〈資料4〉
平成16年度の研究開発活動に係る自己点検及び今後の方向




国土交通省国土技術政策総合研究所長 浜口 達男
  本資料は、国総研で実施する研究開発活動の平成16年度における成果と今後の方向について評価を受けるに当たり、国総研研究方針のもとに進めてきた平成16年度の研究開発活動の成果とその自己点検結果及び今後の研究開発活動の方向について取りまとめたものです。
  本資料は、2章構成になっており、1章では平成16年度の研究開発活動の成果を、2章では研究開発活動の成果を踏まえた自己点検結果と今後の研究開発活動の方向を取りまとめています。
1. 研究開発活動の成果
1.1. 研究開発活動とその成果
  (1) プロジェクト研究等の推進
  (2) 施策への反映
  (3) 技術支援活動
1.2. 基本課題に係る活動
1.3. 研究成果の発信
(1) 国総研研究報告及び国総研資料
(2) 国総研研究報告及び国総研資料
(3) 研究論文
(4) 講演会等による情報の発信
(5) 国総研ホームページ
2. 自己点検結果と今後の研究開発活動の方向
2.1 研究の推進と成果の活用
2.2 研究成果の発信
2.3 その他の研究開発活動
1.研究開発活動の成果
1.1 研究開発活動とその成果
(1) プロジェクト研究等の推進
 プロジェクト研究は、技術政策課題に対応した研究開発の目標を明確にして、プロジェクト・リーダーのもとに必要とされる分野の研究者が集い、より効率的に成果を得るための戦略を立てて実施する研究です。平成16年度は、平成15年度以前から継続して推進してきたプロジェクト研究16課題に新規プロジェクト研究6課題を加えた計22課題について実施しました。このうち、平成13年度より継続の5課題と、平成14年度より継続の2課題を終了しました。終了課題は、下記のとおりです。
「地球温暖化に対応するための技術に関する研究」 (H13〜H16)
「道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究」 (H13〜H16)
「快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究」 (H13〜H16)
「住宅・社会資本の管理運営技術の開発」 (H13〜H16)
「ITを活用した国土管理技術」 (H13〜H16)
「自然共生型流域圏・都市の再生」 (H14〜H16)
「市街地の再生技術に関する研究」 (H14〜H16)
 また、プロジェクト研究の課題設定においては、社会の要請と時代の潮流を的確に反映することとしており、平成16年度に開始した新規プロジェクト研究は、下記6課題です。
「持続可能な社会構築を目指した建築性能評価・対策技術の開発」 (〜H18)
「土壌・地下水汚染が水域に及ぼす影響に関する研究」 (〜H18)
「都市空間の熱環境評価・対策技術の開発」 (〜H18)
「社会資本整備における合意形成手法の高度化に関する研究」 (〜H17)
「公共事業の総合コスト縮減効果・管理手法の開発」 (〜H18)
「地域資源・交通拠点等のネットワーク化による国際観光振興方策に関する研究」 (〜H18)
 基礎・基盤研究については、中長期的な必要性を念頭に置き、着実に実施しました。
 さらに、国総研研究方針の7本の柱・17の技術政策課題と対応させて平成16年度の全研究課題を示した国総研研究マップを作成するとともに、プロジェクト研究については、他機関で実施されている研究を含めた研究マップを作成し、研究の位置づけを明確にし、広い視野に立ち効率的に研究を推進しました。
(2) 施策への反映
 プロジェクト研究や基礎・基盤研究の研究開発を通して得られた成果などを、新たな施策へと反映させるよう努めました。代表的な事例を、以下に示します。
 法令・政令・省令・告示への反映 
1) 廃棄物最終処分場跡地形質変更に係る政省令の制定及び基準策定
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が平成16年4月に一部改正され、廃棄物が地中にある土地(最終処分場跡地等)で形質変更が行われることにより、生活環境上の支障が生じるおそれがある区域を都道府県知事が指定し、指定区域内での形質変更は施行方法の基準に従い実施することと都道府県知事への届出が義務づけられました。国総研は、港湾の廃棄物埋立護岸の計画・設計・施工法や海面処分場の環境リスクなどの国総研の関連する研究成果を活用して、同制度の施行に関連する政令、省令の制定に参画し、政令は平成17年1月に、省令は平成17年3月に公布されました。また、制度を施行するに当たってのガイドラインについて、海面処分場に関連する部分の原案作成を行いました。このガイドラインは、平成17年度に策定される予定です。
2) 「エネルギーの釣合いに基づく耐震計算等の構造計算の技術基準」の策定

 平成12年の建築基準法施行令の改正により、国土交通大臣が定める構造計算(告示)が認められたことを受け、耐震の検証部分にエネルギーの釣合いに基づく構造計算を取り入れるため、国総研では、@他の構造計算との比較を通じた建築物の必要耐力の整合化、A履歴型ダンパー付建築物における地震時最大層間変形角の算出方法の提案、B鉄骨造と復元力特性が異なる鉄筋コンクリート造や木造への適用性の確認と各種係数の調整などの検討を行い、技術基準を策定しました。この技術基準は、「エネルギーの釣合いに基づく耐震計算等の構造計算を定める件」(国土交通大臣告示)として、平成17年度に公布される予定です。
