所長挨拶/閉会

平成20年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第一部会)

平成20年7月23日


1.開会/国総研所長挨拶


【事務局】 おはようございます。定刻になりましたので、平成20年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第一部会)を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

【所長】 おはようございます。最近着任いたしましたところで、まだ様子がよく見えておりませんが、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 きょうは、先ほどありましたように、長丁場というか長時間にわたりまして評価をお願い申し上げたいと思いますが、実は先日、この外部評価の関係で全体の会議がありました。7年前に国総研とか土研、建研、港湾研等ができて、その7年分の評価みたいなものをやってございます。そのときもちょっといろいろ議論になってございますが、いろいろな、霞が関もあれば、国総研もあれば、土研とかその他もあれば、財団法人もあれば、大学もあればというので、いろいろそれぞれがどういう役割をしているのかというのが世の中にきちんと見えた格好かどうかというので、今、行政改革なんかでもいろいろな話題が出ておりますが、なるべく成果が具体的に見えるような工夫をしていきたいと思いますし、先日もちょっと御指摘があって、例えば国総研からこういう発表をしたとかこういう分析をした、それがまた政策につながるようなことだとか、そんなものを含めて具体的な成果が見えるような形をしっかりと目指していきたいと思ってございます。

 最近、社会資本整備いろいろ言われていますけれども、欧米は、御案内かと思いますが、我々が知っているアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、それからお隣の中国、韓国も大体社会資本整備は右肩上がりの状況でございまして、日本だけがずっと下げている。お金が多い少ないが問題だというわけではありませんけれども、日本は今、目先というか、その場受けというか、そういう感じになっているかもしれませんので、特に社会資本整備の場合は少し先を見たきちんとした、いろいろな意味での備えが要るのではないかと思ってございます。

 そういう目で我々もしっかり頑張っていきたいと思いますので、本日はこれまでの事後評価、それから新しく21年度から入りますものについての事前評価ということをお願いしてございますが、いろいろな意味でどうぞいろいろな御評価をしっかりいただけましたら、精いっぱい頑張りたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。



2.分科会主査挨拶

【主査】 おはようございます。きょうも長丁場でございますけれども、よろしくお願いいたします。

 実は、しばらく前といいますか、6月30日に国立大学法人は6年間の中期計画目標の自己点検評価書を6月30日に文部科学省及び大学評価・学位授与機構に提出いたしまして、それの作成に大騒ぎをしておりまして、いかにこの評価書をつくるかということが大変かということを実感いたしました。今我々は10月の末にヒアリングを受けるべく準備をしているのですけれども、逆に評価チームなるものがどういうコメントを出して、どういうヒアリングをするのだろうかというので期待をしているというか、楽しみにしているということで、さらに皆様方そういうおつもりかな、お気持ちなのだろうと思っております。

 何が言いたいかというと、やはり評価をする側といたしましては、せっかくこれだけの、大騒ぎとは申せないかもわかりませんけれども、努力をされて自己点検されたわけですから、それにさらに建設的なことを何かしらコメントしたいと私自身考えております。それが、先ほど所長がごあいさつの中でおっしゃいました社会資本整備の正しいあり方というのを長期的に世の中にアピールすることにどのようにつながっていくのかということを考える上でも非常に重要なポイントだと思います。そういう方向だけのコメントに限定するとは申しませんけれども、その辺ひとつこの評価ということの本当の意味でのコストパフォーマンスを高めるためにも、ぜひ委員の皆様にもそういう方向でのコメントの重要さもちょっと頭の中に置いていただければなと思います。

 とにかく長丁場でございますので、ひとつよろしくお願いいたしまして、あいさつとさせていただきます。

3.議事

〈評価の方法について(確認)〉

【主査】 それでは、お手元の議事次第、いっぱいありますけれども、まず議事の1番の「評価の方法等について」の確認から始めたいと思いますので、お願いいたします。

【事務局】 それでは、資料2をごらんください。先ほどのメンバー表の後ろに入ってございます。「評価の方法等について」ということでございます。御新任の委員がいらっしゃいませんので、簡単に御説明させていただきたいと思います。

 まず、評価の目的についてでございますが、「科学技術基本計画」、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」等に基づき、公正かつ透明性のある研究評価を行うことを目的といたしております。

 次に、評価の対象についてでございます。所の重点研究でございますプロジェクト研究及び予算要求上評価が必要とされます研究課題について評価対象といたしているところでございます。

 事後評価につきましては、平成19年度末で終了した研究課題。中間評価につきましては、研究期間が5年以上で本年度が3年目に当たる研究課題ということで、本年度は該当はございません。事前評価が、平成21年度、来年度開始予定の研究課題についてでございます。

 それぞれの評価の視点と項目について御説明いたします。

 まず事後評価についてでございますが、必要性、効率性、有効性の観点を考慮し、以下の項目について自己点検結果をもとに事後評価をいただきたいと考えております。当初の目標に対する達成度、研究成果と成果の活用方針、研究の実施方法、体制の妥当性、上記を踏まえた本研究の妥当性の視点から御評価をいただきたいと考えております。

 事前評価につきましても、必要性、効率性、有効性の観点を考慮いたしまして、研究の背景を踏まえた研究の必要性、研究の実施方法、体制の妥当性、研究成果の見込みと成果の活用方針を御評価いただければと考えております。

 1枚おめくりください。

 本日の評価の進め方についてでございます。本日、事後評価関係を4件、事前評価を6件予定いたしておりまして、事後評価から先に予定しておりますが、個別案件ごとに評価を行っていただく予定でございます。

 まず事務局より研究課題の内容につきまして御説明申し上げまして、その案件につきまして個々に御評価をいただきます。そして、御意見をいただきまして、御意見足りない部分につきましては評価シート、コメントシートに御記入いただきます。そして、案件ごとに主査に総括をいただく予定でございます。

 時間配分につきましては別添2のとおりということで、ちょっと見にくくて申しわけございません。2枚おめくりいただいた後に、横の表になってしまっておりますが、案件がございます。事後評価につきましては、説明15分、評価20分、まとめ5分、事前評価につきましては、説明10分、評価15分ということを予定いたしております。

 なお、評価詰果の取りまとめにつきましては、審議内容、評価シート及びコメントシートに基づき、主査の責任において取りまとめていただきます。その後、研究評価委員会委員長の同意を得まして、国土技術政策総合研究所研究評価委員会の評価結果とさせていただいているところでございます。

 また、評価詰果の公表につきまして、ホームページ等での報告書の取りまとめ、及びホームページ等での公表を予定いたしております。

 以上でございます。

 あと、さらに1枚おめくりいただけますでしょうか。別添1ということで、「分科会委員が評価対象課題に参画している場合等の対応について」ということで、共同研究を募集しております場合、委託業務または請負業務を受託している場合、また、各テーマごとに設定されております研究会等に御参画いただいている場合等の取り扱いについて整理をさせていただいているものでございますが、本日こちらに該当いたします委員はいらっしゃいませんことを御報告させていただきます。

 評価方法等については以上でございます。

【主査】 何か御質問等ありますか。よろしいですよね。ありがとうございました。

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〈事後評価@流域における物質循環の動態と水域環境への影響に関する研究

【主査】 それでは、いよいよ本番でございますが、まず平成19年度終了プロジェクトの事後評価からですかね。最初は「流域における物質循環の動態と水域環境への影響に関する研究」でございますが、お願いしたいと思います。

【国総研】 環境研究部長の○○でございます。おはようございます。それでは、第1題目の課題でございます「流域における物質循環の動態と水域環境への影響に関する研究」につきまして、私、○○がプロジェクトリーダーを仰せつかっておりますので、私の方から全体をお話しさせていただきたいと思います。

 主にはパワーポイントの方で説明をさせていただきますが、お手元の資料、分厚いものの@番目でございまして、事前に様式のA、B、C、そして参考資料をお送りしておろうかと思いますが、若干不手際がございましてCDが壊れていたという批判がございまして、大変申しわけございませんでした。お手元にありますのはその資料でございます。

 それから、きょうはパワーポイントの資料を用意しております。主にはこのパワーポイントの資料で、お手元にもその印刷したものをお配りしてありますが、全体を表示しながら説明をさせていただきたいと思っております。

 まず、全体きょうのお話の中身でございますが、事前評価のときにもいろいろ御指摘を受けましたので、その辺を含みながら説明をさせていただきたいと思っております。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとにP)の表示〕

P) まず、対象フィールドとして三河湾の流域圏流全体を選定いたしまして、また、その中でいわゆる栄養塩の物質循環の関係を考えたわけでございますが、流域・河川からインパクトとしてどういう栄養塩が生態系にきいているかということで3つの種類に絞った話、あるいは陸域から海域へのその3つのものの供給がどう変化したかという分析をした話、それから、海域の方では、海域の直接的なインパクトでございます埋め立て、それからいろいろなこの中での栄養塩の増加という問題があります。そういうものをどういうふうに海域ではレスポンスとして出ていっているのかというあたりをつかみまして、それぞれを分析いたしまして、インパクト−レスポンスの連関図を作成いたしまして、実際にはいろいろなものが考えられるわけですが、ここでは三河湾の環境劣化の過程を説明できる仮説ということで、フェーズを4つのフェーズに分けまして、そのフェーズごとに数値シミュレーションを行いまして、物質循環量を把握して貧酸素水塊というものの発生が1つの大きなキーワードになっているということで、これに着目した目標像を設定して、それに基づいて評価軸を設定しまして枠組みを提案しました。最終的にはモニタリングをどうやっていくか、そして今後研究プラットフォームというものをつくりまして、それをどう運用していくかという流れで御説明をさせていただきたいと思います。

P) まず、研究対象フィールドでございますが、事前評価のときにもお話がございましたが、流域、河川のデータが豊富なところを選ぶべきだというような御指摘もございました。そういった意味で、事前評価でもちょっとお話ししましたが、16年、17年度に矢作川、豊川流域を対象としたいろいろなデータを整理しまして、森から海のつながりというような調査をさせていただきました。そういったものでいろいろな基礎データをつかみましたので、このあたりが非常にいいだろう。そしてまた海域の方、三河湾の方では、ここにありますような赤潮の問題、貧酸素水塊の発生の問題、それから水産資源が極端に減少してきているというような話もございまして、そういった意味で、逆に言いますと水産資源の関係のデータが豊富だということがあるわけですが、そういった問題でこの三河湾流域をフィールドとして選びました。

P) 研究の実施体制でございますが、これも御指摘いただきましたが、環境研究部だけではなくていろいろな関係するところがあるだろうというようなことで、まず国総研の中では環境研究部と沿岸海洋研究部、それから行政の方では中部地方整備局、本省、そして研究機関ということで独法の土研、港空技研、それから大学の方では京都大学、あるいは水産の関係では、非常に重要なファクターでございますが、愛知県の水産試験場、ここは非常に研究も豊富にやっておりまして、そういった意味で、そういうデータだけではなくて研究のデータもいろいろ集めていらっしゃるということで、そこに入っていただいて、こういうメンバーで5回にわたりまして研究ワーキングを開きまして、徹底的に議論いたしまして成果を取りまとめております。この結果は後ほどお話ししますが、伊勢湾再生推進会議というものがございまして、また、伊勢湾では科学技術振興調整費の重点課題研究というものが取り組まれています。そういうものに生かしていきたいと思っております。

P) まず研究でございますが、まず水域の生物生態系の観点から着目すべき物質の抽出とその特性把握ということで、何が栄養塩として物質循環として関係するのか、そのための指標としてどういうものを当たっていくべきかということでいろいろ見まして、底生生物ではアサリ等の問題、海藻類ではアマモというようなもの、それをここにありますような8種類の栄養塩についていろいろ選定しまして、さらに吟味いたしました。その関係で整理をいたしまして、枯渇、過剰といった生態系に影響を及ぼす可能性があるということから、あるいは情報が非常に豊富だということで、窒素、リン、シリカという3物質に絞らせていただきました。

P) 例えば、窒素、リンの供給量の経年変化につきましては、昭和30年から5年ごとに、このように豊川、矢作川全体の窒素、リンの供給量がどう変わっていったか、それから、負荷量だけではなくて、原単位法を用いて負荷量をあれしたわけですが、こういうようなそれぞれの面源、畜産系云々というようなことで整理をさせていただきました。これを見ていただいてわかりますように、55年が非常に大きいというのは、これは徐々に大きくなっていきますが、その後、浄化対策等の流域の取り組み、あるいは海域の取り組みというのがありまして徐々に減ってきているという状況でございます。水質データはここでは用意していないのですが、50年代はアンモニア性の窒素が多い一方で、15年は硝酸性の窒素が増加しているということで、恐らく生活系の負荷の処理形態の変化による違いがあらわれているのではないかと思っております。

P) シリカの問題でございますが、実はシリカについては、この調査では絞り込んではいたのですが、非常に多岐にわたるということで、問題としては、1つは、流域においてどういう挙動になっているか、もう1つは、大きな変化があるのかどうかという2点に絞って整理をいたしました。ダムの直下流、この宇蓮ダムというのがありますが、ここでは若干減ってきているのですが、やはりその後流域の方でふえてきているということで、全体としては、シリカは変化はないというような状況である。また、経年的な問題としては、18年にはかったものは、昭和30年に上流部の方ではかったデータがございましたが、それと比較してもほとんど変化はない。あるいは河口の方でも、これは年次は違うのですが、44年と比較しても変化はないということで、大きな変化はないのではないかと思っております。ただ、シリカ欠損の可能性は非常に低いとは思いますが、海域においてはシリカと窒素の比が低下している地点が見られまして、そういった意味では、さらに継続して検討していかなければいけないと思っております。

P) 海域においての人為的な変化、直接的な変化は、先ほど言いましたような埋め立ての変化でございます。これは豊川の河口でございますが、43年、57年、13年ということで埋め立てがふえてきている。それと並行して干潟・浅場というのが減少しているという状況でございます。

P) では、実際に三河湾という海域で水質、ハビタット、赤潮の発生というのが、先ほど言いましたように5年ごとに分析していってどのように変わってきているかということでございます。まず1つ、左側にインパクト、右側にレスポンスということで書いておりまして、これがおのおのグラフのどういう状況かという話でございまして、これは流入負荷の増加、流入負荷の状況をずっと見ているわけでございます。ここにありますように、COD負荷量、それから窒素、リンというような形になっておりまして、これが大体1960年代ごろにふえてきているという状況です。

 また、同じ時期に干潟の面積が減少してきているというような形で、これが干潟の面積、埋め立ての面積がこの青いところですが、この赤字のように減ってきている、大体同時期に減ってきているということがありまして、透明度の低下というようなことにつながってきている。それから、ちょっと後先になりますが、埋め立ての増加というのが上がってくるところに干潟の面積が減収している。それから、透明度の低下の問題は、先ほど言いましたように関連はするのですが、レスポンスであったものが今度はインパクトになって、海域の方では藻場の激減というものにつながっていってしまっているというような話。それから、先ほど言いましたように干潟が激減しているというレスポンスなのですが、逆にそのレスポンスが、一番下のグラフでございますが、赤潮の発生という値に関連しているということで、これは実は10年後ぐらいにおくれて出てきているという状況がおわかりいただけるかと思いますが、こういうような状況で、干潟の減少が赤潮の発生、10年というタイム差はあるのですが、そういう形でインパクト−レスポンスという形になってしまっている。

P) また、生態系といいますか、実はパワーポイントの資料には抜けておりまして、参考資料の方にはつけておりますが、水産資源の増減の問題、水産資源の動向が非常にインパクトの問題と関連づけております。つまり、タコ類の増減というのが透明度の問題と非常に関連している。文献でもありますが、こういったもので水産資源にもあらわれておりまして、これはタコ類の増減の状況でございますが、ほぼ同じ時期、1955〜60年ごろにかけてほぼ同じ時期に減少してきているというのがおわかりいただけると思います。

 また、インパクトとして干潟の増減という問題で見れば、ハマグリが非常に干潟を必要とします。そういった意味で、これも文献もございますが、ハマグリの減少という、この後はほとんどとれていないわけでございますが、このあたりから減少の傾向がほぼ同時期に出てきている。そしてまた、底層の貧酸素化の問題、これはここで初めて出ているわけでございますが、貧酸素化が発生しているという状況でございます。これも1970年ごろから出てきているわけでございまして、これからちょうどほぼ同じ時期にアカガイあるいはナマコ類、そして先ほど申しましたアサリといった指標の減少につながるということが如実にあらわれているという状況でございます。

P) それらを模式的にポンチ絵にかいたものがこの図でございまして、11ページでございますが、この水産資源につきましてはただ線を引いただけになっておりまして、ほぼ同時期に起こっているということをお示ししたかったわけでございます。それから、こういったそれぞれのファクターがそれぞれに連関していっている、そして先ほど言いましたように、干潟の減少や藻場の減少といったものが赤潮とか貧酸素水塊といったものに連動して発生しているということです。実はこのグラフには、先ほどイメージ図と申しましたが、漁協等へのヒアリング等も含めましてやらせていただいているという状況です。

P) その結果、インパクト−レスポンスとしては、先ほど言いましたように流入負荷の増加の問題、あるいはこれに付随して海域では富栄養化、あるいは透明度の低下、赤潮の発生、そして新生堆積物がふえてくることによって貧酸素水塊が発生してしまうという仕組みが出て、それが水産資源の減少につながっているという話。それからもう1つ、沿岸部ではほぼ時を同じくしまして干潟が減少した、あるいは藻場が減少したということによって、これらが直接二枚貝の減少、浄化機能の低下ということに結びついて、赤潮の発生あるいはこういう形につながってきて、水産資源の減少に結びついてしまったという話でございます。

P) そこで、私どもとしては4つのフェーズを考えて、先ほど申しましたように仮説を立てました。つまりフェーズ1というのは65年まで、フェーズ2というのは65〜70年、フェーズ3が70〜75年、フェーズ4が現在までという話でございまして、それぞれ流入負荷の問題、干潟・浅場の面積の問題、赤潮・貧酸素水塊の発生の問題ということで整理いたしましたが、その中で、先ほど申しましたように流入負荷の増大、あるいは干潟・浅場・藻場の減少、そしてDOの消費量の増加というものがそれぞれお互いに関連し合って、さらに貧酸素水塊の発生あるいは赤潮の頻発という負のスパイラルのような形になってきているということでございます。

P) そのときに、先ほど言いましたように数値シミュレーションということで、これは新しいものは干潟の浄化機能の部分が新しく入っております。底泥からの溶出の問題も少し入れておりますが、そういったものでシミュレーションをかけております。

P) その結果、先ほど申しましたようにフェーズ2の昭和30年代は貧酸素水塊の発生がほとんどないという状況で、この辺は流入負荷、それから内部生産も非常に低いという状況でしたが、それが40年代に入りまして流入負荷が増加して内部生産もふえてきた。そういうことで、干潟・藻場は少ないのですが貧酸素水塊の発生が少しずつ見られてきたという中で、フェーズ3では貧酸素水塊が非常にふえてきた。そして、そのときは流入負荷が非常に多くなってきた。それから、内部生産も高くなってきた。そういったものが現状では並行しているという状況で、これをどう打破していくかということが1つ重要なわけでございます。

P) そして、ここでは貧酸素水塊の発生というのが1つの大きな目標といいますか、大きなキーワードだということで、これを先ほど言いました負のスパイラルを右のように正のスパイラルに変えるように、少しずつでも減少したり増大を緩和するという形にしていく。そして、先ほど申しましたが、貧酸素水塊発生そのものではないのですが、DOの確保という問題を底生生物が生きられる指標ということで2mg/lという目標を定めまして、こういったものをどうつくっていくかという検討をいたしました。検討は非常に広範にわたるものですから、今回は、今まで陸域を対象とした流入負荷の削減の問題と沿岸海域を対象とした干潟・浅場の造成の問題というのが個別にいろいろ検討されてきたわけですが、それらがどうも先ほど言いましたように貧酸素水塊の低減という意味で、有機体窒素の沈降量が減少していくためには、必ずしも同じ速度ではないのですが、同じような座標軸でそれぞれの除去の効果というものが考えられるという評価ができました。

P) そういった意味で、物質循環管理に向けた順応的管理としまして、最終的には、施策効果を把握するためのモニタリング、機構解明のためのモニタリングというものを提案いたしました。

P) 1つは、施策効果の把握のためのモニタリングということで、施策効果の把握ということで河川水質、生物、それから全体効果の把握ということで、赤潮の発生状況あるいは貧酸素水塊の発生状況といったものを、できるだけ回数を少なくできるように整理をいたしました。

P) また、機構解明のモニタリングということで、ここに重要度、理解度というものが書いてありますが、それぞれに応じてこういうふうにA、B、C、D、Eというランクを分けまして、それぞれ測定項目を整理させていただきました。

P) さらに、アウトプットとしては、研究プラットフォームというのを提案しております。これは、先ほど言いましたように、正のスパイラルに直していくためにどうすべきかというあたりを、モニタリングというのをしっかりとやっていかなくてはいけない、こういう話。それから、研究面あるいは施策面でも整理をしていく。それと、施策面では行政組織というものも関係をしているという話、あるいは水産も関係しているというものを、1つは、先ほど言いました科学技術振興調整費で伊勢湾流域圏の自然共生型環境管理技術開発が18〜22年の予定で今進行しております。名古屋大学の辻本先生を中心に進行していますが、そういった中で「生態系サービス」という指標を入れまして、この中で整理をしていく。また、モニタリングはするのですが、流域住民、皆さんにわかっていただく、少しでも行動に移していただくということで、伊勢湾再生推進会議というものが流域住民、NPO、企業等で形づくられておりますが、そういったものに提案をしていくということを考えております。

P) そういった意味で、成果としましては、先ほど言いましたいろいろなプラットフォームというものを具体的に中部地整の方で伊勢湾再生会議のもとで技術検討を行う包括的な場というものを考えていらっしゃいます。そういったものに取り組んでいただくという話。あるいは、マニュアルをつくる、あるいは、先ほど言いました伊勢湾の研究の方にいろいろ提案をしていくということ。それから、ことしの10月には水産工学会でシンポジウムもやるというところにも積極的に出していくというような発信をしていきたいと思っております。

【主査】 それでは、今の御報告に対して御意見、コメント等をいただきたいと思います。それと、委員の方には申しわけないのですけれども、時間が余りありませんので、質疑応答時に、自分がしゃべっていないときに評価シートをぜひ御記入いただければありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。どなたからでも結構でございますが、いかがでございましょうか。

【委員】 一番この辺の知識がなさそうな私から質問させていただきます。16枚目を見せていただいていいですか。

 研究プラットフォームをつくるという後半の話はわかりましたけれども、具体的な政策に関して言えば、川からの汚染が問題だ、それから干潟が減少しているのが問題だと、指摘されました。そうすると、川からの汚染物質を減らすのと、干潟をもとに戻しなさいという、昔に戻らなければこの問題を解決できないというのが、この答えなのかなというふうに聞こえました。負のスパイラルの、どこかの矢印を切るような、例えば強制的に酸素を送り込むとか、何か別の生物を育てて、ネガティブなフィードバックをかけられるような、何かそういう要素を取り込む。あるいは、それらは検討したんだけれども、やっぱり昔に戻るのが一番安上がりで効果的であると最後に行き着くのはいいのかもしれないのですけれども、何かもう少し技術的にチャレンジできるところがあった方がおもしろいような気がしたのだけれども、その辺はどうなっているのでしょうか。

【国総研】 必ずしも昔に戻るということだけをこの施策のフレームに据えたわけではないというのが我々の主張でございます。確かにここで貧酸素を起こす直接の原因である赤潮のプランクトンが沈む量は、干潟をつくる、あるいは負荷を減らすことで減るというのを出しました。一方で、ではどこまで戻すべきかという議論があります。それで、必ずしも1950年代まで赤潮の発生状況を戻す必要があるのだろうかという議論がありました。というのは、例えば豊かな水産資源を確保するという観点からは、ある程度栄養塩があってもいいのではないか、必ずしも高度成長期前まで戻す必要はないのではないかという議論があります。1番のポイントは、ある程度の負荷が来ていても、それをちゃんと生物が消費して、より高次の生物にちゃんと変換できるようなシステムがあれば、必ずしも昔の状態まで完璧に戻す必要はないのではないか。そうすると、どこまで戻したら比較的豊かな生物が戻ってくるかというあんばいを、例えば負荷の削減にどれくらい持たせ、それから干潟等の場の改変にどこまで持たせるか、そういう議論を随分いたしましたので、その辺をこの研究プラットフォームの中でより具体的に、必ずしも昔に100%戻すのではなくて、何割ぐらい戻したら結構いい水産生物を享受できるのか、そういう議論をしていこうというのがこのプラットフォームの1つの趣旨でございます。

【委員】 三河湾に適した新しい魚とか貝はないのですか。

【国総研】 そういう意味では、三河湾全体をやはりアサリとかそういうものを再生していきたいという意識が非常に皆さん強うございますので、それを再生していくというような形で考えております。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

【委員】 大変細かな御研究をされて、興味深いものができているなと思います。最終的に干潟を回復させるというところが重要だというところだと思うのですが、そうすると、やはり河川からのウォッシュロードとか、細かい砂の流出についての検討があってしかるべきだと思うのですが、そういうお話がありませんでした。河川からの栄養塩類だけではなくて、土砂の流出についてのことについて含められなかったということについて御説明願いたいと思います。

【国総研】 少しチャレンジいたしました。少しというのは、まず砂がどれくらい海に出ていてどれくらい減ってしまったか、これを大ざっぱにつかみました。それから、もっと細かい、泥がどれくらい海に出ていてこれもやはりダム等の影響で絶対量が減っていると思うのです。どれくらい減るかということは調べました。ただ、少し長年の平均的な出方の減りぐあいが、河口部の例えば干潟の形成だとか、もっと言うと底質の変化みたいなものにどういう影響を与えるか、そこまではやはりやり切れませんでした。しかし、それは大きな問題であるし、それから、それが洪水のフラッシュの変化みたいなものと相まって大分重要な役割を果たしているのではないかという議論は非常にありましたので、そのプラットフォームでは、ここで言うEのところに河口部での土砂堆積状況、ある程度マクロにはつかんだけれども、やはり1出水でどれくらい出るかとか、そういう押し出し方とため方がどういうふうに昔と変わったか、それが物質の動態だとか場の形成とも絡めて生態系にどういう影響を与えるかという核をもうちょっとしっかりやらないといけないというので、どちらかというと、こういう課題を少し明確にしてプラットフォームに残したというのが、この研究の1つの成果といいましょうか、仕切りでございます。

【委員】 よくわかりました。上流の土砂管理の問題とリンクしているところがあると思いますので、またそういった方向の研究もぜひ進めていっていただきたいと思います。

【委員】 ちょうど今、環境省の閉鎖性水域の総量規制の関連で、東京湾をターゲットにほぼ同じようなシナリオを、どこかで聞いたなと思いながらうかがっていたのですけれども、実施されている内容自体は学術的にも意味があることであったり、メカニズムがわかってということなのですけれども、やはり国総研で実施していることを考えると、例えばCSOに対してどう対策を打つのかだとか、あるいは河川管理上で先ほどの土砂がありますけれども、それがどうなるのかというところをもうちょっと明確に出していただかないと、やはり環境省で実施しているモニタリングやモデリングだとか、あるいはそこでの生態系モデルなどは結局同じなのではないかと誤解を受けると思われます。干潟の管理が非常に重要なので、そのための特殊なモデルを作成して、そこを評価できるようなものができたとか、あるいは河川から入ってくる汚濁負荷量みたいなものをL−Q式を入れて新しく試みた、それによって、そこをさらにモニタリングを強化しないと、より精度の高い三河湾というか内湾の水質評価みたいなものは難しいのだとか、あるいは構造物ができたときの評価もできるようになったというような、何かそこら辺の味つけを紹介いただくとよいかと思いました。実施されておられるのかもわからないのだけれども、話を聞いていると見えてこなかったので、ぜひ成果としてはお持ちだと思うので、公表されるときにはそういったところを出していただければと思います。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

【委員】 数値シミュレーションについてちょっと興味があるのでお聞きしたいと思うのですけれども、この数値シミュレーションの研究の中での位置づけといいますか、それについてお聞きしたいと思うのですが、これはフェーズ1からフェーズ4までそこの水域でのいろいろな現象の再現なりを試みたのだと思うのですけれども、これが研究の中でどれぐらいの役割を果たすのかといいますか、例えば今後何か政策をしたときにその政策が効果を発揮するのか発揮しないのかというようなことにも使えるのかどうかですね。そんなふうなこの数値シミュレーションの精度といいますか、あるいはこれはこの研究の中ではまだ参考程度に使うような段階のものであるのか、その辺につきましてお聞きしたいと思います。それと、2年間の間でこのシミュレーションにどれぐらい力を入れてやられたのか。予算面ですとか、あるいはマンパワーをどれぐらい導入したかとか、時間をどれだけかけたとか、これを伊勢湾でも研究展開する場合に利用しようとしているのかどうかとか、そのあたりについてお聞きしたいと思います。

