平成19年度 第3回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第一部会担当)

議 事 録


1. 開会
2. 国総研所長挨拶
3. 分科会主査挨拶
4. 議事
(1) 評価の方法等について(確認)
(2) 平成18年度終了プロジェクト研究の事後評価
A公共事業の総合コスト縮減効果評価・管理手法の開発
@マルチモーダル交通体系の構築に関する研究
(3) 平成18年度プロジェクト研究の中間評価
B受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究
(4) 平成20年度開始予定研究課題の事前評価
C国土保全のための総合的な土砂管理手法に関する研究
D地球温暖化による気候変動の影響に適応した国土保全方策検討
E日本近海における海洋環境の保全に関する研究
〈その他〉
F科学的分析に基づく生活道路の交通安全対策に関する研究
G地域構造の変化に対応した新たな国土マネジメント手法に関する研究
HITを活用した動線データの取得と電子的動線データの活用に関する研究
5. 今後の予定について
6. 国総研所長挨拶
7. 閉会

平成19年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第一部会)

平成19年8月2日


1.〈開会〉


【事務局】  おはようございます。

 本日はお早い時間帯からどうもありがとうございます。

 それでは、平成19年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第一部会担当分)を開催させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、まず資料のご確認のほうからお願いをさせていただきたいと思います。

 議事次第がお手元にあるかと思いますが、それを1枚おめくりいただきますと資料一覧が出てまいりますので、ご確認をいただけますでしょうか。

 お手元真ん中に紙で資料1から資料5までが並んでおります。資料5がこの分厚い個別課題の冊子でございまして、その下に参考資料が紙1枚ずつ、1、2、3とございます。さらにその下に、先生方のみ、お手元に簡易製版の冊子が3冊入っているかと思います。そして、その下に、ちょっとこちらは資料に載せていないんですけれども、大きなA3版の紙が入ってございます。

 お手元左側にコメントシート、評価シートの関係がございますので、評価課題に応じましてご評価いただければと思います。

  簡単に申し上げましたが、途中で資料の足りないもの、お気づきになられましたらいつでも結構でございます、事務局にご合図いただけましたらと思います。

 それでは、国土技術政策総合研究所所長、○○よりごあいさつを致します。所長お願いいたします。

2.〈国総研所長挨拶〉

【国総研所長】  おはようございます。

 お暑い中、また、お忙しい中、ご出席賜りましてありがとうございます。

 内部でも評価をさせていただいていますけれども、なかなか行き届かないところもございますので、ぜひ厳しくご指摘を賜ればと思いますが、第三部会、それから、第二部会は既に開催されておりまして、第三部会の中でのご議論、例えば3年間の研究の最終が終わりまして事後評価で、もともと予定していた予算が確保できずに実施内容自体が少し縮小せざるを得なかったというようなものがありましたり、それから、先般の第二部会で非常に大きな表題といいますか研究テーマを掲げているんだけれども、実際にやっている内容はそこまでたどり着いていないというのがあって、それであれば名前の立て方も少し工夫したほうがいいんじゃないかのようなご指摘もいただきました。

 実は、きょう第一部会でご報告する中に、3年間ぐらいの短いものは実は中間評価はしないんですけれども、少し内容を変えさせていただいたりしたようなものについてあえて今回入れさせていただいたものが幾つかございます。そういうふうに見直しの努力も既にしているということでございます。フィットしているかどうかというところがございますので、また厳しくご指導いただければと思います。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

【事務局】  ありがとうございました。

 それでは、本日ご出席の委員の先生方のご紹介をさせていただきます。

 まず、○○教授、○○主査でいらっしゃいます。

【主査】  ○○でございます。よろしくお願いいたします。

【事務局】  申しわけございません。こちらは資料1の名簿をごらんいただきながらお願いいたします。

 次に、○○大学、○○委員におかれましては本日ご欠席でございます。

 ○○教授、○○委員でいらっしゃいます。

【委員】  ○○です。よろしくお願いします。

【事務局】  ○○部長、○○委員でいらっしゃいます。

【委員】  ○○です。よろしくお願いいたします。

【事務局】  ○○教授、○○委員でいらっしゃいます。

【委員】  ○○です。よろしくお願いいたします。

【事務局】  ○○教授、○○委員でいらっしゃいます。

【委員】  ○○でございます。よろしくお願いします。

【事務局】  ○○教授、○○委員、電車の事故のため、少しおくれていらっしゃると伺っております。

 ○○教授、○○委員でいらっしゃいます。

【委員】  ○○でございます。よろしくお願いします。

【事務局】  さらに、第二部会より、○○准教授、○○委員でいらっしゃいます。

【委員】  ○○です。よろしくお願いいたします。

【事務局】  第三部会より○○教授、○○委員でいらっしゃいます。

【委員】  ○○でございます。よろしくお願いします。

【事務局】   以上でございます。

 それでは、○○主査よりごあいさつをお願いいたします。

3.〈分科会主査挨拶〉

【主査】  ほんとうに暑い中お集まりいただきましてありがとうございます。

 先ほど○○所長から厳しくということがございましたけれども、厳しいだけが評価ではあるまいとも思います。この場におられる方は全部で何人おられますか。機会費用を考えるだけですごいお金がかかっていますし、この分厚い資料の作成にもほんとうに心血が注がれているのじゃないかなと思います。

 きょう評価をしてそういったコストに見合うようないい意見が出ればいいのになと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げまして、あいさつとさせていただきます。

【事務局】  それでは、以降の議事を○○主査にお願いいたします。

 先生、よろしくお願いいたします。

【主査】  議事がいっぱいあるんですけれども、まず評価の方法等についての確認ですよね。これをご説明いただいて確認してまいりたいと思います。

4.議事

〈評価の方法について(確認)〉

【事務局】  国総研の評価研究官をしています○○でございます。ご説明をさしあげたいと思います。座ってご説明させていただきます。

 お手元の資料2を開けていただきたいと思います。

 本日、評価をいただく方法等についてでございますが、まず、評価の目的でございます。確認というかおさらいということでございますが、科学技術基本計画、国の研究開発評価に関する大綱的指針、行政機関が行う政策の評価に関する法律等に基づきまして、公正かつ透明性のある研究評価を行い、評価結果を研究活動、研究体制の整備・運営等に的確に反映することによりまして、社会経済状況、住宅・社会資本に係る国民的・社会的要請、国土技術政策の企画立案・実施に必要な技術ニーズ、公共事業等の効果的実施に必要な現場技術ニーズ等を的確に踏まえた研究課題の設定、適切な研究計画の作成及びその効率的かつ着実な実施、また、組織の使命に応じて研究能力が最大限に発揮されるような研究体制の整備・運営、さらに、研究成果の円滑かつ適切な行政及び社会への反映、並びに、国民への研究内容の開示等に資することを目的といたしております。

 2の「評価の対象」でございますけれども、プロジェクト研究及び予算要求上評価が必要とされる研究課題を評価対象といたします。

 ここにプロジェクト研究というのは星印が下に書いてございますけれども、国総研の研究方針の中でうたっておりますが、技術政策研究を核に研究開発目標を共有する研究を結束いたしまして、所として、国総研として重点的に推進する研究をプロジェクト研究と呼んでおります。その研究にはプロジェクト・リーダーを置きまして、リーダーを中心として分野横断的な体制によりまして技術政策課題の解決に向けてより効果的に成果を得るための政策を立てて進めるものでございます。

 評価につきましては、そこに書いてございます事後評価、これは平成18年度末で終了した研究課題でございます。それから、中間評価、これは研究期間が5年以上の長きにわたるものを対象として、当該年度が3年目に当たる研究課題でございます。事前評価、これは来年、平成20年度開始予定の研究課題でございます。

 これらを評価対象といたしまして、3でございますが「評価の視点と項目」ということで、事後評価につきましては、必要性、効率性、有効性の観点を考慮し、以下の項目について自己点検結果をもとに事後評価を行うと。当初の目標に対する達成度、成果目標に対してどの程度成果が得られているか、研究成果と成果の活用方針、研究の実施方法、体制の妥当性、上記を踏まえた本研究の妥当性、この中には、科学的・技術的意義、あるいは、社会的・経済的意義、目標の妥当性等も含めるものでございます。

 続きまして、中間評価につきましては、必要性、効率性、有効性の観点を考慮し、以下の項目について自己点検結果をもとに中間評価を行う。研究継続における現時点での進捗状況、現時点までの研究成果と成果の活用方針、研究の実施方法、体制の妥当性、上記を踏まえた本研究の継続の妥当性でございます。

 2枚目をあけていただきますと、事前評価につきましてでございます。これは必要性、効率性、有効性の観点を考慮し、以下の項目について自己点検をもとに事前評価を行う。この必要性につきましては研究の背景を踏まえた研究の必要性、効率性につきましては研究の実施方法、体制の妥当性、有効性につきましては研究成果の見込みと成果の活用方針でございます。

 今回、評価対象の中にはプロジェクト研究も入っております。それにつきましては、プロジェクト研究としてふさわしいか、すなわち、技術政策課題の解決に向けた目標の設定、分野横断的な研究実施戦略に留意をしていただくということになります。

 4でございますが、本日の評価の進め方でございますが、まず(1)に個別研究課題の説明を事務局から説明させていただきます。(2)でございますけれども、その個別研究課題について評価をしていただくわけですが、最初に他の部会、及び、欠席の委員等から事前に伺った意見があればそれを事務局からご紹介をさしあげます。

 続きまして、主査及び各委員からご意見をいただく。その後、事後、中間評価につきましては評価シート、事前評価についてはコメントシートにそれぞれご記入をいただくことになります。これは昨年度と同様でございますが、ただし、口頭でご発言される内容もございます。それにつきましては議事録に記載をいたしますので、記入は不要でございます。

 (3)に本日の審議内容、事前の意見及び評価シートの指標集計結果を前のほうにお出しいたします。それに基づきまして主査が総括を行っていただくことになります。

 そこに丸印が書いてございますが、評価を行う上で分科会の委員、本日ご出席の委員の方が評価対象課題に参画する場合等の対応についてということで、別添1を説明をさせていただきたいと思います。

 3枚目の右上に別添1がありますけれども、これはなぜこんなことをするかというと、国の研究開発評価に関する大綱的指針というのがございまして、ここの中には評価者の選定において評価の公正さを高めるために、評価実施主体にも被評価実施主体にも属さない者を評価者とする、外部評価を積極的に活用するというふうになっておりまして、その際、利害関係の範囲を明確に定めることによりまして、原則として利害関係者が評価者に加わらないようにするというような規定でございます。

 このため、分科会委員の方が評価対象課題に参画している場合として想定される3つのケースを整理をいたしております。そこに書いてございます1つ目は国総研と共同研究を実施している場合、2つ目は、国総研の委託業務または請負業務を受託している場合、3つ目は国総研の研究を進めるための研究会・勉強会等に委員等として参加している場合でございます。

 この各場合についての対応方針をUに示しております。1.の「『共同研究を実施』している場合」につきましては、分科会委員が直接携わる共同研究につきましては研究実施に係る協定が締結され、分科会委員と国総研の間に密接な関係が認められることから、以下のとおりといたします。

 対応方針としては、分科会委員は、評価対象課題のうち、かかわりにある部分の評価は行わないことにすると。また、当該分科会委員の主査である場合には、当該部分の評価を行う間、あらかじめ委員長が他の分科会委員から指名した分科会委員が主査の職務を代理すると。ただし、分科会委員が民間企業に属する場合には、当該民間企業が当該共同研究を実施している場合には、分科会委員が直接携わっていない場合においても対象とするということでございます。

 以下、上に挙げました受託業務または請負業務を受託している場合と、研究会、勉強会等に委員等として参加している場合も密接にかかわる部分の評価につきましてはこの共同研究での対処方針と同様に評価を行わないことといたしております。

 時間の関係上、その次の4ページのほうは説明を省略させていただきますが、本日の分科会におきましては「マルチモーダル交通体系の構築に関する研究」というのが研究課題の評価対象になっておりますが、これの研究につきましては○○主査、○○委員、○○委員が研究の一部に参画されておられます。

 また戻っていただきまして2ページのところでございます。2ページの4の(4)でございます。本日の時間配分について、別添2でご説明をさしあげます。一番最後のところに別添2、横長のものがございます。あけていただきたいと思いますが、本日、事後評価が2件でございます。これにつきましては右のほうに説明が15分、それから、評価が20分、いろんな意見をいただくという、最後にまとめが5分という時間設定をいたしております。

 中間評価は1件でございます。これにつきましては説明10分、評価15分、まとめ5分、それから、事前評価につきましては6件ございまして、これにつきまして、C、D、Eはプロジェクト研究として行う予定でございますので、これにつきましては説明10分、評価20分でございます。それから、F以下につきましては説明10分、評価15分ということでございます。

 なお、先ほど私どもの○○所長からもお話がありましたように、今回は2つほど、つまりBとCにつきましては通常の中間評価あるいは事前評価に相当はいたさないんですが、研究内容の変更がございましたので今回諮らせていただきたいと思います。

 まず、Bの「受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究」というのがございまして、これにつきましては下にも簡単に注釈をつけておりますけれども、これは平成17年から19年の3カ年の研究でございます。今回、大綱的指針に基づく中間評価では当たらないわけでございますけれども、研究内容の大幅な変更がございましたので、任意の評価対象といたしました。

 なお、評価におきましては任意ということもございまして、中間評価で通常星とりというような星マークをつけたものではなくて、コメントシートにコメントをいただく評価方法にしたいと思っております。

 それから、事前評価の一番上のC「国土保全のための総合的な土砂管理手法に関する研究」、*2が書いてございますけれども、これにつきましても、これは昨年度事前評価を行っていただきまして、本年度から研究を開始いたしておる研究でございますけれども、これも研究内容に変更がございましたので任意の評価対象といたしました。変更箇所の評価をお願いしたいと思います。

 進行につきましては、このような時間の段取りで行いたいと思っています。

 また、2ページのほうに返っていただきたいと思います。5の「評価結果のとりまとめ」についてでございます。本日の評価結果につきましては、その審議内容、それから、評価シート及びコメントシートに基づきまして、主査の責任において取りまとめることになっております。その後、研究評価委員会委員長の同意を経まして、国土技術政策総合研究所研究評価委員会の評価結果といたします。

 6の「評価結果の公表」でございますけれども、これは議事録とともに公表いたします。なお、議事録におきまして発言者名については主査、委員、事務局等と表記するものでございます。

 参考に一番下に研究評価委員会の日程が書いてございますが、既にきょうは8月2日でございまして、第1回の全体の研究評価委員会は7月4日に終わりまして、第三部会は7月27日、第二部会は7月30日に既に評価をいただいております。

 以上が評価方法等についてのご説明でございます。

 引き続きまして、お手元に資料3がございます。今回評価をいただく中で、研究課題に関連して研究マネジメントについて少しご説明をさしあげたいと思います。

 昨年度もこの分科会の中では若干ご説明をさしあげましたけれども、その研究課題を取り扱うわけで、コア、あるいは、大枠という若干耳なれない用語が使われております。そのコア、大枠につきましては研究課題の設定であるとか、あるいは、研究の実施に革新的役割を持ちますので、ここで概要を簡単にパワーポイントでご説明をさしあげたいと思います。お手元の資料3はこれからご説明さしあげますパワーポイントと全く同様のものでございますので、よろしくお願いいたします。

 まず、おさらいといいますか確認といいますか、国総研の役割でございます。国総研は我が国におきまして住宅社会資本における国の唯一の研究機関として13年4月に発足をいたしまして、主として役割としては研究方針にも書いておりますが、政策の企画・立案に関する研究、それから、事業の執行・管理に必要となる「技術支援」、法律等に基づく「技術基準策定」に関する研究、こういうのを主な役割といたしておりますが、それらを実現するために、国土交通本省とは連携をしながら政策の支援をしております。

 それから、地方整備局、これは事業の実施の主体でございますけれども、お互いに連携をしながら具体的な技術支援を行っております。さらに、研究活動を行う上では大学研究機関、独立行政法人等と連携をしながらその成果を上げていくというような役割を担っております。

 こういう中で、国総研としてはコアを活用したマネジメントシステムというのを行うような形にしております。「コア」というのは、こちらに書いてありますように、国土交通省の組織力を駆使しまして全国的な情報群を継続的に収集することによりまして、現在の社会経済状況を含めた、自然環境も含めたいろんなデータ、あるいは、事例、技術の蓄積をしてまいります。

 そういうものを分析、思考しまして、常に現状を認識をしておると。そういうところから政策への技術的裏づけ、あるいは、技術基準の策定等々について資していくというようなもので、長期継続的な研究の基本的な活動でございます。

 具体的には各研究部・センターで「コア」というのを今設定いたしておりまして、こちらに挙げるようなものをコアとしてやっております。例えば、環境研究部におきましては社会資本に係る環境保全・再生に関する技術基準のマネジメント、あるいは、道路研究部では道路ネットワークの整備・管理運用に関する状況の把握・分析、こういうようなデータ収集というようなものでございます。

 もう一つ、大枠を活用したマネジメントシステムを行うようにしております。これは国土交通省が政策目標として挙げておりますものを具体的に実現していくために大きなテーマを設定いたします。

 具体的には、具体的に行動の方向とか、あるいは、目標を共有できる、メリットが明確なスケールで設定できるようなテーマを設定いたします。これは後ほどご説明さしあげます。そういうふうなテーマに対して、達成すべき状態、国土社会システムの将来図を想定いたします。

 その次に、実施すべき行動ということで、将来の国土社会システムを実現していく上でどのような政策・事業等が必要であるかということを設定をいたしまして、そのために必要となる研究というのはどういうものであるかというのを抽出してまいります。

 そういう流れの中で、研究の企画・立案を行いまして具体的な研究計画を立案して、研究開発に入ってまいります。研究の実施をしていく中で、先ほどのコアの活動、現状の長期継続的な認識で把握、そういうのも活用しながら研究を実施してまいります。

 そういう中で、実際にその研究を行う課程の中でうまくいかない場合もございます。そういう場合は原因・手法の分析を見直ししてまた計画へ反映すると。それで、引き続き研究を行って一定の研究成果がまとまりますとその効果を把握していくということで、それをまた社会に適用してそのうまくいかない場合についてまた計画をやる、こういうようなPDCAサイクルの中での研究開発を行うようにしております。

 先ほど申しました大枠の具体的な設定テーマについてはこちらに書いてあるようなものでございまして、国土交通省の大きな政策目標、安全・安心な暮らし、あるいは、活力ある社会、あるいは、暮らし、環境というような、こういうような切り口がございます。具体的には自然災害に対する安全・安心をどういうふうに確保していくかと、人・物のモビリティの向上、こういうような設定テーマを持ちまして具体的な大枠の研究課題を抽出いたしております。

 お手元にお配りしたA3の横長のものが、昨年度はご紹介できなかったんですが、その後、こういう形で大枠をつくってまいりまして、こういうふうな中で今現在行おうとしております。ちょっと時間の関係上省略をさせていただきますが、また時間のあるときに見ていただければと思います。

 最後に、資料4でございます。お手元の資料4はプロジェクト研究と今回ご紹介いたします研究課題につきまして、現在進行中、あるいは、昨年度終了、来年度予定の技術政策課題に対するプロジェクト研究等の一覧を示しております。いろんな政策課題に対しての研究課題と、それから、研究機関、並びに、担当の分科会、一番右にはプロジェクト研究であるかどうかというようなのを一覧で示しております。ご参考にしていただければと思います。

 説明は以上でございます。

【主査】  ありがとうございました。

 ただいまのご説明に対して何かご質問とかコメント等ありましたらお願いしたいと思いますが。よろしいですか。

 それでは、早速でございますけれども、(2)のプロジェクト研究の事後評価から入ってまいりたいと思います。

 先ほどご説明がありましたように、通し番号でいくとマルチモーダルというのが最初なんですけれども、それは私が関係しておりますので、まずAの「公共事業の総合コスト縮減効果評価・管理手法の開発」のご説明をお願いいたしましてご意見をいただきたいと思います。

 じゃあ、お願いいたします。

ページTOPへ戻る

事後評価A公共事業の総合コスト縮減効果評価・管理手法の開発〉

【国総研】  総合技術政策研究センターの建設システム課の○○でございます。よろしくお願いいたします。失礼いたします。座って説明させていただきます。

 まず最初に、当研究の背景をご説明したいと思います。国民の公共事業に対するコスト意識の向上に対しまして、国土交通省では平成9年に公共工事コスト縮減対策に関する行動指針を策定しております。この中ではいわゆるコストの縮減率を目標年次平成12年について10%の縮減を目標としておりました。それに対して、平成12年以降でございますが、公共工事コスト縮減に関する新行動指針を策定しております。この中で、維持管理コスト等、コスト縮減等以外のコストも縮減することをうたっております。

 しかしながら、公共工事のコスト縮減については、まず公共事業全体のコスト縮減を図るべきであること、それから、コスト縮減を進めるための制度整備が必要であることなどから、平成15年に新たにコスト構造改革に着手しております。この中で、平成15年3月のプログラムの策定を行いまして、具体的な施策の取り組みを行っております。

 上の新行動指針で、従来からの手法により計測することが適当でない政策については、施策の特性に応じましてできるだけわかりやすい指標により計測するよう努めることとしていることから、この研究では社会的コストの評価について取り組むこととしたものでございます。

 公共工事については、工事コストのほかにさまざまな社会的コスト、外部コストがかかっております。例えば路上工事などを例に挙げますと、周辺環境に対する騒音、振動などの外部不経済が発生しております。これらの外部不経済についてもあわせて低減することが総合的なコスト縮減として必要ではないか、これがカウントできないかということから、これらの外部経済などの社会コストについて貨幣換算手法を確立してやる必要があると考えました。

 しかしながら、現在、外部コスト等の貨幣換算手法として原単位として認知されているものは極めて少なく、外部コストと評価することは現在非常に困難となっております。

 そこで、当研究ではその目的として工事コスト、ライフサイクルコスト、工事の時間的なコストなどを現在総合コスト縮減率としてカウントしておりますが、これらのコストとは別に社会的コストを貨幣価値で評価できる手法の構築として、まず外部コストの計測事例のデータベースの構築と、効率的で簡便な原単位手法の構築を図ることとしました。

 次に、当研究の研究フローをご説明したいと思います。外部コストとしては例えば環境資源、大気汚染、騒音・振動、事故、交通状態といった項目が考えられます。それに対して、これらを評価する手法として現在例えばCVMやコンジョイント、TCMやAHP、ヘドニックといったものが考えられました。

 これらについてまず既存事例を収集することによってまずデータベースの構築を図りまして、どのような評価対象に対してどのような評価手法が使われているのかということを整理しました。次に、これらデータベースの作成では対応できないようなケースといったものもございますので、これらに対して効率的で簡便な原単位作成手法の構築を図ることとしました。

 研究の概要は以下のとおりでございます。まず、研究期間は平成16年から18年の3カ年、総研究費が約4,800万、研究体制としては当課が中心になりまして本省の技術調査課と調整を図りながら検討を進めてまいりました。そのほか、学識経験者の先生方、名城大学の木下先生等からのご指導をいただいて検討を進めてまいりました。

 研究の実施状況でございますが、初年度の平成16年にまず概念整理、データベースの事例収集、それと、評価手法の検討を実施しました。平成17年も引き続き事例収集、手法の検討を行いまして、最終年の平成18年にはデータベースの構築、評価手法自体の評価を行いました。

 まず最初に、外部コストの計測事例データベースの構築についてお話しします。データベースとしては内外の研究事例など、実際の計測事例を672事例収集いたしました。各事例について対象となりました財、財の存在場所、その機能、計測年、計測方法や回答者といった項目について整理を行いました。

 これがデータベースのサンプルでございます。上部のところに今お話ししたような項目を整理して、それぞれの収集事例について整理をいたしました。既存のデータがある程度ある場合については、これらの外部コストや原単位がどの程度であるのかといったことがこのデータベースを参照することによって推測することができるものと考えております。また、事例のない外部コストなどに対する計測手法の検討や、類似の原単位がある場合には実際に計測された原単位の妥当性の検証などにもこれらのデータベースは活用できるのではないかと考えております。

 次に、効率的で簡便な原単位作成手法の構築についてお話しします。

 原単位の導入に当たりましては、効率性が高く、さまざまな現場で活用できる簡便な評価手法を構築したいと考えました。そこで、アメリカで開発されましたAHP、Analytic Hierarchy Processを活用して原単位を導く方法を検討いたしました。

 AHPはアンケートによって複数の代替案から最適案を選定する意思決定手法でございますが、これ自身に貨幣価値換算を行うという機能がございませんので、AHPに使用する各代替案の相対的な評価値と関連づけまして、各評価項目の貨幣価値、すなわち、原単位を推定するということにいたしました。

 貨幣価値の導入に当たりまして今回2つの方法を検討いたしました。まず1つ目の方法としまして、貨幣価値が既知の代替案というのがございますので、こういったものをうまく援用して導く方法、今回は工事騒音と工事振動についての原単位を導くのに当たりまして、自動車騒音の原単位を援用することにいたしました。それから、もう一つの手法としてCVMを活用いたしました。これは代替案の工事騒音や振動のレベルといったものを変化させまして、それに対する支払意思額といったものを調査して、そこから原単位を導くという方法をとりました。なお、効率性を考えまして、AHPやCVMに使用するアンケートについてはインターネットを活用して調査をいたしました。

 今ご説明しました方法によりまして、工事騒音、振動の原単位の算定をいたしました。既存の原単位を活用したものからは、こちらにございますが、騒音が約1万3,000円、工事振動が約4,700円、CVMを活用して検証しましたところ、工事騒音についての原単位は約12円、工事振動が約9円という形でオーダー的にかなり大きくずれてしまいました。これらについては別途違う手法、今回はコンジョイントを活用しましたが、コンジョイントを使用して別途計算したところ、このCVMと数字的にはほぼ同程度の結果となりました。

 既存原単位を活用して計算した手法についてですが、比較対象として今回交通騒音を採用したんですが、これが通年で生じている交通騒音と一定期間のみ生じている工事騒音との受忍限度が大きく異なっていたのが計算結果として大きな誤差を生じる原因になったのではないかと考えております。

 まとめでございますが、今回の研究結果からはAHPを活用することによって効率的で簡便に原単位を計算するということについてはできたのではないかと考えております。ただし、得られた結果の妥当性そのものについては今回お示ししましたように少し誤差が大きくなったということで、その推定する場合には既存原単位の採用に当たって留意が必要であると考えております。