3)「港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針」の変更
 港湾法においては、我が国の港湾整備の基本方針を示すための告示がされており、我が国港湾の国際競争力向上への要請やアジアとの貿易拡大等に対応するため、基本方針の変更を行うこととなりました。国総研においては、近年のアジア諸国の港湾の急成長や港湾に係る国際競争の激化等の諸情勢の変化を反映し、海外の港湾で積み替え輸送されるコンテナ貨物(トランシップ貨物)を考慮可能な「国際海上コンテナ輸送需要予測モデル」を開発しました。本モデルを活用して、平成27年年における国際海上コンテナ貨物量を推計し、その成果に基づいて、平成16年10月に「港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針」が変更され、告示されました。
ガイドライン・指針・基準等への反映
4) 「下水処理水の再利用水質基準等マニュアル」の策定
 下水処理水の安全性への要求が高まってきていること、建築物衛生法関連政省令が改正されたこと等を踏まえ、国総研では本省下水道部と連携して、下水処理水の衛生学的安全性に関する実態調査を行い、糞便性汚染を示す指標としての大腸菌の適用可能性の検討及び残留塩素の保持による安全性の維持効果について検討を行うとともに、下水処理水再利用に関する利用者意識調査を行い、下水処理水の色、濁り、臭いが利用者の嗜好に与える影響について検討を行いました。この成果を踏まえ、下水処理水再利用に関する技術上の基準及び下水処理水再利用の実施に当たり必要となる考慮事項等をとりまとめ、学識経験者や地方公共団体からなる委員会に諮り、「下水処理水の再利用水質基準等マニュアル」を策定しました。本マニュアルは、平成17年4月に下水道部より地方公共団体に通知されました。
5) 「大規模地震に対するダム耐震性能照査指針(案)」の策定
 近年相次ぐ地震災害の発生やそれに伴う大規模地震に対する土木構造物の耐震性への社会的関心の高まりを受け、既往の耐震基準で設計されたダムの大規模地震時における耐震性能を合理的に照査する必要から、国総研では、@照査用地震動(レベル2地震動)の定義、A確保すべきダムの耐震性能の定義、B地震応答解析による照査手法とその結果の判断基準、について研究検討を行い、その成果を用いて大地震に対するダムの耐震性能の照査方法を体系的に整理した技術指針案を策定しました。この技術指針案は、平成17年3月、「大規模地震に対するダム耐震性能照査指針(案)」として河川局治水課長より各地方整備局等に通知され、今後その試行が行われる予定です。
6) 「交通事故対策・評価マニュアル」及び「交通事故対策事例集」の作成
 事故抑止対策については、より効果的な立案、効率的推進、適切な対策効果の評価が求められています。このため国総研で、対策検討の一連の手順を体系化した「交通事故対策・評価マニュアル」案の作成等を行うとともに、道路局及び警察庁交通局の取りまとめを支援し、また、事故要因の分析から対策立案までの具体的な検討の際に参考となる「交通事故対策事例集」及び対策検討の知見を蓄積するための「事故対策データベース」を作成、構築しました。作成したマニュアル及び事例集は各道路管理者に配布され、平成15年度に指定された事故危険箇所の対策検討に活用する旨の事務連絡が、平成16年9月に道路局及び警察庁交通局より発出されました。
7) 「道路行政マネジメントガイダンス」の策定
 道路行政においては、平成15年度より成果志向の道路行政マネジメントを推進しており、今後は成果を意識した現場レベルでの実践が重要となってきます。これを支援するために、国総研では、業務プロセスに関する自治体や民間のマネジメント手法の先進的な取り組みを調査・分析するとともに、道路行政への適用について検討しました。その成果を踏まえ、道路局と共同して全国各地の事業展開・管理の実情を把握し、成果目標を達成するためにどのような施策・事業をとればよいかなどの行政判断等を支援する具体的な仕組みを企画した「道路行政マネジメントガイダンス」を作成し、平成16年11月に道路局から地方整備局等に通知されました
8)「鋼道路橋PC床版の施工マニュアル(案)・施工管理要領(案)」の策定
 国総研では、鋼道路橋のPC床版(プレキャストPC床版及び場所打ちPC床版)に関して、良好な施工品質を、より確実に実現するための施工上の留意点や手続きと、それらが確実に実施されていることを保証するための施工管理手法のあり方について研究をしました。その成果を活用し、品質確保に関する要求事項について、その理由や位置付けを体系化した、「施工マニュアル(案)」と「施工管理要領(案)」を策定しました。これらは、現場でのPC床版の施工計画作成時の資料として活用されています。
9)「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」の作成・公表