【国総研】 まず、研究資源については、国総研の少し前のプロジェクトで、総合研究開発プロジェクトの中で、自然共生型流域圏都市再生というプロジェクトをやりました。そこで東京湾とその流域を相手に流域全体の再生をどうするかという中で、ある程度こういうコンベンショナルな生態系のモデルをつくりました。今回その資源をそのまま投入いたしまして、それに加えて先ほどの詳細な流域からの流入負荷の変化みたいなものを組み合わせてやったというのが1点でございます。

 それにもう1つ、干潟・浅場等の浄化、あるいはシンクあるいは無機化ポンプという機能について、これは先ほどのお見せしたワーキングのメンバーの御意見をいただきながら、現場である程度はかられているような事実に基づいて、かなり実際に合った数値を入れて再現しようということをやりました。それが2点目のポイントでございます。

 ただ、全体の位置づけとしては、ここにありますように、基本的にはこういうようなストーリーで物を考えていって大丈夫か。つまり、貧酸素を減らすということをまず1つの基軸にしながら、それに全然質の違う陸域の施策、海域の施策、全然質の違う施策を全部投入するという共通の土俵において物を語っていいだろうかということを確認したかったという位置づけです。そこで、このモデル自体は干潟・浅場のこの辺の部分の工夫は別にしても、基本的には非常にコンベンショナルなモデルです。流動があって普通の低次生態系のモデルを使ったということです。それで、こういうストーリーにおおむね合うような数字が確認できるかどうかをやってみて、まあそこそこよかろうという確認をいたしました。そこそこよかろうということなので、ではこのストーリーをもうちょっとちゃんと政策にするために何をすべきか、あるいは、この仮説を科学的に足りないところはどこかという視点で漠然としたモニタリングをやるのではなくて、もうちょっと絞ってやりましょうというのが、あとの研究プラットフォームです。ですから、どちらかというと施策のプライオリティを決める確認の道具のためにこれを使ったという位置づけです。ですから、恐らく何が欠けているか。例えば底泥の過程が欠けているとか、もっと言えば海域からの交換がまだよくわからないとか、陸域はL−Qみたいなものをトライはしてみましたけれども、まだまだ情報が足りない。逆にこういうコンベンショナルなモデルを使ったことで、全体の施策をこれから詰めていく上で何が足りないかがはっきりしましたので、それを研究プラットフォームに移しかえたというのが一番のポイントで、そういう位置づけの中でこのモデルを使ったということでございます。

【委員】 わかりました。ありがとうございました。

【主査】 ほかに。

【委員】 スライドの19番と20番のところが、今回の研究開発目的の1つである物質循環だとか水域全体を見たときのモニタリング調査のあるべきものだということを再整理されたものだと思うのですが、図の方で言うと、流域河川からの物質供給量として、出水時における河川からの供給量であるとかというのが出ているにもかかわらず、この表の一番上のところには河川の水質は平水時と、相変わらず従来型の河川水質の調査をやっておけばいいというのはちょっとアンバランスのような気がしました。そうではなくて、出水時のものが重要であれば、それをどういう形でモニタリングすればいいかという提言がセットで出てこないと何か不整合のような感じが今感じたのですけれども、いかがでしょう。

【国総研】 済みません。今お示ししたものは、施策効果把握のために定常的にやるという意味でここに入れている。そして、その次の20ページの方でございますが、機構解明のモニタリングという中に、Bの中に出水時における供給量、これは物質供給量ということでございますが、先ほど言いましたように、水量とかそういう出水時におけるものを含めているというような形で考えております。

【主査】 よろしいですかね。

 繰り返しになると思うのですけれども、拝見していまして、ようやっと仮説のリストアップができてきているのかな、そういう意味での研究を進めるチームといいますか、ネットワークができているのかなという気がいたしまして、その中でこれから本当にモニタリングとか施策提案とかをするためには、○○先生もおっしゃいましたけれども、もうちょっと突っ込んだ、メカニズムまで踏み込むようなものがちょっと欠けているのかなという気がしたのです。そういう意味でいくと、これは2カ年の計画でよくやっておられるとは思うのですけれども、今後どのような方向性での発展とか展開を考えておられるかということに関してもしお考えがありましたら、その辺ぜひ伺わせていただければと思うのですが。

【国総研】 3つ大きく考えております。

 1つは、当然この研究をやりました中に、ここにありますような行政組織としての中部地整を中心に各事務所も入っております。そういった中で、先ほど言いました施策を実証実験だけではなくて施策にどんどん移していくというようなものとして積極的にやっていただくということでやっております。

 もう1つは、先ほども言いましたように、伊勢湾の流域圏の問題について研究開発をやっております。これは22年までということで、あと3年ございます。そういった中に、「生態系サービス」というのは少し指標として出ているわけですが、それだけではなくて、この成果、我々としても一定の成果を随時この研究の中に反映させていきたいと思っております。

 もう1つは、伊勢湾再生推進会議というのが流域全体での行動につながる話でございますので、実は、先ほど申しました2番のものを、つまりこれは推進会議の中に今年度から設けようということで今進んでおりますが、こういう委員会をつくる中に私どもも参加して、その中でいろいろなものを申し上げていくというようなことをしていきたいと思っております。

【主査】 ありがとうございました。

 ほかにもしなければ、評価シートを回収していただいて取りまとめをそろそろすべき時間かなと思うのですが、もう記入は終わっておられますでしょうか。入力等にちょっと時間がかかると思いますので、その間何か御意見等ございましたら承りたいですが。

【委員】 今いろいろな先生方がおっしゃったように、負の原因追求というようなことで言えばそうなのでしょうけれども、逆に、正のスパイラルを証明できるような実験場といいますか現場というのは今のところ見当たらないのですか。つまり、これを証明するために、今度は逆の、正のスパイラルになるような場をつくっていくというのが先ほどのあれにありましたように、10年かかって負のスパイラルが進んでいるものを、今度は逆に10年かかって正のスパイラルにしようと思ったら、要は10年後にならないとわからないということになると、現実に今まで過去こういう土砂の流出をとめるような工事だとかいろいろやっておられますから、そういうところを実験場として調べてみるというようなこともあるのかなという気はしますけれども、そういうところはまだないのでしょうか。それとも、そういう方向には今向いていないということなのでしょうか。

【国総研】 閉鎖性水域、非常に同じような問題を抱えております。そういった意味で、小さな湾につきましては相当いろいろな取り組みで成果が出てきている。正のスパイラルまでなるかどうかわかりませんが、そういうようなものに近くなってきているという事例は少しずつ出てきているのかなという感じで考えております。

【主査】 ありがとうございました。

 欠席されている委員からのコメントは無いですね。忘れていまして済みませんでした。

 意見を取りまとめまして、皆さん、明らかなように「概ね適切であった」という評価をいただいた。実施方法、体制等の妥当性、目標達成度についてもそうであったということでございますので、それを機軸に取りまとめをさせていただきたいと思います。コメントを結構いただいておりますので、これはまだ読んでおりませんけれども、これにつきましても取りまとめシートの方にぜひ反映していただきたいと思います。今こういうふうにしますということはちょっと申し上げられませんけれども、その辺も含めて、おおむね目標を達成できたということで取りまとめさせていただくということでよろしゅうございますよね。ありがとうございました。では、この件についてはこれで進めさせていただきたいと思います。

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〈事後評価Aヒューマンエラー抑制の観点から見た安全な道路・沿道環境のあり方に関する研究

【主査】 それでは、事後評価の2番目でございますけれども、「ヒューマンエラー抑制の観点から見た安全な道路・沿道環境のあり方に関する研究」でございます。お願いいたします。

【国総研】 プロジェクトリーダーをやっております、道路空間高度化研究室の室長をやっております○○でございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、パワーポイントを用いて説明させていただきます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとにP)の表示〕

P) まず、研究の背景から説明させていただきます。

 なぜこのような研究を実施するかに至ったかですけれども、これまでの交通安全対策事業では、対策を実施したにもかかわらず効果が十分に得られなかった箇所も存在。これまでの交通安全対策事業を少し補足して説明させていただきますと、幹線道路では区間を幾つかに分けまして、事故の多いところから優先的に対策をやっております。例えば都市部の交差点とか地方部の同じ幹線道路でも、見通しのいい、沿道に建物のないようなところですと事故の起こり方が違いますので、そういう箇所を選んでここの3,196がその箇所なのですけれども、選んでやっております。大体5%の区間で死傷事故が25%とか、19%の区間で67%集中するといったぐあいで、そういうふうに場所を限ってやってございます。場所はそういうところを選ぶのですけれども、その対策をどのように考えるかといいますと、実際現場で携わっている方の経験則に従って、いろいろな道路構造に起因する事故の要因と対策を考えるということを実施してございます。

 そのようにしてこの対策箇所、例えばこれですと平成8〜14年で実施してきているのですけれども、2割の箇所でどうしてもそういう効果が上がらない、全体では3割事故は減っているのですけれども、2割の箇所でどうしても経験則では効果が上がらない箇所が出てきております、クローズアップされてきております。そのときに、何か新たな観点、経験則も大事なのですけれども、科学的な分析に基づく対策が立案できないかというのが今回の背景でございます。

P) 我々が着目いたしましたのが、ヒューマンエラーというものに着目してございまして、人間工学においては事故の原因となる作業者等の操作になるのですけれども、交通事故統計データでは、運転者のヒューマンエラーとして認知ミス、判断ミス、操作ミスを挙げているのですけれども、それらに起因するものが95%事故はかかわっている。このヒューマンエラーを糸口にいたしまして、ヒューマンエラーから、事故を起こす道路構造要因、誘発要因、それで事故の要因、対策を導き出すということを本研究では実施いたしました。

P) 大きく目的と内容ですけれども、ヒューマンエラーに着目して対策等を提案するのですけれども、大きく2つございまして、実走行実験による事故要因の把握手法とドライビングシミュレーターによる方法でございます。実走行実験は、実際に事故が起こっている箇所で車を走らせまして、被験者がアイマークレコーダーとか、あと加速度、速度等を測定して、どういうふうなヒューマンエラーを起こすかを調べる。もう1つは、ドライビングシミュレーターを用いましてヒューマンエラーを再現することと、対策を実際施して、その対策の効果をどのようにドライビングシミュレーターで評価できるかについて検討しております。

P) これは研究の流れの体制ですけれども、簡単に申しますと、私ども道路空間高度化研究室と都市施設研究室でそれぞれ実走行実験とドライビングシミュレーターを担当して実施しております。

P) 実際対象といたしました事故は、事故データの分析に基づきまして、出会い頭の事故と右折時の事故に絞ってございます。これは死傷・死亡ともに多くなっている事故に絞って検討を進めております。これは事前評価のときに、交通管理者と連携してデータを収集する等、関係機関との連携を図るようにという御指導をいただいておりましたので、こういうデータ等につきましては交通事故総合分析センター(ITARDA)からデータをいただいて検討を進めております。

P) 続きまして、実際に走行実験をした箇所ですけれども、全部で9カ所ございまして、ここの9カ所について17、18、19の3カ年で実施しております。すべての箇所について実施してございます。主に最初はつくば市近辺で実施しておりまして、それはつくば市に先ほどの交通事故総合分析センター、研究所があるのですけれども、事故が発生した直後に事故例調査という非常に詳細なデータを年間大体300事例ずつ集めておりまして、それを活用させていただくということで、まずつくば市の周辺から始めてございます。

 きょう特に御紹介いたしますのは、4番のところで、交差点の右折時の事故について御紹介いたします。ここを選びました理由は、これもやはり事前評価時のときに、自動車同士ではなく自動車と歩行者、自転車との事故についても取り上げるよう御指導をいただきましたので、特にここについて御紹介させていただきます。あと、DSの再現性については1番の箇所のケースを用いてございます。

P) 実走行実験によって要因を把握しようということで、先ほど申しました認知の状況、判断の状況、操作の状況について、それぞれ視線移動のデータとインタビューによる聞き取り、挙動のデータ等によって整理してございます。例えば、運転者の注視点のデータでありますとか、ドライバーがどのように判断した、あと実際どのように車両が挙動しているか等について調べることによって、それぞれ認知の状況、判断の状況、操作の状況について調べてございます。

P) 先ほどの4番のケースですけれども、T字路で進入側が2車線の右折で出側が3車線という、右折の2車線から流出側3車線になる場所でございます。事故の概要としましては、A車両が右折のときにどうしても併走いたしますのでそちらに気をとられて、自転車等について注意が散漫になって衝突するということを考えております。

P) 従来の方法でやるとどうなるかですけれども、従来は経験則による方法とかですと、対策の事例集とかの手順に従って、先ほどの交差点、信号あり三叉路とか事故類型右折時とか言いますと、このような対策がばーっと出てくる。実際はここで経験によって現場の方が、経験が何より大事ですので絞り込みはするのですけれども、なかなか絞り込むときに難しい。あと、絞り込んで、例えば路面標示とかが決まった場合に、具体にどこの位置に標示すればいいかとかについてなかなか検討が難しかったりする。あと、ここに載っていない新たな対策を実施しようとした場合に、その裏づけとなるデータがないといった問題がございます。

P) 実際どういうふうにやるかといいますと、このようにヒューマンエラーの項目を洗い出すということで、横に関係者と時系列的にずっと追っかけまして、まずヒューマンエラーを起しそうなものについて洗い出しをいたします。

P) これが右折時の併走車との錯綜状況を事前に調べたものでございますけれども、@からBとかCの車線に入るものとか、逆にAからA、Bに入ってくるようなものを比べますと、このようにBのところでふくそうするというのを、これは実際現地でビデオ等を撮りまして車の動きを確認いたしまして、錯綜してヒューマンエラーが発生しやすいという、まずそういう予想をいたします。

P) 実際、車を走らせまして、これが被験の車でありまして、これが併走する車になるのですけれども、車には先ほどのアイマークレコーダーとか車中のCCDカメラ、それとか加速度、速度とかを測定いたしましたり、あと運転者に後にアンケート等をとります。例えばこの場合ですと、ちょうどこちらの写真が併走する車に気をとられていて、その後こっちに抜けたときに真っすぐの方、走行先の方を向いてしまい歩行者を見落とすといったようなヒューマンエラーが実際に確認されました。

P) 次の例ですと、やはり同じようにですけれども、併走している場合にちょうどこの車が陰になっておりまして、車を見ていて、この陰に歩行者がいるのですけれども、こちらの車は行けると判断して行くのですけれども、それにつられて行ったところ歩行者があらわれて事故の可能性があるというようなことが起こっております。具体的に事故の発生が予想されます。

P) このようにいたしますと、先ほどの環境要因からヒューマンエラーが決まって、対策についてより具体的に示すことができる、絞り込みができますのと、例えば路面標示ですとどこを標示するというのがはっきりいたしますのと、あと新たに自発光方式とかここ特有の対策についても導き出すことができます。

P) まとめますと、実走行実験による事故要因の把握につきましては一通り手法として提案できるのではないか。対策効果が上がっていない個別の箇所に実際適用するということを今後進めていきたいと考えております。

P) 引き続きまして、ドライビングシミュレーターによる再現性の確認実験で、場所は先ほどのbPのところで、同じ被験者を用いまして、これは周りをドライビングシミュレーターで再現いたしておりますけれども、慶応大学の○○先生に御指導いただいて実施しておりまして、実際、加速度とか曲がるときの横Gとかも経験できるようになっております。それぞれ認知、判断、操作について、アイマークレコーダーとか調査車両の計測装置等によって再現することといたしております。

P) これがまとめたものでございますが、認知、判断、操作について、それぞれ、結論から言いますとおおむね再現性は確保されたと考えております。

P) 一つ一つについて説明させていただきますと、まず認知に関する指標で、対向車の注視割合ということで、それぞれ実走とDSなのですけれども、対向車を見ている割合をパーセンテージでそれぞれ落としまして、相関係数0.72ということで、ある程度は再現できたと考えてございます。

P) 次に、判断に関する指標としては、右折の可否を判断するギャップ長を求めまして、ギャップ長の少しばらつきがございますので、中央値で比較いたしまして、それぞれ棄却のギャップ長、右折のギャップ長ともほぼ一致するということで、これについてもある程度の再現性を確認できたと判断しております。

P) 操作に関しては、速度の変動を比べておりまして、このように交差点の前と交差点に入ったところの速度の比較をしておりまして、平均値で相関係数0.88、0.76と、交差点進入前と交差点内で得られておりますので、これについてもある程度の再現性が確認できたと評価してございます。

P) 次に、DSの対策効果の事前検証ということで、これは対策をした場合にDSで判断できるかについて評価したもので、普通の、比較的おとなし目の対策と派手目の対策、それとしない場合について比較してございます。

P) それぞれ比較の仕方ですけれども、認知、判断については実際アンケートを実施して、対策に気がついたとか、対策によって運転操作を変化させようと思ったか、それと、操作については、車両の計測装置で取得しました走行位置、速度、加速度などで車両挙動データが変化したかで評価しております。

P) その結果、認知については、8人を対象に実施したのですけれども、「対策に気がついたか」というのは、パターンの種類にかかわらず8人全員が「対策に気がついた」と回答しております。「対策によって、運転を変化させようと思ったか」は、カラー化ですと5人なのですけれども、ゼブラ化まで対策すると8人全員が「注意するようになった」と回答してございます。「対策によって、運転が変化したか」で、交差点手前の減速開始位置で整理したのですけれども、対策なしとカラー化のみとゼブラ化で、対策をした場合、交差点からの距離が大きくなっておりまして、さらに標準偏差をとりますと、ゼブラ化の方のぶれが小さくなるということで、カラー化のみの場合と比較してゼブラ化の方がより効果が得られていると判断いたしました。

P) DSにつきましても、以上で科学的データに基づく対策検討手法として提案できるのではないか。ただ、個別の事故対策箇所において実際に効果検証をすることが必要であると考えております。

P) これでまとめになりますけれども、成果の目標と活用方針のところですが、一通り評価手法としては確立できたのではないかと考えているのですけれども、実際に事故が多発している箇所でまだやっておりませんのと、データ数がまだ十分とは言いがたい、研究としては十分とは言いがたいところもございますので、それぞれおおむね達成というふうな自己評価にさせていただいております。

P) 最後に、ちょっとこれは簡単ですけれども、研究実施方法、体制につきましても道路空間高度化研究室と都市施設研究室、慶応大学の○○先生に御指導いただきまして実施しております。連携を進めております。

 以上でございます。

【主査】 ありがとうございました。

 それでは、今の御報告に対して御意見、コメントをいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

【委員】 全然専門じゃないのですけれども質問させていただきますと、事前評価時の資料等には、実験対象として夜間、昼間とか高齢、非高齢とか、そういう対象が書いてあるのですけれども、今の御発表では余りわからなかったのですが、例えば路面のカラー化にしましても、夜と昼と効果が違うと思いますし、高齢者の認識の度合いも違うと思うのです。その辺がされたのか、されていないとしたらどうしてできなかったのかというようなことをお聞きしたいと思います。

 それと、ヒューマンエラーの原因が、素人考えですけれども、道路構造というものが主なものなのか、実際に起こっている事故というのは、例えば近年ですと携帯電話とかカーナビとか、そういうものに気をとられて起こっている、車の中の、あるいは運転者自身の認知、判断、操作を妨げるようないろいろな要因がありますよね。そういったものなのか。あるいは、居眠り運転なんていうのもそうだと思うのですけれども、居眠り運転を起こさせないためにパーキングエリアをつくるとか、あるいは渋滞しそうなところでは休憩所をたくさん設置するとか、そういったもうちょっと大きな視点での道路の整備のあり方というのもあるのではないかなと思うのです。その辺、ヒューマンエラーというもののとらえ方と、それと実際にやられた研究の中身につきまして、今申し上げたようなところが気になりましたので、何かコメントがありましたらお願いしたいと思います。

【国総研】 質問ありがとうございます。

 まず、1つ目の、夜間と高齢者の方についてお答えいたします。夜間については行っておりません。そこまで実態としてようやらなかったというのが実態でございます。高齢者につきましては、高齢者も必ず被験者に入れるようにはいたしておりまして、例えば18年度、19年度は20名ずつ被験者に参加いただいたを入れたのですが、18年ですとタクシードライバーの方が5名で、普通の一般の方が10名、65歳以上の方が5名、19年度につきましても65歳以上の方を8名入れて比較の検討はしてございます。ただ、ちょっとお示ししなかったのですけれども、車の認証回数とか、車を注視する回数とかを比較しましてそれほど差異が出なかったのと、あとデータ数が、例えば先ほどのケース4で右折する場合も自然に走らせておりますもので、併走車がある場合とない場合とかに幾つかにグループ分けされてしまって、一つ一つの数が2とか3とか少なくなってしまって、本当に有意な差があるかないかもちゃんと評価し切れなかったというのが実態でございます。

 もう1点、ヒューマンエラーのパーセンテージですけれども、警察庁の方であります交通事故統計データを用いて私どもで解析いたしましたら、95%がヒューマンエラーなのですが、そのうち道路構造に起因するものは8%程度と考えてございます。先生が先ほどおっしゃいました、もっと幅広く、携帯とかを使っていて、道路構造というよりは運転者の不注意に起因していて、それを道路構造で対策するというのもおっしゃるとおりなのですが、そこまではまだ考えが及んでおりません。今回のヒューマンエラーでは、そこまでは検討しておりませんよう見ておりません。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

【委員】 専門ではないのですけれども、最終的に今回の目標は、事故が起きるようなときの沿道の環境要因を把握する手法が提案されていて、ドライビングシミュレーションを使ったら、どんな対策をするとどう効果があるかというのを提案されたという2つだと認識しました。スライドの10番でヒューマンエラーチェック項目の洗い出し、こういった一覧表というのですか、これは自動的にできそうになくて、わかった人にしか作れなさそうな絵なのですが、ここで言われている沿道環境要因をうまく抽出できる手法というのはどういう手法を言われておられるのかというのが質問の1つ。

 2つ目の質問は、ドライビングシミュレーション自身を国総研でおつくりになったのではなくて、慶応大学でつくられたものがあって、それを活用されたと。しかしながら、それが必ずしも対策に使えるかどうかがわからないので、対策に使えるかどうかを検証したというところが今回の成果として理解すればよろしいのでしょうか。

【国総研】 まず最初の方で、これはヒューマンエラーの項目をすべて洗い出すために実施しておりまして、手法としましては実走行実験で、こういうところでヒューマンエラーが起こるのではないかというのをまず仮定いたしまして、実際走らせてみてどのように起こっているかを確認するというので、実際走るものがヒューマンエラーを特定する手法と考えております。

【委員】 実走しながら抽出する方法、手法を今回提案されて……。

【国総研】 結果をもとに……

【委員】 言いかえると、目がどう動くかだとか、同時にどういうビデオを撮っておくことによって関係づける、そういった手法を提案されていると。

【国総研】 それと、後でアンケートとかをとりまして、歩行者の方に気がつきましたかとか、どういうところで運転しにくかったですかとか。

【委員】 それが全体としての手法ということですね。

【国総研】 はい。あと、DSは、相関係数の値からはちょっとあれなのですが、実走行それをある程度は再現できているものと考えました。また、て、結構極端な対策を今回施したのですけれども、それで被験者の差が出ておりますので、対策も評価できるであろうというふうな……

【委員】 そういうことを今回検証されたと。

【国総研】 はい。あと、ドライビングシミュレーターは、おっしゃるとおり慶応大の○○先生に御指導いただいて、つくっておられるものを今回のヒューマンエラーの研究でで活用するために使わせていただいております。

【委員】 要は実走と相関性があるかどうかをチェックしたことによって、それが十分使えるものだということを検証されたというように思うのですが、スライドの20番のところで横軸、縦軸に実走と計算での速度がとってあるときに、相関性が高いから合っていると言われてしまうと何か違和感があります。やはり速度が10kmだと、実走は10kmなのになぜか20kmか30kmになっているというデータプロットは、相関性はよくても、それはシミュレーターとして問題なのかなというように認識を私なんか持ってしまうのですけれども、そこら辺はいかがなのですか。

【国総研】 例えば20ページですと、交差点の約300m前からの走行の速度の変化をあらわしたものでございまして、サンプルは10個あるのですけれども、そのうちの1つを仮に抜き出しているわけでございます。

【委員】 私が指摘したかったのは、右上の相関図です。その赤色のプロットを見ていただくと、確かにプロットですから、相関係数が高いという評価は1:1の関係にあった上で相関が高いと一番すばらしいわけですが、相関性が高いものの、実際に実走とドライビングシミュレーターでの速度が大きく違っている。例えば3倍違っていても相関性は高くなるわけで、そこら辺をどのように評価されて、今回のシミュレーターは十分であろうというように判断されたのかがちょっと疑問に思ったので、お聞きしたということです。

【国総研】 これは、実走したときの状況を、ドライビングシミュレーターで周りの景色の様子とか走っている車の様子を正確に再現はしているのですけれども、実際ちょっと差があらわれたのは、ドライビングシミュレーターの運転席に座った被験者にとってよりリアルに再現するために、100mぐらい前から実走行の対向車が来る様子を再現して、そこからは実走行と同じドライバーが運転しているのですが、そこで同じように走れていなくて、自分の感覚で走ってくださいという状況をやっておりますので、実走行時よりも少し加速が大きかったとか、少し減速が早かったとかという傾向は確かにあって、その傾向が多少あらわれているのかと思いますけれども、その前の19ページと18ページで対向車を見ている割合ですとか右折を判断する時間とかギャップ長、その辺の再現性、いろいろ多面的に判断をいたしまして、右折の場合にドライビングシミュレーターによって実走行の再現性ができると総合的に判断したというところでございます。

【委員】 そうだろうと思うのですけれども、交差点内という一番危ないところで10kmと20kmは全然違うなと直感的に思ったので御指摘申し上げました。総合的にドライビングシミュレーターで十分対策を検討できるということは検証されたということを私はわかった上で一応確認させていただきました。

【委員】 最後のスライドで、実走行実験とDSをつなげるというあれなのですけれども、結局3年間の間に実走行実験とDSというのはどこかでつなげたのですか。つなげたというのは、簡単なことを言うと、同じ場所で実走行実験をやってみて、同じ場所のDSでやるというようなことはやられたのですか。ちょっとそこが理解ができなかったのですが。

【国総研】 実走行で4番目の事例を再現しておりますが、まずその前に出会い頭の事故と右折時の事故の分析が重要だということを示させていただいておりますが、それを実走行と……。

【国総研】 1番の事例については、DSで再現できるかはここを使ってございます。これがbPの先ほどの交差点でやっておりまして、同じ場所を再現して、被験者も同じ人を使って再現性があるかを確認しております。その1カ所でございます。

【委員】 わかりました。

【主査】 ほかにいかがですか。

【委員】 対策としてここに幾つかあったと思うのですけれども、交差点での事故防止対策について、効果という意味の検証というのは余り……、事故が起きるヒューマンエラーの分析はよくされているし、成果も上がっていると思うのですけれども、今ここに挙げています5つの対策というのは、1番の事例ですか、車の陰に隠れていて人が見えないで、発見したときにはもう遅いという状況だと思うのですけれども、それに対してさほど有効な対策ではないと、私はそういう気がするのです。見えないところを見えるようにする。国総研さんでもいろいろ研究されているITSの仕組みだとか、そういったようなものを使った上での対策みたいなものがこれから必要なのではないかな、対策に対するシミュレーションもしくは実走実験というのが必要ではないかなと思うのですけれども、そういう方向をやられたらどうかなと思うのですけれども、計画はどうかなと思って、お聞きしたいのですが。

【国総研】 まず、ITSまではまだ考えておりません。で、今御指摘のとおり、ここでは、ヒューマンエラーをもとに具体的な対策を提案しているのですけれども、これもまだ実際やった箇所はございません。まず、実際、事故がたくさん起こって、2割の箇所で効果が上がっていなかったのですけれども、そこの箇所をどこか選んできて、実際この方法でやってみて対策を実施して、効果が上がるかをやってみたいと考えております。ITSは、そこまで考えが及んでおりませんでしたので、確かに対策として考える場合はITSの方策等も必要と思いますので、御意見を参考にさせていただきます。