 以上、研究目標の達成度について整理をいたします。

 まず外部コストの計測事例データベースの構築についてですが、これについてはデータベースの収集・整理ができまして、これによって今後の計測等に十分使えるのではないかと考えております。

 一方、効率的で簡便な原単位手法の作成の構築についてですが、手法そのものの構築についてはある程度できたのではないかと考えておりますが、その使用限度についてまだ精度上問題があるということから、さらに研究を進めていく必要があるかと考えております。

 今後の取り組みとしましては、今お話ししたように、データベースについてはさらにデータの収集を進めてまいりまして、原単位の手法の精度や使い勝手の向上というものを進めてまいりたいと考えております。それから、新たな原単位手法の作成手法についてですが、その精度向上のための検討を進めてまいりたいと考えております。これらがうまく精度向上等が図られれば、現在国土交通省で取り組んでおります総合評価落札方式等への活用ですとか、企業の技術評価等への活用といったものに活用できるのではないかと考えております。

 説明は以上でございます。

〈課題説明終了〉

↑ページTOPに戻る

【主査】  ありがとうございました。

 昨年度までは数も多かったのでどなたかにちゃんと読んできてねと、説明も聞いてきてねという何か担当制みたいにやっていましたけれども、今年は数が少ないこともありますし、みんなちゃんと読んできてねということもありまして、そういうのはやめましたし、また、きょうご欠席の委員の方、あるいは、他部会できょう出席していただいていない委員の方からもご意見を承ることになっております。ご紹介も何かちょっと変なタイミングでしていましたので、今年からは、まず最初にご欠席あるいは他部会の委員の方からの意見を紹介していただいて、それから、皆さん方に意見、評価をいただきたいと思います。

 じゃあ、すみませんけど、これはどなたからご紹介いただけるんでしたか。お願いします。

【国総研】  すみません。特にこちらのほうへはございません。

【主査】  そうですか。わかりました。

 じゃあ、どうぞご自由にご質問あるいはコメントをいただければと思います。どうぞ。

【委員】  たまたま最後のところに出ておったんですけれども、私は建設コンサルタント協会という立場で出ておりますのでちょっとご質問させていただきたいんですが、総合評価方式に適用できるということですけれども、企業努力というものの評価指標といいますか、この場合の、どういうことをお考えだったのかなというのをちょっと教えていただきたいんですが。

【国総研】  企業努力というよりは、評価される対象そのものの原単位をつくることによって貨幣価値換算ができますので、うまく外部評価、外部コストを計測することができれば、現在の工事コストとあわせて最も効率性が高い一番効果が高い手法、技術というものが評価できるのではないかと考えたところでございます。例えば、工事コストとあわせて工事騒音が一番低減できる手法ということであわせて合計した金額として、総合的にコストが縮減できている工法を選びますということができれば一番一般的にもわかりやすいのではないかと考えております。

【委員】  というと、要は技術点を価格点に評価し直すという手法として考えているとうことですね。

【国総研】  そうです。

【委員】  わかりました。ありがとうございます。

【主査】  ほかにいかがですか。どうぞ。

【委員】  今回の成果の中で、データベースができたというほうには○がついていて、手法の構築のほうは原単位法ではなかなか難しそうだということで改善の余地があるという最終的な自己評価をされていると思います。前者のデータベースの中で要はこういった事例があって、どういった外部コストとして考えなければいけないという項目が一覧があって事例集はあるんでしょうけれども、例えばこういう工事に関してはこういう視点とこういうことをコストとして追加すべきだとか、あるいは、今の場合、たまたま道路の工事で騒音というのが1つしか出てないけれども、実は環境負荷みたいなものもあるだろうし、あるいは、浸透能みたいなものを考えることによって何とかだとか、いろいろ多面的に評価するような方向性をこのデータベースというのは示す形でまとめられておられるんでしょうか。ただ単純に工事のときにこういうことの外部コストを評価した事例が示されただけで、そのときのコスト換算はこうであるという一覧表だけであれば、何か使い勝手が非常に難しいのかなと感じたんですけれども。

【国総研】  今回はまず事例をきちっと整理する、収集・整理してどんなものが具体的にあるのかということを集めることに主眼を置いておりましたので、そこまでのものに達しているかどうかと言われるとやや懸念がございますが、各項目を整理することによって、例えば自分の現在置かれている工事、今目の前にある工事に対してどういった評価項目が実際存在し得るのかといったことについては、こういったデータベースをにらむだけでもさまざまなほかの工事の事例などがわかりますので判断はできるのではないかと考えております。

 そういう意味で、実際に計測対象となった事例の財などがどういったものがあるかといったことを見ていただくだけでもかなり参考にはなるのではないかと考えております。そこまでデータベースそのものの使い勝手をよくするということはまだ今回は達成できておりませんが、ある程度の使用価値はあるのではないかと考えております。

【委員】  2番目のほうは自己評価として妥当な評価はされているのかなとは思いますけれども、もともと中間評価、事前評価の段階で原単位法というところのなかなか難しさみたいなものをある程度認識しながら、簡便性を追及されて効率性を追及されてこの手法をもともと検討されていると思います。最終的に精度向上のための課題として、どう精度を向上すればいいのかということを明確にされると、きっとその△は○の評価になり得るのかなと思ったので、もしそれがあるんだったら遠慮されないで、積極的に明確に課題を抽出して次の改善手法や改善案を提示されることが非常に重要な成果かなと感じるんですけれども、そこら辺はいかがでしょうか。

【国総研】  正直申しまして、最初からかなり難しい問題であるというのはこの課題に取り組んだ当初からそれは認識されておりました。ただ、もう少し精度の高いものが出きるんではないかという期待があった中で、先ほどお示ししたように我々としてもまだ使用にたえるものまで行ってないなということで、もう少し精度が高いものを目指していたものがそこまで達し切れなかったということで今回は三角にさせていただいています。

 おっしゃるとおり、外部コストなどをカウントするというのは非常に難しいことでございますので、我々も最初からぴたっといきなりどこでもすぐに使えるようなものが出てくるというようなものとは考えておらず、今回の当初の背景でも説明しましたが、総合コスト縮減対策として政府全体のコスト縮減額として外部コストをある程度評価できればいいんじゃないかということで検討を開始させていただきましたが、そこに使うということにもまだ現時点では難しいだろうということで今回三角とさせていただいています。

【委員】  今の質問と関連して。

【主査】  どうぞ。

【委員】  精度を向上させるというご説明がありましたが、精度とは、真の値があり,値がそれにどれくらい近いかという指標であります。すなわち,何が真実なのかということがわからないと精度の評価はできないですよね。この研究結果を見るとオーダーが全然違うような結果が出ており,また,真値もよくわからない状況で,どちらが妥当かということを評価することができるとお考えでしょうか。また,これからどのように研究を進められるのでしょうか。

【国総研】   そういう意味で、まず最初にデータベースの構築を図ったのも大体のオーダーといったものもある程度目星がつくようなものができればいいんじゃないかということでまず最初にデータベースの構築を図っております。

 ただ、それを踏まえて検討した結果として、まだそのデータベースの事例と比較しても精度上もう少し検討してブラッシュアップを図っていかないと使用にたえるもの、すぐに現場のほうで適用していただいて参考に使っていただけるようなものというものにはまだ十分なり切っていないのかなと考えています。

【委員】  データベースを構築することによって大体こういう値だなということが大体見えてくるということですね。

【国総研】  オーダー的なというか、現場条件に応じてそれぞれの原単位というものがある程度使われるものだと思うんですが、そういったものがオーダーが見えてくればその中で、その範囲の中で数字が出てくれば使用にたえると考えていいとは思います。

【委員】  わかりました。

【主査】  どうぞ。

【委員】  よくわかっていないのでピンぼけな質問になるかもしれないんですけど、外部コストがそもそも何なのかというのがいま一つわからなかったので、事例を挙げて聞きたいんですけれども。北海道開発局の事業評価委員会に出ていてもめたのが、例えばトンネルを通したり道路を通したりしたときに、そのときに失われる環境の価値なんですね。

 ということで、この議論というのは何か対策をすればいわゆる外部コストが削減されるという議論なんですが、実際に工事をすればそこにある環境を壊すというマイナスの負荷を与えますよね。その外部コストについてこれは議論をしている話なんですか。

【国総研】  今回の我々のほうで検討したこの評価というものは、事業の評価そのものではなくて、事業をまず行うという前提の中でその事業を少しでもよくする、改善していくという観点から評価できないかということで考えております。

 例えば今のお話にあったように、既存の価値が損なわれるという部分についてはそれはもう既に事業として行われるものということをまず別途の場でご議論いただいた上で、工事を実際するに当たって、その工事のコストの縮減という観点からやっておりますので、工事コストを縮減するに当たってそういった外部環境に対する悪影響などをどうやったら少しでも削減できるかということをカウントするための手法として考えております。

【委員】  ということは、事業のスタイルとしてはもうほぼ決まっていて、そのマイナーチェンジの部分でどれだけコスト縮減ができるかという議論であると。

【国総研】  平たく言えばそういう。

【委員】  言葉で言うと、公共事業の総合コストと言うと、基本的にそれこそ戦略アセスじゃないですけれども、事前の検討も踏まえた総合的なコストが削減される議論をやるのかなと思っていました。しかし、今の説明で位置づけはわかりました。

 ただ、現場でもめているのは、前段で言ったそこでもめているケースも結構あるので、いわゆる工事をやることによって失われるときのコスト、そこもやっていかないと、今後地域の人たちとぶつかったときにうまくいかないんじゃないかなという感じはしています。これはコメントです。

【委員】  工事の費用を削減するという試みに社会的なコストを加えよう、考えようというのは非常におもしろい着眼点でいいと思うんです。しかし、今ご質問があったように、費用便益分析というか、工事そのものの費用便益分析とやっぱり少し混乱する要素を持っていると思うんですね。

 ですから、こういう研究をやったときに、どのように役立てる方法があるというところをもっと開発して、わかりやすく示していただければいいと思うんです。例えば工事のときに騒音が出ますけれども、高い機械を買えばそちらのほうでは費用が高くなるけれども、それを上回る騒音削減効果があってトータルで費用が安いんだというような説明とか、やはり工事費を安くするというところにこだわって説明していかないと、プロジェクトの費用便益評価をしているのとあまり変わらなくなっちゃって、せっかくのおもしろみが出てこないような気がします。

【主査】  ○○先生、どうぞ。

【委員】  膨大な事例を調査されておられますが、CVMというのはスコーピング、あるいは、どういうシナリオのもとで、こういう数字が出てきたのかということが大事ですね。データベースのサンプルしか示されていませんので、具体的にデータベースにどのような情報を入れられているかが、よくわかりません。しかし、後から見たときにどういうシナリオでどういう調査をしたのかということが判るようにしておかないといけない。数字だけがひとり歩きしてしまう危険性があります。そういう膨大な情報が、数字の背後に多分あると思います。それをできるだけ整理される方法をお考えいただければと思います。

【国総研】  今のところはまだそこまでは至っておりませんので、ご意見としていただきたいと思います。

【委員】  第二分科会から参加しております。2つ教えていただきたいと思います。一点目は、総合評価方式で外部コストを内部化して評価をしていくということですが、単一指標化をすることのメリットとかデメリットというのは検討されたのかどうかということです。もう一点は、外部コストの原単位についてです。コメントになるかもわかりませんが、CVMを使って得られた原単位に関して支払意思額と書かれていて、支払意思額というのは、騒音が上がったことに対して、その騒音を下げるのにどれぐらい支払ってもよいと考えているかという意志だと思うのですが、それ以外に、外部コストの場合には環境破壊に対する補償額のようなものが本来含まれるべきなのではないかと思うのですけど、その辺についていかがでしょうか。

【国総研】  すみません。最初にメリット、デメリットというのはちょっともしかすると勘違いして答えるかもしれませんが、まず背景としまして、公共工事コスト縮減対策に関する行動指針という中でなるべくわかりやすくコスト以外の過去のものについても、いわゆるコスト以外のものについてもカウントできるものはカウントしていきましょうというのが1つまずございます。それに対して、少しでもわかりやすい指標ということで、一番わかりやすいのはやっぱり貨幣価値換算することがわかりやすいのではないかということで研究を開始したものでございますので、これによってかなりわかりやすくやるためにはやはり貨幣価値換算するのが一番いいんじゃないかというもとで検討しております。

 【委員】  すみません、ちょっと質問があいまいだったようです。例えば、通常のコストに環境コストを加えていったときに、環境影響は下げられるけど通常支払うべきコストよりも高くなってしまった場合に、それをほんとうに住民は許容するかどうかという問題が発生し、環境によければ幾らコストがかかってもいいのかという問題が出てくるのではないかと思ったので、単一指標化をすることがいいのか悪いのかということを検討されたかどうかということをお聞きしたかったのです。

【国総研】  すみません。それはちょっと今回の検討からは外していたかと、そういったことをちょっと考える範疇には入れていなかったので、今回はちょっと考えておりません。

 2つ目のご意見のほうの支払意思額の件ですが、一応補償で考えるべきじゃないかというご意見があったんですが、それも一応検討した結果として、ちょっと支払意思額全体が高くなる傾向があるということで、今回は補償という考えはとらずに今回のような形で検討させていただきました。

【主査】  よろしいですか。ちょっとまだ納得されていないみたいですが。

 じゃあ、○○先生、何かありましたら。

【委員】  それでは、2つ教えていただきたいと思います。

 1つ目はデータベースの件ですけれども、これは計測手法としてはCVMが主になるわけでしょうか。

【国総研】  ほとんど8割ぐらいの量ですね。約8割ぐらいがCVMで計測されておりました。

【委員】  そのほかの手法での計測事例というのは今後活用、導入されるご予定はあるんでしょうか。

【国総研】  導入というか、これはさまざまなところで実際に研究や実績として使われたものを収集しておりますので、全国でCVM以外のもので使っていただければそういったものは当然収集していきたいと考えております。

【委員】  私は総合評価の中で、例えば排水機場のポンプの性能を決定するというプロジェクトをちょっと拝見したことがあります。そうした場合、いわゆる治水の経済効果みたいなことも取り入れる必要があるんだろうなと思いました。そうした事例の収集・分析は、今後の総合評価方式で技術評点のウエートを決定するために有効になるのではないかと思っているんですが、その点に関してはいかがでしょうか。

【国総研】  個別の事業の話になってくると、要は工事コストとして今回は考えておりましたので、それはむしろ事業評価そのものだと思いますので、おそらくその以前の段階で計画に対する事業の評価としてどのように考えられるのかということがまさに計画者のほうでまず考えていただいて、その上でこれは工事をどういう形で行うかということで環境に対する悪影響等を評価していくのではないかと思います。今のお話ですと、まさに排水機場の機能そのものの評価そのものですから、事業を採択するかしないかそのものにかかわってくるのではないかと思います。

ページTOPへ戻る

【委員】  わかりました。ありがとうございました。

【主査】  そろそろ時間ですので、もう一部の委員の方は書かれているんですが、事後評価シートへの記入をお願いしたいと思います。

 記入にかかる時間の間ももし何かご質問等がありましたらお願いしたいと思います。

 これはまだかもわからないですけれども、ここで開発されたのを仮想的に過去のプロジェクトに適用して、こういうふうにしたらこれぐらいだったんだけどという、そんなシミュレーションはやられていませんか。

【国総研】  すみません。それはまだやっておりません。

【主査】  そういうのを見せていただくと皆さんのイメージが何かもうちょっと明確になるのかなと思いました。

(評価シートの記入・集計)

【主査】  集計に若干時間がかかるんですよね、多分。その間を活用して何かございましたら。

 サンプルが700もあるのですが、先ほど○○先生がおっしゃったように、いろんなシナリオのもとでやっていくと随分数が小さくなって、分布をとるみたいな話にはなっていかないかもわかりませんけれども、例えば幅とかそういうのがわかると、この値はまあ大体信用できるんじゃないとか、これはちょっと気をつけたほうがいいんじゃないかという、それぐらいの情報はわかると思うんですけど、そんな整理をなされているのでしょうか。

【国総研】  それは実は幾つかやったんですが、やっぱり置かれている条件が大分いろいろ分かれていて、範囲をある程度整理して、データベースからある程度原単位を導き出せないかということで検討はさせていただいたんですけど、まだ、700あるとはいっても個々の事例ごとに見ていきますとやっぱり集約していくまでにはちょっと至っていないかなということで、今回はそれは検討はしたんですが、結果としては出すまでには至りませんでした。

【委員】  CVMで評価するときに、その母数というのは各事業に対してどういう形で設定されているのですか。意味は、地理的な母数、エリアはどういう形で設定したんですか。

【国総研】  CVM……。

【委員】  CVMがほとんどだとおっしゃっていましたね。その場合に。

【国総研】  すみません。事業主体もそれぞれまちまちでさまざまなパターンがありますので、個々の事例ごとに当たってみないとちょっとそこは確認できないんですが。

【委員】   母数で相当変わっちゃうような気がするんですけど。

【国総研】  それは母数によって精度が随分変わってまいるかとは思います。

【主査】  評価の結果がおおむね適切であったということで、全員の意見は一致しております。目標達成度についてはちょっと辛目ですかね、「概ね」と「あまり」の間ぐらいで。

 このことを反映して評価の取りまとめを行いたいと思います。

 これから見ると、目標は「概ね目標を達成できた」ということだと思います。議論でありましたように、例えばデータベースの使い方についてもうちょっとやっぱりやっていただければなということとか、ほんとうに全体のプロジェクトでどう回せばこれが活用できるんだろうというところのことが若干まだイメージが私自身説明を聞いておりましてよくわからなかったですし、そういうふうに思われていた委員の方も多いようです。B/Cとの関係まだ整理し尽くしていないという印象があります。コスト縮減というところだと思いますので、その辺については参考にしていただければなと思います。

 あと、方法論に関しても、CVMということが現実にも使い勝手がいいのでたくさん使われているのかもわかりませんけれども、他の手法も検討されるほうで、精度とか安定性とかというのを確保する観点から、望ましいのではなかろうかというようなことを○○委員はおっしゃりたかったのかなと思います。これに関連してシナリオに非常に左右されるので、その辺も含めてやったほうがいいよというのが○○委員のご意見だったかなと思います。

 せっかく苦労して集められた700ですし、これからも多分いろいろ集まってくると思うんですけれども、その辺の整理と活用、どういう場面でどういう使い方ができそうかというところも、もし何かそういう計画があるんでしたら活用して反映していただければなと、次期、次の研究に期待したいと思います。

 今、速記をとっていただいていますから、今口頭で申し上げたことを中心に最終的には文書にしたいと思いますが、よろしいですか。追加でご意見などありましたらお願いします。

【委員】  1個だけ追加させていただいてよろしいですか。

 私自身はデータベースがとにかく1回できたということは大きな成果だと私は認識しているので、コメントの中にはそれをいかに活用できるかという言葉しか書きませんでした。

 しかしながら、先ほど説明されたように、シナリオがいろいろあるので、データがどんどんたまっていけば、いろんなケースが、非常に役に立つと思うので、言いかえれば、現場の方々にどういった情報を、データベース化するためにはこの情報とこの情報を整理した上で工事の工程を決めていくということを逆に示すことが今後のデータベースの質の向上につながるのかなと思うので、逆に言うと、データベースができたことによってこんな留意点でデータベース化できるような情報を現場で蓄積していただきたいというメッセージを出すことも重要かなと思いました。

【主査】  ありがとうございます。それについてはぜひ盛り込みたいと思います。

 では、本日の第1番目の事後評価でありますけれども、おおむね目標を達成できたということを結論に評価書を作成したいと思います。どうもありがとうございました。

【国総研】  ありがとうございました。

【主査】  それでは、きょうの2番目の事後評価でございますけれども、「マルチモーダル交通体系の構築に関する研究」でございます。

 先ほど私はちょっと申し上げましたけれども、一応関係しておりますので、○○先生に主査をお願い、司会及び取りまとめをお願いしたいと思うんですけれども、その辺について、もう少し詳しい説明を事務局からお願いしたいと思います。

【事務局】  先ほど評価の方法についてご説明さしあげましたけれども、具体的にはこの「マルチモーダル交通体系の構築に関する研究」につきましては、まず○○主査が「つくばの交通を考える研究連絡会」、並びに、「つくばエクスプレス開通に伴う交通行動変化と円滑化方策に関する研究」に参画されております。また、○○委員におかれましては「商慣行の改善による物流交通の合理化に関する検討」に参画されています。また、○○委員におきましては、「都市交通のサービス水準及び交通結節点の評価」におきまして、株式会社長大様が業務を受託されているということがございますので、そのところに関してのみ評価をお控えいただいて、それ以外のところはどしどしご評価いただきたいと思います。

 なお、○○主査におかれましては、先ほど申しましたように、主査の職務を、委員長の了解を事前に得ておりますので、○○委員に代理をお願いしたいと思います。

 以上でございます。

【主査代理】  それでは、○○主査にかわりまして、「マルチモーダル交通体系の構築に関する研究」の評価を進めていきたいと思います。

 それでは、まず研究についてご説明をお願いいたします。

ページTOPへ戻る

〈事後評価@マルチモーダル交通体系の構築に関する研究〉

【国総研】  道路研究部長の○○でございます。ご説明をさせていただきます。

 関係研究部は、道路、都市、港湾、空港の4研究部でございまして、研究期間としては平成14年からの5年間で行ったものでございます。

 このマルチモーダルの研究の背景ですが、自動車交通への過度な依存による環境、渋滞、あるいは、物流の非効率、これらの解消に向けて各交通モードが適切な分担を発揮できるようにということを目指したものでございます。

 研究の構成ですけれども、大きくは人流と物流、そして、これらの評価という3つの柱でございました。人流では公共交通の利便性向上ということで、1つは複数モード間のシームレス化のテーマ、それから、まちづくりと一体となったLRT導入に関するテーマ、また、マルチモーダル物流に関しましては、既存施設などを活用した新物流システムでありますとか、港湾貨物の物流効率化、あるいは、航空貨物の物流効率化、そして、右のほうに参りまして、物流の上流であります商慣行の改善に向けたテーマということでございました。

 そして、評価に関するテーマでございますけれども、7)で交通結節点の評価といった個別の評価、そして、8)ですが、こうした交通結節点、あるいは、先ほどのLRTを含めてマルチモーダルの評価について集大成してみようということでの施策効果の評価でございます。この8)までが一昨年の中間評価までの研究テーマでございました。

 中間評価では、効果の上がるテーマに絞り込んでいいのではないかというご指導や、各部の一層の連携で研究を進められたいというご指導をいただきました。そういうことで、切り上げるべきものは切り上げ、その上で、9)でございますけれども、道路上の貨物流動状況の調査ということで、道路研究部と港湾研究部が一緒になって行うテーマとして中間評価を踏まえ設けたものでございます。道路と港湾でそれぞれの研究の成果あるいはデータを持ち寄って、そして、道路上の貨物流動を評価する。従来、道路貨物はトンキロ、台キロ、こういう量的な評価でしたけれども、品目とか輸出入別とか質的な評価ができないだろうかということを一緒になってやろうということでございました。

 以降、各テーマごとのご報告をさせていただきたいと思います。

 まず、公共交通のご報告をさせていただきます。

 公共交通の1つ目は複数交通モードのシームレス化ということであります。ちょうど京阪奈でカーシェアリングとデマンドバスの社会実験をやるということがございましたので、国総研もこれらの一体的な運用ができないかということで参画をいたしました。しかし、残念ながら、地元調整の中でこの一体的な運用までは実現せず、また、それぞれの実験もかなり低調でありましたので、アンケート調査などで課題とか今後の方向については定性的に分析、整理をいたしましたが、メリハリをつける上でそこで切り上げたというものでございます。

 もう一つの取り組みとしまして、地域課題解決に向けた実践でございます。

 つくばエクスプレスの開業を契機に、つくばの筑波大学、関係自治体、交通事業者などが集まりまして、これは○○先生に委員長をお引き受けいただきましたけれども、研究会を立ち上げまして実践をしてきているものであります。一例として筑波山の渋滞対策ということで、駅から筑波山までのシャトルバスが紅葉シーズンなどにマイカー渋滞に巻き込まれて、4時間を超えるような所用時間がかかっていました。そこで、迂回路への誘導ですとか、臨時のパーク・アンド・バスライド駐車場、こういった取り組みで、昨年の紅葉シーズンには1時間半まで縮減できたといったような成果が上がっております。引き続きこの活動は展開していきたいと思っております。

 2)のLRTのテーマでございます。欧米と比較して日本がなかなか進まないという中で、まちづくりと一体となって導入を進めるガイダンスが要るのではないだろうかということで策定したものでございます。特徴としましては、LRTの特性を踏まえつつ、各都市の都市構造でありますとか、既存の交通システムの実態に応じて導入が考えられるさまざまなパターンについて整理、解説をした。それから、LRTと一体となって計画すべきまちづくりについての検討項目など、さまざまなものを細かく解説をしたというのが特徴でございます。

 お手元にLRTのガイダンスの現物を配らせていただいております。第三部会の評価でマニュアルが成果の研究では現物がないと成果のイメージがしづらいというご指摘がございましたので、かさばって恐縮ですが配付をさせていただきます。印刷・出版バージョンも出しておりまして、既にかなりの自治体で活用が始まっている状況でございます。

 それから、2つ目の柱の物流でございます。

 既存施設を活用した新たな物流システムということで、ここでは第二東名・名神を対象に、6車線化のうちの2車線を長距離の新物流に使えないかと。3連トレーラーで有人の自動運転をするケースでFS調査を行いました。技術的には可能と思われますけれども、現時点では極めて採算性は厳しいという結果でございまして、このテーマにつきましてもこれ以上深入りはしないで止めたというものでございます。

 一方、港湾物流につきましては、特に国際競争力の強化、あるいは、道路施策との連携という観点から、国際海上コンテナの内陸部の輸送におけるボトルネックの把握、そして、そのボトルネック解消効果を評価できるツールを開発しようということで取り組みました。具体的には、フル積載の重量コンテナが通れないような橋梁でありますとか、あるいは、背高コンテナが通れないようなトンネル、こういったボトルネックを全国的に把握いたしまして、それらを反映した経路配分モデルを構築したというものでございます。

