平成17年度 第2回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会
分科会 議 事 録


第2回研究評価委員会分科会 第三部会 (平成17年7月25日開催)
1. 開会
2. 国総研所長挨拶
3. 分科会主査挨拶
4. 議事
(1) 評価の方法等について(確認)
(2) プロジェクト研究等の事後評価
@快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究
(3) 新規研究開発課題の事前評価
@低頻度メガリスク型の沿岸域災害対策の持つ多様な効用の評価に関する研究
A国際交通基盤の統合的リスクマネジメントに関する研究
B温室効果ガス削減を目指した空港環境マネジメントに関する研究
(4) プロジェクト研究の事後評価の取りまとめ
@快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究
5. 報告
(1) 他の分科会の評価対象課題の報告(第一及び第二部会)
6. そ の 他(今後の予定について)
7. 国総研所長挨拶・閉会
〈開会〉

(事務局)定刻になりましたので、少し遅れていらっしゃる先生もおられるようですが、ただいまから平成17年度第2回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会を開会いたします。委員の皆様におかれましては、ご多用中にもかかわらず分科会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。 進行は、管理調整部企画調整課の○○が務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 本日の分科会は第三部会の担当会議で、終了プロジェクト研究に関するもの1課題並びに新規研究開発課題として3課題の計4課題の評価をお願いするものでございます。
 それでは、まず配付資料の確認をさせていただきます。
 議事次第、座席表に続きまして、配付資料の一覧がございます。続きまして資料1は委員名簿。資料2は「評価の方法等について」。資料2−1は「研究評価委員会分科会の議事録等の公開方法(案)」。資料3は「国土技術政策総合研究所プロジェクト研究一覧」。資料4は「快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究」の関係資料。資料5は「低頻度メガリスク型の沿岸域災害対策の持つ多様な効用の評価に関する研究」の関係資料。資料6は「国際交通基盤の統合的リスクマネジメントに関する研究」の関係資料。資料7は「温室効果ガス削減を目指した空港環境マネジメントに関する研究」の関係資料。資料8は「他の分科会における評価対象課題資料」でございます。また、他部会の先生から事前にご意見をいただいたシート。参考資料といたしまして、国土技術政策総合研究所研究評価委員会及び分科会設置規則、他に3冊ございます。また、その他に事後評価シートを配付いたしておりますが、過不足等はございませんでしょうか。
 それでは、議事次第に従いまして、○○国土技術総合研究所長よりご挨拶を申し上げます。

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〈国総研所長挨拶〉

(国総研)皆さん、おはようございます。国総研所長の○○でございます。

 本日は、第三部会ということで朝早くからお集まりいただきまして大変ありがとうございます。平成17年度の国総研の評価委員会としては第2回ですが、第三部会といたしましては最初の部会でございます。

 先程、ご紹介がありましたように、本日お願いします評価としては、プロジェクト研究につきまして、事後評価ということで完成した研究の評価をお願いするものが1件、それと、来年度の予算要求に向けて準備しております新規の研究開発課題につきましての事前評価を3件お願いしております。これが主体でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 国総研は、ご承知のとおり比較的新しい研究所で平成13年度の発足でございます。今年は平成17年ですので5年目を迎えます。国土交通省の技術政策に役立つ研究ということに重点を置き、プロジェクト研究に力を入れてきております。このプロジェクト研究につきましても、平成13年度に発足したときに設定した研究が、平成16年度ですべて終わる形になってきておりまして、新しいテーマにも逐次取り組んできているところでございます。こうして仕上がってきている研究成果につきまして、国土交通省の技術政策にどのように役立っているかにつきまして、評価をいただければ幸いでございます。

 あと、全体的な動きとして、国全体として、総合科学技術会議において第3期の国としての科学技術基本計画の見直しがなされております。これに合わせまして、国土交通省としての技術研究計画を見直そうということで進んできております。私ども国総研につきましても、研究方針というものを持っておりますが、これもこうした動きに合わせて見直すということで今進めようとしております。そうした見直し作業につきましても、本日いただきます様々なご意見が重要になってくるのではないかと思います。

 それでは、どうかよろしくお願いいたします。

(事務局)続きまして、ご出席の委員の皆様をご紹介申し上げます。委員の皆様には、本年度より2年の任期で改めて委嘱させていただいております。

 まず、本日の分科会の担当部会であります第三部会所属の委員の皆様をご紹介いたします。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 また、分科会設置規則第5条第1項に基づきまして、研究評価委員会委員長の指名により、第一部会、第二部会所属の委員にご出席をお願いしております。

 第一部会より○○委員でいらっしゃいます。

 第二部会より○○委員でいらっしゃいます。

 国土技術政策総合研究所幹部の紹介につきましては、座席表をご覧いただくとして省略をさせていただきます。

 分科会設置規則第4条第2項に基づき、研究評価委員会委員長より第三部会の主査として○○委員が指名されております。

 それでは、○○主査にご挨拶をいただきまして、以後の議事をお願い申し上げたいと存じます。

○主査、よろしくお願いいたします。

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〈分科会主査挨拶〉

(主査)主査に指名されました○○でございます。僣越でございますけれども、まとめ役というか、進行役を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今、○○所長からも話がありましたが、この国総研の事業あるいは研究を適正かつ効率的に進めるという点では、評価委員会の仕事は責任が非常に大きいと考えておりますので、委員の先生方の活発なご意見をいただいて、評価が進みますようにご協力をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

(主査)それでは、早速、今日の議事に入らせていただこうと思います。

まず、「評価の方法等について」ということで、この評価委員会の評価の進め方、あるいは、どういう仕事をどのようにやるのかについて、事務局からご報告をお願いします。

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〈評価の方法について(確認)〉

(事務局)評価を担当しております評価研究官の○○でございます。

 資料2に基づきましてご説明させていただきます。

 第三部会が評価責任分科会となっておりますプロジェクト研究は、本日は1課題で、「快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究」の事後評価をいただきます。評価に当たりましては、第一部会、第二部会の委員から事前にいただいている意見を含めまして、本日の分科会の審議と評価シートに基づいて行うことになります。

評価に当たりましては、必要性、効率性、有効性の観点から行っていただくわけでございますが、評価の視点ということで、ここに四角に囲ってありますが、必要性の観点からは、国総研で実施することが妥当であったか。また、研究で掲げた目標が技術政策課題の解決に向けて、または解決するために適切かつ明確に設定されていたか。効率性の観点からは、研究計画や実施方法、研究体制が、目標を達成するために妥当であったか。さらに、有効性の観点からは、目標とした研究成果が得られているか。研究成果が国土技術政策等への反映を通じ、社会への貢献が期待できるか。という観点で評価をお願いしたいと存じております。

 また、事前評価ですが、第三部会が評価責任分科会となっている3課題につきまして評価をお願いしたいと存じます。事後評価と同様ですが、第一部会、第二部会の委員から事前にいただいている意見も含めまして、本日の分科会の審議に基づきまして評価をお願いしたいと存じます。

 評価に当たりましては、同様に、必要性、効率性、有効性の観点で評価をお願いしたいと存じております。評価の視点が同様に四角に囲ってございます。こういった視点ですが、事前評価につきましては、来年度からの研究を予定しておりますので、研究がより効果的、有意義な研究となりますよう、アドバイスという観点からのご評価もいただければ幸いでございます。

 なお、評価の時間ですが、事後評価は、説明が20分、委員による質疑・評価・意見等評価シートの記入までを含めて30分。最後に、事前評価の後になりますが、評価結果の取りまとめということで10分を予定しております。

 それから、事前評価につきましては、課題毎に研究代表者による説明が10分、委員による質疑・評価・意見等が15分という時間配分を予定しているところでございます。

 1枚めくっていただきますと、資料2−1がございます。「研究評価委員会分科会の議事録等の公開方法(案)」でございます。これは、研究評価委員会や他の分科会とも共通の取扱いにしたいと考えておりますが、上の段に「従来」と書いてありまして、下の段で「今回(案)」と書いてあります。昨年までは、議事要旨を発言者名なしで公開していたのですが、昨今の情勢等を考えまして、今回の案として、速記録を議事録として公開したいと存じております。ただし、発言者名につきましては、「主査」、「委員」、「事務局」等ということで個人名は出さないように考えております。また、速記録の取りまとめに当たりましては、以下の点について委員のご確認をいただくということで、発言に含まれている内容、数字、固有名詞等の誤り等の修正、その他文章を整える等、必要最小限の修正を、委員のご確認をいただきたいと思っております。

結果につきましては、配付資料とともにホームページに掲載していきたいと考えております。

 説明は以上でございます。

(主査)どうもありがとうございました。

 ただいまの事務局からの評価の方法について、何かご質問あるいはコメントがございますか。
 よろしいですか。
 それでは、早速、本題に入らせていただきます。
 まず、「プロジェクト研究等の事後評価」ということで、「快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究」に関して、研究担当者からご説明をお願いします。

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〈事後評価@快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究〉

(国総研)沿岸海洋研究部長の○○と申します。それでは、ご説明させていただきます。

 「快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究」ということで、平成13年度から16年度にかけて実施しました。実施担当は、沿岸海洋、環境、下水道、河川の4研究部で実施しておりまして、研究費総額は4年間で283百万円でございます。

 「研究の概要」ですけれども、このプロジェクトでは、「現象の解明」、「広域的な物質循環モデルの構築」、「人文・社会科学的視点を取り入れた評価」の3項目を研究手法の軸にして推進してまいりました。

 1点目の「現象の解明」に当たりましては、河川、下水、沿岸域を一体的に把握することを課題とし、広域の環境モニタリング手法の開発を行いました。湾内の環境支配要因、自然再生のポテンシャル、生態系ネットワークなどを検討することを目指しております。

 2点目の「広域物質循環モデルの構築」に当たりましては、合流式下水道の改善対策を、検討する際に必要となります雨水負荷量モデルの改良、湾内の広域的な海水交換を検討するモデルの開発といったものを課題とし、湾内における短期的あるいは長期的な環境変化の様相を解明することを目指しております。

 3点目の「人文・社会科学的視点を取り入れた評価」に当たりましては、埋立てに関する社会的受容性の構造、あるいは、地域に伝わる歴史文化の位置づけ、地域の人々の海岸に対する思い入れといったものを理解することを目指しております。また、こうした評価を支える技術として、環境情報の標準化に関する検討を行いました。

 研究の成果といたしましては、今申し上げました「現象の解明」、「広域物質循環モデルの構築」、「人文・社会科学的視点を取れ入れた評価」の3つの軸に対して、具体的には、現況理解に関する成果、施策メニューの開発、合意形成手法の成果、ウォーターフロントのあり方検討、複合化施策の評価、東京湾の環境グランドデザインの提言に関する成果の6点の成果を得ております。

 次に、成果の活用でございますが、市民が快適に憩え、多様な生物を涵養する生息場があり、健全な物質循環が保たれた東京湾の形成に活用されることを目指して、特に、合流式下水道の改善を含む諸対策の実施、湾内浄化促進施策の実施、自然とのふれあい場の整備など、多様な自然共生施策の総合的な展開を具体的な活用目標としております。

 研究成果の中身ですけれども、6点に分けてご説明させていただきます。

 まず「現況の理解に関するもの」では、1点目、東京湾総合環境調査ですが、湾内全体の環境把握をいたしました。2点目、アサリ浮遊幼生による生態系ネットワークにつきましては、環境指標となりますアサリの分布の把握を行いました。3点目、湾内の広域的な海水交換では、海水の滞留時間の把握を行っております。

 2「施策メニューの開発に関するもの」では、1点目、合流式下水道からの雨天時汚濁負荷の流出解析を行いました。2点目、都市臨海部に干潟を取り戻すプロジェクトとして、干潟造成技術の開発を行っております。

 3「合意形成手法の研究に関するもの」では、1点目、埋立てに関する社会的受容性の検討として、埋立て行為と環境影響との相互作用の研究を行っております。2点目、沿岸域における環境評価手法の作成として、干潟生態系の指標化を試みております。3点目、沿岸環境情報の標準化として、環境データの相互利用システムを構築しております。

 4「ウォーターフロントのあり方検討に関するもの」では、1点目、海岸特性を踏まえた海岸管理のあり方として、海岸の歴史文化を海岸づくりに反映させる可能性について検討しております。2点目、干潟・藻場再生のあり方ですが、時空間的に変化する海域生態系の再生目標として、包括的計画を提唱しております。

 5「複合化施策の評価に関するもの」では、1点目、東京湾における総合的な環境管理予測システムの開発として、高精度の予測シミュレーションシステムを開発しました。2点目、沿岸域における自然再生事業の評価事例の検討から、順応的管理の考え方を取り入れております。