 高経年マンション(2〜3回目の大規模修繕工事を迎える、建築後30年程度以上を経過したマンション)が増加している中で、改修により建物を有効活用しつつ長持ちさせていくことが社会的に重要となっています。このため、国総研では、高経年マンションに必要とされる改修手法を新たに提案し、改修に必要な技術の収集・整理を行うとともに、改修に係る法律上の手続き等を検討し、明確化しました。この成果を「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」として取りまとめ、住宅局市街地建築課と共同で平成16年6月に公表しました。
10) 海洋環境データベースの標準化と利用システムの構築
 関東地方整備局の設立した東京湾環境情報センターに登録される東京湾の水環境の情報について、国総研では、観測情報を提供するとともに、港湾環境のデータベース作成に当たって、多様な海洋環境データの特性をUMLを用いて構造解析を行い、標準化を行いました。また、その成果が活用しやすいよう作成したXMLのスキーマやXMLへの変換ツールは、港湾環境データベースの利用システムの構築に反映されました。
11)「港湾整備事業の費用対効果分析マニュアル」の改訂
 港湾整備事業の事業評価は、運輸省港湾局により平成9年に策定された「港湾整備事業の費用対効果分析マニュアル」に基づき実施されています。国総研においては、事業の効果的効率的な実施やアカウンタビリティの向上に対する国民の要請の高まりに応えるため、事業評価手法の高度化を目的として、国際トランシップ(積替)貨物取扱に係る供給者便益の計測手法や港湾貨物の航路別時間価値の設定手法を構築しました。これらの成果は、平成16年6月に港湾局が策定した「港湾整備事業の費用対効果分析マニュアル」の改訂に活用されました。
12)「空港舗装構造設計要領」の一部改定
 空港コンクリート舗装の建設コスト、維持管理コストの縮減を目標として、国総研では、空港コンクリート舗装の目地間隔拡大について検討しました。検討では、コンクリート試験舗装の長期観測や有限要素法による解析を実施し、コンクリート版に発生する応力との関係から、最大目地間隔を従来の7.5mよりも長い8.5mとしても問題が無いことを確認しました。この成果は、平成16年4月、「空港舗装構造設計要領の一部改訂」に反映されました。
13)「下水道土木工事施工管理基準及び規格値(案)」の策定
 下水道事業の新土木工事積算大系の整備の一環として、従来、下水道の事業主体である地方自治体がそれぞれ個別に整備してきた下水道土木工事の施工管理基準及び規格値について、各自治体間の統一とすべての工種が整理さてれていない自治体の作成業務の負担軽減及び工事調達の透明性・客観性の向上を図るため、国総研が中心となり、全国的に統一した基準案を策定しました。その成果は、「下水道土木工事施工管理基準及び規格値(案)」として、下水道部から平成17年3月に地方公共団体等に通知されました。
14)「新土木工事積算体系に基づく工事工種体系」・「用語定義集」の改訂
 国土交通省では、平成3年度から、契約内容の明確化とともに、積算・契約業務の合理化・効率化のため、工事工種の体系化、共通仕様書・積算基準書等の契約・積算図書類等を体系的に整備する「新土木工事積算大系」の構築に取り組んでおり、現在までに一通りの整備を行ってきました。平成16年度には、国総研が中心となり、近年の施工実態等を踏まえたわかりやすい工種体系及び用語定義集への見直しや、工種体系・用語定義の名称の見直しを行い、全体で43工事区分の体系構築と約920の用語定義がなされ、「平成16年度改訂版 新土木工事積算体系の工事工種体系ツリー」及び「平成16年度改訂版 新土木工事積算体系用語定義集」を改訂整備しました。これらは、各地方整備局の積算・契約において使用されています。
新規施策・その他への反映
15)「自律移動支援プロジェクト」の推進
 国土交通省では、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、我が国の先進的なIT技術を活用し、移動等に関する情報を「いつでも、どこでも、だれでも」利用できることで、すべての人が安心して快適に移動できる環境作りを目指す「自律移動支援プロジェクト」を推進しています。国総研では、実環境下における要素技術の性能を把握するためのプレ実証実験及び歩行者ITSの研究開発で培ってきた知見を基に、自律移動支援システムと要素技術の技術仕様素案を作成しました。さらに、今後は素案をもとに実証実験システムを構築し、全国共通の技術仕様策定に反映させていく予定です。
16)有料道路の多様で弾力的な料金に係る施策
 道路局では、平成15年度に、一般道から有料道路への交通の転換等の促進により道路の有効利用を図るとともに、沿道環境の改善や渋滞緩和、交通安全対策などの推進を目的とした多様で弾力的な料金施策の実施に向け、料金に係る社会実験についての施策を創設しました。国総研では、全国各地で実施された地方提案型料金に関する社会実験の結果について、全国横断的な分析を行いました。その結果、一般道から有料道路へ交通が転換することによる渋滞等の地域の課題解決効果や様々な観点からの料金弾性値等に関する知見が得られました。本研究の成果は、平成17年1月から始まった日本道路公団による高速道路朝夕通勤割引に反映されました
17)「港湾のLCA評価モデルの作成」