 このモデルを使って、個別のボトルネック解消効果を試算した1例でありますが、右下の図面で黄色い部分、国道1号の草津側トンネル、このトンネルの内空断面が解消して背高コンテナが通れるようになると、左下の表でちょっと見づらくて恐縮ですが、金額ベースでの評価、あるいは、CO削減ベースでの効果の算定ができるというふうになっております。道路と港湾部が連携した施策の検討とか評価といったものに生かしていく枠組みにつながるのではないかと思っております。

 一方、空港につきましては、従来の空港需要予測モデルに品目が反映されていないということがございました。当然、品目は産地などが異なりますので、選択される空港も異なるというのが反映されていない、そこを何とかしようというものでございました。

 そこで、国際航空貨物動態調査といったものを使って品目別のOD表をつくるということを行いました。その上で、集計ロジットモデルを使って品目ごとの空港選択モデルを構築したものでございます。これによって、予測精度の向上、あるいは、合理性の向上が図られたと考えております。

 また、このモデルを使ってさまざまなシナリオ分析もできます。その一例として、関空への陸上アクセスが改善した場合に、各空港の需要が品目別にどのように変化するかといった分析もできます。その辺の一例を右下に示しておりまして、さまざまな活用も期待できるというものでございます。

 それから、物流最後、この上流側の商流、商慣行の改善のテーマということであります。日本は多頻度小口配送とかさまざまな特有の商慣行がありまして、それが路上駐車とか都市内交通の増大といった課題を引き起こしており、そういったことから取り組んだものであります。特に影響の大きいと思われる商慣行を洗い出した上で改善策について検討し、あわせて、シンポジウムなどを開催して意識を高めていただく活動も行っております。

 これは成果の一例でございますが、商慣行を洗い出して、それらの相互関係でありますとか、あるいは、交通への影響までの波及過程、こういったものを詳細に整理したものでございます。この中で特に赤太枠で囲っております多頻度小口配送、それと、その誘因となります店着価格制、運賃込み価格でございますが、これが一番大きい影響を及ぼしているのではないかということで検討を進めました。

 実際に改善効果を粗々で推計いたしましても、この小口配送が一番大きく効くということでございますので、この誘因となる店着価格制について着目をして改善シナリオを検討したものでございます。

 まずは買い手側との交渉をする上でも物流コストを明確な根拠を持って切り出すことが必要であろうと考えまして、このABC、活動基準原価計算によって物流コストを算定するということを位置づけて、その上でメニュープライシング、個数・ロットの規模別の価格表でありますとか、あるいは、納期がゆったりしていればその分ディスカウントするといったようなサービスレベルに応じた価格表をつくって買い手側と交渉していくといったようなことを提案いたしております。

 これらの成果をもって物流関係者を対象としたシンポジウムも2回ほど開催いたしております。お手元にピンク色の薄いパンフレットをお配りしておりますが、これを使ってシンポジウムを開催しております。物流サイドへのさまざまな材料の提供でありますとか、あるいは、意識、議論を高めていただくことに貢献できたと考えております。

 それから、最後、評価についての柱でありますけれども、1つは一般化時間を使った交通結節点の利便性評価ということです。従来の実時間では、結節点整備をして実時間で評価してもかえって増えてしまう場合が多くて評価できないということで、すべて水平方向に換算した一般化時間で評価をしていこうということを考えました。

 さらに、それに加えて、損失時間、例えば情報案内がないことによる損失時間でありますとか、あるいは、逆に屋根がついているといったようなことでの快適性とか、こういったものも水平移動時間に換算して評価をしていこうと、こういうモデルをつくりました。その上で、全国6つの駅でこれらの係数を評定するための実測を行い、その結果をマニュアルにまとめております。これもお手元に一般化時間による交通結節点の乗りかえの利便性評価マニュアルということで報告書といいますか、マニュアル自体をお配りさせていただいております。

 高松での評価の例を掲げております。実時間で評価しますとこのバス、タクシーでオレンジ色、整備後の方が時間がかかるということでありますが、一般化時間で評価しますと、上屋が付いているということへの快適性が反映されて、全体としてバランスのよい整備であったであろうということが評価できるというものであります。既にこのマニュアルは使い始められておりまして、今後とも一層の活用を図っていきたいと考えております。

 2つ目が、マルチモーダル施策の評価マニュアルということであります。こうした結節点とか、先ほどのLRT、それぞれの評価手法がある中で、それぞれの地域で実際に検討しようとすると代替案ごとにさまざまな交通モードが出てまいりますので、交通分野で利用されているいろんな指標、あるいは、予測評価手法を体系的に網羅的に集めて整理をして解説をしたものであります。これをもって自治体などで実際に施策検討する際にその検討手順などを組み立てる上で参考にしていただこうというものであります。評価手法につきましても環境とか防災面、そういったものも取り込んでいることが特徴でございます。まだ最終版ではございませんが、お手元にマニュアル案を配付させていただいております。今後さらに整理をして早急に公表、配布していきたいと考えております。

 最後、港湾と道路の連携テーマでございます。先ほど申し上げましたように、道路貨物についてはトンキロ、台キロという量的な評価でした。品目、価格、輸出入別といった質的評価ができないだろうかということであります。

 まずはデータベースをつくろうということで、道路、港湾が持っているデータを持ち寄り、さまざまな補正とか補完を行って、最終的に品目別、価格別、そして、輸出入別といった情報を持ったOD表を作成をいたしました。

 配分モデルにつきましては、先ほどの港湾研究部でボトルネックの解消効果測定で開発したモデルを流用しまして、これを改善し検討を進めて構築したものでございます。これを使って、横浜環状道路などが開通した場合のシミュレーションを行った例でありますが、従来の量的な評価に加えて、品目別の特性といった質の評価にも適用可能性が確認できたという状況でございます。今後は、国際航空貨物、価格ベースで3割のシェアを持ちますので、国際航空についても取り組んで、一層ここは膨らませていきたいと考えております。

 最後に、これらを踏まえた目標の達成状況等でございます。

 三角を2つ付けさせていただきました。1つは複数モード間は京阪奈の社会実験で定性的な整理にとどめたということで三角にしております。それから、第二東名・名神の新物流もFS調査にとどめましたので三角。これに対して、先ほどの道路と港湾の連携研究の方に力を回したということでございます。二重丸2つはLRT導入ガイダンスと、交通結節点の評価マニュアルということでマニュアルが完成し活用が始まっているということで二重丸の自己評価をさせていただきました。その他につきましては、おおむねモデルの構築ができ上がってきたということでおおむね達成という自己評価をさせていただいております。

 それから、研究の実施方法等につきましては、各研究部は年三、四回集まりまして意見交換、連携をしながら進めてまいりました。また、外側の黄色い枠が幾つかございますが、各テーマごとに委員会、研究会を設けて学識経験者等とも連携、あるいは、ご指導いただきながら進めてきたということで、全体としておおむね妥当ではなかったかと自己評価をさせていただいているところでございます。

 説明は以上でございます。

〈課題説明終了〉

↑ページTOPに戻る

【主査代理】  どうも説明ありがとうございました。

 他部会からの意見はないようですけど、欠席の委員のご意見があればご説明をお願いいたします。

【国総研】  失礼いたしました。意見は特にいただいておりません。

【主査代理】  わかりました。

 それでは、この研究に関しまして、質疑、意見等をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

【委員】  先ほどの物流、商習慣を変えることによって云々というご説明があって大変おもしろいと思って聞いていたんですけれども、多分そこは私どもは関係していないと思いますので意見を言わせていただきます。

 この評価がどちらかというといわゆる物流に的を絞ってやられているのかなという気がしますけれども、結局小口の配送を合理化することによってということなんでしょうけど、それによって逆に今度プライベートな車がいろいろ、取りにいく車だとかいう交通が増えるというようなことはあんまりないんでしょうか。そのあたりのご検討はされたのかなというところ。

【国総研】  小口配送を減らしてプライベートがどれだけ増えるかというところまでの検討は行ってはおりません。多少はそういうところがあるかなとは思いますけれども、それ以上に、小口配送を減らしてロットを大型化するとか平準化するとか、そういったことによる効果が圧倒的に大きくて、ちょっとそこはどのぐらいオーダーが違うのかは見てみないといけないのかなとは思いますが、おそらくそう大きな影響はないのではないかなという感じは今しております。

【主査代理】  ほかにいかがでしょうか。

 ちょっと私のほうからお伺いしたい点があります。めり張りをつけられて重要なところに重点的にいくというようにうまく研究の執行がなされていると思いますが、中間評価の時点で幾つかご指摘を受けている点があって、例えばレビュー等をしっかりやって位置づけを明確にしてくださいとか、あるいは、環境負荷だとか総合的なB/Cみたいなものだとか、制度導入の観点についてもということが幾つかご意見が出ておりました。もともとの目標というか研究対象としてはされていないので、付加的にできればという意味で中間評価をされたと思いますけれども、そこら辺については何かこの最終的な取りまとめの段階で反映されているところは何かあるんでしょうか。

【国総研】  できるだけ制度的なところに持っていきたいというところはございましたけれども、例えば物流の商慣行についてはなかなか経産省とか他省庁のものもありますので、そういったところには委員会のメンバーに入っていただくとか、そういったことでの働きかけということでなかなか施策まで行っていないかなというところがございます。

 それから、その余につきましては特に大きな意見は、先ほどいただいたメリハリをつけてということと連携ということなので、そこを中心に進めさせていただいてはおります。

 あと、いただいた意見が非常にさまざまにあるんですけれども、例えばB/Cの評価につきましても、当初から現状に入ってはいなかったんですけれども、価格換算まではしていませんけれども、例えば結節点の評価におきましてはそういう心理的な負担感の軽減とか、あるいは、逆に輻輳による心理的負担感の増大を一般化時間で表してやったと。ここは一般化時間でいくのか一般化費用、価格に直すのかというので両方の行き方があるんですが、今回は時間で評価したと。こういったところを価格に評価してB/Cの中に取り込んで、B/Cの評価を充実させるというようなやり方も一応考えてはみましたけれども、今回はそこまではいっておりませんが、いただいたご意見ですので、今後ともそういった観点でやっていきたいと思っております。

【主査代理】  ありがとうございます。

 ほかにご意見ございますでしょうか。お願いいたします。

【委員】  マルチモーダル施策ということでプロジェクト研究にうってつけのテーマでおもしろい成果をいろいろ出していただいたと思います。国の施策は縦割りになっていて、総合物流施策大綱には、総合とついていますけど、やっぱりなかなか縦割りの中で総合化するというのは難しいと思うんですよね。

 こういう研究をされて、人流でも物流でもいいんですけれども、マルチモーダル施策、国の施策で重点的にやっていったら効果が大きい、そういうものがもしこの中で具体的な提案として出てきたら教えてほしいなと思いますけど。

【国総研】  ありがとうございます。

 やはり特に物流に関しては今回港湾研究部と一緒に最後のテーマをやらせていただきました。FAF、Freight Analysis Frameworkでございますけれども、ここはやはり従来は連携があまりなかったところと一緒にやらせていただいて、当然のことながら、港湾の戦略とそれを支える後背の道路戦略、一体的に考える必要がありまして、そういったことをやれるモデルを構築してまいりました。ここについては引き続き取り組むことによって、道路と港湾が連携した施策をプロジェクトとしても展開し、それをまた評価する方法も一緒に取り組んでいくといったようなところは充実させていきたいなと考えております。

 全体として、これは平成14年、国総研が一つになった直後の、ちょうど13年に企画をして、13年に国総研が一つになりました、そのときに企画をして、とにかく一つの枠組みの中で集まってみんなでやろうということでスタートした、いろんなチャレンジをしてみようということで始まったので、若干名前負けしてテーマが集まったかなというところがあって、それが中間評価でご指摘いただいたところなのだろうと思います。

 そこで、全部の部が集まって一つというのはなかなかうまくいかなかったんですが、港湾との連携はしっかりやらせていただくということ。そして、今後、空港も国際航空貨物は量では0.3%で道路には影響ないということで今まではネグレクトしてきたんですが、価格ベースでは3割ということなので、道路の質的評価ということであれば空港の評価も入れてやっていくということはさらに取り組んでいきたいと、マルチモーダルの柱としてやっていきたいと思います。

【主査代理】  お願いします。

【委員】  以前から、国総研に是非していただきたいと思っていた分析をやっていただいて、非常にうれしい思いがしています。いろいろな重要な情報や知見をまとめていただいたと思います。さきほど、コンテナが通れるネットワークと通れないネットワークという図を見せて頂きました。こういう情報は、内部情報にとどめずに、社会に公表し、国民が問題意識として共有化できるようにして頂きたい。そういうふうに思います。

 多分ご検討されていると思うんですが、例えば織り込み区間であるとか車線変更区間については検討されたのでしょうか。長いトレーラーだったら、通行上、そういう区間が問題になってくる、非常に細かい話ですが、1箇所でも通行できない箇所があれば、路線全体を通行できなくなる。今、中国で45フィートのコンテナが急増しています。このコンテナは、日本では通行できませんが、40フィートと45フィートのコンテナでは差異が生じうるのかどうか、仮に45フィートのコンテナを対象とした場合、結果に変化が生じうるのかどうか。この問題について分析されていれば情報をいただきたいと思います。

【国総研】  港湾システム研究室の○○でございます。コメントありがとうございます。

 1つ目のボトルネックの箇所でございますが、橋でありますと本来は個々の部材照査をして通れる、通れないというのを調べますが、今回はいつの設計荷重でやっているか、TT43とかTL20などの、設計荷重でとりあえず簡便的に通れる、通れないを判断しています。背高に関しては物理的に20センチの空間余裕があるか否かで判断しています。これらの情報,検討結果につきましては、ある設定を置いてのボトルネック箇所ですという条件を明記して、国総研のホームページにも既に公表させていただいております。

 ご質問がございました織り込み車線とか車線変更につきましては、本来は右折できる、左折できる、特に左折できないというのは非常に問題になるですが、分析上は非常にプロセスが煩雑になるので今回の分析ではやっていません。今後その辺も少し含めてやっていきたいとは思っています。

 45フィートにつきましては、長さが非常に長くなりまして、今の一般の道路だと通れなくなりますが、回転半径によって幅員がどれだけ要るかなど、そういう検討は既にやってはございます。こちらも,引き続き検討は続けていきたいと思っています。

 

【主査代理】  よろしいでしょうか。

【主査】  非常に大きな研究テーマを精力的にやられていて、各研究部との連携もうまくとられていて、評価は非常に高いと私自身は思います。

 だからこそ、ここでお願いしたほうがいいと思うんだけれども、部長もおっしゃいましたけれども、やっぱりマルチモーダルってものすごくでかいもので、今までこういうまじめにきちんと研究したというのはあんまりなかったんだろうと思うんですね、口では言いながら。

 まじめに研究した結果、やっぱりここが問題だよという発見も研究を進められる上でいろんなものがあったと思うので、その辺はきちんとドキュメントとして残していただければ、今後の研究を推進する上で、これは多分これからもまだ続くような大きなテーマですので、非常に貴重な資料になるだろうと思いますので、よろしくお願いしますということが1つです。

 それと、これは交通関係全体に言えることかと思うんですけれども、いろんな意味で調査をして分析をして、評価なり影響を予測して説得していくという一連のプロセスが随分大きく変わりつつありますし、今後ともますます変わってくるかと思いますので、その辺、こういういろんな評価手法のマニュアルとか、そういう中での調査方法なんていうのがあるんですけれども、これについては、こういうのは今までなかったのでありがたいんですけれども、もうちょっと踏み込んでいただいてもいいのかなと考えました。

 例えば、最近、パーソンとか道路交通センサスなんかでやっておりますと、いろんな政策とか社会条件の変化を受けてサービスレベルがどう変わるとか、人の気持ちがどう変わるということに関してのモニタリングという機能が非常に必要だと思うんですけれども、どうもその辺が弱いなという気もするんですね。騒音に曝露されている人たちの割合がどうだとか、公共交通不便地域に住まわれている人たちがどれぐらいおられるんだろうかというような、データがありそうで全然どこにもないので、そういうところでこのマルチモーダル施策をぴしっとやるとこんなふうになりますよというところまで、それにはいろんな障害があってなかなか一朝一夕にはいかないと思いますけれども、ぜひその辺を目指して頑張っていただければと思いました。

【国総研】  ありがとうございます。その辺を目指して、引き続き連携をとりながらやりたいと思います。ありがとうございます。

【主査代理】  そろそろ時間ですけれども、まだほかにご意見があれば。お願いします。

【委員】  この施策を活用されて、既に成果や効果が評価されているものもあるようですが、例えばLRTを導入した町がどのようにそれを有効に活用したのか、欠点は何か,などの点について今後モニタリングをし,明らかにして、今後の施策につなげていっていただけたらいいと思いました。

【国総研】  ありがとうございます。プロジェクト研究としては終了しますけれども、研究自体は引き続き続いてまいりますので、いただいた意見を生かして取り組んでいきたいと思います。

 ありがとうございます。

【委員】  大変充実した研究成果を聞かせていただきましてありがとうございました。特に商慣行の改善による物流交通の合理化に関する検討、興味深く伺わせていただきました。詳細条件の非文書化、書面なし契約というようなところは、公共工事の総価一式請負契約でどんぶり勘定で工事を実施するというようなことと似ているなと思いながら聞かせていただきました。

 そのときに、契約慣行をやっぱり変えるというのはなかなか難しいんじゃないかなと思うんですけれども、今回、シンポジウムを通して業界の方々にいろいろと成果をお伝えされて、業界の反応がどうであったのか、そして、契約慣行をやっぱり改善というんでしょうか、改革していくためには、今後どうすべきかをちょっと教えていただければ幸いです。

【国総研】  これは○○先生にシンポジウムの座長をしていただきましたので、先生からまた後ほど補足していただければと思いますが、おっしゃるとおりで、シンポジウムでもそこがかなり話題になりました。

 卸があってその上流側のメーカーと、それから、小売というのが両サイドにあるわけですが、シンポジウムで出た意見は、やっぱりメーカーと卸の間はもう大分いいんだと。問題は卸と小売の間で、小売が非常に無理難題な多頻度を押しつけてくるとか、とにかく契約もちゃんとしていないとか、そこが問題で、そのためには、これは卸の方がおっしゃっていましたけど、とにかくM&Aで卸が大きくなって小売に対抗できるようにならないとだめだとか、あるいは、交渉してだめなら法律で規制するしかないんだとか、そういったご意見でありますとか、いろいろ貴重なご意見というのをかなりいただきました。

 特に今センター納品とかいろいろあるんですけれども、小さな小売でもいっぱいセンターをやっていますけれども、そこがなかなかむしろかえってコストが高まってしまうとか、そんなご意見もいろいろありましたし、基本的には卸がもう少し役割を発揮して、そして、小売側との間の関係をうまく築いて契約関係についてもちゃんとするということをやっていかないとだめだねというようなご意見が主流でございました。

 ○○先生、そんなところでよろしゅうございますか。

【委員】  そうですね。

【委員】  ありがとうございました。

【主査代理】  ありがとうございます。

 ほかにございませんでしょうか。

 それでは、時間も限られておりますので、評価シートのほうの記入をお願いしたいと思いますし、既に記入されている方もおられると思いますので、適宜集めていただきたいと思います。

ページTOPへ戻る

(評価シートの記入・集計)

【主査代理】  今、集計中ですけれども、先ほどの議論の段階から非常にしっかりと研究が進められているというような雰囲気で議論が進んでいたと思います。具体的にガイダンスとかマニュアル類も公表されておられると。さらには、シンポジウム等でも成果が一般の方にも紹介されているということで、そういったことを踏まえながら評価がまとまっていくかなと私自身は考えております。何か追加でこの時間を使ってご発言されたい方がおられましたらお願いしたいと思います。

【委員】  大した質問じゃないのでさっき言わなかったんですけど、引用文献を見ても国内での議論が集中して引用されていますよね。海外に対してのコントリビューションといいますか、アジア圏でもいいですけど、その辺はどう考えておられますか。

【国総研】  PIARCの世界道路会議というのがありますので、そういったところで、今年の9月にありますけれども、発表もしていきたいと思いますし、海外にも情報発信する、また、海外の成果の収集も引き続き行いたい、ご説明は省略しましたけど、LRTについてもさまざまな海外の事例も集めながらやっておりますので、そういったレシプロカルな関係をつくりながらやっていきたいと思います。

 ありがとうございます。

【主査代理】  集計も終わったようですので、この辺で全体の取りまとめを行いたいと思います。

 表示されていますように、研究実施方法、体制等の妥当性については適切だったと全員の委員から同じ結果が出ております。目標達成度についても、ほとんどの方が目標を十分に達成できたという評価で取りまとめをしたいと思います。

 それぞれ各委員の方々から特筆すべき点ということで幾つかコメントができておりますけれども、基本的には前向きにこれをさらに発展していただきたいとか、次に向けた課題を抽出していただきたいということとか、あるいは、アジア圏への展開が希望される、あるいは、今後もそういった成果自体のモニタリング等をしていただきたいということで、基本的には今回の成果を使ってこの大きなマルチモーダル交通体系の構築という大きなプロジェクトをさらに推進できるように継続、努力いただきたいということがほとんどです。そういったものを踏まえて最終的な評価書をつくっていきたいと思いますが、もし抜けている点がございましたら委員の方々にお願いしたいと思います。、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、これにて私の主査の職務を終わりにして、○○主査にお返ししたいと思います。

 

【主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、また司会に復職いたします。

 3番目でございます。平成18年度プロジェクト研究の中間評価ということでございまして、「受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究」であります。評価の進め方のときにもご説明がありましたけれども、本来、中間評価の対象じゃないんだけれど、大幅な内容変更があったのでここでお願いしたいということでございます。

【主査】  ご説明をお願いいたします。

ページTOPへ戻る

〈中間評価B受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究〉

【国総研】  総合技術政策研究センターの建設経済研究室の○○が説明させていただきます。「受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究」でございます。

 まず、研究の概要でございますが、研究期間は平成17年から平成19年度までの3年間となっております。研究の目的でございますけれども、従前の政策プログラムや事業評価の体系では取り扱いが困難とされてきた地域の存立の基礎条件の整備や、安全・安心等の社会資本の効果、あるいは、複合的な事業のもたらす便益と効果にかかわる受益者の視点からの便益・効果について、客観的・定量的な評価手法を開発するというものでございます。

 プロジェクト研究の構成でございますけれども、この3つの研究から構成されております。社会資本整備水準の評価手法に関する研究、リスクプレミアムに関する研究、まちづくりの交付金の評価に関する研究でございます。

 今回お諮りいたしますのは、そのうちのこちらの社会資本整備水準の研究内容についての内容の変更でございます。以下、具体的にその内容について説明させていただきます。

 この研究でございますが、当初の研究の目的とされておりましたのは、地域間競争の基礎的条件を確保するための公平性、必需性等の社会資本のシビルミニマムの概念を客観化あるいは定量化するというものでございます。

 これにつきまして、いろいろな社会的などの状況の変化がございまして、1つには公共投資がそれ以降、ここ数年間、さらなる削減の傾向があった。それとも相まって、中山間地域集落等の存立条件がいよいよ悪化してきた。あるいは、それに絡みまして、人口が減るところに対しては投資をしなくてよいというような論調が出てきまして、当初目標としておりましたシビルミニマム水準を設定したとしても、それを社会資本整備の目標として設定できるのかということについて疑念が出てきたということ。もう一つは、このように経済社会が変化する中で、ハードの社会資本に対する整備水準を一律の数字的なものとして設定し得るのかというような疑問が出てまいりまして、これについて、センター内及び所内でいろいろと議論をした結果として内容変更をするということになったものでございます。

 新しい内容といたしましては、これらを受けまして、地域の存立基盤が危機的状況にある中山間地域を対象とすると。そして、2つの検討を通じてその持続有用性、持続可能性を検証すると。具体的には、@といたしましては、集落の消滅が国土管理上に与える影響について試算をするということと、Aといたしましては、地域社会の状況をあらわし、施策を検討するベースの指標としてのソーシャル・キャピタルについて検討するというものでございます。

 まずは1つ目の内容について、状況をご説明いたします。

 検討に当たりましては、幾つかの手順で考えております。1つは中山間地域の町村の構造をこの図のように集落構造を模式化し、中心部、そして旧村、市町村合併した前の旧村の中心部と、それにぶら下がるような形の集落、限界集落とその他の集落という形で、それらが存続したり消滅したりしたときに、特に森林にかかわるようないろいろな国土保全上の機能が消滅したり、あるいは、公共で維持したりといったときに、それらがもたらす便益、費用がどうなってコストがどうなっているかということです。きょうご説明申し上げるのは鳥取県の日南町の阿毘縁地区、あるいは、福栄地区というものに係る評価でございますけれども、費用といたしましては、市町村の実態を見たりヒアリングしたりする中から、これらの項目について、農業・農地、林業・森林、教育、医療・福祉・保険、社会基盤、生活等の項目について数字を得まして計算をしましたのと、便益につきましては国土保全機能にかかわるいろんな報告として、学術会議等の報告の数値を参考に、水田、畑、森林の持つ国土保全にかかわる機能に関するこれらの数値を参考といたしました。

 そして、集落の推移のシナリオですが、この6つの枠で考えております。

 1つ目は集落の損失を放置した場合、限界集落Dとそうでない集落Cについてそれぞれ10年、20年で消滅したという場合について、その消滅したと同時に、国土保全上の機能が失われたと、その地域で失われた場合と、それについて何らかの政策的な取り組みをして公的に機能は維持した場合、これをA−1、B−1。

 そして、こちらの2番といたしまして、限界集落Dについては移転により消滅しますが、これらを集落Cに集落移転することによりまして、集落Cについては30年消滅まで延びると。こちらについても、A−2、B−2で設定して、B−2についてはこの機能については政策的に維持したと。

 こちらの3番目のシナリオにつきましては、限界集落は消滅しますが、こちらのそうでない集落については、集成工場とかをつくったりして、あるいは、学校を維持したりするというような政策的取り組みをする中で維持できたと。その場合も、やはりこの機能を維持した場合と維持しなかった場合、合計6つのシナリオを設定いたしまして、以上の前提を置いた上で、いろんな費用と便益の試算をいたしました。

 この棒グラフ、A−1からB−3がそれぞれのシナリオに対応いたしますが、このそれぞれについての一番左側が費用にかかわる項目でございまして、真ん中の水色系が便益にかかわる報告、そして、そのB−Cという形で比較したもの、あるいは、B/Cとして比較したものがこちらの線になります。