 6「東京湾の環境グランドデザインの提言に関するもの」では、1点目、海洋環境施策における順応的管理の考え方を提案いたしました。2点目、自然再生のポテンシャル評価として、現状の東京湾の生物学的ポテンシャルを示しております。

 以下、成果の主なものをご説明させていただきます。

 まず、前提となる東京湾とその流域圏ですが、東京湾の流域圏人口は2,600万人と言われておりまして、狭義には東京湾は神奈川県の観音崎から千葉県の富津岬を結んだ線よりも北側と言われておりますが、約1,000kuございまして、主要河川として、北から、江戸川、荒川、隅田川、多摩川などから、毎秒400t前後の流入があります。

 湾内の流れにつきましては、潮汐による潮流、風による吹送流、淡水流入によるエスチュアリ循環のほか、外洋からの黒潮の貫入による間欠的な流れもあることがわかってきております。

 東京湾に流入する黒潮についてですが、湾内の流れの観測について、面的・時間的な広がりから、大規模な観測網を構築する以外になかなか全体把握が困難でしたが、近年、短波レーダーによりまして、表面流を精度よく捉えることが可能になっております。これは、海面にレーダーを照射し、その反射波を捉えることで表面流速を計測するものです。こうした観測手法の検証を行い、広い領域を同時観測し、海洋の流動についての認識を深めることができました。

 この図は、2000年12月から2001年1月に発生した東京湾への黒潮の貫入をレーダーが捉えたものです。これは、相模湾から東京湾口における表面流を、時間を縮めて再現しております。観測は、神奈川県の平塚と千葉県の館山に2局のレーダーを設置し、12月10日から1月16日まで連続して行いました。

 これまで、定置網が流されるといった現象から、黒潮の東京湾への貫入が「急潮」という現象として知られていましたが、今回、東京湾と外洋との相互作用を視覚的に初めて捉えることができたと思います。

 湾内の流れにつきましても同様な観測を行っておりまして、こうした流れに乗りまして、アサリの浮遊幼生が湾内を循環し、生態系ネットワークを形成していることが考えられ、これについても観測を行いました。

 湾奥部に3.5kmメッシュで観測点を設けまして、アサリ幼生の浮遊実態を観測しました。

アサリは現在も東京湾の主要な漁獲種で、近年、急速な資源量の減少が問題となっておりまして、東京湾の環境変化を示す敏感な指標とも考えられております。

 右の図ですが、4日おきに計測した浮遊幼生の大きさの分布です。1日に約0.1mmの成長を示しております。左側の図は、その成長に沿った空間的な分布を示しております。左側の図を見ていただきますと、8月2日の表層には、三枚洲から東京港沖合、盤洲から富津にかけてアサリの小型幼生が多く出現しております。アサリ幼生の大きさから、孵化後数日しかたっていないと推定できるということで、この分布はアサリの親貝の生息域とほぼ一致すると見てよいと考えられます。三枚洲や羽田沖の海域は、アサリの生息に関する研究が少なかったのですが、この結果から、この海域はアサリ再生産に大きくかかわっていることが示唆されることになります。

 4日後の中層には、成長したアサリ幼生が湾中央部にまで拡散しておりまして、さらに4日後には、個体数は減少しておりますけれども、成長した幼生が盤津から富津にかけて着底しようとしておりました。つまり、この観測で、アサリの幼生が湾内に浮遊している現象が確認されました。

 この統合モデル自体は、現象の理解ではなくて複合化施策の評価に関する研究成果ですが、環境予測のシステムとして、内湾域における流況、物質の移流拡散現象を高精度に再現できる気象海象統合シミュレーションモデルを開発しておりまして、このモデルに、実際に観測された気象・外洋、河川の条件をインプットし、先ほどのアサリの浮遊幼生の移動経路のシミュレーションを実施しました。

 アサリの浮遊幼生に見立てたトレーサーが東京湾を流されていく様子を図化しております。左図は、東京港からアサリ幼生が浮遊していく場合の軌跡の計算、右図は、盤津干潟から浮遊していく場合の計算です。いずれも浮遊幼生の分布は広範囲に及んでおりますけれども、特に湾奥部で発生する幼生は湾内に一様に分布していることが計算として示されております。

 こうした観測で実証されたアサリによる生態系ネットワーク、これをアサリ幼生の発生場所毎に先程のような数値計算をして検証しております。あるものは自分の干潟に回帰しますし、あるものは他の干潟とのやりとりをしている様子について、先ほどと同様に与えられた条件で計算をした結果です。

 赤い線は自分が誕生した干潟に帰っていくもの、青い線は、他の干潟に着底するもの。数字はそのパーセンテージを示しております。こうした生態系ネットワークの存在の実証から、今後の沿岸域における自然再生への指針の一つになり得ると考えております。

 続きまして、湾内の流入水ですが、湾内の物質循環を支配している大きな要因といたしまして、淡水流入があります。淡水流入につきまして、1960年以降、都市における水需要の増大を受け、利根川からの利水の影響もあり、順次増加してまいりました。

 その水に含まれる栄養塩、トータル窒素ですが、生活系、下水などの流入の割合が1950年以降増加し、1980年をピークに環境対策の進展とともに減少してまいりました。

 このように、河川から流入した水が湾内に滞留する時間を季節毎に比較しました。1947年から1974年の約30年間の平均値から推定される点線の季節変化、これは25日から80日という幅になりますけれども、その年平均としては、赤線に示される46日という数字です。これに比べて、今回計算した2002年の総合水質調査結果を用いて推定される実線の季節変化、15日から40日程度の変化ですが、これの年平均が青線の25日程度になります。これを比較すると、近年、海水の交換時間は顕著に少なくなっていることがわかってきました。これは、先程のような淡水の流入の増加によるエスチュアリー循環の発達が原因と考えられていまして、社会活動が湾内循環に影響を及ぼしている様相が顕著に示されたと考えております。

 以上が現況理解に関する研究成果のご紹介です。

 続きまして、施策メニューの開発に関する研究から、合流式下水道の改善研究についてのご説明をさせていただきます。

 合流式下水道の改善対策の検討には、雨天時の越流水あるいは汚濁負荷量モデルの高度化が必要です。このため、雨天時に流出する汚濁物質のモニタリング、そのモデル化を行い、汚濁物質制御の手法を検討しました。

 この図は流出解析の一例ですけれども、閉鎖的な水域では沖合への拡散が弱く、比較的長い時間、閉鎖水域にとどまっております。一方、開放的な水域では、早く拡散する特徴などがはっきりとわかってまいりました。

 次に、合意形成手法に関する研究の一環として、港湾区域における埋立て計画の動向分析の状況です。左図は、東京湾における埋立面積の累積で、高度成長期からオイルショックまで、特に1970年代に湾内に広く埋立が進行し、内湾の海岸線のほとんどが埋立られて、干潟や浅場の消滅につながっております。しかし、オイルショック以後の埋立は、右図の水色あるいは青色に見られるように、埋立しやすい浅場から、大水深かつ環境に配慮した島方式へと変化しているということで、このような歴史的な変化も忘れてはならない部分であると認識しております。

 次に、ウォーターフロントのあり方の研究についてです。現状の海岸管理の課題として、人間と海とのつながりが薄い、無味乾燥な海岸、海岸のごみの放置、止まらない海岸浸食などが挙げられます。その原因として、人口の過密化、過疎化、漁業者の減少、自然海岸の減少、防災優先の海岸管理などが考えられます。すなわち、海岸は生活の場であるとともに災害の場でもありましたが、海岸保全の進捗とともに災害への関心が薄れ、さらに、海の豊かさへの認識も薄れていったと考えられます。

 以上から、今後の海岸管理には、地域のあるべき姿を客観的に捉えることが求められております。そこで、海岸の歴史・文化を調査し、地域の人々とコミュニケーションする可能性を探りました。

 左図は広重の描いた佃島で、右図がその現代です。この現代の風景から、昔を忍ぶこともなかなかできなくなっておりますが、今後の海岸づくりにおいて、海岸に残る歴史・文化を反映させる可能性があることがわかりました。絵画などのほか、詩歌伝承、郷土史などが対象となると考えられております。

 次に、オーストラリアやヨーロッパの沿岸域の保全と開発の管理におきましては、この順応的管理という考え方が取り入れられております。順応的管理を今回の東京湾のグランドデザインに取り入れるべく検討を行いました。

 広域的な沿岸域に様々な施策を複合的に展開するため、順応的管理では、まず包括的な目標を設定いたします。次に、個別目標として、具体的な行動計画や事業実施方針を策定した上で、目標達成基準に基づきまして、モニタリングを通じて管理手法の改善を行っていきます。このように、目的、行動計画、評価を明確に区分することで、順応的管理が無制限に目的を変更していく手段になることを抑制するシステムが図られております。

 これらの研究成果から、東京湾の環境グランドデザインをまとめました。

 目標に掲げたものは、当初の研究成果の活用方針で掲げたものです。行動計画としては3項目で、人と海のつながりの再生、適材適所の生物生息場の開発、物質循環の健全化のための施策応援ということです。

 評価基準についても3項目を掲げております。この研究を進めるに当たりましては、東京湾シンポジウムを開催し、研究の遂行、成果の発表に活用してまいりましたが、本年6月に第6回の東京湾シンポジウムを開催いたしまして、このグランドデザインにつきまして、東京湾再生に関係する政府部局、自治体、関係者、漁業者、環境NPO、研究者の方々とともに討議をしてまいりました。この提言につきましては、本プロジェクト研究の最終的なまとめとなるとともに、東京湾再生推進会議など、東京湾にかかわる行政主体への具体的な提言として、あるいは、今後の研究の方向性の確認に資する概念整理として活用していきたいと考えています。

 研究の実施体制ですけれども、直接的には、国総研の4研究部が分担しましたが、今申し上げましたような東京湾シンポジウムなどの場を通じて、多様な主体との意見交換も図ることができたと考えております。

 なお、流域圏都市再生にかかる部分は、自然共生型流域圏都市再生プロジェクト研究と連携して実施してまいりました。

 研究の達成度ですが、研究成果につきましては、達成状況を以下のようにまとめております。未着手の項目はなく、それぞれ概ね順調な研究進捗により予定した成果が得られていると考えております。特に、現象の解明においては、東京湾で広域的かつ短期的に発生する現象、これは従来のモニタリングでは捉えにくかった現象ですが、これらをレーダーや広域観測、アサリの観測などにより捉えまして解析した結果、貴重な成果が得られたと考えております。

 また、複合施策の評価のためのモデル解析においても、汎用性が高い有意義なモデルが開発され、他の多くの検討項目を研究する際のツールとしても活用できたと考えております。

 一方、施策メニューの開発あるいは合意形成手法に関する研究項目につきましては、予定していた研究成果が必ずしも得られなかったということになりました。施策メニューの開発につきましては、メニューの開発には着手できたものの、十分な検証・評価を行うことは必ずしもできませんでした。また、合意形成手法の項目につきましては、人文・社会科学的視点を取り入れた評価の手法を用いた検討ということで、海外事例、国内事例の調査は行ったものの、独自の評価手法の検討までには至りませんでした。

 これらを点数評価として自己評価してみました。◎が1.5倍、△が0.5倍として評価点をつけると96%になりました。なお、この評価方式は、全部△だと50%、全部◎だと150%ですから、ほぼ平均点が取れたのかなという自己評価をしております。

 研究成果の活用状況ですが、6点挙げたいと思います。

 まず1点目、「東京湾再生のための行動計画の策定」です。科学的根拠の提示により、水質改善の重点エリアの設定などに反映ができたと思っております。

 2点目、「自然共生型海岸づくりの進め方の策定」です。自然共生型海岸づくり研究会への参画により、研究成果の反映がなされました。

 3点目、「下水道法施行令の改正」です。検討データの整理収集、合流式下水道改善の方針の位置づけで本省を支援いたしました。

 4点目、「海岸保全施設の技術上の基準・同解説の作成」です。原案の執筆などにより、関係部局への支援をしました。

 5点目、「大阪湾再生行動計画の策定」です。社会実験として共同実験の実施を、阪南2区の干潟創造実験で行いました。行動計画の策定、実施の技術支援を行いました。

 6点目、「海洋環境データベースの標準化と利用システムの構築」です。データの標準化、利用システムの構築に当たりまして、関東地方整備局に協力しました。なお、2003年度の港湾協会論文賞を受賞することができました。

 成果の活用の一例として、東京湾再生のための行動計画をご紹介させていただきます。

 この計画は、内閣府の都市再生本部が主導し、東京湾再生推進会議による東京湾再生のための行動計画で、平成15年3月に策定されました。この研究成果などを受けて3つの方向性が示され、具体的な重点エリア、アピールポイント等が水辺に設定されています。

