平成17年度 第1回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会
議 事 録


第1回研究評価委員会分科会 第二部会 (平成17年7月22日開催)
1. 開会
2. 国総研所長挨拶
3. 分科会主査挨拶
4. プロジェクト研究の報告(総合技術開発プロジェクト関係)
@住宅・社会資本の管理運営技術の開発<事後>
A高強度鋼等の革新的構造材料を用いた新構造建築物の性能評価手法の開発<事前>
B既存の都市施設を活用した省エネルギー型都市構築技術の開発<事前>
5. 議事
(1) 評価の方法等について(確認)
(2) プロジェクト研究等の事前評価
@建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能表示・認証システムに関する研究
A建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究
(3) プロジェクト研究の事後評価
@市街地の再生技術に関する研究
(4) プロジェクト研究の事後評価の取りまとめ
@市街地の再生技術に関する研究
6. 第2回及び第3回分科会での評価対象課題の報告
7. その他(今後の予定について)
8. 国総研所長挨拶・閉会


(事務局) それでは、ただいまより17年度の第1回国土技術政策総合研究所の研究評価委員会分科会を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、ご多用中にもかかわらず、この分科会にご出席いただきましてまことにありがとうございます。私、事務局を務めさせていただきます研究評価推進課長の○○でございます。議事に入るまで進行を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 本日の分科会は、第二部会の担当会議でございまして、平成16年度の終了のプロジェクト研究の事後評価と、平成18年度からの新規プロジェクト研究及び重要な研究課題の事前評価をお願いするものでございます。

 それではまず初めに、配付資料の確認をさせていただきます。まず本日の議事次第、座席表がございます。議事次第の次に配付資料一覧がございますので、それをごらんいただければと思います。資料1がきょうの分科会の委員の名簿でございます。それから資料2が評価の方法等について、資料2−1が研究評価委員会分科会の議事録等の公開方法の案でございます。資料3が国総研のプロジェクト研究の一覧、資料4がそれぞれの個別課題の資料になりまして、資料4が住宅・社会資本の管理運営技術の開発関係資料、資料5が高強度鋼等の革新的構造材料を用いた新構造建築物の性能評価手法の開発関係資料、資料6が既存の都市施設を活用した省エネルギー型都市構築技術の開発の関係資料。資料7が建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能評価・認証システムに関する研究の関係の資料。資料8が建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究の関係の資料。資料9が市街地の再生技術に関する研究の関係の資料。資料10が他の分科会における評価対象課題の資料でございます。そのほかに参考資料としてそこに一覧の資料をお配りしております。それから事後評価につきましては、事後評価シートというものがつけてございます。過不足等がございましたら事務局の方までお願いいたします。

 それでは、議事次第に従いまして○○国総研所長よりごあいさつを申し上げます。

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国総研所長挨拶〉
(国総研) 国総研の所長の○○でございます。本日は○○先生初め、大変お忙しい中、またお暑い中を、この分科会のためにご出席いただきまして、ありがとうございます。17年度の第1回の分科会、第二部会ということでございます。事後評価また来年度への予算要求に向けましての事前評価ということをお願いする次第でございます。私どもの国総研、平成13年4月に省庁の再編によりまして、研究機関を再編いたしまして発足した組織でございます。まだ新しい組織でございまして、17年度で5年目を迎える組織でございます。そういった中で具体的に国交省の技術政策に結びつく研究の成果が逐次生まれてきているところでございまして、こういったことにつきましてまた事後評価の中でご評価をいただければ幸いでございます。 また一方で国全体としまして、この総合科学技術会議の中で第3期科学技術基本計画の見直しが進められております。国土交通省としましても、それと歩調を合わせましていろいろな検討をしているところでございます。私ども国総研につきましても、研究方針につきまして、また見直しをすべきじゃないかということで内部で検討を始めているような段階でございますが、こういったことに対しましてもぜひいろいろとご指導いただきまして、私どもの研究方針の変更の方にも反映をしていきたいと思っております。

 それでは、本日これから7時までという長い時間でございますが、どうかよろしくお願いいたします。

(事務局) それでは、ご出席の委員の皆様のご紹介を申し上げます。委員の皆様には本年度より2年の任期で改めて委嘱させていただいております。

 まず本日の分科会の担当部会であります第二部会所属の委員の皆様を紹介いたします。

 まず○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいますけれども、おくれていらっしゃる予定でございます。

 それから○○委員につきましては、本日はご欠席でございます。

 ○○委員につきましても、おくれていらっしゃるというふうに聞いております。

 ○○委員でございます。

 ○○委員でございます。

 ○○委員でございますけれども、○○委員もおくれていらっしゃる予定でございます。

 ○○委員でございます。

 また分科会規則に基づきまして、委員会の委員長の指名によりまして第一部会、第三部会の所属の委員にもご出席をいただいております。

 第一部会より○○委員にご出席いただいております。

 第三部会より○○委員にご出席いただいております。

 委員の紹介は、以上でございます。

 国総研の幹部につきましては、座席表をもって紹介にかえさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは分科会規則に基づきまして、研究評価委員会の委員長より、第二部会の主査として○○委員が指名されておりますので、○○委員にごあいさつをいただきまして、以後議事をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

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〈分科会主査挨拶〉

(主査) 主査を務めさせていただきます○○でございます。この評価委員会の第二部会、だんだん審議事項がふえてまいりまして、今日もそこそこ長い時間かけて審議しなければいけませんが、よろしくご協力お願いしたいと思います。これは国総研の研究の方向を定める大変大事な委員会でございまして、ぜひ皆様から真剣な議論を賜って、国総研の研究の方向に関してよいサジェスチョンが与えられればいいかと思っておりますので、よろしくご協力お願いします。

 では後、座って進めさせていただきます。

 それでは、この議事次第に従いますと、まずプロジェクト研究の報告ということで、総合技術開発プロジェクトの関係ということで、この審議でよろしいわけですね。

(事務局) はい。

(主査) ではこれは全部で三つございますが、最初の@住宅・社会資本の管理運営技術の開発、これは<事後>というのは、もう終わったわけですね。

(事務局) ちょっと事務局からこの報告につきましてのご説明が若干ございますので、すみませんが。

この三課題につきましては主査がおっしゃいましたように、総合技術開発プロジェクトということで、本省の委員会で外部評価を受けることになってございますので、国総研の委員会としての評価からは外れるということでございます。その中で16年度終了課題と18年度からの新規課題につきましてご紹介をするわけでございます。時間配分でございますが、プロジェクトリーダーによる説明が15分ございまして、その後委員の皆様から質疑やご意見を5分間程度いただきたいと存じております。

 説明は、以上でございます。

(主査) これはですからきょうの第二部会の審議事項ではないわけですね。

(事務局) ええ。評価事項ではございません。

(主査) そうですね。だから報告いただいて、それは後から申し上げる5分間というのも、どちらかというと今後のための参考意見と、そういうことですね。

(事務局) ええ、ぜひ参考にさせていただきたいということでございます。

(主査) そういうことですね。ということでございます。では@からいきますか。住宅・社会資本の管理運営技術の開発、これよろしくお願いします。これはもう終わったやつですね。

 

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〈事後評価@住宅・社会資本の管理運営技術の開発〉

(国総研) 総合技術政策研究センター建設経済研究室の○○でございます。それでは課題について説明させていただきます。期間は昨年度までの4年間になります。

 まずプロジェクトの取り組みの背景ですが、住宅・社会資本ストックについて、その蓄積と老朽化、維持・更新費用の増大、社会的陳腐化が進展する中で、廃棄物財政上の制約と少子高齢社会への移行に対応した維持更新を進める必要があります。そのために使い捨てからの脱却と、更新時期の集中の回避、維持管理のメリハリを進める必要があり、これを実現するための戦略的ストックマネジメントとして群管理、多方面の影響への考慮、各種長寿命化技術の積極的活用が必要と考えて、これをプロジェクトの中心に据えています。

 こちらの図が研究の構成になりますが、左側の総合技術開発プロジェクトを中心に六つの課題から構成されております。戦略的ストックマネジメント手法の構築と、建築分野の研究、さらに土木のインフラ会計については、総プロの中で取り組んでいて、他の土木分野の研究については事業調査費等により取り組んでいます。以下は、総プロの核として検討した戦略的ストックマネジメントの概念の定式化と、構築を中心にご説明します。

 検討の枠組みですが、まず住宅社会資本をインフラとサービスに分け、それぞれのマネジメントについて前者を複数の地域を連携するネットワーク機能として整備効果を期待するネットワークマネジメント、後者を特定地域の利用者を対象とした整備効果を期待する地域マネジメントに分けて検討しております。それぞれの構造物の特徴を整理しましたが、建築物は寿命が比較的短い中で需要の質的変化が大きく用途の転用が考えられること、土木構造物は転用が考えにくいので長寿命化が重要であることが挙げられ、着目点として前者は施設の性能評価と横断的管理、後者については管理の階層性と予算配分等を取り上げました。

 まず土木分野の検討について紹介いたしますが、国道橋を対象とした群管理を検討し、一般化を図るマネジメント手法の検討部分と、これを会計的視点から評価・検証するインフラ会計の検討部分から成り立ちます。まずは、マネジメント手法の検討について紹介いたします。国等における土木構造物の維持・管理の実態を分析して、個々の施設へのハードを主体とした取り組みと、群を対象としたマネジメントの取り組みのレベルとに分けて、後者を検討の対象としております。次に、国土交通省で言えば事務所を中心とした個々の施設及びそのネットワーク等における位置づけが見える群管理と、地方整備局本省等のこれを統括する群管理とに分け、前者の群管理をミクロマネジメント、後者の群管理をマクロマネジメントと称して、階層性によるマネジメントを検討しております。国道橋のケーススタディについては、各階層の取り組み内容とその間の情報の流れを図の右のように整理した上で、北海道開発局内の一地域を対象として、地域全体をマクロ、管轄の6事務所の各々をミクロと便宜的に設定して分析を行っております。

 シミュレーションの前提ですが、それぞれの橋梁の部材の劣化モデルを想定しました。このモデルは北海道のデータから鋼橋・RC橋別に簡単な回帰をしたものを用いて、必要があれば適正なものと置きかえれば良いと割り切りました。対象期間は50年で、主桁・支承・床版の主要3部材が対象で、三つのシナリオを想定しました。図が三つのシナリオの説明になります。損傷度を上から5段階として、シミュレーション上ではそのランクが1になって初めて交換するもの(使い捨て型)、2の段階で補修をするもの(対症療法型)、3の段階で高性能の補修をするもの(危機管理型)の三つです。

 ミクロマネジメントに関する検討内容の一部を紹介します。図は個々の橋梁の個々の部材ごとに3シナリオで、維持更新費用をライフサイクルコストの形で積み上げ、さらにそれをミクロマネジメント全体で積み上げたものになります。このように長期的に見たときの危機管理シナリオの有利性が金額で算出できております。ただし危機管理シナリオは、こちらの図のように当初に膨大な予算を必要として、全面的に導入するということはできないので、予算制約との関係から、現実にはもう少し後でレベル2、3になった段階に補修を先送りすることになります。図はその場合の劣化の軽いランク3と、劣化のより深刻なランク2との間でどのような優先順位で実施するのか、ランク1についてはその時点で対処することを前提とした上で、何が最適かということを検討したものです。事務所によって違うのですが、この事務所の場合はランク3とランク2の段階での補修費の比率が2対8の場合が最適であると判明しております。

 次にマクロマネジメントに関する検討の例です。ミクロへの予算配分を事務所ごとに固定した場合と、10年単位で配分を見直した場合を比較いたしました。後者の方が全体としての予算削減が可能であって、留意事項として初年度の予算配分が重要であること。小規模なミクロ単位では予算超過を招きやすいことなどが判明いたしました。このように、様々なシミュレーションを行うことによって、マネジメント全体の流れと適正化に向けた分析の例というものを具体的に示すことができたと考えております。

 総プロ土木分野では、このほかにインフラ会計の検討も行っており、これは社会資本ストックの状況と今後の社会資本整備に関して、資産状況や投資戦略などを会計的視点から点検して説明性を向上させるものでございます。北陸のある国道事務所の舗装に関するデータから、維持・更新シナリオの二つのケースがどのように評価されるかを算定しています。前述の国道橋のシナリオについてもあわせて算定を試みております。

 次に建築分野です。ここでは建物の現状を評価して、まずは単体の視点、次に群の視点で活用を検討する縦の流れと、対象の施設分野、あるいは施設類型等により検討内容を分けております。図は地域での戦略的ストックマネジメントの概念図です。一般的には施設の建築時期が集中すると、更新時期も集中して、予算・マンパワー・廃棄物の観点で問題となります。そこでストックの状況と需要の変動を評価して、改修延命、他施設への転用、前倒し更新等を戦略的に組み合わせることによって、全体として最適なマネジメントが図られるというものです。

 主たる検討の対象は中小自治体の公共建築ストックです。これらの自治体の多くでは、部署ごとに管理がなされ、ストックの全体状況が把握されていないことや、台帳整備と耐震補強の遅れ、建築技術者の不足といった状況にあります。そこで、事務系インハウス職員でも可能な簡便な評価を基本としたシステムを構築いたしました。図は、インハウス職員が評価を行うための3つのシートです。現状把握評価シートでは、建築時期や水漏れの有無などの質問への回答のチェックにより、建築物の現在の状況が評価されます。改修評価シートでは、改修内容とレベルのチェックにより改修にかかる費用が概算可能です。用途変更評価シートでは、用途変更の可能性を用途ごとに評価可能となっています。首都圏のI市の9施設において評価のケーススタディを行って、このシートの実用性を検証しています。図は評価の結果の例でございます。

 このような評価システムとシートを利用することによって、部署・部局を横断したストックの把握、計画的維持保全や用途変更も考慮した活用計画の策定、四つの段階による使用方法の検討が可能となって、さらに施設群管理への発展といった効果があるものと考えられます。

 次にその施設群管理についてですが、こうした個別施設単位での評価、計画案を総括し、行政需要計画に基づき適切なマネジメント単位において、施設群管理シナリオ案を複数策定して、それらを費用支出や建築性能向上、社会影響評価により比較検討するといったプロセスを立てました。以下は大規模文化施設にかかわるシナリオの検討例であります。このI市の市立図書館は、需要はあるものの当初計画を大幅に超える蔵書を抱えていて、機能を発揮することが難しくなっています。市町村合併を前提に、新たに建設する複合施設の一部として拡充の案がありますが、合併の小規模化により実現が危ぶまれています。ここでは、ケース1:当初の改修による図書館の延命化と、ケース2:複合文化施設を建設して諸施設を玉突き用途変更すること、ケース3:現図書館から児童図書を各小学校へ、視聴覚資料を市民会館へといった機能の分散を図ること、の三つのケースを想定してそれぞれを比較検討しています。

 図が複合文化施設建設ケースにおける費用支出推移の推計です。新規建設については、3分の2の補助と公債を想定しています。そのままでは財政制約の想定を超えるので、他の改修を前倒しすることによって支出の平準化を図っています。図はこうした検討を踏まえた時期ごとの管理運営プログラムになります。現時点の評価に対して、将来の劣化と維持改修新設による評点の減少・増加の3施設・3ケースごとの推移の比較です。社会影響については、社会環境影響を交通のCO発生量と廃棄物発生量で、地域経済波及を生産誘発額と購買行動などと検討して、簡便な評価を行い、下の総括比較表を得ています。ケースの選択に関して、各評価項目にどういう重みづけをするのは、自治体ごとの政策判断とはなりますが、ケース3の分散型がケース1に比べて数%の費用を上積みするだけで、他の効果について比較的高い評価を得る代替案になっていると思われます。

 大規模文化施設のほかのシナリオとして、こちらの福祉施設整備のシナリオを2例検討しています。こうしたシナリオと代替案を積み上げて検討することによって、施設全体の群管理が、施設の性能向上、社会的影響等と費用との比較において自治体職員により検討可能となるというふうに考えられます。

 総プロ建築分野、その他の検討内容の簡単な紹介です。単体性能評価の一部として、施設の文化的価値等の外部性への評価手法の検討を行っています。また建築物を建てかえる際にも、下部構造の再利用の可能性を検討するため、杭の再利用技術を開発して、建築主や建築基準法の運用レベルに資する資料としてまとめます。公共建築の中長期にわたる修繕計画の策定に関しては、効率的・効果的な実施という観点から、そのマネジメントを支援するための技術開発を実施しています。

 公営住宅については、全ストックでの性能評価、地域的視点からの団地整備方針、団地再生といった観点からの総合的活用の計画的策定手法を検討しています。こういった総プロ成果の活用に向けては、ここに示す六つの手引、ガイドライン、マニュアル等を策定して普及を図る予定でいます。

 次に総プロ以外の研究課題の簡単な紹介です。まずは歴史性やランドマーク、愛着とった社会的価値の観点から道路橋事業を評価し、道路橋マネジメントに反映しようという研究になります。合理的な更新戦略の課題では、道路橋の点検とアセットマネジメントに関する点検を進めており、国土交通省の道路資産管理システムを構築して、8地方整備局、10事務所で試験運用を始めているところであります。

 空港施設保全のマネジメント技術の高度化に関する検討では、空港舗装を中心とした空港土木施設の維持管理、保全業務の高質化を推進し、安全、信頼性、定期・定時性、経済性等の一層の向上性を図るための質の検討を行っています。

 既存ダムの有効活用に関する調査では、全国調査により既設ダムの維持管理費の費用の実態分析、漏水等の計測による安全管理のあり方の検討を行っており、結果これまでにわからなかった維持管理費の定量的把握が判明し、また安全管理の合理的なやり方に向けた提案を行っております。

 以上です。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。それでは5分程度ということでございますけれども、ご意見ご自由にご発言、お願いします。

 これは住宅・社会資本といった場合に、公共建築物は社会資本の方に入るわけですか。

(国総研) 公共建築物は、そうなります。

(主査) それで僕は住宅を社会資本に含める場合と含めない場合と、国交省に両方見解があると聞いたけれども、そうなんですか。もう住宅は社会資本じゃないわけですか。

(国総研) すみません、国交省の見解は…。

(主査) いやいや、あなたの見解でも結構ですけれども。

(国総研) 私の見解というか、国総研としては住宅・社会資本と言っております。

(主査) ということは、社会資本には住宅は入らないと。昔下河辺さんが住宅は社会資本に入るんだと言ってから、それまで入らなかったのが両方説があると聞いたけれども、いやまあ、きょうの本題じゃないから結構です。しかし随分幅広くやっていただいて。これはやはりストックの、これからストックの時代、それを視野に入れたご研究と考えてよろしいわけですか。