 まだラフな試算結果でございますが、おおよそこんなことが言えるのではないかなということをちょっとまとめますと、1つはA−1とA−2、3との比較からでございますけれども、B−Cに関しては放棄したよりも集落を維持したほうが大きいのではないかということ。あるいは、1と2の比較ですけれども、集落移転をするということ自体による効果というのはあまり数字上はっきりあらわれなかったということ。それと、国土保全機能に関しましては、それぞれのAとBを比較いたしますと、集落が消失した場合でも施策的に森林・農地を維持したほうが効果的であるというようなことが出ております。

 ただし、国土保全にかかわる費用の項目、あるいは、便益の項目についても森林にかかわるものがかなり多くなっております。森林を維持する、具体的には枝払いだとか間引きにかかる費用についてかなり理想状態で設定したのと、維持しなかった場合に機能が100%失われるというふうに設定したことについて、もう少し精査する必要があるだろうと。ただし、仮に機能損失が50%というふうにした場合においても、ここまでの数字ですね、それなりにBとCはつり合うのではないかというような感触を得ております。

 2つ目の地域の状況をあらわす指標の検討についてでございますが、仮説としまして、中山間地等の集落の持続可能性とソーシャル・キャピタルについて、持続可能性の要件として、住民の地域に対する愛着心や地域活動が盛んであることが重要であると。あるいは、こういった状況を地域ごとに継続的に継続して、住民が知っているということが持続可能性の評価に大きくかかわるんではないかということから、地域のソーシャル・キャピタルを継続的に評価できる手法を開発するということを目指します。

 これまでの先行研究で、内閣府でありますとか、そもそもソーシャル・キャピタルを言い出したパットナムでありますとか、州単位あるいは県単位とかでいろいろな算定をしておりますが、ここでは関連が想定される代理指標を用いて、アンケートによらない計測をして多くの地域の計測ができる。あるいは、過去にさかのぼった計測、推移を見るということや、集落等の地域社会単位での計測ができるということを目標に取り組んでいるところでございます。

 検討状況と今後の検討方針についてまとめますと、1つ目の集落の存廃、社会的影響につきましては、日南町のスタディと同時に、今後、仙北市のスタディを現在進めているところです。森林の機能につきましては、ちょっと専門家にいろいろ意見をする中でもう少し検証していきたいということでございます。

 ソーシャル・キャピタルにかかわることにつきましては、日南町でまず試算をしておりますが、引き続き検討を進めながら、地方整備局あるいは事務所などと連携して、全国の各地での指標の測定ということを目指すのと、1つの事例として、豪雪地の共助による雪対策にそういうものがどう実際働くのかということを見てみたいということでございます。

 全体といたしましては、以上の検討を引き続き進める中で、中山間地域の持続有用性、あるいは、持続可能性を検証していきたいということと、ソーシャル・キャピタル等の指標を用いて、地域の持続を目指した取り組みにつなげる手法について、あと1年間検討していきたいということでございます。

 以上でございます。

〈課題説明終了〉

↑ページTOPに戻る

【主査】  ありがとうございます。

 それでは、最初に、他部会とか欠席委員からのコメントですが、ないんですよね。

【国総研】  特に事前意見はありません。

【主査】  それでは、ご自由にご質問、コメントをお願いしたいと思います。どうぞ。

【委員】  大変興味深いご研究をされているなと思って聞かせていただきましたが、森林を維持することによる便益が287万円/年・haというこの数値の根拠について教えていただきたい。

【国総研】  こちらの数字につきましては、いろいろな文献などのスタディをして結果を出してきたんですけれども、たしか学術会議の報告と農水省のレポートを参考にしたということでございます。

【委員】そうですか。何を評価してこの数値が出てきたのか,資料があればわかりやすいと思いました。資料がないのでわかりませんが,単に数値だけでなくて、これが幾らで,これが幾らという内訳があればよかったのですが。

【国総研】  引いてある報告書の中では、洪水防止だとか雨水涵養だとか、そういうものがいろいろ挙げられて結果が出ています。

【委員】  森林の維持に関する費用として、例えば治山とか砂防とか、そういった項目は入っているんでしょうか。

【国総研】  入っていないようです。この中では限定的に数字が出ているもののみを挙げたと。

【委員】  そうですか。色々な項目が関係しているとは思うので、できるだけ色々な影響項目を拾い上げて、精緻な計算をされたほうがいいと思いました。

【国総研】  すみません。ちょっと参考資料から読み上げますと、森林に関する機能ですけれども、二酸化炭素吸収、表面侵食防止、表面崩壊防止、洪水緩和、水資源貯留、水質浄化、化石燃料代替、保険・レクリエーションの機能についてそれぞれ数字があります。

【委員】  大体の事項が含まれているわけですね。

【国総研】  森林の機能については、平成13年に日本学術会議のほうでまとめて世の中に出したものを参考にしていますけれども、この中で、土砂の流出とかの裸地化による国土保全のための機能の低下が一番大きいと思います。ただ、どの指標も今治水とかいろいろ言いましたけれども、最大限見込んだ場合であり、この287万円というのは森林がその最大機能を発揮した場合ですので、このうち実際にはどのぐらい発揮されるかというのは、その地域によって違うということで見ていただかないと、287万円ってものすごく大きな数字なんです。

【委員】  便益の項目とそれを維持するための費用の項目が対応した評価になっているのかが気になります。例えば、土壌流出防止機能の便益が評価されているということでしたが,それを維持するための費用が計上されているのか、その辺を含めて精度よく検討していただければと思います。

【国総研】  ありがとうございます。ちょっとまだ出たばかりの数字でございますので、もう少し精査をして、今言ったようなことも含めて検討していきたいと思います。

【主査】  ほかにいかがでしょうか。じゃあ、○○先生から。

【委員】  ケーススタディの対象として、秋田県と鳥取県をとりあげられていますが、2つの地域は過疎の実態がまったく異なっています。その違いというのを明確に認識していなければいけないと思います。

 鳥取県の日南町は、すでにポスト高齢化社会に入っています。団塊の世代はすでに町を離れており、高齢者がなくなりつつあるので、人口ピラミッドが鉛筆のように細くなっています。その中で、阿毘縁というコミュニティも該当しますが、例えば1人家族が高齢化してくるなど、ライフサイクルリスクが問題となります。親子2世代家族という普通の家族のイメージで問題をとらえると、なかなか問題の本質が見えてこないところがあります。

 また、島根大学、鳥取大学、我々の研究室も、日南町を拠点として15年ほど研究活動を継続しています。過疎地アクティビティダイアリー調査等も実施されています。町のほうも、それらのデータを持っておられますから、町と緊密なディスカッションをやられたら、相当詳しいデータまで手に入ると思います。

 東北の過疎・中山間地と、それから、中国地方の中山間地では、過疎の実態がかなりの程度違うので、2つのプロトタイプとして対比を常に念頭に置きながら取りまとめていただければと、そういうふうにお願いいたします。

ページTOPへ戻る

【国総研】  ありがとうございます。

 今おっしゃられたようなことを念頭に2つの地域を取り上げてみるということと、実際のこれらの項目、挙げてみますと簡単な表にまとまっちゃうんですけれども、実際これらの表をあるいはつくり出したり、それらの数字を出すに当たっては、役場の人などに綿密にヒアリングをしたりして出しております。

【主査】  ほかに。どうぞ、○○先生。

【委員】  先ほどの○○先生のお話とも関連するんですけど、もう少し森林について今どういう状況なのかをきちんと把握されたほうがいいなという感じがしました。学術会議とか何とかの評価というのは、多分代替法で評価していて、森林を完全に伐採した場合にどういったデメリットが出るかというマイナスの部分を評価している積算値だと思います。

 今一番問題になっているのは、人工林を放棄してしまっていることです。所有者の高齢化によって人工林が放棄されてしまって、非常に密度の高い状態で植えた樹木がそのまま放置されて、いわゆる下層の植生も生えなくなって侵食が起こるといったようなそこの部分であって、仮にこれが天然林であるならば、別に費用も大してかからない。森林を維持するためには必ず費用がかかる、手をかければ森林がよくなるという一種のトラウマ的な発言をする人がいるんですけど、天然林はそんなことはなくて、実際にはみずからで維持できるものであるという感じがします。

 そういう意味からすると、森林が費用便益の中で大きな位置づけを持っているので、それが天然林なのか人工林なのか、しかも、人工林できちんと管理されているものなのか、もしくは、完全に放棄されつつあるのかといった、種分けが必要だと思います。

 最近はもう一つ、投機的に売ってしまうケースが全国で広がっていて、若干木材の値段が上がっている理由がそこにあるんですけれども、それによって公益的な機能が完全に落ちるという事例が報告されています。数十ヘクタール単位で皆伐が起きていますので、そういう意味からすると、もう少し細かに見ていただいて費用便益の議論をしていただかないと、現実からちょっと離れてしまうかなという印象がありました。

 あとはコメントなんですけれども、何かテーマを変えられたのかもしれないんですけど、最後のスライドでも、地域社会の状況を示す指標とか、言葉が科学的に考えると難しい指標があるのですが、地域社会の状況というのは千差万別で、いろんな人がいろんなふうに考えられる言葉ですよね。それを指標化するというのは極めて難しくて、正直言うとあいまいに聞こえてしまう、漠然として聞こえてしまうので、もう少しテーマを絞って、ここでいう社会資本というものの位置づけとか、このテーマに沿った形での絞り込みがあったほうがいいのかなという感じがしました。

 以上です。

【国総研】  ありがとうございます。

 1点目としておっしゃられた森林の機能についてはおっしゃるとおりでございまして、ですので、私どもとしてもさらにもう少し精査するという必要があると思っております。

 具体的にこちらの日南町はほとんどがたしか民有林でございまして、その民有林のあまり手入れされていないという状況を念頭に置いて計算をしております。

 ただ、それがほんとうに手入れを全然しないで置いていたときに機能が100%失われるのか何%失われるのか、気象条件や地形との関係などもございますでしょうし、そこら辺につきましては私どもは必ずしも専門家ではございませんので、少し専門家のこれから意見などを伺いながら、まさに精査していきたいというところでございます。

 2点目の地域社会の示す状況という、ちょっとあいまいな書き方をしてしまいましたが、具体的にはその他のところにもございましたように、パットナムが言うようなソーシャル・キャピタルですね、人々の人的なつながりだとか信頼感だとか、そういったものが地域の防災的な機能だとかいろいろな機能につながっている部分、そこを社会資本の整備にどう生かしていくかというのはちょっとまだ宿題としてこなれていないところがございますけれども、おっしゃられる趣旨を踏まえて今後も少し考えていきたいと思っております。

【委員】  ○○先生の意見に賛成です。私もそのような趣旨のことを申し上げようと思いました。というのも、仙北市でしたか、これは女房の田舎で、小さな山があるんですけれども、全然手入れしていないので売れる木に育っていません。ほとんど林業としては放棄したのに近いんです。でも、だからといって土砂が流出しているわけじゃなくて、要するに、木が売れなくなったというだけの話で、だんだん天然化しているんじゃないかと思うわけです。私は素人だからそれが最後どうなるのかわかりませんけれども、いずれにしても、そういう例は増えているようです。

 そういう意味で、学術会議の資料を1項目ずつチェックされて、現場でどういうことが起きているか見ていただければと思います。

ページTOPへ戻る

【国総研】  ありがとうございます。

【主査】  ほかにいかがですか。

 私からちょっと嫌みかもわからないんだけど、2点ありまして、研究自体の時間フレームってどのぐらいのものを考えておられるのかなと、研究というかこういうことの評価の。

【国総研】  こういう試算のですか。

【主査】  はい。強烈な印象が1つありまして、愛知博の市民の人が、これは非常に貴重な自然だから、森だからといった海上の森なんですけれども、明治初年のころってはげ山なんですね、瀬戸物のための燃料の伐採で。何回か植林の試みをされてことごとく失敗して、放っておいたら100年たったらああなったと。

 多分、杉林も1回何か大雨が降ってごそっと削れて、そのまま放っとくと、50年、100年では結構いい森になるんじゃないかなという気がするんですね。そうすると、安定的でお金もほとんどかからない。

 だから、50年ぐらいのタームの話なのか、ここ数年ぐらいの話のタームなのかと。あるいは、そういうことと、限界集落の今後の変遷、推移がどのように絡まっているのかなというところをもうちょっと聞かせていただければありがたかったなという気がします。

 それと、2点目は、ソーシャル・キャピタル、非常にいいんですけれど、何か計測だけしますよというように感じました。例えば河川でもいろんな参加型の活動をやられていますよね、清掃活動とか水辺の楽校とか。あるいは、道路でも、きのう僕は北海道の留萌に行っていて、それはシーニックバイウェイ関連なんですけど、そういう活動をするとすごいネットワークも広がるし、行政への信頼も向上するんですね。そういうのは確実にあると思います。

 だから、そういういろんな行政のとり得るアクションがソーシャル・キャピタルにどういう影響を及ぼしているのかというところのメニュー出しというところも結構大事かなと思います。あるいは、その効果の計測です。ソーシャル・キャピタル、非常に簡便なアンケート方法で計測できるんだけれども。それが、実際に地域の力にどうなっていくのかというところは、これはほとんどうまい説明をされていないような気がするんですね。

 実はそこが非常に大きな問題で、私も北海道のシーニックバイウェイでいろんな地域の活動回数とか、あるいは、人間関係とか、実際に一緒に仕事をした人たちのネットワークがどう広がったかとかいっぱいやったけど、そこでとどまるんですね。

 だから、その辺もぜひ頑張っていただければなと思いました。

【国総研】  ありがとうございます。

 2点目につきましては、ソーシャル・キャピタルにつきましては、こちらに書いてありますように、指標をつくるだけじゃなくて、もう少し地域活動が盛んなところと盛んじゃないところとどう違うんだとか、あるいは、いろいろな対策をやっているところとやっていないところとどう指標が変わるのかみたいなことも含めて、今後、ちょっと時間は限られていますけれども、進めていきたいと思っております。

【主査】  ほかにいかがですか。どうぞ。

【委員】  どうもご説明ありがとうございました。私は高知県から来ておるんですけれども、高知県、県土の84%が森林で、限界集落もありますし、民有林、人工林も放置されているところが多数ございます。ぜひこの研究、特にその便益推定の精度を高める努力を存分にしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【国総研】  ありがとうございます。

【主査】  よろしいですかね。

 聞いておりますと、研究テーマの変更は妥当であって、頑張ってくださいということだと思いますが、その頑張り方にもうちょっとやっぱり地域、地域の事情があることや、その事情の中に、実際に森林とかそういうところで何が起こっているのか、あるいは、それに基づいた便益の計測をしてくださいという話とか、大きなフレームで私は申し上げましたけれども、時間フレームはどう考えるんだろうかとか、ソーシャル・キャピタルをほんとうに地域の力とどう関連づけるんだろうかと、これはものすごく大きな問題で、1年じゃ無理だと思いますけれども、その辺もやっぱり。すみません、決して研究能力を否定しているわけではありませんけれども、なかなか難しいので、それぐらい難しいということでありますので、でも、志は高く持っていただければそれのほうがいいのでお願いしたいと思います。

【国総研】  はい。

【主査】  じゃあ、これで中間評価については、以上のようなものをまとめさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。

 ありがとうございました。

 それでは、若干予定よりおくれておりますけれども、午前の部はこれでおしまいとします。

 ありがとうございます。ご苦労さまでした。

ページTOPへ戻る

( 休  憩 )

【事務局】  それでは、午後を開始いたしたいと思います。

 午後、○○委員と○○委員が3時半ご退席と伺っておりますので、予定しておりました休憩時間を割愛いたしまして、少し早めに1つでも多くの議題をご審議いただきますようにということでご協力賜りますようお願いいたします。

 それでは○○先生、よろしくお願いいたします。

【主査】  それでは、事前評価、通し番号4番目であります「国土保全のための総合的な土砂管理手法に関する研究」でございます。ご説明をお願いいたします。

〈事前評価C国土保全のための総合的な土砂管理手法に関する研究〉

【国総研】  危機管理技術研究センター長の○○と申します。このプロジェクト研究のリーダーを務めさせていただいておりますので、私のほうからご説明させていただきます。

 この研究につきましては、冒頭でも説明がありましたように、昨年、事前評価を受けておりまして、その後、研究の内容を変更といいますか、具体化したということで、きょう改めてご説明させていただきたいと思います。

 具体化する際、力点を置いたところは、この問題を解決するための対策の実施とかを行っていくわけですけれども、それによる生物・生態環境への影響を十分考慮して、総合的な土砂管理を進めていくというところです。

 まず、研究の概要につきましては2点を中心に行います。1点は、いわゆる人為的なインパクトに対してのレスポンスの環境を推測できる技術を開発するということで、これは数値計算モデルを開発することにしております。2点目は、土砂移動に関する問題を解決するための対策の効果等を検証するためのモニタリングとデータベースの様式、これの開発実・施を行っていくという2点に集約できます。

 研究の骨子につきましては4つほどございまして、先ほど数値計算シミュレーションの話をしたんですが、流出解析、1次元・2次元河床変動計算、海岸線変化モデルを組み合わせたモデルを開発する。これは特に2次元の河床変動計算等を行って、物理環境、特に量的土砂量だけじゃなくて、質的な粒径の変化とか、河床形態の変化等を予測できるようなモデルを開発するということでございまして、この検証に当たっては天竜川流砂系はもともとあったんですが、安倍川流砂系並びに砂河川への適用も考えております。

 2点目が人為的インパクトと物理環境、生物・生態環境に及ぼす影響、いわゆるレスポンスの推測を安倍川流砂系を対象にこのモデルを使って行っていく。さらに、3点目が土砂移動にかかわる問題を緩和するための対策の検討を行うとともに、その対策による生物・生態環境への影響の予測も行っていこうということで、これは安倍川流砂系において行っていく。

 4点目がアダプティブなマネジメントを実施するためには、その効果のモニタリングを行わないといけませんので、これは物理環境だけじゃなくて、生物・生態環境のモニタリングも含めた技術開発の実施とデータベースの様式の開発を行っていきます。

 主な変更点といいますか、具体化したことにつきまして、以後ご説明させていただきます。

 まず、開発する技術の具体化につきましては、先ほどご説明したとおりでございまして、要はモデルの技術を開発するということで、ここで1次元・2次元河床変動計算を行っていくわけですけれども、2次元から1次元へのパラメータの受け渡しとか、あと各山地、平野、河口、海岸におけるパラメータの受け渡し方法、このあたりはまだまだ実用化されていませんので、このあたりの高度化についてもここで行っていくということでございます。

 2点目がモデルの流砂系の追加でございまして、先ほどお話ししましたように、安倍川流砂系を追加するとともに、砂河川への適用も視野に入れるということで研究を進めていきたいと思っております。

 研究の実施体制の見直しにつきましては、環境面を重視するということで、環境研究部の河川環境研究室も参加していただく。さらに、安倍川を対象にしますので、中部地方整備局の静岡河川事務所との連携も図っていくということでございます。

 研究の実施方法につきましては、先ほど言っていること、これは少し具体的に書いているものでございますが、時間の関係から省略させていただきます。

 研究の実施体制につきましては、4つの研究の骨子を達成するために4つの研究室が連携して行っていく。さらに、地方整備局、天竜川はもともと計上しておりましたけれども、安倍川との連携も図っていく。さらに、本省を中心としたダム環境プロジェクトというものがございますが、こことの連携も図っていくということで進めさせていただきたいと思っております。

 研究の実施方法等につきましては、4つの研究の骨子に対しておのおの予算配分をこのようにさせていただいていただきまして、19年から22年、これは変わっていません。全体で約3億円の予算を使って、この研究を進めさせていただきたいと思っております。

 これからちょっと具体的に、4つの研究の骨子に基づいてご説明させていただきます。

 生物・生態環境への影響を推測するために必要な物理環境、主なものをここに提示をしております。今までは1次元の河床変動計算で大まかな地形変化等を推定していったわけでございまして、また海浜変形の推定の際も主な構成材料のみに着目していったわけでございますが、本研究においては環境面への影響等も考慮しながら、2次元の河床変動計算を行っていく。ただし、山地部において、単純な地形のところは1次元で行うということでございます。海岸においては流況を考慮した海岸線変形モデルを実施していきます。

 この上流域に対しては、平野部でも同じような話なんですが、今まで非常に大ざっぱな河床変動計算を行っていたものを、10メートルとか、それ以下の単位で河床変動計算を行って、その結果を踏まえて生物・生態環境に及ぼす影響等について検討を行っていくということでございます。河川についても今まで1次元を主体的に行っていたものを2次元を中心に行って、例えば河床の材料がどういうふうに変化していくかとか、それによってアユの産卵床への影響の確認とか、瀬縁の変化等々質的な議論を進めていく。海岸につきましても今まで主に量的な議論に特化していたわけでございますが、この研究においては粒径を考慮した等深線変化モデル等を使いまして、地形変化予測の精度向上、海浜部の粒径変化予測等々を行っていきたいと思っております。

 3点目でございますが、これは安倍川において時系列的に人的な行為とか、あと物理的環境の変化とか、生物・生態環境の変化等を取りまとめて、モデルを使って物理環境等の変化を推定しながらインパクトレスポンスの相関の推測を行っていきます。

 インパクトレスポンスフローといいますか、対策を行う場合でも生物・生態環境に及ぼす影響等も考慮して、できるだけ影響の小さな対策を講じていこうということで、これは先生方の資料の中にはついてないんですが、天竜川におけるインパクトレスポンスの事例がこういうふうな形で示されています。この場合は、ダムからの土砂供給によって物理的な環境が変わる。それによって生物・生態系への変化がいろいろ出てくる。例えば付着藻類の生育状況の変化、これに伴うアユの生息状況の変化とか、あと魚類の生息とか、産卵状況の変化等々定性的にこういうふうな形でインパクトレスポンスの事例がまとめられていますので、現在もこれについてはより検討が進められておりますので、これらの成果も踏まえながら安倍川のほうにいろいろ適用していきたいというふうに考えております。

 最後、これはモニタリングとデータベースの仕様の話でございます。

 時間がまいりましたので、以上で説明を終わらせていただきます。

〈課題説明終了〉

↑ページTOPに戻る

【主査】  ありがとうございました。これに関しても事前のご意見は寄せられておりませんので、早速ご質問、コメント等をお願いしたいと思います。

【委員】  興味深い研究なので、ぜひとも成功させてほしいんですけれども、ただ生物系に注目した形で組み直す場合に、モデルはどうしても2つかまさないと無理だと思うんです。

 1つは、人為的なインパクトがあったときに、こちらの資料にない図が出ていましたね。あの中で多分、2つかんでしまうと思うんです。もともと人為的なインパクトで物理的な変量がどう変わるかということを見るモデルが物理系のモデルとして成立して、それから物理が変化したときにそれぞれの生物のハビタットがどう変化したか、もしくはよくなったのか、悪くなったのかといった、例えばそれこそよく工学の人が使われるピー・ハブシムみたいなモデルで、生物と物理の関係も表現できるんだろうなという感じがします。ということで、一足飛びに物理環境の人為的なインパクトから生物まで流れずに、それぞれのモデルがつながってくるんだろうという感じがしました。

 それで、特に注目していただきたいのは、この前の多自然川づくりの委員会でも議論された、多自然型をとった委員会ですけれども、生物環境は生活ステージごとにハビタットが変わる場合が多いということです。つまり子供から親にいくまでの間にハビタットを変えるケースが多くて、ほとんどボトルネックになっているのは繁殖のステージなんです、産卵とか。いろんな魚種、植物に対して、すべての生活ステージにおいてビタットを追求していくのは多分不可能だと思うので、あるキーステージに注目した議論をしていかざるを得ない。そのときには、繁殖が非常に重要なハビタットになるので、それが人為的な影響とか、土砂の流れによってどう変化していくかというふうにモデルで説明できれば、成功だろうなという感じがしました。

 それから最後に、これはすべてコメントです。モニタリングについてなんですけれども、モニタリングは、アダプティブマネジメントのお話もされていたので、フィードバックがかかるようにしてほしいんです。ほとんどの事業でフィードバックがかかってないんです。なぜかというと、モニタリングのデータをどう料理して、フィードバックをかけるかというそのボーダーラインが提示されてないんです。つまり延々とモニタリングをしていて、何も変わらないという状況がずっと続くんです。

 このプロジェクトで例えばモニタリング項目がありますね。モニタリング項目がこういう状態になったら、環境であったり、土砂の連続性であったり、そういうことに対して問題がでてくるというクリティカルラインみたいな閾値を提示していただければ、いろんなところでモニターしながら、目標に対して達成できるようなシナリオを作ることが可能です。アダプティブマネジメントはある幅で揺れながら、目標に近づいていくというイメージがあるのですが、その幅の提示ができてないんです。延々と例えば流量をはかったり、流砂をはかったり、ハビタットをはかったりしているんですけれども、結果的にそれがいいも悪いもあまり評価できていません。モニタリングという限りは監視しながら、どういう状態になったらまたやり方を変えるのかといったような、PDCAのサイクルに戻る議論が必要だと思うので、その基準ラインをパラメータで見せていただけるとすごくいいなという感じがします。

 以上です。

ページTOPへ戻る

【国総研】  河川研究部長の○○でございますが、私のほうからご説明させていただきます。

 先ほどご説明いたしましたように、昨年から見ると河川環境の研究室が一緒に入ってきたということで、こういうハビタットとか影響の議論がございまして、今、○○委員からもご指摘がありましたが、河川のほうは2次元の河床変動計算、これを粒径別に移動させるようなモデルをつくりますので、そこで河床掘削とか、あるいはダムからの大規模な土砂供給があった場合に河床がどうなるか。アユの産卵床が目詰まりしてしまうといいますか、砂で埋まってしまうかどうかみたいな話も、こういうところでまた検討ができる。その上に、今まで河川生態研究会みたいなところで、全国のいろんな状況の中で生物がどう変わっていくかという勉強もずうっとしてまいりましたので、その成果を結びつけて予測をしたり、評価をしたりするという、その仕組みと2つのモデルがといいますか、動く要因になります。

 ここであります赤で囲った部分なんかの変化についてのモデル、特に高水敷といいますか、河原に砂がどんどんたまっていって、植生が草木から樹木に変わっていくとか、こういったことも大分わかってきておりますので、おっしゃられたような形で2つつなげていくことになろうかと思います。

