欠席委員及び他の部会委員からの事前意見



1. 地球温暖化に対応するための技術に関する研究(事後評価)
4つの大きなテーマについてそれぞれが成果を挙げていると思いますが、もっと総合的に研究成果をまとめていただければ、地球温暖化の問題が良く理解できるし、対応策の効果もわかりやすくなると感じられました。地球温暖化による災害に関する将来像と、それに対する技術政策におけるモニタリングの位置付けと対応策の効果をいくつかのシナリオで示していただければと思います。
2. 道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究(事後評価)
必要性、効率性、有効性すべてあると判断します。
必要性については、概ね良好であったものと思料される。有効性については、研究計画や実施方法は妥当であった。有効性については、中央分離帯の新設によって、右折やUターンの際の追突事故などが、新たに、発生することもある。したがって、道路空間の安全性向上のために実施された施策が、予期できなかった安全性の欠如をもたらすおそれもあることに、十分、配慮して、研究成果の社会的還元を実施していくべきである。
3. 快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究(事後評価)
東京湾に関する貴重な成果が生み出されていると思われる。関連の研究のプロジェクトとの連携も行われており評価できる。また、シンポジウムの開催など、成果も現場に反映する努力がなされている。しかしながら、環境省でも類似の関連研究プロジェクト(下記 URL参照)が実施されていたように認識している。今後は、省庁を超えた連携や協力体制も考慮にいれて、一層強力な連携体系や成果発表の場を合理的に行う試みを検討されることが、この種の研究課題では期待される。
 http://www-basin.nies.go.jp/project/sizenkyousei/sizenkyouei.html
都市・流域圏における自然共生型水・物質循環の再生と生態系評価技術開発に関する研究―
東京湾の再生等広域等で、対象事象が広範囲でかつ公共的見地から実施する施策については、基礎研究、事業化研究を大学等の研究期間と国総研が実施する以外に方法は無く、適切な研究であると考えます。実施内容についても公の機関の実施したこととして、シンポジウムを通して公表されており適切な体制の下進められたと判断できる。さらに、行動計画として実施に移す段階まで策定されており、適切な成果があったと評価できるが、目標の一つである合意形成において、快適に憩える美しい東京湾の形成のために必要な地域住民、ウオーターフロント利用者等の合意形成を図りつつ事業を進めるための手法・ツールが十分とはいえない。多くの公共的事業において合意形成を持って事業を進めることが必要不可欠な現在において更なる具体的な合意形成を図る手法・ツールの研究が必要であると考えます。
4. ITを活用した国土管理技術(事後評価)
必要性,効率性はあると判断します。また,ITを利用した技術はまず導入し使い始めることが大切で,さらにそれをバージョンアップしていくことが重要だと思います。資料によるとそのような方向で研究を進められておられるようで,有効性も徐々に増していくものと思われます。
必要性については、本研究の成果は技術政策課題の解決に向けて有効であるものと考えられる。今後、研究成果の国土標準としての活用が期待される。効率性については、他の防災担当機関との意見調整などを、より積極的に実施すべきであった。有効性については、単に、研究にとどまらず、研究成果の社会への普及、すなわち、専門的知識を有しない一般住民が、直接、活用し得るよう研究成果の平易化が望まれる。
5. 市街地の再生技術に関する研究(事後評価)
事前意見無し
6. マルチモーダル交通体系の構築に関する研究(中間評価)
必要性、効率性、有効性すべてありと判断できる。
必要性については、研究対象が広範すぎる傾向があるが、研究を継続することは妥当である。効率性については、広範にわたる研究項目の必要性は、個別には理解できるものの、研究全体の成果や目標への達成などを考慮すると、重点を置くべき研究項目を絞り込む必要があるのでは?有効性については、マルチモーダル交通体系の評価対象が、比較的、個別的な側面に偏っている。渋滞発生による損失や環境負荷軽減などの全的低評価にも言及すべきでは?
7. 流域における物質循環の動態と水域環境への影響に関する研究(事前評価)
重要な問題であるので研究の必要性は高い。幅広い調査が必要であり,どの程度の資料がそろっているのかによって研究成果の完成度が左右されると思われるが,新たな研究課題や調査方針を抽出することも重要だと思う。モニタリング手法の提案が目的と書かれているが,モニタリング結果をどのように実際の流域管理に活かすのかという点を具体的にしていただくと有効性が良く判断できます。
8. 地域活動と協働する水循環健全化に関する研究(事前評価)
研究の必要性は高いと思うが,地域活動活性化手法の具体的なイメージがわかりにくい。地域住民を取り込んだ水循環健全化に向けた地域活動活性化手法が構築されれば,社会への貢献は大きい。
9. 下水道官渠の適正な管理手法に関する研究(事前評価)
研究の必要性は理解できます。しかし,新たな管理手法が現在の管理手法よりどれくらい広範囲かつ精度よく下水道の問題箇所を発見することができるのかということを具体的に示していただくと,研究の効率性,有効性が判断できます。
10. 気候変動等に対応した河川・海岸管理に関する研究(事前評価)
すでに問題化している課題であり、早急に実施すべき課題である。資料には時間スケールについての記述が書かれていませんでしたが、リアルタイム予測も含めて、いろいろな時間スケールでの予測を考えてもらいたい。海岸の環境問題では河川の物質動態の変化も考慮すべきでは?有効性も大いにあると思います。