 ユニットロード輸送を高度化するための港湾整備に伴う温室効果ガスの排出量を推計するため、国総研では必要となる計算の基本となる考え方を整理し、船舶、コンテナトレーラー、荷役機械、基盤施設整備等についての排出原単位を整理しました。また、各作業項目における推計作業を簡略化するための計算の基本パターンを種々整理しました。この成果により、港湾整備のLCCO2の算定が可能となり、政府の京都議定書目標達成計画(平成17年4月)に掲載された物流関係の目標を検討する際に活用されました。
18)公共事業におけるプロジェクトマネジメント(PM)手法の試行導入
 国総研では、平成11年度に策定されたPMビジョン並びにPMアクションプログラムを受け、直轄事務所での事業執行上における主な課題である「工程管理」「予算管理」「情報管理」の効率化・高度化を目的に、PM手法の導入・活用方策について検討を行ってきました。平成16年度は、PM支援ツールを運用・改良して直轄事務所で実際に導入することで、工程・予算・協議記録等を対象とした情報の共有化に関する運用手法の検討及び効果検証を実施し、発注者PMの効率的な運用手法等についてとりまとめました。その成果は、本省によるPM導入方針の検討材料として活用され、また、直轄事務所で試行されました。
19)ユニットプライス型積算方式の試行
 ユニットプライス型積算方式は、公共事業のすべてのプロセスをコストの観点から見直す政府の「コスト構造改革」の一施策であり、「積み上げ方式」から歩掛を用いない「施工単価方式」への積算体系の転換に向けた取り組みです。国総研は、本方式の制度立案、ユニット化の検討・定義付け、データ収集の方法の構築、データ分析手法の構築及び契約のルールの検討等を行い、「ユニットプライス型積算方式試行実施要領」、「ユニットプライス型積算基準(試行用)【舗装編】」及び「ユニットプライス規定集(舗装編)」等の策定に中心的な役割をはたしました。また、平成16年12月から、国土交通省の新設舗装工事において本方式の試行が開始されました。
20)震災対応能力向上のための、チェックリスト、被害想定マップ、教訓事例集の作成
 平成15年に連続して発生した東北地方における地震を契機に、想定される宮城県沖地震の発生に備え、現状の震後対応上の課題を踏まえ防災担当職員が平時からの備えを自己評価するチェックリスト、防災訓練でのシナリオ作成のベースとなる被害想定マップ、既往大規模災害を経験した職員へのヒアリングに基づく教訓事例集を、国総研は、道路局、東北地方整備局及び(独)土木研究所と連携して作成しました。提案した方策は、東北地方整備局において活用されています。
21)道路防災対策の計画立案を支援する道路橋防災マップの作成要領の策定
 「緊急輸送道路の耐震補強3箇年プログラム」を策定するに当たり、耐震補強事業の要対策箇所及び対策進捗状況を確実に蓄積・管理する道路橋防災マップの作成要領を、国総研が平成17年1月に策定しました。地方整備局が、この要領に従って作成した防災マップを基に、国総研は、道路局及び(独)土木研究所と連携して、「同プログラム」(平成17年4月)を策定しました。
22)首都直下地震に対する道路橋の耐震性評価フローの策定」
 中央防災会議は、想定される首都直下地震の推定地震動を公表しています。国総研は、首都直下地震に対する直轄国道の道路橋の耐震性を明らかにするために、公表された推定地震動から地盤条件を考慮した地震動を推定するとともに、これらの地震動特性を踏まえた道路橋の耐震性評価フローを、道路局及び(独)土木研究所と連携して策定しました。このフローに基づき、関東地方整備局管内の道路橋の耐震性が評価されました。
(3) 技術支援活動
1) 行政への技術支援
  国土交通省の行政運営に対する技術的な支援として、「建築基準法」及び「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の技術基準の見直し原案の検討・作成、家庭用生ゴミディスポーザーの導入可否についての技術資料作成などを実施しました。
地方整備局、直轄事務所に対する支援として、事業の執行・管理に必要な研究開発や技術指導を実施しました。また、事業執行のための技術指導や各種技術的検討のための委員会へ参画するなどにより、他省庁や地方公共団体などに対する支援を行いました。
 その内訳と主な事例を、以下に示します。
行政運営・事業執行等のための技術指導 415 件
各種委員会への参画   1,049 件
〈主な事例〉
・直轄国道事務所内における情報の共有化支援
 静岡国道事務所内における知識・情報の共有化や業務の効率化に資する情報ツールの設計を目的とした事務所内検討会の運営を支援し、散在する電子化情報や情報システムのポータルサイトの一元化等、情報共有化や、整理・管理・利用・更新しやすい環境整備を行いました。
・γ線樹木腐朽診断器による樹木の健全度調査
 林野庁中部森林管理局東濃森林管理所の依頼を受け、国総研で開発した非破壊検査で木材内部腐朽を簡易に測定及び判断できるγ線樹木腐朽診断器により、檜の腐朽状況を把握しました。
・市役所への準防火地域における市街地の防火性能把握手法に関する技術的助言
 準防火地域の指定見直しの検討をはじめた旭川市に対して、防災まちづくり総プロ等で国総研が開発した市街地の防火性能の評価手法について、技術的助言を行うとともに、指定の有無による防火性能の違いを説明する方法等、防災施策に係る技術指導を行いました。
2) 災害への技術支援
 平成16年度は、風水害、土砂災害、地震など多くの自然災害に見舞われました。国総研では、21件の災害に対し、現地における技術指導等を114件実施しました。その代表的事例を紹介します。