 最後に、新たな課題と今後の研究の方向性ですけれども、沿岸域環境の改善を進めていくためには、このプロジェクト研究で最終的に示されている包括的な環境計画、順応的管理システムについての研究を今後さらに進めていく必要があると考えております。特に順応的管理のサイクルの洗練化、自然修復・再生技術の開発、観測評価手法の開発などがポイントであると思っております。

 以上でご説明を終わらせていただきます。

(課題説明終了)

(主査)どうもありがとうございました。非常に多岐にわたる膨大な成果で、いろいろな方面からご意見、評価があろうかと思いますので、少し時間をとって皆さんのご意見を伺いたいと思います。

(委員)今のご説明を聞いておりまして、東京湾の自然環境面にかなり着目された研究とお見受けしました。ただし、東京湾というと海上輸送とか物流面が非常に大きいかと思いますが、その辺は研究の中でどのように組み込まれているのかご教示いただければと思います。

(国総研)今回のこの研究の中では、主眼としたのは内湾の自然再生で、一部合意形成手法の開発等についても着手しておりますけれども、経済的な側面等については、この研究の中では具体的には取り扱っていませんでした。

(委員)12ページの24番と13ページの25番のスライドを見させていただいているのですが、先ほどのご説明で、25番によると、人文・社会科学的なアプローチには△が2つあって「十分ではない」というお話でしたが、24番ではどういう研究体制をおとりになったのか、あるいは、ここの研究体制のつくり方にまだ足りないところがあったのではないかと考えられないかどうか、ちょっとご発言いただきたいと思います。

(国総研)実際に実施した事柄で申し上げますと、直接的な研究体制の中では、沿岸海洋研究部が中心としてやっております。それから、先ほどスライドでご説明しました、海岸に関する歴史的な施策の検討につきましては河川研究部が担当しております。合意形成手法につきましては、今回、必ずしもそこまで十分に研究を進めることができませんでした。これにつきましては、幸いなことに、今年度から新たなプロジェクト研究がスタートしておりますので、さらにこの中で研究を進めていきたいと思っております。

(主査)一つ一つ具体的な話を整理しながら議論を進めたいと思います。人文・社会科学の研究体制については、例えば、今おっしゃった研究部の中に、人文科学、経済学、そのような専門の研究者の方が参加されていたのか、あるいは、外の専門家の方と協力した研究をされたのか、そのようなことがわかればよろしいのではないかと思います。それはいかがでしょうか。

(国総研)専門家の皆様にはいろいろな場面でご意見を伺ったりという機会は適宜持っていました。ただ、具体的な作業として、共同研究というか、それぞれ分担してやっていただくような、そういった具体的なところまでは実施しておりません。

(委員)今の関連で、合意形成という話ですけれども、だれとだれの合意形成というか、どういうセクターとどういうセクターの合意形成を目指しておられたのでしょうか。

(国総研)考えておりますのは、内湾域での自然再生を考えていますので、まず施策を実施する主体がありまして、ここが実際に施策を実施するに当たって、地域の方々、環境に着目しているような方々、そういった市民レベルの方々との合意形成を進めて、施策主体の行政主導でやるのではなくて、市民参加型の共同型の自然再生を目指すことを念頭に置いております。

(委員)東京湾は広いですし、いろいろと利害が対立する組織があると思います。行政と市民だけではなくて、各県など、千葉、東京、神奈川もあるでしょうし、産業ごとにもあるでしょう。ですから、そのあたりがご説明では見えなかったし、何を狙っているのかというところがもう一つはっきりしなかったような気がしました。感想です。

(委員)今の関連でお伺いしたいのですが、ここでは人文科学・社会科学というものを一つにくくっていますが、今後の進め方としては、恐らくいろいろな局面で、例えばこの局面を説明するには経済学のディシプリンが適当であるとか、社会学のディシプリンが必要であるとか出てくると思うので、研究の戦略を立てられるときに、人文学、社会科学の中で、どのディシプリンが、我々が今、対応している施策に関して説明力を有しているかを、研究の立案の段階で選び取ることが必要になると思います。もう少し、人文科学、社会科学全体を俯瞰していただいた上で、適当なディシプリンを選び出す作業が必要だったのではないかと思います。

 それから、合意形成というのは、先ほど、○○先生のお話にもあったのですが、いろいろなレベルがありまして、今回のプロジェクトでやられたのは、政策を提示するためのツールを整備する方向だったと思います。ところが、先ほどの部長のお話にあった、市民との合意を形成していくという面から見ると、今回のアプローチは、典型的な欠乏モデルと言われる、市民には今は知識が欠乏しているけれども、その市民に適切に行政担当者が説明するにはどういうツールが必要かというアプローチになります。もう少し市民と協働すると部長もおっしゃいましたので、そのツールを合意形成の手法の中に取り入れていくという積極的な姿勢が必要なのではないかと思いました。

(国総研)ありがとうございます。今後また研究を進めていく上で、ぜひ反映していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

(委員)今までの先生方のご意見と同じですが、平成13年度に研究がスタートされたということで、当時では、今のようにニューパブリックマネジメントが大きな流れになっていなかった時代でした。したがって、仕方がないのかなという気がしますが、今日的な要請を踏まえれば、例えば「快適に憩える美しい東京湾の形成」という目標を、どうアウトカムで評価するのかが重要な課題になって参ります。「快適に憩える美しさ」を、どういうアウトカムで評価するのかは難しい課題ですね。いま、もし研究計画を立てるのであれば、まずアウトカム評価を考え、それを現実に政策としてどのように反映するかということをロジックモデルで表現し、その上でロジックモデルを検討するために、いろいろな研究を実施するというような研究計画や成果を説明することを目標とすることも可能だと思います。もっとも、平成13年時点では、そのようなアイデアを出せなかったのは、仕方がないと思います。

 そういう意味で、逆に、ニューパブリックマネジメントというか、いわゆる国総研の研究としても非常に重要な研究方針をつくるために役に立つ基礎研究であると評価できると考えます。

 11ページの21番で「順応的管理手法」という手法を提案されていたのですが、これも、いわゆるNPM型の管理手法と、順応的管理手法の間に、どのような類似性があるのかが興味のあるところです。もっとも、順応的管理手法というのは、もっと先進的な手法なのかもしれません。ただ、「この管理手法を誰が使うのか」、「どこの場で使うのか」、「どういう組織で、どういうサイクルで動かしていくのか」、「どういうステークホルダーがマネジメントに関係してくるのか」、そのような具体的な適用場面まで想定されて、ご研究されたのか、あるいは、一つの枠組みの提示としてご研究されたのか、そのあたりについて、補足説明していただければと思います。

(国総研)端的に言えば、手法の提示、枠組みの提示ですけれども、最後にご紹介しましたような東京湾再生の行動計画につきましては、実際にこうした手法の考え方というか、概念的なものが入っていると理解しております。

(主査)そのほかにどうぞ。

(委員)感想だけで恐縮ですが、私は経済学なものですから、こういうアプローチには余り慣れていないので的外れな感想になるかもしれません。かなり広い課題を掲げられているので、いろいろ多方面からアプローチされていることはわかりますが、今、○○先生がおっしゃったことと同じで、それがどう収れんしていくのか、その辺の問題が若干残ったのかというのが全体的な印象です。

 もう一つ、私の立場から言うと、人文・社会科学系の件ですけれども、これはやはり、まずはそうした研究体制をその研究の中でもしっかりしていただけたらありがたいことと、それに合わせた蓄積を生かせるような形を整えていただければと思います。

 以上です。

(主査)ありがとうございました。

 人文・社会学系というか、社会とのインタフェースの問題で起きてくる問題をどう研究していくかというところに一つの議論があるので、これは部長さんだけではなくて、○○所長さんとか幹部の方々のご意見も伺いたいと思います。国総研の仕事というのは、どうしてもそういうところが重要で、今後ますます重要になってくると思います。従来は、かなり技術的な研究が多かったので、スタッフや研究の蓄積、そちらの面での研究力量が必ずしも十分ではなかったかもしれない。しかし、今後はますますそういうところが重要になってくるということで、次の研究計画もスタートしているということをおっしゃっていました。やはり次のステップで、そうした研究力量をどう作っていくかということは結構大きな課題になると思います。そういう点は何かお考えがありますか。あるいは、今後の見通しとか。

(国総研)ピントが合うかどうかわからないのですけれども、今390人ぐらいのキャパシティの国総研でやれることは、非常に広いエリアの分野について担当しておりますので、なかなか難しいところもあります。ですから、次のステップに行くからこういう人を増やしてとか、そういうことはなかなかままならないところも当然あるわけで、今、本省から一番言われていることは、研究所だけで全部をやろうと思うなと言われております。ですから、我々が得意として、我々でなければ解明できない部分はきっとあると思うので、そういうところと、あと、どういうところと組んでいったら課題として挙げているものが解決されるか、そこのところを今後はもう少し真剣に考えて、全体の枠組みを作っていかなければいけないと考えております。これが、ここ5年やった一つの反省かもしれません。

(国総研)若干、補足ですけれども、私ども国総研の研究の範囲として、工学的な部分もありまして、それがメインといえばメインですが、環境、生態系とのかかわりが最近は大きくなってきております。あと、最終的な国交省の政策を通じて社会そのもの、或いは、国民の生活そのものを変えていく、良くしていくところがありますので、最終的には、当然、社会経済的な部分の評価が出てきます。ただ、私どもで持っているマンパワーはどうしても工学系が中心で、現在のところ、ごく少数ですけれども、生態系の関係について部外の研究員、或いは、任期付きの研究員の方をお願いしたりということをやっております。

 ただ、人文・社会科学系につきましては、まだそこまで行っていないのが実情で、先ほど研究総務官からもお話がありましたが、外部の方とどのようにうまくお付き合い、連携していくのかがこれからの大きな課題ではないかと思っております。

 あと、私どもとしましては、全体としての研究課題をどう組み立てるのか、或いは、研究計画のどの部分を大事だと思っているのか、そうした全体の枠組みの組立を私どもがきちんとできるような力が大事なのではないかと思っております。

(委員)課題名の「快適に憩える美しい」のところから素直に読んでいったら、「快適に憩える美しい」というのは、本来は人間の視点からの話ですけれども、その部分が、結果的には、先ほどもご議論がありましたように、人文・社会科学的なところの研究成果としてはまだまだこれからやることがあるというお話ですが、この課題名をもう少し深めていくとすれば、一般市民にとって海辺がどれくらいアクセス性が良いところになっているかというアクセスビリティ評価をきちんとやるべきだと思います。それは、単に海岸線がどういう格好をしているかだけではなくて、ウォーターフロントの土地利用であるとか、所有権とか、管理のシステム、或いは、交通網、そのようなものも全部絡んでいて、そういう場所で接する海側の環境がどうなっているかということの組み合わせで評価すべきものだと思います。その辺が、今後だと思いますが、今回の研究では、このタイトルに関して期待した部分としては含まれていなかったということで、今後に課題を残していると思った次第です。

(委員)現象の解明については、大変すばらしい成果が出ていると思いますけれども、こうしたものの中から知的財産、例えば特許がどのくらい生まれたのかということ。あとは、研究成果の公開を見ると、極めて内部的な公開しかされていない。先ほどシンポジウムのお話がありましたけれども、もう少しアウトリーチ活動がこうした研究には極めて大事だと思いますが、その辺についてどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。

(主査)では、○○先生のものと2つあわせてお願いします。

(国総研)具体的な特許に関しましては、この中では特に登録されていません。

 それから、情報の公開ということでは、最後に環境情報の標準化ということをご説明しましたけれども、これは直接的には関東地方整備局がデータ公開をしていまして、環境情報の一般的な公開ということでは、今回、かなり立ち入ってできたのかなと思います。

 それから、東京湾に限らず、今、有明海についてもレーダー観測をスタートしております。これは九州地方整備局が担当していますけれども、これも現在、インターネットでリアルタイムでの一般公開がされているという状況です。

(委員)私は今年からの委員なので今までの経緯がわかりませんから、やや無責任な発言の可能性もあるかと思いますけれども、快適に云々という大きな研究テーマから最初に受けた印象は、東京湾をある種の大きな改善をして、その結果、例えばサンフランシスコ湾岸のベイエリアのような、たくさんの人が集まる沿岸地域にする。つまり新しい都市を形成しようとするテーマのように見えます。

実際に多岐に渡るいろいろな研究をされていますが、一番主要なものは、内湾の自然再生であったように思います。ですから、大きなテーマに関して言うと、人文・社会系の諸問題に対する検討がまだ十分でないのと同時に、都市計画的な検討も十分ではないように思われます、この大きなテーマの最終的な成果に向けて、今後も継続的なテーマがあるようですから、そちらにより力を注いでいただきたいと思います。

(委員)この最終的な報告を読ませていただいて、結局、これらの研究の達成レベルは、現在の学問的なレベルをかなり反映していると思います。力学的に物質循環をモデル化することは非常に高いレベルに達しています。学会で言えば土木学会の海岸工学の分野のようなところが研究の主体ですが、非常に高いレベルに達していると思います。