 モニタリングについては、はっきり言って、我々も閾値みたいなものを持っているわけではございませんで、この研究を通じてまさにプロジェクトとしていろんな知恵をみんなで出しながら、ご指摘のような点を考えながらきちっとしていきたいと思っていますが、モニタリングとデータベースをあえて書いていますのは、まさにおっしゃられたようなことを我々としても、今までばらばらにやっていたものを総合的に評価したモニタリングとデータの評価の仕方を確立したいという思いで書いているところでございます。そのような形で頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。

【委員】  まず、確認したいのですが、総合的土砂管理の総合的とは,安全、利用、環境という3点からということですが,このプロジェクトでは主に環境面についてだけ考えるということでしょうか。

【国総研】  環境面に力点を置いたんですが、もちろん防災、あと利用面についても配慮しながら行っていくということでございます。

【委員】  わかりました。

 それと、先ほどの○○先生のご意見とも重複するかと思いますが、2次元河床変動計算をしたとしても、精度的にはかなり大きなメッシュにならざるを得ないです。それに対して生物のハビタットとして、例えばマイクロハビタットは粒径程度のスケールであるということを考えたときに、2次元河床変動計算の出力とマイクロハビタットのようなハビタット構造と関連づける何か統計的なモデルのようなものをぜひつくっていただきたい。そのためには、時空間的な軸に対する河床形態とハビタットの構造の変化についてのデータベースが必要であり,ぜひいいものをつくっていただきたいと思います。

【国総研】  今、2次元のモデルでは、最初は20〜30メートルメッシュで表現しようかと思っておりまして、それも混合砂の計算はできませんので、粒径別に砂を移動させて、四方のメッシュとのやり取りを考えておりますので、かなり細かいところまではいけるかと思いますが、しょせん最後の環境のところは計算からは何も出てこないわけで、今までの勉強の中でそういう環境状態と植生とか、生物との関係のモデルを構築していくということですので、今までの成果を踏まえて構築しつつこのデータをさらに積み重ねて、精緻していくようなことを考えております。

【委員】  その点が非常に大事だと思いますし、これからそういったことが必要とされると思いますので、ぜひいい成果を上げていただきたいと思います。

【委員】  私自身そんなに土砂輸送のモデルに詳しくはないんですけれども、河川の中の水質モデルを考えれば、水の流れに対して水質ではなくて、土砂という粒径別の物質収支をとって解析するということになろうかと思うんです。そのとき水質の場合は汚濁物なり、対象としている汚染物質がどこから出てきているのかということに非常に左右されます。こういった土砂輸送のときにはある状態からある短期間の間に変化する場合には、供給量というのは重要ではないんでしょうけれども、今回の場合は長いタームで総合的に考えるとなると、その供給側の境界条件など、そういうものはどう考えていくモデルを、どういう考え方でいくんでしょうか。素人的な質問なんですけれども。

【国総研】  すみません。さっき時間がなかったので、ご説明は十分できてないんですが、これは上流域の話なんですが、要は流域、1つの流砂系でシミュレーションする場合、上流からどういうものが供給されてくるかというのが一番の条件になってくるわけで、今まで粒径別の流砂量の時間的な変化等に関して非常に不明な点が多かったというのと、データがほとんどないという状況にあります。また、砂防設備を挟んで上下流の流砂量がどういうふうに変わるかとかいうもののあまりないわけで、例えば粒径別の流砂量の時間的な変化等の調査を行うための自動計測装置システムを開発したり、あと砂防設備の上下流における定量的ないろんな土砂量の調査とか、砂防設備そのものの量だけじゃなくて、質的なコントロールができないかとか、そういったことも行って、より精度の高い境界条件を下流のほうに与えていくという観点でこのシミュレーションをやっていきたいと思っています。

【委員】  どうもご説明ありがとうございました。私の職場の近くに物部川という一級河川が流れているんですけれども、そこでこうした問題に関して大変苦しんでおります。例えば今までは維持流量が設定されていませんでしたので、ダムの放流量の変化によってアユの生態が随分と影響を受けるということも歴史的にありました。また、人工産卵場を漁協さんが自らつくって、天然アユを増やすという努力をされて、2004年には200万匹アユが遡上したという実績もございます。ただ、同じ年の2004年に大型の台風が襲来しまして、上流の山腹が崩壊して、濁水が長期化して、そうした影響が今非常に深刻になっています。そういう意味で物部川は、モデルの妥当性を検証する価値があるのではないかなという気もいたしますので、ぜひ検討をお願いしたいと思います。

 以上です。

【国総研】  物部川だけではないんですが、新淀川も河口の砂州の議論とか、閉塞の議論とかあるものですから、そういう全国のいろんなことをやっていこうと思っているんですが、まず現実問題としては砂河川に砂が流れてくる場合とか、礫河川、アーマーコート化しているようなところに砂が流れてくる場合とか、さまざまなケースが考えられるわけでございまして、そういった意味で今モデルはできるんですが、砂の移動を的確に表現できるような旧QS関係を図れるかどうかというところも大きな課題になっております。

 ここには書いてございませんが、実はウォッシュロードとか、浮遊砂は結構把握できる測定といいますか、観測方法があるんですけれども、川の河床付近を流れるといいますか、移動する砂の総流砂をはかる方法論というのは実は非常に粗くなっていますので、書いてございませんが、捕捉装置も今年開発するとか、そういったことでどんどん精度を上げていった上で、先ほど言った天竜川、安倍川、それから砂河川としては今のところ斐伊川を考えているんですが、そういうもので検証ができたら、全国のいろんな困っている川で適用を図りたいなと今考えておりますので、物部川までたどり着くにはちょっと時間がかかるかと思いますが、頑張っていきたいと思っております。

ページTOPPへ戻る

【委員】  よろしくお願いします。

【委員】  今後、ダムのアセットマネジメントといいますか、堆砂対策が重要になってくると思いますので、境界条件を与えられるときに堆砂対策、バイパスをつくったりとめ置きにしたりとか、それとの関連が出るようなご研究もぜひやって頂きたい。

【国総研】  実は先ほど○○委員からの質問のときのこの検討は、実は佐久間ダムから大量の土砂を出した場合にどういうレスポンスがあるのかなということでずっと検討を進めてきたものでございまして、先ほど境界条件の話が出ましたが、天竜川の場合には佐久間ダムでほとんどとまって、右支川からちょっと入ってくるだけなんですけれども、今回の検討では境界条件にこの佐久間ダムからどういうパターンで、どういう出し方をするかということも与えれば、下流のこういう河床の変化とか、ハビタットの変化も計算できるということを意図してやっているところでございます。

【委員】  今のことと関連することですけれども、この研究ではツールの開発というのが1つの目玉であると思いますが、(ツールを用いた個別の対策ではなく,)“流砂系の総合的土砂管理”のケーススタディをたくさんやっていただき,総合的土砂管理を進める上での情報を収集して頂きたいと思います。

【主査】  すみません。僕は全くの素人なので、トンチンカンなことを言うと思うんですけれども、13ページに安倍川流砂系における人為的インパクトというチャートが載っていまして、多分、川の個性って相当あると思うんです。流砂系をホーリスティックに理解しようと。そういうところから、先ほど来話題になっていますけれども、物理系と生物系の相関関係が推測できるだろうということだと思うんですが、そうすると川の個性とか特性ということで去年やったときは天竜川中心で、今年は安倍川もつけ加えてくださったし、代表的な砂河川をやりますということで増えているんですけれども、そのときにこういうデータの計測の詳細度といいますか、それとの依存があろうかと思うんですけれども、これぐらいのことだったら別にもうちょっと増えるのかなとも思うんですが、もっと細かいことをやられていると思うんです。

 その辺のことと、あと一番最後のもので、データベースの仕様って書いてあって、その辺は多分、過去の計測の技術及び詳細度とほんとうに欲しいところと、これからあり得べきところといろいろあろうかと思うんですけれども、その辺も視野に入れて、単にデータベースだけじゃなくて、結構計測の方法とか、こんなことまでやろうねというところまで視野に入れているというふうに理解しているんですけれども、それでいいんですよね。

【国総研】  結構でございます。安倍川はこれだけいろいろ手をかけましたよというだけなんですが、砂利採取についてもどこで年間どれくらいの量をとっているかというのも大体わかっております。もちろん業者さんがいっぱいとればまた別ですが、大体わかっておりますし、そういった意味でデータも今までは河床材料なら河床材料、それから植物なら植物という、それでまとめていたんですが、これからはそれを重ね合わせて、例えばメッシュごとにそういう関係するデータを縦に関連づけて見ていくとか、そういったことがこのデータベースの仕様という意味で、今までと全く違うものができるのではないかと思っております。

【主査】  ありがとうございました。もしないようでしたら、取りまとめたいと思います。去年、事前評価をしたときの意見を参考にしていただいて、対象河川を増やしていただくとか、環境に特に重点を置かれましたし、変更の内容についての非常に評価は高かったと思います。ただ、物理系と生物系の問題、あるいはそういう中でホーリスティックに把握するというのはどういうことなのかとか、それをさらに過去にさかのぼってやろうという非常にチャレンジングなテーマを設定されているのも非常にいいんじゃないかと思います。ただ、その分だけ大変になろうかと思いますが、頑張ってください。

 砂ということに関しては、ダムのアセットマネジメントでの関連とか、そんなことを僕は抜かしていると思いますけれども、そういうこともありますので、また後で取りまとめをきちんといたします。参考にしていただいて研究を推進していただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 それでは、次でありますけれども、通し番号でいとう5番です。「地球温暖化による気候変動の影響に適応した国土保全方策検討」でございます。説明をお願いいたします。

ページTOPへ戻る

〈事前評価D地球温暖化による気候変動の影響に適応した国土保全方策検討〉

【国総研】  河川研究部の流域管理研究官の○○でございます。

 本研究は、温暖化で気象条件が変わるのに対して水位あるいは流量の観点から影響を想定して、それに対する適応策を検討していこうというものです。パワーポイントの表紙につけていますこの図ですが、先般IPCCの第4次報告があり、その中で気候変動計算に用いられた24モデルのうち、現在、ダウンロードできる約半分のモデルの計算結果について示したものです。今後のCO2の排出が大きいのと中くらいのものの2つのシナリオについて、日本周辺のデータを抽出してプロットしてみたものですが、モデルの平均として100年後に3度強から4度くらい平均的に上がる結果となっており、地球全体の平均値と比べると少し高めの温度上昇になっています。まだモデル全体のデータがとり切れていませんが、変動幅としては地球全体とあまり変わらないくらいの気温が日本周辺でも上昇するだろうというような感じでおります。

 今回の評価は行政部費指定課題の事前評価ですが、研究内容そのものは昨年度からスタートしていますプロジェクト研究の「気候変動等に対応した河川・海岸管理に関する研究」という中の20年度からの部分ということで位置づけられております。既に事前評価を受けたもので、内容は特に変わっておりませんが、今回の部分は、その時点では概念しか書いていませんでしたので、少し検討の流れ等を整理したということでございます。 

 プロジェクト研究全体の流れとしては、先ほどの気温が変化するということと、これにより気象がどう変化するか。特に降水がどう変化するかという課題がまずあります。先ほどのようにモデルによってかなり結果が違うというのと、モデルそのものが200キロ以上のメッシュのものが多く日本周辺にあまり点がない、日本の陸上でいくと10点ぐらいしかないとか、そんなことになってしまうという問題があります。また、気温はともかく、降水になりますと非常に精度が悪いというところがあって、まずその条件設定をどうするかということで、そこの作業を現在行っているところです。

 設定条件を現在検討しているわけですが、例えば20キロメッシュで気象研究所のほうで計算されているGCM20というモデルがありますが、それで年最大の降水量を現況の20年と100年後の20年ということで比較しますと、地域によって違うんですが、平均的には10%から20%ぐらい将来的に上昇する。地点とのばらつきがあり、95%ぐらいのカバー率で見ますと30から60%の増加となり、かなり大きな水量になる可能性があるという結果になっております。 渇水については、同じGCM20では渇水年の夏から秋にかけての長期間の水量が少し減るとか、特に積雪地域では雪が早く解けるとか、雪が雨になって降水するということで、冬の始めから融雪が終わる間の流況がかなり変わってしまうというのがあり水資源に影響を及ぼすと思われます。

 それから、海面上昇のほうも数十センチぐらい上がるだろうということが想定されます。モデルによってばらつきがありますが、降水量の平均値はともかく、変動が大きくなるというのはどのモデルでも認められる現象ですので、将来的には温暖化により洪水についても、渇水についても状況としては厳しくなるだろうと予想されます。プロジェクト研究としては、そういった整理を行い、具体的にある値をセットできない状況ではありますけれども、ある幅を持たせて条件設定したとして、洪水の越水頻度がどのくらい変わるとか、そういったところを出そうということが今年度ぐらいで考えているところで、パワーポイントの黒字で書いているところがその部分でございます。

 事前評価の対象になっていますのは赤字で書いている部分ですが、この部分ではまず、脆弱な地域を検討してモデル地域を抽出して、経済性とか社会的な影響というものを評価します。この結果を踏まえ、必要な対策について対策コストも含めて検討して、最終的に中長期の戦略のほうに持っていこうというものです。 評価対象部分の流れですが、今全国的な気象条件の変化というのをやっているわけですがその変化が大きいところ、それから地域の脆弱性、ゼロメートル地帯があれば、当然、海水面が上昇すれば危なくなってきますので、そういったことを勘案しながらパラメータを抽出しまして、幾つかのモデル地域を抽出することを、まず考えています。その地域につきまして経済的、あるいは具体的な浸水なりが起こったときの経済・社会的影響評価をし、その評価手法を検討し、あわせてモデル地域の評価もしていくことを考えています。経済・社会的影響評価の検討結果については、それをもう1度脆弱性といいますか、地域を抽出したパラメータのほうにフィードバックさせまして、地域ごとの脆弱性というものを全国的に評価していきたいと考えています。またモデル地域につきましては適応策のメニューを検討していくことを考えています。対策コストも算定して、どういう形で中長期的に進めていくかというのを提案していきたいということでございます。

 モデル地域の抽出ですが、先ほど申し上げましたように災害リスクの大きい地域を抽出しようということで、外力付加が大きくなるような地域を抽出するというのと、そもそも地域が持っている脆弱性というものをあわせて評価して、モデル地域を考えていこうと思っております。

 社会・経済的影響評価ですが、まず手法の検討ということで、経済性につきましては、直接的な影響につきましては、既に用いられている手法もありますので、そういうものを使っていくというのと、それのグレードアップを図っていくことを考えています。また、間接的といいますか、ネットワークの寸断等で出てくる影響についても評価していきたいというふうに考えています。今回の中越沖地震でもリケンが損害を受けて、いろいろ影響が出たということが報道されていましたが、そういった部分も含めて評価したいというふうに考えております。

 以上の結果を踏まえて、モデル地域については、先ほど申し上げました適応戦略を検討していくということ、それから全国的には脆弱性のパラメータを再評価して、全国的な脆弱性を検討していきたいということでございます。

 これは適応策として考えられる事項と実施時期のイメージを示したものです。適応策については、IPCCの中でも第3次まではほとんど触れられてなかったんですが、既に温暖化は始まっている、将来的にもすぐにはストップしないということで、温暖化関係のガスの排出を抑制できたとしても何らかの影響が出てくる。そこで、第4次報告ではこれから対策が大事だということが書かれていまして、これから各国で検討が始まるだろうということですが、日本でもそれに対応したものをやっていかなきゃいけないと考えています。

 体制ですが、実はこの指定課題は、予算要求上は河川局との共同のテーマになっております。適応戦略のところは河川局が主体でやって、国総研でバックアップしていくということで、ほかの部分は国総研中心でやっていくことを想定します。それから、私どももそうなんですが、経済・社会的評価といったときに、水害とか渇水分野でのほんとうの専門家がいないというところがありまして、みんな素人でやっていかなきゃいけないという実際上の問題があります。どうしてもそこのところは大学の先生とか、いろんなところのバックアップをいただきながらやっていかなければならないと考えております。また、具体的な政策については、将来、地整等と一緒にやっていくとことを考えています。

 成果につきましては、先ほど申し上げました、まず経済・社会的な影響評価の手法というものを確立させたいというのと、全国的な脆弱性評価指標を提案し、評価したいと考えています。モデル地域につきましては、適応策を提案、評価して、戦略として立ち上げていきたいということでございます。

 活用としましては、情報発信をして、国内だけじゃなくて、国外にも日本でこんなことをやっているというのをなるべく発信していきたいということを考えているというのと、実際日本でどうするかということにつきましては、先ほど河川局のほうと一緒にやっていくということで、その中で反映させながら戦略として一緒につくっていきたい。具体的なものとして反映させていきたいというふうに考えているということでございます。

 事前のご指摘の中では、まずタイトルが国土保全方策というのは大き過ぎるんじゃないか。水害とか渇水の話ではないかという指摘がありました。そうなんですが、具体的な対策の中では土地利用の話とか、国土全体に関係するものが出てくるということもありまして、少し大きいんですが、国土保全という名前を使わせていただいております。それはそのまま残したいと思います。実は最初は河川という名前で国総研のほうで考えていたんですが、河川局とやり取りしているうちに向こうからの要請もありまして、こういう名前になったという経緯もございます。

 それからもう1つ、渇水と治水関係の話が全く分離されて出ているけれども、本来はやり取りがあるんじゃないかという指摘がありました。資料の中では確かに分離されていまして、実際、重なる事項というのはそれほどないというのが実感です。ですが、例えばダムの運用でありますれば、多目的ダムの利水と洪水調節の容量をどう割り振っていくかという話はあると思いますので、そこのところは柔軟に考えていきたいと思っております。

 以上です。

〈課題説明終了〉

↑ページTOPに戻る

【主査】  ありがとうございました。第二部会の○○先生から事前意見が寄せられておりまして、それについては今ご説明いただいたとおりでありますので、直接各委員からのコメントとご質問に移ってまいりたいと思いますので、お願いいたします。

【委員】 洪水と渇水に着目しているという点はよくわかりましたが、斜面崩壊とか、土砂に関することはこの研究の中ではあまり考えないということでしょうか。河川の治水等を考えたときに、土砂の条件がかなり効いてくると思いますが、土砂の条件が地球温暖化によって変化することも考えられるので,そのことも考慮に入れおかないと、後で研究をやり直すということにもなりかねないという気がします。

【国総研】  土砂のところはちょっと気になっているところなんですが、この中には入ってないです。ただ、例えば豪雨的なものが増えたといっても、どのぐらい土砂生産が増えるだろうかというのが今そんなに検討できるんだろうかという思いがあって、ちょっと取り込めてないところがあるんですが。例えばダムの対象のようなものであれば、流量とある程度相関がとれれば、それに合わせてこのくらい増えそうだとかいうことが言えるような気もするんですが、むしろそのあたりどうなのかなというのをお教えいただければと思うんですが。

【委員】  多分、砂防のほうでも、そういうことをいろいろ検討されていると思いますが、横の連携を少し強化されて、このプロジェクトを進められてはいかがでしょうか。

【国総研】  砂防のほうでも実は来年度から3年かけて、要は地球温暖化の影響によって土砂災害のリスクがどういうふうに変わっていくか、それに対する対応策をどうしたらいいかというのを3年かけて研究する予定でございまして、以前からちょっとお話はしていたんですけれども、この研究とも連携を図りながらやっていかないといけないという意識は非常に強く持っていまして、国土保全というような言葉を使われていますので、できたら一緒に連携しながら進めていったらどうかなと私自身は思っております。

【国総研】   横の連携が悪くてすみません。今、話を聞きましたので、プロジェクト研究として一緒にやる方向で内部で調整させていただきたいと思います。

【委員】   横の連携というのが前々から指摘されているところでもありますし、ぜひよろしくお願いいたします。

【委員】  多分このテーマはあらゆるものに引っかかってきますよね。防災の面もそうですし、先ほどの環境の面もそうでしょうし、中環審でも今、新・生物多様性国家戦略の見直しの議論中にこれがしっかりと入ってきています。ですから、国総研の内部だけじゃなくて、いろんな研究機関がこれについては危機的な意識を持っています。そのため、全体として横のつながりをよくしていただきたいなと思います。

 大体、このプロジェクトについては、どのぐらいの時間スケールで考えておられるのかというのをお聞きしたいと思います。その理由は、特に最後のほうの戦略的な議論になったときに、日本がこれ以上そういった施設的な投資をできるのかなと。もっと言うと、人口が減っていく時代に入っていて、仮に50年後を想定したとしても相当減っている。そうすると、土地政策的なものによって危険ゾーンから離れるといったようなことが、将来的には可能なんじゃないかなと思うものですから、その辺について何か考えておられたら教えてください。

【国総研】  最初の点につきましては、内部でも所長にいつも言われておりまして、外部機関との連携を広く図っていく方向で何かしなきゃいけないというふうに認識しております。

 後の質問ですが、研究のタームですか、戦略のタームですか。

【委員】  この研究プロジェクトのタームではなくて、実際に温暖化が進んでいくという最初のシナリオがありましたよね。あれで大体どのぐらいを頭の中に入れて、これまでにはどんな対策を、国総研ですから、行政と協力しながら打っていかなくちゃいけないというネライがあると思うんですけれども、その辺の時間スケールというのはどういうふうに思われていらっしゃるんでしょうか。

【国総研】  そこは行政的なはなしもあり、まだきちんとしたものはないんですけれども、先ほど説明したデータのように100年先のみを見据えてやるというのはまずないと思います。当面でいえば20年とか、50年とか刻む中で、それぞれの段階ごとにどうするかというのを考えていくことになると思います。

温暖化の問題につきましては、先にも申し上げましたように、現状では予測モデルの精度がかなり悪いという問題があります。これは、今後、多分ステップ・バイ・ステップで上がっていく話だと思いますので、その中でどう条件設定していくかというのが非常に大きな問題になってくると思います。したがって、モニタリングしながらという部分がどうしても出てくると思います。モニタリングをしながら、こういう状況になったらこうするというようなスタンスの戦略の立て方というのもあるんじゃないかと考えています。ただ、気候変動がカタストロフィックに変わってしまうという事態があると、それに追随できないというのがありますので、事象による仕分けをしていくのもこの研究の中で課題だと考えております。

 ついでに研究のことで申し上げますと、今後、2年でさっきの経済・社会評価といったものと戦略まで実施することを考えています。かなり短期間という認識で私自身はいるんですが、そういう意味では経済評価と社会評価というのが、きっちりしたものになるかどうかというのは多少不安があります。ただ、この研究そのものはスピードが大事なところがありまして、実際にどういうことになるかというのをまず示す必要があると考えています。今は単に雨が降り続くのが多くなるかもしれないという状態ですので、それを何らかの形で、こういうことになりますよというのを具体的に1度示さないといけない。IPCCの第5次がまた5〜6年先にあるかと思うんですが、それに向けて各国が動くという中で1度答えを出さないといけない。そういうスタンスでちょっと短期間なんですが、研究期間をセッティングしています。したがって、本研究の後にも類似の研究を繰り返しながらという状況になるんじゃないかと思っています。

【委員】  この「気候変動」ということが、実際に開発するモデルの中でどんな形で出てくるのかということをちょっと考えてみたいと思います。いろんな影響があるということをおっしゃいましたけれども、例えば時間50ミリの雨が、今までは10年に1度だったけれども、それが5年に1度になるとか。そうだとすれば河川改修事業のB/Cみたいなものの計算の結果はこれまでと違ってくるということはあると思うんです。しかし、10年が5年になったというだけだと、それで新しいモデルを開発したとか、新しい論文を書けるかというと、なかなか難しいと思います。

 だから、国総研の資源を使って何かおもしろいオリジナルな研究をするときに、いろんなところと協力するとおもいますが、国総研らしさ、しかも気候変動ということがうまく論文のタイトルになるようなテーマというのができるのでしょうか。

そうすると、政策研究というか、政策評価にかなり近い、例えば洪水氾濫地域のところからみんな人を退かせて、そこは開発させないようにする土地利用計画みたいなものの評価とか、そういう実際の政策策定に近いところでむしろいろんな新しいモデルとか、ケーススタディすることによってオリジナリティが出てくるような、国総研らしさが出てくるような気がしました。

 結局、言いたかったことは、「気候変動」というのは一体モデルの用語で言うとどういうことなんだと、どういう変数の意味になってくるんだということを、もう1度確認したかったわけです。

【国総研】  ご指摘ありがとうございますというか、私も常々そう思っていまして、今までやってきたことが外力が変わることで何が変わるかというところがあります。今、ご指摘いただいたのは私の疑問点でもあって、また国総研としても研究としてどういう位置づけなのかという指摘は常に出てくることかと思っています。研究開発部分として、1つは経済、社会的な間接的な影響評価の部分にあると考えています。主に被害については直接的影響でほとんど評価されているのが現状で、いろんなところで一斉に災害が起こったりする場合に間接的な影響が大きくなるといったことが考えられ、もっと広範なことで考えなさいよというのもIPCCの中で書かれています。そういった部分が研究のモデル開発部分としてあると思っています。

 今、先生からご指摘がありました適応策のところでもそういうものがあるんじゃないかというご指摘はありがたく思います。検討を通じて出して行きたいと思います。また、これは内部でも指摘されているのですが、現況の問題点も含めて少し洗い直しをして、その中で技術開発する部分は、必要だったらやっていかなきゃいけないという部分、これについては、どういう部分があるのかまだきちんと整理できてないんですけれども、検討したいと考えています。本研究は、既往の手法も用いて期限内に答えを示すという部分と、新しいものを開発するという両面を持っているところがあります。ありがたいご意見を頂きましたので、研究開発部分についてもできるだけ取り入れてやっていきたいと思っています。

【委員】  地球温暖化に関するIPCCの予測があると。それに基づいた降雨量だとか、降水量だとか、強度だとか、量だとか、地域的なばらつきみたいなものの情報は、今回の研究の中でインプットして扱おうとされているのか。それともそれをもう少し精緻化してするような努力もされながら、それをもってして想定外力としてインプットする日本版としてやろうとしているのかというのがわからにくいようです。どこにオリジナリティを見出されているのか、私自身は聞いていてわからない。先ほどの降雨情報の研究が並行して実施されているので、両方とも独自性を持ちながら、相互にうまくリンクしながら研究成果を出そうとされているところが新しいところなのかなと理解しているんですが、そうではないんですか。

【国総研】  残念ながらそうではなくて、降雨のほうは国総研で直接やっている話ではありません。さっき申し上げたGCM20というのは気象研究所で開発されているモデルです。今年の9月に別のモデルの結果が出るということになっていますが、そこの部分は国総研は全然タッチしない。だから、気象の計算のところは研究には含まれていません。