・台風
  観測史上最多となる10個が上陸した台風に関しては、台風16号(8月)・18号(9月)で発生した高潮・高波被害について、本省港湾局からの要請に応じ、(独)港湾空港技術研究所と連携して函館港島防波堤の被害状況、高松市等の浸水状況等について緊急現地調査を実施しました。また、本省道路局からの要請に応じ、一般国道229号大森大橋(北海道神恵内村)の一部落橋についての調査を実施しました。さらに、台風23号(10月)では、本省河川局からの要請に応じ、菜生海岸(高知県)の被害調査を(独)土木研究所と連携して実施しました。
・新潟県中越地震
 新潟県中越地震(平成16年10月23日)では、本省等からの要請に応じ、(独)土木研究所及び(独)建築研究所と連携して順次現地に専門家を派遣しました。被災地域を管轄する地方整備局や地方公共団体等に対して、危険箇所の判定、災害後の原因究明、復旧事業への技術支援など多岐にわたる技術支援を行いました。
建築物の応急危険度判定を適切かつ迅速に実施するための支援
多数出現した大規模河道閉塞(天然ダム)の安定性判定等への助言、現地指導
河川・道路施設等の被災程度の判定、応急及び本復旧に関する技術支援
北陸地方整備局が実施する地震対応の改善に向けた検討への助言
・スマトラ島沖大地震及びインド洋津波
 スマトラ島沖大地震及びインド洋津波被害(平成16年12月26日)については、平成17年3月に派遣された政府調査団の調査団長を国総研所長が勤めた他、4名が団員として加わり、復旧支援に当たっての被災状況の把握や我が国の地震・津波対策の一層の推進に資する情報収集や、我が国の今後の支援、対応・検討すべき事項等について取りまとめました。また、スリランカ政府及びモルディブ政府からの要請により派遣されたJICA国際緊急援助隊・専門家チームに団員として参加し、被災地の県知事や津波災害担当官といった行政官を直接訪問し、短期・中長期的な復旧・復興に対する要望をヒアリングしました。インドネシアのバンダアチェで実施した木造住宅等の被害調査結果では、公共事業省とバンドン工科大学の都市計画の担当者に対して報告を行うとともに、今後の復興計画の中で配慮すべき事項を助言しました。さらに、(独)土木研究所、(独)建築研究所及び(独)港湾空港研究所と連携し、緊急調査研究団を現地に派遣しました。
1.2. 基本課題に係る活動
 3つの基本課題(「時代に即した社会資本の整備・運営のあり方」、「安全で美しい国土の創造」、「豊かさとゆとりの感じられる生活環境・都市環境の形成」)については、国民のニーズに真に応える研究を推進するため、国民のニーズ、時代の潮流、科学技術の動向等について把握・考察し、研究のスタンスや方向を的確なものとするための検討を長期的な視野の下で継続して取り組んでいます。
 「時代に即した社会資本の整備・運営のあり方」については、国土技術政策総合研究所講演会(平成16年12月)において、これまでの検討成果を「公共投資規模に関する視点」と題して発表しました。「安全で美しい国土の創造」については、国土交通省国土技術研究会に新規指定課題「景観検討・評価のための計画デザイン・システムに関する研究」を登録し、先進的取り組みを行っている地方の事務所と景観実務上の課題、工夫等について情報交換するなどし、「豊かさとゆとりの感じられる生活環境・都市環境の形成」については、具体的な考察を行うため、「ユニバーサルデザイン」をテーマとした有識者講演会を3回開催して議論を深めています。
1.3. 研究成果の発信
 国総研の代表的な研究や研究の動向、研究成果の施策への反映事例などを紹介した国総研アニュアルレポート2005(第4号)を、平成17年3月に発刊し、関係機関や地方公共団体、大学、図書館、マスコミなどに配布するとともに、ホームページで公開しました。
 本号では、「美しい国づくりをめざして」と「持続可能な交通」を特集として取り上げました。平成16年に頻発した自然災害については、国土交通行政に大きくかかわるものとしてトピックスで紹介し、災害・防災において国総研がはたしている役割について積極的に情報発信しました。また、誌面の充実を目指し、国総研で実施しているすべての研究を網羅した国総研研究マップを、昨年に引き続き掲載しました。
(2) 国総研研究報告及び国総研資料
 研究成果の発信、普及を目的として、国土技術政策総合研究所研究報告※1(4編)、国土後術政策総合研究所資料※2(76編)を発刊するとともに、その概要を順次ホームページ上で公開しました。
※1 国土技術政策総合研究所研究報告: 国総研において実施した研究又は調査の成果をとりまとめたもので、学術上価値のあるもの、政策として優れたもの又は社会的意義が高いもの
※2 国土技術政策総合研究所資料 : 国総研において実施した研究、調査、試験、観測、会議、講演会等の成果をとりまとめたもので、記録又は公表する価値があるもの
(3) 講演会等による情報の発信
 技術政策課題に関する重要な研究成果の発表など、国総研の研究活動を広く一般の方に紹介することを目的として「国土技術政策総合研究所講演会」を平成16年12月に都内で開催しました。講演会では、これからの公共投資や技術開発に関する動向や、平成16年に発生した風水害及び新潟県中越地震災害などに関する幅広い話題を提供しました。また、東京大学大学院新領域創成科学研究科の松井孝典教授より、宇宙から見たシステムとしての地球と人間圏について「地球システムと人間圏」と題した特別講演を行っていただきました。 講演会には、民間企業、大学、関係法人、官公庁などから600名を超える参加がありました。