 また、合意形成とか評価をどのようにしていくかに関しては、今、文理融合型の学会ということで、例えば沿岸域に特化すれば日本沿岸域学会とか、合意形成という問題に関しては科学技術社会論学会とか、そういうところで、理学系、工学系、人文科学系、社会科学系が一緒に議論をしています。日本沿岸域学会でも、科学技術社会論学会でも、状況は混沌としていまして、別にこの研究だけが達成度が低いということではなくて、学会自体として混沌としています。ですから、その辺の文理融合型の学会では何をすればうまく議論がかみ合って、何をしても余り議論がかみ合わずに、結局、議論が放置されたという履歴を見ていただくと、今後の方向性が見えてくると思いました。

(主査)ほかにございますか。

 後でまたまとめる時間があるのですけれども、今出していただいたご意見を少し考えてみますと、当初、この研究を発想された時点で目標になった多くの課題、特に東京湾の自然現象の理解、或いは、管理していくためのツール、個別分野の成果、それを一つの政策にまとめ上げていく方向性、枠組み、そういうものについても多様ないい成果が出ている。

 ですけれども、今の時点で反省してみると、例えば、最初に○○先生がおっしゃいましたように、環境だけではなくて、物流とか防災など他の面との関係はどう整合がついているか、或いは、合意形成とか人文・社会科学的な面での統合はどのようになっているか。それから、先ほど○○先生からお話がありました水辺の都市の形成、そういうところについて課題が残っている。研究をした結果、そういうところが次の課題として浮かび上がってきたということかもしれませんけれども、そういう方向ではないかと思います。

 それから、先ほど出ましたけれども、知的財産とか公開、発表、そういうものは研究成果の発信としては重要なので、それも重視していただきたいというご意見だったかと思います。

 これは後ほどまた皆さんに評価をしていただいて、まとめたものをつくる時間がありますので、今のところはこのくらいにさせていただきまして、次に、他部会の委員からご意見が出されていると思いますので、それを簡単にご紹介いただけますか。

(国総研)まず、○○委員から、先ほどの議論でもありましたとおり、合意形成に係る手法ツールの開発の必要性についてのご指摘をいただいております。これにつきましては、先ほどお話をしましたとおり、今後の研究の中でさらに進めていきたいと思っております。

 2点目として、○○委員から、類似のプロジェクトとして、環境省が進めております都市流域圏における自然共生型水物質循環の再生と生態系評価技術開発に関する研究との連携はどうなっているかというご指摘がございました。これにつきましては、先ほどちょっとお話をしましたけれども、自然共生型流域圏都市の再生のプロジェクト研究の中で環境省との連携をとっていると聞いております。私どもは、国総研の中のプロジェクト研究での総合的な連携をとって進めているという状況です。

(主査)どうもありがとうございました。

 今の他部会からのご意見に対して、どなたか何かコメントがありますか。

 よろしいですか。それでは、本日の最後に、事後評価についてはもう一度まとめの議論をしていただきます。この時点で、お手元に評価シートが配られていると思いますので、その評価シートにご記入をお願いいたします。

 ここで10分ぐらい休憩をとらせていただきまして、10時50分から議事を再開させていただきます。よろしくお願いいたします。

(休憩)

(主査)再開させていただきます。

 3番目の議題で「新規研究開発課題の事前評価」に移らせていただきます。この評価は3テーマありますので、順番に、第1のテーマ、「低頻度メガリスク型の沿岸域災害に対する多様な効用を持つ対策の評価に関する研究」について、ご説明をお願いします。

 

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〈事前評価@低頻度メガリスク型の沿岸域災害に対する多様な効用を持つ対策の評価に関する研究〉

(国総研)沿岸海洋研究部沿岸防災研究室長の○○でございます。

 それでは、「低頻度メガリスク型の沿岸域災害に対する多様な効用を持つ対策の評価に関する研究」について説明させていただきます。

 研究期間は、平成18年度から20年度までの3か年間、総研究予算として約70百万円と考えております。

 最初に、「低頻度メガリスク型沿岸域災害とは」ですけれども、沿岸域を襲う津波、高潮等は、その原因となる地震想定等の不確実性、確率評価に用いられる過去のデータの制約等々がありますので、実際にこういった災害は、防御レベルを上回る可能性が想定されると考えております。それで、ここでは、低頻度メガリスク型の沿岸域災害として、計画外力を上回る津波・高潮等による災害を対象として考えております。

 ここでは、その対策のイメージを挙げさせていただきます。

 これは、防波堤による津波の防護効果を見たものです。左側の図は、その防波堤の有無によるそれぞれの浸水域。右の図は、その両者の差です。これはあくまでも一例ですけれども、最大で2〜3mぐらいの低減効果が見られ、さらに浸水面積でも約5km2程度の減少が得られております。

 それから、これはよく出てくる衛星イメージですけれども、インドネシアのバンダアチェの衛星イメージです。これは被災前と被災後ですけれども、ここにある砂州のような地形部分が大きくやられておりますが、ここは海岸の防護の程度によって被災程度が相当異なっていたと言われております。また、砂浜の存在などによってここらの被災の程度が異なったのではないかという指摘がされております。

 続きまして、これは、海浜部にある森林といいますか、植栽といいますか、これはマングローブですけれども、こういう植栽あるいはマングローブ等が持つ津波の減殺効果も指摘されております。

 これは、大津波後に、インドネシア政府等が出したマングローブを活用した減殺対策のイメージです。

 これもよくご承知の、北海道南西沖地震の奥尻の被災状況です。奥尻の青苗地区につきましては、被災後、過去の土地利用等を見直しまして、過去の居住地域を公園にし、護岸や地盤を高くする埋立てによるような対策をとり、さらに、集団移転を行うというような土地利用の見直し、地区全体の計画の見直しを図っております。

 これは、インド洋大津波後にスリランカで導入された土地利用に関する規制です。対象地域として、平均潮位から+3mまでの範囲とし、高水位から100mのエリアについては新たな構造物は認めない。それから200mの範囲については一定の機能の構造物のみ認める。さらにその奥の部分については、他の2つのエリアから移転されたような活動を導入するということになっております。

 こういうものがいろいろ考えられるわけですけれども、これは、この研究で対象としていきたいと考えている施策のイメージです。

 まずは、防波堤等の港湾施設による低減の効果。それから他の港湾施設。これは岸壁・上屋等による低減の効果で、実際に岸壁等が存在すると、そこに上がってくる津波の威力なりがかなり減殺されることも報告されております。

 それから、森林、植栽、砂浜、干潟等による低減の効果。

 それから、実際にこれは第一線にバリアとなるような建築物を設けることによる、臨海部の建築物による低減の効果。

 それから、これは複合的な機能を持ったものの一例ですけれども、防潮機能を有する道路、人工地盤、遊歩道等によって背後の防御が図られる場合があるのではないか。

 これは少し計画的なものになりますけれども、危険物保管施設の集約といったようなことも考えられます。

 それから、これは大きなポイントになるかと思いますけれども、臨海部の再開発、土地利用の転換、遊休地の活用といったような際に、そうした新たな土地利用とあわせた形での防災力の向上を目指す施策が考えられるのではないかと思っております。

 さらに、減殺を考慮した土地利用の規制、誘導措置についての検討も必要ではないかと考えております。

 これは、「研究の背景」です。不確実性が高く、長期的スパンでの対応が求められるこうした災害に対しての体系的な整備が行われていないということがあります。

 それから、これは平常時にも効用を持つような対策を想定していこうということですので、いわゆるノーリグレットポリシーというもののノーリグレットをさらに積極的な取り方をして、巨大災害が生起しない間にも無駄な投資という批判を受けないような施策の構築を図っていく必要があると考えております。

 これは、「研究の概要」です。発生頻度は低いけれども、一たび生起すると大きな被害をもたらす低頻度メガリスク型の災害を対象として、災害時に減殺効果があり、平常時にも社会的効用がある対策を目指していきたいと考えております。

 目的としては、施策の提案、施策の評価手法、地域住民と行政との合意形成手法についての提案という構成で考えております。

 具体的な内容は、以下の5点です。まず、@減殺効果評価手法の開発。Aシナリオがない災害とはいいながらも一定のシナリオが研究上は必要になるので、シナリオの想定。B具体的な効用の評価手法。C合意形成についてのモデル的なケースの提案。そしてD施策のガイドラインの提案という構成で考えております。

 これは、研究のフローで、同じ内容です。

 これは、施策のイメージですけれども、先ほど申しましたような既存港湾施設、森林・植林等々による物理的な効果。それから、減殺を考慮した施設配置や土地利用など、いわば、もう少し総合的な施策体系を導入することにより、臨海部地域全体の防災力をより高めるような総合的な対策という方針で考えております。

 これは成果の活用方針です。対策の多様化、2点目として安全性・減災力の向上のみならず、沿岸域環境、都市居住環境等の改善。それから、アカウンタビリティの向上。最後の点として、減災効果の早期発現が考えられるかと思います。

 それから、研究実施上の課題ということで、一つは、効用を期待する期間、発生する対象がそれぞれの効用で異なってくる。こういうものをどのように統一的な視点で評価することを考えていくかということがあります。

 もう1点は、これは連携の対象となってくるわけですけれども、より高度な3次元的なシミュレーション手法等について、外部との連携を図りつつ進めていきたいと考えております。

 実施体制として、独法港空研、大学、地方整備局、地方自治体等と連携しつつ施策提言をまとめていくことになるかと考えております。

 これは研究マップですが、実際上、個別のエリアで幾つかの先行的な部分がありますけれども、現実には、こういう視点での減殺効果の研究は行われていません。したがいまして、ここでは、現象についての分析にかかわる部分、被害予測手法の開発、政策化に向けての評価手法の開発といったようなところは既にできておりますけれども、この矢印の区間につきまして、今回の研究の対象エリアとして検討を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます

(課題説明終了)

(主査)どうもありがとうございました。

 それでは、今のご説明に対して、何か質問あるいはコメントがあればお願いします。

(委員)低頻度で発生するものであるならば、ここは災害の大きさをベースにして研究を進めていただきたいと思います。ご紹介の事例はインドネシアとか奥尻島、写真が出ていたのは○○港でしたね。けれども、東京湾とか大阪湾といったところに津波の被害が出たときには、かなり甚大な金額になると思いますので、ケーススタディ地区を選ぶ場合も、ぜひ大都市圏のことも考慮していただければと思います。

(主査)どうもありがとうございました。

 何かお答えがありますか。

(国総研)ケーススタディにつきましては、まだ具体の想定をしていませんけれども、○○港がいろいろ先行して検討していた例もありましたので、ここでは例として使わせていただきました。ご指摘のとおり、一番のポイントになるのは、大都市域の、とくに土地利用等が港湾的な利用からどんどん変わってきているようなところが一番大きなポイントとして考えなければいけないような対象エリアになるのではないかと思っております。

(委員)低頻度メガリスク型の沿岸域災害のイメージが、みんなで一致しているかどうかちょっと気になるところがあります。というのは、東南海とか南海地震が起き、西日本の海岸に甚大な災害が起こることが強くインプットされています。そういう目で見ると、メガリスクというのはそういうところにあるような気がしています。

 しかし、神奈川県の相模灘の沿岸で、津波とか高潮のどういう災害があり得るかというシミュレーションをしてみると、決して、東海とか東南海ではなくて、例えば南関東地震の断層が動いたらどうなるか、最近出てきた沖縄・国府津―松田断層が動いたらとか、地域の目から見ると、大きなリスクがある災害というのは、今までのイメージとは少し異なるような気がします。

 台風の経路も、かつては常識的な経路を動いてくれていたのですが、最近はこれまでと異なる動きをする台風が出てきて、そういう面からシミュレーションしてみると、今までの常識とはちょっと違うリスクがあるかなということが、具体的に、例えば神奈川県西部とか神奈川県東部とかいう地域を指定すると変わってきていると思います。その辺の、メガリスク型沿岸域災害のイメージを、まず地域の目から見るのと、日本全体から見るのとでは違ってくるような気がするので、その点をはっきりさせてから検討を始められたらと思いました。

(国総研)ありがとうございます。

(委員)私も、メガリスクということについてどういう視点で考えるのかなと思います。海岸だけではなくて、交通、経済、いろいろな分野に影響を与えるわけで、そうしたものをどのように定量化するのかというところで、三次元シミュレーションを一つのツールにしようとしておれらますが、それで何が見えるのか、どういうリスクなり、或いは、どういう効用を見ようとするのかということが、いただいた資料とご説明でははっきりわからなかったという気がしています。