 ただ、そのモデルの算定結果がそのまま外力条件に使えるのか、どういう形で外力に使えるかという別の問題があります。例えばGCM20で計算されている結果というのは必ずしも現況をあらわしていないんです。現況の再現精度があまりよくないという中で、将来をどうやって評価していくかというところは、研究というのかどうかちょっとわからないところがあるんですが、計算結果の評価方法という形で検討する必要があります。

 それから、おっしゃられた降雨予測の話は、スライドの2の部分だと思うんですが、これもよく読んでいただくと、「予測情報を活用した次世代型水管理」ということで、予測情報の精度が上がってきているので、うまく使えないかというものです。使えれば、それは将来の戦略の中にも入れることができるということでして、使い方のほうを検討するものです。つまり、降雨予測精度向上のところは気象研なり、気象関係のほうでやっているところの成果を使うということになっています。

【主査】  よろしいですか。一連の研究をずっと続けてこられて、国土保全方策につなげるということは重要だということで、新しいチャレンジをされているんですが、○○先生からもちょっと出ましたけれども、非常に不確実な、あるいは精度の悪い情報をどう活用するか。でも、時間は極めて限られているというわけですね。そこで、しかも今、世界中で懸命な取り組みがされているから、BAU自体がどんどん変わりつつある。

 そういう中で非常に時間のかかる土地利用とか、都市構造とか、国土構造というのをどううまく軌道修正していくかということだと思うんですけれども、その辺が一番大事なんですが、きょうのプレゼンテーションからはようわからんかったという感じなんですよね。【国総研】  こ適応策のスライドはちょっとはしょって説明したのですが、横軸に年数を、縦軸に外力の変化をとった中での適応策のイメージを示した図を作成しましたが、土地利用とか、そういったところにいくと、右上端のほうの次元の話になってくると思います。だから、長期戦略として位置づけられますが、それだけが主体でこの研究をやるわけではないという認識です。

【主査】  はい、了解いたしました。いろんなことがあるからということですね。ほかにございますか。これも一連の長い大きな研究の中でこういう分野をぜひ今後力を入れていきたいということで、委員の皆さん方は重要だし、非常に肯定的だったと思いますけれども、土砂の話とか、研究そのもののダイナミズムの話についてもさらに留意していただいて、いい成果を出していただければなというふうに思います。

 そういう取りまとめをしたいと思いますが、よろしゅうございますか。ありがとうございました。じゃ、これはこれで終了させていただきます。

 それでは、次は通し番号で6番です。「日本近海における海洋環境の保全に関する研究」でございまして、説明をお願いいたします。

ページTOPへ戻る

〈事前評価E日本近海における海洋環境の保全に関する研究〉

【国総研】  下水道研究室長の○○と申します。新規の要求課題、日本近海における海洋環境の保全に関する研究ということで、説明させていただければと思います。

 最近、日本近海におけるエチゼンクラゲの大量発生、あるいは有害赤潮等の被害が増加しております。外国の都市活動の関与が懸念されています。左側の写真でお示ししていますが、これは一昨年の夏、鳥取県沖で1万匹の魚が大量死ということで、有害赤潮が疑われております。こういう現象が10年ほど前から発生しているということです。

 右側のほうはクロロフィルaデータでございまして、この5月14日から22日のものを合成したものでございます。こちらは海あたりで、あるいは沿岸域で非常に濃度が高いというのを見ていただけると思いますけれども、この高濃度の栄養塩が日本海に移動しているということが推定されるわけでございます。

 一方、この4月に海洋基本法が成立しております。これを受けまして、国土の一部である領海、あるいは排他的経済水域等の海洋環境の管理が急務となっております。去る6月29日にも事務次官をヘッドとする有識者会議でありますところの第3回海洋沿岸域政策懇談会、こちらの中でも日本海、東シナ海等の閉鎖性水域における環境保全に沿岸諸国と協力しながら取り組む必要があるとまとめられているところでもございます。

 研究の目的でございます。2つございます。1つ目は海洋環境保全提言案の作成です。これは中国、韓国、ロシアとの研究者と協力して作成するものです。生活排水、工場排水を適切に処理し、海洋沿岸域への汚濁負荷を削減することにより、海洋環境の保全に取り組むことを提言いたします。

 もう1つは下水道整備等陸域対策のガイドラインの作成です。これは提言に記載された陸域からの汚濁負荷対策を実行する際に必要となる計画策定の手順、排水処理施設の整備等に関する技術的な情報をまとめたものです。

 研究内容につきましては、次の研究フローの中で説明いたします。

 研究フローの1点目でございますけれども、海洋環境調査でございます。これは海域汚染の現状把握をするもので、リモートセンシングのデータの解析、海洋環境被害の把握、海洋観測データの活用を図ってまいります。

 次に、汚染物質流出モデル構築と海洋環境シナリオの検討でございます。これは陸域からの汚濁負荷量の策定把握、削減手法の提案と評価を行うものです。実際にどのように調査を実施し、どのように解析していくかにつきましては、CRESTの先行研究の事例が参考となります。これは九州大学の○○先生がリーダーをされておりました黄河流域の水利用・管理の高持続性化の研究の成果の一部でございます。このCRESTは福島大学の○○先生が研究総括をされております水の循環系モデリングと利用システムの研究課題の1つでございます。

 この図では黄河流域の渭河の水質測定データがこちらのほうにもございますが、BODの濃度が縦軸でございますけれども、100ミリグラム/リットルを超える非常に高濃度の観測データが示されているところでございますが、こちらの図では流域の土地利用やメッシュの状況がGISデータとして管理されているのを見ていただいておりますが、こちらの右側の図でも見ていただいていますけれども、こういうデータをもとに汚濁負荷量を推定しまして、先ほどお見せしました実測値と照らし合わせまして、精度を高めていくということをされております。

 次に、この図では都市用水に関しまして中水道の導入、あるいは生活排水の処理率の向上等によりまして、汚濁濃度がこちらの200というような高いBOD濃度が100以下になる。こういうふうに大幅に削減されることを示してございます。

 以上示したような解析事例を参考にしまして、今回の課題においても研究を進めてまいりたいと思っております。

 研究フローに戻りますが、事象の解析ということでございます。実際に越境する汚染の再現と予測を行ってまいります。ここで用います海洋シミュレーションに関しましては、既に九州大学の応用力学研究所、あるいは広島大学で開発されたものを活用する予定でございます。これはシミュレーションの一例でして、海流の分布を示したものでございます。今回対象としますのは窒素、リン等の栄養塩類についてですが、同様のシミュレーションを実施しまして、汚濁の挙動及び水質汚染被害の予測を実施いたします。

 研究体制でございます。この研究は、先ほど申し上げた○○先生のCRESTの研究をいわば継承する位置づけで国総研のほうで実施をいたします。研究の遂行に際しましては、タスクフォースを結成しまして、大学あるいは関係機関と連携を図ってまいりたいと思っております。

 研究の成果の利用につきましては、先ほど研究目的で述べました下水道の整備等陸域からの負荷削減のガイドライン、あるいは日本近海「海洋環境保全提言案(仮称)」を活用しまして、日本近海周辺諸国への警鐘と協力呼びかけを行います。あわせて海洋基本法に基づく海洋基本計画に反映していくことによりまして、日本近海における海洋環境の保全に貢献したいと思います。

 補足でございますけれども、このような研究の先例といたしまして、バルト海の事例をご紹介いたします。バルト海はこの図にありますように、溶存酸素濃度が2ミリグラム/リットル以下の非常に貧酸素水塊と呼ばれるものが東京湾と同様に広がっておりまして、汚濁負荷の削減が急務でございます。

 こちらの右の図は、リン酸濃度と窒素濃度の経年変化を示しておりますけれども、近年においては改善傾向にあるというふうに言えると思います。

 このような改善傾向にある理由の1つとしまして、バルト海の沿岸諸国で構成いたしますHELCOMという組織の1つの成果ではないかと考えております。このHELCOMは1974年にできておりまして、今年度新しい行動計画を策定しまして、秋にもそれが閣議決定される予定と聞いておりますが、EUの中でも非常に先進的な取り組みとして評価されていまして、EUの海洋戦略をリードする役割が期待されているというふうに聞いております。

 それから、海洋基本法に関しましては4月20日に成立しまして、7月20日より施行されています。海洋政策大臣といたしましては、国土交通大臣が当たることとなっておりまして、総合政策本部も一昨日の7月31日に初会合が開かれております。この海洋基本法の中でも、海洋環境の保全というのが非常に重要な大きな柱として位置づけられてございます。海洋基本計画をつくるということになっておりますのは、これは具体的な海洋保全に関する総合的な計画ですが、この中でも海洋の環境保全のための施策が盛り込まれることが期待されているところでございます。

 以上で説明を終わります。

〈課題説明終了〉

↑ページTOPに戻る

【主査】  ありがとうございます。この件につきましても、他部会からのご意見、コメントはございませんので、早速ですが、委員の皆さんからご質問、コメントをいただきたいと思います。いかがでしょうか。

【委員】  日本近海における海洋環境を、下水道という人為的な負荷を排出しているところを管理する部局で研究をするということは、比較的非常に斬新な方向性が出ているかなと私は思っています。まず、考え方として日本近海の海域のモデルは存在していると。そして、リモートセンシングで広い領域のクロロフィルをはかるなり、別の水質汚濁状況みたいなものを把握できるという考え方はわかります。最終的にモデルを動かすときに必要な黄河の○○先生たちのグループでつくられたモデルの研究では、非常に苦労されたわけですね。要は日本近海にかかわる流域って黄河以外にもたくさんあるわけで、それをどう簡略化されて、全体としてバランスのとれたモデル、インプット情報ですかね、入力されていくかというのが今のお話だと見えにくかったんですけれども、それは他の国との連携なり、タッグを組む相手すでにあって、それぞれの国でそういった情報を出していただくということをお考えなんでしょうか。

【国総研】  ありがとうございます。今まさにご指摘をいただいたとおりでございます。3年間の研究期間を持っておりますけれども、その中で、今、先生がおっしゃっていただいたようないかに情報を集めるかということと、いかにモデルを精緻化していくかというのは、2つを同時に追いかけなくてはいけないということで、非常に大変になろうかと予想しております。できる限りデータベースは、できるものは当然利用させていただこうと思っていますし、また今、○○先生のCRESTを引き合いに出させていただいていますけれども、ほかの先行研究がたくさんされているか思いますので、今、いろいろ勉強中のところもございますけれども、その中の考え方を十分活用させていただきまして、所定の成果を得るように努力してまいりたいと思います。

【主査】  日本海に流れ込んでくる黄河ぐらいの大きな川って、全部で幾らぐらいあるんですかね。

【国総研】  中国はいわゆる7流域といいますか、7大陸河川というふうに言われているかと思います。

【主査】  ロシアもあるし、朝鮮もあるし。

【国総研】  そういう一体どのぐらいの川が存在して、どのぐらいの流量があって、大体どのぐらいの負荷量があるかということを、まずは第1情報としてつかみつつあります。日本も日本海に石狩川とかその他ございますけれども、そういうところもまずはオーバーオールに概略をつかんでいければと思っております。

【主査】  そういった河川からの負荷の危険分析って、ちゃんとわかるんですか。下水を一生懸命やっているのはいいけれども、いや、知りませんよ。例えばよく考えてみたら、負荷量の数%ぐらいだったということにはならない。

【国総研】  まず、負荷量と考えられますのは、都市の生活系あるいは工場排水系がございますが、それと並んで農業系の負荷といいますか、そちらのほうも非常に大きいものがあるかと推察しております。私どもは都市系といいますか、そちらに目がいってしまいまして、まずのターゲットはそちらにしたいと思っておりますが、ほかの研究の進展の中で農業系の負荷についても把握に努めるようにしてまいりたいと思っております。

【主査】  ありがとうございました。その辺、ぜひ柔軟にお考えいただいて、さっきも大事だから、1つの研究室を増やしたということもありましたので、お願いできればと思います。

【国総研】  はい、頑張りたいと思います。ありがとうございます。

【委員】   とても大事な研究だと思います。そして、しかもこれは近い将来、かなり大きな政治問題になることも予想されます。中国とか韓国の方をうまく巻き込んで、やっていってほしいなと思うんです。CO2の排出問題では中国はなかなかうんと言ってくれません。それを我々が「こうしましょう」と言っても内政干渉になります、今だと。海洋汚染問題はうまく対処していただきたいと思います。そういう意味でHELCOMというのを勉強されて、どういうふうにすれば、そういう問題解決の枠組みというのか、組織がつくれるのかということも一緒にここの中で検討されていることは評価できます。HELCOMもデータベースをつくったり、モデルをつくったりするところから皆さんで協力されているのかなと予想するわけですけれども、できるだけ中国の方に参加いただいて、こういうモデルをつくっていったらいいんじゃないかなというふうに思いました。

【国総研】  ありがとうございます。HELCOMは先ほどもご紹介しましたように、かなりヨーロッパの中でもいい事例ということで推奨されているようでございますので、もう少し深く研究してみたいと思います。

【委員】  ちょっと古い話なんですけれども、例えば酸性雨問題を見たとき、北米大陸ではあまり協力体制がうまく構築されなかったけれども、ヨーロッパでは30%クラブというんでしょうか、自主的に30%削減しようというような動きが、多分、30年とか40年ぐらい前にあったと思うんです。ですから、こういう国際協力の構築方法は、文化的な背景というものによって違ってくるのかなというふうに思ったりします。先ほどの先生のご指摘とも関係しますけれども、こういうアジア的な文化的背景において上手に協力体制を構築できる枠組みというのも、ぜひ検討・実現していただきたいと思います。

【国総研】  ありがとうございます。今、酸性雨というお話で、最近、光化学スモッグの問題等も話題になっているようでございまして、これは環境省のほうで観測網という取り組みを考えられているようでございますので、研究者といいますか、実際のデータに基づく議論ができるような環境をぜひつくっていければと思っております。ありがとうございます。

【主査】  ほかにいかがですか。もういいですかね。これも近い将来に国際的な大きな問題になる可能性が大きいので、今から研究のネットワークの確立をぜひお願いしますということでした。計測とか、データ共有とか、モデル構築でぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 私自身はひょっとするとまだ思い込みに基づいて言っているだけなんですけれども、下水道以外の広がりを持つ可能性もありますので、その辺については私からは柔軟にお考えいただければなというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 それは大変なんだけれども、頑張ってくださいということでございましたので、大いに推進していただきたいということだと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、次の事前評価案件でございます。「科学的分析に基づく生活道路の交通安全対策」に関する研究でございます。よろしくお願いいたします。

ページTOPへ戻る

〈その他F科学的分析に基づく生活道路の交通安全対策〉

【国総研】  科学的分析に基づく生活道路の交通安全対策に関する研究についてご説明させていただきます。道路研究部の道路空間高度化研究室の室長の○○でございます。よろしくお願いいたします。

 最初に研究の目的でございますが、ここでは大きく交通事故が起こる場としまして、幹線道路と生活道路というふうに分かれるわけですけれども、そのうち生活道路につきまして、大体事故の半分ぐらいが発生している。ただし、今のところ科学的分析に基づくデータが不足してございます。今のところ生活道路の交通安全対策につきましては、経験に立ってやっているのが実情でございます。それを今回、科学的な対策立案・評価手法を行う仕組みを構築していこうということが研究の目的でございます。

 ちょっと内容を具体的にご紹介いたしますと、研究の概要の中でポイントとなりますのが、ドライブレコーダーを用いて情報を収集するというところでございます。先ほどのように道路は大きく幹線と生活道路と分かれまして、生活道路でなかなか科学的なデータがとれてないということがあるんですけれども、それにつきましてドライブレコーダーを活用してデータをとっていこうと。それをもとにデータをいろいろとりまして対策を立案いたしまして、その対策について、効果があったかどうかについて評価していく中身になってございます。

 まず、幹線道路と生活道路の事故の発生状況について簡単にご説明いたしますと、これは幹線と生活を分けたんですけれども、先ほども申し上げましたように、事故は生活道路のほうが少し多め、半分ちょっと多いぐらい、幹線と比較いたしますと起こってございます。ただ、幹線道路といいますのは国道とか、県道とか、比較的大きな道路でございまして、生活道路というのは市町村道等の小さい、住宅がすぐ近くにあるような道路でございます。

 それで、日本の事故の特徴といたしまして、諸外国と比較したものでございますけれども、歩行中に占める割合が日本は高くなっている。それと、あと歩行者の事故というのが自宅から500メートルの間で起こっている。例えば高齢者ですと5割とか、15歳以下の小さいお子さんですと4割とか、これが歩行中の事故というふうに非常に歩行中が多い。

 あと、幅員等で着目いたしますと、5.5メートル未満の細街路の事故が近年増加しているという傾向がございます。

 あと、大きく事故の類型で、これは幹線と生活についてそれぞれ比較したものなんですけれども、幹線については追突、スピード出し過ぎで後ろから追突されるという事故が多いんですが、生活道路においては出会いがしら、例えば細い道から出てきたときに大きな道のところで出会いがらしでぶつかるとか、そういった事故が多いといった特徴がございます。

 なぜ生活道路でデータがとれないかという話なんですけれども、交通事故分析システム、交通事故統合データベースというのがございまして、警察庁のほうで持っております交通事故統計データと、あと道路交通センサスの交通量とか、道路構造等に関するデータを、交通事故統合データベースということで回しているんですけれども、そういう作業がなされているのが国道、県道といったような道についてなされている。こういう市道とかにつきましては、ちょうど市道の延長がこういう幹線の5倍程度あるというところに関係がございまして、統合データベースをつくるところまで至っておらない。幹線につきましては、こういう事故が起こったりすると道路の位置が関連づけがなれて、結構集中的に対策等がなされておりますが、そういう市道においては集中的な対策が難しいというふうになってございます。

 先ほどのプログデータ、ドライブレコーダーとかを使いまして、効率よくデータを集めるという検討を考えております。

 ドライブレコーダーにおいて具体的などんなデータがとられるかといいますと、位置に関するデータと画像に関するデータ、それとか加速度等のデータ等がとられまして、実際、例えば加速度が0.5Gとか、事故に至らなくても急ブレーキをかけたりとか、そういう場合にはそういう事故に関係ありますような場所とか、事象についてデータを習得できるということがございます。

 それから、先ほどの幹線道路では、危ない箇所についてなかなか特定が難しいところがあったのが、ドライブレコーダーを使うことによって生活道路においても事故のデータがとれる。実際、物流企業のほうでドライブレコーダーをどんどん導入しておりまして、このようにデータを習得できるような状態が出ております。

 それとあと、ドライブレコーダーがなぜ今この研究にあるかなんですけれども、普及状況を見ますと、これが実績と予測ですけれども、このように年度ごとの台数と金額がどんどん増加してございます。それで、今、ドライブレコーダーを用いて、今まで台数はなかったんですが、今後、普及していきますので、そういう一般の車とかに普及していくことが予測されておりますので、ドライブレコーダーを使って、そういう生活道路の危険な箇所についてデータを集めているのが、非常に現実にも増しているとい状況がございます。

 ここら辺は、既にドライブレコーダーでどのようなデータをとっているかについてもちょっとご紹介してございます。

 あと、実施体制でございますが、国総研のほうでそういう研究を行いまして、また研究対応は大学とか自動車技術会等々と連携して行う。それと、ドライブレコーダーにつきましては、民間事業者のほうで業務の状況等を把握するために既に集められておりますので、そういうレコーダーをいただく。具体的にそういう対策を実施する箇所につきましては、国交省の実際の道路管理者等にそういう対策を実施してもらって、その効果等について評価するというシステムで実施する予定でございます。

 これは海外のドライブレコーダーの活用事例ですけれども、海外の事例についても集めまして、研究に生かしていこうというふうに考えてございまして、例えばドイツのほうでは、今、主に、どちらかというと渋滞等のデータになるんですけれども、タクシーとかバスにプローブデータをつけまして、情報収集するということを実施してございます。

 あと、これもやはり同じように、これは携帯電話の基地局情報で、渋滞等の管制情報を提供するということを実施してございます。

 これはイギリスで5万台のプローブ情報について収集いたしまして、渋滞情報等を提供するということを実施してございます。

 年度計画と研究費配分について簡単にご説明いたしますと、3年間実施いたしまして、データの収集等に関する研究と、それをもとに対策を立案したり評価する方法の開発、あと政策への反映ということで大きく分かれておりまして、最初の1〜2年目でデータを収集したり事例の分析等を行いまして、その次に評価方法、対策法等について分析して、実際、現場への適用を3年目に考えるという研究を進める予定でございます。

 全体像といたしましては、プローブ、ドライブレコーダーのデータといたしましては、幅広くもっと活用されることになるわけですけれども、特に国総研で担当いたしますのは交通安全対策で、ほかにも主に道路構想に対する対策ということになりますけれども、それの安全装置とか、そういうドライブレコーダーの搭載効果についても別途検討がなされますけれども、特にドライブレコーダーを用いて交通安全対策を開発したり、評価するシステムについて検討を進めていくということになってございます。それについて行政のほうで具体的に現場で適用を図っていくということになってございます。

 最後に整理いたしますと、生活道路におきまして、先ほどちょっと申し上げましたように、事故は半分ぐらい起こっておりますけれども、幹線道路では事故の位置と事故の関係等がわかっておりまして、事故が多発するところで集中的に対策を立てる等効率的に実施されているんですけれども、生活道路では十分にデータがとれていない。科学的分析に基づく生活道路の安全対策を目指そうということで、ドライブレコーダーがちょうど今普及してきておりますので、そのデータを使った対策を考えていこうとしております。それを具体的に道路管理者のほうにマニュアルとして提供しまして、広く普及していくことを目指す。最終的には実際現場で効果的な安全対策を実施いたしまして、死者とか死傷者数の削減に貢献していくというものでございます。

 以上で説明を終わらせていただきます。

〈課題説明終了〉
↑ページTOPに戻る

【主査】  ありがとうございました。この件についてのコメント等はほかからはいただいておりませんので、早速ご意見、ご質問をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

【委員】  生活道路ということなんですけれども、プローブカーでデータ収集されるというとき、多分、効率性を考えたところから、民間の事業者のデータをいただいてという説明だったと思うんですけれども、生活道路にもいろいろあって、一般的にあまりそういうところに入らないような生活道路というのがありますね、商用車なりプローブを積んだ車が。そういうところがデータとして抜け落ちる危険性はないのかというのが1つ。

 もう1つは、幹線道路ですと、いろんなデータがおっしゃるようにあるものですから、危険箇所というのも大体わかっているということなんですけれども、生活道路になりますと、今までにそういったデータがほとんど残ってないと思うんです。感覚的に道路管理者さんとしてはわかっていらっしゃるところはあると思うんですけれども、市町村等で。そういうところが危険であるという認識を出されていますデータとしてするかという、どこが危険であるかということですね。

 例えば私はつくばに住んでいるんですけれども、つくばですと、地域といってもあまり歩行者がいない。歩行者のいないところで歩行者の事故は起きないんですね、車同士はあったとしても。ですから、そういうほんとうに危険なところと、道路構造上見れば危険であるというのではちょっと違うのかなという生活環境の違いといいますか、そういうのもあるのかなと思います。そのあたりを適正なデータとして集めていくというのが必要なのかというふうに思います。

【国総研】  ありがとうございます。今、先生がおっしゃいましたように、一応そういう既存の業者の方がもっとデータを集めようとしているんですけれども、これは3つのデータの例でございますけれども、例えばこれですと、幹線だけを走っているようなプローブデータとかもございまして、これについてはおっしゃるとおり、ほんとうに生活道路を使うについて吟味していきたいと思っております。普及台数が今後増えてまいりますので、期待できるのではないかというふうに考えてございます。

 もう1つのどういうふうに危ないかどうかを評価するかということですけれども、実際、そういう生活道路でプローブを載せている車が走り出すというのが前提でございますけれども、そういったところで、事故だけじゃなくて、さっきの加速度とかを使いましてもヒヤリハットとか、そういう事例についても収集して、例えば実際、歩行者がいらっしゃって、車が危ない目に遭うとか、そういう事例を集められるんじゃないかと考えてございます。ご指導ありがとうございました。

【委員】  プローブカーでとれるデータには、いろいろな限界があると思います。時間とか場所、それから挙動の変化とかいうデータはとれると思いますが、たとえば、どういう状態の中で急ブレーキを踏んだとかいう話は、別途ヒアリングをするなどしないと、なかなか詳細なデータはとれないように思います。プローブデータでどこまで期待して、あるいはその限界をどういうデータで補足されようとしているのか、その辺を整理していただければと思います。

【国総研】  ありがとうございます。

 まず、プローブのデータでありますけれども、カメラで画像を撮っておりますので、ある程度はわかるんじゃないかと期待しておりますが、カメラで撮る範囲も限られておりますので、それとあと状況については今おっしゃったように、実際、運転された方に後で聞くとか、そういう補足が必要ではないのかと思います。

 こういうプローブデータを活用して危険箇所を抽出していったり、評価するのも新しい試みでございますので、やってみてちょっと不足するというのは考えられましたが、またそれもその都度改良して、取り組んでまいりたいと思います。ありがとうございます。

【委員】  この調査はあまり情報のリアルタイム性は関係ないですよね。バッチ処理というか、とってきたデータを後で解析して、しかも1回やれば大体その地区のことはわかると。活用事例で紹介されているのは、どちらかというと全部リアルタイムだから、誤解しました。ところで、プローブの定義の中に、リアルタイム性ってあるんですか。

【主査】  関係ないです。

【委員】   関係ないですか。わかりました。いずれにしても、ちょっと事例とミスマッチのような感じがします。

【国総研】  関係ございません。それで、ちょっと海外の事例で出ていたのが、今ご指摘のとおり、渋滞とか、どっちかというとリアルタイムに近いようなものでございまして、今回はリアルタイムはございません。

 また、プローブは私もちょっと不勉強なところがあるんですけれども、熱線で空気の流速をはかったりとか、計測器はプローブで読んだりとかしていますので、要はそういう状況を観測する機器とか、そんなものなんかいなというぐらいに思ってございます。

【委員】  秋田大学の○○先生がツルツルナビというのをやっていて、車のABSのデータをとれれば車速と車輪が回るスピードとが検出できて、それで危ない道路というのをどっちかというとリアルタイムで提供しようとしています。というのも、気温とか、いろんなものでツルツル滑るところが日時によっても変わるらしいんですね。そういうリアルタイムの情報で交通安全を減らすというのも一方でやっていたもので、今、それをちょっと思い出して、ここは「バッチだよね」というふうに思って確認したわけです。