【委員】 まず対策案が少ないような気がします。さらに諸外国を見ても、これほどの路面のカラー化で事故対策をしているところはほとんどないと思うのです。都市景観ともかかわることですから。そうすると、例えば自転車専用道とか、もっと具体的対策を広く求めて、そこから絞り込んでいった方がよかったのではないか。カラー化などしなくても、白線をうまく引くことで効果を上げることができるかもしれないですよね。カラーシミュレーターを使ってやると、どうしてもいろいろな色をつけたくなってしまい、対策にバイアスがかかりますので、もう少し広いところからバランスよくやっていくべきではなかったかと思います。

【国総研】 ありがとうございます。○○先生には、事前評価のときに、景観に配慮するようなという御指導をいただいていたのですけれども、今回の検討は十分そこをやっておりません。今後の課題とさせていただきます。で、またちゃんと考えるようにいたします。

【主査】 ちょっと意見を申し上げたいのですけれども、評価を受けるというこの場ですから仕方ないと思うのですけれども、いかにもきれいに説明しようとし過ぎているのではないかなという気がするのですね。それは成果としては非常に大事なことなのだけれども、そういうことをし過ぎると、考えている現象範囲がどんどん小さくなっていって、実際的な政策とか対策ということを間違う可能性が結構ふえてきていると思うのです。JAFの機関誌で、ここが危ないとかという何かありますよね。あれを見ていて、まあ当たったことがないのですよね。でも、後で解説を聞くと、なるほどなというふうに思うので、そういうふうに非常に多様なものだと思うのですね。ですから、これからこの成果をどう活用するかということを考えた場合に、単にマニュアル化をすると、そのマニュアル化の弊害というのが非常に出てきそうな気もしますので、むしろ、きょうプレゼンいただいた以外の生のデータをうまく取り入れたトレーニングプログラムみたいなものに活用される、展開されることなんかを考えると非常にいいのかなと思うのです。研究されていた皆さんというのは多分そういう能力をすごくつけていられると思いますので、そういうところをどう伝達するかというのを今後ぜひお考えいただければありがたいなと思いました。

【国総研】 ありがとうございます。

【主査】 よろしいでしょうか。

 では、評価シートをもう書いていただいているようでありますし……。

【委員】 ドライビングシミュレーターでデータとるときに、被験者にバイアスをかけないでデータが取れないでしょうか?例えば、ゲームセンターに置いたり自動車学校に置いて、10分、20分運転させて、その中に対策を売った箇所をもぐりこませれば、確かにある対策を打てば事故がないことを示すいいデータがとれると思うのだけれども、この交差点で人が出てくるかもしれないと思ってやるというのだと……。

【国総研】 評価する対策の実施箇所それはコースのをどこというのは知らせずに、ずっと走り続けるようにしています。そこは隠しております。

【主査】 これも「概ね目標を達成できた」、「概ね適切であった」という評価でいいのだろうと思います。ただ、ドライビングシミュレーターと実走行と、あるいは実データとの連携性というか、関係をもうちょっと詰めてほしいとか、対策を今後どう考えていくのかということについて、あるいはこの成果をどう活用するかということに関して非常にいい御意見、コメントがいただけたのではないかなと思いましたので、ぜひ今後の研究に活用していただければと思います。一々紹介しませんけれども、委員の皆さんからいただいたコメントを入れ込みながら評価シートを作成していきたいと思います。

 どうも御苦労さまでございました。ありがとうございました。

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〈事後評価B受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究〉

【主査】 それでは、午前中の最後でございますけれども、「受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究」というものでございます。よろしくお願いいたします。

【国総研】 総合技術政策研究センターの国土マネジメント研究官の○○でございますけれども、私の方から御説明いたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとにP)の表示〕

P) まず、お手元の資料の2枚目でございますけれども、プロジェクト研究の概要でございますが、社会資本整備の効率化のために、受益者(生活者・利用者)の観点から客観的・定量的な評価手法を提案するというものでございまして、プロジェクトの構成は下段の3つです。1つ目が社会資本整備水準の評価手法に関する研究ということで、2つ目が事業評価手法の高度化、3つ目がまちづくりと、3本立てありますけれども、実は昨年この時期に主要部分の中間変更への審査がありました。この1本目の柱がそれであり、これは金額的にも9割方を占めてメーン部分でございますけれども、大きな途中変更がありまして、シビルミニマムを対象としたものからソーシャルキャピタル、限界集落などの直面している地域の問題についての研究ということに切りかわりました。

P) その1本目の柱のことでございますけれども、これは3つから成っております。1つ目が地域社会の実情調査、把握ということで、全国10市町村の首長さん方にヒアリングして、実情について細かく調べております。これについては、昨年度の中間審査でも、地域の実情、状態をはっきりつかめという御指摘もありましたので、それにも基づいております。2つ目が、中山間地域の国土管理上の影響の把握ということで、これは限界集落とかを対象に、国土保全上、国土管理上、荒廃するというところの意味、価値、便益、コストを計測しています。3つ目が、地域コミュニティの状況をあらわす指標ということで、これはソーシャルキャピタルそのものですけれども、ソーシャルキャピタルが地域に対してどういう影響を及ぼすか、これも非常に難しいテーマでございますけれども、これを研究しております。

P) 先ほどの1の1つ目でございますけれども、地域の実情です。これについては非常に膨大な指標値、非常にいいデータが得られたのですけれども、それを1つの表にまとめるとこの2つになりまして、これは心理学で言う四窓分析です。4つの窓。要するに、「地方が都市に与えているもの」というテーマで、過疎地の生活者の目、大都市の生活者の目ということで、意識内、意識外ということで、この4つの区分です。これで四窓分析と言っていますけれども、上の段が「地方が都市に与えているもの」、下の段が「都市が地方に与えているもの」ということで、この10市町村の首長さん方の意見を簡単にまとめるとこんな感じになるということで、この中で問題となるのは、都市は思っているけれども地方が思っていないとか、意識内と意識外のずれですね、この黄色の部分というのが問題で、ここがあるから地域と都市のお互いの主張が食い違ってくるということで、ここがなくなれば、共通の認識が出てくれば地域と都市の互助関係、協力関係というのがもっとスムーズにいくと思っています。

P) これが先ほどの1の2つ目のことでございまして、中山間地域の限界集落も含めまして、その価値、残す価値を調べております。具体的には、鳥取県と秋田県過疎地域において主に農地や森林の多面的機能についてその便益を計測しました。それと同時に、この2つの地域で過疎地域を維持するためのコストを算定していました。これらは昨年度の指摘も踏まえましてかなり精度を上げて客観的にしています。あと大事なのは、ここに機能低下のプロセスとして、どういうふうに機能が低下するかということを、シナリオをつくってやっております。それで分析ケースをいろいろ検討しています。

P) もっと具体的に示しますと、まず集落消失を放置したらどうなるかというシナリオ0というケースを考えています。そうすると、この図のようにだんだん色が変わっていきますけれども、居住者が減少して、集落Bというのは限界集落でございまして、10年で消滅します。消滅して、集落Aというのが20年たったら限界集落になって消滅していきます。そういうことで、ほっておいたらどうなるかということで、森林機能と田畑機能が荒廃していきます。ここで、荒廃がどんなふうに進んでいくかを設定しておりまして、荒廃しても全部がゼロになるわけではなくて、100%の機能が50%まで20年間の間でこういう曲線で低下するという仮定をしています。

P) 次にシナリオ1というものになります。先ほどは放置した場合でございますけれども、これは集落Aに振興策を実施した場合です。まず、居住者が減少する。集落Bは10年で消滅するのは先ほどと同じです。それに対して集落Bを維持させようとしています。集落Bにつきましてはシナリオ0と同じく人口は減っていきますが、集落Aについては集成材加工工場とか行政的努力による地域振興策を入れることで人口とか機能を維持していきます。そうすると、先ほどの何もしない場合であるシナリオ0と比べて、B−CとB/Cを見ると若干シナリオ0よりも落ちておりますが、シナリオ0の何もしない場合と比べて費用便益効果はほぼ同等であるということです。

P) シナリオ2ですけれども、これは公共で国土保全機能を維持する場合でありまして、限界集落Bは10年で消滅します。集落Aは20年で消滅します。しかし、機能は維持するわけです。公共の費用で森林とか田畑の機能はできるだけ維持しようということで計算しますと、B−CとB/Cを先ほどのシナリオ0と比較でしますと、B/Cで1以上、B−Cでもプラスの方に出てきまして、要するに結構便益が出るということになります。結局、森林や田畑多面的機能において国土保全機能に絡んでいる部分を評価することができて、客観的な指標でもって山間部の集落を残す価値はあると言うことができます。これは鳥取県の日南町の場合でありますが、ほかの地区でもこういう検討の数を増やしていけばもっとはっきりしたことが言えるかとは思います。

P) 次に、地域のコミュニティの状況につきまして、ソーシャルキャピタルでございますが、ソーシャルキャピタルは非常に難しいのですけれども、簡単に言うと「信頼」と「規範」と「ネットワーク」、この3つのキーワードで特徴づけられる社会資本のことで、地域の共同体みたいな互助互譲の世界です。

P) 今回の研究の中では、まず、地域内の農業センサスのデータでソーシャルキャピタルの関係を詰めることとして、人口増減とソーシャルキャピタルの関係をつかもうとしましたが、余り両者の相関が取れないまたは逆であるということが判りました。それと47都道府県でもってやはりデータを整理してみました。ロジットモデルという指数関数のモデルをつくって、黄色が割と相関関係が出たのですけれども、やはり相関関係が取れないまたは逆に出たところがありました。これらは要するに、人口が少ない方がソーシャルキャピタルは活発化してくるようなところがありまして、よく考えると当たり前ですが、人口が少なくなってくると危機意識を持ってきて、地域の危機意識のもとにソーシャルキャピタルが高まるという現象が結構ありました。結局そういう別な影響因子を拾ってしまうところがあって、ソーシャルキャピタルの調査は難しいわけです。

P) このようなソーシャルキャピタルと地域人口の増減との正の相関性が薄いということは、研究結果としてもそれはそれで価値あるのですけれども、複雑な因子構成の中で何とか意味のある相関関係を導きたいと考えて、共分散構造分析という最新手法を持ち込んできました。つまり、全国の28旧市町村区のデータをアンケートし直しまして、65ぐらいの指標でもって共分散構造分析というのをやってみました。これは一体何かというと、囲い丸が2つありますけれども、これが潜在変数と呼ばれるものでございます。それに対して両わきに四角がありますけれども、これが観測変数であり、観測変数、これはわかっている数字です。わかっている数字から、わからない潜在変数の部分を推測して、その関係を求めていくというのが共分散構造分析でありまして、このパス関係の構造をつくるという意味で「構造」という言葉が入っています。このパス構造の中を全部相関関係を分析していきますとこの数字が出てきますけれども、数字の意味は11ページに注釈をかけていますので、そちらの方を後で見ていただけたらと思います。なお、簡単に言うと、上の人口に関しましては、人口の変化率を1と置いて、これで割ってやって、この数字が高いほど相関関係が高いということになっています。あと、この括弧の数字は統計手法の中のt値ですけれども、これが大きいほど信頼性が高いという意味を示しております。そういう意味では、当然高齢化率とか就業人口というのは人口と密接な関係があります。大事なのは下の図でございまして、地域活力です。地域活力をもう1つ持ってきました。NPOとかコミュニティの活動とか、こういうのがソーシャルキャピタル的な要因なのですけれども、指標と地域活力ということを持ってきて、今回うまくいったのは、地域活力とこういうソーシャルキャピタル指数との関係が相当高い関係が得られたということで、これは数字の意味は吟味しなくてはいけないのですけれども、結構高い数字が出まして、関連が高い、信頼性が高いという数字になっています。それに比べてここは希釈なのですね。人口と地域活力との関係が希釈であるということは、要するに地域活力が高いから人口がふえる、減るじゃなくて、それはちょっと別物であるということであります。

P) そういうことで、考察の部分ではこういう今の関係を踏まえまして、人口増の施策と分けて地域の活力の施策というのをやっていくということでございます。

P) 3本柱の2つ目でございますけれども、リスクプレミアムを考慮したということでございますけれども、これは事業評価手法の高度化でございます。リスクプレミアムという言葉が出てきたために誤解を受けてしまったのですけれども、リスクプレミアムを研究するのではなくて、その下に黄色でありますけれども、流動性被害額と精神的被害額の2つをアンケートとか地域調査によって調べるというのがここのメーンでございまして、リスクプレミアム自体は保険の世界で、要するにプラスアルファでどれだけお金を払いますかという世界でございますけれども、これは手法が確立されていますので、これを研究するものではないということで、リスクプレミアム、これは小さな字にしていますけれども、意味としては流動性被害額を今回まとめましたということでございます。

P) 研究対象は、平成16年10月の台風23号、相当近畿で被害がありました豊岡市円山川です。これが豊岡市の円山川の被害を受けたはんらん区域のところでございますけれども、一般資産被害額は1戸当たり21.9万円。流動性被害額とか精神的被害額を今回のアンケート調査とかで地域詳細調査で調べますと、一般被害額の4割程度を占めるということで、結構大きいということがわかりました。そういう意味で、流動性被害について今まで把握されていなかったものを明らかにした意義は大きく、京都大学の小林潔司先生の御指導を得たこの研究は、今年度の土木学会論文賞もとっております。

P) まちづくりの方でございますけれども、まちづくりの方は都市研究部の方と連携してやっています。まちづくり交付金というのがございまして、これは平成16年度からスタートしていまして、このまちづくり交付金というのは、B/Cにかわって複数の指標を評価する、開発するということにしています。

P) 今回の研究の中でこれをやりまして、指標です。この表は、横軸が全国30市で、縦軸が人口とかそういう効果の指標をしていまして、黄色について調べて、○とか△がありますけれども、○が効果あり、△が、効果が完全には言えないけれども若干ありそうだというような指標でございます。それを人口とか集客とか、こういう項目でマニュアルの方に今回まとめました。

P) 最後のページに行きますけれども、これが「まちづくり交付金評価の手引き」でございますが、これは現在ホームページからダウンロードできる状態になっていますけれども、この中で、指標をどうやって選定するとか、指標の評価の仕方、そういうのを記していまして、これは間もなく印刷される模様です。

 以上でございます。

【主査】 ありがとうございました。

 それでは、今の御報告に対して御意見、コメントをいただきたいと思います。

【委員】 大きく3点ほどコメントさせていただきます。まず中山間地域の問題は限界集落を救うか救わないかという議論に国がどう関与するかということでB/Cをやっているのですが、例えば限界集落をこのまま放置して消滅させることによって、分散していた福祉・病院施設が都市部に集約され、国全体として効率化が図れるわけですよね。都市部と限界集落を結んでいた道路とその維持管理は必要なくなるわけですから、放置することによる便益というのも当然あるわけです。それらを何で含めて考えていなかったのか、という点が少し気になりました。

 それから共分散構造分析ですけれども、財政力指数のt値がかなり低く出ています。これは普通、「関連ない」というレベルですよね。しかも、その下のt値は空欄となっていますので、恐らく人口と財政力指数とが全く関連がないということを意味している。となると、分析結果の信憑性に疑問を持たざるを得ない。

 さらに3番目のテーマの後ろから2枚目「研究の成果」というところにWith and Without Comparisonの話が出ているのですが、この縦軸の数値というのは一体何なのか。実はWith and Without Comparisonというのは実質的にほとんど使えないんじゃないかと学会等では言われていると思うのです。となると、縦軸の数値として一体何がイメージされているのか。その辺のところが気になります。

【国総研】 私の方からお答えしますけれども、まず3つのうちの1つ目の、限界集落を消滅させてという話と、もっと集約した方がいいんじゃないかという御意見でございますけれども、そういうことは当然考えられるわけでございまして、今回の中では限界集落を残すことの価値の方を優先して検討したわけですけれども、集約させたらどうなるというのは限界集落が消滅したケースで若干ながら示していると思います。時間と手間の関係でそこまで至らなかったのですけれども。なお、国土交通省自体は、中山間地を対象とするというよりも、地域全体を研究するというのがスタンスですので、当然、集約をかけたらどうなるかということは大事なテーマだと思っております。

 2つ目の、財政力指数の例の、ページでいくと6ページ目のナンバー11のところでは、財政力指数が右真ん中にありますけれども、これにつきましては財政力指数との関連がちょっと弱いのですけれども、人口60数戸ぐらいのデータでやるとそういう結果が出まして、必ずしも0.12とか0.23というのはいい数字ではないとは思いますけれども、このあたりももうちょっと吟味して、観測変数をもっと数多くとる必要があるなどの改善すべきところは残っているかとは思っております。ただ、ソーシャルキャピタルと地域活力とか、そういう部分をもっと中心的に重点的にやっていけば、ソーシャルキャピタルがどう地域を存続させるのに有効かというのが見えてくるのではないかということを申し上げたかったということでございます。

【国総研】 まちづくり交付金のwithwithout比較についてでございますけれども、withwithout比較について、経済的といいますか、そういった面でなかなか難しいというのは聞いているのですけれども、まず、まちづくり交付金自身が事前に指標を置いて、目標数値を置いて、達成度を評価して、しかもその成果を公表していくということが義務づけられているもので、何らかの形でそういったものを実現していかなければいけないということで、厳密ではないのですけれども、この場合ですと、祭りに来るお客さんとか人口とか建築着工数とか、かなり何でも想定できると思っております。この場合は、例えば事業地区の中にあるお祭りの来外者数を例えば指標にとったときの例で、右側は5年間ですと特異なことがあったので非常に伸びているのですが、20年ぐらいとるとそれほど伸びていないということが明らかな場合があれば、それはwithout値としてはその20年の傾向をとる方がいいのではないかという、かなり当たり前と言えば当たり前ですが、そういう例を成果として示している。さらに、商業データとか、そういう3年置き、5年置きにとれるデータを活用する場合がかなり想定されますので、そういうデータでやれば、過去5年間であれば1点か2点ぐらいをとってwithout値を設定することになるので、それはやはり10年か20年ぐらいの長い期間をとってwithout値をとる必要があるだろうということを意味していて、余り高度なものではないのですけれども、そういったものを提案させていただいているというものでございます。

【国総研】 先ほどの先生の1つ目の質問でちょっと私言い忘れたことがありまして、病院とか道路を見ているのかと。限界集落の地域自体の中ではそれを見ていまして、実際は病院とか道路、あと小学校とかですね。小学校も結構影響は大きいのですけれども、そういうもの、文教施設なんかについてもシナリオの中でそれを設定して、その変化を20年の変化の中で見ています。

【委員】 1つのプロジェクト研究なのでが、その1、その2、その3が総合的にどういうふうな主張になっていくのか教えて下さい。この3つの研究グループでディスカッションする中で、最初のグループは、どちらかといえば限界集落はつぶして公共で森だけ管理しにいきなさい、そっちが効率的だという主張をしたと思うのです。2番目のソーシャルキャピタル論では、地域にやはりまだいろいろ活力があって、住んでもらった方がいいのではないか。さらに3番目の研究は、河川の被害も、物的な被害だけではなくて精神的なものを含めると守る価値があるぞという主張でした。。ですから、どちらかいえば、残して守っていかなければいけないと。この3つの研究グループは、ディスカッションする中で、結論はどういうところに落ちつくのでしょうか。

【国総研】 それは、この3本立てで3つくっつけるものは何かというと、やはり事業評価の評価手法だと思いまして、複合的な事業をそれぞれ扱っていまして、そういう複合的な効果についての便益とか社会的要因の評価手法について最後にくくっていくということになると思うのですけれども、そこは最後にくくっていくときに矛盾が生じないようにする工夫は要るかと思います。そのあたりは、最後はそういうふうにしなければいけないと思っています。矛盾のないようにちゃんとくくっていこうと思っています。

【主査】 いかがでしょうか。

【委員】 2点ばかりお尋ねしたいのですが、まず1点目は、最初に日南町の例で、振興策をすれば便益が高いという場合と、そうでない場合もあるというようなお話だったのですが、概して言うと、どういう場合が効果があって、どういう場合は効果がないのかということがわかっていれば教えていただきたいと思います。

 もう1点は、この研究の評価をする上で、解析結果としての数値の意味が何となく不明確で、本当にこれが正しいのかがよくわかりませんでした。例えば最後に洪水による精神的被害額が示されましたが、これが妥当かどうかを評価するためには,解析をする上での基礎データの信頼性とか妥当性を示す必要があります。その辺のコメントを少しいただきたいと思います。

【国総研】 まず、ページでいくと4ページあたりだと思いますけれども、効果につきましては、どういう場合がより効果が出てくるかという話もありましたけれども、便益的にいくと森林とか田畑の多面的機能ですね、これは結構客観的にやったのですけれども、費用の方がとり方によってかなり違ってきますし、ほかの、今回説明しなかったケースでは、集落を移転したというケースなんかも想定したのですけれども、そういう場合はコストが非常に高くなってB/Cが悪くなるというふうな状態になっていますし、いかにコストを下げていくかということが集落の生き残りを経済的にやっていく上で大事なことではないかと思います。

 便益につきましても、文化とか風土とかそういう精神的なもの、はかれないもの、そういうものについて今回は便益として算定できないものですから、それらについて、もうちょっと考えてやればもうちょっと便益があるのかもしれません。

 それと、数値の意味です。いろいろ数値が出てきまして、これについて数値の意味というのは、今回の説明の中では、これを言うと非常に長くなってしまうのでちょっと書けなくて申しわけなかったのですけれども、できるだけわかりやすく数値の意味をまとめていかないといけないかなと思っておりますので、そのあたりはちょっと工夫が足りなかったかなとは思います。

【主査】 いかがでしょうか。

【委員】 コメントなのですけれども、ソーシャルキャピタルということでサブテーマの1番目で取り上げておられるわけですけれども、それと過疎地との関係といいますか、ソーシャルキャピタルというのは何についてのソーシャルキャピタルかということがあると思うのですね。そこがちょっとはっきりしていないような気がするのです、お話を聞いていますと。例えば山間地でだんだんと限界集落になっていくようなところを考えると、まずそこに昔から村があって、そこのソーシャルキャピタルというのは森林の維持管理とか農地の維持管理とか、そういう昔から村落でやってきたようなことが、だんだんと人がいなくなることによって、あるいは高齢化することによって落ち込んでいくわけですね。しかしながら、そこで子ができ、孫ができ、そこの家庭なり村が維持されると、昔からのやり方が伝承されてソーシャルキャピタルは落ち込まないということになると思うのです。洪水とかいう防災のことになると、もうちょっと下流の話になるかもしれませんけれども、その場合は同じように流域内で人口がふえる場合は、ソーシャルキャピタルは、やはりおじいさん、おばあさんが、こういうときはこういう洪水が起こるからこういう対策をしないといけないとか、こういう準備をしないといけないとか、ここへ逃げないといけないとか、そういう昔ながらの対策が伝承される。それはソーシャルキャピタルなわけですね。ところが、そこに昔からの人は減りつつ、新住民がどんどん入ってくると、新住民の方は全然洪水対策を知らないということで、人はふえるのだけれども、今度は防災という観点のソーシャルキャピタルはやはり落ちていくわけですね。ですから、このサブテーマ1でとらえられたソーシャルキャピタルというのは、地域の活性度みたいなことだけでおっしゃっているように思うのだけれども、そうではなくて、やはり山間地の没落していっているような集落のソーシャルキャピタルと、社会的な移動が激しいような場所でのソーシャルキャピタルと、それと、それほどよそから人は入ってこないのだけれども、安定して人口が維持されているようなところのソーシャルキャピタルと、いろいろと違うと思うのですね。ですから、その辺の関連づけというのですか、サブテーマ1の中でのソーシャルキャピタルと過疎地域と洪水の被害に遭うところとか、そういったところの関連性をもう少し明確にしておいていただけるといいのではないかというコメントでございます。

【国総研】 ありがとうございます。ソーシャルキャピタルは非常に広いので、防災分野への応用というのも非常に考えられていまして、そういう研究論文もありますし、地域防災力みたいな話も午後から出てくるかと思いますけれども、そういう意味で、余りソーシャルキャピタルを広くというよりも、今回はネットワーク的なものを中心にやっていまして、そのあたりを、ここの部分をやったよということをまず明確にして話を進めたらよかったのではないかと思います。防災力は防災力で、非常にソーシャルキャピタルの重要な部分だと思っています。

【主査】 ほかにいかがですか。

【委員】 ソーシャルキャピタルという概念が出てきて、山間地域の、人が減っているようなところのよりしっかりとした基盤なり、あるいは活性化を図るためには、ソーシャルキャピタルという指標で評価してあげるといいのだろうという仮説があって、そのソーシャルキャピタルを示すような統計データだとか何かであらわしてやると構造がわかるので、どんなまちづくりをすればいいのかだとか、ああいったことがわかるのだろうかというようなことを想定されて、一生懸命ソーシャルキャピタルという概念が説明できるような統計データだとかNPO法人の数だとか、コミュニティの協議会活動みたいな情報を集めてきて表現されようとしているように理解はしたのですけれども、結果的に出てきたのは、それだけでは足りなくて、もっと説明変数がないと説明できないのだというところで最終的にはまとめられているのですけれども、結局何がやりたいのか、私自身は聞いていて正直わからなくて、要は、ソーシャルキャピタルが高そうな地域とそうでない地域があって、今町がどうなっているかという因果関係を見たときに、それぞれの町でどんな活動が行われているとか、どんな情報があるのかを比べることによって、この町はソーシャルキャピタルがあるよ、それはこんな活動だとか何とかがあるよというのを見出していく方法の方が私はわかりやすいのですけれども、今回の統計手法だとか何とかは、結局、私がちょっと統計に詳しくないからかもわかりませんけれども、何を目指して、結果的にそれをどう生かそうとしているのかがちょっと見えていないのですけれども。

【国総研】 画面に出ている一番下の3行でございますけれども、ここの結論のところを飛ばして申しわけなかったのですけれども、何を言いたかったかというと、地域活性に関する構成概念が向上する、ソーシャルキャピタル要素が向上することで、人口が減少する中でも地域の活性化というのは図られる可能性があるということが今回わかったということでございまして、これをどう使うかということでございますけれども、地域の活性化をやることで地域の活力の出てくるのが、ソーシャルキャピタルを関連づけてやることでより効率的に地域活力と、例えばあとインフラ整備の助けにもなるとか、防災力の話とか、そういうのに結びついていくのではないかと思います。

 それと、今回は統計データ、かなり綿密なデータではございましたけれども、市民に対するアンケートの部分がなかったので、それにつきましては、ソーシャルキャピタルが高そうな地域とか、そうでもないような地域とか、そういうアンケートをやって、その中でソーシャルキャピタルと地域活力について最終的に物を言わなくてはいけないのではないかと思っております。まだまだこの続きが必要ではないかとは思っています。

【主査】 ほかにどなたか御意見はございませんか。

 それでは、もう大体記入は終わりましたかね。回収していただきたいと思います。その間の時間を利用しましてちょっと感想めいたものを申し上げたいと思うのですが、非常に難しい問題ですよね。国のあり方、今衰退しつつあるところをどうするかということで。それにもかかわらず、効率性概念のくびきにとらわれ過ぎているような気がするのです。精神的被害額も、インシデントが起こったときの被害額ですよね。そういうことよりは、今そこに住んでおられる方の不安感みたいなものが積分値としてどうきいてくるかというのが、多分今の居住を意思決定するときに非常に大きくきいているような気がするのです。そういう問題とか、余り効率性、効率性と言うと、これは事前評価のときにも多分申し上げた記憶があるのですけれども、日本は地球温暖化による天候変化を考えても相当程度降雨量等に恵まれている国であり続けるらしいということが言われていて、そうすると、今のプロジェクト1のところの30年という限界では、さすがにそういうマイナスのベネフィットが出てくるかもわからないけれども、50年とか100年になったら、逆に言うと何もしない方が立派な自然林になる、杉林がたとえ流出してもということもあるわけですよね。そういうところを余りぎしぎし追求し過ぎると、舌をかむようなことになるのではないかなと思うのです。それよりは公平性とか人の気持ちの問題ですね。ですから、そういう意味で、ソーシャルキャピタルというのは使うような客体的なものではなくて、むしろ目標物そのものになり得る可能性もあると思うのです。そういう視点を今後どうしていくかというふうなことをぜひお考えいただければなと思うのです。効率性できちっとした議論をしていくのは非常に重要なのだけれども、何人かの方から御批判がありましたけれども、もうちょっとちゃんとしてくださいとか、意味はどうなのかということの説明が要るよということでしょうし、それ以外の範疇での公平性とか誇りの問題とか、本当に哲学的なものになっていって、非常に難しいということはわかるのですけれども、その辺にぜひチャレンジしていただければいいなと思いました。