 それと、効用ですけれども、どのように定量化したり、比較したりするのか。多様な効用とおっしゃっていますけれども、それをどのように定量化して比較して、トータルとして積み上げていって、それと対策のコスト、起こり得るメガリスクとどう対比させるのか、その辺がクリアではないという気がしています。

(主査)今出た2つの質問についてお答えいただきたいと思います。メガリスクの概念をどう想定するかというのは、どちらかというと研究の入り口で、最初のシナリオの設定をどのようにするかという話で、今、○○先生から言われたことは、研究のアウトプットというか、最後のところの評価はどのようにするかという話だと思います。今の2点について、お考えを話していただけますか。

(国総研)○○先生からご指摘いただきました点については、ここでは、計画外力を上回るということで考えております。一つ端的な例で変な話ですけれども、とある津波防波堤が整備されている港湾で、実は、断層の想定、地震の想定を見直すと、その津波防波堤が存在するにもかかわらず、ほぼ市域全体が浸水してしまうというところがあります。これはシナリオは変わったということですけれども、それ以外でも、実際に起こり得る現象の不確実性、確率な評価に伴ってどうしても出てくるエラーといいますか、外力評価との関係で、超過外力を上回るようなものを想定しておいたような対策についても、新たに検討していくべきではないかという提案をここではしたいと思っております。

 この話を敷衍しますと、○○先生からご指摘いただいたとおり、地域によって想定すべき災害の姿は当然違ってこないとおかしいはずでし、それに伴ってその地域で、超過外力を考えたときにどういう現象が起こるのかとなると、それもまた地域ごとで様相が変わってくるかと思います。

 ですから、まず、研究の入り口として、メガリスクはあいまいなイメージだというご指摘をいただいていますが、まずそこの明確化から取りかかせていただく必要があろうかと思います。そのためには、過去の事例とか、どういう対策がとられてきたかに基づいての地域ごとの防災形態の分類のようなところからスタートする必要があるのではないかと思っております。

 それから、○○先生にいただいたご質問は、まさにこの研究を進めていく上でのメインテーマになるところではないかと考えております。実際にご指摘のとおり、直接的な施設費があり、都市的な機能、社会的な機能、経済的な機能の被害のそれぞれをどう評価して足し合わせるかということ自体についても、まだ十分な知見が得られていないところですし、さらに利用の効果、環境の効果となると、プレゼンの中でははしょってしまいましたが、それぞれの効果なり効用なりで、効用を享受する対象の地域も違えば、そこに居住している方々も違うし、効用を享受する期間、その効用が発現される期間も違ってまいります。それぞれについては、既存の研究がある程度進んでおりますけれども、ここにつきましては、研究体制としてはどういう形になるかわかりませんけれども、土木計画、経済学、特に厚生経済学等をされている先生方のご意見なども伺いながら、進めさせていただきたいと考えております。

(委員)キーワードの一つに、ノーリグレットポリシーとの言葉を提案されています。この考え方は面白いと思うのですが、実際にこれを定式化しようと思うと、なかなか難しいですね。この問題に取り組もうと思えば、情報をどこまで後悔して、どこから後悔しないのか。また、基準をどのように考えていくのか。多分、そこにはいろいろな形の合意形成の問題が介在してくるように思います。その意味で、評価の枠組み自体をどう作るのかを考えると、相当本腰を入れて取り組まないといけないように思います。

 特に、7ページの14番で三次元シミュレーションの図が出ていますが、右の図を見ていると、建物が浸かっていますね。たとえば、この図を後悔するのか、後悔しないのかという問題を考えたときに、情報の後悔に関する基本的な考え方や評価の見方というか、そのような基礎的な部分に関する研究が不可欠だということが理解できます。このような基礎的な部分に関する研究に関しても、十分な配慮をお願いします。

(主査)関連したご意見だと思いますので、順番にどうぞ。

(委員)先ほどもメガリスクの概略をどのくらい考えるかというお話で、私としては専門外ですが、リスクの話とダメージの話は、ちょっと違うのではないかという気がします。つまり、たまたま、さっき○○先生とお話ししていたのですが、先日の千葉の地震で震度5のところもあったのですが、かなり被害が大きくても当たり前というか、可能性が高かった地震であったにもかかわらず、そんなに物理的な破壊が起きたという報告はないですね。

 つまり、リスクは大きかったけれども、ダメージは少なかったことから考えると、リスク評価とダメージの評価は違う面があるのではないかという気がします。これだけ大きな津波が来る危険性があることと、その津波が起きたときに起きる災害の程度は、津波が襲う場所によって違ってくると思います。それはやはりケーススタディすれば少し明確になると思いますが、災害の規模は、やはりダメージプライスというか、そちらのスケールで計測するものかなということが、私の率直な感想です。そうすると、ここでも議論されているノーリグレットポリシーのように、どこまで対策をするのかというインベストメントコストの話と、その時間とかスケールの話が当然出てくる。

 もう一つは、ダメージを受けた後のリカバリーコストです。復旧コストをどう考えるか。全部メガリスクなりに対応できるとは限らない部分が当然残るので、そこの復旧に関するコストも当然評価の対象にすべきではないかという気がします。

 そのときに、先ほどちょっと気になったのは、例えば、エネルギー施設などを集約するという言葉があったのですが、もしそこが一発でやられたらものすごいダメージですよね。だから、分散化することによるダメージの軽減化も一方では、いわゆるストラテジーというか、そういうことでは考えることではないかと思いますので、そのことも視野に入れていただければと思います。

(委員)2つコメントがあります。一つは、先ほどから出ていることで、効用が多様であるという言い方がされていて、それはそうだと思いますが、効果は多様に出てくるので、それに合わせて効用も多様に出てくるという理解だと思いますけれども、経済学の概念ではちょっと違和感があります。主体が違えば、別に多様でもいいのですが、同じ主体の中での効用の多様性というと、効用が全部線型で結合できるようなイメージを持ってしまいます。それには若干の抵抗があるというのが私の感想です。

 もう一つは、先ほど○○先生がおっしゃっていた、ノーリグレットポリシーはどのようにフレームをつくるのだろうということで、直感的な話で恐縮ですが、経済学の概念でスーパーフェアというものがありまして、今から20年ぐらい前にボーモルという人が厚い本を書いています。スーパーフェアとはどういうことかというと、ノーリグレットではなくてノーエンビです。2人の主体がいたときに、それが、例えば所得の分配が公正か公正ではないかというときに、相手の立場に立って自分の立場をうらやましいと思うか思わないかという基準で、もしも思わなければ、それは公正だと。そういうものがあります。

 今の話にももしかしたら適用できるのかなと思った次第です。要するに、何かあったときに、ノーリグレットとそうではない状況で、後悔しないかどうかを基準にするというのは、同一個人の2つの状態間を比較すればいいから、そういうフレームがもしかしたら使えるかもしれないということを直感的に思いました。

 以上です。

(主査)どうもありがとうございました。そろそろ時間ですのでまとめたいと思いますが、その前に一つだけ、前提としてお伺いしたいのですけれども、この研究は何年先までの問題を考えておられるか。要するに、メガリスクといっても、今すぐに起こるとは考えていなくて、今後10年ぐらいの間で起きることを考えているのか、50年先なのか。相当長期のことを考えるのであれば、社会もどんどん変わってきて、人口も減少すると言われていますよね。そういう社会条件の変化などもあわせて検討しないと、リスクとかダメージの様相がだいぶ変わってくるような気がします。そういう時間の想定は何かされていますか。

(国総研)実際の災害が発生する確率なり、リスクなりということで考えていくと、数十年あるいは100年にまたがる話だと思っております。ただ、それ以外の、実際にとる施策の効果、平常時の効果なり通常時の効果については、投資後直ちに発生するような性格のものになるかと思います。そこの時間的な違いをいかに吸収していくべきかも大きな課題だと思っております。

(委員)ノーリグレットというのは面白い概念ですが、災害が起こればだれもリグレットしない。起こらない場合にリグレットする可能性があるわけで、それを最小限にするためには、途中でおっしゃっていた、平常時にも何かの社会的効用があることをどこまで説明できるか、に係っているように思います。私にはまだ具体的なイメージが湧かないのですが、いろいろ考えておられるようなので、その辺に力を込めて議論されることを望みます。

(主査)それでは、このテーマに対する評価をまとめさせていただこうと思います。今伺った意見の範囲では、将来のリスクに対してどう備えるかは重要な課題なので、ぜひ実施すべきである。しかし、実施についてはいろいろ考えていただく点があるのではないかという方向だったと思います。特に、メガリスクとはどういうものを想定するのか、或いは、影響とか効果の評価をどのようにするのかという点が問題になります。あと、施策の中身として、ノーリグレットな施策を打つときに、そのあり方、中身はどういうものかなど、いろいろなご意見が出たと思います。その辺をさらにクリアにして実施する方向で取りまとめたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。

(異議なし)

 それでは、どうもありがとうございました。

 一つ飛ばしてしまいました。評価した後で聞くのでは順序が逆ですが、事前にいただいたご意見についての説明をお願いします。

(国総研)第一部会の○○先生からご意見をいただいておりまして、課題としては早急に進めていただきたいということでの評価をいただいております。ただ、今のご議論と一緒で、施設機能が平常時にどのような利用を想定しているのか、もう少し明確にしておきなさいというご指摘を受けております。

 それから、他分野での社会実験等の考え方も参考にしながら、合意形成のあり方等についての検討を進めなさいというご意見をいただいております。

(主査)どうもありがとうございました。

 それでは、次の課題に移らせていただきます。2番目の課題は、「国際交通基盤の統合的リスクマネジメントに関する研究」で、このテーマに関するご説明をお願いします。

 

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〈事前評価A国際交通基盤の統合的リスクマネジメントに関する研究〉

(国総研)空港新技術研究官の○○と申します。どうぞよろしくお願いします。

 私たちが計画させていただいているのは、「国際交通基盤の統合的リスクマネジメントに関する研究」で、平成18年から21年度で、総研究費として80百万円を予定しており、空港研究部と港湾研究部が共同で行うことを考えております。

 まず「研究の背景」です。1点目は、最近では国同士の相互依存関係が深化しており、国際的なヒト移動、モノ輸送の水準が低下すると大きな影響が出ます。これは当然、経済のグローバル化とかSCMというものが背景にあります。

 2点目は、想定すべきリスクの範囲が増大していることです。これは、自然災害、テロ(犯罪)、ストライキ、さらには、工事の品質というものまでリスクに含まれていて非常に広範囲となっています。例えば、大地震、津波、犯罪等があります。

 3点目は、経済が停滞していることから、コスト縮減等の社会的要請が強いということがあります。当然ですが、B/Cの考慮とか減災ということがその背景にあります。

 最終的には、リスク管理・危機管理が重要であることが指摘されております。

 本研究の目的は、基本的には、事故(危機)発生時における人命・施設の安全性、国際交通サービスを確保するための施策の提言をするということです。

 具体的には、ハードとソフトを統合したリスクマネジメントの方策の提言です。まず、各リスクの影響評価手法を確立します。そして、費用対効果の高い合理的な手法を提案します。

 もう一つは、危機管理対策ということです。これにつきましては、人命や施設、社会経済への影響最小化施策を提案します。そして、国レベルでの国際交通ネットワーク確保策を提案します。       

 本研究の範囲はこの図のとおりです。これはリスクマネジメントの一般的な図です。

通常は、危機管理を重要視することが多いのですが、この研究は狭義のリスクマネジメントも含めて、通常時、警戒時、緊急時、この全体を対象としているものです。

 これは損失発生のメカニズムの一般的な図です。まず要因(ハザード)があります。そして事故が発生し、損失が生じます。この場合、損失発生の可能性を「全体リスク」と言っています。たとえば、空港の滑走路の場合には、要因は舗装凍結がハザードで、スリップが事故になります。港湾、空港の全体を考えますと、例えば施設の老朽化がハザードになり、原因は地震になります。この研究は、ロスを最小化するとともに、そのために必要になるハザードと原因の低減にも対応します。このようなことを考えております。

 本研究のフローを簡単にまとめます。最初に、リスクの種類と発生源を特定します。それから、各リスクの分析と評価をするということで、人命と施設の分析と評価、人流・物流に対する評価を行います。それに基づいてリスク対応基本方策を検討します。まず、これの一般的な事項に関して検討しまして、次に、空港・港湾それぞれに対応する事項、ハード面ならびにソフト・ハード両面での対応事項を検討します。そして、総合してリスクマネジメント方策の提案をします。この次のステップが危機管理で、危機管理基本方針を検討し、危機管理方策の提案をします。最終的には、危機発生時の国際ネットワーク確保策の提案をします。このようなことを考えておりまして、リスクの特定、分析評価、リスク対策、危機管理といったものについて統合的に検討しようと思っています。