(国総研) はい、そうです。

(主査) これはタイトルに「社会資本ストック」と入れた方がいいですね。文章には「ストック」という言葉があるんだけれども。そういうことであれば。その概要なんかに全部「社会資本ストック」という形でやると、ご趣旨がより明快ですよね。

(国総研) はい、今考えてみるとそうかもしれません。

(主査) 何か委員の先生方からご意見ございませんでしょうか。

 29ページに社会資本ストックの外部性評価ってあるでしょう。この「外部性」というのは、これはどういうことでございますか。

(国総研) こちらの絵にございますように、今までこういった文化施設などを評価するときに、右側の機能的価値だとか、経済的価値、年間利用者数とか、そういったいわゆる数字で評価しやすいものについてのみ評価して、使いにくいから壊そうとか、そういう判断をされていたものについて、歴史的な価値があるからとか、文化的にすぐれているとか、まちづくり上こうしたものがここにあることは望ましいといった、これまでは定性的な評価がされていた価値ついてなるべく定量的に扱おうというものです。

(主査) わかりました。これいい意味で使っているのですね。

(国総研) はい。

(主査) 普通は購買問題で、いわゆる外部コスト、内部コスト、外部性とかというと、非常に悪い意味で、要するに金を払わずに支援手法を使うという意味で使うんですよね。そうじゃなくてこれはこの建物が持っている社会資本としての、一般社会に与える影響という意味のプラスの評価ですね。

(国総研) はい。外部性としてはプラスマイナス両方あると思いますが、この研究ではプラスの部分を評価しています。

(主査) はいわかりました。

 何かご意見ございませんでしょうか。

(委員) 経済学的な意味での外部性ということですか。マーシャル外部効果のことかな。

(主査) 違うみたいですね。

(委員) 違うんですか。

(主査) 先生、経済専攻しているんですよね。

(委員) 今どういう意味で使っているのか、よくわからなかったんです。

(主査) 外に対するよい意味じゃないですか、これは。

(委員) 経済学では取引している当事者以外の者に与える影響は、良いものも悪いものも全て外部性であり、外部効果です。

(主査) いや、それは多分経済じゃなくて、建物というのは中で我々が使う機能と、外から存在だけで外に影響を与えるわけです。経済と無関係のこれ建築の特殊用語で使っているのかもしれませんね。外部性、内部性という。要するに建物は皆さんが見るから、余り変な色じゃ困るし、余り人に不快感を与えるような建物じゃ困るということで、そういう意味の外部性ということなのかもしれません。

(委員) 通常、外部性とか外部効果という場合、経済的価値のことを示します。ここにある機能的価値、経済的価値も、取引の当事者間のものは内部効果です。公共性とか文化的価値というのも、もしこの建物の取引に影響しているとすると、これは内部効果ですよね。どういう基準で外部・内部を決めているのかというのは、説明はもっと丁寧だった方がいいかなと思います。これは問題点として指摘するわけじゃなくて、私の理解が及ばないということで言っているだけなのですが。

(主査) いや、僕もそういう意味でご質問したので、経済の方から見ると多少質問したくなる部分があるかと思いますね。

(委員) ついでにもう1点あるんですけれども、5ページのケーススタディについて、例えば技術でもコストでも10年、20年とかそういうレベルで考えるとすると、その間に技術革新ってありますよね。だから同じようなお金のかかり方、同じような強度じゃなくなってくるわけですよ。そういう変化というのもこれは前提にしているのか、それとも今現在と技術水準が変わらないという前提でいろいろなマネジメントを検討しているのか。私は現在の技術水準のままで50年先も想定しているんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがですか。

(国総研) おっしゃる通りの点はあると思いますが、将来の技術水準について今から予測するというのは、やはりなかなか難しい点がありましてそこまでは検討しておりません。ただ建築に関してですが、ストックの評価は今の結果を20年間そのままということではなくて、5年ごとに評価をし直してデータを更新していくことを考えているので、その中で新技術を反映していけばいいと考えています。

(委員) 普通、長期の予測をする場合には、コストは10年たったらもう20%減るとか、それから強度は10%アップするとか、そういう前提条件を入れてやったりするんですよね。そうした方法はとっていないのですか。

(国総研) そうなります。

(委員) わかりました。

(主査) これからこのダイナミックモデルといいますかね、検討ください。僕自身はこれは今ストックの時代ということをにらんで、大変これは包括的でご立派な研究だと思います。一つ5分ぐらいですよね。まだ何かある。じゃ簡単にどうぞ。

(委員) これはソフトなマネジメントの研究で、今まであまり研究されなかったところで非常にいいと思うのですが、実際の管理運営、維持保全ということになると、ハードな技術があると思うのですが、今の○○先生のご質問とかなり関係していて、実際の技術についてどういうふうにこれからアプローチされていくのですか。マネジメントはでき上がった。だけど技術的にもっとこうすれば安く管理できたり、保全できたりする技術があるはずだという、そちらのアプローチがちょっと今日は見えてこなかったですけれども、いかがですか。

(国総研) 建築を中心にご説明させていただきますが、本日は紹介の中から省かせていただいた検討の中で、改修や維持管理の技術の現状については整理しています。ただ、それらをどのような方向に発展させればいいか、技術開発の目標については、プロジェクトの枠外と判断しています。

(主査) 今の○○先生のも○○先生のも今後そういうダイナミックな技術発展、展開の考慮に入れるようなこと、次のプロジェクトにはぜひご検討ください。

 思い出したけれども、この管理運営といった場合に、余りエネルギー関連のことが出てこなかったんですけれども、温暖化対策ということで入っていますか。要するに非常にむだ遣いしているケースが多いんで、そういったことも視野の一つに入れていただければ。

(国総研) むだ遣いについては検討していませんが、環境性能に関しては断熱性だとかをCASBEEほどの詳細なものではありませんが、簡易なものとして一応点数をつけて評価をするということを行っています。

(主査) そうですか。ありがとうございます。きょうはお後がいっぱいあるんでございます。恐縮ですけれども次に移らせていただきます。

 2番の高強度鋼等の革新的構造材料を用いた新構造建築物の性能評価手法の開発、これは○○部長ですか。ではよろしく。

 

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〈事前評価A高強度鋼等の革新的構造材料を用いた振興増建築物の性能評価手法の開発についての研究〉

(国総研) ○○でございます。議事次第ではこれ<事前>ということになっておりますが、実は昨年度既に予算化されているものでございまして、昨年度の当委員会にご報告すべきものだったのですが、第二部会の担当分科会、昨年度は第2回が開かれませんでしたので、本日の報告、今年度になっております。したがいましてこのプロジェクト既に今年度から開始されているものでございまして、今立ち上げをやっているものでございます。

 今申し上げた17年度からスタートの総合技術開発プロジェクトでございます。これは若干全体として大がかりな構図を持っておりまして、実はこの革新的構造材料の発展ということをテーマにいたしまして、総合科学技術会議の重点課題の中の一つでございます、ナノテク・材料プロジェクトチームの中で、いわばオーソライズされましたプロジェクトの中の一環でございます。府省連携プロジェクト「新構造システム建築物」というものが実は立ち上がっておりまして、具体的には経済産業省、それから国土交通省の二つの省の連携のもとで、この革新的構造材料を用いた新構造システムの開発と普及を行い、もって構造材料、産業の国際的競争力の強化というものを含めて図っていこうというプロジェクトの中でございます。

 今申し上げましたように、経済産業省の方は基本的には新しい鋼材、それを用いました構造システムというものを後押しをしている。国土交通省の方はそういう新しい構造システムを用いまして住宅、建築の高度化、あるいは都市再生というものに対応していこうということを今のところ計画してございます。

 この総プロでございますけれども、そういった新しい構造システムというものができ上がって開発されてくる。それが都市再生へのニーズ、例えば既存の建築物材質の耐震性をもっと上げていこうとか、それから都市建築ストックの活用の付加価値を上げていこうとか、長期活用インフラとしての可変性とか部材、特に躯体材料であります鋼材のリユースを図って、例えば経済性、並びに環境への負荷を制限していくというようなことがあります。その技術を実用化していくために、実は環境整備、特に技術基準、建築基準なりあるいは設計基準、あるいは技術の供給側とそれを受ける発注者側のコミュニケーションのための基準、そういったものを開発していこう。ここがこの総プロが受け持つメインの部分ということでございます。

 これらの一つの革新的構造材の一つとしまして、高機能鋼ということでございます。これ自身は鉄鋼産業を中心といたしまして、そちらの民間ベースで進む予定でございます。こういった開発予定の新しい機能を持った材料を生かしまして、この新構造システムというものを考えていこうと。例えば一つの高度な耐震化というものを考えます。例えば比喩的にいいますと震度7でも損傷ないというような形の建築物、それをつくっていこう。通常の材料で構造を耐震化いたしますと、かなり頑丈な仕組みになります。それを例えば非常に強度の高い材料でつくっていくと、例えば長スパンとか高階高とか、空間の自由度拡大もいたしますし、かなり大きな地震があったとしても降伏をしないというか、塑性域に入らない。したがいまして極めて長期間の利用並びにもしこの建物が解体されたとしても部材がリユースできていくと、そういったメリットがあると、そういうことを考えまして、そういうメリットを最大限生かせるような構造システムを開発し、総プロといたしましてはメインとしまして開発された構造システムを社会的に受け入れていくための技術的基準、そういったものの整備を図ろうというものでございます。

 俗に超耐震とか呼んでおりましたけれども、現行のいわゆる例えば建築基準法で考えている最低限の耐震性、それに対応いたしましていろいろな意味での機能を維持するとか、今申し上げた部材の再利用性を確保するとか、そういったいろいろな仕組みを持ちました高度な耐震性というものを設定する。これ自身も社会技術に合致していかないと当然この技術は広がりませんので、その辺の調整なり普及なり概念の成立を図っていくということになりますが、そういう高度な耐震性、それから例えば建物自身はつぶれなくても、加速度とか速度によりまして人が転倒したり、物が滑ってしまったりと、そういうことも考えていく必要がある。そういう意味でより価値の高い耐震性能でありますとか、環境性能というものを考えていこうじゃないかということでございます。それに対していろいろな個別の要素的な技術、いろいろな開発課題があるかと思います。ここには例示をしておりますが、これにつきましては総プロとしましてはプロトタイプを考えていこう。官民共同でこの辺の要素技術は考えていこうということでございます。

 さらに3番目としまして、先ほどリユースということをキーワードとして申し上げましたが、リユース部材の性能検証法、よしんば解体されたとしましても、それをリユース、もう一回新品同様の材料並みとして使っていけるために、技術システムをどういうふうに組み込んでいくかということを考える。そのための性能検証法等をこの総プロで開発したいというふうに考えております。

 それからもう一つ、こういうシステムの大きなマーケットとしまして、恐らく既存建築物に活用していって耐震性を向上させる、または今の東南海地震でありますとか、そういういろいろな関心が高まっているところにおきまして、街区レベル、または建築物単体の耐震性を向上させていくための非常に有効な技術として活用していこうと考えられます。そのための技術開発を行いたいと思っております。一つは既存建築物の保有性能評価、これをどのようにやっていくか、それを開発するということが一つの課題です。2番目は例えばちょっとこのイラスト自身は若干稚拙なものでございまして、リアリティに欠けますが、例えば二つの建物の間をつなぐことによって、耐震性またはそのほかの安全性というものを格段に向上させるとともに、機能また付加価値の増強を図る、そういった形の応用は考えられるんじゃないか。そのためのいろいろな必要な要素技術、またその要素技術が適切かどうかというものの評価技術をこの総プロによって整備してまいりたいというふうに考えております。例えば部材補強の性能検証でございますとか、接合部分の性能検証、そういったものが具体的な対象になるかと思います。

 さらにこれはソフトものになりますが、新構造システム普及方策の検討というものをやってまいります。市街整備での活用。例えば団地再生での活用、そういったものも考えまして、円滑な市場導入のシナリオを考えていきたいというふうに思っております。先ほど申し上げましたように、府省連携プロジェクトでいろいろなところ、またはそれの命を受けまして研究プロジェクトを実施いたしますいろいろな民間というか、関係団体との連携をこの総プロは当然ながら図ってまいります。それからもちろん大学等とのご指導もいただきながら、このプロジェクトを進めてまいりたい。当然ながらその耐震性におきましてうってつけでございます独法建研との連携も進めていきたいというふうに思っております。

 ちょっと駆け足になりましたが、以上でございます。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。それでは、ただいまのご説明に関しまして、ご意見、ご質問がございましたら、お願いします。どうぞ。

(委員) このタイトルの「革新的」というのが非常に好ましく思ったので、発言するのですが、例えば中にも新構造システムとかありましたけれども、単に「新」なんていう使い古された言葉じゃなくて、もう少しより新しいという感じで、「革命的」というとさすがに革命的過ぎるし、「革新」という言葉は政治的にはもはや死語ですけれども、社会にはまだ生きていて、新しいものだという強いインパクトを与えるという意味で非常に望ましい、適切な用語の使い方じゃないかと思っております。中身については、ちょっと具体的にはまだよくわかりませんでしたけれども、好ましく感じました。

(国総研) ありがとうございます。構造システムの方も陳腐化しないように、革新的なものをできるだけ開発していきたいと思います。

(委員) それは「新構造システム」という言葉は、もはやでき上がっているんですよね。だから今から変えるのは、もう終わってしまってるわけですか。難しいかもしれませんけれども。

(主査) ありがとうございます。ほかにございませんか。どうぞ。

(委員) 質問ですけれども、鋼材の開発で、大スパンを飛ばしてそれでたわみが少なくなるというと、材料的には何かヤング係数がいきなり高くならないとだめなんじゃないかという印象を受けるのですけれども、そのあたりについての見込み、なかなか本当は難しいのでしょうけれども、その辺は材料メーカーにゆだねることになろうかと思いますが、その辺はいかがなのでしょうか。

(国総研) おっしゃるとおり、降伏強度が高いということは、なかなか塑性化しにくいというメリットがありますが、今おっしゃったように同じ荷重に対してじゃメンバーは少なくていいけれどもたわむじゃないかという話は当然ございます。地震に関してはその変形並びに変位、非常に問題になります。その辺を恐らくダンパーとかそういったことで併用という形で、その構造システムとして完成させていくんだろうなというふうに考えています。今おっしゃった、たわみに対してどのような形で、これからの具体的なシーズ探しになっていきますけれども、その辺は十分考えていきたいと思います。

(委員) 通常使っている状態でたわみが少なくなるというような構想なのでしょうか。

(国総研) そうです。ちょっとその辺も非常に気にしながら。

(委員) もう1点すみません。リユースのところで、リユースを実際にしようとすると、多分このような建築ですとかなり高層化が図られたり、大規模化が図られたりすると思うのですけれども、その場合の解体工法は併せて検討はされる予定でしょうか。

(国総研) これもまだイメージの段階ですけれども、恐らく要するにドライなジョイントを使わないと今おっしゃった解体がうまくいかない。解体はできてもリユースがうまくいかないということがありますけれども、嵌合接合みたいなものを使って今のシステムがつくれないだろうかということを既に予備的検討を始めております。

(委員) その部分だけでなくて、建築全体での解体ということになると思うのですけれども。

(国総研) そうですね。

(委員) ええ。普通のクレーンじゃちょっとだめだとか、解体をするときにどうやってそこに重機を持ってきて、どういう工法で解体をするかということが問題で、多分今までのような粗雑なやり方ですと傷めてしまって、後で使いものにならないとかいろいろあると。その辺を併せて検討いただくといいかなと。

(国総研) わかりました。今のご趣旨は重要な課題として、頑張っていきたいと思います。

(主査) この研究、これは国でやらなきゃいけないんですか。

(国総研) 先ほど言いましたように、かなり民間主導のプロジェクトとして仕立てておりますが、先ほど申し上げたように技術を社会的に受け取れるようにする、この場合全部が全部そうではありませんが、少なくとも建築基準の最低基準としてどういうふうに受け取るんだということ自身のところは、やはり官側でやらざるを得ないなというふうに思います。それでそれをやることが逆に民間側の技術開発のいわば支援になるというふうに私ども考えて、このプロジェクトをやっております。

(主査) そこのところを最初にある程度強調した方が、誤解が少ないんじゃないかと思うんです。

(国総研) そうですか。はい。ちょっと説明が足りませんでした。

(委員) 全く○○先生と同じ意見ですが、3ページの1、2の資料で、何か目標性能水準の設定と性能検証法の開発というふうに出されていて、新しい目標性能水準が出るのかなと見られるよりは、今のテストコンプリートだけを対象にした、ある意味では材料は限定的な性能評価が、材料が変わる形でも我々にフィットするような性能評価になるんだよという言い方をしていただくと、今の先生の話につながるのかなと思うんですけれども、より耐震性の高いものをつくるんだと言っちゃうと、何か民でもいいじゃんみたいな話に、何かそこら辺がアンクリアなのが質問が出てくる理由なのかなと思いますけれども。

(主査) ありがとうございます。よろしゅうございますか。

(委員) すみません。今の民間でもいいじゃないかという議論は構造分野には起こりやすい問題です。なぜかというと、既にある程度開発している企業がある場合、そこのインセンティブを弱めてしまうことになるからです。そのかわり、それ以外の多数の企業に対しては、今度はインセンティブを与えることになりますが。国がやるということは、既に始めている企業にとっては、自分たちの独占できそうな成果の一部がほかの会社に渡してしまうわけで、そういうことに対する明快な回答を国は用意していなければならないと思います。やはり国がやる必要があるんだという説明です。
(主査) いや、僕はそれ以外にもまだ非常にこれはインキュベーター、萌芽的段階で国が道筋をつけなければ民間がついてこれないと、そういう場合であればいいけれども、高度技術はいろいろな意味でかなり成熟しているとなると、旗振るだけで民間がやってくれるんじゃないかと、そういう意味でございますけれどもね。先生がおっしゃった論も、私今伺ってなるほどと思いました。

(委員) もちろん全体像をやっているところはないでしょうけれども、一部をやっている企業はあると思います、ここがその一部、あそこが別の一部、というような状態にあって、それを全部まとめて国がやろうとしているように見えます。