11. LRTの地方鉄道乗入れに関する研究(事前評価)
海外事例の解析において、欧米と日本の都市づくり、災害特性、国民性などの違いに着目した解析を行い、LRTを欧米と同じように日本で導入すべきものなのか、導入した場合の利用予測、効果予測を客観的に精度よく行うことが必要だと思います。
必要性については、我が国でLRTが導入されてこなかった本質を見極めることによって、地方都市でのLRT導入の成否を把握すべきである。効率性については、「規格の統一化によるコストダウン」は本当に見込まれるのか?むしろ、それぞれの都市・地域のアイデンティティが失われるのでは?平成14年度〜平成18年度に実施されている「マルチモーダル交通体系の構築に関する研究」との“棲み分け”が必要では?有効性については、LRTの導入、さらには、地方鉄道との相互乗り入れが行い得る地方都市は限られており、研究成果の社会への貢献は限定的である。
12. 建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能表示・認証システムに関する研究(事前評価)
必要性について本研究は、建築基準性能規定化の一層の推進のために、建築材料等の性能評価・表示の技術的フレームワークおよび材料性能品質認証システムの信頼性評価・承認の技術的フレームワークを開発するとともに、材料性能評価・表示基準案および性能品質認証システム承認基準案の試行的開発を行おうとするもので、国総研の研究として、高い必要性が認められる。必要性については、研究計画や研究体制も概ね妥当であるが、記述内容が極めて抽象的、一般的であり、具体性に欠けるのが残念である。とりわけ、本研究を実施するに当たって、材料の種類による課題の違いや性能項目による困難性の違いが具体的にどこにあり、それらをどのようなアイデアで克服しようとしているのかが示されていると研究計画としての説得力がより高くなったと考えられる。計画通りの開発が行われた場合の研究成果の有効性についてはほぼ自明であり、建築基準性能規定化の一層の推進という政策課題にも直接的な貢献が期待される。
13. 建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究(事前評価)
必要性について本研究は、建築空間におけるユーザーの事故リスクを予測し、その低減のための対策技術の計画的枠組みの確立を通じて、ユーザーの生活行動安全に資することを目的としたしたもので、国総研の研究として、高い必要性が認められる。効率性については、研究計画や研究体制も概ね妥当であり、ユーザー概念を一般化せず、高齢者、幼児、車椅子利用者などを想定しているのは評価できるが、さらに、これらに加えて、これまでの建築計画で十分検討されてこなかった、さまざまなレベルの視覚障害者や認知症高齢者などをユーザーとして想定し、それぞれの行動特性に応じた分析とユニバーサル・デザインとしての対応策が示されることが期待される。有効性については、研究内容や手順は的確であり、ガイドラインや安全評価マニュアルの策定などを通じた研究成果の社会貢献や政策への反映が大いに期待される。研究の有効性は高いと考えられるが、過去の建築事故はどのようにしたら回避できたのかが、今回の研究成果を用いて的確に示されることを望みたい。また、逆に、なおかつ、どのようなリスクが残るのかも的確に示されることを期待したい。
14. 低頻度メガリスク型の沿岸域災害に対する多様な効用を持つ対策の評価に関する研究(事前評価)
[災害に対して安全な国土]の観点から重要な課題であると認識します。特に、個々の防災施設に関する研究は、以前からなされているところですが、既存施設、自然環境等の複合的な減災効果については十分ではなく、本研究目的の一つでもある平常時利用施設、平常時活用機能を考慮した総合的な減災研究は早急になされるべき課題だと考えます。平常時の効用について、具体性に欠けるため、減災施設、減災機能として活用できる施設、機能が平常時にどんな利用を想定したものかをもう少し明確にしておく必要があると考えます。合意形成の手法として、具体的に記述されていませんが、道路事業評価等で社会実験も行われているので、参考にされるとよいかと思います。
15. 国際交通基盤の統合的リスクマネジメントに関する研究(事前評価)
必要性は理解できるが、研究内容の記載が簡潔すぎて、研究手法や研究実施体制の実際がわかりにくい。したがって、効率性を評価しにくい。なお、評価者自体がさほどこの分野に精通していないので、既存の同種のマニュアルの有無を十分には認識していないが、すでにある程度のものは利用可能ではないかと想像する。その場合には、最終的に提案されるマニュアルが従来のものとどのように違うのか、ソフトとハードがどのように工夫されて組み合わされるのかなどが明確になることが期待される。現在の記述であれば、そのような重要な研究背景や独創性などを理解しにくいと思われる。
空港等の警備という面では、警備会社のシステムはかなり進んでいるが、事件、事故、災害といった多様なリスクに対して、あるときには強制力を発動し対応することも必要であり、さらにリスク低減の一つとして代替輸送、代替機関等を総合的に行うことも必要であり、国家として対応すべき課題と考えます。リスクは変化、多様化しており、国総研として、明確な分析を行ったうえで国の施策にすることが必要と考えます。国際ハブ空港機能、港湾荷役量が我が国周辺の諸外国に移行する中にあって、リスクマネジメントのしっかりした空港港湾機能が構築されることは、技術政策課題に適合するのみならず、我が国の国益になるものと考えます。テロや地震災害の危険性が増大する中で、より早急なリスクマネジメントが確立されることが必要と考えます。その意味で、平成21年度研究完了というペースは、その後法令化、政策化される手順が必要であることを考えると、時間がかかりすぎの感があります。研究機関の短縮を検討願いたい。
16.