 具体的な内容に入ります。

 これは「リスクの種類と発生元の特定」を表した図です。リスクには、一般的に自然災害、施設崩壊、事故、犯罪・ストの4つがあります。これにつきまして、まずリスクの種類と発生源を特定します。リスクには、このような自然的な側面があったり、技術的側面があったり人的側面があるということですので、それぞれリスクの種類と発生源を特定することが第一歩になります。

 次に「リスクの分析・評価」で、人命や基盤内施設の被害程度の分析をします。さらに、人流・物流に及ぼす影響の分析をします。当然、これは過去の事例分析をまず行うことが第一歩ですので、空港の場合には、例えば航空機の事故があった名古屋空港、災害があった伊丹空港、犯罪があった羽田空港を対象とします。港湾の場合には、災害があった神戸港、アメリカであったストライキを対象にしております。

 次にリスクの具体策です。発生頻度と損失の大きさに応じて、A、B、C、Dでリスクの大きさ、リスクの定量化を図ります。

 これは一般的な図ですが、例えばこのような発生頻度が高くて損失も大きいものは、それを回避するための努力をしたり、このような両方とも小さなものは保有してもいいのではないかということがあると思います。

 具体的なリスクマネジメント施策(ハード)につきましては、このようなことを考えております。まずは既存施設の増強を図ります。これは、今まで防災の観点からは行っていたと思いますけれども、それに加えて減災の観点からのものについても対策を考えます。

 それから、施設の冗長化。例えば、空港などの例をとりますと、管制システムなどは多重化していますが、それも含めて土木建築系はこういうことはほとんどされていませんので、このような施設の複数化についての研究を行います。

 それから、これは危機管理にもつながりますが、復旧方策ということも行おうと思っております.これは応急復旧システムに対応します。

これは、ソフトに関するリスクマネジメント施策です。現時点では港湾を対象にしていますが、リアルタイムでの情報共有・提供システムを構築します。まず、各輸送モードの復旧・利用可能状況の情報を共有するとともに、輸送可能経路のユーザーへの情報提供を行います。

 次に、被災時のネットワーク途絶の影響度評価ということで、リスクの種類ごとの影響をシミュレーションして、その対策を講じます。

 最終的には、国際物流ネットワーク機能の復旧方策を講じます。

 次に、危機管理の施策のイメージですが、まず、1点目は、個別施設ごとの対応ということで、対策と応急復旧を行います。対策の体制、対応策の策定、対応策実施システムです。

 2点目は、報知システムです。周知システム、外部連絡体制をとります。

 3点目は、避難・誘導です。避難・誘導体制を考えます。

 また、ソフト的なものは国レベルでのネットワークの確保ということがあります。例えばこの港湾に被災があった場合、こちらの港湾を使うなどといったような施策を考えることです。

 次に、本研究の成果とその活用について示します。まず、ハード・ソフトが一体となったリスクマネジメントの実施を行います。それから、危機管理マニュアルの策定をします。双方によってリスクとロスの最小化を図ります。人命の確保を図りますし、国際輸送の安全性・安定性の確保を行います。最終的には、経済損失の最小化を図ります。

 本研究の年度計画はこのとおりです。最初に、平成18年度からは、リスクの種類と発生源の特定と分析を行います。平成19年度からはリスクマネジメントについての研究を始め、平成20年からはリスクと危機管理の両方の施策の策定をします。最終的には、平成21年度に、この総まとめをすることを考えております。

 事前に他の委員からいただいた意見を紹介させていただきます。

 まず○○委員からの意見として、内容が簡潔すぎるということを頂きましたので、資料の一部修正して具体的な内容がわかるよう書き直しをしております。

 ○○委員からは、平成21年度終了では時間がかかりすぎるとのご意見を頂きました。これはそのとおりかもしれませんが、4年間で全部答えを出すということではなくて、成果が出次第随時発表していきたいと思っておりますので、これによりご意見には対応できるのではないかと思っております。

 以上でございます。

(課題説明終了)

(主査)どうもありがとうございました。

 それでは、早速、ご質問をどうぞ。

(委員)テーマは大変面白いと思いますが、もう少し絞ってほしいと思います。リスクで、事故や故障、うっかりミスで飛行機が1機、2機飛ばないというのはよくあることで大したことはないわけですね。国際交通基盤と言うからには、数日間以上空港が封鎖されるとか、港湾が使えないとか、先ほどの話ではないですけれども、メガリスク的なことが起こったときにどうするか。長期的或いは広域にわたるものが重要ではないかと思いますので、そちらにもっと重点を絞っていただいてはどうかと思います。

 例えば、自然災害で臨海空港、関空とか中部空港がやられたときにどうするか。今ちょっとお話があったのですけれども、例えば24時間空港と昼間しか飛べない空港がありますけど、昼間しか飛べない空港を飛べるようにするとか。ですから、ハードの整備・修復だけではなくて、被災していないハードをいかに生かすかということをもう一度考えていただいたらいいのではないかと思います。

 統合的リスクマネジメントということですけれども、リスクマネジメントを予見して回避することと危機対応、いろいろな代替案で対処することと保険とか補償ということもあると思いますが、そうしたリスクマネジメントの中の統合的な話と、もう少し対応する側の統合的な、例えば海上保安庁や警察、自衛隊、場合によってはアメリカ軍、そこまで助けを求めないといけない場合もあるでしょう。

 ですから、国際交通基盤の統合リスクマネジメントといったときに、余り細かなところをやっても仕方がないと思うので、国の生死にかかわるとまではいかなくても、国がかなり損失をこうむる場合にどうするかというほうが、メリハリがあっていいのではないかと思いました。

 以上です。

(委員)4点あります。1点目は、リスクマネジメントというのは、だれがリスクをマネジメントするのかという主体を分けて議論しないと話が前に進みません。特に、港湾・空港というのは、港湾管理者や地方自治体など、関連するステークホルダーが多数存在します。したがって、リスクマネジメントを実施する際には、まず関連する主体間でのリスクシェアリングの関係を最初にきちんと整理されることが重要だと思います。

 2点目は、今度さらに危機管理の話に関連しますが、港湾・空港のマネジメントの場合、管理している施設が正常に機能していても、パートナーである相手の港湾や空港が機能しなくなったため、その影響で機能が麻痺してしまうという問題が起こります。つまり、パートナーのダメージレベルというか、それによって危機管理の態勢が変わってくる可能性があります。港湾・空港は複雑なシステムなので、そのようなシナリオに関する検討も、ぜひお願いしたいと思います。

 3点目は、2点目の話と関連するのですが、国際的交通基盤のリスクマネジメントを考える場合、たとえば、飛行機も離陸したら着陸しなければいけない。このように、必ず自分と相手がいることを考慮する必要があります。自国の問題が原因となって起こる被害もありますが、相手国の問題が原因となって起こってくる問題もいろいろあります。相手国がどういう問題を負ったから自国がこういう態勢をしなければいけないと。そこまで枠組みを広げていただきたいと思います。

 最後は、テロの話になってくると、これは発表できない分野が出てくると思います。研究されたけれども、発表できないというか、これからまたそれを研究しなければいけないという新たな問題が出てくると思いますが、よろしくお願いします。

(委員)本件にどこまで関連するかわからないのですが、先ほどの低頻度メガリスクの研究も似ていたので申し上げます。国総研の最近の研究テーマを見ていると、リスクマネジメントと合意形成が大きなキーワードになっているように思います。他の部会でもそのようなテーマが多いようですので、個別の研究を進める一方、上記2つのキーワードについては国総研の中で、何らかの調整をしたほうが良いと思います。ある研究部門で考えているリスクマネジメントと別の研究部門で考えていることが理論面で大きく違っていたり、成果としての合意形成の手法が著しく違っていたりするのはいかがなものでしょう。研究の効率としてもまずいと思います。テーマごとに個別の事情があるにしても、基本的には国総研としてはこういう見解ですというものをつくられたほうが良いと思います。

(委員)先ほど、自然災害に対するリスクマネジメントの面では、かつて既往最大と言う想定外力を設定してやっていたものを、最近は、シナリオを設定して力学的な精緻なシミュレーションを使って予測していくということがありました。今回のお話は、同じように、これまでに起こったものだけではなくて、新たにシナリオを設定してシミュレーションして、リスクを評価しましょうという話だと思います。先ほどの自然災害の場合には、津波にしろ、高潮にしろ、極めて精巧に出来上がった力学のメカニズムの上に出来上がったモデルがあるのですが、この場合のリスクモデルは、恐らく、行動選択モデルみたいなものになって、必ずしも、信頼できるモデルが今のところは構築されていないような気がします。ですから、シナリオを選択してシミュレーションをしていくときに、自然外力の評価とは違う難しさがあり、どんな行動選択モデルを作っていくのかということも含めて難しい課題を背負ったなとお見受けしましたので、どうぞしっかりがんばってください。

(主査)今、いろいろな観点からご質問が出ました。○○先生からはリスクの重点化という話、○○先生からは、リスクマネジメントに関する主体とか危機管理の場合のパートナーというか、相手あるいは相手国はどうするのかという話。それから、○○先生は国総研全体の話ということでご意見をうかがって、○○先生からはシナリオをどうするのかという話、その辺について何かお答えがありますか。

(国総研)本研究は、現時点では着手する前ですので、事前の準備がまだ十分には進んでおりません。本研究のリスクの範囲としましては、想定できるものということを考えました。犯罪のうちのテロとか戦争は範囲外にさせていただいて、定量化できるところからまずはスタートしようと思っております。

 それ以外につきましては、現時点では準備が十分にはできておりませんので、研究着手までには今後勉強していきたいと思っております。

(主査)ほかにいかがでしょうか。

(委員)先ほどもメガリスクの話があったのですが、今回の場合はかなり人的な要因が絡むところがあって、もちろん自然の外力によるものもあるでしょうから、ふだんから気をつけるというか、警戒するという点が、もちろん地震に備えるということもあるでしょうけれども、そこに関しては、先ほど行動モデルのお話もありましたが、やはり人間の意識の問題もあります。何をハザードとしてリスクの原因として考えるかということはだいぶ書かれているのですが、それに対してどの程度警戒するのかという警戒水準は必ず想定するわけですよね。それに対して、どのハザードの、どのレベルに対して、どういうセキュリティを考えるかという仕組みが基本的には多いと思います。こういう枠組みで行くのか、それともそれ以外のもので考えるか。

 例えば、日本の建築物は、基本的には耐震設計と消防法による火災対応が基本です。だけど最近、いわゆるセキュリティ会社などは、それに追加して侵入盗犯にどう対応するかということでサービスを売っていますが、これ以外のハザードに対してはまだまだお金もかかったり、基準がなかったりして対応していないわけです。例えば建物の設計などでも、空港などは建築設計は相当重要だと思いますが、警戒水準に対応した建築上の対応ができるかというと、日本はまだ相当曖昧だと思います。

例えば、普段、私どもが大学などで使っている研究上の建物でも、バイオハザード的な可能性がある研究をやっている部屋のリスク管理は、その部屋から出ないということしか考えていません。そこから部屋に広がったとき、廊下でどう遮断するかということは建築設計上対応していないし、廊下に扉をつくることは、建築基準法上非常に難しいという問題もあります。

 このように、どういう問題がどういうタイミングで起きたときにどこまで止めるかということに対して、港湾の場合は相当違うと思いますが、施設設計上どういう対応を考えるかということも、場合によっては検討しなければいけないことだと思います。

(委員)配付していただいた資料の研究実施体制と関連研究の状況を見ると、ゼロから始めようという態勢かなという認識です。4年間でこのような年度計画を本当にできるのかなと。単純に、もう少し連携先をはっきりと決めておくとか、その辺の十分な準備態勢が必要かなという印象を持ちました。

(主査)今、いろいろな先生からいただいたご意見の中では、ここで書かれていることがかなり一般的な面があって、どういう施設、空港とか港湾のどのようなリスクを対象にするのか、だれが主体になって、どのような対策を考えるのかとか、現時点でも準備としてある程度整理できるのではないかという面、今のご意見も含めてそのようなことがあったと思います。それを、今後さらに研究計画として練り上げていかれるときに、どのように研究の焦点を絞るか、具体化するか、その辺については何かお考えがあればお答えいただければと思います。

(国総研)現時点では、各行政組織にいま調査を行っている段階で、その辺から第一歩をいま始めております。その次のステップとしては、産学官の連携をとるとか、その辺の得意分野の組織なり何なりと一緒にやっていこうと考えております。

(主査)そのほかに何か追加のご意見はございますか。

 それでは、先ほど他の分科会の委員からのご意見の紹介もありましたので、とりまとめをさせていただきたいと思います。

 このテーマは、昨今の国際的な情勢などもあって、是非、基幹的な交通施設の安全性を確保する必要性が高く重要なテーマであるという点では、皆さん、やる必要があるという認識だったと思います。ただし、課題の整理とか、研究計画をもっと具体化するという点では、しっかり準備をして研究に取りかかってくださいという方向のご意見だったと思いますので、そのような形で実施するということで取りまとめをさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 よろしいでしょうか。