【委員】 「ソーシャルキャピタル」の起源は1960年代のジェーン・ジェイコブスの業績に求められます。今回はパットナムを引用されていますが、もともとは都市住民のつながりと都市の賑わい・安全との関係を議論するときに使われていたものです。ですから、ソーシャルキャピタルという用語を山村地域にそのまま用いるというのが本当に適切なのかどうかということも、検討しておくべきでしょう。念のため、用語の使い方の再点検をやっていただきたいということです。

【主査】 ということであります。

 ちょっと議論していただきたいのですけれども、ネガティブとポジティブのちょうど中間ぐらいでございまして、渡されている虎の巻によりますと、評価の仕方が3種類ぐらいあって、例2が「概ね目標を達成できた」、例3が「余り目標を達成できなかった」というところのちょうど境目にいるのですが、どうしましょうか。委員の皆様の御意見には、3つの関係がよくわからなかったという御意見が多分あったと思うのですね。それは結構私としては強いのかなという気がいたしまして、足して2で割る本当に妥協案だけなのですけれども、上の方は3の「やや適切でなかった」というふうなところを、そういうコメントをつけて出すのかなという気がしております。目標達成度については、中でも議論はありましたけれども、それぞれのところでは結構頑張っておられるといいますか、それなりに新しい知見も出しておられるので、そこについては2かなというふうにも考えたりするのですけれども、そういういいかげんな考えについてちょっと議論いただければありがたいのですが、いかがでしょうか。

【委員】 そういう視点で言いますと、私は両方ともおおむね適正という評価をしたのですけれども、やはり非常に難しいテーマであるということは先生方皆さん御指摘のとおりで、それをいきなり3年で、はい、こういうものができましたとか、こういうものをやれば適切な研究の内容ですと、だれも多分この時点でわかっていないと思うのですね。スタート時点でですね。にもかかわらず、結構3年の間に、今、○○先生がおっしゃったように、個々のテーマについては結構内容も踏み込んでやっておられますし、相対的に相関関係だとかいうことになると、多分これはまたもっと難しいテーマになると思うのですけれども、そういう点から言えば、当初の目標は、この範囲で何らかの成果を上げたいという意味で目標を多分つくられているだろうし、それが個々のテーマの範囲ではしっかりできているのかなとは思います。

【主査】 ありがとうございます。

 どうですか、ほかに。

 では、私も、適切なコメントをいただきましたので、喜んでそっちの方に変更させていただいて、両方とも「概ね適切であった」という評価にさせていただきたいとは思いますが、コメントとしてちょっと辛目の意見を添付させていただくというふうにさせていただきたいと思います。いただいた御意見、もうちょっと厳密にやってよねとか、説明だけがまずかったのかもしれませんけれども、3つの関係本当にどうするのだろうかとか、いろいろコメントをいただきましたし、ここにも書いてありますので、そういうことを加えた評価報告書にさせていただきたいと思います。その文案等については、つくりましてまたお回しいたしますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、この件についてはこれで終わりたいと思います。どうも御苦労さまでございました。

【事務局】 それでは、午前中の御審議を終了いたしまして、午後1時より開催ということで予定どおりで、少々短目ではございますが、よろしく御協力お願いいたします。

午後0時22分 休憩

午後1時01分 再開

【事務局】 それでは、主査、午後の御審議をよろしくお願いいたします。

 お昼に資料の差しかえということで、次の案件につきましてのパワーポイント資料をお配りしておりますので、御確認ください。

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〈事後評価C四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発

【主査】 それでは、事後評価の最後でございますけれども、「四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発」でございます。お願いいたします。

【国総研】 本研究のリーダーを務めました国総研高度情報化研究センターの、研究リーダーを務めました○○と申します。

 それでは、「四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発」について御報告いたします。

 近年の複雑化する都市空間におきましては、人の集中によってもたらされる課題や、それに対する施策の効果を明らかにすることが求められていると思います。例えば、災害時を想定して適切な避難路が確保されているかとか、マーケティングの視点から見ると、商業施設における安全かつ円滑な移動が確保されているか、または施策を打った後に確保されたか、そういう評価等があろうかと思います。従前のマクロ的なデータ分析よりも時間概念を取り入れた形でどうなっているか等、詳細に分析できる方がより適切な施策に反映できるのではないかと思っております。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとにP)の表示〕

P) ここで「四次元」という言っているのは、xy、z方向の三次元に対して加えて時間という概念が入っていましているということで、四次元GISデータと申しております。

 ここに「人の動きの把握に関する課題」を整理してございます。御存じのように、人の動きを把握するためにはパーソントリップ調査というものがそれなりの都市におきまして、約10年ごとに行われているかと思いますが、左上にございますように、「調査・計測」し、「データの加工・蓄積」をし、そして「データの表示・提供」ということになります。データの表示・提供の中で、ここで分析をして読み取るということになります。

 右上にその調査票の例が載っておりますが、こういう調査票をアンケートで配りまして記入してもらって、集めて、加工し提供するのですが、これに対しまして多大な労力が必要となっている、また、個々のノウハウに依存しているという形ことで、この分析に当たりまして費用とか時間的に高コストになっておりますいるという課題があります。

 また、パーソントリップデータがなかなか他分野では有効活用されていないという問題もあろうかと思います。これにつきましては、データを流通させる仕組みが未構築である、また、調査・計測の利用目的がさまざまで、結果としてそのためにデータの品質がばらばら、また、パーソントリップはどこからどこへという形でOD調査みたいに、場所を中心に時間が決まっている形なのですが、時間という概念で切り出しができるという形にはなかなかできづらいなっていない、という課題も現在の調査の中ではあろうかと思っております。

P) そのような背景をもとに、人の動きに関する調査・計測結果について品質を向上させまして、いわゆるクレンジングをして、そしてデータの流通の仕組みをうまく構築すればいいのではないか。結果的にデータ加工の自動化による効率化とか、把握した動きをもとに、公共空間整備や交通計画、または民間ベースでもマーケティング的にどこから商圏的に人が来ているかとか、そういう多分野で利活用できるのではないか、と考えました。このパーソントリップデータというものをは、せっかく税金で集めたデータをですので、民間ベースも含めて有効活用していただくためにどうかと考えました。

 結果的に、下にありますように、こういうデータ表から、右の方に加工した絵がございますが、GISを使いますと、例えば、どんどん地図を拡大していけば、どこに人が集まっているかという形ことが把握できるということになります。

P) ここに「動線解析技術によるデータの高度化」の一例としてを表示しております。左側は、上に1日のODデータや交通機関利用割合を表現しております書いております。これを見ますと、千葉県東部から茨城県南部とか、線の太さは伸び率であらわしています。ので、ちょっと見づらくて申しわけないのですが、昭和63年と平成10年の比較をしていまして、その伸び率という形で表現しています。ので、上を見ると何で東京と結びつきが弱いのかなと思いますがいう形で、伸び率が単に低いだけであって、こういう形ものが現在のOD調査で出せます。し、左下の方では昭和63年と平成10年の交通機関利用割合がどう変わっているかという形ことを表示していますが、基本的にこういうマクロ的な表現が現在のパーソントリップデータから表示されすることができます。

 このデータを、この動線解析プラットフォームを通しま介して解析をしますと、右にございますように、任意の時間でどこに人が集まっているかという形風に表示することができます。絵では9時、10時、11時、12時という形で重ねておりますが、これをアニメーション的に履歴表示すれば、どういうふうに人が集まってきて、どういうふうに分散しているかという形ことが時間的にわかるというものにな分かります。こういう解析をすることによりまして、いろいろな分野で活用できるのではないかという形ことでつく作ったものでございます。

P) それでは、ここから本研究の検討体制から少し詳しく入り説明したいと思います。

 本研究では「都市空間における動線解析プラットフォーム研究会」というものを立ち上げまして、この研究会で動線解析プラットフォームの全体像・利活用方策等の議論をしていただきました。そして、ここでの議論を受けまして、パーソントリップデータ視覚化検討タスクフォースというものの中で既存調査データを有効活用するための視覚化手法の検討をいただきました。また、リアルタイム広域流動調査検討タスクフォースの中では、近年GPSつき付き携帯電話等が普及しておりますので、こういうGPSデータ等を利用したすることによる人の移動データの収集方法に関する検討を行っていただきましたいました。国総研は、これらの研究会やタスクフォースの事務局として参加しまして、その検討成果を本解析プラットフォームの開発、マニュアルの作成等に反映するという形で研究を進めてまいりました。

P) 具体的な動線解析プラットフォームのイメージでございますが、左上に、さまざまな手段により取得できる人の移動情報の収集例があります。パーソントリップのアンケート調査とか、近年のGPS等の計測結果とか、場合によっては駅等の改札の通過結果、または無線LANの利用場所とか、監視カメラにより、もし人が識別できてどうなるかとなれば、今後そういう形から計測もできるのではないか、ということです。とりあえず今回は、このアンケート調査とかGPSデータの結果を、右上にIDxxとございますが、基本的にこのアンケート結果から、だれだれさんが10時にどこどこにいる、こういうデータがずらっと縦に時間ごとに、または場所ごとに出る整理できるのですけれども、この動線解析プラットフォームのによりを介して解析をすることによりまして、真ん中下の図のように、出発地から□□駅を通って△△駅を経由して到着地に行く、この間のデータを、右下にございますように、赤丸がございますが、登録データ以外の間についても補間的に、ここにいたはずであるという形ことで、時間的に切った形でり出した場合、どこにいるという形ことでネットワークデータとして加工できることになります。

P) 研究成果でございますが、「都市空間における動線解析プラットフォーム」の基本的な考え方というものを整理しまして、この考え方に基づきまして、真ん中にございますプラットフォームとしてシステムを構築したということです。データ登録機能、データ加工機能、蓄積機能、それからユーザーが使いますデータ検索・配信機能、さらに、一般の方に、または民間の方に使っていくいただくために、使うための操作マニュアルとかAPI仕様書、または視覚化手順書というものを作成しました。

 また、左下にございますように、「人の移動調査」に関する調査手法、または「リアルタイム広域流動調査」をする場合の実施計画も検討しました。例えば、GPS付き携帯電話を使ってはかった調査した場合どのくらい費用がかかりそうだとか、そういう形のシナリオも一応検討してございます。

P) 研究成果の公表方法につきましては、ここにございますように国総研のホームページで公開しております。プラットフォーム、マニュアル類、APIです。

 現在5機関の方から利用の申し込みがございまして、ではす。そして、具体的にどんな使い方をしているかという形の問いもに対しては、このプラットフォームが本当にうまく使えるかどうか、精度的にどうかという形で評価をしたいという形ことからの申し込み等で、具体的に新たな使い方という形は、研究申し込み以降、まだ確認はされておりません。

 このデータのプラットフォームをつくった中では、今回具体的な連携としまして、昨年度から今年度がメーンになるのですが東京都都市圏交通計画協議会がパーソントリップ調査を東京都都市圏で行うということでございまして、そこと連携して行っています。現在は、平成10年のデータをプラットフォームに載せましてで処理して、データを変換して、データベースに入れてお蓄積してあります。

P) それでは、ここからシステムの具体的な機能範囲について御説明いたします。

 上段にプラットフォームの絵がございますが、データ登録機能というのは、左にございますように、こういう調査をしたものデータを登録するもの機能です。真ん中がデータ加工機能でございますが、今回はGISデータ等を使うという形でございますのでことから、DRM等を使った経路検索とか、または鉄道データベースを使ったマッチング、または座標変換をして人の時空間データとして落とし込む蓄積する機能です。右側には、データ検索機能ということでございまして、ユーザーからが、自らデータは登録しないけれども、自分が集めたデータを加工機能の中で標準化して加工して自分で使うという場合とか、現在蓄積しているデータを、ある条件、属性とか、ある限られた日にちのデータしかないのですが、エリアとか年齢層とか、そういう形条件でデータを引き出して見ることができるという形で配信機能がございます。

P) 具体的に申しますと、ここはデータ加工機能ですが、通常、出発地と時間、到着地と時間、または、どこどこの駅に何時ごろいたという形ことで、右の上のような形で、いわゆるOD調査の直線的な形になるのですが、先ほど申しました鉄道データベースとかDRM等を通しますととのマッチング処理をすると、右下にございますように、具体的にどこの路線を通ってどう行ったのだろうという形ことまで細かく、より詳細な形での移動が推測されるすることができます。アンケート上は、どうしても出発地、到着の駅、次の駅、目的地という形ですけれども、加工処理することによりまして、右下のようにより詳細な形としてデータができるというものでございます。

P) ここでは次にデータ検索・配信機能でございますが、データベースから時刻やエリアを指定して引き出す機能です。引き出す場合に当たりましても、ユーザーが本当に望んでいるようなデータがうまく検索されたかどうかという形でことが重要なので、ホームページ上でアニメーションでとしてそのデータを表示して、確かにこういうデータだろうなということをが確認できるようにしてあります。もしそのデータが正しければ、配信用データファイルに変換して、インターネットでユーザー、利用者に送られるます。利用者は、XML形式で送られてきたファイルを自分の加工したい形で分析等をできるという形ことになります。

P) これは応用事例の1つでございます。左上は10時30分現在の1km当たりの人数でございますが、先ほど申し上げましたように、ある時間では、という形で切り出しますので、10時半には首都圏のどこに人が集まっているか、多分中央3区でしょうか、1km3,000人以上の形という棒が立っていますし、これを9時半とか朝6時となると当然地方中心部以外の方に人がいるという形ことで、時間的に経過とともにどう人が移動してきているかという形になりますことが分かります。

 これを見ますと、例えば10時半に地震が起きた、となったとき、どこら辺に人が何万人ぐらいいるかという形でことから防災対策の方に、どんなことをしなければいけないのかとか、そんな対策にも利活用できるでしょうし、右下は、ちょうど時間は12時ですけれども、12時地震が起きたときに、当然まず鉄道がとまるであろう停まることが想定され、。その場合、鉄道にいるを利用していた人が道路側に渡ってを使って自宅の方に帰ると考えたときに、どの道路に帰宅困難者が負荷的に集まるかという形ことを転換した形で仮定してつくった絵でございますけれども、こういう形でより細かな時間帯で切り出すことによりまして、いろいろな次の対策等の基礎資料に使えるのではないか、と考えております。今後、こういう切り出し方等ができますと、左下にございますように、例えば東京駅来訪者の経路とか、または銀座にどうやって集まっているかという形ことを考えた場合、商業的にはどこで広告を出していれば多くの人が見てくれるかとか、そういう使い方も可能であろうかなと思っております。

 本研究では基本的に、せっかく集めておりますパーソントリップ等のデータがなかなか有効活用されていないという形を課題につきましても、こういうのような電子化をすることによりまして、または標準化をすることによりまして、新たに民間でいろいろな戦略に使えるだろうし、国土交通行政におきましても、安全・安心対策につきましても、こういう形の切り出し方等ができればいろいろな分野に使えるのではないかということでございます。

 最後に、今後は多種多様な動線データについて、さらにITを活用した取得方法と、取得した動線データの活用を検討し、インフラの計画または設計、防災対策など広範囲な用途への適用の高度化を図り、本研究所で開発したプラットフォームの有用性を向上させていきたいと思っております。

 以上で「四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発」について御報告を終えます。

【主査】 ありがとうございました。

 それでは、今の御報告に対して御質問、コメントをいただきたいと思います。

【委員】 最後のスライドを見せていただきたいのですけれども、左上のこの図面、これは1kmメッシュかどうかわかりませんけれども、人数が載っているのと、左下に書いてある活用策、例えば情報を考慮した広告場所、掲示場所というのがスケールとして全然合わないのですけれども、その辺はどういうふうにお考えなのですか。

【国総研】 もともとパーソントリップ調査というのは、東京都都市圏みたいな大規模な都市におきますいて、交通がどういうふうのように転換してきているかとか、人がどの機関の移動がどう変化したか、またはトリップ長が長くなった、短くなったなどの行動様式自体の変化とか、そういう大規模な設計把握に使う場合もございますれば、民間ベースでは、今、先生から御指摘がございましたように、例えば民間ではそういう形の利活用も考えられるのではないかということで、当然スケールは、切り出し方によって、大きな都市圏という形の見方もございますれば、銀座周辺、銀座の商圏という形の切り方も多々できるます。せっかくのパーソントリップデータを、切り出し形方で、ユーザーによってうまく活用できればいいのではないかなと。常にマクロばかりではなくて、下のような使い方も今後できるようにしていけば、民間ベースでさらなる利活用が図れるのではないかと考えているところございます。

【委員】 ちょっと私の理解があれなのかもしれないのですけれども、要するに、ある地区、1つの町丁目でもいいですし、メッシュでも何でもいいのですが、そこに何時ごろにどのくらいの人がいるかということを推計するのはパーソントリップでできると思うのですけれども、右下に書いてあることは、例えば交差点があったときに、どこに広告を置けば一番人に見てもらえるかということですよね。そこの空間のレベルというのがマッチングしていないのかなというのが私の感覚なのです。

【国総研】 私が考えたのは、どこの交差点といい言いますか、例えば鉄道の何とか線からどっち方面、例えば茨城の方から来るのだったら常磐線のところがいいとか、何線から銀座の方に多く来るかとか、そういう形で見たときに、何々線沿線に置いた方が人が来るとか広告看板が効果的かなとか、そういう形かなとそのように考えました。細かな交差点の近傍で切るとなると、その先はどこから来たかまではわかりませんので、。私どもの考えたのは、そういうような、銀座までどうやって来るかという、商圏ですね、そういうある程度の広さを考えた場合に使えるのではないかという利用法でございます。

【委員】 わかりました。

【委員】 ねらいと内容は大体わかったのですけれども、成果としてどういうものができたのかということについてお聞きしたいと思います。

 1つは、動線とおっしゃったのですけれども、どういうものを対象としているのか。何でもあるのだろうと思いますけれども、鉄道もあれば道路もあれば、それから人間が歩く歩道みたいなのもあれば、いろいろあるのだろうと思うのですけれども、その動線というものの定義と、それからデータとしてどういうものが、パーソントリップデータということなのかもしれませんけれども、今回の研究で量としてどれぐらいのデータが整備できたのか。この動線解析データの定義というのが新たに定義できるはずですよね。あるいは既にあるのかもしれませんけれども。動線とか動線データの定義、定量化の標準化、そういったことも国総研さんはできるのだろうと思うのですけれども、要するに、この3年間の研究でどれぐらいの量のデータが整備できたのか。それと、四次元ということですので、地下を通るものもあれば、ひょっとしたら空を飛ぶものだってあるかもしれませんし、海の上を移動するものもあるだろうと思うのですけれども、どういう空間的な要素と、それから時間的な要素としては昼と夜あるいは通勤時間帯とか、それから曜日によって全然違いますよね。それから、五十日という、5日とか10日ですと商業関係の車がたくさん走るとか、それから季節とか天候とか、いろいろ条件があると思うのです。ですから、今回の研究でどの程度までカバーできて、どこまでやれて、どこがやれていないのかといったことも今の御発表ではわからなかったので、教えていただきたいと思います。

【国総研】 まず、データ項目についてはパーソントリップデータでが基本的にで、だれかさんが何時にどこからどこに行ったという形の、やはりこのアンケート調査のデータ項目が基本でございまして、基本的に、す。前回、平成10年でも大都市圏で2%ぐらいでしょうかの方々を対象に、そういう形のデータを集めてやっているはずなのですけれども、このデータを基本的に項目をにして、きちんと標準化する、落とし込むという形でし、蓄積したということで、電子化して加工しやすいように標準化を図ったということでございます。その中で、現在でも、電車を使っているのか、バスを使っているのか、空を飛んだのかという形はことも登録されますので、当然電子的にもそれは分類で落とし込めるして蓄積されています。それを平面上に落とし込みます表現しますと、先ほどみたいな赤い点で、実はアニメーション上でいくと表現しますと、どの道路を使って来ているかとか、どの鉄道を使って来ているかという形がことも表現できるということになります。

 データ量は、平成10年の大都市圏の調査データはとして、電子的データがありますものをこのプラットフォーム上に落とし込んでで標準化し、蓄積しておりまして、先生がおっしゃいましたように、毎日のデータがあるかという言いますと、実はパーソントリップ調査をしたら落とし込むという形ですから、結果を蓄積しておりますので、そこまではありません。晴れているか曇っているか、夜か昼かというのはパーソントリップ調査データがもとでございますので、今後、人に1週間つけて付けてくれくださいという形ことでGPS携帯電話を渡してやればせば、その人が1週間どういう行動をしているかという形でことが細かくとれるでしょうし収集できますが、現在は平成10年のデータを電子化に落としてして蓄積しているというところでございまして、晴れている日はどうなったかという形の行動がどうなっているかは、そのパーソントリップ調査をした日が晴れていれば曜日が載っているかという形であって、晴れた日のデータとして収集されますが、すべての人の毎日のデータがこのデータベースの中に蓄積されているわけではないということでございますありません。

【委員】 そうすると、こういうデータをストアするような枠組みと、例えばGPSを使ったような集計方法、今までですと人がカウントしてやっていたやつが携帯電話に組み込まれるGPSとか、あるいは車のカーナビについているGPSなどを使って、ひょっとしたらそういう調査が現代的な方法でできるかもしれないと。その辺についてはどうなのですか。そういう検討をされて、どういう問題点があったのかとか、どれぐらいまで精度が出そうとか、そういう検討結果はあるのでしょうか。

【国総研】 先ほどの今年度からの、東京都市圏でたしか30万人ぐらいをモニタリングするというふうに聞いてはいるのですがおり、その中でGPS携帯電話を使えないかという話もございます。ただ、GPS携帯電話を使った場合、やはり人を特定する、ずっとわかるわけですできてしまうことから、特定をきちんとされてしまうと困るという問題と、だれに貸して集めるという形ですから、そこだけが問題で、はありますが基本的にGPS携帯電話が5分ごとにとか1時間ごとに位置情報のデータを上がげるようにセットすれば、特に加工しなくてもより詳細なに、リアルタイム的にデータをその中には落とし込めるプラットフォームに蓄積することができます。リアルタイムに落とし込んで蓄積しても、すぐ何かに使うということでは多分なくて、やはり集計の仕方がとして最近、子供の位置を調べる把握したいとか、そういうこともあるりますので、今後こういう形方法を使ってくれえば、例えば子供たちの動線、基本的に歩道はそういう形ことを意識考慮してつく作られているはずなのですけれども、実際どういうところを歩いているかとか、そういう形の分析にも使えるということになろうかと思っております。

 一応、GPS携帯電話を100台試行的にばらまいて使用してモニターを募ってやったらどのくらい費用がかかりそうだという形話は、先ほどの左下のようにストーリー立てを考えて、費用がどのくらいかかりそうだという形は設計しており、関東地整さんの広域計画課と、このくらいの費用でできそうですという話はさせてもらっています。まだやっておりませんけれども。

【主査】 ほかにいかがですか。

【委員】 車に関しては結構実用化されています。GPSの方ですけれども、現金輸送車にしてもコンビニの配送車にしてもリアルタイムで追っかけるようなシステムもあります。、そういえば人間も「ナビタイム」を民間レベルでやっていますよね。そういう意味で、差別化というか、どういうところが国総研らしい技術開発要素としてあるのか、そういうことをちょっと教えてもらいたいと、思います。すぐに役に立たなくても、方法論の開発の面で成果があれば、それは評価できると思いますが、こういうものの研究成果を論文として発表するときには、どういう学会に出すのでしょうか。すごく作業をされたことはわかるのだけれども、ここだけは絶対負けないぞというオリジナリティーはあるのでしょうか。論文を書くとしたら、どんな論文になるのかなというのがちょっと気になったのですけれども。

【国総研】 国総研らしい研究はどの分野だというお話が1点ございました。民間ベースで使っているのはリアルタイムでな位置情報の把握をとして使っているのは、現在の物流管理とか交通管制という意味で使われるのが大きいと思います。国総研としましては、10年ぐらいのオーダーごとに移動という行動がどう変わってきているかという形で見るデータを冒頭申し上げましたように、民間ベースでは、うまく使えたらいいなというニーズはありますけれども、なかなか使えていない現実があることと。または、いろいろな会社がそれぞれ個別にデータをもらって集めて、皆さんがそれぞれ加工し直しをするという形している労力を、こういう標準化を図ることによって、税金で集めた膨大なパーソントリップデータが、民間ベースも含めて税金で集めたデータが使いやすくなる、戦略が練られるという形でに活用しやすくなるのではないかということで、標準化のプラットフォームをつく作った意義があるということだろうと思っています。

 それから、論文の発表場所につきましては、交通工学研究会の方で、こういうことをやりましたということを発表しております。交通工学の方です。

【委員】 標準化のプラットフォームがあった場合となかった場合でどういう効果があるという説明はされるのですか。

【国総研】 基本的に、現在の平成10年のパーソントリップデータの生データがあります。それを皆さんが、A社もB社もみんな同じような加工をして、最近のIT化を使って電子化に置きかえなければいけないという形をことから標準化して、初めからこういう形で、補間データも含めて、より時間で切り出しができるように加工できますという形をことで提供しますので、皆さんにそれを今後の社会活動とか経済活動に自由に使ってもらえればという形をつくことから作ったということでございまして、す。各民間会社がそれぞれ悩んでつく作ればいいじゃないかというお話もあろうかと思いますが、せっかくのこの折角集めたデータであるならば有効活用してもらうためにいやすいように、そこまで有効活用できるプラットフォームとしてつくするのがもやはり国総研の使命であろうという形で考え、プラットフォームとして整理したということでございます。

【委員】 そのプラットフォームをつくったというのは学術論文になるのですか。

【主査】 なったのでしょう。

【国総研】 タイトルが「研究」というよりも「開発」という形にしておりますので。

【主査】 ほかにいかがですか。

 ちょっと気になるのですけれども、真ん中の絵ですが、出発地を6時40分に出て到着地に7時50分に着いたというのは生データを使われているのですか。とすると、H10のパーソンをやったときにいっぱい苦情をもらったのですけれども、こんな人の行動を詳細に把握するようなデータをとって、うちの子が誘拐されたらどうしてくれるんだと。本当にたくさんあったのですよ。そういう意味でのプライバシー関連からすると、今のところ、協議会では公的な利用あるいは研究利用しか認めていないのです。さっきから民間、民間とおっしゃっているけれども、その辺の調整はどう考えておられるのですか。民間がこういうデータをどんどんダウンロードして使っていいじゃないかということですと、データが詳細になればなるほど誘拐されるとか、そういう本当に御不安、懸念が実現化してしまうようなデータを出されようとしているわけですね。その辺についての協議会との協議状況はどうなっているのですか。ミスアンダースタンディングがあるような気がしますけれども。

【国総研】 少なくともデータを出すときに、特定のどこどこのお子さんだという……

【主査】 だって、わかるじゃないですか。どこに住んでいて、どこまで行っているかと。

【国総研】 そうですね。

【主査】 姓名まではわからないけれども。時刻も、正確であればあるほど。その辺をよく考えた方がいいのではないかなという気がするのです。

【国総研】 はい。

【主査】 それと、ある一日というふうにおっしゃっているけれども、調査自体は2カ月ぐらいの長きにわたってやっていますので、人的、調査員の手当の問題から。丹念に見ていくと天候の影響などは見られるかもわかりません。サンプル数の制限はありますけれども。

【国総研】 御指摘ありがとうございました。先生から貴重な意見をいただきました。安全・安心を考えると、確かに人の特定というのは大きな問題がありますので、そういうことがないように調整を図っていきたいと思います。

【主査】 それともう1つ、もっと進んでいるのは、例えば鉄道の自改機のデータなんていうのは、今少なくともJR東日本は全部のデータをログデータとして持っていますから、番号さえわかればそのホルダーがどこの駅から何時何分に乗って、どこの駅で何時何分に降りたというのがずっとわかっています。そういうデータとの、これはJRさんが出してくれるかどうかわからないけれども、連携とかいろいろ広がっていると思いますので、ぜひお願いしたいと思います。

【国総研】 例えば鉄道でいくと、新線ができたときに人の負担輸送の分担がどう変わったか。ということの把握が必要となります。この間も東京で新線ができて何万人以上が動くんじゃないかという形が、ものお客が新線側に転換するのではないかと言われておりました。実際は、接続駅での動線がまず余り良くなくてそこまで展開転換しなかったという話もございましたけれども、パーソントリップ調査という形でそういう調査から交通機関ごとの利用についてもこういう形で見られるという形になろう利用もできるかと思っております。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

 何件データがとれたのですか。

【国総研】 平成10年ですと80万件くらいです。

【主査】 80万件というより、それは人数ですよね。

【国総研】 そうですね。

【主査】 だから、80万人の、トリップ数でいくと、今、原単位2.3とか2.4ぐらいだから、200万トリップぐらいのデータがあります。えらい作業をされていると思います。