(国総研) 先ほどのご説明もちょっと舌足らずだったかと思いますが、私どもならではの使命として考えておりますのは先ほど言いましたように、開発された技術でつくられる建築物を社会にとって存在可能なものとして受けとめるための社会側の受け入れ基準、評価基準というものについては責任を持っていかなきゃならないと。

(主査) それはそれでいい。

(国総研) そう思っておりますので、そちらの開発を重点。だからいわゆる要素技術の開発は当然ながら民間主導で頑張っていただくという仕分けをしながら、このことについてやっていきたいと思っております。

(主査) はいありがとうございます。では簡単にお願いします。

(委員) 民間がやるか公共がやるかというのは、一定のルールがありまして、公共がやるべき分野というのは自然独占のケース、情報の非対称がある場合、外部効果が大きい場合、公共財の供給の四つしかないんです。そうすると今のお話でいうと、例えば大規模な実験施設が必要で、それは民間ではとてもできないという研究は、当然公共側がやるべきです。ただし、それは時期に応じて少しずつ民間におろしていくべきかもしれません。

それから2点目は外部効果が大きい場合。さっき外部効果の話が出ましたけれども、例えばある企業が研究を一生懸命やっていたとしても、それはさまざまなところにプラスの効果を及ぼしていって、その効果が当該企業だけじゃ吸収できない。そういう場合はむしろ公共がやってあげる。技術研究によって社会全体に対する影響がすごく大きいにもかかわらず、それが収益として取り組んだ企業にうまく戻ってこない。そういうものを公共がやるべきなのです。だから今のお話ですと、都市再生に非常に大きな影響があると。その研究成果があちこちに出てきて、それを開発したものに、ほとんど戻ってこないような、そういうものであればやるべきだと思いますし、そもそもの大規模実験施設があって、それは民間の力をはるかに超えているのであれば、それも公共でやるべきだと思います。このケースがそれに該当するものであるかどうかというのは、私はわかりません。

(主査) ありがとうございます。それではこの辺でよろしゅうございますか。どうもありがとうございました。

 それでは三つ目の既存の都市施設を活用した省エネルギー型都市構築技術の開発。これは本当に新しいんですか。

(国総研) そうです。

(主査) では○○部長、お願いします。

 

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〈事前標評価B既存の都市施設を活用した省エネルギー型都市構築技術の開発〉

(国総研) 都市研究部長の○○でございます。総プロの18年度からの新規テーマであります既存の都市施設を活用した省エネルギー型都市構築技術の開発につきまして、説明いたします。

 ご承知のとおり、我が国の温室効果ガス排出量は、近年増加傾向を続けておりますが、京都議定書によりまして2010年には基準年、1990年の6%減、2002年の実績から比べますと12%の削減というレベルを約束しているわけでございます。温室効果ガスのほとんどはエネルギー起源のCOであり、省エネルギーの推進がこれまで以上に重要となっております。

ことしの4月28日に閣議決定されました京都議定書目標達成計画におきまして、COの削減に向けて点から面への考え方に基づいて、省CO型の地域都市構造の形成ということが重要な柱の一つと位置づけられておりまして、エネルギーの面的な利用の促進ということがうたわれております。このような政策の展開を支援するため、本プロジェクトは省エネルギー型の都市構造を実現するための研究開発及び施策への反映ということを目的として実施しようとするものでございます。成果目標としてはここにございますように、4本柱で整理をしておりまして、1番目が各種熱源をネットワーク化する技術の開発、2番目が下水道の熱源・空間利用技術の開発、3番目が未利用エネルギー・新エネルギーの実用化技術の開発、4番目が省エネルギー型都市構造の評価技術の開発という計画をしております。

 本プロジェクトの必要性と背景について説明いたしますと、大規模開発に採用した地域冷暖房のような大規模なシステムではなくて、小規模で効率的なネットワーク技術がこれからは必要であるという認識、またそうした熱源ネットワークが可能になるような個別要素技術の開発や、規制緩和などが進んできているということで、今回の研究開発に取り組むという背景でございます。

 研究対象の概念図でございますけれども、熱需要のパターンが異なる住宅とか事業所を小規模熱源と組み合わせる小規模システムの開発、これを含みます熱源のネットワークシステムの技術開発、それから先ほどご説明した下水道の熱源・空間利用技術の開発、それからバイオマスエネルギーの利用の効率化によります未利用エネルギー・新エネルギーの実用化技術の開発でございます。

 このスライドは地域冷暖房と熱源ネットワークの相違点を整理したものでございますけれども、規模の大小、あるいは効率性やコストの違い、こういったことを踏まえまして今回熱源ネットワークの開発に取り組もうとするものでございます。すなわち地域冷暖房の課題といたしましては、大規模でコストがかかる。今後の普及の大きな伸びが期待できないこと。それからエリアの拡大が難しい、こういった点が挙げられておりますが、一方で民間等の研究におきましては、個別機器等の開発が進んでおりますけれども、面的なネットワークを行う技術というものが検討されていないという状況がございまして、そういったことを受けまして低コストで小規模でも可能な、それからエリアの拡大も柔軟にできる、それから既存の地域冷暖房地域を拡大をしていく、くっつけていくというようなものが可能な新たな熱源ネットワークシステムの開発を目指そうというものでございます。この開発成果を産学官の連携体制により普及促進を図るとともに、広域的な導入を促進することによって面的な省エネルギーの実現につなげていきたいという考え方でございます。

 これは熱源ネットワークが普及することによる省エネルギー効果の試算を行ったものですけども、個別熱源方式が主体の現状から、地域冷暖房が拡大することで約13%の削減。さらに熱源ネットワークがきめ細かく普及することでさらに13%、合計で26%程度の削減が可能であるという試算結果でございます。具体的な技術開発項目としましては、熱源ネットワーク内の熱のコントロールを行う蓄熱槽や補助熱源の実用技術の開発、それから熱源ネットワークと連携する建物側の接続技術の開発、さらに熱源ネットワーク間の連結技術の開発、それからネットワーク管間の低廉化技術の開発を計画しております。

 次に下水道の熱源・空間利用技術の開発です。下水は年間の温度変動の幅が小さく、夏の冷熱源、冬の温熱源としての利用が可能です。都市において整備が進んだ下水道管をネットワークとして活用するため、下水道への排熱防止技術や、これまでより高い温度で運転されることによる下水道施設への影響、それから放流水の環境への影響の把握について技術開発を行います。このスライドは下水管の腐食に関係する硫化水素の水温上昇による増加モデルを説明したものでございます。この写真に写っておりますのは、ヒートポンプにより熱交換を行っている事業の事例でございますけれども、このような事業実施事例の運転状況を詳細に分析することにより、影響の検討をするという計画でございます。この項目の研究につきましては、国総研の下水道研究部が中心になって実施する予定でございます。

 次に未利用エネルギー・新エネルギーの実用化技術の開発です。本プロジェクトでは河川や道路、公園などの国土管理に由来する草木系のバイオマスを対象に、そこからのエネルギー効率を高める技術の開発を行います。主要な項目としては下の方にございますが、エネルギー開発利用に必要な資源データソースとなるバイオマス・インベントリーシステムの構築、それから新たな燃焼技術等炭化技術の個別技術の開発、それからさらに完成度の高い技術についてのパイロットモデル事業の実施を計画します。国土管理由来の草木系のバイオマスは、このように多くの事業分野にわたって存在しておりまして、全体としての燃料価値推定量は20万トン大型タンカーの9隻分に上るという推定結果でございます。この項目の研究につきましては、独法の土木研究所が中心となって実施する予定になっております。

 4番目の省エネルギー型の都市構造の評価技術の開発でございます。これまで説明いたしました三つの研究開発を含めまして、各種のエネルギーの面的利用について整備効果を総合的に評価するモデル構築に向けた技術開発を行います。環境負荷、省エネ効果、経済効果等を総合的に評価できるようなものを検討することとしております。多面的な評価を定量的に行うことによりまして、最適施策の選択、合意形成に資するものとなりますので、各地域におけるまちづくり評価への導入につなげることを目指します。

 各都市の地形や規模に応じた土地利用、地区別人口、交通ネットワーク等を踏まえた熱源ネットワーク化類型による省エネルギー効果の把握を行うとともに、右側にありますように都市類型や民生施策、交通施策をインプットし、アウトプットとしてCO削減効果、省エネルギー効果、経済効果を評価するという技術開発を目指しております。

これが年度計画でございますけれども、平成18年度から3カ年の予定で順次研究開発を進めることといたします。

 最後が研究実施体制でございます。本省、それから先ほどご説明しましたように独法土研と連携をいたしまして、地方公共団体、大学、民間企業等と幅広く協力体制をつくり、実効性のある研究を進める計画でございます。

 以上で説明を終わります。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。15分おくれているからと事務局からお叱りをいただいたところです。ありがとうございます。何かご質問ございますでしょうか。これはやはり既存の都市施設というのは、ストック対応ということですか。

(国総研) タイトルの主な意味は下水の活用を考えているので、こういうタイトルをつけております。

(主査) ああ、そういう意味ですか。

(国総研) ええ。

(主査) やっとわかりました。僕は例えばコジェネとか、ガス会社がさんざんやっているし、何で今さらという感じだったけれども、下水でつなぐというのはどこもやっていないから、それをもうちょっと、強く何で出さないんですか。今聞くとたくさんあって、そのうちの一つのさっきの木の葉っぱで出来るバイオマスとか、それと同じような位置づけかと思ったら、これが中心なんですか。

(国総研) いやそうじゃなくて、中身は4本柱なんですけれども、今説明いたしましたタイトルの「既存の都市施設を活用した」という意味は何かと言われると、下水の活用が中心ということです。それで、中身は地域冷暖房のような大規模なものはそこそこ普及しているんですけれども、それはおのずと限界があります。

(主査) 地域ネットワークの方は大規模都市。

(国総研) ええ、大規模という認識で、もっと小さいものを目指そうと。

(主査) ああ、小さいものを。

(国総研) ええ。

(主査) だとすると、スライドの6枚目にあるネットワークの図があるでしょう。これを見ると何か都市スケールに見えるけれども。下水道をつなぐというのは極めて大きなスケールじゃないですか。

(国総研) この大きい方の話ですね。

(主査) 小さいというのはこういうものです。

(国総研) 小さいというのはこういう、ちょっと画面が。

(主査) ああそうですか。この小規模だといろいろ負荷分散が余りはかりにくいから、こういうことがメリットが出ないんですよね。それから…いや下水道はおもしろいけれども、それ以外は一般にやられている話が多いですよ、これ。小規模というと要するに負荷の平準化をさせる要素って住宅とオフィスしかないわけでね、だから普及対象もそんな多くないですね。でも下水道はうまくいけばおもしろいですね。極めて独創的で。

 何かご意見ございますでしょうか。よろしゅうございますか。これでも僕もさんざんやっているけれども、面的利用というと今の系統電力ぐらいすぐれた面的なシステムはないわけで、あれのヒートポンプにまさるようなシステムがあるかというと、事実上ほとんどないんです。ですからその辺もお考えいただいて、例えばこの下水道の話みたいに特徴を出していただけるとありがたいと思いますけれども。

(国総研) わかりました。

(主査) よろしゅうございますか。それでは次に移らせていただきます。

 次に5番目の議題に移ってよろしいわけですか。

(事務局) そうですね。よければ休憩を飛ばしていただいて。

(主査) 休憩をとる予定だったの。

(事務局) ええ。でしたが評価の方に。

(主査) では休憩なしで行けということで、よろしゅうございますか。まだ1時間ぐらいですから、2時間ぐらいたったらちょっと5分ぐらい。

 では5番目の評価の方法についてと。これ確認していただきますか。

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〈評価の方法等について(確認)〉
(事務局) それでは5番の議事に入ります前に、評価方法の確認をさせていただきます。そこの議事にございますように、今回は事前評価課題が2課題と、事後評価課題が1課題でございます。お手元の議事次第の一つ下に入ってございます評価の方法等についてという資料2という1枚紙がございます。事前評価と事後評価、ちょっと順番逆になってございますが、事前評価につきましてはこれから来年度から始めようという課題でございますので、必要性、効率性、有効性につきましてそれぞれ妥当であるかというような観点でご評価をお願いしたいと存じます。また事後評価につきましては、終了した課題でございますので、妥当であったかと、そういった成果が得られているかというようなことで、それぞれ必要性、効率性、有効性につきまして結果がどうであったか、また社会への貢献がこれから期待できるかというようなところも含めて、ご評価をお願いしたいと存じております。 それからその資料2の下に資料2−1というものが入ってございます。これにつきましては、今年からこちら、今日は分科会でございますが、本委員会の方と共通的な取り扱いで議事録の公開を考えておるところでございます。従来は議事要旨ということで公開をしておったところでございますが、今後は本委員会と共通で速記録を議事録として公開していきたいと存じております。ただし発言者名につきましては「主査」、「委員」、「事務局」等ということで、名前を出さないというようなことにしたいと存じております。ただ速記録の取りまとめに当たりましては、以下の点について委員にご確認を行うということでございまして、発言に含まれております内容や数字、固有名詞等の誤り等の修正や、その他、文章を整える等必要最小限の修正につきまして、委員にご確認の上公表をしていきたいと思っております。公表の仕方につきましては、評価結果とともにホームページに掲載をしていきたいと存じております。

 説明は、以上でございます。

(主査) ということでございまして、それで資料番号振っていない事後評価シートってありますね。事前評価シートはないんですか。

(事務局) 事前評価はございません。

(主査) ということは、よくわからないんだが、シートは要らないんですか。

(事務局) ええ。事前評価につきましては、発言をいただきましたところにつきまして、主査の方でおおむねの方向をまとめていただきまして、整理をしていきたいと存じております。

(主査) 事前評価は、ここで皆さん審議をしていただいて、それを事務局にまとめていただいて、それであとはもう主査任せと。

(事務局) はい、そうでございます。

(主査) 主査預かりと、そういうことですね。

(事務局) はい。

(主査) 事後評価の方はちゃんとこれを皆さんに書いていただくと。ということでございます。何か質問ございますか。これから最も重要な。今まで報告事項だから気楽だったんですけれども、これからちゃんと審議事項でございますので。よろしゅうございますか。

 それでは事前評価が最初に二つございまして、建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能表示・認証システムに関する研究ということで、これは○○さん。

 

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〈事前評価@建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能表示・認証システムに関する研究〉

(国総研) よろしくお願いします。建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能表示・認証システムに関する研究でございます。

(主査) 資料7ですね。

(国総研) 資料7でございます。これは来年度に向けて予算要求をしているものでございまして、予算をつけてもらった暁は所内の重要な基盤研究という位置づけで実施したいというふうに考えているものでございます。来年度から平成20年度までの3年間の実施を考えてございます。

 最初に背景でございます。建築物の設計・工事それから材料の性能特性の関係もちょっと一般論を書きました。設計段階で使用予定材につきまして、何らかの形で性能特性の把握をいたします。それを用いまして例えば構造計算をイメージしていただくとわかりやすいかと思いますが、建築物の性能要求への適合検証に反映させていくという形が設計段階でございます。

 工事段階は、実は市場から材料を調達してまいります。その仕様材料につきましてはこの設計段階で使用を予定した材料と同じもの、またはその同じ品質を持ったものということを確認し、その材料を工事に適用していくということになるかと思うのです。こういう形で進んでおりますが、これが性能規定化の段階で今後どうしていったらいいかということを考えていくのが、このプロジェクトでございます。

従来型の建築基準でございますが、いわゆる仕様書規定という形で、構造法の仕様を過去の経験等に対しまして決めると。それに対しまして使用材料の規格等を指定していく。これによりまして建築主事等で確認という形で照合することによって、材料の条件適合を確認していくというのが従来型でございます。性能規定に進んでおりますが、理想といたしましては建築基準といたしましては建物の性能要求、それから計算等による適合検証を行います。材料に関しましても任意の材料性能特性を使えるようにすればいい。これが建築主事等の確認審査で行えるようになれば、いろいろな自由度の高い構造を使ったり、また使う材料をいろいろな自由に設定したりするということができるかと思います。

ところが現実に2000年改正、建築基準法ございましたが、実際にはこの性能型基準、性能要求、計算等による適合検証というところまでよろしゅうございましたが、材料の性能特性をどういうふうに定めるかというところで、やはり指定する規格に依存して特性値を指定するということがとりあえずの限界ということで、そのものにつきましては建築主事等の確認審査でオーケーにする。任意の材料性能特性、必ずしも指定の規格で、例えば先ほどみたいな形で定められるものじゃない、任意の材料性能特性を使うものに関しましては大臣認定ということを必要にする仕組みにいたしました。その結果、大臣認定におきましては、規格による適合認証、例えばJISマーク制度みたいなものと同等の品質管理を要求しております。その段階でいわゆるプロジェクトごとに採用されるでありましょう新しい材料の円滑な導入にブレーキがかかっているというのが現状でございます。

 それに対応しまして、システムの整備目標といたしまして二つを掲げました。一つは製品規格に必ずしも依存しない建築材料の性能特性、これをどのように評価し、どのように表示していっていただいて設計とかに用いるようにするかと。2番目は表示内容とそれから実際小売で調達されます材料特性の整合性、これが信頼性を持って担保できるような品質確保または確認の仕組みをどのように考えていくかということでございます。

 性能型建築基準における材料性能特性の今申し上げた表示・認証ということで、どのようにとらえていくかという、またイメージでございます。性能型建築基準、先ほど申し上げました建築物の性能要求、これに対しましてできる限り多様な適合検証法、また設計法と言ってもよろしいかと思いますが、これを設定したい。例えば許容応力度で設計している場合もあります。降伏耐力に着目した適合検証をしていく場合もある。また荷重変形曲線というんですか、その相関関係にベースを置いて検証していく場合もある。それにつきまして、それぞれの用います材料特性につきまして、まず性能評価法、これは具体的な試験方法であることが多いかと思いますが、それから表示方法を少なくともこれは建築基準に近いものとして決めていかなきゃならない。この表示する材料特性の項目とかかわっていく必要がある。それを使いまして、設計段階では例えば降伏耐力の適合検証Bというものを採用する。その場合降伏耐力という材料特性、それについてのどれぐらいの降伏耐力のものをこのプロジェクトで使うかということを設計し、量を指定していくということになろうかと思います。この工事段階はどうするか。その指定された、例えば降伏耐力を持った材料がちゃんと工事で使えるかどうかということを調達管理の中で図っていく必要がございます。それを支援する仕組みがどうしても必要だということでございます。実際には材料、部材は生産者の方がつくり、あるいは性能試験、また品質管理を行い、場合によっては第三者機関の支援も得ながら、その特性を表示していくということになるんですが、その場合に、ではどのような性能試験や品質管理を行えば、建築工事における材料調達管理として、信頼あるものとして受け取っていけるかという認証システムの信頼性、承認基準というものをつくっていきたい。これによりまして実際には国というよりはいろいろな第三者機関とか、そういう製造者団体が行うことになろうかと思いますが、性能表示、あるいは信頼性保証、これがこの辺に適合するかどうかということを前提に、建築基準の運営上受け入れを図っていくということが、今考えられている性能基準化におきます材料性能の管理、マネジメントの信頼性を確保するための仕組みのイメージでございます。