(異議なし)

 どうもありがとうございました。

 それでは、最後に3番目の「温室効果ガス削減を目指した空港環境マネジメントに関する研究」のご説明をお願いします。

 

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〈事前評価B温室効果ガス削減を目指した空港環境マネジメントに関する研究〉

(国総研)「温室効果ガス削減を目指した空港環境マネジメントに関する研究」のご説明をさせていただきます。

 プロジェクトリーダーは空港研究部長ですが、本日は都合により、私、空港計画研究室長の○○からご説明させていただきます。よろしくお願いします。

 温室効果ガスの削減に関しましては、今年2月に発効した京都議定書により、日本の場合、2008年から2012年までの5年間に、90年と比較して6%削減するという目標が設定されております。我が国におけるCO2 の排出割合を示したものがこちらのグラフです。

 全部門に占める運輸部門の割合は22%で、産業部門に続いて大きなシェアを持っています。この運輸部門の中で、さらに航空がどのくらい排出しているのかということですが、国際航空につきましては実態がはっきりしていませんが、国内航空について見ますと、4%という比率を占めております。

 航空界におけるCO2 の排出対策につきましては、これまで航空機の設備の改良、運用方法の改良といったことを中心に行ってきております。具体的には、CO2 の排出量の少ないエンジンを搭載した機材を導入していくといったようなことが各エアラインで行われております。

 また、航法を改良し、なるべく直線的に飛行できるようなルートをとることにより、COの排出削減を図っているということがあります。そのほかにも、各エアラインの自主的な努力によって、航空機の運用の方法を改善して排出削減を図っております。

 こうしたことによって、航空界におけるCO2 の排出量は、人・km当たり、座席・km当たりで見たエネルギー消費原単位は漸減する傾向にあります。しかしながら、我が国における航空需要は伸びが旺盛で、ジェット燃料の消費量自体は逆に漸増しているという状況です。したがいまして、結果的に、航空界におけるCO2 の排出量は増え続けているというのが日本の現状です。

 一方、航空機がCO2 を排出するのは上空だけではなく、地上におきましても、滞在中、すなわち空港においても大量のCO2 を排出していると考えられております。

 こちらに示したグラフは、3年ほど前に調査した結果ですが、羽田空港における実出発時刻から離陸時刻までの所要時間、すなわちスポットを出てからどのくらいの遅延が発生するのかといったグラフです。時間帯によってばらつきがありますが、1日平均で15分ぐらいの遅延が生じている状況です。

 こうした遅延が発生することにより、空港におけるCO2 の排出量に直接的に影響が出てくるという状況です。したがいまして、空港における航空機の移動をなるべくスムーズにさせることが一つとして考えられるのではないかと思います。

 しかしながら、これまで空港における温室効果ガスの排出削減のための対策は検討されてきていません。航空機の改良のみならず、空港でできる有効な対策は様々あるのではないかと考えておりまして、それに関する対策の検討、提案を行いたいというのが本研究の目的とするところであります。

 ここで検討した内容につきましては、空港管理者、空港の関係事業者に提案し、各者

による適切な空港環境マネジメントの実施に資することができるのではないかと考えております。

 研究の内容ですが、大きく3つに分かれております。一つが、空港における各施設、航空機、地上の支援作業機材、いろいろあるわけですが、これらがどのくらいのエネルギーを消費しているのか、さらには、どのくらいのCO2 を排出しているのかといったことに関する実態をしっかり把握しようという部分であります。これを踏まえまして、空港におけるCO2 削減の施策のメニューを提案し、その効果について分析するという部分がこちらです。

 最終的に、これらを踏まえて温室効果ガス削減効果に関する総合的な評価手法を作成するとともに、空港環境マネジメントマニュアルを作成していこうと。これが全体の流れです。

 2番目の施策メニューについて、4点の研究課題を考えておりますが、この中身について簡単にご説明させていただきます。

 まず1点目は、先ほど、羽田の例でもお話ししましたが、空港におけるスムーズな航空機の走行を図ることにより、温室効果ガスの排出削減ができるのではないかということであります。したがいまして、空港における航空機の燃料消費を削減する施設の形状・配置には一体どういうものがあるのかといった辺りを検討し、提案していきたいと考えております。

 こちらに示しているものが一例ですが、高速脱出誘導路という、滑走路に対して斜めについている誘導路を新設あるいは増設することにより、航空機の地上走行距離、時間を短縮することができるということが一つ考えられます。

 また、旅客ターミナルの位置ですけれども、航空機が駐機する位置をなるべく滑走路の中央寄りに持ってくることによっても地上走行距離が短縮できるのではないかといったことがあります。

 わかりやすい例としてはこういうことがありますが、それ以外にも有効な施設の配置形状があり得るのではないかということを検討していきたいというのが1点目です。

 2点目が、空港工事における温室効果ガスの排出削減方策です。通常、空港の工事は夜間に行われています。その対象となる施設を一定期間閉鎖することも含め、そうしたことを前提として、この維持工事を昼間に行うことができないだろうかと。もし、そういうことができるようになりましたら、夜間照明の削減、工事の後に日々復旧作業を行うという手戻り的な作業、こうしたことが削減されることによって温室効果ガスの削減にも資するのではないかと考えております。その効果を定量化し、具体的な工事の実施方策について検討・提案をしていきたいというのが2点目です。

 3点目が、環境対策を考えた舗装材料の適用性ということです。これについては、既にCO2 の排出を削減できる中温化アスファルト、遮熱性舗装といったものが開発されておりますが、これを空港に適用できるかどうか、どのように適用するのか、施工性がどうなのかといった辺りについての検討を行っていきたいというのが3点目です。

 その次が、それ以外の施策メニュー、これまでにないような施策メニューについてもいろいろ考えて提案していこうというものであります。その中身には、規制や各種の優遇策、いわゆるソフト施策によってもそういう削減対策が可能ではないかと考えております。そのため、ヨーロッパなどの先進空港における事例調査を行ったり、或いは、国内についても空港関係者で既に実施している内容、持っているアイデアを調査し、施策メニューの高質化、多様化を図っていきたいということであります。

 研究の期間につきましては、平成18年から21年までの4か年を予定しております。最初の18、19、20年の3か年におきまして、実態調査、施策メニューの提案に関する研究を行っていく予定です。それから、最後の20、21年の2か年におきまして、それと並行して総合的評価手法、環境マネジメントマニュアルの作成といったことに取り組んでいきたいと考えております。

 研究の実施体制ですが、国土交通省の航空局、地方局との連携を図るとともに、研究機関としての独法港空研、大学等との連携を密にしながら進めていきたいと考えております。そのほかに、関係業界の最新の情報も入手する必要があると考えておりまして、本邦のエアライン、舗装関係業界、そういったところからの情報も適宜取り寄せていきたいと考えています。

 これは、研究マップです。航空機からの温室効果ガス排出量削減につきましては、航空機自体の改良は、先ほどご説明しましたように、かなり実用化されております。それ以外の空港施設の形状配置のあり方、工事のあり方、施策の提案、評価といった部分につきましては、今のところ、あまり着手されていない部分で、右側に研究課題番号を書いてありますが、本研究の中で取り組んでいきたいと考えている部分です。

 以上でございます。

(課題説明終了)

(主査)どうもありがとうございました。

 それでは、今のご説明の課題に対して、質問、コメントがあればお願いします。

(委員)3ページ上段のスライドで、「実出発時刻から離着陸時刻までの所要時間」とありますが、これは着陸するまでの、要するに、1機当たりの排出量、運行距離当たりで出したデータはないですか。つまり、エンジンを始動してから止めるまでという考え方のデータ集計はされないのかということです。

(国総研)空港における排出量につきましては、まさにこの研究の中でこれから調査していく形になりますけれども、こちらで示しましたのは出発時の話で、同様に着陸してからスポットに入るまでのデータも作っております。排出量が具体的にどのくらいになるかにつきましては、既にあるデータで仮に試算してみた結果がありますが、地上でエンジンをふかしている間に排出される量と上空で排出される量を比較してみますと、ボーイング747の機材で、空港内が1に対して上空が6〜7、そのくらいの比率になっていると考えられます。

(委員)騒音のほうで、既に機種の改良とか、大型化、小型化、どちらが良いかという議論をされたりしていますが、もう一つ出ているのは、運航頻度とか運航の問題があります。つまり、小型機で頻度を高くしたほうが良いのか、大型機で低頻度で一気に運んだほうが良いのか。日本はジャンボが飛んでいる頻度が高い国だと思いますが、今、エアバス社がもっと大きい飛行機をつくろうとしていますよね。エネルギー効率がどうなのかよくわかりませんけれども、航空会社の経営問題も絡むのでしょうけれども、機種の選定とか運航頻度との関係も考慮しなければいけないのではないかと思いますが、その辺はいかがですか。

(国総研) こちらのスライドでご説明しましたように、例として東京〜札幌間の1座席当たりの排出量ということで比較したものですけれども、下が古い機材で、上に行くにしたがって新しい機材となります。B747がここにありまして、B777があります。これがB7E7ということで、今は787という名前になっていますけれども、2008年ごろに就航する予定のものです。この辺りになりますと、航空機のエンジン自体の性能がかなり良くなっていまして、1座席当たりの排出量はどんどん減ってきています。

 しかしながら、今、ご指摘がありましたように、小型化が進むと運航頻度が多くなるということもありまして、こちらでもご説明しましたけれども、航空需要も旺盛ですし、飛行頻度が増えると、結果的にジェット燃料の消費量は上がってくるということがありますので、事実上、排出量は増え続けている状況にあると思います。その辺りがどのくらいの割合で影響しているのかにつきましても、本研究の中で定量的に分析していきたいと考えております。

(主査) 先ほど数字のご紹介がありましたけれども、陸上にいるときの排出量が1で、空を飛んでいるときの排出量が6〜7ぐらいだと。陸上の値はそんなに大きいものですか。そんなにあるとは予想していなかったのですが、相当ありますね。

(国総研) これはあくまでも試算で、標準的な地上滞在が何分ぐらい、上昇が何分、上空が何分という設定された項目ごとに、それから、それぞれのステージでどのくらいの燃料が消費されるのかというICAOのデータがありまして、それをもとにはじいてみた結果でございます。

(主査) あと、一つだけ、情報ですけれども、気候変動に関する政府間パネル、IPCCが2002年か2003年頃に出した、「航空機が排出する温室効果ガスとその対策について」というレポートがあります。ご存じですか。

(国総研) 1999年の特別報告書ですね。

(主査) それです。そこで、航空機が飛んでいる最中の排出についてはいろいろ評価がされていますが、ご存じならいいのですが、そういうものも参考にされたらいいのではないかということです。

(国総研) はい。これが1999年のIPCCの特別報告書で、ここの中で、CO2 排出に関する報告の要旨が幾つか出ております。1990年から2050年までに、燃料消費量、すなわちCO2 の排出量は1.7ないし3.8%の割合で伸びていくといったようなこととか、航空におけるCO2 の排出量は確実に増加して、2050年には92年の1.6ないし10倍、これはシナリオの設定の仕方によって幅が広いのですけれども、こういったことが予想されるというようなことが載っております。この資料の性格は、ICAOの要請によってIPCCが検討したという資料でございます。この内容につきましても、参考にしながら進めていきたいと思っております。

(委員) 最初にお見せいただいた図、参考資料1ページの図1、図2ですけれども、運輸部門の排出割合が全部門の22%という話で、それに加えて国内航空が4%ですから、掛けると0.88%、約0.9%ですね。そこで、空港で一生懸命にがんばって10%削減したところで、0.09%ぐらいの貢献しかないわけです。だから、社会貢献として、これを一生懸命にやっても‥‥。確かに、空港から出るCOを減らすというのは、それは計量したらいいと思いますが、全体としてどれだけの効果があるのかなということが言えるのではないかと思います。

 空港の広いスペースを使って、代わりに太陽電池を散りばめるとか、滑走路が太陽熱をすごく吸収するわけですから、それを何とかうまく生かすとか。減らすことを考えるのも一つですが、逆に、空港の広いスペースを利用していかにエネルギーを生み出すかという視点もやっていただいて、それで比較してみて、減らすよりもエネルギーをセーブできるんだなとか、つくりだせるんだなとか、そっちのやり方もあるのではないかという印象を受けました。