 よろしいですか。

 それでは、評価シートを記入いただけたと思いますので、よろしくお願いします。

 どうしますかね、特に下の方は。

【委員】 平均値をとればいいんじゃないですか。

【主査】 平均値をとっていいですか。そういう問題でもないような気もするのですが。

 上の方は「概ね適切であった」というのでいいと思うのですけれども、下の方ですね。「十分に達成できた」という方は、可視化とか、データベースをきちんと整備されたというところを非常に高く評価されたと思いますし、私自身告白すると3につけてしまったのですけれども、そういう技術は技術としていいのだけれども、今のデータ、いろいろなところでいろいろなデータが大量にとられていて、しかもそれが使われることなく捨て去られている状況にある。もったいない。いろいろな人がいろいろなところで個別に努力をしているのだけれども、なかなかパワーが発揮できていない。そういう目標に対しては本当にどこまで肉迫できているのかなというふうな感覚もあって3につけてしまったのですが、どうしましょうか。何かいい知恵がありましたら、ぜひ。

【委員】 いずれにしても3にはできないんじゃないですか。

【主査】 そうですかね。そうすると、「概ね目標を達成できた」とさせていただいて、「目標を達成できなかった」というふうに評価をされている委員の方のコメントをきっちり書き込ませていただくという方向で取りまとめたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 では、そのようにさせていただきます。上も2番、下も2番という極めて平和的な結果になりましたけれども、コメントは今手元にございますので、いただいた意見等を踏まえて作成したいと思いますので、また参考にしていただければと思います。どうもありがとうございました。

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〈事前評価Dソーシャルキャピタルの特性に応じた地域防災力向上方策に関する研究

【主査】 ここから事前評価ですよね。お間違えのないようにお願いします。コメントシートが変わっております。

【国総研】 「ソーシャルキャピタルの特性に応じた地域防災力向上の方策に関する研究」について説明します。21年度から3カ年で実施予定の新規課題でございます。危機管理技術研究センターの方から説明申し上げます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとにP)の表示〕

P) 「研究の背景・目的」ですが、気候変動の影響で、自然災害の発生の頻度や規模の増大が予想されております。防災施設の整備もまだまだ、今後投資余力が減少していくということでハード対策のみでは限界があるという情勢にあります。社会的には少子高齢化・地方の過疎化の進行ということで、地域活動の担い手の減少が危惧されているということでございます。こういうことを踏まえますと、ハード対策の推進はもとより、ソフト対策のさらなる充実が必要ということが考えられます。

 それから、昨年10月に首相が国会で「災害による犠牲者ゼロ」を表明いたしました。それを踏まえまして、総合プランというものが内閣で作成されております。この中に「自助」・「共助」ということ、さらに地域防災力の強化ということもうたわれています。また、防災施設の整備についても力を入れようということになっています。

 こういうことを踏まえますと、地域の特性に応じた地域防災力の向上というのがますます重要になってくるということでございます。

 目的は背景とかぶりますけれども、国交省は自然災害防止のためにいろいろな防災施設の整備・防災情報の提供等を実施してきているところでございます。住民と連携した活動も実施しております。ソーシャルキャピタルは中山間地域、都市地域でそれぞれ違いがあることを踏まえて、それに応じた行政の働き、国交省の行政の働きによりまして地域防災力を向上させ、災害による犠牲者ゼロに資するということでございます。

P) まず、地域防災力とソーシャルキャピタルというものをきちんと定義しておかないと議論が拡散しますので、我々なりにこの研究開始に向けて定義をしてみました。

 自然災害は「地震」「水害」「土砂災害」「火山噴火」「津波・高潮」「雪崩」等々がございます。「地域防災力」とは、地域で起こり得る自然災害に対して、災害への事前の備え、災害が発生しようとしているとき、あるいはまさに発生したときの対応、それから災害直後の緊急の対応の各段階において、地域の「人・組織及びその活動」・「もの(施設)」による被害を軽減する総合的な地域の力というふうに定義づけたいと思います。これをマトリックスの表にしてみるとこういうことになりますけれども、横に時系列、縦に人・組織及び活動、もの(施設)ということでございます。

P) ソーシャルキャピタルですけれども、本研究では、「ソーシャルキャピタル」とは、「地域のネットワーク」・「社会的信頼」・「社会参加」から成る地域社会の特性であると定義したいと思います。具体的には、今言ったのを大分類、さらにそれぞれ中分類で地縁・血縁、社会的な交流、知人間の相互信頼・相互扶助、そうでない人との一般的な信頼の関係、それから社会参加ということとし、それぞれの構成要素を表のように規定し、この構成要素の程度が高ければ、ソーシャルキャピタル全体が豊かだというふうに定義づけたいと思います。

 これを中山間地域と都市地域ということで分けてみますと、中山間地域では地縁・血縁等があってネットワークが生じやすい、限られた範囲であるけれども強いきずな、地域の利益を促進する傾向にある。都市地域になりますと、社会的な交流による人的なネットワークが生じやすい、しがらみのない人や異なる組織間の、広いですけれども弱いきずなによる信頼関係が生じやすい、公共の利益を促進する傾向にあるということで、例えば都会の場合はNPOとか環境団体等が考えられます。

P) 地域防災力の向上事例ということで、先ほどのソーシャルキャピタルの定義を意識しながら、事例ということで幾つか挙げてございます。群馬県のみなかみ町で住民参加型のハザードマップの作成。大阪府千里川における住民参加による河川管理施設の安全点検。大阪府砂防ボランティア協会による危険箇所の点検。

 それから、6月14日に起こりました東北の地震でございますけれども、地域防災力がソーシャルキャピタルが豊かという意味もあろうかと思いますけれども発揮された事例ということで3つほど挙げております。宮城県栗原市耕英地区では、孤立集落で、それぞれのつながりが強かったということで、みんなが声かけをし合いながら避難所に円滑に避難できたという事例でございます。宮城県栗原市秋法上地区では、住民が自ら危険箇所をあらかじめマップにの上に記入していた危険箇所の点検を地震後に実施し、安全性を確認した事例。岩手県一関市の天然ダムが形成された現場付近では道路が寸断されていたのですが、天然ダムの決壊防止対策のために地元の、岩手県一関市の建設業協会が自主的に自分たちの地理的な知識と経験に基づいて迂回路を設置して重機の搬入のための運搬路を設置したという事例でございます。

P) 「研究の内容」ということですが、まず既存資料の収集整理ということで、最近の地震、豪雨、土砂災害等々の災害事例について、国内外、できれば外国も事例があればと考えておりますけれども、ソーシャルキャピタルということを意識しつつ地域防災力の向上の取り組み事例を収集したいということでございます。

 それから、その事例に基づいて地域防災力の向上要因・阻害要因の検討をするということでございます。

 それを踏まえて、地域防災力とソーシャルキャピタルの相互関係の分析、ここが一番難しいかと思うのですが、ソーシャルキャピタルの地域特性があって、そういう地域において行政がいろいろな働きかけをする。例えば住民参加型のハザードマップ作成、住民参加による河川施設の点検などをやってみるということで、結果的に地域の防災力ということで、具体的に避難力がどうなったかとか、災害に対する認知力がどうなったとか、警戒監視力がどうなったとか、そういったところについての関係事例を解析・分析しながら検討していきたいということでございます。

 これを踏まえまして、最終的にどういうふうに行政として働きかけていけば地域防災力は向上するかの検討、それから地域防災力の評価手法の検討、この2つを踏まえてPDCAサイクルということで地域防災力を向上させていくための方法の検討を行い、最終的にガイドラインをつくるという形にしていきたいと考えております。

P) これは国土交通省ですけれども、国総研と置きかえていただければ幸いなのですけれども、この絵で言いますと国土交通省が中心部分にあり、地方整備局あるいは都道府県が、防災施設の整備とあわせて警戒避難の支援等を、やっております。国総研にはそういったところを踏まえたいろいろな知見がございます。既存資料の収集の実績もございます。そういった防災的、工学的な知見を踏まえつつ、例えば筑波大学とは包括的連携・協力協定というものをしておりまして、他分野の先生方との共同の研究も可能だということで、学際的な連携が可能です。この研究に当たっては、工学的見地だけでなくて、社会学、心理学あるいはNPO論とかメディア論、福祉関係、そういったところの関係が必要かと思いますので、関連分野との連携をとりながらやっていきたいと考えております。

P) これは最終的なガイドラインのイメージですけれども、中山間地域、新興住宅地域、観光地・商業地域、都市地域と分けておりますけれども、そういうところのソーシャルキャピタルの特性に応じて行政がいろいろな働きかけをする。そうすると地域防災力がどうなるか、こういうメニューをガイドラインとして示したい。

 それから、評価手法ということで、地域防災力の弱体地域、それから地域ごとの地域防災力の弱点(課題)が把握可能な指標をつくりたい。

 これらを踏まえてPDCAサイクルの考え方による地域防災力の継続的向上ということで、最終的に人的被害の軽減に結びつくことにこのガイドラインを活用していただくということで、この研究を進めていきたいということでございます。

 説明は以上でございます。

【主査】 ありがとうございました。

 それでは、コメントをいただければと思います。

【委員】 3ページ右側に「ソーシャルキャピタル」の特性ということで、中山間地域と都市地域の場合が出ていますけれども、私が先ほど申し上げましたのは、右側の都市地域の方ですね。これはまさしくパットナムやジェイコブスの「緩やかな絆」ですので、正しいと思います。それで今説明を聞いていてわかったのですけれども、国総研としては既往の「ソーシャルキャピタル」概念をしっかり理解した上で、その用語を中山間地域における濃密な人間関係にまで使いたいとのことでしたので、そういうものとしてソーシャルキャピタルを再定義して使うのならば、それはそれで構わないと思います。ただし本当は「ソーシャルキャピタル」という用語を無理して使わずに、「強い絆」を表す別の用語を考案したいところですね。

【委員】 これから確実に高齢社会に向かうわけですけれども、高齢社会で防災力を上げようとするときに、私はソーシャルキャピタルよりもインフラ、ハード整備だと思うのです。というのは、老人は、高齢者は動きが鈍いとかいろいろ問題があるので、むしろハードをしっかりしておいて安心して暮らしていただく、安全なところでゆっくり暮らしていただくことがいいと思うのですね。だから、余り年寄りにふだんから気を配って、いざとなったら迅速に動けとか、物すごくきついと思うのですね。ですから、ソーシャルキャピタルというものが防災力にどれだけ効果があるかということをまず把握しておくことが大事だろうと思います。

 それと、きょうのお話を聞いていると大体やりたいことはわかるのですけれども、もう少し社会の将来像を絞ってみて、「高齢社会を想定した」というまくら言葉をつけてこのあとのタイトルが来るとか、それから、「外国人移民を想定した」とか。これからどんどん外国人がふえるという話があるのですけれども、滋賀県の湖東の方の市で外国人が結構多いのですよね。ポルトガル語しかわからないという人が結構移民で来ていて、何万人という万のオーダーでいるのですよ。だから、そういう人がまじっている地域でどのように防災力を上げるかというのも重要な課題だと思うのです。

 あと、高齢者について言うと、滋賀県の湖南5市大津市、草津市、守山市、野洲市、栗東市で言いますと、65歳以上人口が15%、それから4歳以下の人、子供も含めると要援護者人口が平均25%もいるのですよ。4人に1人が要援護者なのですね。さらにその割合がふえるわけです。だから、そういう社会構造に対してソーシャルキャピタルというものはどうあるべきか、インフラ整備はどうあるべきかということも含めて地域防災力というものを考えていくべきではないか。ここの危機管理センターは特にソフトの方をやられるのだと思いますけれども、その辺も意識してやられたらいいのではないかと思いました。

【主査】 いかがでしょうか。

【委員】 やろうとされていることはよくわかって、既にガイドラインのイメージもできているので、何か成果が出てくるなと。非常に理解はできたのですけれども、どうしても先ほどから出てくるソーシャルキャピタルというのが、わざわざ難しい片仮名で言っているような気がしていて、要は地域特性を考えたとかと言っても余り変わらないのではないかと思い始めています。だけど、そうではなくて、地域ごとに連携だとか、どういうものが熟成しているかどうかを把握したいと。先ほど言われたように、それを定量的にどこまで評価できるのかなという不安も感じながらも、チャレンジするものだというように私は推察しているのですけれども、もし本当にそこまで踏み込むのであれば、国総研だから全国のいろいろな事例を集めてやるというよりは、岩手・宮城内陸地震とか、水害だけにターゲットを絞って、本当にそこの地域の特性をシラミつぶしに実施した方が、マニュアル的な全国一律のガイドラインをつくるよりは、1つ、2つなのだけれども、すごく濃密なもので、これで評価すればいいと。それができれば方法論ができて、ほかの地域での地震だとか水害だったらどうやればいいかというような、逆に言うと非常にケーススタディ的になるかもわかりませんけれども、そういった方が研究としてメリットが出てくるのではないかなと感じます。そうではなくて、いろいろなところを見ることによっていろいろな地域の特性が浮き彫りにできることが今回としては重要だというように、どちらが重要なのかなということについてはどのようにお考えでしょうか。

【国総研】 方法論としては、ケーススタディである程度、何事例かというのはこれから考えていかなければいけないのですけれども、数事例、1けただと思うのですけれども、事例について検討していきたいと考えています。そこで研究内容フローの3番目のところがどこまで分析がきちんとできるかということに、4番以降の密度というのですか、深さというのですか、アウトプットの深さがかかわってくるかと思うのです。ただ、4番以降は薄い厚いはあろうかと思いますけれども、考え方としては、5番目のところまで行って5番目というか一番右下ですけれども、要するに地域防災力をソーシャルキャピタルとの関連で高めるにはどういうメニューがあるか、評価の手法はどうか、それをPDCAサイクルで考えていくことが地域防災力の向上に結びついていくのだということで全体を取りまとめたいと思っています。ただ、今申しましたように、3番目の幾つかのケーススタディで、どこまでやれるかというところで最後のところの4番、5番の厚みが変わってくるかと思います。

【委員】 先ほどの○○委員の質問とも少し関係するのですが、ハードな対策とソフトな対策の両方が必要な中で、国土技術政策としてどういう位置づけでソフトな対策を進めるのかということを少し明確にした上で研究を進めた方がいいのではないでしょうか。例えばハード対策を補完するものとしてソフト対策をするのか、ハード対策はなかなか充実できないのでソフト対策の方を主体的にやり,ハードはそれを補完するのか、半々なのかなど、その辺の政策的なことが少し前提としてあれば、この研究の成果を評価するときに役に立つのと思います。これが最初の1点です。

 もう1点は、研究を進めていく上で防災力というものの評価が必要になってくるので、それをどうするのかと思いこの資料を拝見していましたところ,評価手法の検討もするというようなことが書かれてありました。これについての具体的なお考えがありましたら少し教えていただきたいと思います。いわゆる防災力をどう評価するかということです。

【国総研】 まず1点目ですけれども、ハードの整備というのがまず基本中の基本であります。これはもう言い古されているというか、いろいろなところで我々も申していますし、釈迦に説法ですけれども、予算が限られている、それからやるべきところがたくさんあってなかなか進まないということで、あわせてソフト対策も充実していかなければいけないということでございます。そのときに、防災担当の国とか県の施策実施とあわせて、市町村、そして地域の防災力が重要になってくる。今後、予想される社会的背景を踏まえるとますますそれが重要だということかと思います。

 その中で、議論していて、例えば施設の点検を住民と一緒にやる、あるいは清掃活動をやってもらうということで、どこが危険かというのを住民に見つけてもらえる場合があったりするのですね。そうすると円滑な維持管理ができていくということになれば、ハードのメンテナンスの効率性が向上していくのではないか。それも「地域防災力」という概念の中に含めたいと考えております。

 それから、評価の手法のところですけれども、ここにレーダーチャートをかいていて、避難力とか防災準備力とかいろいろ書いていますけれども、ここも慎重にやらないと絵にかいたもちになってしまいますので、ここはどういうふうに考えているかという御質問ではあるのですが、この中にさらに細分化した小項目によりチェックできるものを作成していきたいと考えております。

【委員】 わかりました。できるだけわかりやすい指標を提示していただいたらいいと思います。

【委員】 5枚目を見せてください。右側の小さい絵ですけれども、行政の働きかけで防災力は動かせるのだけれども、ソーシャルキャピタル自体は動かないと。ソーシャルキャピタルは行政が高めたり低めたりはできないのだ、そういう理解でいいですよね。私はその方がいいのではないかと思います。

【国総研】 そういう理解です。働きかけをすることによって結果としてソーシャルキャピタルが高まる場合はありますけれども、高めるためにやるのではないという理解です。

【委員】 ソーシャルキャピタルをこういうふうにしたいというのを国交省の政策としてやっていくと、ややこしい問題がいろいろ出てきそうです。例えば町内会組織というのは一体どういういうふうにあるべきかみたいな昔からあるような議論が出てきます。それは地域の条件として、外生的に与えられるというのがいいのかなという気がするのです。そうすると、今度は、ソーシャルキャピタルが低いところの地域は自己責任として死ぬ確率が高くなりますよということを言うか言わないか、が問題となってきます。ハザードマップで危険な地域に住んでいる人には、ちゃんとそれをお知らせして、死ぬ確率が高いですよ、安い土地を購入したのですから、そこまでは責任を持てませんと、自己責任の部分をはっきりさせることが、行政として意味のあることではなかったかと思うのです。ソーシャルキャピタルについても、それが最終的に死ぬ確率に影響していますよ、あとはおたくの地域の自己責任になるわけですけれども、そういうことを考えてマネジメントしてくださいというふうな整理というのはあってしかるべきかなと思っています。

【国総研】 そこのところを放置するというのはいけないというか、我々としてはまさに看過できないところなので、要するに災害というのはこういうものだという認識をきちんと持ってもらう。どこが危ないかとか、いつ危ないかとか、いざというときにはどういう行動をとらなければいけないかということについての啓発活動はきちんとやっていく。弱いところについてはそういうところを防災力向上ということでやっていかなければいけないというメニューを提示できる形でしていきたいと考えております。

【委員】 皆さんがコメントされている地域防災力のことなのですが、今お話を聞いていると、災害の種類は地震から崖崩れから何でも対象にしますというふうに聞こえますし、2枚目の「地域防災力の構成要素」で、ある意味では時間的な流れの中で、時系列の中でこういう構成要素があると書かれているのですけれども、どういう災害に対しても、その災害が発生する前から発生した後まで1つの尺度で地域防災力をはかってしまおう1つの方法でですね、「尺度」という言葉はよくないのですけれども、ちょっとそれは乱暴過ぎるのではないかなと。水害の場合ならこうだとか、水害が発生した直後ならこうだとか。私なども、地震災害のときに例えば火災の話をすると、何軒ぐらい消してもらえるのが地域防災力だとか、何平米ぐらい焼失面積を減らす力があるとか、話としてはかなり細かくなってしまうのですね。全部一緒くたにやってしまいますよというと、最終的には何が何だかわからなくなってしまうと思うので、得意とする、例えば水害とか土砂災害に限るとかいうふうにした方がいいのかなというのがコメントでございます。

【主査】 よろしいですかね。

 最後になりましたけれども、3枚目を出していただけますか。これはソーシャルキャピタルの特性と書いてあるのですけれども、もしガイドラインとかマニュアルがこれにのみ基づいて作成されると極めて危険な結果になるのではないかと思うのですね。私、風景街道で本当に田舎にあっちこっち行っていますけれども、中山間地域の人たちですけれども、こういうことって余り観測されませんよね。現場の人で、もっと公益のことを考えているし、逆に言うと濃密な人間関係というけれども、通勤とか通学が自動車依存になってしまっているので、そういうふうなコミュニケーションが全くない。都会よりももっと孤立化していることをよくおっしゃいますしね。ですから、余りステレオタイプのものに基づいてやるよりは、○○先生がおっしゃったような、そういう方法論ともうまく組み合わせた方がいいと思いますね。

 それから、ソーシャルキャピタルというのは最近はやりですけれども、ある意味ではまだきちんと概念規定が統一的にされていないような議論でもあると思うのですね。私は○○先生と違って、行政もそのコミュニティの一員なのだから、みずからが責任ある部分についてはソーシャルキャピタルの向上に努力すべきだ、そのためのコミュニケーション型行政だと思っているのです。そういうスタンスの書物なども最近よく出版されていますので、考え方がいろいろあるわけですから、皆さんから御注意いただいたように、ソーシャルキャピタルというのは何なのだろうかということを心平らかにしてやられた方がいいのかなという気がします。

 もうまとめなければいけないのでまとめさせていただきますけれども、そういったソーシャルキャピタルについてもうちょっとよく考えてくださいよということの御注意とか、想定している社会、高齢化社会なのか外国人がいる社会なのか、あるいは災害とはどうなのかとか、あるいは方法論ですね、ケーススタディなのか全国的な調査なのか、あとハードとソフトの対策の関係をよく考えてくださいという御注意をいただきました。

 結論は皆さん、大事な研究だから実施すべきだというふうなことをおっしゃっておられて、それでいいと思うのですけれども、いただいたコメントをできるだけ反映していただくような方向で研究を進めていただければという取りまとめをしたいのですけれども、よろしいですね。

 今、各委員からコメントをいただけますので、それをまた反映した形で評価シートを作成したいと思います。どうも御苦労さまでございました。

す。

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〈事前評価E侵食等を考慮した治水安全度評価手法に関する研究

【主査】 それでは、次ですけれども、「侵食等を考慮した治水安全度評価手法に関する研究」の御説明をお願いします。

【国総研】 それでは、始めたいと思います。河川研究室の○○と申します。この研究を担当しております。

 「侵食等を考慮した治水安全度評価に関する研究」ですけれども、侵食等というのは、侵食及び堆積、洪水中の土砂移動によって川の流れとか堤防とかが壊れたり水位が上昇したり、そういうことをちゃんと評価して治水安全度を評価していきましょうという研究でございます。まず、その動機について説明したいと思います。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとにP)の表示〕

P) 左の方に円グラフがございます。これは、堤防が決壊する原因を昭和22年から最近まで集計したものですけれども、越水が43%でほとんど占めているのでございますが、次いで侵食が多い。その後に、浸透といいまして、高い水位が続いて堤防が水を含んでぐずぐずになってしまって決壊するということでございます。

 越水については、洪水中の川の水位を見ていれば、あるいは予測できれば、それと堤防の高さを予測できれば何とか評価できるわけでございますけれども、侵食とか浸透、こういうものについては、水位が堤防の高さを越えなくて、それでも壊れてしまうということで、非常に予測が難しい。ですから、リスクが多くて危険である。この辺の評価をしてやらなければならないということで問題提起させていただいてございます。

 最近の事例ですけれども、これは侵食によって壊れた事例ですが、中部の天竜川ですけれども、平成17年9月の洪水で壊れていますが、これについては、上流に諏訪湖という湖があって、そこで天然のダムみたいになって、雨がやんでからもなかなか水位が下がらなくて、高流速が長い時間当たって堤防が削れてしまった。ここも護岸があるのですけれども、護岸があったにもかかわらず壊れてしまった。

 隣の事例は阿武隈川水系の荒川です。東北の河川でございますけれども、これについても上流部の方で高水流が長雨のせいで長時間当たって堤防が侵食、削れてしまって壊れてしまった。

 あと、堤防がないところでも、掘割河川のようなところでも、これは北陸の関川の上流部ですけれども、これは学校ですが、河岸が侵食されて、建物まで迫って非常に危ない状態だということで、こういう事例が最近ふえているということです。

 それの原因としましては、河川整備が進んで、越水というのは水位ですけれども、堤防あるいはダムみたいな洪水防除施設ができると、水位は抑えられるのですけれども、ハイドロが平らになって洪水の継続時間が長くなる。洪水の継続時間が長くなると、それだけ土砂移動にさらされる時間が長くなって、侵食というものがふえてきている。全体的には年間の件数は減っていると思うのですけれども、越水に比べて、水位で評価できるものに比べて、水位で評価できない、侵食のようなパーセンテージが今後ふえつつあるということで、こういう研究を提案させていただきました。

P) 侵食等を考慮した治水安全度を評価するために、その評価手法をまず確立してあげなければならないということでございます。そのためには、まず洪水流の挙動を解析してやる。今まで、河道計画、直轄、補助等でやられているのは一次元、川の水位だけを計算するということでございましたけれども、河道の侵食とか堆積を評価しようと思ったら、三次元的な水の流れというものをちゃんと考慮してやらなければならない。

 これは河道を上から見た図ですけれども、これはA−A断面ですけれども、こういう断面方向の2次流というものもちゃんと評価してやらないと、ここに働く侵食力とか、堆積するような土砂移動を起こすような力というのは評価できないということです。そのためには、後で申しますけれども、定期縦横断みたいな100mごとの測量断面ではなくて、きちっとした境界条件、三次元的なメッシュの境界条件が必要になってくるということでございます。それが後で出てくるレーザープロファイラデータというところとつながっていくわけでございます。

 それから、水の流れを解析した後に、今度、土砂の移動がどうなるか。ここにポンチ絵で侵食する箇所、堆積する箇所。これを平面的に見たら、内岸側で流速が遅くなって堆積して、外岸側で掘れる。これはわかりやすくかいてありますけれども、実際の問題はこんなに簡単な理由ではなくて、澪筋があって、どっちに振れるかというのはもっと長い区間で計算して、どっちに寄るかというのは複雑な計算をしないと出てこないわけですし、なかなか難しいと言われていますし、ここに「侵食に対する耐力を解析して」とございますけれども、護岸の耐力というのはそんなに簡単に定式化できるものではございません。水の流れに比べると、土とかコンクリートブロックの破壊現象ですから、そういうものはちゃんと全国的に事例を集めて解析してやる必要がありますねということで、ここは研究的要素が強くて、モデル開発をしていくということでございます。ここに、耐侵食力については未解明な部分が多いと書いてございますが、それをあわせてこういう平面的に、例えば、危険な箇所、注意を要する箇所ですとか安全な箇所というような色分けをしていく。これも、こんな簡単にかいてございますけれども、本当はもっと長い区間で解析して、複雑になっていく。こういうものができると、どのように整備していったらいいかということがわかるわけでございますし、コンクリートでがちがちに固めてしまえばいいというふうに考える方もいらっしゃるかとは思いますけれども、環境に配慮したことを考えれば、なるべく護岸とかは張りたくないわけですし、守らなくてもいいところはちゃんと自然の河岸を残すということも、こういう高度な解析をすると可能になってくるわけですし、あと、危ないようなところは事前に対応する、予防的に整備しておけば整備費も節約できるということでございます。

P) もう1点の、先ほどレーザープロファイラとつながりますと言ったのですけれども、三次元的な流れを評価しようと思ったら、100mごとの定期縦横断の断面ではなくて、こういうメッシュ型の入れ物をデータとして集める必要がある。これについてはもう全国の1級河川でどんどんとられておりまして、もうできております。ただ、レーザープロファイラデータはランダムデータと書いてございますけれども、2m四方に1カ所ぐらいの密度でとっております。しかも、ここにありますけれども、地物の樹木とか草本類あるいは建物等を含んでいるということで、なかなかそのままでは使えないデータでございます。これをちゃんと処理してやる必要があるということでございます。ただ、データとしてはもう取得済みです。今後、2級水系等をやる必要はあるかということはありますけれども、1級河川についてはもう取得済みでございます。

 あと、レーザープロファイラデータは、水面下はとれません。ただ、これについても、侵食が顕著であるような急流部分というのは、上流の中小河川で水が少ないときにレーザープロファイラでとってございますので、水面下の占める部分が低うございます。それで、なくても大部分はできると思いますけれども、下流部分でもちゃんと境界条件を整備しようと思えば、やはり測深器プラスGPSのような仕掛けをつくって水面下の三次元データをとることも考えたい。これについては、これは船でとる絵がかいてございますけれども、最近は航空測量でとれるようなこともあります。方法はいろいろある。

 それから、フィルタリングですけれども、これが今、手動、目視でやって、平米当たり5万円と高いので、これがレーザープロファイラの利用が進まない一番の大きな原因になっておりますので、何とかしたい。これは今、公共測量の手法に基づいてやっておりますので高いのですけれども、水理計算だけをするのであれば、そんな精緻なものは要らないわけですので、水理計算にたえ得るような精度のものをつくれるような技術で、簡便なものをつくっていきたいということです。それをちゃんと解析用のソフトに乗るような形にして、せっかくつくったのですから、リレーショナルデータベースとして管理して、多数の人が利用できるようにしたいということでございます。