 この研究成果の活用方針でございます。今申し上げましたように、基盤的研究という形で行わせていただきたいと思っておりますが、すべての材料について今完成した試験方法並びに品質管理方法等を国の基準という形で決めるというのは、なかなか不可能でございます。むしろ民間におきますいろいろな活動をうまくシステム化していただきまして、その中の信頼性のあるものを引き受けていくと、そういった形での行政的な提携を考えております。そのためのフレームワークというものがこのプロジェクトの一つの目標でございます。そのフレームワークというか基準試案を開発することによりまして、一方民間ではフレームワークに合った表示認証システムを開発していっていただく。それから行政側、制度側といたしましてはそういうもの、信頼性を評価し、それの仕組みを受け入れていくという体制を整えていくということが、この研究開発を少なくとも行政システムに反映させていくというためのシナリオというふうに考えてございます。

 研究内容でございます。1番目は建築材の性能特性の表示・認証システム、これは少なくとも実態把握、性能規定化への対応するための要件、どのような条件が必要かというのを明確化していく必要があります。これは後ほどご説明いたしますが、我が国の例えばいろいろなJISマーク制度だとか、そういうものを含めたものがどこまで対応可能か。それからヨーロッパ等におきます材料の表示・認証システムはどうなっているかということを調べ、このフレームワークのイメージをつくっていきたいということでございます。

これはちょっと例としてよろしいかどうかわかりませんが、ヨーロッパにおきまして今進んでおります表示認証システム、これは建設製品指令というディレクティブのもとで進んでいるものでございますが、これは従来の製品規格とはちょっと異なる建築基準で必要な性能特性だけを実は集めて、それを表示する。表示するためにどれだけ製造者が表示する内容にどのような手法で責任を持たなければならないかと。これはちょっと訳しにくいんですが、AoC(アテスペション・オン・コミッティー)という形での仕組み、モジュールを設定しまして、例えばコンクリートだったらモジュールの1プラス、釘だったら例えば3とか、ちょっとそれはいいかげんな話でございますが、その性能が建物の性能とか環境に与える影響の重篤度に応じまして、このモジュールを実は規格上設定してございます。こういった仕組みを参考としながら、我が国における、かなり類似のシステムになろうかと思うんですけれども、そのシステムのイメージ明確化を図っていきたいというふうに思っております。

 2番目、これは建築材の性能特性項目の材料類型に応じた整理、これは簡単に書きました。これは非常に材料、建築に用いる材が非常に多うございますので、これはそう簡単にはいかないと思っておりますけれども、各種の建築物の性能要求の適合検証法、いろいろな性能や構造だけではなくて、例えば防火性能、それから環境性能いろいろなものがございます。それについてのリスト化・分析を図っていく。その中で材料特性をどのように扱われているか。これは今必ずしも明確化されておりません。実験によって得られた数字を使うものもありますし、そうじゃない場合もある。その辺の明確化を図っていきたい。それの少なくとも体系としての整備を図っていきたいなと、こういうふうに思っております。

 3番目は建築材料の多様な性能特性項目に即しまして、「材料性能評価・表示」の技術的フレームワーク、先ほど言いましたように、全部をすべてこの3年で開発するのは無理でございますので、どのように考えていけばこの材料類型に応じた的確な制度的なフレームワークがつくれるか、または性能表示的なフレームワークがつくれるか、それを明らかにしたいと思っております。これをベースにそれぞれの材料製造メーカー等とも連携しながら、それぞれの類型ごとのシステム開発を進めていただくということになると思います。

 4番目は、今度は性能表示とペアになります材料の性能品質認証システム、これがどのようなものであれば信頼性を持って建築基準の運営上受け入れられるか、そのための技術的フレームワークを開発する必要があります。これも希望の手法を集め、それから現在例えばJISマーク制度とかで行われております品質管理とか、第三者検査等の仕組み、これを分析・検討していくということになります。その上で先ほどヨーロッパの仕組みにもご紹介申し上げましたが、我が国の建築基準上必要な認証システムとして信頼性がどの程度あればいいかと、このための与条件を明確化していきたいと思っております。

 5番目でございます。フレームワークがかなり目標として大きな部分になるかと思いますが、それだけではなかなか民間より産業開発し、ご協力もいただけないということで、ある可能な範囲で具体的な材料を使いまして、計画をいたしまして、性能評価・表示基準、それから、性能品質認証システム承認基準の試行的開発を行っていきたいというふうに思っております。3年度の中で非常に膨大な数全部を当たることはできませんが、基本的な枠組みをこの基盤研究でございますが、研究プロジェクトで整理し、できるだけ早い時期に具体的な建築基準等の基準そのもの、または運営方式の方に反映させていきたいというふうに思っております。

 研究実施体制、これはかなり行政部門との連絡調整が必要でございます。国総研中心になりまして一方で独法建研、それから一方で学会関係の諸委員会、さらに関係省庁、これが今度は製造者団体、それからさらに建築の設計・施工またはマネジメント、または維持管理系の専門家団体の方々と十二分の連携を図っていく必要があるというふうに思っております。

 非常にかいつまんでご説明いたしましたが、以上でございます。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。これは非常に国総研らしい遠大なテーマでございますね。審議時間は何分ぐらいでございますか。

(事務局) 15分ぐらい。

(主査) 15分というふうに一応委員の先生方、お含みおきください。何かご意見ございますでしょうか。どうぞ。

(委員) 発言すると自分の首が絞まる可能性もあるんですけれども、ここでおっしゃっている建築材料というのは、具体的に言うとどの範囲まで入っているのかが、実はなかなかはっきりさせられないのかなと思っているんですが、例えばメーカーがつくっている石こうボードとか何とかというようなものではなくて、もうちょっとアセンブリーに近いようなものも入っているはずだと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

(国総研) おっしゃるとおりです。どこを少なくともこのプロジェクトで責任を持ってやる範囲にするかと、非常に悩んでおりまして、今おっしゃったように建築物の性能評価に用いるだけの一番小さいエレメントが、例えば鋼材でありますとか棒鋼でありますとか、そういうかなり素材的なものもあれば、今先生おっしゃられたようにアセンブリーですね、例えば木造の耐力壁とか、そういったもので既にマーケット動いておりますから、恐らくやりたいのは少なくとも今の現状法で使っておる一番大きいユニットのところまでカバーすべきだと思っています。ただその3年間と限られたリソースの中でどこまでできるかというのがございますので、少なくともフレームワークの中でそれは当然やっていきたいと思っておりますが、実際に例示的に開発するものにつきましては代表的な材料ということになるかと思っております。

(委員) それで、私もちょっとだけISOの国内委員会をやらされていて、すごく思うのは、きょうの5ページの資料のなんかはヨーロッパはちゃんとそういうのの担当者がいるんですけれども、日本は結局学者の先生がしこしこ自分でやるしかないみたいな世界があって、逆に言うとそこのところに公務員さんをもうちょっとお張りつけになったらどうなんだろうというのが僕の気持ちなんですけれども、そういうところまで発展的に考えられたらどうかなと思うんですが、いかがでしょうか。

(主査) それは研究の範囲内ですか。

(委員) 研究の進んでいく先として。

(主査) じゃ参考意見として。

(委員) はい、すみません。

(主査) これも僕も今の最初の、○○先生からお伺いしたところ、今ISOとしての建材の枠組みとかデータベースとか、そういうものはもう持っているんですか。これからそれを考えるというお話でしたね。

(国総研) ええ、これからの整理でございます。

(主査) そうですか。それからもう一つは、大体あらゆる材料がいわゆるJISとかJASとか、そういったものでそれなりの性能機能というのはなされていないんですか。僕は日本で生産されているあらゆる工業材料は、大体全部何らかのあるんじゃないかと思うんだけれども。そんなことはない。

(国総研) 建築として使う素材系のもの、それからいわゆるボード類、そういったものにつきましては製品規格としてはかなり整備されてきております。ただその製品規格イコール性能をうまく建築物で使う性能をそのまま規格の要求事項に入れていただいているかというと、そんなことは必ずしもありませんで、まだまだ使用材料とか構成とか、組成とか、そういうものを決めているものも多うございます。

(主査) ではそういうことで、これからそういったことがちゃんと表示してくれるような、そういう枠組みをつくろうと、そういうご研究。

(国総研) というか、これはJISそのものを変えようということではございませんで、建築基準というか建築設計、工事監理の中で受け入れる方、要するに建築物に必要な性能はこういうものだということをちゃんと少なくとも言えるようにしよう。それについて規格に基づいて表示していただいてもいいし、規格に基づかなくて試験データをもって表示していただいてもいいしという形の仕組みをつくっていく必要があるだろうと思っております。ですから今のJISマークみたいものを、恐らく我々が考えている我々のリクエストにこたえていただける、承認し得るシステムの中の一つだというふうに考えています。

(主査) それでわからないのは、個別の製品を対象にしてやろうとしているのか、そうじゃなくて性能表示システムの枠組みをつくろうとされているのかですね。

(国総研) この研究そのものは中でちょっと舌足らずでご説明しましたが、我々がつくるのは、どういうものだって受け入れ可能だよということのフレームワークをつくるのが今のところ精いっぱいだろうと。それに対して例えばJISに沿ってやっていただける業界団体もあれば、そうじゃない試験制度にのっかってやっていただく方、例えば海外のメーカーも同じフレームワークにのっとって提供してきてくれるだろうというふうに期待しています。

(主査) じゃ同時だったので、○○先生まだご発言されていない。

(委員) すみません。おくれて来まして申しわけございません。間に合うかどうかわからなかったので資料の7と8に関しては意見書を出させていただきました。1番目と3番目に書いているように、研究の目的とか出てくるアウトプットというのは非常に意味があるというふうに思うんですが、具体的なことが書かれていない。今の○○先生のご質問にも関連するんですが、この研究はフレームワークの研究なので個別の問題ではないというのはわかるんですが、結局この研究を進めようと思うと、どういうところがネックになって、何を克服すればこの研究が実現するのかというようなことが、具体的によくわからないんです。

材料の種類によって課題が違うだろうとか、性能項目によって課題が違うだろうというふうに思うんですが、この研究を進めようとされるときに、こういう材料についてはこういうことが問題で、それを例えばこういうふうに考えれば、うまくこのフレームワークというのができるんじゃないかとか、そういうことを具体的に教えていただけると、この研究の内容が理解できるなと思ったので、2番のところにそういう意見を書かせていただきました。

 以上でございます。

(国総研) ありがとうございます。実は正直申し上げまして、先ほど主査のご指摘もございましたが、かなり一番の底辺あたりから整理をし直さなければならない課題でございまして、実は今○○先生のご指摘、もちろんそのとおりなのでございます。それを多分半年後とか、そのあたりにはっきりさせることで何とかこの3年間のプロジェクトをやっていきたいという。実は今段階で私どもにつきまして大分慣習と、それからこれまではJISとかJASとかそういうものにどっぷりつかり切りまして建築基準の作成とか運営をやってまいりましたので、本当にどこに問題があるか実は今大混乱をしている最中でございます。これは少なくとも予算をとってからということじゃなくて、今年度も当然やっておりますけれども、もうちょっと猶予をいただきたいというのが、実は本音でございます。今年度中にはもうちょっとはっきりできる方針を出したいと思っておりますので、お願いします。

(主査) ○○先生。

(委員) この研究はかなり興味深いところがありまして、事前に注意深く読まさせていただきました。先ほど問題点としての指摘が○○先生の方からされていますJIS、JAS等との関係ですが、建築にはもうJIS、JAS要らないというようなことを言われる人がいたりして、建築材料をつくっている産業の方々からすれば、相当混乱を招いている仕組みが、現在の基準法37条の方でも出てきているように思います。

 そこにこういう形でJIS、JASの制度と並列するような仕組みを構築しようという流れというのはいかがなものでしょうか。他の産業にあっても、実際にこういうJIS製品みたいなものがあるにもかかわらず、JIS規格の性能以外に何か設けなきゃいけないということが実際にあるのかどうかというところが非常に疑問でありまして、もしそうであるとすれば、それはそれで、何か産業自体の構造なりの問題点があるのではないかなというふうに思います。

 もし建築だけがこういう仕組みをとろうとしているのであれば、建築の産業自体がそのJISの規格では満足できないような特異な構造をしているのではないかという気もしまして、その辺のところを本当は改善しなきゃいけないのではないか。もしくはJISの規格自体をもう少しここで説明されているような内容に変革していく動きをすべきではないかというふうに思います。つまり、JISと提案される制度とを並列してしまうことは、産業にとっては非常に負担がかかることにもなってくるのではないかなというふうに思います。

 それからもう一つ、建築物の中で発揮される性能ということが最終的には要求されると思うのですが、建築物の中で発揮される性能を製品・材料メーカーに求めるというのは非常に酷だというふうには思います。材料製品をつくっている側からすれば、どういう条件が与えられて、どんな外力が与えられたときにどういう挙動を示すかということは表示できるかもわかりませんが、その性能が建築された建築物の中で実際に発揮するかどうかというのとは、また別のことだと思います。そのようなことまでも建築主事が確認申請のときに判断できるかというと、相当建築主事は高度な判断力を要するのではないかというふうに思いますので、何かちょっとその辺は私の理解が不足しているかもわかりませんが、ご説明いただければありがたく思います。

 それから…。

(主査) 簡単にしてください。時間がない。

(委員) すみません。では以上で結構です。

(主査) ではどうぞ。

(国総研) 最初のご質問なんですが、ちょっとなかなか説明がうまくいっていないのかもしれませんが、我々はJISに置きかわる仕組みをつくろうとしているわけでは毛頭ございません。製品規格をつくろうとしているものではなくて、先ほど言いましたように建物に製品規格のカテゴリーにかかわらず、どんなものでも例えば建物の構造のコンクリートの補強、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、そのリフォースに使うものであればこういう特性が要りますよ、降伏強度が決まってそのヤング率のところが決まって何だか何だかと、場合によってはコンクリート付着性が要るかもしれません。そういったものをクリアしてある程度の数値を持っているものだったら、基本的には使えるようにしたいというのが基本的なことなのです。それがJISものの製品がそれに当たる場合もあるし、JISに入らない、場合によっては海外規格でもいいんですが、別の製品スペックに基づいたものでもいいんじゃないかということであります。

 それから少なくとも建築基準の性能規定化をやる中で、使用する材料の自由度化を拡大するということは、これは至上命題としてございます。したがいまして残念ながらJISで決まっている製品だけを使うということが必ずしも望まれる姿じゃなくて、むしろJISで決まっている伝統的な製品以外の製品も受け入れていく。将来それがあるJISという定型的な製品規格の中に、そういうJISは当然業界団体がおつくりいただいて、安定した供給を図っていただく、そういう姿を考えていると私どもの方は考えています。ちょっとお答え十分になっているかどうかわかりません。

 それから2番目の中の…。

(主査) ちょっと今の1番目ね。○○先生の二重構造を私もちょっと心配で、JISがなかったらJISをつくればいいわけで、国交省でつくることは幾らもできるわけですよね、JISは。ですから今の説明は、私も○○さんと同じ疑問を抱いています。JISは何ぼでもつくれるわけですよ、なければ今。

(国総研) そうですね。例えば具体的に言いますと、木ねじみたいなものは実はJISもありますけれども、それとは違ういろいろな各社製品が今実際の建築には使われている。高力ボルトもそうなっていますね。いろいろな条件がありまして、非常にイノベーションが激しい世界です、その材料の世界というのは。

(主査) イノベーションが激しいからJISが対応できないというふうにいくのか、あるいはもっといって、その枠組みが必要だということだったら、もっともう少しそこのところご説明いただけると納得が。

(国総研) 一方、もうちょっとかなり原理原則的な話から言いますと、JISそのものが性能規定化すればいいんじゃないかという発想をしたことが17〜18年前にございまして、経産省の方もかなり積極的に取り組んだんですが、なかなかそれは難しい。

(主査) そうですか。

(国総研) あるいはいわゆる製品としてある、つまり一つの線だけでやっているわけじゃなくて、建築基準の例えば強度だけをやっているんじゃなくて、例えば寸法でありますとか、いろいろなことが製品の規格として求められるとか、それはやはりいわゆる仕様型の製品規格のメリットが非常にありますから、なかなかそこは出てこない。それ以外のものはやはり規格外として扱わざるを得ない。

(主査) そうですか。

(国総研) はい。それは建築基準としてはなかなか排除すべきじゃないなというのが、今の考え方です。

(主査) 二つ目のやつ。

(委員) すみません、今のところで、JISがあるものでもJIS以外の規格といいますか、国交省の方で材料製品を受け入れる性能規格みたいなものをつくってしまうと、ダブルスペックになってしまうことはないのですか。

(国総研) 我々要するに建築物として必要な性能に関して、じゃあその性能はこういうはかり方ではかってください、表示してくださいと、ここの性能評価・表示基準、それをつくろうということです。それに対してサンプル試験をする。サンプル試験をしたものと同等のものが世の中に出回って、それを受け入れていいよという、こちらも実は安定性というんですか、同一性能、信頼性につきましては、それはJISがそのまま使える。あるJISの規格についてはサンプル試験をやった場合に、こちらの少なくとも10という数字を評価できることになります。それにつきましてはわかりました。それを受け入れましょう。それに対してではどうしてその製品が10という特性を持っているか、信頼性あるんだと、それは実際のJIS規格に基づいてつくられていて、それはこういう品質管理をされているから、そういう仕組みになって、決して置きかえるわけじゃなくて、あくまでも補完し合う仕組みをつくろうとしている。