【国総研】  ありがとうございます。今のABS等を絡めてリアルタイムでというのは、こちらも情報を持っておりませんでしたのでちょっと補足して、また研究活動をさせていただきたいと思います。

【委員】  スライドの9のデータ解析フローというところで、生活道路に関しては事故事例だとか、そういったのがないので、幹線のほうでのデータレコーダー情報を持っていて、事故だとか、危険箇所がわかると。そういうことによって危険箇所を有する特性値を抽出できると、その情報から生活道路で危ないところがわかるだろうというような解析手法を考えておられる。そのときの特性値というのは、このドライブレコーダーでとれる、例えば加速度gだとか、ヨーレイトだとか、速度というのが特性値として認識されているのか、もう少し道路の情報だとか、どこまで特性値で危険な箇所、あるいは交通事故が起きそうなところを表現されているのかというのが、非常におもしろそうなんですけれども、具体的にどうやって特性値が出てくるのかなという点をお聞かせください。

【国総研】  すみません。ちょっとここはあまり詳しく説明いたしませんでしたので。基本的には生活道路によるプローブデータから生活道路における危険区域を抽出するということをやってございまして、ただデータは幹線道路でもとれますので、それも生かしていこうという内容でございます。ここの危険箇所にする特性値は道路構造等の特性値でありまして、それも参考にして、こっちから1つないと、幹線道路で得られる情報も参考にして、危険箇所等について抽出していこうという話でございます。

【委員】  私は全く素人なので教えていただきたいんですけれども、幹線道路の事故の発生要因ですとか、あるいは事故の発生過程については、かなり理解されているというふうに思ってよろしいんでしょうか。

【国総研】  そうですね。過程もですが、場所についてはかなり特定されておりまして、例えば延長の1割ぐらいの箇所で半分ぐらいの事故が起こるとか、だからそこについて重点的に。交差点とかで事故が多かったりするんですけれども、そういうところを重点的に対策をやろうと。交差点、交差点で事故の要因がいろいろございまして、交差点の箇所ごとにそういう分析したりとか、そういうことはやってございます。

【委員】  そうしますと、先ほどのデータ解析フローの中でそうした発生箇所に関しては一種検証みたいなことを心がけて、発生過程に関しては新しい知見を導くというような感じで進めるというふうに理解してよろしいんでしょうか。

ページTOPへ戻る

【国総研】  そうですね。

【委員】  まず、幹線道路に関してですね。

【国総研】  ごめんなさい。箇所と……。

【委員】  発生箇所に関しては大分わかっていらっしゃるというご説明でしたね。

【国総研】  幹線道路についてはわかってございますけど。

【委員】  そういうことでよろしいわけですか。

【国総研】  はい。

【委員】  ありがとうございました。

【委員】  さきほど写真が出ていましたけれども、既に対策として4例ほどのクランクとかがあり、これらは有効に機能しているように思うのですが。それらはまだ不十分だから、生活道路の危険な箇所の抽出や危険性の評価を行わなければならないというように考えていらっしゃるのでしょうか。どうも、機器が先にあって、そのシーズを探るような研究、それをどう使うかというような研究のように思ってしまったのですけれど、その辺りはいかがでしょう。

【国総研】  これらの対策については既に分されておりまして、それの効果があったりとか、評価もされているんですけれども、生活道路と幹線道路で一番大きな問題というのは、幹線道路は場所が特定できているんですけれども、生活道路においてはデータの経験とかで対策を実施、新しくする場所とかを決めたりとかしているというのがございまして、今までデータを得ることがなかなか難しかったのをドライブレコーダーを活用すれば、そういうデータが得られるようになるということでございまして、これらの対策は対策としてそれなりに効果はございますし、実際、実施されておりますので、既に効果があるものと評価されてございます。

【委員】  危険な箇所というのは、多分、今までの事故が起きた場所だと思うんですけれども、その事例の分析というのは生活道路ではされないんですか。

【国総研】  生活道路においても事例の分析は、先ほどの出会いがしらの事故が多いとか、そういう分析をしてございます。

【国総研】  通常の幹線道路ですと、大きな事故が多うございますので、警察などでデータとして結構残っています。ですけれども、生活道路になりますと、それほど大きな事故といったことにはならない率が高うございますので、事故のデータといったものが十分にないということがございます。それで、まずは生活道路での事故の実態をどういうような形で把握するかといったことで、プローブが使えないかといったことからスタートしているということです。

 先ほど4つの対策といったものを挙げていますけれども、例えば対策の効果みたいな話も、場合によってはとれるんじゃないかなというふうには考えているところでございます。

【委員】  この研究の成果に基づく施策をしたときの効果目標をどれぐらいに設定されているのでしょうか。プローブデータに基づくということは、そのデータは安全運転をされる方のデータではないのかという気がしますし、乱暴な運転とか、飲酒運転とか、他の原因もたくさんあると思います。そういうことも考えて,交通事故を何%ぐらい減らすことを目標にしているのか、目標設定はいかがでしょうか。

【国総研】  交通事故を幾ら減らすという具体的な目標まではちょっと、こういうプローブを使ってそういう生活道路の事故実態をまず把握するという話ですので、死傷者数の目標としては、生活道路における交通事故による死傷者の3割減を目指すというふうに改定してございます。

【委員】  そうですか。このデータにはある程度バイアスがかかっており,これを使った施策の効果がどうなのか気になって、質問させていただきました。

【国総研】  今おっしゃったプローブで、今ついているのはタクシーとか、そういうプロの運転手の方のデータですので、特にあと飲酒されている方とか、そういう乱暴な運転をする方とかのデータが、今後、一般にもプローブは広がっていくと思うんですけれども、どれだけ集められるのかというのは課題かと考えてございます。

【国総研】  そもそもの目的というか、対策として道路側としてどういったことができるかといったことに、例えば道路の構造としてどういった対策がとれるかというところまで持っていきたいと考えているところでございます。飲酒運転でありますとか、交通安全教育といった対応はまた別の問題だと考えているんですけど。

【委員】  その辺は私もよく理解しているつもりです。ただ,このような施策でどれぐらい交通事故は減るのかということが気になりました。道路の構造による事故というのは、全体のどれくらいなのかと。

【国総研】  こちらは上からの細い部分が自専道、次が幹線道路、こちらが生活道路ということで、幹線道路、生活道路で事故のタイプが、例えば幹線道路で追突が起きて、生活道路は出会いがしらが多いという違いはありますが、こちらが平成7年で、こちらは平成17年。平成17年で見ますと、縦が量ですので、量としては大体事故の件数で半々です。

【委員】   事故を減らすときに4つの施策がありましたけれども、生活道路の交通をできるだけ幹線道路にシフトするような施策、例えば高速道路を安くして、幹線道路から高速道路にシフトさせると幹線道路がすくから、さらに生活道路から幹線道路にシフトするということがあると思うんです。そういうことだって多分、事故削減に大きく寄与すると思うんです。評価するときにそういうミクロな道路対策だけじゃなくて、そういうネットワークの問題なんかも、ぜひ、取り組んで欲しいと思います。そっちがわりと本筋じゃないかと。行き止まりをつくって、生活道路を走りにくくするというのも、ある意味ではそれに似たような話だと思いますけれども、そういう仕組みはもっと日本でやってもいいと思います。

【国総研】  ありがとうございます。

【委員】  原因と結果の間に、もう1つモデルが入ってくるように思います。例えばハンプをつくると走行速度が遅くなるとか、まず、ドライバーの行動に変化が生じて、その結果、ブレーキを踏む機会が少なくなる。このようにドライバーの行動が、どのように変わるのかというデータがプローブでとれると思います。方法論に、もう1つ工夫を入れていただいたら、全体の流れがよく見えてくると思います。

【国総研】  ありがとうございます。そのようにさせていただきます。

【委員】  今の先生のご発言にちょっと関連してですけれども、プローブでとれるデータというのは、先ほど少し出ていますけれども、速度、加速度、ジャイロを積んでいれば方向、GPSをとれば位置がとれますから、デジタルマッピングすることでいつどこでどういう車が動いたかというのはわかると思うんです。それから、ブレーキをかけたのもわかりますし、アクセルを踏んだのもわかる。けれども、その理由は何かというのは実はわからないんです。人が飛び出してブレーキを踏んだのか、荷物をおろしたくてブレーキを踏んでいるのかというのがわからなくて、実は私も5年ほど前ですけれども、そういう実験をやって、某自動車メーカーにそういう特殊な計測器をつくってもらったんですけれども、そのときはドライバーがそのボタンを押せるように3つほどボタンをつくっておいたんです。危ないと思ったからブレーキを踏んだときには、1番のボタンを押してくださいとか、そういう半分人為的なことをやらないとデータがとれなかったという経験があるものですから、そのあたりプローブでデータをとられるときに注意しておかないと。全部が全部、生活道路の単独でブレーキを踏んだから、人が飛び出したということではないということを認識する必要があると思います。

【主査】  ほかいかがですか。私もちょっと意見を申し上げていいですかね。

 その絵で、カメラを積んでいるのが最近のドライブレコーダーにはありますよね。何かインシデントが起こったら、その直前の映像は保存する。そのインシデントの判断レベルというのは、こういうデバイス側で多分設定できると思うんです、何G以上かかったらとか。そういうデータをぜひ活用されると、周りでどういうことが起こって、何が原因でって100%わかるわけではないでしょうけれども、随分わかる部分が増えてくると思います。でも、その反面、データの処理がめちゃくちゃ大変になるので、その辺ぜひ覚悟をされたらどうだろうというふうに思います。

 それと、あと多分、場所の特定までいくのって結構大変だなと思うんです。多分、幹線は交通量が結構ありますし、事故もある程度数がそろいますので、先ほどの10%の区間で50%とか、ここが多いとかというのはできると思いますけれども、ほんとうに生活道路の中でそういうところが漏れなくできるかって、観測数の問題もありますので、結構難しい面もあると思うんです。それはデータ数次第ですけれども。

 そこで意見なんですけれども、道路管理者としてできることをやると。とすると、どうしたってこういう建設系になるわけですね。ところが、国民の関心としては事故が減ればいいわけですよね。とすると、そういうヒヤリハットの前の状況ってわかるわけですよね。どういう状況、あるいはどういうビヘイビアの人だったら、そういう癖があるかとか。ヒヤリハットは我々のところでも随分昔にやったことがあるんですけれども、学生と教職員と全然違うんです。教職員では本人がヒヤリハットだというふうに思っているような加速度、急ハンドル、急ブレーキでも学生は日常何でもないとか思っていたりとか、そういうこともありますので、警察さんとか教育委員会との連携も、どういう形になるかわからないけれども、あんまり狭く道路管理者で限定的にというよりは、そういうところと手をつなぐようなことも考えておいたほうが、国民の目から見るとありがたいなという気がしました。

【国総研】  ありがとうございました。

【主査】  いかがでしょうか。活発に議論をいただきましてありがとうございます。1つとしてこんなのをやってもだめという意見はなくて、大切だからたくさん意見をちょうだいしたんだと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

【国総研】  ありがとうございました。

【主査】  どうしましょうか。休憩?

【事務局】  どちらでもいいと思います。もし休憩が必要であれば、5分ほどとっていただいて。

【主査】  5分休憩? でも、5分休憩すると途中になっちゃうので、もう1回やってから長めの休憩を。やっちゃいましょうか。わかりました。じゃ、なしということで皆さん元気出してやってください。お願いします。

 じゃ、次、8番目。

ページTOPへ戻る

〈その他G地域構造の変化に対応した新たな国土マネジメント手法に関する研究〉

【国総研】  国土マネジメント研究官の○○でございますけれども、先ごろの参議院選挙では地方の衰退ということが非常にクローズアップされましたけれども、そういう地方の問題に対してどう解決するかというのに資するのが当研究でございます。

 研究の背景でございますけれども、地域構造の変化と言っていますけれども、社会・経済的な変化から国土における人口、産業、土地利用等いろんなもので都市及び地域における地域構造に大きな変化が生じている。

 2つ目にありますように、国土にかかわる課題が非常に増大している。それは地方の衰退とか、国民間の格差の増大とか、国土の活力の偏在とか、災害の脆弱化とか、社会資本の劣化、地球環境問題への対応等もありますけれども、そういう中で安全・安心な活力ある国土を実現するために、将来を見据えた国土政策の重要性は増しているということを書いています。

 それで、3つ目であります従来の国土政策はどうであったかというと、経済成長期においては、社会資本整備は社会需要に対して後追いでもよく、部門ことの計画を重視した計画であったと。それで、縦割り行政の中での国土政策だったわけですけれども、今後はより総合的なものが必要であるということでございます。

 それで、今回の研究については黄色で示しておりますけれども、今回の国土マネジメントについてですけれども、国土マネジメントという言葉自体が新しい政策概念でございまして、当センターができて5年以上たっておりますけれども、要するに国土の利用、開発、保全に関する課題に対してより総合的に、かつ実践的にです。一方、国土計画というのは10年置きぐらいにつくっていきますけれども、国土マネジメントはそれを日常的に展開するための行政及び政策であるという考えであります。

 それで、この研究では地域の持続性、脆弱性、活力・競争力について国土の時間的、要するに過去の経緯から現在、未来まで、それと空間的日本の各地、都市、地方、過疎地域、そういうふうな分野横断的な設定も入れ、分野横断的な見方も入れて、今後の国土マネジメントの問題点について抽出するとともに分析する。それでもって、新たな国土マネジメント手法の提案を目指しております。新たな国土というのはまた後で出てきます。

 そこで、これもまだ前段の話でございますけれども、問題意識というのは先ほども言ったように、地方の衰退という論調というのが最近大きくなっていますけれども、平成17年4月、ここにありますように、21世紀ビジョンのときには「選択と集中」という言葉があったと思いますけれども、要するに地方の切り捨てにもつながるようなビジョンが示されたわけです。それに対して、サービスを提供できない地域は切り捨てていいのかという話、過疎地域の広がりは国土の保全上問題ないのかと、そういう問題がどんどんクローズアップされてきたわけでございます。

 図の右にありますのは、これは先ごろ日本学術会議で災害についての諮問において示された資料ですけれども、少子高齢化は災害対応力を低下させて地域の災害脆弱性を増大させているとの問題提起がされています。また、この日本地図にありますように、過疎地域がどんどん広がっていくという状況でございます。国土や地方に対する問題意識というのは非常に国民の間にも広がってきています。

 それで、これらの限界集落のことを絵に示させていただいていますけれども、限界集落という言葉は、要するに65歳以上の人が50%以上になった集落のことを限界集落といいます。農水省と国土交通省のほうでそれぞれ調査しておりますけれども、ここに日本地図がありますけれども、この赤いのが10年後に消滅するという集落です。こういう10年後消滅する。要するにそういう老齢化した地方ですから、10年後日本でも相当な集落がなくなっていくわけです。こういう中で、日本の国はどうしたらいいのかということを、地方の視点、あと都市の視点、時間軸の流れの中でデータを積み上げて、示していこうというわけでございます。

 それで、研究の目的と実施方法、これは1つの紙で示しておりますけれども、目的としては先ほど言った将来を見据えた総合的な国土マネジメント手法を検討するということでありますが、ステップ1ですけれども、ちょっと問いかけふうに書いていますけれども、今、国土や地域構造をめぐる世の中の論調ではどのように言われているか。いろんなことが言われているわけです。それらについて実際はどうなのかというのを検証しながら、これらの論調を整理して、課題を明らかにしていく。ここには書いていませんけれども、いろんな統計データベースがありますけれども、そういう中からそういう課題を明らかにしていく。あと、データの収集整理も図っていく。むやみやたらにデータ収集をやるわけにいきませんので、こういう論点を絞ってデータ収集を図っていこうと思っているわけです。

 この作業はかなりの作業になりますけれども、その次にステップ2で、そういう集めたデータと課題についてマップにしていこうということです。これはこの資料の中では国土の未来地図と名づけておりますけれども、そういうことで国民の皆さんにどこでどうなっているのかというのが見えるようにする。可視化と文章の中では書いているんですけれども、そういうことをやる。

 それと、ステップ3で、最後に地域構造が変化する中で、国土マネジメントの目指すところは何かというのを明らかにする。将来の方向性、解決に向けての手法というか、政策につながるような材料を提供するということになります。

 それで、ステップ1をさらに詳しく言いますと、データ収集整理ですけれども、左上にありますように、最近の論調を整理する中で問題を明らかにする。その中で当然、現地調査も重要でございまして、現地でどうなっているのかというのもフィールド調査とかをやっていきます。同時に文献調査もかけていく。それと、あとデータ整理ですね。統計調査関係等関係するものを集めて、それらを重ね合わせる。もしくは市町村レベルにブレークダウンしていくという技術を用いて、それのデータを組み合わせていく。それで、分析の観点と書いていますけれども、持続性、脆弱性、活力・競争力、そういう観点でこういうデータ整理を図っていきます。そういうことで日本の国土上の課題が浮き彫りになっていくわけでございます。

 それで、次に可視化技術と言っていますけれども、見えるように、日本地図をいっぱい並べておりますけれども、こういうふうにいろんなデータをそれぞれの角度から並べる、重ね合わせることによって国民の皆さんにわかるような、要するに問題がわかるようなものができてくる。それを平面的だけじゃなくて、過去、現在、将来という時間の流れの中で示していく。未来はこうなっていく、このままでいくと将来こうなっていくということを客観的に示すことができるんじゃないかと思っています。

 それでステップ3になりますけれども、国土マネジメント上の問題の最後のステップですけれども、抽出と分析ということで、問題点の広がり方がわかれば、その予防的措置ができるんじゃないか。あと、広がりのスピードですね。広がり方と広がりのスピードを見ることで問題解決のやり方とかわかりますし、あと大事なのは因果関係でございますけれども、なぜそうなったかというのがわかれば対策も打てる。そういう時間的に空間的にデータを積み上げていくことで問題点というか、政策のための整理というのができてくる。それで、分析もできてくるということでありまして、国土マネジメント上の問題の提示をすることができるということになります。

 成果でございますけれども、今の国土形成計画は19年度、今年の中ごろに公表されるということになっております。ほぼ10年間にわたって国土形成計画がカバーすることになります。ちなみに、今、21世紀のグラウンドデザインという名前で言われているものが今の国土形成計画でございます。それで、さらに1年後、今度は全国計画と広域地方計画に分けていまして、広域地方計画を1年後、来年度の中ごろにこの広域地方計画をつくることにしています。これは国土交通省の国土計画局が全国版をつくって、あと地方のほうで広域地方計画をつくっていくということになります。そういうプログラムの中で当研究が進むわけで、当研究の成果というのは社会資本整備計画の中にどんどん組み入れられるべきものでございます。その関係でいくと社会資本整備計画、これは5カ年計画の具体的な道路とか河川とかの整備計画でございますけれども、平成20年から5年間にわたって実施される次期社会資本整備の中身はほとんど決まっております。 それで、今回取りまとめたものは、3年後に次々期重点計画に生かされるということになります。実際の次々期の社会資本整備計画が始まる2年から3年前に検討が始まってきますから、ちょうど今回の研究成果は次々期の中に反映していくということでありまして、タイミング的にも合っていると考えております。

 最後に時間がまだあるので、データ積み上げはどんなふうにしてやるのということをご説明いたします。すみませんが、画面はできたばかりの資料なので、資料にはコピーしていません。字が小さくて恐縮なんですけれども、失業率を中心にを書いています。赤が女性で、黒は男性で、右の横軸が年なんですけれども、要するにここは95年から2003年までの就職氷河期なんですけれども、バブルがはじけて非常に失業率が上がっているんですね、この2つは。灰色は不況期です。景気後退期でありますけれども、昔は不況になると失業率が上がって、好況になると失業率は下がるんですけれども、それがこのころから非常に急に急増してくるんです。このバブル以降、急増していく。この背景は一体何ぞやと。あと、好景気になっても失業率がなかなか減らない。それで、男女の違いも、男のほうが失業が多いとか、こういうことを見ていくと、公共事業費、これは社会資本整備の投資額でいうと97年は一たんへこんでいますけれども、ちょっと戻って、あとずっとへこんできています。今、全体予算の6%ぐらいまで公共事業関係は減っているわけですけれども、どんどん公共事業が減る中で失業率は増えているでしょうと。ただ、建設業の就業者数なんですけれども、これは50万人、70万人なんですけれども、97年ぐらいに70万人いたのが、今、55万人ぐらいまでに建設関係の就業者も減っているわけです。15万人ですけれども、日本の失業者は250万から300万の間ですから、5%から7〜8%ぐらいの人は建設業の失業者かもしれません。

 そういう資料とか、あと違った観点で、東京の人口の出入りを見ていくと、赤いのが転出で、青いのが転入ですけれども、バブルの後一たん東京の人口は減りかけたものが、最近また増えているという状況です。なぜそうなっているかというと、この赤いのが原因ですけれども、昔は転出者が多かったんだけれども、東京から出る人が少なくなったから、一極集中になっているわけだし、地方の衰退がどんどん進んでいるわけですけれども、つまりこれは若者が就職して帰れなくなったわけです。就職の場所がなくなったということが、ほかの統計なんかも突き合わせていくとわかってきますので、例えば一番わかりやすい失業率という面で見ると、公共事業というのが地方の雇用創出に相当役立っていた。公共事業の効果というのは、経済学者の中では投資効果、経済効果は今やあまりないと言われているのが常識化していますけれども、雇用という面からいくと、かなりあるんじゃないかということがわかってきまして、これは全国的な話ですから、これを県レベル、市町村レベルでやると、もっとはっきり物が言えるはずになってくる。

 ちょっとわかりやすい事例でいくと、こういうふうにすれば市町村単位までブレークダウンしていく。あと、データを重ね合わせていくと見えてくるんだよというのが必ずあると思っているわけです。

 そういうことでありまして、時間となりましたので、以上で説明を終わります。

〈課題説明終了〉

↑ページTOPに戻る

【主査】  これに関しては○○さんからコメントがあって、どの点が新たなのかが明確ではないということと、データベースについては一般公開してほしいということですが、その辺いかがでしょうか。

【国総研】  2点ご質問がございまして、最初の新たな点はどれなのかといいますと、2つありまして、1つ目は今までの国土計画というのは各省庁の寄せ集めというか、国土庁自体が調整機関であったので、より統合的な観点とか、長期展望という面ではなくて、具体性にやや欠けるという批判があったわけですけれども、今回のスタディの中で、我々は研究機関ですので、そういう面では縦割りをなくして、省庁のしがらみを超えて大局的な立場から今回の国土を研究したいという、まず1点目は視点の違いですね。

 それと2つ目は、研究手法のことでいきますと、先ほど言いました、例えば今の失業なんかでいくと、統計的な問題でいくと、統計の資料というのは実は全国レベルではあるんだけれども、都道府県単位はかなり推計によっている。市町村単位になるともうないという状態ですけれども、お互い国の機関ですから統計部局とも調整して、原票の段階とか調査票の段階から統計データの整理及び分析をやって、市町村レベルぐらいまで落としていく。そういうことで、各統計データが地方はどうなる、都市はどうだという観点から整理できてくる。今まではそういう統計の再分析みたいなものはほとんどなされていなかったんだけれども、今回はそれを市町村レベルに落として分析をやりたいというところで、その2点が新しいんじゃないかと思っているわけでございます。

 それと、回答案の2つ目がデータベースについてですが、どんなデータベースができるかまだはっきり言えないですが、公開というのはこの時代の中では当然のことだと思っております。

【委員】  すみません。途中で退席しますので。テーマをお聞きし、私自身がちょっと図りかねているんですけれども、最後のご説明にあった、例えば失業率の問題というのと、それは社会指標とおっしゃっていることの1つかもしれないんですけれども、それと5カ年でやられる社会資本整備にどう結びついていくのかなというのがいま一つよくわかりませんでした。具体的な国土の政策に社会資本整備みたいなものが、例えば失業率の問題とどういう形で結びついていくのがちょっと見えなかったです。

【国総研】  失業率で見ると、公共事業を増やさなくちゃいけないと言いたいんだけれども、それを言うとかなり手前みそになるので、今はまだ言わないという感じですけれども、あといろんな国土交通省のほうでマルチモーダルにしてもそうですけれども、各交通機関の連携とかありますけれども、そういうのにも連携することで地方と都市の関係はどうなるというのも見えてきて分析しやすくなるから、そういう解析にもかなり使ってもらえるかと思っています。

【委員】  このプロジェクトでは、例えば今言ったように、ただ公共事業を増やすという議論ではなくて、どういう形の公共事業を増やしていけばより基盤として強くなっていくのか、地方の。そういうことまでやるというのが特色なんじゃないですか。

【国総研】  地方の活性化により役立つ公共事業というのはあるわけでございまして、それを官庁のしがらみにとらわれずに出していきたい。より効率的な公共事業というのを出していかないといけないと思っています。

【委員】  私もうそろそろ退席しないといけないので。国土の未来地図というのは魅力的な言葉だなと思いながら聞いていて、なおかつ地域構造の変化をとらえるというのもまたうまいところだと思うんですけれども、言いかえると本日の説明では失業率という1つの例で、統計データだとか、社会・経済情報を入れて、地域の構造なり変化を経時的に見ることによって表現するという事例を示していただいたんですが、それだけではなくて、地域の構造というのはもっと広いだろうと。最終的にはどういうものとどういう要素を入れて地域の構造を定義して、それが将来どう変わるのかということを最終的には示していただくといいかなと思いました。

 さらに、地域の構造というのがわかったときに、地域の持続性というのと脆弱性と活力と競争力という3つのコンポーネントを提示されていて、確かに言葉は魅力的なんだけれども、その脆弱性だとか持続性をどう表現されるのか。どういった指標を使ったから、それが持続性ですよとか、脆弱性ですよというのを最後に妥当性というんですか、だからこの数値、統計で重ね合わせたから、示せますよというエビデンスというのはかなり示すのは大変だと思います。取っかかりぐらいはプロジェクトの最終形では示さないと、言葉だけ、統計データ遊びだけということになりかねない危険性を有しているし、一方で取っかかりを見つけられると非常に魅力的な将来像を見つけるような新しい指標というんですか、考え方が提示されると思います。そこら辺はぜひ最終的に取りまとめるときにはもう少しバックグラウンドやエビデンスを示していただいて、仕上げていただくと非常に魅力的な地図ができるように感じました。