P) これが全体の計画というか、レーザープロファイラ絡みで国総研等が河川絡みで整備しているもののプロジェクト的な研究の総体ですけれども、ここの部分については、レーザープロファイラデータを使って水位評価をしたものはもう今年度発表済みで、今、1級水系について水位で評価した治水安全度を評価しております。あと、レーザープロファイラのデータベース化というのは当所の水害研究室の方がやってございますし、氾濫原もレーザープロファイラをとっておりますので、それを活用したこともやっておりますし、本研究については河道内のことを評価しようということで河川研究室から提案させていただいてございます。

 以上で発表を終わります。

【主査】 ありがとうございました。

 御説明に対して御意見、コメントをいただければと思います。

【委員】 まず、課題名が「侵食等」という言葉と「治水安全度」という言葉にちょっとひっかかるのですけれども、いかがでしょうか。ここでは主として河岸侵食ですね。1枚目のスライドは河岸侵食の掘込河道みたいなやつも含んでいましたけれども、対象とするのは主として堤防ですか。

【国総研】 堤防も掘込河道も侵食系……

【委員】 とにかく河岸侵食全般。

【国総研】 全般ですね。護岸とかも評価したいというものです。

【委員】 侵食等の説明のところで土砂の堆積とかいう話もありましたが、堆積も考えるのですか。

【国総研】 そうです。土砂動態という意味においては、堆積と侵食というのは一体不可分なものですから、それが評価できないと何もできないですし、最近減っていますけれども、堆積によって狭窄部等が閉塞して水位上昇を起こすということも事例としてはありますので、そういうこともちゃんと評価できるようにしたいということでございます。

【委員】 そうすると、やっぱり各河道の場所、場所の治水安全度を評価するということですか。侵食に対する河岸の強度に関する研究なのかなとも思ったのですけれども、ねらいはもうちょっと広いと。治水安全度と言っていいのかどうかわからないのですけれども、河道の安全度の評価をやる研究ですね。ですから、タイトルが本当に「治水安全度」でいいのかなと思った次第です。

 それと、データベース化という話がありましたけれども、以前、河川GISというのがありましたよね。あるいは、河川の管理台帳のデータベースとか。ああいうやつとは連動していないのでしょうか。

【国総研】 連動するつもりですし、当研究室でもいろいろつくっていますので、ここはここで1つつくりまして、ここからそういう台帳ですとか、ほかの河川管理データベースとかにリンクを張ってデータを供給する、そういう仕組みを考えたいと思います。データ自体は1カ所に集中させる必要は必ずしもないと思いますので、ここではLPデータのメッシュデータをデータベース化して、ほかのデータベースからも利用できるようにしたいということでございます。

【委員】 ありがとうございました。とりあえず。

【主査】 ほかに。

【委員】 ほとんど同じような質問になるかもしれませんが、何となく研究の内容が少し寂しいかなという感じを受けました。というのは、いわゆる治水安全度ということでしたら、河床変動的な要素をもう少し考えなえればならないと思います。河道湾曲部での侵食と堆積だけでなく、例えば、上流からの土砂で河道に異常堆積が生じ、そのために治水安全度が下がるとか、実際にはいろいろなプロセスがあるとは思うのですが、そう観点も含めたものにしていただけると、よりよい治水安全度評価につながってくると思います。研究費が6,000万ということですよね。多分、データをとるのに物すごく費用がかかるのかなということもありますし、この範囲でどこまでできるかということが私はよくわかりませんけれども、そういった点も検討されてはどうでしょうか。

【国総研】 おっしゃるとおりでございまして、ここのポンチ絵には、この短い区間で侵食メーンのようなかき方をしてございますけれども、低水路の澪筋はどっちに寄るかというのはまさに河床変動、土砂移動の話ですから、必ずしも侵食力のみを見ていればわかるというものではございません。ですから、かき切れなかったので短い区間でかいてございますけれども、上流から下流における長い区間においてどのように土砂が生産されてどのように堆積するかを考慮して総合的な治水安全度を見るのだということの中でやりたいと考えております。

【委員】 山地部からの土砂の流出はここでは考慮しないという理解でよろしいのでしょうか。

【国総研】 そこは境界条件としてちゃんと考慮したいと考えていますけれども、具体的にどのようにというのは今考えているところでございます。

【委員】 そのことを考慮すると研究がまた難しくなってくると思います。例えば土砂の出るタイミングとか、いろいろな問題も関係してくるでしょうから。この研究で明らかにしたいところをもっと明確にしながら研究していただけたらと思います。

【国総研】 わかりました。土砂の生産の方は非常に難しい問題だと認識しておりますけれども、非常に重要だということは認識しております。

【主査】 研究費はもうちょっと増額した方がいいとか、そういう感じですか。

【委員】 データをこれからさらに蓄積していくのでしょうか。

【国総研】 レーザープロファイラデータ自体は既存にございます。

【委員】 それならそれほど費用はかからないのですね。

【国総研】 それはかからないです。加工するためにはかかるのですけれども。ただ、河床部分、水面下の方をどれだけ一生懸命やるかによって変わってくることはございます。

【委員】 先ほど私が指摘したような山地からの土砂生産も含めた議論がすぐにできるかどうかというと難しいかもしれませんが、これからその方向で研究が進んでいくような計画を立てていただけたらと思います。

【委員】 今の御質問と関連があるのですが、今聞いていると、1つの河川全体で治水安全度をはかろうとしているのか、ある区間を区切ってやろうとしているのか。どのくらいの評価の単位を、治水安全度を出すときにお考えなのでしょうか。

【国総研】 余りはっきりは考えていないのですけれども、少なくとも、今、絵にかいているような短い区間ではなくて、もっと土砂移動が評価できるような長さ。ですから、少なくとも1つの水系でしたら3つとか4つとか、セグメントごととか、そのくらいの……

【委員】 河川の管理事務所の単位ぐらい。上流、中流、下流とか。

【国総研】 そのくらいの長さでは評価は要ると考えています。でないと、評価はできないのかなと考えています。

【委員】 ただ、実際に評価の値を出したときに、受け取る側、住民にとっては、例えば50kmの範囲での治水安全度はと言われても、ほとんどあれですよね。

【国総研】 ただ、色分けの方はもっと細かくするわけでして、土砂移動の全体の解析の範囲をどこまでにするかというところは、やはり広くとるべきであって、ただ、色分けはちゃんと細かくしてやる必要……。

【委員】 細かくすればするほど、逆に、先ほどの土砂の生産量とか、いろいろな要素を入れていかなければいけないですよね。そこら辺の兼ね合いが、今の段階では理解できないのです。ある意味での兼ね合いはあると思うのですよね。

【国総研】 その辺の兼ね合いは感度分析的な評価でやりたいとは思っていますけれども、難しい問題だと思っています。

【委員】 今の先生の質問と関連するのですけれども、そういった研究をした成果として、簡易に治水安全度評価を行うことができるソフトウエアを開発するということをもって地方自治体等の河川管理者にとっても云々というのが目標といいますか成果としてあるわけですけれども、その評価指標というのをどう考えていらっしゃるのかなということなのです。今、国交省さんがお持ちのLPのデータだとか、あるいは、やられようとしています、いわゆる水面下の河床のデータですね、定期的に観測することになると思うのですけれども、そういったことまでデータがないと評価できないようなシステムですと、恐らく地方自治体の中で「さあ、やりなさい」といっても、河床データすら持っていないところはたくさんあると思うのですね。ですから、簡易にというのはどういうイメージでいらっしゃるのかなというのを教えていただきたいと思うのですが。

【国総研】 少なくともレーザープロファイラのデータは1級水系でしたらほぼありますので、水面下をどの程度とればいいかというのはありますけれども、かなりの部分は1級水系であればカバーできるのではないかと思っています。我々、今、別なソフトウエアをつくっていますけれども、そういうものとバンドルさせて総合的に解析とか、事務所ですとか地方自治体の技術者がみずから解析できるようなソフトウエアを配布することによって評価してもらうということを考えていますけれども、答えになっていますでしょうか。

【委員】 要は、地方自治体というところにちょっとひっかかるのですけどね。国交省さんは恐らくできると思うのですよ。数年前ですけれども、私も河床データをデータベース化するというのを地方自治体で進めてみたらどうかというのを、幾つかの自治体を回ってみたのですけれども、まずデータ自体を私らは持っていませんというのが圧倒的に多かったのですよね。そういうところに、河床データの細かいきちんとしたものがないとこのシステムを使えませんというと、多分どこも使わないんじゃないか。いいものができたとしても使わないとしたら、これはまたもったいない話だなということです。

【国総研】 レーザープロファイラもリモートセンシングの一種ですけれども、そういうものが活用できて、そういうデータでなるべく勝負できるところに持っていきたいなと考えておりまして、レーザープロファイラというのが1つの材料になると思っております。

【主査】 ○○先生が退席されましたけれども、コメントをいただいておりまして、今の○○さんのコメントと関連していますので紹介させていただくと、「レーザープロファイラ情報を活用して、立体構造を考慮して高水位時の侵食や堆積作用を予測して治水安全度を高度に評価することは妥当な目的である。しかしながら、1級河川のようにLPデータが既存として考えるケースだけでなく、LPデータ取得のコストも考慮しながら、LPデータ代替となる立体構造情報の有無など、副次的に低コストで有効な手法を検討することも有意義だと推察される」と書いてあります。参考にしていただければ。

 ○○先生も、「河川整備・管理の効率化に資すること大と思案されるため、ぜひ推進されたい」ということであります。

 全くの素人の質問ですけれども、河床の変動というのは極めて安定的なのですか。今、LPデータはあるとおっしゃっていたけれども、いずれ変わっていくわけですよね。

【国総研】 ですから、定期的にとっていかなければ。

【主査】 何年ぐらいで。

【国総研】 今、定期縦横断が5年に1回とっていますけれども、水面下はとれませんが、河川にもよりますけれども、定期的にとっていく必要はあると考えております。ただ、活用方法をちゃんと示してあげないととれませんので、その意味も含めて、ちゃんと使える方法を考えたいということです。

【主査】 ありがとうございます。

 どうぞ。

【委員】 私も全くの素人で恥ずかしいのですけれども、危ないところは丈夫に護岸をつくろうみたいなところの施策に結びつけようというわけですよね、簡単に言えば。

【国総研】 逆を言えば、不要なところはつけないという考え方です。

【委員】 ほかを節約してですね。

【国総研】 ええ。だから、より重点的、効率的な整備ができると考えております。

【委員】 素人が言うのですけれども、やっぱりそれは平面的な設計の段階にとどまっているような気がするのです。せっかくある箇所を曲げたいわけですよね。真っすぐにしないで曲げたい。ここを残したいんだと。だったら、ここの流速を遅くすればいいのかなと思うのです。逆に、この大事な場所でないところで、もっと真っすぐにつくって、そこで高低差をいっぱい稼いでおいて、大事な箇所をゆっくりにするとか、そういう全体的なことというのは設計論の中で出てこないのですか。

【国総研】 設計論としては、水制工をつけて水当たり部分を変えたり、そういうものはございます。だから、これはそういうものにも応用はできると思っています。ここでは護岸で固めることしか書いてございませんが。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

【委員】 ○○主査がおっしゃったこととも関連しますけれども、現況の地形に対してこの河道がどれくらいの安全性があるかということは評価できると思うのですが、もう少し踏み込んで、10年ぐらいはここはこれぐらいの安全度で大丈夫なんですよとか、それが高度な評価なのではないかなと。今は地形がこうだからこれぐらいの流下能力がありますよ、侵食にはこれぐらい耐えられますよというのではなくて、ちょっとずつまた削られていくのだけれども、5年後までは大丈夫とか、10年後までは大丈夫なので、ここはしばらく手を打たなくていい、だけど、ここはすぐ侵食が激しくなるから、ここは早く手を打たなければいけないとか、そういう優先順位を決めるような評価手法とか、そういうふうに展開できませんかね。

【国総研】 効率的な整備、予防的整備というのはまさにその意味で書いてございますけれども、そういう意味で取り組んでいくつもりです。そのときには土砂生産の方が非常にポイントになってくるので、それは非常に難しいなとは実感してございます。

【主査】 よろしいですかね。

 この研究も大事な研究で、推進していただきたいというのが皆さんの御意見だったと思います。ただ、治水評価度というのは本当にどういう範囲で定義するのか、どういう形で説明するのかという極めて本質的な御質問等があって、そこのところをきちんと考えてくださいということです。予算が決まっているので仕方ないかもわからないけれども、本当に2,000万円にできるの、本当に目指しているところが高いレベルだったら、私の伺った範囲での個人的な感想で、今言うべきかもわからないですけれども、さっき申し上げましたように、増額ということも考えた方がいいんじゃないのとか、時間軸上の変化の問題ですね、私、舌足らずな言い方で、○○先生からきちっと補足していただいてありがたかったのですけれども、そういったものとか、あるいは、レーザープロファイラデータがあるところはいいのだけれども、そうじゃないところにいろいろな既存のデータがあるはずだから、それとの連動、連携というのをさらに追求していただきたいとか、いろいろ貴重なコメントをいただきましたので、反映して、さらに研究を推進していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。どうも御苦労さまでした。

 休憩ですかね。何分まで。

【事務局】 ちょっとおくれておりますので、50分開始ということでお願いいたします。

午後2時40分 休憩

午後2時50分 再開

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事前評価F科学的分析に基づく生活道路の交通安全対策〉

【主査】 もういいですかね。では、御説明をお願いいたします。

【国総研】 「汽水域環境の保全・再生に関する研究」、環境研究部長の○○でございます。よろしくお願いいたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとにP)の表示〕

P) 汽水域環境は複雑で微妙なバランスのもとにある。ここにありますように、物理環境、化学環境、生物環境それぞれが複雑に絡み合っているとともに、インパクトがありますと非常に影響が及ぶということでございます。

P) 本研究の必要性でございます。最近非常に水災害が頻発しております。これに伴いまして、これは下流の河道でございますけれども、下流で洪水が頻発して非常に危険な状況で、下流を掘削せざるを得ないというようなところが各地で出てきております。そういった意味で、この汽水域の問題、環境との調和をどう考えるかという問題は喫緊の課題でございます。

P) また、生物の多様性の問題で、非常に重要な問題でございますが、汽水域だけではないかもしれませんが、河川の利用がさまざま進行している。また、昨今では、地球温暖化への生物多様性の影響という問題が懸念されております。もう1つは、汽水域という問題につきましては、いろいろな研究が従来個別のテーマとか個別の河川でやられているものはございますが、先ほど言いましたように、保全・再生と施策まで含めた、あるいは管理を含めたような形での研究というのは体系化されていないという問題点もありますとともに、一方では、逆に、先ほど言った個別の問題だけではなくて、いろいろと相互に関連するような影響評価をするための科学的な知見というものの蓄積が不十分ではないかという問題意識に立ちまして本研究を行いたいということでございます。

P) 本研究の進め方でございますが、お手元にも資料でございますが、3カ年の予定で全体9,000万の予定でやっていきたいと思っております。

 まずは体系化という意味で、データを収集・整理しましてデータベース化を図っていきたい。物理環境・化学環境・生物環境のおのおののデータ、それから、関連しましてその周辺のデータも集めていきたいと思っております。これが、ある意味では、生物多様性の観点からの汽水域の位置づけというものにつながっていくのではないかと思っております。

 また、来年度、データベースだけではなくて類型化ということで物理環境の観点等、ほかの観点もあると思いますが、河道形状、河床材料、潮位差、波浪の大きさといったようなものを類型化していきたいと思っております。それに基づきまして、2年度目には、物理・化学・生物環境の形成要因、相互の関係の分析というものを、これはデータベース化だけでできるわけではありませんので、当然いろいろな事例を研究しながら進めていきたいと思っておりまして、それらをもとにI−R(インパクト−レスポンス)を類型ごとに作成していきたい。例えばインパクトとしましては、先ほど言いました河道掘削、あるいは流入土砂の変化によっていろいろ変わるという問題があろうかと思います。そのあたりをしっかりやった上で、最終的には治水・利水・環境を総合的に勘案した汽水域の保全・再生・管理のあり方の提案というものに結びつけていきたと思っております。2年度目になるか3年目になるかはありますが、地球温暖化の問題も非常に喫緊の課題でございますので、この辺もにらみながら成果を出していきたいと思っております。

P) 特に生物多様性、古典的なオダムの教科書でも、これは一次生産の分布図でございますが、ほかの地区に比して汽水域あるいは沿岸域は非常に生産性が高いというようなものが出ておりますので、そういった意味での生物多様性という意味では重要な意味を持っていると考えております。

P) また、類型化として、イメージでございますが、これは太田川の放水路の事例でございますが、こういった直線とか湾曲云々というのが出ておりまして、湾曲の内岸、黄色の部分は、例えば一番上のような干潟といいますか、それから直線3型というのが赤いところですが、そこがこのようになっている。そして、下流の方の直線2型というところでは、砂によって干潟がずっと形成されているというような形になっています。類型化のイメージの事例という例としてお出しさせていただきました。

P) それから、先ほど言いましたように、直線がいろいろタイプがありますが、類型化、データベース化とも多少絡む問題ですが、平面位置、高さ、横断形状、河床材料、植生、微地形、成因といったようなことを整理していくようなイメージでやっていきたいと思っております。

P) それから、植生の関係で言いますれば、これは例えばの事例でございますが、これも太田川の事例でございますが、この測線ごとに植生の繁茂状況、あるいは裸地の状況はどんなふうになっているかというのを調べた事例でございますが、一番上、つまり標高が非常に高いところではヨシの繁茂が地点数も多く見られている。それから、もう少し低くなるとフクドという植生がふえてきている。そして、これよりも以下になってしまうと裸地がほとんど見られているだけで植生はないというような形でございまして、こういった一つ一つの生態系についてこういう分析もしながら、形成要因を、何がきいているのかという観点で整理をしたいと思っております。

P) 汽水域は、今ほど申しましたように、生物のハビタットあるいは系という問題にも、水質、底質、地質、水理の環境というものがいろいろインパクトとして働いております。それだけではなくて、上流からは洪水、あるいは物質の土砂を含めた供給、海からは逆に潮汐ということもありまして、物質の供給というものはありますが、塩水の問題、そういうものがインパクトとして加わっているということがありまして、先ほど申しましたように、おのおのこの部分についてはいろいろ研究がされていることはありますが、これをトータルとして体系化するような形で今回の研究を進めていきたいと思っております。

P) また、○○先生からも御指摘をいただいているところでございますが、例えば新しい切り口としては少し土砂環境ということに注目して、いわゆる汽水域が上流に近ければ通過をするのですが、湖に近いような、海に近いといいますか、そういうところでは蓄積がほとんどだということで、このバランスを見ていくような整理はできないかという切り口、あるいは空間分布として時間のスケール、あるいはイベントの問題、この辺はどの程度の頻度であるか、大きさがどれくらいかというあたりを整理していく話があるのではないかというようなイメージとして整理をしています。今までは河道掘削の例としましては、塩水くさびの遡上がどんなレスポンスがあるのか、あるいはそれが生態系にはどんな影響があるかという整理を、ざくっとしたものはあるのですが、先ほど申しましたような、こういう土砂の問題、あるいは時間・空間の問題、こういったあたりを今回の研究の中では重点的にやって整理をしていきたいと思っております。

P) 研究の体制でございます。環境研究部が主になりますが、河川、海岸研究部、それから沿岸海洋研究部、そして下水道研究部とも下水道放流水の問題で連携をとっていきたいと思っております。また、データ提供としては地整さん、それから地方自治体、都道府県でも部分的にはございますので、そういったもの、それから大学の研究機関、各種研究会とはいろいろな連携をとっていきたいと思っておりますが、今考えておりますのは、こういう関係者でのワーキングあるいは研究会をつくりながら進めていくのが一番いろいろな意味での情報が密に入るのかなと思っております。

P) それから、関連の研究としましては、個別の河川で、先ほど言いました太田川、岩木川、あるいは有明海、木曽川、多摩川といったところがありますし、物質循環の問題、あるいは地球温暖化に関する研究とも有効活用させていただきたいと思っております。

P) 成果の活用としましては、先ほど言いました汽水域の保全・再生・管理に関するガイドライン的なものをつくるだけではなくて、具体的に整備計画の策定に資するようにしていきたい。また、COP10というのが22年に名古屋でありますが、こういったあたりの議論にも資するようにしていきたいと考えております。

 以上でございます。

【主査】 ありがとうございました。

 それでは、今の発表に対して御質問、コメントをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。なければ……。

【事務局】 御退席されました○○委員、○○委員より事前の御意見をいただいておりますので、御紹介させていただきます。

 まず、○○委員からでございます。「河川環境管理財団の研究事業成果に汽水域のインパクト−レスポンスに関する類似の研究成果があったと記憶しており、それをさらに発展させるものと推察するが、どういうふうに過去の成果を踏まえて、どのように新たな手法、解析評価手法を導入して有意義な成果を出すのかのシナリオをより明確にすることが期待される」でございます。

 ○○委員からでございます。「先ほど事後評価がありました「流域における物質循環の動態と水域環境への影響に関する研究」と関連するという意味で意義のある研究であると評価できる」という御意見をいただいております。

 以上です。

【主査】 お答えはございますか。お二人はここにいないから無くてもいいかなと思うのですが、情報の共有化のためにお願いします。

【国総研】 先ほど申しましたように、この河道掘削のインパクト−レスポンス、今、○○先生がおっしゃったような財団の研究の一環としてこういうインパクト−レスポンスを整理しております。ただ、これは、先ほど申しましたように、塩水くさびというものをメーンに考えて、いろいろな形で、ここのも入っておりますが、そういうことでレスポンスというものまで整理をしたというものでございますし、また、このとき生態系の部分についての影響というのは、ある意味ではざくっとした形で整理をしていただいているようでございますから、このあたりを、先ほど申しましたように、新しい切り口、あるいは生態系の関係でのハビタットあるいは系というものを考えたもとでの研究を進めていきたいと思っております。

 それから、○○先生の御指摘はそのとおりでございまして、先ほどありました物質の動態に関するもの、非常にこれも最近だんだんふえてきているのですが、私どもの研究、それから伊勢湾の研究、それから物質動態ではほかの研究もいろいろ出てきているようですから、そういったあたりの研究も有効に使いながら本研究も進めていきたいと思っております。

【主査】 ありがとうございました。

 そのほかいかがでしょうか。

【委員】 11枚目のスライドで、河道の掘削の例でその影響を分析しようということですけれども、これはそれ以外の人為的改変というのはどんなものが考えられるか、ちょっと教えてもらいたいのですが。

【国総研】 人為的改変イコール河道かはありますが、今考えておりますのは、インパクトではないかもしれませんが、ここにありますような、干潟の造成によってどういうふうなハビタットが変わっていくかというような話、あるいは流入土砂の変化によって、河道掘削も若干絡みますが、上流から土砂が来たり、あるいは土砂がたまったりというようなことによって、先ほど言いました生態系あるいは化学の関係につきましてもどういうような影響があるかといったあたりを追求していきたいと今のところ思っております。また、これにつきましては、先ほど言いました下水のことも連携するという形の中で、下水道放流水とか、そういうものを頭の中に入れないとまずいなと今思っております。

【委員】 理学的なモデルは立派なものができそうなので、そういう政策研究の方もいろいろやっていただければなと思います。

【国総研】 わかりました。

【委員】 汽水域というのは、川ですと河口域ですね、塩水と淡水が共存するところ、それからサロマ湖ですとかああいう湖がありますね、ラグーンですとか湖とかありますけれども、主としてここで扱う汽水域は水の部分だけなのか、あるいはその周辺の生態環境までも取り扱うのか、その辺はどうなのでしょうか。

 それと、再生のあり方ということで検討されるということなのですけれども、どういう条件なら再生できたと判断するのか、そういう基準みたいなものについてどういうふうにお考えがあって、想定しておられるような場所で再生しないといけないような状態のところがあるとしたら、大体何年ぐらいかかりそうな……、実際問題としてはですね。このプロジェクトは3年ですけれども、その辺の見通しというのでしょうか、再生に向けてこの研究がどんな役割を果たし得るのかというあたり、3つぐらいお聞きしましたけれども、よろしくお願いします。

【国総研】 ありがとうございます。1点目の、汽水域の周辺の生態系をどう考えるかという話、汽水域のどの辺をターゲットにするかという話でございますが、メーンは水域なのですが、当然干満の差がある地区もありますから、そういった意味では、周辺というのは川の外までという話ではもちろんないのですが、川の中といいますか、川の変化があるところ、あるいはインパクトを与えるようなところを少し考えていきたいと思っています。

 再生のあり方という観点では、今これはどちらかというと物質循環の中でも土砂の観点で考えております。それが、先ほど言いました物質の関係で言いますれば、栄養塩の関係とか、そういうことも関係してくると思いますから、その辺の目標を定めまして、何らかの形で入れられないかということを考えております。

 3点目の話は、多分状況はいろいろ地域によって違うと思いますので、一口には何年とは申せませんが、少なくとも小規模にやった再生みたいなものは1年目ぐらいからもう成果が出ているというようなところも、小さな河川ではあるようでございますし、そういった意味では数年規模、あるいは長い規模では10年規模になるのかなと考えております。この研究の中でも、そういう状況が見られるようであれば、ぜひ見ていきたいと思っております。

【委員】 計画書の方にも、例えば5枚目のスライドにもあれなのですが、御説明の中で、今まで汽水域の中で個別のいろいろなことはわかって研究はされているのだけれども、それを体系化するところに意義があるというお話があったのですが、その中に、やはり気になるのは5枚目の一番右下の地球温暖化というのが突然出てきて、地球温暖化の影響というのは、釈迦に説法になると思うのですが、やはり非常に大きな問題で、むしろこの一番右下のやつをとりあえず外しておいて、今まであるいろいろな知見を体系化する、それがまず大きな仕事でないかなと。殊さら地球温暖化というのを入れたというのが、ちょっと私自身よく理解ができないのですけれども、その辺についてのお考えをお聞かせいただきたいのですけれども。

【国総研】 このグラフで最後に、実は諸影響の「検討」ではなくて「推定・整理」というぐらいなっておりまして、今、先生おっしゃるように、いわゆる体系化ということで言えば、確かに今までの知見をいろいろ整理してまとめるのは重要であろうということは当然あるのですが、ただ、そうなったときに、地球温暖化の観点というのは何も見ていないのかというような話になりますし、あるいは先ほど言いました河川の整備計画とかそういうものに生かしていくという意味で言えば、20年、30年という将来像でございますから、そういった観点で言えば地球温暖化の影響というのも出てくる河川もあるだろうという意味で、地球温暖化によってどういう影響が考えられるのか、あるいは、どの程度できるかわかりませんが、それがどのように関係してくるのかというあたりを整理していく必要があるなということでこういう表現にさせていただいているという状況でございます。

【委員】 いずれにしろ、例えば計画書の方にも海面上昇という言葉が入っていますけれども、現状で例えば汽水域はここまでというふうにやったところで、例えば海面上昇で将来的には汽水が非常に広がってしまう可能性は当然あるわけですよね。個人的には、やはり地球温暖化による影響とかというのは当然あることはわかっているのだけれども、それはとりあえずこの研究の外に置いておいてというのが、中に含めてしまうよりは、何でもやりますよ言い方はあれなのですけれどもというよりは、ある部分をきっちりやりますよと言った方がインパクトがあるのかなというのが個人的な感想です。感想ですから結構です。

【委員】 最終的に治水・利水・環境を総合的に勘案した管理のあり方というものを提案されるということですが、流域の望ましい姿として治水・利水・環境を総合的にどうバランスを考えて,どのような汽水域にするべきなのか、そういう議論はされないのでしょうか。

【国総研】 そういう観点もぜひ研究の中では考えていきたいと思うのですが、ただ、先ほど言いましたように、治水・利水・環境というのをバランス論で整理するというのは多分難しいと思いますので、どの程度まで整理ができるかはありますが、そういう観点も含めて研究の中では考えていきたいと思っております。

【委員】 実際に事業を進める上では、その辺が結局大事かなと思います。この研究では特にそこが中心課題ではないにしても、そういうところも少し考慮しながら研究をしていただけるといいかなと思います。

【国総研】 わかりました。

【主査】 ほかによろしいですかね。

 質問なのですけれども、研究の実施体制の中に大学、研究機関、各種研究会というのがあって、多分環境系の研究機関は随分、特に生物系とか理学系のものについてはやっておられると思うのですけれども、そういうものも含まれていると考えてよろしいですか。

【国総研】 研究機関というので代表させてしまったのですが、いろいろな環境関係の研究機関も含んでいるということです。

【主査】 わかりました。

 ほかにいかがでしょうか。

 地球環境問題、ある意味では現実に起こっていると言ってもいいかもわからないわけですよね。塩水くさびの話とかですね。ですから、アダプテーションを考えると、これは私の個人的な意見を申し上げているのですけれども、これを片づけてからこっちというとちょっと遅いような気もしますので、志は高くそういうのも視野に入れておいていただいた方がいいのかなというふうにも思いましたけれども、これも感想ですので、お願いします。