 それから、恐らく今2番目のお答えも一緒に言ってしまったと思いますけれども、建築物の中で使われる性能、「表示」という言葉が逆に適切かどうかという問題になりましたが、あくまでもこちらとしては、設計上どういう、例えば今言った降伏後の伸びが何%あればいいかとか、また何%だったらこういう計算上使えますよと。それを表示してくださいというのは確かに使う場所によって違いますからね。同じ鉄筋バーでも使う場所によってそれが求められる場合も求められない場合もあります。それにつきましては当然ながらいろいろな複雑な仕組みを考えなければならないというのは自覚しておりまして、その辺実はこのヨーロッパの仕組みに学ぶところが多いんですけれども、インテンティド・ユースという考え方を使いまして、どういう部分に使われた場合にはこの性能が必要である、こういう部分に使われた場合にはそれは要らないというようなことが、割と明確に整理されております。我が国で同様にその整理ができるかどうかは我々の力量にかかってしまうんですけれども、その辺につきましては当然ながら負担とならない、それから性能表示と今先生がおっしゃられたのは表示の責任をどういうふうに負われるかという話だったと思いますが、それは過重になるようなことにならない、当然その問題は自覚しておりますので、それは的確に処理していきたいと思います。

(主査) JISなんかに通則、準通則、それから個別と3段階あるんですけれども、今の話を聞いていると限りなく個別に近い話をされるんですけれども、最初さっき進めたように枠組みとおっしゃって、通則のところか、準通則、その辺をやろうとしているのか、本当に個別でやろうとされているのか、どのレベルでされていますか。

(国総研) ○○先生のご指摘は、もうちょっと具体的にお示しすればよかったんですが、例えば製品規格ということですと、同じ鉄鋼または形鋼という形でもいろいろなものがございますよね。私ども例えば工場用の鋼材という大きなグループでとらえて、これは普通だと裏面に使われるからこういう性能が当然計算上も実態上も必要だよね。そこまでのインタフェースをつくろうということです。具体的ないろいろな品目ごとの製品規格は当然ながらJIS側でおやりいただく。

(主査) わかりました。準通則の感じですね。

(国総研) はい。

(主査) まだ時間あるの。15分たったらもうチンと鳴らして。これこのテーマだったら何時間でもやっているよね。ほかのご意見ございませんでしょうか。どうぞ先生。

(委員) 今、欧州における説明がなされましたが、基本的には建設業という業の特質よりも、例えば同じ建設業として国際的にこういうものがちゃんと適合しているかどうかという点が大事だと思います。認証というのはいわゆる社会的規制ですから、ある国だけが突出してしまうと、それは貿易上の障壁にもなりかねません。WTOの問題とかも出てきますので、基本的には今回の計画の中で、できるだけ国際的な歩調と合わせるような研究のやり方ですね、そういうふうにやられた方がよろしいのではないかと思います。以上です。

(国総研) 今のは大事なご指摘として承りました。

(主査) ほかにございませんでしょうか。それでは大変貴重なご意見、これは事前評価ですよね。これから始まるわけですね。

(国総研) はい。予算がいただければ来年度から開始したいというふうに思っております。

(主査) 今予算を申請しているということなんですか。

(国総研) 要求中でございます。

(主査) そんなところでよろしいですか。この後これを事務局がまとめていただいてということですか。

(事務局) これでどうかということを。実施すべきか、一部修正してとか、検討すべきとかということです。

(主査) そうだ、先ほどの資料2でしたっけ。いかがでしょうかね。それはやめろということはないと思いますけれども。実施すべき、一部修正して実施すべき、再検討すべきという、いろいろなことがあるかと思いますけれども、極めて重要、ディテールはともかくもう必要性の高いテーマだと思いますけれども、いかがでございましょうか。

 ではいろいろきょうのご意見を反映させるとして、実施していただくということでよろしゅうございますか。

(異議なし)

(主査) それでは、そういう形でお願いします。

 では次に移ってよろしいですか。二つ目の建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究、これも事前評価でございますね。

(国総研) たびたび出てまいりますが。

(主査) これが最後ですか。お疲れでしょう。

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〈事前評価A建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究〉

(国総研) 建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究、これをプロジェクト研究として実施してまいりたいものでございます。

 まず研究の背景のご説明を申し上げます。まず第1点は建築空間において「不慮の事故」というのはやはり増加しているということでございます。細かい数値については説明控えますが、建築空間内での事故・災害による死者数がふえており、その中でここにお示ししましたような墜落、転落、転倒、溺死というのもございますが、これは住宅のことでございます。そのほか火災・爆発、そういったものです。その中でも転落、転倒、墜落という建築物空間にかかわるようなものでお亡くなりになる方々がどうしてもふえつつあるということでございます。

 その背景といたしまして、一つは人口の高齢化というか、ライフスタイル、積極的にいろいろご活動されるということと、一方で回転ドアという例を出すのがいいかどうかわかりませんが、建築物の中でより高い機能性とか、利便性を実現するいろいろな設備でありますとか、空間計画でありますとか、そういうものを導入してくると、どうしても潜在的なリスクが生じてくるということが言えるんじゃないかと思います。ここにデータとしてお示ししましたのは、年齢区分ごとのエスカレーター事故の発生数とか、自動回転ドアの設置時期と事故件数の推移ということでございますが、こういうデータを見てもどうしても潜在リスクが高まっていると言わざるを得ない状況にあるかと思います。

 それに対しまして、事故リスクから国民を守るというのが建築行政のやはりかなり重要な責務になってまいります。例えば平成16年の衆議院の委員会の附帯決議でございますが、建築物の事故についての情報システムを早急に構築しろ、事故情報を建築物の安全対策に的確に反映しなさいという決議。それに反応いたしまして、昨年度末になりますが、ことしの3月末には住宅局から建築物の事故防止のための対応それから連携体制、これは各地方行政におきます消防部局、それから特定行政庁、これは建築主事等の建築許可または建築確認審査をやっているところでございますが、それが連携して事故情報を収集して連絡体制をつくりましょう。その事故情報をちゃんとフィードバックして上にありますような安全対策にも反映していこう。

さらについ先日でございますが、社会資本整備審議会の建築分科会の中に建築物事故対策部会というものを発足させていただきました。その中で事故情報の継続的分析とか必要な対策の検討をやっていこうと、こういう非常に行政的な対応、これに対しましてやはり技術また研究面からこれを支援していくというのを国総研として大至急図らなければならないというふうに考えております。そういう背景からこの研究を企画し、予算要求を図っているところでございます。

 研究の目的でございますが、今申し上げましたように新しい空間・装置が出てきた、それから高齢者など生活様式が変わってきた、潜在的なリスクが発生している。ユーザーは正直言ってリスクを認識しないまま事故に遭遇してしまう。非常に不本意な形で事故に遭われるケースが非常に多うございます。その潜在リスクに対抗いたしました社会的手段の開発、行政的対応といってよろしいかと思いますが、それが求められる。一方事故のフィードバック・普及、一方では自衛策を講じていただくこともさることながら、事故リスクをうまく事前に評価、察知をいたしまして、事前対策をとれるように、その建物空間の施設管理側で事前の対策がとれるような形でのいろいろな技術的基盤をつくっていきたいというのがこの研究の一番の核心の目的でございます。

 内容といたしましては、事故データの収集からガイドライン・マニュアルまで流れの中でやってまいりたいというふうに考えております。どうもなかなか一つ一つがかなり困難性を伴う研究になるかと思いますが、適切にかんがみ、総力を挙げて頑張っていきたいというふうに思っています。

 1番目は事例・事故データの収集・集積でございます。過去の事故情報とか潜在的な事故、ヒヤリ、ハットと言っておりますが、そんな事故経験情報、それから先ほど申し上げました救急搬送事故の情報が、各行政庁レベルでの連携で集められるということになりますと、これは非常に貴重な情報になると思います。これらをとにかく集め、集積していこうと。その集積したデータを使いまして、被害リスクの高い事故パターンを抽出していこうと。これはとりあえずの仮説でございますが、今のところ四つの要因で制度的に整備したらいいのではなかろうかというふうに考えております。これは研究の段階での修正が必要になってくるかもしれません。

四つというのは人間属性、例えば低年齢、それから車椅子を使っている方、そういう方です。それから空間・装置系という形で、例えば吹き抜けにエスカレーターを設けるとか、そういう形。時間的状況としましては、平常時なのか例えばラッシュ時、または人気グループの公演が終わった後の直後の混雑期なのか、それとも火災等のパニック状況下なのか。それから事故の種類といたしまして、滑って転ぶのか、転倒するのか、挟まれるのか、いろいろな形。これは人間と建築空間・装置系との相互関係によって生じてくる。この四つぐらいでうまく整理できるんじゃなかろうかというふうに今のところ考えております。これについてはまだ予備検討を進めておりますが、今の段階ではこういう仮説でこの研究を進めていきたいというふうに思っています。

この事故パターン、リスクが高いものをピックアップしていこうというのが第1段階でございます。第2段階といたしまして、リスクが高そうな事故パターンを用いまして、事故メカニズムモデル、並びに事故リスク評価モデルをつくっていこうということでございます。これももうちょっとまだ十分な詰めの段階に入っておりませんが、事故メカニズムモデルとしまして、どういう具体的な事故パターン、抽出しました事故パターンがどういうメカニズムで事故に至ってしまったのかということを説明可能にするモデルをつくっていきたいということでございます。ここに書いてある中身はまだ試行段階のほんのイメージとして書いておりますが、これを事故パターンごとにやっていく。そうすると何となく事故の類型、例えば転倒というのはどういう状況で発生しやすいのかとか、そういう状況がわかってくるんじゃなかろうかと思います。

それをさらに用いまして、事故リスク評価モデルというものをつくっていきたい。これは例えば、これもどこまでできるかというのが非常にチャレンジな部分がございますけれども、例えばエスカレーターの乗り降り空間における事故というものをとらえた場合に、例えばエスカレーターの速度を落とした場合に、どれだけ転倒事故の機会が減るんだろうか。逆にスピードを上げた場合にどういうふうにふえるんだろうか。あるいは途中をわきを若い人が駆け抜けていって、ご高齢の方がびっくりして落っこってしまうというふうな話が結構聞かれますが、そのわきを走らないようにした場合に、どれだけリスクが下がるんだと、そういう感度解析、具体的なシミュレーションをいたしまして、この事故リスクをある程度、操作可能な形で評価できるモデルをつくっていきたいというふうに考えております。

そういったどちらかというとかなりエンジニアリング的な解析、それから集めました情報を総合いたしまして、「ユーザー生活行動安全知識ベース」というものをつくっていこうということです。これは知識ベースをつくること自身が最終目的ではございませんで、これは次のガイドライン等にうまく橋渡ししていくための一つのデータの蓄積ということでございます。この絵はエスカレーターにおける事故を例に今申し上げた研究内容の@〜Bを系統的に説明しようとしたものでございます。説明はダブりますのでこれはごらんいただきたいというように思います。

研究の4でございます。先ほどの知識ベースを、これは非常に生きた知識ベースになるかと思います。どんどんどんどん情報が入ってくるし、研究の進展とともにいろいろな例えばリスク評価の方法論も蓄積していけるんじゃないかというふうに期待しておりますけれども、それを使いまして例えば行政的には建築空間日常安全改善ガイドライン、これは新築または新しく設備を設けようとする場合に、事前に潜在リスクを評価して、それが余り高くならないようにしてくださいという形で、目的で使おうとしておりますガイドラインでございます。ガイドラインになるのか若干強制的な力を持って適用することになるのか、そのときの社会状況によるかと思いますが、そういうガイドライン。

それから、もう一つは今ある建物、それから空間と装置のシステム、それを評価していただいて、管理者とか所有者の方に、またはコンサルタントの方々に評価していただいて、余りにも潜在リスクが高そうな場合にはそれを改善していただく、そのためのガイドライン、これを行政的な施策としてやっていく必要があるだろうというように思います。もちろんこの知識ベースを使いまして、例えば装置の開発を行います製造者団体に向けましても、そういった建築担当の考え合わせを含めましたリスク評価、安全評価、そういったもののマニュアルをつくっていただくということにご活用いただけると思っておりますし、建築物の所有者とか管理者団体、または維持管理のコンサルタント団体等につきましても、当然安全強化のガイドラインとしてご活用いただけるものかというふうに考えております。いずれにしろこのプロジェクトでは、知識ベースをつくり、それを最低限行政的に対応する必要がある新築、それから既設のものの評価、安全改善計画ガイドラインとしてつくってまいりたいというように考えております。

年度計画がとして3年間、かなり急いでやらなければならない研究でございます。前倒しでいろいろな情報収集、それからモデルの作成等を2年間ぐらいで集中的にやってまいりたいと、こういうふうに思っております。

また取り急ぎでございますが、以上でございます。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。ではご質疑、ご討論お願いします。

(委員) このリスク分析といいますか、どこまでこれは掘り下げて一つの事故事象を分析していくかというのは非常に難しいと思うんですけれども、先ほどの例で出されておられました回転ドアの事故の例ですけれども、あそこに挟まれるというリスクがあることは多分だれでもわかっていることで、それをもう少しリスクとして、この間の例でいいますとセンサーは一応働いてはいたけれども、その位置が悪かったとかということになると、一つ一つの事故の分析が物すごく大変なことになるんじゃないかなという、ちょっとステップとしてその辺の事例がもう既にお集まりであればまあいいのかなという気がいたしますけれども、そこはちょっと大変だと思うんですけれども、逆に言えばそういう事故事例、もしくはヒヤリ、ハットの収集ということもございましたけれども、そういうものが幅広く集まるのはやはりこういう国総研さんとかというところでないと、逆に民間ではなかなか集まりにくいと思いますので、これをぜひやっていただきたいなとは思います。

(国総研) 本当に今ご指摘がございましたデータが集まらない仕組みというのは、往々にございまして、かなり社会問題にならないと。今回は大分、大阪府さんを初め、そして状況性としましても情報を集めるよう、ヒヤリ、ハットを含めて集めようという動きをやっていただきましたので、少しは情報が集まることになりました。ただヒヤリ、ハットがじゃどうやったらもっと集まるかというのは、実はまだ模索中でございます。どういう形でやっていくべきか。これはもう一つ行政の方ともタイアップして検討しておりますので、もうちょっといろいろな工夫をしてまいりたい。ただリスクの評価は非常に難しゅうございまして、今ご指摘の件でいきますと、回転ドア、やはり挟まれてしまった後にこれはああだった、こうだったという検討は、ここではなかなか。事後の検討はいろいろできるんですが、それではちょっと犠牲になられた方がやはり不本意だということで、どうやったら潜在的なリスクを評価し得るか、もしくは把握し得るかというのが多分これの一番重要な課題だと思っております。難しいのは非常に自覚しておりますけれども、何とかチャレンジしてみたいというふうに思っています。

(委員) 3点、コメントでございます。1点目は生きたデータベースというのがございましたので、遊技施設は大体アメリカで年間2人か3人死ぬんですが、米国は遊技施設の事故に関してはもう非常に生きたデータベースを持っていまして、かなり細かいところまで1件ごとに、指の骨を折ったぐらいのレベルから上ですけれども、全部出ているんで、それを利用されるのは、遊技施設は一応国交省の範囲の中なので、やるかやらないかを決めていただいて、生きたデータベースとして使えるということ。

 二つ目は、エレベーターとエスカレーターにつきましては、建築設備昇降機センターで私が編集長をやっていたころ10年ぐらい前から一応無理やり集めさせて、とりあえずデータベースはあります。

 それから3点目は、エスカレーターの話が出ましたので、倍速で運転しているエスカレーターというか、ウクライナとかモスクワとかは倍速で運転していても大して死なない、一生懸命見ていたんですけれども、だれも転ばなかったんで、ああいうところのよりリスキーなところで情報を調べてみるというのも一つ手かなというふうに思いました。

 以上です。

(主査) 何かコメントございますか。

(国総研) 貴重なご指摘として活用させていただきたいと思いますが、3番目のコメントなんですが、やはり日常使われている方は慣れるんですよね。

(委員) そうです。

(国総研) そうじゃない方、例えば回転ドアも地方から出てこられたお子さんが喜んでしまってということ、そういう非日常的なところにやはり潜在化したリスクが顕在化するという中にどうもありそうなので、その辺どういう形で解析したらいいか、ちょっとまだ模索中でございますが、その辺についてぜひ明らかにして、いろいろな方々のご英知をいただきながらやっていきたいというふうに思っております。

(主査) 今、非日常とおっしゃったけれども、僕もそこのところ大変大事で、これは日常安全、日常災害とか、最後から二つ目のスライドもそうなっているんだけれども、非日常というのがどういう形で入れるのか、なかなか難しいですね。基本的にあれでしょう、家の中で段差があってつまずいてけがしたとか、そういうのが一番事故としては多いんじゃないんですか。

(国総研) 件数としては多ございます。

(主査) ね。メディアが大々的に取り上げる回転ドアなんかよりも、数から言えばはるかに多いよ。

(国総研) これもどこまでの範囲をうちの研究でやっていくべきかというのも、内部でもまだ議論の最中なんですが。

(主査) なるほど。

(国総研) はっきり申し上げまして、それぞれのユーザーの方々の自衛策でやっていただける部分は、やはり余り規制的なこととしてやるべきじゃないんじゃないかというふうに思います。さっき言いましたようにそんなはずはなかったのにという事故を、被害を受けられた方が非常に不本意に感じるようなものについては、やはり情報の対称性もありますから、国として責任を持ってその情報がうまくユーザー側にご承知いただけるような仕組みを考えていくべきだと思いまして、その点を重点にしていきたいと思います。

(主査) なるほどね。国総研の研究としての今の正当性というか、必要性の部分は今のご発言でございますね。どうですか。

(委員) 入り口と出口でそれぞれありますけれども、まず入り口の、これはとても大事な研究ですので、これは事前ということでは私としてはぜひおやりになる研究だと思うんですけれども、それだけ非常に難しいテーマだけに、入り口としては○○先生や建研にいらっしゃった古瀬先生といった方々の既往研究をやはりそれなりにレビューされて、それで結果的にデータが古いとか使えないとするのは全く構わないと思いますが、ゼロからこのフレームを組むのは、それだけであっという間に3年間たってしまうかと思いますので、まず既往研究をやはりそれなりにレビューされて、使えるものはそのフレームあるいはデータを使われていかれた方がいいだろうというところがあります。それがまず入り口です。