温室効果ガス削減を目指した空港環境マネジメントに関する研究(事前評価)

従来、空港施設は、航空機、人、荷物の輸送(移動)効率を考慮して作られており、航空機の燃料消費量を大幅に減らす施設の位置は考えにくいと思いますが、工事の効率化、舗装の見直しなどを含めた総合的な対策として考えることに意義があると考えます。また、温暖化ガスの排出抑制は待ったなしで行われなければならない課題であり、空港全体を考えた総合的な削減対策は国の施策として実施されるべきと考えます。舗装材料については、道路部門での研究はかなり進んでいると考えられるので、道路舗装で近接住家が存在する等の問題により不適切とされた研究成果も、空港という特殊な環境の中で考えなければ適用の是非を検討する価値がある。舗装関係の研究室との連携も検討されたい。
17. 災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットフォームの開発(事前評価)
事前意見無し
18.

地域被害推定と防災事業への活用に関する研究(事前評価)

災害のリスク評価の対象をよりミクロな地域へしぼっていくことは重要であり、研究の必要性は高い。しかし、マクロな地域を対象にしてきた災害の予測技術をより細かくすることで問題を解決しようとしている点が気になります。ミクロな地域の災害予測や防災技術については、局所的な現象を支配している物理現象を解明して、それを基にした新たな技術の開発や導入が必要だと思います。
必要性については、本研究が対象としている災害が斜面災害、水害、津波災害と広範であり、必要性の訴求力に欠けている。効率性については、「研究名」が研究内容を的確に表しているとは言えない。水害や津波災害に関して、“施設”ごとの被災リスク評価手法を開発するためには、バックグラウンドとなる研究成果が不足しているのでは? 有効性については、“地域被害推定”と“防災事業への活用”のとリンクが不明確。全体として、欲張りすぎている。もっと、研究対象や目標とする研究成果を絞り込み、社会への貢献の道筋を明確にすべきである。