これも皆さん随分重要な研究だというふうな御意見だったと思います。政策とか整備への言及ですよね。例示をいろいろされていましたけれども、やはり河川管理者といいますか、国土整備の観点からその辺を常に視野に入れてくださいという御意見でございましたし、再生ということはいいのだけれども、その条件とか、それに対してどう思うかとか、あるいは総合的に治水・利水・環境ということを書いてあるのだけれども、なかなか難しいので焦点を絞ってくださいという御意見だったように思います。その辺を踏まえて研究をぜひ推進していただければと思います。御苦労さまでございました。

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〈事前評価G都市におけるエネルギー需要・
供給者間の連携と温室効果ガス排出量取引に関する研究

次は「都市におけるエネルギー需要・供給者間の連携と温室効果ガス排出量取引に関する研究」でございます。お願いします。

【国総研】 下水道研究部長の○○でございます。よろしくお願いいたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとにP)の表示〕

P) それでは、「都市におけるエネルギー需要・供給者間の連携と温室効果ガス排出量取引に関する研究」ということで、来年度から3カ年を予定しております。この研究は下水道研究部と都市研究部が合同で実施しようというものでございます。

 この図は、色帯ごとに平均した大気中の二酸化炭素濃度でございます。この研究は、温室効果ガスの排出抑制、すなわちミティゲーションを目的とするものですが、その必要性につきましては改めて御説明するまでもないと思いますので、もう少し詳細な背景について御説明申し上げます。

P) この左側の円グラフでございますが、部門別の二酸化炭素排出量でございます。特に「業務その他」というのと「家庭」というのを注目していただきたいのですが、「業務その他」が18%、「家庭」が13%で、全体から見ると小さいのですけれども、20年ぐらいのトレンドを見ますと、ずっと伸びている。特に「業務その他」がずっと伸びていまして、恐らくIT機器なんかの普及が原因と思われます。これは特に都市に集中しているわけですので、都市政策を預かる立場とすると、ここが非常に関心の高いところです。さらに、「業務その他」と「家庭」は、電力の消費に伴う間接排出分が非常に高いということも特徴でございます。

P) これはことしの3月28日に発表されました京都議定書目標達成計画でございまして、エネルギー起源の二酸化炭素、これは大体全体の温室効果ガスの9割近くを占めているのですが、これについて6つの方針が出されています。点から面へとか、需要対策に重点を置いた需給両面からのアプローチとか。その中の1つに「主体間の垣根を越える」というのがあって、「エネルギーの需要・供給に関連するそれぞれの主体は自らの役割を適切に認識し、自らが直接管理する範囲にとどまらず、他のエネルギー需要・供給者と連携してエネルギー効率の更なる向上を目指す」と。この研究のテーマでございます「需要・供給者間の連携」というのはここからとっております。さらに、「都市における」と冠しまして、要するに都市政策あるいは都市計画、そういったものである程度コントロールが可能と思われる、政策論ができる範囲をここでは対象にしようと考えています。具体的には、この目標達成計画の中に街区・地区レベルにおける対策ですとか、エネルギーの面的な利用の推進ですとか、上下水道・廃棄物処理における取り組みといったようなことがありますので、こういったところが対象のメーンになろうかと思います。

P) これは1つの例でございまして、下水汚泥を原料とするバイオガスの地域供給の事例。これは神戸市の下水汚泥からとったバイオガスを市バスの天然ガス車、バスで使っている。要するに、下水道も市バスも公益事業ですから、典型的な公益事業連携になります。

P) これは東京都の例で、これも下水道で恐縮なのですが、下水汚泥を原料として炭化して炭をつくって、これを東京電力に渡して、福島にございます火力発電所で燃やす。下水汚泥を原料にしていますので、これを燃やしたときに出てくる炭酸ガスは温室効果ガスとみなされませんので、そういったメリットが出てくる。年間3万7,000tとありますが、実は、厳密に言うと、東京から福島に運ぶ間の運搬に係る炭酸ガス発生はここでカウントしておりません。こういうときに、どういうふうにそういったものを評価すべきかというのは、きちっとしたものはないのですね。いずれにしても、東京都は宣伝のためにこれを言っているということです。

P) これはちょっと趣が変わりますが、街区レベルでのエネルギー。街区レベルも、都市計画というのは街区単位で都市計画、都市政策を打つ場合がありますので、対象になります。例えば、建物間熱融通。これは大きなオフィスビルで、ITからたくさんの廃熱が出る。例えば隣にホテルがあった場合に、給湯の需要がありますので、廃熱から給湯をつくってやりとりをするということは1つ例えばあります。それから、熱エネルギー利用システムで、たまたま下水管が通っていると、下水の熱をヒートポンプでくみ上げてこういったところに供給するとか、それらデータセンターというのは非常に廃熱を出しますので、それを共通化して効率的なクーリングシステムをつくるといったようなことが例えば考えられます。

P) 具体的な研究のフローですが、まず全国の事例調査と代表例についての詳細研究をしましょうと。今は、たまたま私は下水道研究部なので下水の話をしましたが、その他、廃棄物ですとか、それから供給者側でなくて需要者側ですね、さっき市バスの話をしましたが、需要者側がどういう条件を望んでいるかということも非常に大きな研究対象になろうかと思います。それから、建物間融通もそうですね。こういった街区レベル。それから、最新の技術開発動向調査もいたします。これに基づいて連携事業のフィージビリティに関する評価をやります。

P) これが1つのイメージなのですが、公益事業・地域の特性に基づいてエネルギーの需要・供給のマッチングをします。それから、連携事業の候補を抽出して、経済性分析あるいはインセンティブ分析をして、こういうものに基づいて、例えば都市計画、都市政策でどういうふうに規制したり誘導したらいいのか。こういう流れになろうかと思うのです。こういう流れを促進するといいますか、ファシリティとするような各種指針等を取りまとめていきたいということでございます。

P) これは炭酸ガスの排出量の削減目標数値を盛り込んだ地区計画の事例でありまして、飯田橋駅西口地区の市街地再開発事業でございます。ことしの5月に千代田区が地区計画を発表しまして、ここの再開発に当たって炭酸ガスの発生量を4割削減しますと。これは1つの都市計画を使った、あるいは都市政策を使ったミティゲーションの事例でございます。

P) 千代田区は単にこの地区だけではなくて、周りのこういう施設とのエネルギー連携を模索しております。実はこういう広域的なエネルギー構造の変更というのは、都市計画とか都市政策の中では非常におくれた分野でございまして、国土交通省の都市・地域整備局の中でも非常にホットな課題で、今年度をかけて根本的にどうしたらいいかというのを研究していこうというのが、今、都市・地域整備局で議論している内容でございます。そういうものとも連携しながら進めていきたい。

P) これは排出量取引をめぐる最近の動きでございまして、環境省は自主参加型国内排出量取引制度を平成17年からやっていますし、経産省もこういう検討会を設けております。それから、洞爺湖サミットに向けて福田ビジョンというのが6月9日に出されて、ことしの秋には国内統合市場の試行的実施、これに向けて現在は経産省と環境省と金融庁が調整を一生懸命図っている段階でございます。あわせて、東京都は、2010年から大規模事務所に炭酸ガスの排出削減を義務づけ、あわせて取引制度を導入する条例が6月25日の都議会で成立いたしました。

P) 国レベルではどんなことを議論しているかということなのですが、これは環境省の検討会の例です。方式、オプションが4つ出されていますが、川上というのは要するにエネルギーの総元締めです。川下は実際に使っている場所。こういういろいろなバリエーションがありますねと。環境省はどうも方式4を提案しているようですが、要するに基本的にファンダメンタルといいますか、基本的な、根本的なところをまだ議論しているというのが日本の国のレベルの段階でございます。

P) それに対して、東京都は個別の事業所からの排出量を2000年比で25%ぐらい削減することを目標に、平成22年から年間1,500kl以上の事業所に対して規制をかけていくということを実際にやるわけです。大体3,000カ所ぐらいの事業所、そのうち8割がオフィスビルだと考えられます。履行手段としては、みずから省エネ技術などを使って削減対策をするか、あるいは他者が実施した削減対策による削減量の取得、これはまさに取引ですね。こういうことを東京都は始めるわけでございます。

P) こういった取引を実際に適用した場合にどういうことが考えられるか。未利用エネルギーを供給者から中間事業者を通って需要者に渡したようなエネルギー連携をした場合に、えてして供給者というのは排出量がふえたりするのです。中間事業者もふえます。需要者でがくっと減って、トータルしてみると減るということが多いと思われるのですが、先ほど東京都の例で言いましたように、中間事業者が無視されたりすると、ちょっと効果が大き目に出る。これはケースを幾つか挙げて、○というのが排出量の規制の対象になる場合。全部対象になれば一応理論的には適正評価が可能なのですが、こういうふうに縛りを受けるのだけれども、連携することによって排出量がふえるところはインセンティブが働かないおそれがあります。こういうところもそうです。逆に、(d)のケースのように供給者が非対象になるような場合は、今度は過大にインセンティブが働くおそれがある。これは要するにある種試行実験です。もっといろいろなバリエーションが考えられると思うのですけれども、こういうものについてちゃんと実態調査をしていきたい。

P) 排出量取引が実際に適用された場合に、こういったエネルギー連携についてどういう影響が及ぶのだろうか。各連携主体に係るインセンティブの分析を、例えばアンケートとかインタビュー調査をする。この場合、東京都がせっかく平成22年度から始めますから、東京都と協力していろいろ詳細調査をすることも考えております。それから、典型事例における影響評価分析をする。今後どうなるかわかりませんが、排出量取引が制度化される場合に、どういった対応策が検討されるだろうか。そういったものについてきちっと整理しておきたいというのがねらいでございます。

P) これが最終的なアウトプットのイメージなのですが、未利用エネルギーをどのように活用できるかとか、あるいは街区のエネルギー構造をどういうふうに診断すべきか、あるいは処方箋を出すべきか。これは要するに都市プランナーであるとか、あるいは自治体の環境部局だとか都市計画部局の人たちの問題意識だと思うのですが、それに対してこれをサポートするような連携技術の事例評価と適用可能な最新技術メニューとか、あるいは連携技術の事業性診断あるいは処方箋に関する指針を出していこうと。さらに言うと、これは国レベルではぜひ必要だと思っていますが、こういった都市計画と排出量取引とのポリシーミックスのあり方について、きちっと課題とその対応策について整理しておきたい。これが最終結果のイメージでございます。

 以上でございます。

【主査】 いかがでしょうか。お願いしたいと思います。

 では、なければ、お2人の御意見の御紹介をお願いします。

【事務局】 それでは、○○委員と○○委員からの事前提出御意見について御紹介いたします。

 まず、○○委員からでございます。「CO排出量低減の視点から下水道事業等の公益事業の見直しをすることは有意義である。しかし、公益事業には浄水、廃棄物等ほかにもございますが、その関係について事前資料の中で言及されていない点が気になった」ということ。また、「研究タイトルが大き過ぎるようにも思われる」ということ。「研究対象を明確化することも、研究を開始する前に重要なプロセスではないか」ということです。なお、「研究前段の公益事業にかかわるエネルギー連携と、後段の街区レベルのエネルギー構造の改善の関係も少し明確でないように感じる」という御意見でございました。

 ○○委員からの御意見を御紹介いたします。「環境省、経産省、エネ庁、電力・ガス会社とも技術的にも資金的にも連携して、効率よく進めていただければいいと考える」ということでございます。

 以上です。

【主査】 レスポンスをお願いいたします。

【国総研】 ○○委員のお話は、私ども大変悩んだところでございます。悩んだといいますか、最初に御指摘がありました公益事業で、私はどうしても下水道なものですから下水の例を多用しているのですが、実際にはごみの焼却場ですね、大体平均的な都市で、市町村レベルの都市で、都市の事務事業が出しております温室効果ガスのうち、4〜5割が一般廃棄物処理で出ているのです。ですから、逆に言うと、それは減らせる可能性があるのですが、減らすといっても、焼却にこだわっている限り減らせるわけがないので、エネルギー連携によって減らせるかもしれない。その連携の一番の候補が、御存じのように、廃棄物焼却発電とか、あるいは余熱といいますか、そこの焼却熱をうまく活用するというものでございます。これは全国でもかなり普及はしておりまして、例えば平成18年度末現在で1,280のごみ焼却施設があるのですが、そのうち869施設で余熱利用、291施設で発電施設がございます。総発電能力は158万kWという統計があるのですが、実際こういったもののうち、事業所の中で使っているのか、あるいは外との連携をしているのか、これについてのデータというのは必ずしも十分ではない。我々はこういうものを対象にしたい。

 あともう1つ関心があるのは、単にエネルギーを供給する側ではなくて、受け取る側がいないと連携ができませんので、こういった場合に受け取る側がどう考えるか。例えば街区レベルですと民民の場合がありますよね。民民というのは、相手がもしその気でなくなったら契約が取り消しということがありますので、そういうリスクをどう考えるか。逆にそういうところで公的なものが入って都市計画の手法を使っていくと安心感が生まれてくるのではないかとか、あるいは公益事業であれば、基本的に都市とか自治体が運営していますから、そういうものに対しては安心感があるのではないかとか、そういったものも1つの研究対象になろうかと思っております。

 それから、テーマが実は確かに私ども随分悩んだところでございまして、「エネルギー需要・供給者間の連携」というのは余りにも大きいのではないかというのは御指摘のとおりなのですが、私どもとしては、さっきもちょっと言いましたように、都市計画、都市政策あるいは公益事業、国が関与する部分、あるいは自治体がちゃんと関与できる部分、そういうものでちゃんと政策として成り立ち得るもの、反映できるもの、そういうものを対象にしていきたいと考えております。そこは、あえて言うと、「都市における」と冠をつけることによって、そこを何とか醸し出したいと。我々も非常に悩んだのですけれども、研究レベルでは難しいかもしれませんが、行政レベルでは、これで少なくとも財政当局には理解してもらえると考えてつけているわけでございます。

 それから、エネルギー連携、公益事業と街区レベルの構造の関係も明確でないということがあって、これは関係はある場合はあるのですけれども、先ほども街区レベルのお話をしたときに下水熱を利用してという話があったのですが、これはどちらかというと積極的に関係づけるというよりも、どちらもさっき言いましたように都市だったり国だったり、都市政策、制度上ある程度働きかけることができる、そういう手段を、少なくとも可能性があるというものについて研究していきたいという意味でございます。

 それから、環境省とか経産省とかエネルギー庁とかとの連携というお話があって、私どもとしては、むしろそういうところと一緒にやるためにまずやっていきたいと考えております。経産省の課長さんなんかとも電話で話をすると、彼らは今根本的な議論をしているので、まだ正直言って都市計画、都市政策とかミクロな部分までは頭が行っていないのです。だけれども、私どもの方がちょっとこういう話をすると、彼らも非常に関心が高いのですね。すぐ乗ってくる。ですから、私どもが先にある程度走れば、彼らと話をできる余地はたくさんあるだろうと考えております。

【主査】 ほかにいかがでございましょうか。

 スライドでも飯田橋の例とか、ほかには、今、池袋で豊島区さんが考えておられることとか、ある意味では現実の方が先に行ってしまっているところもありますよね。ただし、そこは都市計画との関連で言うといろいろ苦労されているところでもあるので、都市計画への連携ということに対してどういうふうな焦点の当て方をされるのかとか、いろいろな焦点の当て方があろうかと思うのです。本当に技術的なエネルギーのカスケード利用のシステム設計をするという焦点の当て方もあるでしょうし、こういうことがよりうまくいくようなスキームを都市計画的に用意するとか、あるいはそれのファイナンスの問題とか、いろいろな焦点の当て方があると思うのですけれども、今どの辺が重要になるだろうと思われていますか。

【国総研】 私はさらっと都市計画とかと言っているのですが、私は専門家でないのであれなのですが、これは恐らく再開発促進区を定めるための地区計画としては……、要するに国として余りこういう適用を考えていなかったんじゃないかなという気はするのです。だけれども、今や自治事務ですから、地方自治事務ですから、こういうのがどんどんふえてくる可能性があって、恐らく本省の都市計画サイド、都市政策サイドとしても、こういうのをどう扱ったらいいのかというのは恐らく戸惑っている状況ではないかなと。したがって、もっと基本的なところから考えてみようというのが今の状況だと思います。

P) さらに言うとこういうところまで、千代田区はこういうふうなことを誘導したいと言っているのですが、都市計画、都市政策上なかなか難しいところもあって、クリアにできるとは限らないのです。だから、こういうのも恐らくやっていかなければいけない可能性がある。反対に、これまでは公益事業者間の連携というのは、数はそんなに多くないのですが、苦労しながらもやってきたのは、ある意味では下水道は都市施設ですし、焼却施設だってそういうところですので、ある意味では都市計画の制度をうまく使ってきたということがあるのですね。だから、そういうものを1つ基本に置いて、本省がもっと制度的にいろいろな議論をしていく中で、パラレルにこういう連携みたいなものについて私どもも調査を進めて、行政的な政策立案に反映させていきたい。個々のビルの省エネだとか、そういうものについては省エネ法もありますし、今度、排出量取引も入っていけば、ベクトルとしては同じなのですけれども、連携となるとちょっと違うのかなという感じがしています。

【国総研】 この千代田区の例でございますけれども、ある面先行しているのは事実なのですけれども、やはり再開発というのは新しく何かつくるということなので、そういう面での面的な街区レベルの省エネ対策というのは、むしろ地域冷暖房という形で30年前から行われていたという面では、ある意味で既にやられている。ただ、そういった新たに開発していくという余地は今後なかなか出てこないであろう。むしろ既成市街地などで熱需要というのが相当あって、改善余地があるというところが圧倒的に多くて、そういったところをどうしていくかというところは課題で、そういったところをむしろ技術的な面のフォローも含めてどうしていくかというのが今後の課題で、どうしていくかというときに、都市計画なり都市関係の支援制度をどう使っていくかという検討をしていくのかなと考えております。

【主査】 ちょっと話が細かくなり過ぎるかもわかりませんけれども、千代田区が出された環境モデル都市の申請書を読んでいますと、千代田区は都市更新が非常に活発なところなのですね。ですから、今のペースが続くとすると、50年ぐらいたつとほとんどのビルが建てかわってしまうので、トップランナー方式で結構省エネ化が図れますよみたいなことが言われているのですけれども、やはりそれは千代田区だからこそという面もあると思うのですね。日本の大部分の都市では必ずしもそういう状況にないわけで、そういうところでトップランナー機器の導入をどうするかとか、エリアマネジメントをどうするかとか、これは極めて重要なポイントだと思うのです。ですから、そういう意味で都市計画、都市政策が出ていくところというのは十分あると思いますし、あるいはエリアマネジメントのための組織をいろいろ考えておられますけれども、そういうふうなものにさらにどう発展させるとか、結構いろいろなところに広がっていくし、現実は多分先に進んでいて、そっちからどんどん、どうさらに実現化するための都市政策、制度を考えていくかというのは極めて重要だと思いますので、ぜひ頑張っていただければと思います。

 それと、情報提供だけなのですけれども、最新の動きで、官邸の地球温暖化問題懇談会の下に政策手法分科会というのがあって、そこで排出量取引だの見える化だの市民参加の方法を包括的に議論されていますので、見ておいた方がいいかなと思います。

【委員】 教えていただきたいのですけれども、千代田区がこういう施策をやると、千代田区はどういうメリットがあるのですか。これによって東京都から税金、予算をたくさん回してもらえるとか、東京都は東京都でこういうことをやることによって国から何かお金がたくさん回ってくるとか、あるいは免税されるとか、何かメリットがないと何のためにやっているのか。単に減らすだけでしたら、減らすためのまた努力のコストが要るわけですよね。千代田区はどういうメリットがあってこういうことをやっているのか教えていただきたいのです。

 それと、こういう施策をして各区や市や町村でCOを削減できるとすると、日本全国こういう施策を今後20年、30年やっていけば、日本全体でこれだけCOが削減できることに貢献できますよという定量的な評価までねらっておられるのかどうか。この研究でですね。そこまでねらっておられるのなら、国に対してもっと訴える力もあるのだろうと思うのですけれども、そこまで行かずに、今はどういうベストミックスとかどういう連携のフィージビリティがあるかというのを明らかにするだけでとどまろうというのか。そのあたりの研究のねらいとか展望。千代田区のメリットと、この研究の展望といいますか、ねらいといいますか。

【国総研】 千代田区についてお答えいたします。必ずしも詳しく把握していないのですが、千代田区にとって具体的なメリットというのは特に聞いてございません。恐らくCOを削減するという先進的な自治体であるというアナウンスメント効果なのかなというふうに思っております。なお、それにかかるコストということで、それについても詳しく聞いておらないのですけれども、もしかしたら、COを削減するためのいろいろな省エネ機器を導入したりして、結果的にエネルギー消費量が減ると、それだけエネルギー代が減って、トータル的に得する場合も結構ありますので、そういうことなのかもしれないです。ちょっと想像で申し上げましたが、そういうことでございます。

【国総研】 千代田区はそのとおりで、私、手元に持っていたと思ったのだけれども、たしか地球温暖化防止の基本条例みたいなものを持っているのです。それで、将来の目標値を掲げています。これは東京都も全く同じなのです。東京都は何で22年度から排出量取引を始めるかというと、別に東京都にとって具体的な経済的メリットがあるかと言われたら、むしろ東京都から事業所が逃げますよね。だからそれは問題だという議論は随分あったようです。今でも結構事業所からいろいろな不平不満が出ているようですけれども。ただ、それをやることが、ある種政治的な意味合いが大きいのだろう。千代田区も恐らく同じではないかと考えられます。

 それから、全国にこれを同じような手法を展開するというのは、都市計画においてどこまで見通せるかというのは、先ほども○○主査からお話があったように、千代田区だとか東京都は特別な場所ですから、すぐに全国展開ということには必ずしもならないかもしれません。しかしながら、都市構造を長期的に変えていかなければいけないというのは、何となく関係者の共通した認識でございますので、そういうときにある程度有効だろう。恐らく長期的に考えると、排出量取引も、国内排出量取引も導入される可能性が高くなるのではないか。そのときにお互いに政策が相反するような作用を持つ可能性があるのではないか。それは問題だろう。したがって、長期的にはそういうことを見通して、一緒に導入するのであれば、お互いにどういうことを勘案しながら、調和を図りながら政策を打っていくべきかということの勉強を始めるのは、今だったらそんなに遅くないかなという感じがしております。

【委員】 わかりました。環境立国というか、環境先進国を目指す日本の先進的な都市政策のあり方を追求していくということで研究の意義があるし、それによって日本国としても世界的な名誉なり地位なりメリットなりを受けることができるということなのですかね。

【委員】 二酸化炭素を減らす論理で、取引を導入したいということを言うのは、1tの二酸化炭素を減らす費用を、ある意味平準化したいということだと思います。お金がたくさんかかるところでCOを減らすのはやっぱりやめた方がいいだろうという考え方が裏にあるとすれば、それは狭い地域でやるというのはなじまなくて、本来できるだけ広い地域でやるべきだということだと思うのです。京都議定書も、日本は1t減らすのに400ドル、ヨーロッパは300ドルで、アメリカは200ドル。何で日本が減らさなきゃいけないの、こんなむだなことはやめた方がいいよという批判もあります。ただ、そういう経済的な論理でやる人と、そうではなくてブレークダウンしていくような方法論とか、セクター別アプローチと最近言っているのは、私はよく意味はわかりませんけれども、やはり割り当てみたいなのをやりながらという、また別のマクロの論理があるのだと思うのです。都市計画でミクロに積み上げることが、マクロの目標と矛盾がないような形で持っていかないと、おっしゃられたように途中で破綻すると思うのですね。結果的に見るとむだなことをやっていたんじゃないのかと言われてもおもしろくないわけですね。だから、今回いいチャンスですから、そういういろいろな論理、いろいろな考え方を整理されて、また教えてもらいたいなと思います。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

 これもコメントなのですけれども、社整審の市街地整備分科会でコンパクトなまちづくり、随分強く強調されましたよね。そういったものとの関係とか連携というのは強く意識されていると思うのですけれども、具体的な今後の展開というのは何か考えておられるのですか。あれはあれ、これはこれという感じですか。

【国総研】 コンパクトシティが、言葉は悪いですけれども環境に優しいとか、そういうことについては大体認識が出てきたかなと思っているのですが、だからコンパクトシティを目指すために当然都市計画をいろいろ駆使するといいますか活用するという方向は出てくると思うのですね。今回の場合は、ですからそういう意味では考えてはいるのです。当然エネルギー連携をするためにはコンパクトの方が連携しやすいのは明らかですので、あと、コンパクトにすることによっていろいろな省エネ技術の普及も図れるかもしれません。もちろん移動に伴う環境負荷が小さいとかいろいろな要素はあると思うのですが、ただ、余りコンパクトシティにばかり、そこが絶対的な目標だということについて、そこを目指すために何かをするということでは必ずしもないかなと思っておりまして、とりあえずミクロを積み重ねていくと恐らくそういう方向に行くのだろうという方向ではないかなと考えております。

【主査】 わかりました。

 ほかにもしなければ、時間が過ぎてしまいましたので、取りまとめたいと思います。これも推進すべきであるという、おもしろい研究であるという評価が多かったと思いますけれども、研究の意義というのですか、千代田区に対してどういう現実的なメリットがあるのだという話がありましたけれども、やはりこの研究自体の現実的なメリットはどう置くかとか、全国あるいは全世界への展開の仕方についてどう考えるかとか、あるいは排出量取引とかエネルギー需給というのが結構大き過ぎるテーマですので、やはり都市とか公共施設、下水とかごみ焼却場との連携をよく考えて、焦点を当てて進めてくださいという御意見だったと思いますので、その辺を踏まえて取りまとめたいと思いますから、参考にしていただければと思います。どうも御苦労さまでございました。

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〈事前評価H品質の信頼性を考慮したライフサイクルコストの評価手法に関する研究

あと2つです。「品質の信頼性を考慮したライフサイクルコストの評価手法に関する研究」でございますが、お願いしたいと思います。

【国総研】 道路研究部道路構造物管理研究室の室長の○○です。私の方から説明をさせていただきたいと思います。タイトルは「品質の信頼性を考慮したライフサイクルコストの評価手法に関する研究」ということでございます。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとにP)の表示〕

P) 最初に位置づけでございますが、道路構造物、非常にたくさんな資産が形成されておりますが、それの合理的なマネジメントということで、今、「ストックマネジメント」というとらえ方をして研究を進めているところでございますが、大きく2つあります。上に書いています1つが、計画的な維持管理をしていく中でライフサイクルコストの縮減を図っていく、ライフサイクルコストを考慮した合理的な管理手法の確立というのが1つ。もう1つは、維持管理で得られました知見をいかにフィードバックしていくかということで、これは設計・施工にフィードバックされるということだろうと思いますが、ライフサイクルコストを縮減できる設計施工技術の確立ということが大きなテーマになってございます。

P) ライフサイクルコストの算出につきましては、かなり事業の中で実際に取り入れられてきているところでございますが、ここに示しておりますのは塗装系の選択というのを一例に挙げておりますが、例えば鋼道路橋におきまして選択する。従来の塩化ゴムの使用ですと寿命が短いということで、初期コストは安くても、いずれ塗りかえていくうちにトータルとしては高くなる。新しく開発されたポリウレタンで少し寿命が延びたけれども、あるいは今盛んに使われておりますフッ素樹脂塗装ですと、少しコストはかかるけれども、それが仮に寿命が非常に長いのであれば、トータルとしてライフサイクルコストは下がる。こういった手法で既にかなり一般化されておりますけれども、これはいずれも確定論的な線を引かざるを得ない状況になっておりまして、果たしてこの優劣比較だけでやっていっていいのかというところが問題認識でございます。

P) 例えば、これは耐候性鋼材。いわゆるフリーにさびさせて、緻密なさびをつくることによってそれ以上さびないと言われている鋼材で、非常に使われてきております。昭和50年代ぐらいからメンテナンスフリーということで採用が増加していたわけですけれども、実際に道路橋に関して技術基準が入ったのが平成5年であります。その間に20年ぐらい実績があったわけですけれども、今となっては環境不適合でだめだという橋が幾つか出てきている。あるいは今非常に厳しい状態で、ひょっとするとだめではないかというものも出てきている。このように、知見が蓄積されることで初めてライフサイクルコストの評価が固まってくるというものを使わざるを得ない実態があります。