(主査) ちょっと今途中ですけれども、説明されなかったけれども、ここにマップがありまして、これで全部一応レビューしたということは、これで示しているわけですよね。マップがあるでしょう。これは要するに今は○○さんまことに大事なご指摘ですけれども、スタートするに当たって、この赤とか黄色とか青で、多分ナオエさんのやった仕事なんか全部赤とかしているんじゃないかと思うんだけれども、一応それを踏まえているわけですね。

(国総研) はい。これはこの場でのお答えとして…既にナオエ先生等でご協力いただきまして、勉強会を始めております。始めた結果、非常に難しいということが逆にわかってきました。

(委員) もう少し蓄積があるように思うんですけれども。財務省に持っていくのはこの色合いでいいと思います。

 それで出口の方ですけれども、最後の7ページ目にあって、あと出口がやはりこれ一つはこういうデータベースができることはいいことなんですけれども、このプロジェクトが終わってしまってだれも使えないというか、だれが面倒を見ているのかということではほとんど意味がないので、やはり国総研という組織の性格上、これができ上がるとして、このプロジェクトの後どういうふうにこの知識基盤というのをメンテナンスし、だれが幹事役をやっていくかというあたりも一緒にしていく必要があるんじゃないか。

それは先ほどデータをとるという話だったんですけれども、結局データ提供していただく方はそれがどう扱われるかという出口のところを見ながら出すのか、どこまで出すかということがありますので、やはり早期に、集めてしまってからどうしましょうかという話じゃなくて、早期にどういうふうにこれは開示して利用していくかということをぜひつくっていただきたいと思います。

 それからもう一つは、これはいつも評価モデルになっているんですが、評価だけではどうしようもないわけで、むしろ知識基盤のあり方というのは、一つはネガティブ的なマニュアルにはなるんですけれども、基本的には生活者もあるいはプロである設計者や管理者も、一種の過去の事例から学ぶという、大切なことを自分が扱っている問題を学べるかという価値偏差だと思うんです。非常に座学的にわかりましたという話ではなくて。そうしますと、やはりこの知識基盤としてどういう形でそれを利用できるようにしておくかというあたりも、早期につくっておかないといけないと思うんです。

だからもしかしたらこの知の構造化と、大げさなことは言えませんけれども、どういうような情報がだれに対してやると、その人たちがみずからが学んで、管理なり設計に反映できるか、あるいは生活者の方がどういうような形で情報がまとまっていると意図的に気をつけるようになるか、出口の方を最初に設計された上で始められたらどうかなというふうに思います。

(主査) ありがとうございます。

(国総研) 非常に大変貴重なご指摘ありがとうございます。最後の方からお答え申し上げますけれども、実はこれは国総研単独ですべてやり切れる話では毛頭ございません。当然その役割分担をやりながらだと思っています。この知識ベース自身が国総研がこの研究プロジェクトが終わってからもメンテナンスするか、あるいは建物の例では独法建研にお願いをしてやっていただくか、またはもっと公的な団体にやっていただくか、いろいろな考え方があります。それも当然検討を始めております。その中でではどういう情報がこの中にあるべきか、ああせい、こうせいの評価基準だけではまずいというのは先生ご指摘のとおりでございまして、自分でやはり設計される方または行動される方がいろいろなレファレンスができるような仕組みをこの識別の中で考えていけたらと。それも国総研だけでやるというよりは、例えば設計者用の設計資料集成、最後は資料集成みたいなものをつくろうというのを独法建研の方で既に始めておりますので、そういうのと連携をしていきたいというふうに思っております。

(主査) 簡単にお答えください。

(国総研) 1番目は、組織については非常に難しい問題でございます。今申し上げたようにかなりいろいろな可能性を含んで、今検討を既に始めておるところでございます。

(主査) 今、○○先生がおっしゃったデータベースもコンテンツも大事なのですが、あれはどうして使われているかとか、どう評価されているか含めて調べるとちょっと参考になるんじゃないかと思います。

(国総研) それから事故情報はどうしても隠されますので、報告システムも要るんじゃないかと。

(主査) どうして集まっているかということも含めて。

(国総研) 多少権威、権力を使わせていただいた報告システムというのもやはりやるべきじゃなかろうかという議論も当然行政の方ともやりつつございます。

(主査) 2枚目のスライドで、社会資本整備審議会の建築部会の建築物事故対策部会、これと何が関連するんですか、これは。

(国総研) 密接に関係いたします。クボ先生委員長、それからナオエ先生代理でやっていただいています。

(主査) ナオエ君が代理。ああそうですか。

(国総研) ここに基本的に、こちらの成果物も当然ながら。

(主査) これすぐ出すんでしょう、半年ぐらいで。結果をこっちの方は。

(国総研) これはとりあえず今申し上げた事故の情報をどういうふうにストックして、いろいろな関係者にフィードバックするかということをまずおやりになるというのを私は聞いております。

(主査) この部会では。

(国総研) それで、行く行くいろいろな事故の情報を集めて、ここに書きましたが必要な対策を検討するという段階でこの研究成果が生かされれば、非常にいいなというふうに思います。

(主査) そんなに長いのだっけ、この部会。半年ぐらいで出すとこの間言っていなかったですか。今年度すぐに。

(国総研) 結論をですか。

(主査) そう、この部会の報告は半年ぐらいで。

(国総研) いや、そういうふうに私は…。

(主査) ああそうですか。

(国総研) とりあえず集める情報、システムをどういうふうに構築するかという報告については、できるだけ早い時期に出すというようになっております。その作業を既に行政の方で始めておりますけれども、これは基本的には今後事故がなくなるまでというわけではございません。

(主査) この部会。普通こういう社整審の部会って、大体年度越えるということは余りないんじゃないですか。再発足はあったとしても。

(国総研) そうでしょうか。

(主査) まあどうでもいいけど、ここと連携しているわけですね。

(国総研) ええ、という行政との相談のもとでやっております。

(主査) それから○○委員からメモが出ておりますけれども、これ何かコメントございますか。

(国総研) ○○委員から、読み上げてもよろしいでしょうか。「研究内容として、事故防止のサインなど予防的な措置が講じられているかどうか要因もリスク評価モデルに組み込まれないのかと思われる。」ちょっと恐らくいろいろな注意事項とか注意喚起のためのサインということをイメージしたご指摘だと思っております。もしそうだといたしますと、当然ながらそれはリスク評価をもちろん下げる方の要因として当然リスク評価モデルの中に入れて、的確、適切なモデルにしていきたいというふうに思っております。それが一応ご指摘いただいたものの回答でございますが。

(主査) どうですか。

(委員) 四つの要因に人間属性と時間的状況とあるのですけれども、人間属性に関しては、今あがっているのは当事者だけなのですが、管理する側というのは当然入ってくると考えてよろしいんでしょうか。

(国総研) 管理ですか。

(委員) 管理側。時間的状況の方に混雑時、パニック時というのがあるんですが、こういう場合ですと管理する側がかなり関わってきそうな気がするんで、そちらの方のリスク、管理者側がどれぐらい日常的に従業員を指導したりしているか。日常とはいいながら、かなり非日常に近いような状況まで対象に入っているような状況なので、その辺についていかがでしょうか。

(国総研) それは、ちょっと今ご指摘いただいたところカットしたんですけれども、多分その話はこちらの空間・装置系の属性の方に入れて、どういうふうに従業員管理が行われているか、危機対応マニュアルをやっているかというのは、こちらの方で考えていくのかな、または改めてもう一つエレメントを起こすのかなと、ファクターをもう一つつくるのか、それは検討してまいりたいと思います。こちらはあくまでもユーザー、被害を受ける可能性のある方だと思います。ただもう一つはいわゆる労災的にメンテナンスをやっている方が結構被害に遭うということもありますので、それをどうするかというのが実はもう一つの課題として残っています。

(主査) だから人間属性でなくて、ユーザー属性と今、○○さんがおっしゃったように、ユーザー属性と書けば○○先生の質問は出ないですよね。

(国総研) わかりました。紛れのないようにいたします。

(主査) それでユーザーとなると、今度はサプライヤーがあるわけで、今おっしゃったのはサプライヤーの方は空間・装置系だと、そういうことですね。

(国総研) はい。

(主査) ほかにございますか。どうぞ。

(委員) これも先に出させていただいている意見書のとおりなんですが、今のユーザー属性のところで、高齢者や幼児、車椅子利用者を検討されていることは非常にいいと思うんですが、必ずしも建築計画分野でこれまで十分研究されてこなかった視覚障害者や認知症高齢者なども含めて検討いただけたらなというふうに思います。

 それからユニバーサルデザインという概念は、これまではどちらかというと設計者側の積極的なスタンスというふうな意味合いで使われていることが多かったんですが、さまざまな社会システムが変わっていくと、これまでは設計段階で必ずしも想定していなかったユーザー属性を幅広く想定しないといけないといいますか、ユニバーサルデザインが強いられる社会がどんどん進行しているように思います。ユーザー属性をどこまで考えるかということはこの研究のスタートラインで想定しておかなければいけないところではないかなというふうに思います。

 以上でございます。

(国総研) これも先ほどちらっと申し上げたんですが、それも実は非常に悩ましい話として今かなり湯気を立てて議論をしているところでございます。研究に向かう意気込みとしてはいいんですが、3年間でどこまで出せるかということになりますと、今ご指摘の視覚障害者は当然事前の想定に入っておりましたが、ちょっと認知症高齢者となりますと、どう扱っていいかは考えるだけのまだ知識が特にございませんので、これはちょっともっと勉強させていただきたいと思います。

(委員)視覚障害者の問題も短絡的に誘導ブロックの話にいってしまっているというところがあると思うんです。また、視覚障害者と言われる方の中で全盲の方というのは2割程度であるわけですから、いろいろなレベルの方がおられて、それに応じた対応というのが当然求められるわけです。

(国総研) このプロジェクトでどこまで切り取るかというのは、これも今年度ぎりぎり議論していきながら進めていきたいと思いますが、今のご指摘に関しまして、実は国総研全体といたしましては、ただ歩行者支援とか、例えばIT技術を生かしたまさに支援の仕組み、ユビキタスという形でいろいろな広範に都市空間とか、いろいろな都市交通も含めまして検討しております。その中でうまく位置取りを図りながらこのプロジェクトの目標を決めていきたいと思います。

(主査) どうぞ。

(委員) 日常性の中での事故というのは、多分ほとんどの場合がその物に内在する問題よりも人間の不注意だとか、ぼんやりした行動が理由であることが非常に多いと思うんです。ですからさっき例にあったようにエスカレーターが2倍の速度で走っても、そんなに事故がないのは、意識的に注意しているからであって、そういうことを考えるとリスクのあるものに対して、その周辺に「注意しなさい」という看板をかけるだけでもほとんどのことは解決してしまう可能性もなくはないんです。いやもちろんこの研究が重要でないと言っているわけではなくて、どういうものがリスキーかということをきちんと調べて、それをデータベース化して、その対策を講じることはいいんですが、比較的解決策は単純なことである、ごく常識的なことであるような気がしないでもないんです。つまり注意して階段を上りなさいとか、エスカレーターの前で走るのはやめなさい、とかというふうになってしまう可能性もあるんじゃないかな、と。それはそれでいいと思いますが、そんな印象を持ちました。

(国総研) 今のご指摘は先ほどの○○委員のご指摘のところにかかる、ここの面でどれだけ実現策に持っていけるか、とは言いながら、例えば注意したつもりでエスカレーターに乗っても吹き抜けで、下のフロアで何か格好いいダンスをやっていると、つい身を乗り出してしまって事故というケースはかなりあるんです。そういう注意はしていながらその注意の集中が続かないような状況というのも空間・装置系の中にございますので、少なくともそれは排除なりまたは建築計画上留意していくべきではなかろうかと、そこにやはり潜在的リスクがあると見ざるを得ないということを思っております。

(主査) しかし看板を出してもすぐ見なくなるよね。ほとんどね。駅の電車の放送と同じで。

(委員) だから余り多用すると今度はそれに注意を払わなくなるから、重点的に配置しないといけない。

(国総研) 先ほども言いましたように、自衛策をとるための注意集中力というのがやはりある程度期待して、それを期待しないようなものになると逆にユーザーをスポイルしてしまうということになりますので、それはやはりやりたくないなと思っておりますし。

(主査) はい。大体よろしゅうございますか。

 いかがでございましょうか、実施すべきか一部修正か再検討すべきかという。これは例が書いてあるわけですけれども。これはしかし必要な研究だと思いますけれども。先ほどの○○先生の出口、いろいろな意見ございましたけれども、出口を少し皆さんそれをどう使うのかという、その辺をご配慮いただければいいんじゃないかと思いますけれども。実施すべきということでよろしゅうございますか。

(異議なし)

(主査) では二つ終わりまして、ここで少し休憩をとりますか。では10分間休憩していいというご同意を得ましたので、その次ちょっと長いですから、事後評価1時間ぐらいかかるそうですから。

(休憩)

(主査) それでは事後評価のテーマに移りたいと思います。これはテーマがあるんですね。市街地の再生技術に関する研究について、○○さんご説明を。

(国総研) よろしいでしょうか。

(主査) ええ、ちょっとタイムテーブルといいますと、20分間ご説明いただいて、30分間審議いただいて、それから、それを30分審議しているうちにこれをお書きいただいて、この評価シートですね。その評価シートをどう書くかというのは資料2に事後評価とあって、それで例えば必要性、効率性、有効性とかということがございますので、一応その辺を踏まえてお書きいただけると、これでも書いていますけれども、このシートにも。それを皆さんから審議が終わると同時にこれを終了させていただいて、直ちに事務局が5分ぐらいで集計等をしまして、もうきちんと1から4まで、適切であったとか適切でなかったとございますけれども、ちゃんと数字で出しまして、それを皆様の前にその資料を集めて、それで最後の結論をもうここで出してしまうということでございますので、その辺をお含みおきの上ご審議願いたいと思います。

 それでは○○さんお願いします。

 

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〈事後評価@市街地の再生技術に関する研究〉

(国総研) どうぞよろしくお願いいたします。都市研究部長の○○でございます。プロジェクト研究:市街地の再生技術に関する研究につきまして、ご説明します。本研究は平成14年度から16年度までの3カ年で実施したものです。国総研の担当研究部は都市研究部、住宅研究部、建築研究部、総合技術政策研究センターが連携して実施いたしました。

 研究の背景と目的です。我が国の都市を取り巻く環境は産業構造の転換、少子高齢化、人口減少等さまざまな面で大きく変化しております。多くの都市で市街地の外延化と相まった中心市街地の衰退が進行するとともに、防災上危険な密集市街地が残されるなどの課題を抱えております。このような課題を解決するため、都市再生を推進することが国の重要な政策と位置づけられ、各種の施策の推進が図られているところであります。本研究は都市再生の推進の一環として、市街地の再生技術の研究に取り組んだもので、中心市街地の再整備、木造密集市街地の整備促進、都市のコンパクトシティ化の三つの柱により研究を実施したものであります。

 研究の構成です。課題市街地の再生ということで、中心市街地と密集市街地の二つを取り上げております。中心市街地の再整備手法では、アーバンスケルトン方式と名づけた手法の開発を行いました。これは都市の建築物、構造物を長期耐用的な基盤と需要に応じて部分的段階的に整備、変更、増減できる二次構造物の二つに分けてとらえる方式であります。これにより社会経済状況やニーズの変化に柔軟に対応できる都市の再整備手法を成果として、中心市街地の活性化につなげようとするものであります。

 密集市街地の整備については、密集市街地に多く居住している高齢者の資産を、リバース・モーゲージという金融手法を活用することにより建て替え資金に転換し、市街地整備につなげるための研究開発を行ったものであります。

この二つと並行して、都市の全体的な状況を把握して政策評価を行うための手法の開発に取り組みました。都市構造を評価し、面的整備事業を評価する手法の開発により、コンパクトシティ化の促進に寄与しようとするものであります。

 まず最初にアーバンスケルトン方式を用いた中心市街地の再整備手法の開発について、研究内容の説明をいたします。アーバンスケルトン方式とは、都市の建築物・構造物を長期耐用的基盤であるアーバンスケルトンと、二次構造物であるインフィルの2段階に分けてとらえる手法です。研究の成果目標としては@アーバンスケルトンから分離したインフィルの整備流通方法を提案し、Aアーバンスケルトン及びインフィルの所有・利用・管理方法、さらにB両者を分離した整備を可能とする建築確認・検査制度の仕組みを提案することにより、段階的・漸進的で社会経済状況の変化に柔軟に対応できる市街地整備手法を構築しようとするものであります。成果の活用方針は、@所有者以外による建物整備の道を開くことにより、例えばコンバージョン、サブリース等の事業機会を拡大するなど、多様な市街地整備にかかる投資の誘発・促進への寄与。A需要に応じた都市の段階的再整備への寄与。B既存ストックの活用や公的賃貸住宅の再生などへの寄与を目指すものです。

 インフィルの整備・流通方法に関しては、住宅を利用する居住者みずからインフィルの整備を行う方策を検討しました。一般の賃貸と分譲マンションの中間に位置するものですが、この分野での先駆的事例として神奈川県住宅供給公社の手づくりリフォーム、都市再生機構のフリープラン賃貸住宅があります。神奈川県公社のタイプ1は、退去時に内装の権利放棄が必要で、譲渡できないこと、都市再生機構のタイプ2は、内装は譲渡できるが、これを担保に融資を受けられないという課題があり、内装の譲渡・流通、内装整備の資金調達が困難であるという状況にあります。こうした課題解決の方策として、本研究において賃借権方式という、新たなスキームの提案を取りまとめたものであります。これはまず各住戸に賃借権を設定、登記します。賃借権は定期借家権におけるスケルトン賃貸とし、譲渡・転貸を認めます。インフィル整備費用の融資は賃借権に担保仮登記を行い、賃借権者の破産時には金融機関が賃借権を取得し、処分できることとします。また賃借権者が組合を設立し維持管理等の規約を締結して、建物所有者の維持管理が停滞の際には賃借権者が代行できるというものです。この方式により資金調達の可能性が高まると考えられますが、さらに債務不履行時の保証の仕組みを検討したファイナンスシステムについても提案を行っております。

 アーバンスケルトン及びインフィルの所有・利用・管理方法に関しては、現行制度で所有関係を規定しにくく、複合度も高くなる人工地盤型を対象に検討を行いました。人工地盤による整備のイメージは、左上の図にあるように段階的に行い、個別更新も可能とするものです。既存の人工地盤事例の調査の結果、大半は公的主体の一体的開発ですが、区分所有では壁に囲まれる空間を占有部分として所有する仕組みであるため、二次構造物が建っていない地盤上の空間権利を規定できないという課題が明らかになりました。この課題に対応するため、人工地盤の所有関係を区分地上権を活用して、規定する方法を検討し、提案しました。