 また、プロジェクト研究や基礎・基盤研究について、所内研究者相互の理解を深め、交流を促進するとともに、若手研究者に発表の場を提供することを目的として、「国土技術政策総合研究所研究発表会」平成16年5月に所内(つくば、横須賀)にて開催しました。
 4月「科学技術週間」(つくば)、7月「海の旬間」(横須賀)、11月「土木の日」(つくば)「秋期一般公開」(横須賀)と施設の一般公開を行い、一般及び青少年への情報発信、交流を行いました。特に、(独)土木研究所と共催の「土木の日」には、約1,000名の来場者がありました。また、「中学生ミニ博士コース」の実施や、「サイエンスフロンティアつくば」、「港湾空港技術講演会」などの各種イベントに積極的に参加しました。
 国総研の研究活動を広く紹介するとともに専門的・技術的な疑問に答えることを目的として、35の出前講座を開講し、企業、地方公共団体等の17件について出講しました。また、省内関係機関、大学、地方公共団体などに208件の講師派遣を行うなど、外部からの要請に応じて専門家を随時派遣し、技術支援を行いました。
 さらに、外国の研究機関などに向けての情報発信として、NILIM News Letterを4回発刊しました。
(5) 国総研ホームページ
 国総研ホームページを通じて積極的な情報発信を行うため、継続的にコンテンツの拡充を図りました。特に、スマトラ島沖地震の発生に際しては、従前の被害調査報告や地震・津波に対する国総研の研究成果等を取りまとめたサイトを速やかに整備しました。また、国総研の使命や取り組み姿勢等を幅広い閲覧者に分かりやすく紹介するPRコンテンツの充実について検討を進めるとともに、既存のホームページを分析することにより、必要な情報を引き出しやすいコンテンツ階層の抜本的見直しについて検討しました。日本語版トップページへのアクセス件数は、年間約36万件でした。 
 海外の研究者などに対しては、英語版ホームページにおいて、引き続き、NILIM News Letterや国総研アニュアルレポート英語版を掲載しました。
1.4. その他の研究開発活動
(1) 国土管理データベースの構築
 国総研が観測あるいは他機関と共同で観測・運営している、東京湾の環境情報、港湾地域強震システム、地震計ネットワーク情報、全国港湾波浪情報(ナウファス)について、継続的にデータの蓄積を図り、随時ホームページで公開しています。地震計ネットワーク情報については、新潟県中越地震や福岡県西方沖地震を受け、迅速な観測データの公開の必要性が高まり、従来公開まで3時間かかっていたところを、全自動化することで15分にまで大幅に短縮しました。
(2) 他機関との連携
 多様化する住宅・社会資本整備に関する国民のニーズに応えながら効率的に技術開発を行うため、独立行政法人、大学、民間企業等とそれぞれの特性を活かした共同研究を37件実施しました。そのうち、大学、民間企業との共同研究は16件です。また、委託研究として21件の委託契約を締結し、研究を推進しました。
 総合科学技術会議の環境分野などにおいて、研究イニシャティブに参画しました。また、シンポジウムでの講演、ワークショップやワーキンググループの開催等のイニシャティブに資する活動を通し、大学や他の研究機関との情報共有や研究連携を図り、研究を推進しました。
 「学」の知恵、「産」の技術を幅広く取り込み、道路政策の質を向上させるために、道路局が平成16年10月に設置した「新道路技術会議」の運営に積極的に係わり、委託研究を実施する等「学」、「産」で行われる研究の円滑な実施とその成果の活用のためのコーディネーター的役割をはたしています。
(3) 他分野との交流
 所内講演会を28件実施し、経済、教育分野など様々な分野の有識者との交流を深めるとともに、つくばテクノロジー・ショーケースなど、他省庁・他団体の主催する事業、講演会などに参加し、知見を広げました。
 また、研究に行政の視点を取り入れるため、本省や事業実施主体との人事交流を行い、さらに、任期付研究員として10名を受け入れました。
 国立研究機関長協議会及び筑波研究学園都市交流協議会の会員として、多様な分野の加盟研究機関と相互連携を深め、共通する諸課題について意見交換を行いました。特に、国立研究機関長協議会では、代表幹事を勤め、協議会の活動の取りまとめを行いました。
(4) 研究者の育成
 国総研の研究者には、総合的な判断能力と資質が求められています。若手研究者に対しては、所内研究発表会での発表の場や充実した所内研修メニューを用意するほか、オン・ザ・ジョブによるトレーニングに加え、バーチャルOJTも活用して実践に即した研究マネジメント能力を効率的に養成しています。また、30歳前後での海外留学(現在8名が留学中)や博士号取得を推奨しています。室長クラスには、国際会議における責任ある業務を行わせるなど研究者の育成に配慮しています。
(5) 国際的活動
 国総研の主催などにより、国際会議を10回開催するとともに、外国人招聘研究者11名、外国人見学者9か国111名、外国人研修員57か国245名を受け入れました。また、国際化への対応として、海外での国際会議への積極的な参画を含め、職員208名を公務などにより46か国に派遣しました。