(国総研) おっしゃるとおり、これを掛け算しますと、約0.9%ということで、率としては確かに小さな数字かと思います。全部門の中での1%未満ということになっております。しかしながら、この地球環境問題、温室効果ガスの排出削減という問題は、全世界的に非常に問題になっていることでありまして、日本の中においても各分野が努力しているところであります。確かに空港での排出量を削減したところでどのくらいの効果があるのかという話もありますけれども、少なくとも空港の分野につきましても、排出量の削減に資することは努力していくべきだと考えておりますし、そのために何ができるのかということで研究することは意義があると考えております。

(主査) 今おっしゃった、太陽電池を置くとか、有効利用、省エネとか、そういう方向での検討はどうですか。即座にこの場でやれということではなくて、言いにくいことかもしれませんけれども、いかがですか。

(国総研) 今回は、ガスの排出削減をテーマに考えておりますが、確かに、おっしゃられますように、エネルギーという観点からは、空港でどういうエネルギーを作っていけるのかということも重要な観点かと思います。この研究の枠組みになるか、また別の枠組みになるか、そこは検討したいと思いますが、研究テーマとしては有益なご示唆をいただいたと思っております。

(委員) 空港サイドでのいろいろな意味でのCO2 削減について、3つ、4つ書いておられるのですが、1番目の飛行機のスムーズな走行について、もし、今よりもスムーズに走行できるのであれば、なぜ今までやらなかったのか。今15分かかるというのは、ぎりぎりまで短くしようとした努力の結果だと思います。それをどの程度さらに短くできるか興味深いのですが、実効性がどうかなという感じがします。

 それから、その次にあった昼間に工事をするということも、夜間照明を減らすという効果はあるでしょうけれども、昼間にすることによる逆の問題も当然出てくるでしょうから、興味深いけれども、実効性はどうかなと思います。

 それに対して3番目の新しい舗装材料。これがうまくいけば、非常に画期的で興味深いのですが、これについてはどのような見通しでしょうか。中温化アスファルトと書いてありますが。

(国総研) 施設の改良につきましては、高速脱出誘導路でわかりやすい例をご説明させていただきました。また、羽田における遅延のお話もさせていただきました。1点目は、航空機の量が増えてまいりまして、混雑にかかってくるものだと思います。高速脱出誘導路をつくることによって、飛行機の地上走行時間を短くできるという効果はあると思いますが、やはりそれがある限度を超えますと、それだけでは対応できない部分が出てくると思います。その例がまさに羽田で、容量が限界に達しつつありますので、高速脱出誘導路は羽田にたくさんありますけれども、それだけでは十分でないという状況かと思います。

 それから、昼間の工事に関して、先ほどのご説明の中で申しましたように、夜間照明の削減とか、手戻り的な工事は日々、工事が終わった後に復旧して、翌日も使えるようにという作業をしておりますので、その辺でかなり非効率なことをやっているのではないかという考えがあります。ここでは、そこの施設を一定期間クローズして昼間にやってしまうという考え方はどうかということで提案させていただきましたが、おっしゃるように、確かにデメリットも出てくると思います。その施設を閉鎖することによるデメリット、例えば危険性があると思います。その辺りにつきましては、提案するに際しまして、その効果、メリット・デメリットを整理して、その分析を行った上でやっていきたいと考えております。

 それから、中温化アスファルトにつきましては、道路の分野では既に開発されて使われているものかと思います。それを空港の分野ではまだ実用化していないわけですけれども、これを空港で適用できるかどうか。恐らく、できないことはないと思いますが、それを具体的にどういう条件でやっていくのか、施工性を高めるためにどうしたらよいのかといった辺りについて検討していきたいということでございます。

(主査) それでは、他部会の委員の先生から何かご意見が出ていれば、それを簡単にご紹介いただければと思います。

(国総研) 他部会からは、第一部会の○○委員からご意見をいただいております。お手元の資料で大きく2点書いてありますが、論点としては3つあろうかと思います。

 まず1点目は、施設の配置を変えることによって燃料消費を削減することについては、既に空港施設は効率性を考慮してつくられているのでなかなか難しいのではないかと思われますが、しかしながら、工事の効率化、舗装の見直しといったことも含めた総合的な対策として考えることは、意味があるのではないかというご意見をいただいております。

 2点目として、温暖化ガスの排出抑制は急がれる課題ですので、空港全体を考えた総合的な対策をとることは国の責任としてやっていくべきではないかというご意見をいただいております。

 3点目として、舗装の関係の話です。既に道路部門での研究がいろいろ進んでいるので、舗装につきましては、道路部門で適用ができないものでも、空港では適用できるかもしれないので、そういったことについて検討する価値があるのではないかというご指摘と、舗装関係の部門との研究の連携についても検討してほしいというご意見をいただいております。

 以上でございます。

(主査) どうもありがとうございました。最後の舗装の問題ですけれども、私、2〜3年前からこの評価委員会に参加させていただいていて、A380ですか、2階建ての大きな飛行機が着陸するようになるので、空港の舗装も見直さなければいけないという研究が今進行中だと思います。そういうところとの関係もあると考えてよろしいのでしょうか。それともまた別の話ですか。

(国総研) 舗装に関する研究の切り口としては、A380対応のもので、大型の荷重に対して今の舗装がもつのかという視点がございまして、それは別の研究でやっておりますが、それとは別の視点で取り上げたいと思います。

(主査) どうもありがとうございました。

 それでは、今のご説明に対して、委員の方々から、一つは、空港での炭酸ガスの削減が、絶対量としては大きな比率を占めないので、明確な結果を出して、社会的にもきちんと説明ができるような研究成果を出して欲しいというご意見がありました。舗装とかそういう面について、さらに他の分野との成果も応用しながら進めたほうがいいのではないかというご意見もありましたが、全体としてはやるべきだというご意見が多かったと思いますので、そういう方向で進めていただくということでいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。

(異議なし)

 それでは、よろしくお願いします。

 全体の評価報告書ということですけれども、3つの課題についてそれぞれ推進すべき、実施すべきという評価をしていただきます。その中身につきましては、それぞれの議論の時点で私、若干のコメントを申し上げましたが、本日の議事録をもう一度見せていただいて、その中身を正確に反映した形で評価報告書をつくるということで、私に一任をしていただくということでいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。

(異議なし)

 それでは、よろしくお願いします。

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〈事後評価の取りまとめ〉

(主査) それでは、最後の議題で、(4)「プロジェクト研究の事後評価の取りまとめ」を行いたいと思います。

(事務局) それでは、事務局から説明をさせていただきたいと思います。

 先ほどご記入をいただきました評価シートをとりまとめさせていただきました。項目としては2つありまして、「研究計画実施方法、体制等の妥当性」というものですが、「適切であった」が2名、「概ね適切であった」が6名、「やや適切でなかった」が1名でございます。

 もう一つの項目の「研究の成果及び目標達成度」につきましては、そこにありますとおり、「目標を十分に達成できた」が1名、「概ね目標を達成できた」が7名、「あまり目標を達成できなかった」が1名でございます。

 それから、各委員からコメントをいただいておりますので、それにつきましても簡単にご説明させていただきたいと思います。

 まず、東京湾の物流機能(海運、港湾等)との調整こそ重要であり、その点が明確に扱われていなかったというご意見。

 アウトリーチ活動を促進すべきである。特に国際的なレベルに向けて発信すべきであるというご意見。

 一般市民の水辺、水際へのアクセス性に関する研究の充実が今後望まれるというご意見。

 要素技術を総合化し、政策提言に結びつけるためのマネジメント技術であるとか、合意形成に関する技術の開発が今後残された課題であるというご意見。

 社会科学分野の研究については、学会などの議論を参考にしていただきたいというご意見。

 自然環境の理解、政策ツールの開発においては大きな成果があった。それを東京湾全体の環境形成や管理に統合する上での課題に取り組んでいただきたいというご意見。

 課題が広いテーマなので、若干、的が絞られていないとの印象があったとのご意見がありました。

 合意形成とは、だれとだれの間の合意なのか。あるいは、周辺の市町村、漁業者、国などにどのようなインパクトを与えたのか、与えられるのか、与え得るのかというご意見。

 最後に、成果の中心が内湾の自然再生にやや偏っているように思われる。今後、大きなテーマの達成に向けての取組みが望まれるというコメントがございました。

 紹介は以上です。

(主査) どうもありがとうございました。

 ここに出ている結果はかなり明らかで、皆さんの意見はかなり一致していますが、今紹介いただきましたご意見、この評価の結果を見て、どなたか何かコメントがありますか。

 よろしいですか。

 それでは、ここにありますように、これは平均をとっても恐らく2のあたりになると思いますので、最初の点である「研究計画実施方法、体制等の妥当性」については、概ね適切であった、それから、「研究の成果及び目標達成度」についても、概ね目標を達成できたということで評価をさせていただきたいと思います。

 評価書の中身につきましては、先ほど皆さんからいただいたご意見を取りまとめながら書きたいと思いますので、私にご一任いただくことをお認めいただければと思います。

(異議なし)

それでは、よろしくお願いいたします。

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〈他の分科会の評価対象課題の報告(第一及び第二部会)〉

(主査) それでは、5番目に、「他の分科会の評価対象課題の報告」ということで、これも事務局から、評価対象課題について紹介をしていただければと思います。

(事務局) それでは、事務局から、他部会の状況について紹介させていただきます。時間の関係で紹介だけになります。

 お手元の資料8、分厚い束のものですが、こういったことで第一部会が8月1日の予定でございます。また、第二部会につきましては、先日、7月22日に開催済みでございます。それぞれ事後評価の課題が、第一部会が3課題、第二部会が1課題でございます。また、中間評価につきましては、第一部会で1課題ございます。それから、事前評価課題ですが、第一部会で、この表には6課題。第二部会で2課題となっております。この課題につきましては、事前に委員の皆様のところに資料を送らせていただいたものですが、この下についている資料につきましては、その後の時点修正といいますか、内容を少し詰めたものがついているものと、送らせていただいた時点のものと2種類ありますが、そういう資料でございます。

 なお、補足説明をさせていただきますと、事前評価で、第一部会は、現在、この資料作成時点からの追加ということで、「災害時の要援護者向けの緊急情報発信マルチプラット・フォームの開発」という研究課題を追加で事前の評価をいただきたいということで、作業を進めていることを紹介させていただきまして、報告とさせていただきます。

 以上でございます。

(主査) どうもありがとうございました。

 この資料は事前に送っていただいていて、皆様のご意見もいただいているということですので、紹介だけで終わりにさせていただきます。

 本日は、事後評価が1件、事前評価が3件、かなり短時間でたくさんの評価をしていただいたのですけれども、全体を通じての感想、コメントがございましたらいただきたいと思います。何かありますか。

 よろしいでしょうか。

 それでは、どうもありがとうございました。以上で本日の評価はすべて終了いたしました。委員の皆様には、大変積極的にご協力いただきまして、ありがとうございました。

 では、そういうことで、今後の対応は事務局と私とでさせていただいて、必要があれば皆様のご意見も伺うことにさせていただきたいと思います。

 それでは、事務局にお返しいたします。よろしくお願いいたします。

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〈その他(今後の予定)〉

(事務局) どうもありがとうございました。それでは、議事次第の「その他」として、事務局よりご連絡を申し上げます。

 まず、議事録についてでございます。審議内容につきましては、議事録として取りまとめ、委員の皆様に確認をしていただいた後に主査に確定していただくこととなります。

 評価書についてですが、これの作成については、先ほど、主査に一任となりました。なお、評価書につきましては、本委員会委員長の同意を経て最終決定されることになります。また、他の分科会において作成された評価書もあわせて決定次第送付をさせていただきます。

 報告書についてですが、議事録及び評価書が決定された後、これらをとりまとめた分科会報告書を作成いたします。また、これらの公表についてですが、議事録、評価書、報告書については公表されます。

 それから、各課題の資料につけておりますこの政策評価個票の案ですが、これは行政評価法に基づいて作成するものでありまして、国土交通本省に提出し、その後、他の施策のものとあわせて公表されるものであります。この公表の一番下に、「外部評価の結果」という欄がありますが、ここは、本日の審議を受け、主査にご意見を伺いながら取りまとめさせていただくよう考えております。8月上旬ごろの本省への提出になろうと考えております。

(事務局) 最後に、○○国土技術政策総合研究所所長よりご挨拶を申し上げます。

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〈国総研所長挨拶・閉会〉

(国総研) 本日は大変熱心にご審議また評価をいただきまして、ありがとうございました。事後評価につきましては、概ね妥当であるという評価をいただき、また、新規3件の事前評価につきましては、いずれも国総研として取り組むべき重要な課題であるという評価をいただきまして、大変ありがとうございました。

 また、そのご審議の中で、私どもにとって大変有益なご助言、ご示唆をいただきまして、こうしたことを含めまして、また内容を深めていくように努力していきたいと思っております。

 本日は誠にありがとうございました。

(事務局) 以上をもちまして、平成17年度第2回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会を閉会いたします。

 本日は、誠にありがとうございました。

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