区分地上権は土地の一部である地下または空間の上下の範囲を定めた一部に、地上権を設定するもので、建築的利用を目的とした人工地盤にも応用可能であるという解釈を得ております。さらに人工地盤と二次構造物の権利を明確に分離して、それぞれ登記できるような新たな仕組みを実現するための法制度、仮称ですが立体基盤所有法の要綱を提案しました。また下の図にあるような人工地盤での整備が想定される4タイプの市街地整備事業について、区分地上権を用いた所有関係、事業プロセス等の検討を行いました。

 アーバンスケルトンとインフィルを分離した整備を可能とする建築確認・検査制度の検討に関しては、現行制度の課題として設計の二度手間、工事のむだ、未使用内装の廃棄といった点が考えられます。このためアメリカの制度事例の分析等を踏まえて、新たな建築確認検査方式のスキーム構築提案を行いました。まず現行制度の運用改善で対応するとすると、第1段階では設計変更を想定し、使用プランに幅を持たせて確認し、次に技術基準を整備しておくことで、仮使用承認を行えるようにするという方式を整理しました。より本格的にはスケルトンの確認とインフィルの確認を分離して、それぞれ行う方式をさらに提案しております。内装設計の確定後、順次インフィルの確認を追加していき、検査はスケルトンと各インフィルの建築確認の内容ごとに実施するという方式です。この考え方をさらに応用し、人工地盤型における確認検査を段階的に行う方式について検討を行いました。それは最終形を示した想定計画で全体を確認し、設計が確定した二次構造物から順次確認検査を行い、使用を開始していくという整理です。

 アーバンスケルトン方式の研究について説明いたしました成果を、左側の8本にまとめて表示いたしました。今後これらの研究成果を活用するためには、この図にありますように成果の普及啓発に努めて、社会的需要を喚起するとともに、モデルプロジェクト等での検証を行い、関係機関での検討調整を進めていくことが重要であると考えております。比較的短期を視野に置いた運用改善の提案から、長期的視野からの本格的制度の提案まで、幅広く成果を整理しておりますので、活用につなげるための多面的な方策を今後展開する必要があると考えております。

 次に二つ目の柱でありますリバース・モーゲージを活用した木造密集市街地の整備手法の開発につきまして、説明いたします。これは通常の住宅ローンとは逆に、不動産を資金に転換するリバース・モーゲージという金融手法と、市街地整備をリンクさせるシステムを開発しようとしたものであります。密集市街地の解消は都市再生の重要な柱となっておりますが、なかなか整備が進んでいないという状況にあります。このため密集市街地に多く居住する高齢者の土地資産を建て替え資金に転換して、整備の促進を図ろうという趣旨です。リバース・モーゲージ・システムの研究成果は、密集市街地内の建て替え資金の工面が困難な高齢地権者の住宅改善意欲を高め、市街地整備を円滑化し、防災性、居住性の向上に寄与するもので、また条件の悪い停滞している土地資産が良好な資産となって流動化する効果も期待できるものであります。

 まず市街地整備とリバース・モーゲージを組み合わせたシステムのモデル構築であります。マネジメントを行う運用主体、市街地整備事業主体、金融機関、保険機構といった関係主体が連携することでこのシステムが機能します。市街地整備事業の実施に合わせて、事業地区内の高齢者が建て替えを行えることで、双方の事業の促進が実現できるという考え方です。リバース・モーゲージには不動産価格下落リスク、金利上昇リスク、長生きリスクの三大リスクがあると言われておりますが、この中で融資がうまく機能するためには、リバース・モーゲージが普及しているアメリカのような保険制度がスキームに組み込まれることが、長生きリスクをヘッジする上で有効であることが判明しております。なお融資の方式には最初に担保を設定し、最後に不動産売却を行う不動産担保型と、契約当初に売却する不動産売却型があり、それぞれについて検討を行っております。

 次にシミュレーションによる融資可能額の試算を行いました。保険スキームの適用の有無ごとに、さまざまなケースについて試算を行った結果、保険スキームを適用すると、例えば1,800万円の評価額の不動産を担保とした場合には、当初に一括して900数十万円程度の融資が、不動産を売却する場合には毎月8万円台の受け取りが期待できます。保険を適用しないタイプについては、この図にありますような等価交換方式の共同建て替え事業でリバース・モーゲージで資金を手当てするという枠組みで検討いたしましたけれども、その場合に従前どの程度の資産があれば、そこそこの新しい住戸を手に入れることができるかという試算をしております。

右下のグラフはその一例ですが、床面積55平米の住宅に新たに居住するためには、資産の従前評価がどれぐらい以上必要かについて、いろいろなタイプごとに試算をしております。地価40万円/平米の場合、30万円/平米の場合、それから従後の住宅が所有権の住宅か、定期借地権の住宅かを年齢別にそれぞれ棒で示しておりますけれども、例えば契約時点で65歳の場合、1,300万円から1,400万円程度の不動産資産であっても、リバース・モーゲージを利用することによって2,000万円から2,200万円相当の所有権マンションに終身居住できるという結果を得ております。

この試算結果から、リバース・モーゲージを利用することで建て替えが進められる対象層が、実際の市街地においてどの程度存在し、利用意向があるのかについて調査を行いました。中野区大和町という密集地区の戸建て持ち家の世帯主にアンケート調査を行ったもので、リバース・モーゲージ対象層は全体の12%あり、そのうちの54%が「利用意向あり」という結果が出ており、政策効果の可能性は高いものと考えられます。

リバース・モーゲージ・システムの研究につきましては説明いたしましたとおり、その成果はシステムのモデル構築を保険適用型と保険非適用型の二通り行うとともに、潜在的な需要把握を行ったものです。これらの成果の活用については、保険適用型は保険システムの整備のための検討が関係方面でさらに必要でありますが、非適用型では本省の関係部局での検討調整を経て、普及につながるものと期待しているところであります。なお、一部の地方公共団体ではリバース・モーゲージを活用した施策を最近始めたところがありますので、これらの状況も適宜フォローしてまいりたいと考えております。

次に3番目の柱であります都市構造の評価手法の開発につきまして、説明いたします。これまで説明しました本研究の成果活用も含めた市街地再生に係る各種施策を実現し、持続可能な都市に再生していく上で、都市全体の構造を評価する手法を確立することが必要であります。この面では都市のコンパクトシティ化ということが政策目標として議論されているところであり、本研究ではその一環として都市構造の評価手法の開発に取り組んだものです。研究成果の目標は、@都市構造のコンパクト化の概念整理を踏まえて。A都市構造の現状把握手法の開発。B都市のコンパクト化に向けた事業評価手法の開発を行おうとしたものです。成果の活用方針は、定量的な指標化による行政コスト削減や、例えば中心市街地再生に係る事業評価を都市全体にわたって動的に評価する方法の確立への寄与を目指したものであります。

まず都市構造のコンパクト化概念の整理を行いました。コンパクトシティという概念は、近年は持続可能な都市を実現するための空間形態を意味するものとして用いられるようになっております。持続可能性には環境的なもの、経済的なもの、社会的なものの3種類が考えられますが、本研究においてはこれまで研究蓄積が少ない経済的、社会的持続可能性に主眼を置いて検討を行いました。次に持続可能性を総体的・定量的にあらわすわかりやすい指標の必要性とともに、中心市街地活性化や密集市街地整備等に係る各種の事業を、都市全体の構造から長期的に評価する手法の必要性について整理しました。

次に都市構造の現状把握手法の開発について検討を行いました。都市のコンパクト性評価指標の開発に当たって、都市の活動量を示すさまざまな指標が、人口分布と高い相関を有していることを踏まえ、都市構造を示す根源的指標として人口の空間的分布に着目し、夜間人口と昼間人口、ここでは従業者数を用いておりますが、都市の中心にどれぐらい集中しているのかを定量的に把握する指標として、人口分布のコンパクト性指標を新たに提案しました。

具体的にはこのスライドにありますような定義式によるものですが、右上のグラフの縦軸は100分率、横軸は都市の中心からの距離で、青いs(x)の曲線は半径xキロメートルの円内に含まれる面積の地域全体に占める割合。赤のf(x)の曲線は同様に人口の割合です。ここで定義した指標は、図の青いハッチの紡錘形の面積が水色の全体の面積に占める割合になりますが、数値地図データをGIS上で重ね合わせ処理した後、数値計算を行うというものです。なお都市の実態に即した計量化を行うため、必ずしも行政区域全体ではなく、一定の範囲、中心からrキロメートルでの数値化に意味があるととらえております。さらに提案したコンパクト性評価指標と、行政コストとの関連分析を11都市についてケーススタディとして行いました。この結果、例えば1人当たり下水道費では、コンパクト性が高いほど行政コストは小さくなるという高い相関を示しました。

都市のコンパクト化に係る事業評価手法の開発です。既存の各種の面整備事業の評価手法については、都市構造全体の広がりの中で評価しにくいという空間的な課題と、社会経済状況の変化による便益の変化を考慮しないという、時間的な課題があると言えます。これらの課題に対応するための新たな概念として、エリア評価データベースの構築を提案しました。都市全体にわたって町丁目単位に詳細なデータベースを構築し、これを持続可能性評価の観点から時系列に整備していくというものです。エリア評価データベースとして整備すべき代表的な項目として、そこにありますようにアクセシビリティ・データ、アメニティ・データ、アクティビティ・データの三つの考え方を整理しております。

説明いたしましたように、都市構造の評価手法の開発につきましては、大きく三つの成果を取りまとめました。これらの活用に向けてはさらにモデル都市や実際の市街地における試行・検証が必要であると考えております。なお、本省の社会資本整備審議会に対し、先月「新しい時代の都市計画はいかにあるべきか」という諮問がなされ、中心市街地再生やコンパクトシティ化を始めとする課題に対応した法制度のあり方について検討が進められる予定でありますが、この検討過程において本研究成果が活用されることも期待しております。

最後にプロジェクト全体の研究実施体制です。国総研の関係部、センターが連携するとともに、独法建築研究所、都市再生機構、住宅金融公庫、大学や専門家、民間企業のご指導、ご協力を得て研究を進めました。また研究成果の政策への反映について、適宜本省と調整を行いつつ実施をしております。特に事業制度、融資制度等、現実の市街地整備、都市再生を踏まえた検討研究に意を用いた研究体制に留意したものとなっております。

以上で説明を終わります。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。それではご質疑、ご討論お願いします。

 非常に具体的ですね。こういう市街地の再整備というような難しいテーマを取り上げておられるようで、気に入りました。これは総研究費1億3,000万ですか。

(国総研) そうです。3年間ので合計です。

(主査) いかがでございましょうか。どうぞ。

(委員) 大変社会的な意味もありますし、また革新的な成果を生まれたと思います。特に今ご説明いただいた中で、三つほど中課題の中に宝があったと思いますけれども、一つは賃借権方式のスケルトン賃貸です。それとあと2番目はリバース・モーゲージを密集市街地の整備手法に適用したという発想とその裏づけをしたという点。それとあと都市のコンパクト性というのを情緒的というか質ではなくて定量的に評価して、かなり説得力のある評価手法を生んだという点、これはやはりかなりすばらしい成果だろうと思います。革新性という点と社会的な意義です。

 あえて挙げますと、自分の恥をさらして申し上げますと、こういったすばらしい研究がされつつある、あるいはされたということの成果が、私が不勉強でなかなか情報として接することができなかったので、この実施主体を考えますと単に国土交通省だけではなくて、金融機関も必要でしょうし、また同種の研究をされている方との議論というものもして、さらに伸ばしてしていくということも必要ですので、あえて不満を申し上げるとすると、今後かなり組織的にこれの成果を情報開示されて、発信していければ。つまり報告書ありますからどうぞということではなくて、あらゆる機会をとらえて情報発信するということをされるといいのではないかというふうに思います。

 以上です。

(主査) ありがとうございます。

 ちょっと私の方から質問があるんですが、コンパクトシティという三つ目のテーマですけれども、これどの程度の、一つはここでコンパクトシティと持続可能性を直に結びつけているんですけれども、本当かなという感じがちょっとあるのと、成果は僕大変これは今、○○さんがおっしゃったように新しい切り口があっておもしろいんですけれども、コンパクトシティと持続可能性をすぱっと直に結びつけていいのかという問題と、コンパクトシティをどの程度のスケールでとらえているのか。

 逆に言うとこういう質問でもいいのかな。じゃあ東京のような大都市はだめなのかという。どうぞ。

(国総研) 実際の研究の中では、モデル的にケーススタディしましたと説明したんですけれども、人口規模でいいますと30万人から50万人ぐらいの都市で指標化し、いろいろ相関を検証しておりまして、ご指摘のとおり巨大都市についてこれで本当にいいのかどうかというのはちょっと課題が残っております。

(主査) 今の30万から50万というのは。

(国総研) 人口規模が。

(主査) ○○さんで言うと、それはコンパクトシティなわけですか。

(国総研) それらの人口規模の都市についてコンパクトシティ化の指標をとりあえず開発して当てはめてみました。

(主査) ヨーロッパだと大都市じゃないですか、30万とか50万とかいうのは。

(国総研) そうですね。

(主査) 日本だと普通かもしれないですね。

(国総研) さっき示したグラフは、例えば青森市のグラフなんですけれども、青森市はみずから都市計画マスタープランの中でコンパクトシティ化を図るんだということで、いろいろ施策を進めようとしていますので、そういう都市について具体的な指標を開発して当てはめたらどうなるかというのが、この研究の中では整理しております。

(主査) 巨大都市が明らかにまずいのは、例えばヒートアイランドなんかは明らかにまずいですよね。その議論で。だけどほかの指標を取り出すと、大都市、例えば香港なんかで物すごくいろいろな効率がいいんですよね。だから指標どれかによると過密で大きいほどいいという指標、例えば人口当たりのエネルギー消費量とか、人口当たりのガソリン消費量とかいうと、そういうコンパクトの逆の結果が出てくる可能性十分あると思うんですけれどもね。

(国総研) それで、この検討の中では冒頭にちょっとご説明したんですけれども、環境持続可能性については、余り着目しないで、というのは既存のいろいろな指標も既にほかの研究機関でも開発されているものですから、今まで余り検討されていなかったところに切り口を見出して整理してみました。かなり対象を限定して成果を出そうということで、ターゲットを絞ってみました。

(主査) どうぞ○○先生。

(委員) 私も○○先生と同じように、大変これは内容的に興味深い研究で、いい成果を上げていただいていると思います。評価としては問題なくいい成果だというふうに思いますが、特に1番目のアーバンスケルトンの問題について、今後の課題も含めて追加的なご説明をいただけたらというふうに思います。

 一つはアーバンスケルトンという概念をわざわざ持ち出している以上、建築レベルと都市レベルで何がどう違うのか、あるいは都市レベルで物事を考えるときに、どういう新たな課題が出てくるのか、こういうことについてもう少し整理をしてから検討をやられると、いろいろなことがわかりやすく、あるいは今回できたこととできていないことが明快になったのではないかというふうに思います。

このことは実は研究計画のときに申し上げていたんです。スケルトン・インフィルというのは物財概念なんです。ところが都市レベルでは異なる財としての性質を持ったものが複合的にまざっていますので、物財概念だけではなく、空間概念と物財概念とを関連づけて考えないと問題が整理できない。スケルトン・インフィルだけですべてを考えていくということには限界があるわけです。空間・物財システムとして対象を把握する必要があるというご意見を前に申し上げたんです。もっとも、今回の研究成果を見ると、都市レベルの複雑な問題すべてを引き受けるという話じゃなくて、物財概念で検討可能なところだけをやられたということになっていると思いますので、結果として今回の研究成果はそれでいいのかなと思ったんですが、逆に都市的な展開ということで考えたときに、今後まだ課題があるように思います。そのあたりもし何か考えておられることがあったら、お教えいただきたいというのが1点でございます。

 もう一つは、事業主体や事業の仕方についてお考えをおききしたい。事業のシステムと権利関係を結びつけて考えることが、私は非常に大事だと考えているんです。これも今後の課題かなと思っていますが、例えばこの人工地盤型のこういう事業の中でどういうプレイヤーを想定してこういう権利関係ができると、従来のこういう問題がクリアできるんだとか、そういう話が実はあるように思うんです。事業システムについて何かお考えがあれば伺いたい。

(国総研)アーバンスケルトンの方の審査検討させていただきました住宅計画研究室の○○でございます。○○先生から2点のご質問をいただいています。都市レベルに関してもう少し都市的な機能を含めた中での展開の仕方をどのように考えていくべきなのかという点だと思います。

実際の適用をどういうふうにしていくかというのは、実は苦労したというか、実際の適用局面というのは、バブルが終わった後うまく適用するのが見つからない中で、とりあえず今回の研究はスケルトン・インフィルの考え方を都市レベルと申しますか、その街区レベルまで引っ張ってきて、人工地盤とその上に乗っかってくる建築物という関係で、とりあえずまとめてみようというところまでが一つのアウトプットで、それから先それをどういうふうに具体的に都市的な要素を組み入れるか。

例えば人工地盤が一体だれの所有で考えたら一番いいのかとか、もう少し法的な所有を考えて、それを前提にした仕組み方があるんじゃないかとかというふうな部分もあろうかと思うんですが、そういうことについてさらに踏み込んだ検討というのはできていなくて、これから次の2番目のご指摘にもありますが、事業制度なり次の検討なり、モデルプロジェクトの中で考えていくように促すというか、持っていきたいというふうに考えております。

 それから具体的に2番目のご質問で、どういうふうな事業をイメージしているかということですけれども、まずSI建築型の方の事業的なタイプとしましては、コンバージョンといいますか、特に賃貸住宅の内装を変えて、もう少しグレードアップするような形で使えるような仕組みを一般的に広げられていくんじゃないかと。ただ、といっても一般的に広げるというのにもまた落差がありますので、とりあえずは陳腐化している公的賃貸住宅とか、そういうふうなものの用途転換とか、それからあるいは、まちなかであるようなビルを用途転換していって、住宅化するというふうな形の中で、例えば今年度からできました、街なか居住再生ファンド等を活用しながら使っていけるのではないかというのを、少しずつ模索しているところであります。人工地盤型に関しましては、四つほど検討しているんですけれども、そういう中で、一つは駅前みたいな大規模的な開発部分に関しましては、その具体的な、これはプロジェクト次第ですので、そういう中で市街地再開発事業とかという、法律的なスキームはそのまま使って動かせるんじゃないかなというふうに考えております。