 国際的な技術協力として、JICA技術協力により職員26名を海外に派遣し、また、二国間協定によるプロジェクトを30件、多国間での技術協力を12件実施しました。
 また、ISO等の国際標準化活動に関連し、海外の会議に多数参加し、基準等について情報・意見の交換を行いました。
 「第13回アジア地域土木研究所長等会議」(平成16年10月)では、「都市域における水環境管理」を共通のテーマに12か国からの参加者による発表・討議を通じて、国土技術政策に関連する意見交換・情報交換するとともに、アジア地域における研究所長クラスの人的ネットワークの構築に努めました。同会議と同時に、「第13回アジアにおける国土開発と土木技術に関する国際シンポジウム」を沖縄県において開催し、「アジアの大都市における水環境問題」をテーマに、各国の事例を紹介した講演が行われ、沖縄県内の約100名の参加を得ました。
 平成16年7月にシンガポールで開催された「第2回アジア太平洋地域水文水資源国際会議(APHW2004)」では、地域における水管理の歴史と課題から得られた教訓を各地域での応用を促すことを目的として、NILIMスペシャルセッションを開催しました。
 外国人研修としては、JICA集団研修(港湾工学コース,河川及びダム工学コース)などにおいて、アジア地域を中心として多くの国から研修生を受け入れました。
 (独)土木研究所が平成17年秋の設立承認を目指している「ユネスコ水災害・リスクマネジメント国際センター(仮称)」設立については、「ユネスコセンター設立準備委員会」及び「同準備作業委員会」の委員として加わり、センター設立へ向けて助力をしています。

 (6) 知的財産権の取得及び活用
 国総研の研究開発成果について、職務発明の機関帰属化と発明者に対する補償拡充など職務発明の取扱いを明確にし(平成15年度)、引き続き知的財産の創出に努めました。また、委託研究に関しては、「産業活力再生特別措置法」第30条(いわゆる「日本版バイ=ドール制度」)を活用し、知的財産権の委託先企業などへの帰属を進めました。
 平成16年度については、新たに登録された特許が18件あり、国総研として年度末累計で208件(うち海外16件)の特許を所有しています。登録された特許については、国総研のホームページに技術情報を掲載しました。
2.自己点検結果と今後の研究開発活動の方向
 「1.研究開発活動の成果」を受け、以下のとおり、自己点検を行うとともに、研究開発活動の今後の方向性について整理をしました。
2.1.  研究の推進と成果の活用
自己点検結果
 平成16年度に実施した22のプロジェクト研究と269の基礎・基盤研究については、国総研研究マップから、7本の柱と17の技術政策課題をバランス良く効果的に実施し、所定の研究成果を上げたと考えています。また、成果が施策へと反映された事例が多くあり、社会から必要とされる研究が実施され、技術政策課題の解決に有効に活用されたものと考えます。例えば、政府の「コスト構造改革」の一施策であるユニットプライス型積算方式については、制度立案から施策の推進に至るまで中心的立場から研究開発活動を行い、その成果に基づいて全国で本方式の試行が行われています。 
 行政の事業執行・管理や災害時における技術指導・技術支援については、本省や地方整備局、地方公共団体からの多くの要請に基づいて、多数の支援を行ったこと、また、災害時に迅速かつ的確な技術支援等がなされたことから、現場の最前線と連携しながらニーズに的確に対応したと考えます。また、所外への講師派遣や委員会への参画についても、要請に応じて専門家や技術者を派遣しており、多岐にわたり実施したものと考えます。
今後の方向
 平成17年度は、時代の潮流や社会の要請を反映した課題設定のもと、新たに8つのプロジェクト研究
・「住宅の省エネルギー性能向上支援技術に関する研究」
・「ヒューマンエラー抑制の観点からみた安全な道路・沿道環境のあり方に関する研究」
・「受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究」
・「高強度鋼等の革新的構造材料を用いた新構造建築物の性能評価手法の開発」
・「人口減少社会に対応した郊外住宅地等の再生・再編手法の開発」
・「歴史的文化的価値を有する高齢建造物の再生と活用に関する研究」
・「東アジア経済連携時代の国際物流ネットワークとインフラ整備政策に関する研究」
・「沿岸域における包括的環境計画・管理システムに関する研究」
を開始し、継続のものと合わせて23のプロジェクト研究を実施します。国民のニーズに真に応える研究の推進に向けて、引き続き基本課題の検討を進めるとともに、英知を集結し、産官学の連携を活かした研究開発活動を促進するコーディネーターとしての役割をこれまで以上にはたしていきます。さらに、研究成果に基づき、より一層政策の企画・立案に関わる提案ができるよう努めていきます。  所外への技術支援活動については、専門性・技術力が求められる分野において、積極的に支援していくとともに、災害に対して迅速かつ的確に対応できるようこれからも努めます。  総合科学技術会議では、現在第3期科学技術基本計画の平成17年度内策定に向けての検討が進められています。また、国総研においても、平成17年度末で国総研設立当初からのプロジェクト研究課題がすべて終了することから、平成17年度を国総研として一つの区切りとなる重要な年であると考えています。今後、政策の企画・立案に一層関わる提案ができるよう、コーディネーターとしてはたすべき役割について検討を進める中で、上記の情勢も踏まえつつ、研究方針の見直しに取り組んでいきます。