P) あるいは、蓄積を待てずにやらざるを得ない例もたくさんあるわけでありまして、昨今劣化対策ということでいろいろな補修・補強技術を採用してきておりますけれども、例えば上の写真はコンクリートの塩害でありまして、非常に塩が入って鉄筋がさびるということで、断面修復をして、さらに塗装をした例ですけれども、早くに再劣化してしまう。これを採用した時点では余りいい材料あるいはそのときこれはいいだろうと思った材料についての知見がないまま使っているということでございます。あるいは、下に同じようにアルカリ骨材反応を生じた橋脚の塗装したものですけれども、早くに再劣化している。こういった新しい技術については、過去の知見がないがために、さらにライフサイクルコストの評価が非常に困難であるということでございます。

P) その中で、冒頭言いましたように、確定論的にマル・バツ評価をして採用していかざるを得ない状況になっているわけですけれども、「期待される品質水準」あるいは「その確実性の程度」、こういったものをもう少しライフサイクルコストの評価の中に取り入れていくということができれば、設計施工段階における新しい技術評価の信頼性が向上される。管理者あるいは提案者がある程度共通認識、ある程度合意のもとで、リスクも覚悟で選んでいけるということになるのではないかということでございます。

P) 実際に何をするかということですけれども、研究の内容としては2つ考えてございます。1つは品質水準の確実性の評価ということで、直轄、国の管理している道路橋の定期点検をずっとやってきております。昭和63年に初めて要領ができまして、今、平成16年に改訂した2回目の点検要領での点検がほぼ今年度に大部分終わってしまうということですので、そのデータを使いまして、当初の性能のばらつきが結果的に耐久性にどう影響を及ぼしてきたかということを分析してやろうということでございます。上にライフサイクルコストと性能の絵をかいてございますが、例えば当初もつと思っていたものが、右の絵でありますけれども、実際には思ったより早く落ちてくるとか、あるいは思ったより長もちしたといったものは恐らく初期の性能に大きく依存しているだろう。その結果としてライフサイクルコストの見積もりも思ったよりもかなり幅を持っているということでございまして、実際にどういったものが影響したのかというばらつきの程度を分析して、何か事前に評価できないかということを考えていきたいということでございます。

P) もう1つの観点ですけれども、今既に非常に新しい技術を、総合評価でありますとか技術提案型の発注方式の中で提案を優劣評価して採用してきてございます。これはちょっとややこしい絵をかいてございますが、要は標準解を持っている従来の技術でありますと、期待されるライフサイクルコストといいますか、期待値と実際に評価される値は同じぐらいですけれども、例えばこの1つ右に書いてある赤い絵ですけれども、多分高くつくだろうなということで、これはだめだというふうに採用したものが、実際にはデータあるいは事前の開発の段階のデータを見ると非常に期待値としては安くつくということでして、これは過小評価によって採用が制約されているということでございます。例えば右の例ですと、逆にこれは非常に安くつくのだろうということで採用したものが、よくよくデータを見ていくと非常に実験の検証データが限られているとかで、期待値としては高くついてしまう。こういった逆転現象も起きる。これは過大評価による不適合な採用も起こり得るということでして、新しくつくられるものについてどういった技術評価がされてきているのかということのレベルを評価しまして、採用の段階で取り入れてやろうということでございます。最終目標といたしましては、ここに書いていますように、技術評価点などに何がしかの形で反映して実務への適用方法を検討していきたいということでございます。

P) 研究計画ですけれども、1,500万の3カ年ということで計画書を出させていただいておりますけれども、今言いました2本柱、過去のデータの分析と、2番目の、今しきりに開発されて導入されてきているものがどういった評価をされてきているのかということの分析、この2本。そして、少し見えてきましたら実務への取り込み方法を考えて3カ年という計画で考えてございます。実施体制といたしましては、先ほど言いましたように、直轄の定期点検のデータはかなり集まってきておりますので、各地整あるいは本省道路局と調整をいたしまして、それらのデータを使わせていただいてやるということでございます。それから、今導入されてきている、提案されてきている技術につきましては実績もございませんし、どちらかというと開発段階でどんなデータでもってその品質を保証してきているのかというデータをいただかなければなりません。これにつきましては、学、協会あるいは企業等に協力をお願いしたいということで、過去に共同研究等実績があります橋梁建設業協会ですとかPC建協さんとか、そういったところと連携していければ多少データが手に入るかなと考えてございます。

P) 最終的な成果の活用ですけれども、これも繰り返しになりますが、技術審査・評価、いろいろな契約の中で使われてきますけれども、そういったものを実務に反映を図っていきたいということでございます。

 私の説明は以上でございます。

【主査】 どうもありがとうございました。

 御質問、コメント等あれば、お願いしたいと思います。

【委員】 ライフサイクルコストの考え方というのは以前からあるわけで、いろいろなところでそういう考え方を用いてやられていることなのですけれども、その中に、つくり方ですとか物の素材の精度だとかいうことから当然ある確率の幅の中に入ってくるということで、それをもう少し定性的にあらわそうということかなとは思うのですけれども、そのときに、最後の方でおっしゃられました、橋梁点検のデータだとかいろいろお持ちだという、それはわかっているのですけれども、その中に今つくられている施設の耐久性に関する評価といいますか、そういうものがどこまできちんと得られるのかなというのがちょっとクエスチョンなところがあるのですけれども、それと、冒頭にもおっしゃっておられましたけれども、最近の新しい技術でつくったものについては、その評価期間がまだほとんどないわけですね。実際にばらつきが出るのかどうかもわからないというようなところ、そういうところを少し何か簡単にといいますか簡易にというか、代替的にといいますか、評価する方法を考えていただく必要があるのかなとは思います。ライフサイクルコストの評価の考え方としてばらつきがあるのは当たり前の話ですので、そこはきちんと押さえていただくということは重要な研究だと思いますので、ぜひ進めていただきたいとは思います。

【主査】 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 それでは、済みません、お願いします。

【事務局】 ○○先生が今急遽御退席になられましたので、3名の先生方のコメントをお知らせいたします。

 ○○委員からは、「極めて今日的な課題であり、ぜひ推進されたい。ただし、既にLCC評価の研究の蓄積も多いと思われるので、差別化を図るべき。あるべき論を超えて具体的な施策も提案いただきたい」とのことです。

 次に、○○先生から、「今回の研究対象外と思われるが、現状では品質のLCCとともに環境負荷の視点も同時に補助的な検討項目に追加しておくことが将来の新たな研究の視点を生み出すものと期待される」とのことです。

 ○○先生からは、「品質の信頼性を考慮したLCCという目新しいテーマに取り組むという観点から評価できる」ということでございます。

 以上です。

【主査】 ありがとうございます。いずれも肯定的な評価だったと思いますが、もし何かレスポンスがありましたら、お願いします。

【国総研】 差別化を図るということは、今回我々この研究を計画する段階で少し意識をしておりまして、定性的というよりは、どちらかというと確定論的な研究が非常にたくさんあります。○○先生から御指摘がありました環境負荷につきましても、例えばCOの排出量みたいなものにすべてを換算して評価するとか、いろいろな研究がされておりますけれども、やはり信頼性ということに直接触れている研究はまだ少ないということがありましたので、実際のデータで信頼性、ばらつき、どこまでできるかちょっとわからないのですが、それに取り組もうというのが差別化の観点でございました。

 環境負荷につきましても、今言いましたように研究がいろいろあるのはわかっているのですけれども、少し荷が重いというか、今、技術提案型の中で環境に対する影響度みたいなやつもマル・バツ評価なんかで非常にラフな定性評価をしておりますので、もし耐久性に対する信頼性のばらつきみたいなものがある程度数値化できるとか、あるいはパターン化できるとかいうのができれば、方法論としてはひょっとしたら使えるかもしれないということで考えておりますので、御意見を参考にしたいと思います。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

 よくわからないのですけれども、右側2つの確率分布はどういうふうにすると得られるかなと今のところ想像されているのですか。

【国総研】 1つは、部分係数設計法の検討を設計基準の方でやっているのですけれども、そのもともと持っているばらつきの分布というのは必ずしも正規分布ではなくて、非常に偏りをしています。そういったことを考えると、例えば鋼材でもJISの鋼材ですと非常に中心に寄ってきますけれども、新しい鋼材は非常に偏りがあるのですね。頭押さえされていて、すそが片側に非常に寄っているとか、そういった特性が出ればこういうのが出てくるのではないか。今、主眼は、非常に幅広なことを言っていますけれども、防食技術、コンクリートの品質、この2つがまずはターゲットかなと思っておりまして、そのあたりですと材料的にデータが得られる可能性があると考えています。

【主査】 リスクマネジメントのこういう確率分布の推定は結構研究蓄積があったりするのですよね。ですから、その辺ぜひ参考にされるといいのかなと。いろいろなデータを持ってきて、それらからどう整合性のある確率分布を与えるかというふうな数学モデルの提案とか、結構蓄積がありますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

 ほかにいかがですか。

 では、もしなければ取りまとめをしたいと思いますけれども、維持管理が中心になる時代にもう入りつつあるわけですけれども、そういう観点から非常に今日的な課題である。LCCの既存研究との差別化という意味では、不確実性とか品質ということがあって、それは胸を張れる部分だと、確かにそうだと思うのですけれども、そこをどう具体化していくかというところがやはり1つのキーポイントだと思いますので、その辺ぜひ成果を期待しております。COも本当に重要だと思いますので、ぜひチャレンジしていただければなと思いますので、よろしくお願いいたします。そういう評価でよろしいですよね。

 では、どうもありがとうございました。

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    〈事前評価I集約とネットワークの観点からみた地域連携の効果分析に関する研究

【主査】 きょうの最後でございます。もうちょっとですので頑張っていただきたいのですが、「集約とネットワークの観点からみた地域連携の効果分析に関する研究」でございます。よろしくお願いいたします。

【国総研】 総合技術政策研究センター建設経済研究室の○○と申します。「集約とネットワークの観点からみた地域連携の効果分析に関する研究」ということで御説明をさせていただきたいと思います。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとにP)の表示〕

P) これは平成21年度、来年度から3カ年の予定で研究をしたいというものでございます。

 背景といたしましては、昨年の11月に地方再生戦略というものが内閣府から出されたり、さらに、それを受けて定住自立圏の構想だとか、国土交通省におきましては21世紀生活圏研究会だとかというものの活動が立ち上がりまして、本年の7月4日に新たな国土形成計画というものが閣議決定をされた。そういったものの中で地域連携の必要性というものが主張されているというようなことでございますが、人口減少とか高齢化が進む中で、地域中で完結型のサービスは割高、困難になりつつありますので、「集約とネットワーク」という視点で地域連携をしていかなければいけない。しかしながら、地域間の連携について、これまで何度も言われていることなのですけれども、なかなか効果が明確でないことで効率的に進められてきた例が少ないのではないかというような問題意識から本調査を立ち上げたいということでございます。

 目的といたしましては、ここに書いてありますように、集約とネットワークの観点から地域連携を行った場合の効果や施策の評価手法を構築していきたいということでございます。

P) これはマスコミ等の批判ということで、必ずしも適切な事例かどうかはよくわからないところがあるのですけれども、これまで平成の大合併ということで合併をされてきたときに、合併特例債というようなあめというものがございまして、そういったものの中で、本来であれば複数の市町村が1つになるということで施設の集約化みたいなものも図っていけるのではないかというような視点があったわけですけれども、それぞれ旧の市町村の中にそれぞれの施設がつくられるというようなことで、マスコミからもこういう形で批判をされているというような状況がございました。そういったことで、選択と集中を考える際には、地域連携は効率的に機能していない面があるのではないかということでございます。

P) 研究の目的は、先ほど申し上げましたように、連携内容、連携効果を明確にしていきたいということです。

P) これまで連携の事例は少ないということなのですけれども、目的とかそういったものが明快なもの等については連携をしている事例があるということで事例として御紹介させていただいているものがこちらでございまして、この7月に東海北陸自動車道が開通いたしまして、それに先立って岐阜市と富山市の間での災害時の相互応援に関する協定というものが締結されたというものもございます。

P) 研究の内容といたしましては、集約とネットワークの観点から見た地域連携の施策の評価を行うための効果分析手法を構築したいということで、地域連携施策の実態把握、さらには生活機能の機能分担の面から見た地域連携の可能性、さらには、地域連携をやった際に住民の方々の意識の把握手法について開発をし、効果分析手法を最終的には開発していきたいということを考えております。

P) 現状、A市とB市というものがあったときに、おのおのに都市機能が整備をされているというような状況はありますけれども、既に2005年から我が国は人口減少に突入いたしておりまして、さらには、地方圏においては既にはるか昔から人口減少下に入っているということで、既に過去10年間においてもそれぞれの施設が、病院で言えば547施設、小学校で言えば1,683という形で施設の数が少なくなっているということなのですけれども、これは実際にそれぞれのところで連携をした結果ということではなくて、後背人口というか利用圏の人口が少なくなるというようなこともあって、やむを得ず施設を閉じざるを得ないといった状況があって、本当にその施設がなくなったところの方々が幸せに生活をされていらっしゃるのかどうかというようなものもちょっとわからない状況なのですけれども、一応こういう状況がございます。

P) 地域連携をしない場合にはどうだということについて、都市機能を整備する整備をすることというのは今後少ないとは思いますけれども費用、さらには維持に要する費用がどれぐらいかかるのか、さらには利用される方のコストがどれぐらいかかるのか、そういう費用を出しまして、施設維持が困難化をするというような状況の中で地域連携をした場合に、A市さんとB市さんとの間でこういう役割分担を果たしていこうというようなことで、都市機能の高度化、さらには維持に要する費用だとか、ネットワークの整備に要する費用だとか、そういったものについて把握をいたしまして、その費用を求めていきたいということでございます。それに際しては、当然のことながら、連携を可能にする社会資本の整備ということについても検討をする必要があるかと考えているところでございます。

P) 効果分析手法ということで、地域連携をしない場合とした場合についてその比較をしていきたいということなのですけれども、当然ただ単に効率化を図っていくということではなくて、それぞれのお住まいの方々の満足度というものについてもできる限り金銭化をするようなことを検討いたしまして、それの比較において、地域連携をした方がいいよというような、そういうことを明確にしていきたいということを考えております。

P) これは都市圏と都市圏の間の連携ということなのですけれども、先ほど午前中の最後のところで限界集落の話とかも御報告をさせていただきましたけれども、都市部と周辺地域との連携ということも考えられるということでございまして、そういったことについてもさらに研究を深めていきたいと考えております。都市部と集落、それぞれ今は機能があるということなのですけれども、その機能を集約化すること、さらには移動手段というものも確保していかなければいけない。そういったことをやることによって、その地域のサービス水準を確保していきたい。それについても、行政コストだとかの検討を行うとともに、住民の方々の意識についても評価をさせていただいた上で、都市圏内といいますか、そういったところの連携ということについても検討していきたいということで、それを施策評価に使用していきたいと考えております。

P) 研究体制といたしましては、それぞれの地方整備局さんだとか自治体さんだとかそういった方々、さらには先行的に検討を進めていらっしゃる総務省さんだとか21世紀生活圏研究会とも連携しながら、その評価手法について検討していきたいということを考えております。

P) 成果の活用といたしましては、都市間の連携の促進だとか、都市内の連携の促進だとか、そういったものを進めていくことを目的といたしております。

 以上でございます。

【主査】 ありがとうございました。

 御質問、コメント等をお願いしたいと思います。

【委員】 ここで言う地域連携の考え方なのですけれども、例えば5枚目の防災協定は地域間連携の話ですよね。最後の方の都市と周辺部との連携は、ある意味では地域内連携ですよね。両方ともターゲットにしようと考えておられるのでしょうか。

【国総研】 主としては地域内といいますか、そういったものをターゲットにしたいと思っております。

【委員】 地域内連携の話をしていくと、初めの方にもちょっと出てまいりましたけれども、合併をしたことによって、平成の大合併で例えばそれまでのいろいろな一部事務組合がある意味でぐちゃぐちゃになっていて、合併のメリットよりもデメリットの方が大きいとかという話も聞くことがあるのですけれども、その辺のところはこの研究ではどのくらい視野に入れているのでしょうか。

【国総研】 先行事例の検討ということで、合併をされたところの実態だとか、そういったものについても調査をしたいと思っておりまして、その中で当然デメリットが出てこられたところもあれば、合併をすることによってメリットが享受されたというか、そういったものを生かしていらっしゃるところもあると伺っておりますので、そういったものを比較することによって、何でここの地域はうまくいっていて、ここの地域はうまくいっていないのだというようなことについても、できれば浮き彫りにしていきたいということは考えているところでございます。

【委員】 生活機能という言葉が出てくるのですけれども、これは具体的にどういうものですか。

【国総研】 いろいろ機能と言ったときに、高次の機能だとか日常の機能だとかというような形で、本当は定義づけがちゃんとされていないのかもしれないですけれども、一応日常生活のそれぞれの要素というものを勘案させていただいた上で、とりあえず、ここの絵の中で、例えば医療だとか教育だとか、日常的な生活のそれぞれの要素について、機能自体の洗い出しを含めて検討しないといけないと思うのですけれども、文教だとか医療だとか、文化的なものも含めた形で対象にはなってこようかなとは思っているのですけれども。

【委員】 わかりました。地域連携しなければならない項目としていろいろあると思うのですが、今、教育とかを挙げられまして、そういうことかなと思いましたけれども、いろいろありますよね、ごみ問題とかエネルギー問題とか、さっきのCOの排出権の問題とか、水問題あるいは食料とか住宅とか医療とかいろいろあるので、そういうものだと思ったらいいのですね、ここでおっしゃっている生活機能というのは。

【国総研】 そうです。

【委員】 わかりました。そういうものについて潤沢なところとそうでないところがうまいこと連携していって、その地域でうまくいくというようなことをまず洗い出して、それについてどういうやり方があるかとか、あとはその施策を評価するための効果分析をするということですか。例えば、こことここがこの項目で連携すればこれだけコストが節約できるとか、これだけエネルギーが節約できるとか、これぐらいCOが減るとか、そんなふうな評価軸があって、それがどれぐらい効果的なのかというようなところを明らかにしていこうということですね。

【国総研】 それを明確にしたいと思っているのですけれども、それを明らかにすることによって、例えばそれを住民の方々にお示しできることで逆にその連携の効果みたいなものが伝わって連携が進んでいくということもあり得るかなということも考えているところでございます。

【委員】 Aの地域であれもこれも欲しい、Bの地域であれもこれも欲しいと言っているときに、それはそれでまた連携して取引して、むだなものというか、二重に余計なものをつくらないとか、そういう効果的な、効率的な施策ができ得るということですよね。ありがとうございます。

【主査】 ほかにいかがでしょうか。

【委員】 効果分析をする上でいろいろな基礎的なデータがあり,それを使って最終的には費用的に換算を行うことになると思うのですが、その基礎データをいかに明確に、または客観的に決めるかということが重要ですが,実際には難しいところがあると思います。そのことについての取り組みと、例えば,A市とB市があって、機能を集約するということに対する住民の意識の評価をどうするのか、これらのことについてのお考えについて少し教えていただきたいと思います。

【国総研】 どういうふうにデータを収集するかというのはなかなか難しいところがあって、幾つかのモデル的なケースの検討をしたいと思っているのですけれども、平成13年ぐらいから行政機関の方でも地方公共団体の中で行政コスト計算だとかそういったものをやるようになりまして、今の段階ではまだその行政コスト計算というのが予算上の款ごとというような非常に大きなレベルになっている部分があるのが実態なのですけれども、そういったことで、行政に幾ら費用がかかってというようなことについて一定企業会計的な取り組みというのもなされるようになりつつありますので、そういった公表されたデータみたいなものも活用させていただきながら、それをそれぞれの施設だとかに落とし込んでいけるものについては落とし込ませていただいて、それを複数の市町村の中でやりとりをしたときにどうなるのかということで費用対効果みたいな形の分析をやらせていただければどうかということを現状では考えているところが1つでございます。

 あと、住民の方々の意識というようなことにつきましては、なかなかこれも難しいところがあるので、やり方を考えていかなければいけないのですけれども、アンケート調査等で満足度と支払意思額みたいなものについてあわせて聞かせていただくみたいなことについて、やり方はこれから設計をしたいなと思っているのですけれども、一応そういったことでやっていきたいなと思っています。

【委員】 町村を合併した後、しなかった方がよかったというような意見を聞くこともあります。市町村を合併することによって影響を受ける事項について、皆さんが現在注目していないことも含めてできる限りいろいろ見つけて、検討することが必要だと思います。【委員】 効果を評価するときに、さっき私も効率性みたいなことばかり言いましたけれども、物によっては冗長性とか余裕とか、片方がフェイルした場合にもう1つはセーフなのでうまいこといくとか、そういうふうな視点も効果の評価の視点として要るのではないかなと思いましたので、ちょっと補足させていただきます。

【国総研】 先ほどのお答えの中でちょっと明快でなかった部分もあったかと思うのですけれども、機能の中でもそれぞれ必ず身近に必要なものであるのか、少々時間をかけても大丈夫なのかというようなものはいろいろあると思われますので、既にそういったたぐいのこととはそれぞれ先行的に研究をされていらっしゃるところも当然おありなので、そういったものも活用させていただきながら、絶対身近に置いておかないといけないものとか、そういったものについてはその地域でずっと維持をしていくみたいな、そういったシステムを踏まえながら連携ができるものはどんなものなのかというようなことから洗い出しをしていきたいとは思っております。

【主査】 それでは、退席された委員の御意見の御紹介をお願いしたいと思います。

【事務局】 ○○委員からの御意見でございます。「研究テーマは重要である。分析モデルも簡明である。なお、フルセット整備で得られたが、機能分担の場合に失われる便益につきましても定性的に分析することを希望する」とのことでした。

 次に、○○委員からの御意見でございます。「研究の必要性は理解できる。地域連携の効果分析手法が重要であることもわかる。しかし、その手法をどのような手順で構築しようとしているのか、また具体的な研究手法や解析手法を適用してうまく分析方法を構築できるのかがわかりにくい。また、住民意識の評価はアンケート調査であろうか。その場合、それを定量的な評価につなげて総合的に構築する分析手法にどのように組み込まれるのかという点がわかりにくい」という御意見でした。

 最後に○○委員からです。「具体的に幾つかのケースを比較することによって、道州制の評価までつなげられるような研究としていただきたい」という御意見でございました。

 以上です。

【主査】 何かありましたらお願いしたいと思います。

【国総研】 機能分担で失われる云々ということについては、先ほどの○○先生からの御指摘でお答えをさせていただいたようなことかなと思っておりますし、○○先生からの御質問に対してお答えをさせていただいたようなことで、データの収集なり解析なりというようなことについてはそういった方向でやっていきたいということでございます。

【主査】 もし何かおっしゃりたいことがあったら、どうぞ。

【国総研】 別に我々、道州制云々かんぬんというようなことについてはどうこうということもございませんで、生活者の視点ということを考えたときにどういう圏域の広がりというようなことが適切適切と言ったらあれですけれども、生活の実態に合っているのかどうかということについて分析をさせていただきたいということでございます。

【主査】 私からも2つあるのですけれども、生活機能と言った場合に、○○先生がおっしゃったようにいっぱいあるわけですよね。ネットワークと言った場合も、交通のネットワーク、これは道路も公共交通もありますよね。あるいは人のネットワークとか行政システムのネットワークとか、あるいは情報のネットワークとか、いっぱい組み合わせがあって、本当に全部できるのだろうかというおそれが大きいのではないかと思いますので、ぜひその辺焦点を絞ってやっていただきたいということです。

 それともう1つ、ビジネスモデルとして言うと、効率性を追求するという観点からするとこういう方向に行くと思うのですけれども、本当にそれでいいのかなというのが午前中に私言いましたけれどもあって、中長期的には国総研はそっちの方も同時に志向していただく方が国全体の安全保障としてはいいのかなと。一見今の世の中ではむだそうですけれども、何が起こるかわからないし、どうもそういう兆しも結構あるような気もしますので、その辺ぜひお忘れなくというふうに思いました。これは私の個人的な意見です。

【委員】 最近こういう問題の場合に、住民参加とか合意形成プロセスとか、そういうふうな話がよくありますよね。この研究の中でそういう住民参加的なアンケートはとるのだろうと思うのですけれども、住民参加的なことを考えておられるのか。それと、この研究が終わった暁に、こういう効果分析をやることによって合意形成がスムーズに図れるような方向性というのが見えたらいいなと思うのですけれども、そんなことについてはどういうふうに考えておられますでしょうか。

【国総研】 具体に合意形成とか住民の方の参加とかというようなことではなくて、それの前段として、今まではこういう連携をしたときにこんな効果がありますよというようなことすらまだちゃんとお示しができていない状況にあるのではないかというふうな問題意識を我々は持っていて、それを正しくお伝えした上で、それでも連携なんかというのはやらない方がいいんだよとかという決定を住民の方が下されるのであれば、それは連携しない方がいいのだろうと思うのですけれども、今はそういうので、この時期までに合併しないと特例債が受けられないよというようなことで、余り詰まらないうちに期限ばかり来てしまいましたみたいな、そういう世界があったのかなということもあるので、もうそれの呪縛からは解き放たれて、これからはそういうものを正しくお示しができるような、そういったことについて我々の方として一生懸命研究をさせていただいた上で、お示しができるツールみたいなものをつくっていきたいということがこの研究の主眼ということでございます。

【主査】 今の議論で、余裕があればぜひ調べていただきたいのですけれども、フランスは、基礎自治体はほとんどと言っていいほど合併していないのですね。今でもまだ3万5,000ぐらいあるのですかね、日本で言う市町村が。でも、そのかわりに事務組合とか広域連携、これは住宅とか交通とか都市計画は非常に活発ですし、多分そのほかの分野でもあると思うのですけれども、そういうオーバーラップがどのようになっているのだろうかとか、あるいはそれによって、今、市町村合併で何かつまらないことで理想的な姿からは極めて遠いところでつながっているという合併の例なんかもありますものですから、いろいろな意味でどっちがより合理的なのかなと、あえて効率的という言葉を使っていませんけれども、合理的なのかなというふうなところもぜひ視野に入れていただければいいなと。予算が限られているので、なかなか難しいと思います。余裕があればで結構でございますので、お願いしたいと思います。

 もう予定の時刻を過ぎておりますので、そろそろ取りまとめたいと思いますけれども、○○先生、そのほかの先生もおっしゃっていますように、今こういう中で極めて重要性の高い、目的もしっかりした議論だと思います。ただ、生活機能とかネットワークとか集約とか、今のレベルでは、これは私の意見も含まれておりますけれども、結構抽象度が高いレベルですので、予算と時間が限られておりますので、焦点を絞っていただきたい。そういう中で、特に便益とか意識の評価の手法というところがやはりキーポイントになると思いますので、ぜひその辺をよろしくお願いしたいと思います。

 道州制まで視野に入れてとかということでございますが、志は高い方がいいと思いますけれども、人の意見にどうこう言う筋合いのものではございませんけれども、そういうことかなと思いました。

 意識分析の中には合意形成という話も入ってこようかと思いますけれども、それも大事なポイントではありますけれども、やはり本質のところに力を注いでいただければなと思いました。

 そういうことで評価書の案をつくらせていただきたいと思います。きょうの事後評価と、もう終わりますので事前評価ですけれども、委員の先生方からいただいたコメントも踏まえて評価書をつくらせていただきたいと思います。それについては、またお回しいたしまして御意見をちょうだいして、上の評価委員会、○○先生の方に提出させていただきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたしまして、長丁場御苦労さまでございました。

 一応、対象課題はすべて終わりました。これで司会はお返ししてよろしいのですよね。

4.今後の予定等について

【事務局】 ありがとうございました。

 簡単に一言、「今後の予定等について」ということで御説明させていただきます。委員の先生方には、本日の議事録、あと委員長から御示唆がございました評価結果につきまして御照会さしあげまして、最終的に主査にお諮りして取りまとめてまいりたいと考えております。以上です。

5.国総研所長挨拶/閉会

【事務局】 それでは、最後に所長の○○より一言あいさつをいたします。

【所長】 今最後に○○先生が言われたような話だと思っていますので、本当に将来をきちんと見据えて、なるべく志を高くして、しかし部分的でもいいから具体的成果が出るようにすれば、また次の時代はその次の階段を上れると思っていますので、こういうのが単に勉強した本だけができるのではないようにぜひしたいと思っています。

 きょうは朝から4時半過ぎまで、長い時間本当にありがとうございました。きょういただいた御意見というか、これから今後また整理していただくものを含めましてしっかりと対応していきたいと思います。本当にありがとうございました。


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