 もう一つ、密集住宅整備型にも一般的に使っていけそうな部分はあるんですけれども、これはもう少しやはり密集住宅とはいいながら、若干条件がいいところでないとちょっと難しそうな部分でもありますので、モデルプロジェクトを拾い上げながら考えていきたいと思います。

(主査) ありがとうございました。

(委員) 最初に言ったことに絡むんですけれども、今○○さんがおっしゃった中で、例えばそこで占用されている大きなスケルトンをだれが所有するかという問題があるとおっしゃったんですけれども、さっき私が申し上げた趣旨は、例えばそういうことをプロジェクトの間で、差し支えなければどんどん学会とかそういうところで発表されると、似たようなことで悩んでいたり調べられたりとかいって、恐らくまたじゃあこの国ではこんなことをやっていますよとか、いろいろな情報が投げ返されてくると思うんです。そうすることで目の前にした問題の幾つかというのは、むしろ情報を発信することで投げ返しがあってプロジェクト期間中にかなりアップグレードしていくということがあったので、今後だからもしこういったプロジェクトされるときは、余り情報をためておかれずに、あるものはどんどん世の中に対していろいろなチャンネルを投げて返すようなことをされていくといいんじゃないかなというふうに申し上げましたし、また成果についてもそうされるといいんじゃないかなということでございます。

(委員) すみません、なかなかついていけないテーマですけれども、この会として確認させていただきたいのは、今、事後評価をやっているので、事前評価でどんな問題が指摘されて、それに対してどういうふうに対応されたのかということのご説明は必要なのかなと、ちょっと会として思うんです。

 それとOHPじゃない方の資料で21ページ、22ページで成果の活用状況というのが書いてあるんですけれども、この辺もやはりもうちょっと具体的にどんなお話なのかを、素人としてはお聞きしたいということでございます。

(国総研) 事前評価のときには、例えば既存の研究成果を活用してやりなさいとか、あるいは他機関における研究の状況を整理して、それも踏まえて研究を進めるべしと、こういうようなご指摘をいただきまして、実施段階では基本的にはそういうことに配慮して実施したつもりでございます。あとは個別の配慮事項としましては、事前評価の段階ではこの都市構造の評価については中心市街地について研究します、密集市街地について研究します、それを評価しますというような説明ぶりだったんですけれども、二つに限らずもうちょっと一般的な都市構造評価をやはり研究すべきではないかと、そういうようなご指摘もいただいておりまして、そのご指摘を受けた形で今回ご報告したような研究方法でやったということでございます。

 それから成果の活用については、お手元に配付しております資料のとおりなんですけれども、中のスライドでも説明したんですけれども、国総研というのがもともと政策支援をするための研究をしているという位置づけの研究機関でございますので、例えば今回のこの研究成果は国の政策のどこに反映されているんだというのが一番の切り口になっておりまして、その辺については先ほど説明いたしましたが、例えばこのアーバンスケルトン方式の場合で申しますと、例えばこの研究成果が即本省がガイドラインでもう既に出しましたとか、そういうところまでは必ずしも行っておりません。それについては先ほどいろいろご指摘いただいたような、さらに例えば実際の事業で検討してみるとか、実際の都市で当てはめてみるとかというのを踏まえると、具体的な例えば本省の政策につながる直前まではそれぞれかなりまとめたつもりです。

(主査) これも国総研の研究だから政策支援になるというのは、私も全くそれ、最も大事な評価のポイントだと思うんですけれども、アーバンスケルトンの話とリバース・モーゲージが、いろいろこれから政策の支援になるような内容がいっぱいあるんですけれども、三つ目の都市構造の評価というのはこれ、これから政策支援でどういう形で利用されるんでしょうかね。最初の二つほどその面での具体性が見えないんですけれども。

(国総研) 当初私どもが計画をしていた段階では、例えば今回新しいコンパクト性指標を開発しました。そうするとそれを行政の実務ベースのところでどんどん活用してもらおうと考えております。例えばそれぞれの都市がこれから都市計画のマスタープランをつくるときに、現状のコンパクト性指標はこの数字ですと。10年後の我が都市の都市構造については、この指標で言えばこの数値を目指していろいろな政策を総合的に展開して、目標を設定しますというようなところに持っていくときに、国としては技術的助言としてこういう評価指標を活用することが、今後の都市計画の推進に有効な指標ではないですかということを考えております。私どもの研究所のもくろみとしては、本省が出している都市計画運用指針のような中に、都市のコンパクト性を評価する手法としては、こういう指標も研究所が開発したので、それも活用して計画を立てていただいたらどうかというような運用指針に反映されるというようなことを具体的なイメージとしては持っておりました。

(主査) そうすると、ますますこのコンパクトがどの程度のスケールかということを、例えば今、今度の建築分科会でもいわゆる空洞化した都心部だとか、いろいろな問題があるけれども、ただコンパクトということで全部くくってしまうと、さっき言ったような30万や50万はコンパクトなのか巨大なのかという、非常に出発点の疑問もありますし、そこのところ詰めていただいて、コンパクトは何かということを。

(委員) 今年度から加わったので事後評価だけということになって、はなはだ失礼かとは思いますが、この研究の三つテーマを分割されて挙げていらっしゃったんですけれども、そもそも都市の再生、市街地の再生技術という、この再生にどれぐらい寄与するのかというあたりが、事後評価だけ伺ったのではよくわかりませんでした。

例えばアーバンスケルトンみたいな手法とか、いろいろな三つの提案をされていますが、それが実際に活用されたときに、再生という意味でどういうふうに寄与するのかというのがちょっと私の中では想像できない。そのためには、再生とは何か、というところが本当はないと見えないのかなとは思うのです、市街地の再生って何だろうかなというふうに考えていくとちょっとわからないのですが、その辺で何かお考え等があったら教えていただければと思います。

(国総研) なかなか難しいご質問なんですけれども、さっき説明いたしましたように、研究所の研究成果は政策支援のための成果を得られるように研究を進めております。その成果を政策を展開する局面にうまく乗せてもらって、政策が実際に世の中で適用されることで一般的に言われているアウトカムというものが世の中に生まれてくる。それが今回のテーマで言えば都市再生であり、市街地の再生だということなので、確かにこの研究のアウトプットだけを見ると、それで世の中がどう変わるのかというのがよく見えないというご指摘は、実はある部分そのとおりですとしかお答えできないところがあります。

ただそうはいっても全然関係ない的外れの研究をしているということではないつもりですので、例えば中心市街地の再整備というものを目指して今回研究し、そのための一つのツールとしてアーバンスケルトンというものを新しく方式を提案しましたということなんですけれども、ちょっと時間の関係で余り説明できなかったんですけれども、現在日本の多くの地方都市の中心市街地がどんどん空洞化していって、衰退しております。それを何とか再活性化したいという政策課題があって、そのためにうまく使えそうな新しいシステムの一つとして今回提案しているんですけれども、このアーバンスケルトン方式のいいところというのは、段階的にだんだん整備していけるところがいいところであるという説明をしたんですけれども、その辺のいろいろ社会経済状況が変動する中で、だんだん建物をふやしていったり、場合によったら用途をコンバージョンによって変えていったりとか、あるいは場合によったら今までの建物を一部除却したりとかという場合に、非常にコスト的に安く、あるいは技術的にもうまく適用できる可能性の高いシステムが今回の提案したシステムではないでしょうかという、そういうつながりがあるんだというふうに私どもは考えております。

(主査) 再生、何を目指すかと大変あれですよね、○○先生の質問は答えづらいけれども、僕はある種の非常に今までない切り口を示して、手がかりは随分与えていっているんじゃないかという、そういう感じはしておりますけれども。

(委員) 余りしゃべって申しわけないんですけれども、私ちょっとそろそろ最終便が迫っているもので。今のコンパクトについて、次のステップがあるとすると、今回つくったのは先ほどからおっしゃっていたように自治体の特に都市計画の部局の人たちは全然違うパラダイムでいっていて、きょうのプレゼンとして説明されたのかもしれないけれども、コンパクトシティが大事だということはまた別途、いろいろなところでおっしゃるわけですね。その上でじゃあ自分の街がどうかということを図る意味では、非常に特に今日おっしゃったような地方中核都市のようなところとすると大事かと思うし、自己診断するように非常にわかりやすい指標で、そういう形で大変意義があると思ったんです。

ただ、例えば○○先生が気にされているようなメガシティになると、多分人口密度だけでコンパクト性を図るというわけにはなかなかいかなくて、直感的に考えるといろいろな機能集中がどれだけあるか、逆に言うと自分が住んでいない業務施設がある周辺でどれぐらい機能充足ができるかといったようなことを評価していかないといけないので、多分もう一回そういった機能集中度とか、ある街区における機能充足度を図るためには、また研究的にやられていく必要はあると思うんです。

つまり例えば東京とかそういう大阪のようなメガシティも、ある自己充足的なモードというか、ある街区があって、その間を公共交通機関が結んでいるというモデルがつくれるとすると、一々何するにしても東京じゅうの人が東京を縦断して何か機能充足しなければならないというものに比べると、直感的に考えるとかなり都市の質が同じように人口密度もあると思うんです。だからそれは次の課題だと思うんですけれども、まずはそういう自治体の担当者に対するメッセージとしてはすごく意味がある、インジケーターがあるんじゃないかなと思いますけれども、これで終わりと言わず、また今のようなことをぜひやっていただければというふうに思います。

(主査) ○○さん自身が地方都市の空洞化とおっしゃったけれども、それに語られているコンパクトシティというのはせいぜい数千人とか1万人とか、今歩いて帰れるということで、僕やはりだから何度も言いますけれども、コンパクトの規模はきちんと定義してからこの議論をしないと、少なくとも巨大都市はものすごく効率的なんですよ。トータルで見ると。住んでいる人が幸せかどうかは別として。ほかにございませんでしょうか。

(なし)

(主査) もしよろしければ大分時間が来ていますので、それでは皆さんこの事後評価シートを恐縮ですけれどもお書きいただいて、事務局の方にお渡しいただけるでしょうか。

(事務局) 時間をいただきたいと思います。

(主査) では5分間ほど休憩させていただきます。事務局で今集計していただいていますので。

(休憩)

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〈市街地の再生技術に関する研究の事後評価取りまとめ〉
(主査) それでは集計できましたので、始めさせていただきます。

 まずこの数値で見ますと、最初の方の研究計画、実施方法、体制等の妥当性というのが「適切であった」6票、「おおむね適切であった」2票ということで、大変いい評価を得ています。それから下の方の研究の成果及び目標達成度「目標を十分達成できた」が5票で、「おおむね達成できた」が3票ということで、これは大変高い評価をいただいております。ということでこれを受けまして、委員の先生方からいろいろコメントが出ていますけれども、これは○○さんのところへ行っているわけ。

(国総研) はい。

(主査) どうしましょうか、これ。全部読み上げてやっているほど時間はないですよね。これをごらんいただきながら、先生方1人ずついきますか、全部まとめてでいいですかね、どうしましょうか。○○さん、プロジェクトリーダーの方でさっきからの審議を通じて、既にもう討論が終わったやつ結構あるかと思うんですけれども、それ以外でこういうご指摘があるからこれに対してはこう対応していこう、お答えしておこうというのがございましたら、少しコメントいただければ。

(国総研) 先ほどの議論の中でご指摘、ご質問いただいたことも結構あるんですけれども、拝見しまして総じて言うとやはり今後具体の政策にどうやって結びつけていくのか。結びついていった場合に、それは一体どれぐらい政策効果として定常的に上がるものなのか、そこのところをさらに十分詰めるべきであるというご意見が総じて多かったというふうに思っておりまして、実は私どもも3年間ワンラウンドやってみて、それがこれからの課題だという認識をしておりますので、そのあたりにつきましてそれぞれの成果ごとに先ほどご助言いただいたようなそれぞれの方法で政策につなげていき、それが実際どれだけの効果が上がるのかというのを、どうやって定量化していったらいいのかというのを、いろいろな研究を通じて対応していきたいと思っております。

(主査) ありがとうございました。先生方大体審議したことかと思いますが、特にまだこの件もう一回お答えしていただきたいとか、新たに思いついたから質問したいとか、何かございますでしょうか。

(委員) 余り本質的なことじゃないんですが、タイトルにある再生技術の「技術」という言葉が、どちらかというと「仕組み」とか「概念」とか、そういうような言葉の方がより適切であるように僕には見えたんですが。三つの大きな柱のうちの一番目は技術かもしれませんが、あとの二つを「技術」という言葉で表すのは、やはり役所の中での予算を取る上での作戦だとか、そういうことがあったら教えてもらいたいと思うんですけれども。

(国総研) 私どもの部は、かなりソフトな施策の研究対象で、それは「政策技術」じゃないかというふうに認識をしておるものですから。

(委員) 「政策技術」というわけですね。

(国総研) ええ。例えば建築の構造のような世界と比べると、何となくちょっとソフトっぽいんじゃないのというご印象を持たれているかもしれませんけれども、私どもの研究領域としてはそういう制度のあり方とか、都市を対象にどうやって都市をよくしていったらいいのかという技術の範疇に入っているというふうに私どもは理解しております。

(委員) よくわかります。「技術」という言葉の多義性ですね。

(主査) でもどっちかというと後の二つは手法とか。

(委員) そうそう、手法ならちょうど中間ぐらいですよね、技術と概念の。まあ今のはちょっと雑談です。

(主査) 「金融技術」とかいろいろ言いますからね、モーゲージなんかも技術かもしれないですね。

(委員) そうですね。技術はもっと広い意味を持っているんでしょうね。英語ではどう訳すんですか。この場合は。テクノロジーではないからテクニックとか。

(国総研) そうですね。

(主査) ほかにございませんでしょうか。よろしゅうございますか。

(なし)

(主査) これは所長にお聞きしたいんですけれども、これは随分点がいいけれども、大体こんなものなんですか、これ非常に相当にいい成績なのか、どうなんでしょう。

(国総研) これはいい方だと思います。

(主査) ああそうですか。これは皆さんおおむね高い評価をいただいていると思いますが、それでは、もうまとめみたいなことに入ってよろしゅうございますか。このとおりでございますから、最初のやつも、計画実施方法ですね、この1番、「適切であった」ということでよろしゅうございますか。この1番の下の方もこれだけの票ですから、目標を十分に達成できたというようなことでよろしいでしょうか。

(異議なし)

(主査) ありがとうございました。そうしますと、これできょうの皆さんのいろいろコメント、質問、ディスカッションを受けて、それからきょうのこのシートも受けて、評価書の作成をするわけでございますが、これはこの後は私にご一任いただくということでよろしいですか、具体的なところは。

(異議なし)

(主査) これは1回皆さんに見てもらうとか、ここしかないんですか。つくった後、確認みたいな感じのはやっていないですか。

(事務局) そうですね。

(主査) そうですか。では本当にご一任ということで。ありがとうございました。

 あとは何かやることあるんですか。その他議題。

 お願いします。

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〈第2回及び第3回分科会での評価対象課題の報告〉

(事務局) 今後の予定でございますが、この後第二部会、第三部会がそれぞれ分科会が開かれることになってございます。その対象課題でございますが、資料10にあるとおり、事前・事後・中間の各評価がございます。ここにございます課題につきましては、委員の皆様に事前に資料を送ったものと同じ課題でございますが、内容についてはその後のバージョンアップということで修正されたものが入ってございます。それから、ここには一つ事前の評価でまだ入っていない課題がございまして、第一部会で担当をいただこうと考えておるのが、「災害時要援護者向けの緊急情報発進マルチプラットホームの開発」という課題を、一つ追加ということで動いておる課題でございまして、本日の資料には間に合ってございません。そういったことで第二部会のほかに第一部会、第三部会で評価を引き続き7月25日、8月1日の開催の予定でございますが、お願いをする予定でございます。

 以上でございます。

(主査) ちょっと前後しますけれども、私きょうこの評価の最初のプロジェクト報告含めて、大変委員の皆さんからのご発言が前向きで、今後の国総研の研究に対して大変サジェスティブで生産的であったというふうに思っていまして、委員の皆様には感謝しております。ありがとうございました。

 それからきょうは余り時間がなかったんですけれども、マップをつくっていただいておりまして、これも位置づけが大変よくわかってありがとうございました。それからお願いは、スライドで番号を入れていないスライドが幾つかございまして、これは議論するときに非常にスライド番号何番というふうに指示しにくいから、ぜひこれは今後スライドに番号を入れていっていただけると議論がむだが少ないかと思いますので、よろしくお願いします。

 あと今後の予定、何かあるんでしょうか。

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〈その他(今後の予定)〉

(事務局) その他ということで、今後ですけれども、まず評価書につきましては先ほど主査に一任ということをいただきましたので、まとめさせていただきたいと思います。それから議事録につきましても先ほど速記録ということでつくりまして、委員の方にご確認をいただいて確定したいというふうに思っております。それから行政的には、行政評価法に基づく個票というものが実はついておりまして、それは国土交通本省に提出いたしまして、本省の方でまた公表をされるということになっております。ここに外部委員会の意見と評価というものを簡潔にまとめさせていただいて、提出する予定でございます。

 今後の予定は以上でございます。

 それでは最後に所長にあいさつをすみません、お願いいたします。

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〈国総研所長挨拶・閉会〉

(国総研) では本日は大変に長い時間にわたりまして熱心にご審議いただきまして、大変ありがとうございました。

 議事の中で2件の事前評価と1件の事後評価をお願いしたわけでございますが、2件の事前評価につきましては、それぞれ国総研の研究としまして取り組むべき重要な課題であるという評価をいただいて、大変ありがとうございました。また事後評価につきましても先ほどのように高い評価をしていただきまして、大変ありがとうございました。

またその審議の途中で大変私どもにとりまして参考になるさまざまなご示唆、またアドバイスをいただきました。こういったものに対しまして、私ども研究また実際の行政への反映という部分につきまして努力をしていきたいというふうに思います。

本当に長時間どうもありがとうございました。

(事務局) 最後に事務局からお知らせですけれども、この後、食事を希望された方は食事の用意をしておりますので、そのままお待ちいただければというふうに思います。

 また資料につきましては封筒に名前を書いていただければ後で郵送いたしますので、置いていただければと思います。

 以上でございます

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