2.2 研究成果の発信
自己点検結果
 平成16年度においても、研究成果を国総研研究報告・資料として逐次取りまとめ発刊することで、国総研としての研究開発活動の実績を着実に整理・蓄積するとともに、ホームページで概要を閲覧できるようにしました。ただし、国総研研究報告・資料の全体を閲覧することはできるようになっておらず、電子化による情報発信としては不十分な点が見られます。
 アニュアルレポートについては、時代・社会の要請に応えた特集やトピックスの編成、国総研研究マップの掲載等を行い、誌面の充実に努めるとともに、関係機関への配布やホームページへの掲載により、国総研のはたす役割や研究開発活動の成果を情報発信できたものと考えています。
 英語版アニュアルレポートやNILIM News Letterの定期的な発刊とホームページへの掲載により、海外に向けた情報発信に努めました。
 ホームページについては、トップページへのアクセス件数は増加しておりますが、効率的な情報発信には不十分な面も見られます。このため、既存のホームページを分析し、幅広い閲覧者を対象として分かりやすく国総研の取り組みについて紹介するコンテンツの充実や、必要な情報を引き出しやすいコンテンツ階層について検討しました。
今後の方向
平成17年度からは、国総研研究報告・資料を始め研究成果を電子化してホームページにおいて全文が閲覧できるようにし、効率的な情報発信に取り組みます。また、今後発刊される報告・資料を効率的に引き出せる検索システムの導入について検討します。
 海外向けについては、英語論文や国際会議での発表などを研究者に推奨することで、より多くの研究成果等の情報が発信されるよう努めます。
 子供向けパンフレットや国総研の紹介用DVDを活用することで、出前講座、一般公開等の広報活動を充実させ、本分である研究開発活動を重視しつつも、専門家以外の方々に国総研を分かり易く説明していく活動を進めます。
 ホームページについては、平成17年度に抜本的な見直しを行い、必要な情報を引き出しやすくするとともに、国総研の活動について幅広い閲覧者に分かりやすく紹介するPRコンテンツを充実させます。PRコンテンツでは、行政や研究の分野において種々の経験を積んだ専門家によって国総研の研究が担われていることなど、国土技術政策に貢献できる研究への取り組み姿勢を示します。
 さらに、平成17年度は、各種広報活動を効果的に行うための広報活動計画を策定することにより、各種広報媒体の対象を明確化し、分かりやすい広報媒体の作成がなされるよう工夫していきます。
2.3. その他の研究開発活動
事故点検結果
 国土管理データベースについては、継続的な観測・データ収集・蓄積を行うとともに、ホームページで公開しながら迅速に最新の情報を提供できるよう努めました。
 総合科学技術会議の環境分野などにおける研究イニシャティブに参画し、大学や他の研究機関との情報共有や研究連携を図りました。
 他分野との交流については、国立研究機関長協議会において代表幹事を勤める等、他分野の加盟機関との相互連携を積極的に推進しました。
 若手研究者の育成については、所内での各種研修やOJTの実施、海外留学、博士号取得、学会での成果発表等を推奨しました。なかでも、研修については、バーチャルOJTを盛り込み、企画力・実践力に優れた研究者を育成するカリキュラム作成を行いました。また、英語研修や海外の学会への論文投稿、国際会議における経験等を通して、国際的に活躍できる研究者を育成することで人的資源の充実に努めました。しかし、バーチャルOJTによる研修プログラムについては、若手研究者が仮想的に体験する適切な素材の蓄積が少なく、改善の余地があります。
 国際的活動については、国際会議の開催、外国人研修生・見学者の受け入れ、技術協力を目的とした職員の海外派遣等、積極的に取り組みました。
 登録された特許については、国総研ホームページに技術情報を掲載して利活用を図るとともに、国総研の研究成果の知的財産化についても着実に取り組みました。
今後の方向
 国土情報データベースについては、今後も継続して観測・データ収集・蓄積を行い、充実を図っていきます。
 他機関との連携や他分野との交流等の機会を活かし、国総研の研究レベル向上に向けて研鑽を積んでいきます。
若手研究者の育成については、既往の研究の成功事例について整理・検討することにより、バーチャルOJTの適切な素材の充実に努めていきます。
 国際的な活動としては、国際会議の主催や運営への参画、海外における災害への技術支援・調査等を通じて、国際協力へ積極的に関わることにより、国際社会から必要とされる組織として活躍していけるよう努めます。なお、国総研の研究者が国外での活動に投入した時間(海外出張)が全研究者の公務時間の約8%となっておりますが、他機関の国際的な活動状況も参考に評価を加えることにより、今後の効果的かつ効率的な活動のあり方について検討していきます。
 特許については、国土交通本省において整備される「技術研究開発成果検索システム」にも登録することで、更なる利活用を目指し情報提供を行なっていきます。