【国総研】  ご指摘ありがとうございます。そのように努めたいと思います。地域構造についてはいろんな観点がありますので、ソーシャルキャピタル的なものもその中で役立っていくんだと思います。持続性、脆弱性、競争力・活力それぞれ関係ある言葉ですけれども、特に地域が持続して存在できるというのは何かというのを詰めていきたいと思っております。

【委員】  今の過疎地を取り巻く状況と問題意識が少しずれているような感じがします。今から、10年前、20年前には、どの集落が限界集落になるだろうという議論をしていました。しかし、今はもう結論が見えているのですね。現地では、あの集落はだめだということがわかっています、正直。そこをあえて限界集落と言ってほしくないという気持ちが現地にはあります。

 重要なのは、どこの集落が持続できるかという問題です。集落の持続性にとって重要な要因は、リーダーシップがあるか、人材が存在するか、将来像が共有できているか、ということなのです。そういう要因が、まちの持続性に直結しており、それを支える社会資本の整備が欲しいというのが実情だと思います。

 先ほど、別のプロジェクトで日南町の例が出ましたが、日南町で整備したい社会基盤の1つに地域カードがあります。都会であれば、交通カードをはじめとして多くのカードが利用できますが、日南町ではクレジットカードを除けば、住基ネットがある程度で、IT技術を十分に利用できない。人口が4万人程度あれば地域カードが使えるようになる。そうすると、地元で物を買いたいとか、地域のアイデンティティに誇りが持てるとか、いろいろな効用が産まれる。人口4万人でも、民間ベースでの地域カードの発行は厳しい。これが2万人程度だと、行政が支援するのも大変で、結局諦めざるを得ない。こいう制度ができれば、ここまでの住民サービスを提供できるということを、現地では一生懸命模索しております。そういう情報を是非汲み取って頂きたい。あるいは、どういう制度ができれば、それぞれの地域がどういう方向へ向かうことができるかという条件整理が出来ればすばらしいと思うんですけれども、そのデータがまだないんですね。

 人口とか、失業率とかいうデータは比較的とりやすい。しかし、失業がある一方で、例えば介護ができる人がいません。このように、数値で出てこない部分で、現地は悩んでいる。地域の規模が小さいので、このようなアンバランスが地域問題としてただちに顕在化する。そういう地方の生の姿が情報として出てくるようなデータベースが整備できれば、ほんとうにすばらしいなと思うんです。難しいことをお願いしているというのは重々承知しております。

【国総研】  ご指摘ありがとうございます。ポスト限界集落というのが全然まだ見えてなかったんですけれども、○○先生のほうは見えておられるみたいなので、ぜひとも後でお教えを請いに伺いたいと思っております。

【委員】  地域と考えたときに、今、○○先生がおっしゃるような限界集落というところまでいってしまう地域という話と、例えば地方部の中心都市的な10万、20万の都市にとっても、東京から見ればはるかに地域のというイメージの都市だと思うんです。そういうところまで含めて、多分これをお考えいただいていると思います。

 だから、そういう意味では私はぜひやっていただきたいと思うんですけれども、その中でその地域の人たちのためにだけという視点で考えてしまうと、ちょっと方向を誤る可能性があるのかなというふうに思うんですけれども、社会資本整備の受益者というのはだれなのかといったら、例えば道路ができる、道路ネットワークとしてできるということによって物流が動く、それからそういったことによって格差がなくなるというのは、一番の受益者はひょっとしたら東京の人間かもしれないんですね。

 だから、そういう社会資本整備のメリット、デメリットというのを、そういった単に地域に行うだけじゃなくて、ネットワークとして見るという部分が必要なのかなというふうに思いますので、その地域の抱える課題だけを取り上げるんじゃなくて、全体の仕組みの中でその地域があるというところ、先ほどのテーマでも災害の話で出ておられましたけれども、例えば防災空間としての道路の価値というのは、そこに人がいるから道路整備が毎日できているわけであるし、ということを考えると、その地域だけがよければいいということでもないし、その地域だけのために道路があるわけでもないし、河川があるわけでもないということを我々は考えておかないといけないのかなといつも私は思うんですけれども、そういうことをちょっとご配慮いただければと思います。

【国総研】  ありがとうございます。我々の研究の中でも地方と都市という、中核都市もありますし、大都市もあるけれども、そういう観点で研究を進めていきたいと思います。

【委員】 国土マネジメントという概念が私はまだわかっていません。プレゼンテーションの最初のほうで国土形成計画とは違うんだと説明がありました。もう少し計画期間が短いというか、きめ細かくみたいな話でした。この国土マネジメントの方針が決まってくれば、それが社会資本整備計画にも反映できるということも指摘されました。社会資本整備計画ともちょっと計画の概念が違うと理解しましたが、国土マネジメントというのはどういうふうなものなのかということを厳密に定義していただきたいと思います。

 それから、効率的な国土マネジメントのやり方があるはずだということは、頭の中に仮説があると思うんです。概念モデルというか。それを社会指標のデータベースをつくれば、証明できるということで、研究を計画されていると思うんですけれども、そこら辺の仮説ないしモデルみたいなものがまだ伝わってきにくいわけです。それを早い段階で示していただいて、それを証明するんだという仮説検証型の研究を進めたらどうでしょうか。

【国総研】  ありがとうございます。国土マネジメントというのは新しい概念で、まだ確立してないので、皆さんが一致する概念というわけではありませんが、それはこういう研究の実績を積み上げることで固まってくると思っております。

 それで、今言われたように、仮説を立てて、それを検証していくという姿勢が最も大事でありますし、それをやらないと焦点がぼけて分散してしまいますので、ぜひともそういう観点で仮説というのを大事にして、まず第1ステップの中で仮説をきちっと整理して、臨んでいきたいと思っています。

【主査】  いかがでしょうか。よろしいですか。

 すみません。何点かあるんですけれども、資源の有効利用ということからすると、国土計画局ですごいデータベースをつくられていますよね。あれにさらに何をプラスするんだろうかとも思うわけです。そういうことで、こういうのは民間でも実はやられていて、経団連の○○さんという、○○さんのブレーンが主宰されている何とか研究所で……。

【国総研】  21世紀ビジョン(21世紀政策研究所)。

【主査】  21世紀ですか、あれも市町村単位のすごいデータベースを持っておられて、随分いろんな将来予測なんかもびしびしっと出るようなシステムを開発されていますけれども、そういうところとの連携をどうするかとか、あるいは補完をどう考えるかというところをもうちょっとよく考えていただければなというふうに思いました。

 そういう中で、多分、今まであんまりなくて、結構不得意かなと思うのは、いろんな社会資本及びそれが提供しているサービスレベルのインベントリーデータベースがあんまりないんです。何がどうなっているかってようわからんというところがあって、極めて心もとないので、その辺ぜひ頑張っていただければなというふうに思いました。

 それと、これはちょっと老婆心ですが、将来の可視化って非常に魅力的でいいんですけれども、対象領域の広がりも目的も違うんですけれども、実は10年ぐらい前に大都市地域、つまり東京の都市圏で異なるシナリオのもとで、どういうことにこの東京がなってしまうのかというシナリオを想定しましょうということで、シナリオとしては幅があるほうがおもしろいので、我々はすごい極端なやつをやっていましたら、役所の方が役所がやる検討ですから、それがいいということになったら、やれる保証がないといかんということをおっしゃいまして、そうすると結果的に環境重視型とかインフラ整備重視型とかいっても、ほとんど実質的な差がないようなシナリオ検討になってしまいまして、なかなか難しいなと思いました。そういう意味でいろんなところのしがらみが出てくると思いますので、その辺についてぜひこの妥当性といいますか、よさをわかっていただくようなことも踏まえて考えていただくといいのかなというふうに思いました。

 ほかによろしいですか。これについては実施していただくといいと思うんですが、なかなか難しいですし、非常に具体的なアイデアも今の中で出てまいりましたので、それについてはきちんと書いた評価書にしていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。よろしいですかね。

 それでは、最後まで来ました。9番目でございます。ITを活用した動線データの取得と電子的動線データの活用に関する研究でございます。よろしくお願いいたします。

ページTOPへ戻る

〈その他HITを活用した動線データの取得と電子的動線データの活用に関する研究〉

【国総研】  情報研究官の○○と申します。よろしくお願いします。

 それでは、ITを活用した動線データの取得と電子的動線データの活用に関する研究についてご説明します。

 まず、動線データという言葉を最初にご説明したいと思います。人間がどのように動いているかということを今までパーソントリップ、あるいは全国都市特性調査、そういったもので調べておりまして、それをもとに交通システムの設計ですとか、そういったことをやっております。ここではこれらのそういった人間の動きを動線データと呼んでいます。

 現状の調査で何が問題かといいますと、ここに4点ほど挙げましたけれども、例えば個人情報保護法が平成17年4月に施行されまして、プライバシー意識の高まりですとか、あるいは振り込め詐欺じゃないかとか、いろいろな問題があって、なかなかアンケートを回収していただけないと。そういうのは答えなくてもいいんじゃないかというふうに考えておられる方も大分増えているというのが1つあります。

 それから、アンケートの方式ですと、人海戦術でして、首都圏の例えばパーソントリップを1回やると30億円ぐらい費用がかかります。交通センサスですとさらに多くの費用がかかりまして、実際働いている方の負担が大きいとか、見合った賃金じゃないというようなことで、アンケートに答える人も、実施する側も、仕事する人も今のやり方ではなかなかみんな不満があるというのが2つあります。

 それから、これからということで考えますと、今のそういった交通センサスですとか、パーソントリップの調査というのは、数年間に1度ある特定の1日とか2日ですので、災害対策などにおいてきめ細かな、例えばどういった避難経路なのかとか、どういったところにいるのかとか、花火のようなときにいっぱい人が集まって、どういう動きなのかといったところまできめ細かくわかりませんし、バリアフリーのルートだとか、そういったものがどう使われているのかといった空間的なきめの細かさという点でも、今の統計では不足しているというふうに考えております。

 それで、まずITを使ってそういったものを改善できないかと。そこの背景としまして、1つは政府の戦略ですとか、法制度の準備が大分進んできまして、従来の携帯とか、インターネットだけではなくて、幅広い分野でITが使えるじゃないかと。例えばマーケットとしては今年の4月からGPSが携帯電話に原則つけられるようになりましたし、あるいはスイカとか、そういった非接触のICカードの普及といったものがあるので、例えばそういったものに対して値段も安くなっていますし、人も慣れてきたので、そういったことが使えるんじゃないかということを考えています。

 例えばどんなようなものが考えられるかといいますと、携帯電話は左上ですけれども、どんどんGPSが増えていまして、さらにGPS以外の高精度の測位のできるものの研究も進んでいます。それから、右上のICタグで、スイカですとか、パスモとか、そういったものを使うというようなことも考えられますし、それから左下のような無線LANのような新しい通信システム、それから右側にありますように、画像ですとか、レーザーですとか、超音波ですとか、そういった画像認識とかレーザーのようなもので人間がどういう動きをしているのかを把握するということも考えられます。

 それぞれメリット、デメリット、特徴があるんですけれども、ちょっと字が細かいので、概略だけお話ししますと、例えば携帯電話でGPSを使った場合には、都市部で問題があるとすればマルチパス、ビルの反射で精度が出ないですとか、地下街では使えないとか、通話中はデータがとれないとか、みんなが一遍に動線データをとろうとするとシステムがつぶれてしまうとか、いろいろそういう問題もありますし、ICタグですとか画像処理であれば、それなりのインフラを準備しなきゃいけないというデメリットもあります。ただ、上手に使えばこういったものを組み合わせて、いろいろなデータをとれるんじゃないかということが考えられます。

 そういったものを組み合わせたシステムという円筒形のものがありまして、そこに入れて、データとしては人間がどこにいるかという場所のデータが得られるだけなんですけれども、それだけでは不十分なので、例えばその方は駅から直角の方向に来て、線路沿いに動いたということで、あるところまでは鉄道ではない手段だけれども、あるところからは鉄道の手段で動いたというようなことを補正したり、データの補完をしたりして、自分たちの望むデータ、使えるデータが得られることになるだろうと思っています。

 具体的な研究における仕事の進め方なんですけれども、複数のこういったデータを取得する方法を併用して実験をしまして、それと既存の統計調査と併用して、新しいものでまず実験をしてみたいと思っています。既存の統計調査は数年間に1度やっていますので、チャレンジングなことをやって失敗すると、その年の統計データが抜けちゃうということで、非常に問題が大きくなりますので、まず既存のものは既存のものでちゃんとやってもらうとして、新しいものでそれに匹敵する精度のものがちゃんと得られるかというようなことを確かめたいと思っています。それにつきましては先ほどの例えば集中して問題がないかですとか、データの処理に時間がかからないかですとか、コストとか精度とか、そういった技術的な面をきちんと整理する。

 それから2つ目として、新しい手段ということで被観測者、観測対象の方の心理的な需要というものについてきちっと把握したいと思っています。それについては先ほど振り込め詐欺とかがありましたけれども、新しいもので何かをやってくれといったときに難しくてできないとか、あるいは自分の使いなれた携帯電話のほうがいいんだけどとか、通信料金はどうなるのとか、このデータはほかに使われちゃ困るんだけどとか、いろいろなものが考えられて、逆に公共目的なので、自分たちもこういう調査によって自分たちがどう動いたか自分で画面、ウェブで見られますよとか、そういったいろんなやり方を組み合わせて協力を得られないかという心理学的なことをテストしたいと思っています。

 これを進めるに当たりましては、研究会などを組織して関係するメンバーとして、例えば今までアンケートをやっていた方とか、動線データの分析をやる方、GISの専門家とか、ITベンダーとか、通信キャリアとか、都市、防災、福祉、いろいろな方のご意見をいただいて進めたいと思っています。

 特に通信キャリアの方はデータは持っているんだけれども、なかなかそういうふうに自分たちが先導を切って使うのは難しいというのがありますし、ITベンダーの方も技術はあるんだけれども、社会にそういうふうに使うということがなかなかわからないので、そういったところのそれぞれの方の持っているシーズとかニーズをうまく組み合わせて、役に立つものにできればいいと思っています。

 じゃ、具体的にどんなイメージかというのがこのスライドなんですけれども、左上に手引きとデモサイトとオープンソースというのがあります。各地方自治体、あるいは地方整備局等でこういった調査をやる場合に、自分たちで一から全部つくるのは大変ですので、使うためのドキュメントのようなもの、それからデモサイトとかオープンソースを準備して、例えばそこにそれぞれの方が蓄積したデータ、携帯にとっておいたデータとか、そういったものをほうり込めば、周囲の絵のような状態で可視化して、表現するようなシステムをつくる。

 それを使って、例えばパーソントリップが今までアンケートですごく大変だったものを、携帯電話と別のものと3つぐらい組み合わせて、例えばこんな絵が比較的安くかけるとか、あるいは左下のように地震発生時の帰宅困難者がどこにいるのかということをみんなが登録してくれば、すぐわかるようにものができるとか、それから右下のようにバリアフリーはつくったんだけれども、なかなか使ってもらえないところが実際あるみたいなので、それは例えば盲学校のほうにちゃんとPRしようとか、何らかの対策をするとか、そういったことに使えないかなというふうに考えています。

 一応大枠としましては人のモビリティの向上というところに位置づけて、この研究を進めてまいりたいと思っております。

 以上です。

〈課題説明終了〉

↑ページTOPに戻る

【主査】  ありがとうございました。これについても他の委員からのご意見はございませんので、皆さんからお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

【委員】  それぞれの人が進んで情報をアップするようなビジネスモデルを考えるというのは大事じゃないかなと思うんです。ホンダとかダイムラーとか、そのユーザーグループが自分の位置データ、走行速度とかの情報をアップする。ただし、それをデータベース化された混雑情報をもらえる。そういう仲よしグループで情報を共有できるわけですよね。ここでちょっと民間がやる仕組みなのか、公共的なインフラ、公共的な仕組みにするのかというのが1つ岐路だと思います。公共的な仕組みにして、そこに参加した人にはこういう公共情報にアクセスする権利を与えるみたいな仕組みは考えられなくはないかなと思うんです。いずれにしてもそこのところで何かメリットがないと、皆さん喜んでというわけにいかないわけですから、インセンティブをどう与えるかが、こういうシステムを考えるときには肝になるような気がするんです。

【国総研】  ありがとうございます。仲間内で話しているときには、例えば自分が動いた経路をアップすると、万歩計みたいにカロリーが出るとか、高低差がわかるとか、自分のスケジュールと連動してとか、そういうようなアイデアもあるんですけれども、役所としてどこまでやるかというとあれなんですけれども、そういう広くアイデアを皆さんからいただいて、何かみんながアップしてくれる仕組みを考えたいと思います。

【委員】  荒唐無稽なことを言うかもわかりませんけれども、ICタグをインフラ側にはめ込んで、情報を収集しようとする動きがありますよね。逆に動いている人のほうの動きをインフラ側で把握できるとか、そういう技術は可能ですか。

【国総研】  そういうものも実際にありまして、今、この欄がICタグの例なんですけれども、一般的にパスモとか、そういったものはパッシブタグという電池が入ってないものを持って歩くかわりに、ゲートとか、そっちのほうから電波を発射して受け取るんですが、逆に電池を内蔵して、自分が電波を出すアクティブタグというものを持って歩いて、それをインフラ側が受信するというタイプのものもあるようです。

 問題は、一遍にたくさんの人がいたときに、100人、200人のものを同時に識別するのが難しいとか、電源が長時間もたない可能性があるので、あるエリアに入ったときだけ電波を出すような仕組みを実装するとか、実験のレベルではそういうものはございますので、一応そういうことも考えてはいます。例えば今までアンケート票を送ったかわりにそういうタグを送って、あちこち歩き回ったらそのタグを送り返してくれれば、そのデータを読むということだとか、比較的タグの価格が安ければそういうことも考えられるかなというふうに思います。

【委員】  今のタグ、いわゆる個人を識別するためのタグですけれども、最近ではこの間の東京マラソンですとか、つくばですと、つくばマラソンで足にくっつけておいて個人を識別していますから、数百人オーダーのものができるとは思うんですけれども、それよりも問題なのは個人情報という部分に引っかかるのが大きいのかなというふうに思うんです。

 これも数年前にある都市で、タグではないんですけれども、いわゆるマンナビ的に人がどう動いたかというのを調査したことがあるんですけれども、例えば1日それがずうっとフォローしていて、銀行へ行っている、どこへ行っている、どこへ行っているとか全部ばれるわけです。そうすると、個人にはわからなくてもあの人は銀行へしょっちゅう行っているとか、変なところへ出入りしているとか、全部ばれるわけです。そうなると、先ほどアンケートのかわりにとおっしゃいましたけれども、それが使えないんですね、結局。むしろその人に直接会って、こういう目的で、こういうことにしか使えませんのでと説明しないとそのデータがもらえないということになると、アンケートより始末が悪いということも起こり得るのかなと思いますので、その辺は運用をちょっと検討する必要があるかなというふうに思います。

【国総研】  個人情報の問題は、このメンバーのところにも個人情報保護の専門家って書かせていただいたんですけれども、非常に大きな問題で、アンケートですと自分が書いたものが見れるので、それ以外のものはないというのはわかるんですけれども、携帯の場合ですと携帯電話のほかの情報と突き合わせると個人が特定できるとか、そういうこともわかるので、自分が送った情報は何かということを送った側にちゃんと見せる仕組みですとか、あるいは家だとかが特定されない仕組みとか、そういったことも十分考えないといけないだろうなと思っています。

【主査】  いかがでしょうか。

 僕もすみません、何点かあるんですけれども、まずパーソントリップ調査30億円かかるっておっしゃっていましたけれども、あれは違いますよ。一番大きいのが東京のパーソンですが、それでも実際に10億円ぐらいしかかかっていません。都市規模によっては2,000〜3,000万円でできますので、今、パーソンは苦戦しているところですので、30億円かかるとか言っていただくとちょっと困ったりするので、お願いします。

 それと、○○先生がおっしゃった、喜んで情報をアップしてくれるビジネスモデルというのは非常に大事だと思うんです。これは何番のやつだったかな、科学的分析に基づく生活道路の交通安全対策に関する研究のロンドンの例が出ていて、これは英国交通省となっているんですけれども、実際は民間会社が5万人の人と金銭インセンティブで契約をしていて、それでつかまえたデータをハイウェイエージェンシーが買って提供しているというスキームですので、そういう金銭インセンティブとか、自分のプライバシー、匿名性はきちんと確保してもらえるという十分な信頼と保証のもとで差し上げると、みんながよくなるよという社会的な貢献感みたいなものを、これは別に渋滞だけではなくて、環境問題でも安全の問題でもいいんですけれども、そういうところをどうきちんとやっていくかということをやらないと、絵にかいたもちになります。

 それと、もう既に我々のプライバシーというのはじゃじゃ漏れなんですよね。例えばクレジットカードを使いますけれども、あれはどこに住んでいる年収幾らぐらいの人が、どこで何を食べたかって全部わかるわけですよね。そういうのが今は交通カードでもできる。私はまだ持っていませんけれども、○○先生は多分持っているんじゃないか、○○先生も持っているんじゃないかなと思うんですけれども、ピタパというのも全部わかるわけですね。今、まだプリペイドのスイカは連結することをされていませんけれども、あと1年か2年のうちに連結されますから、IDカードがあって、それがどういう動きで、どうなっているかということがわかります。でも、その裏に、ピタパでしたら割引サービスをしてくれるとか、スイカもそういうマイレージサービスをあと1〜2年たつとしてくれますので、そういうメリットはあるわけです。

 ですから、そんなこともありますし、あと人の流れだけだったですけれども、物流のICタグの話とか、港湾EDの話とか、そういったたぐいの話がいっぱいあって、その辺はほんとうにデータにおぼれかけてしまいそうですので、ぜひこういう統一的観点から研究を進めていただくとありがたいんです。しかし、その視点をどう据えるかというのは結構難しいと思いますので、その辺はきょうもいろいろご意見をいただきましたので、よろしくお願いしたいと思います。

 いかがですか。

【委員】  こういうものが災害時の避難等に活用できたら非常にすばらしいなと感じました。個人情報の問題もありますけど,情報を提供してくれる人へのサービスとして、河川氾濫時の避難経路とか、山地域で斜面崩壊が起こっているときの避難経路とか、を提供することはいいことだと思います。災害現場にいる人はどこで何が起こっているかの情報がすぐに入ってこないので、そういう情報と合わせていろいろなサービスができたらすばらしいと思いましたので、そのような方向での研究もお願いしたいと思います。

【委員】  PiTAPAの話が出たのでコメントさせて下さい。PiTAPAは事後払いで料金システムで、事前払いシステムのSUICAICOCAとは違います。関西では、学生証とピタパを一枚のカードに統合した事例があります。大学へ出席して、マイルをためて地元の商店街で使おうとか、コンパクトシティを実現するための手段として交通カードを使おうという動きがあります。与信会社がデータを集計していますが、例えばどの駅を何人の人が利用するかという情報を用いて、広告の格付けサービスを始めるとか、そういうところまで来ています。民間部門はものすごい勢いで技術革新しています。

ページTOPへ戻る

【主査】  ありがとうございます。ほかにいかがですか。

 とにかく民間はすごいです。だから、そこへ公共が打って出ていくということの意義とか意味とか、国民にとってのメリットというのはどうなのかなというふうに思うんです。パーソントリップ調査をして、この前も言っていたんですけれども、東京のパーソンで。パーソントリップ調査をすると、こういうことがわかりますというのを例えばお願い状に入れるんですけれども、プロから見るとおもしろいかもわからないですけれども、普通の人にとってそういうのがわかって何なのっていう、こういうことなんですね。ですから、その辺もぜひ提供するとうれしいわっていうところをお願いできればと思います。

 これもいろんなご意見をいただきましたけれども、基本的には推進していただければという感じだったと思いますので、それを参考にしてまた実施していただければと思います。

 それでは、これで一応議事については終わりました。今後の予定等については私はしなくていいんですね。お願いします。

【事務局】  長時間のご審議ありがとうございました。最後に主査の取りまとめの方法について、主査ご一任の確認をとっていただければと思うのですが。

【主査】  ずうっと口頭で申し上げておりました方向と全部がまだ含まれてないとは思いますけれども、速記も入っておりますので、委員の方のご意見を文書に取りまとめさせていただきます。その作業については皆様お忙しいと思いますので、ご一任いただければと思います。正式に委員会に報告する前に1度見ていただくんですよね、案を。

【事務局】  そうですね。最終、主査が取りまとめということでお願いをしたく存じますけれども、状況のご報告とほかの委員の方々にも議事録を含めましてご紹介をさせていただきます。

【主査】  ということですので、そんなめちゃくちゃなことはしませんので、信頼していただければと思います。

5.今後の予定

【事務局】  今ご了解いただきましたとおり、主査にご一任ということで、最終評価結果取りまとめをさせていただきたいと存じます。また、今申し上げましたとおり、議事録等につきましてはメールでご紹介をさせていただきます。ご返事を賜ればと思います。

 なお、議事録、本日の資料等々を報告書にまとめまして、公開予定でございます。なお、ウェブにもアップいたします。ご了解をいただければと思います。

 それでは、最後、○○所長よりごあいさつをお願いいたします。

6.国総研所長挨拶

【国総研所長】  非常に長時間にわたりましてありがとうございました。大変お疲れのことと存じます。なかなかできのいいやつも悪いやつもありまして、悪いのでご評価いただくときはなおさらお疲れになったんじゃないかというふうに危惧いたします。いろいろご指摘賜りまして大変ありがとうございました。

 結構プレゼンの手法自体も評価には影響するなというのが実は実感でございまして、もう少しうまく説明すればいいのになと思いながら聞いていたのも大分ありますけれども、それは別として、ご指摘賜りましたように、中身的に非常に大事な課題がいっぱい並んでいると思っております。なかなかこれから山あり谷ありで進めていく上でも大変だと思うんですけれども、またいろんな場面でご指導、ご支援を賜ればというふうに思います。非常に長時間にわたりまして、ほんとうにありがとうございました。

7.閉会

【事務局】  以上で第3回研究評価委員会分科会を終了いたします。どうもありがとうございました。

 なお、お手元の書類に、そのまま封筒に入れて机の上にお置きいただければ後ほどご返送いたしますので、よろしくお願いいたします。

↑ページTOPへ戻る