平成16年度第4回国土技術政策総合研究所研究評価委員会議事要旨





平成16年度第4回国土技術政策総合研究所研究評価委員会議事要旨

1.日   時: 平成17年2月3日(木)14:00〜17:00
   
2.場   所: 虎ノ門パストラル 新館4階 ミント
  (東京都港区)
   
3.出席委員: 石田委員、岸委員、佐伯委員、根本委員、中川委員、藤田委員(以上、第1部会)浅見委員(第2部会)、井口委員(第3部会)
   
4.配付資料:  
資料1 平成16年度第4回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第1部会担当)委員名簿
資料2 評価の方法等について
資料3 国土技術政策総合研究所プロジェクト研究一覧
資料4 受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究(事前評価)関係資料
資料5 ヒューマンエラー抑制の観点からみた安全な道路・沿道環境のあり方に関する研究(事前評価)関係資料
資料6 四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発(報告)関係資料
資料7 社会資本の管理技術の開発(報告)関係資料
  参考資料
 ・ 国土技術政策総合研究所研究評価委員会設置規則 
 ・ 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会設置規則 
 ・ 平成17年度予算内示関係資料(行政部費・総プロ等)
 ・ 国土技術政策総合研究所研究評価委員会 平成16年度分科会報告書(vol.1)
5.議事次第:  
1. 開会
2. 国総研所長挨拶
3. 分科会主査挨拶
4. 議事
(1) 評価の方法について
(2) 新規プロジェクト研究候補の事前評価
  @受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究
  Aヒューマンエラー抑制の観点からみた安全な道路・沿道環境のあり方に関する研究
5. 報告
(1) 国総研で重点的に実施する基盤研究の報告
   @四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発
(2) 国土交通省総合技術開発プロジェクトの報告
   @社会資本の管理技術の開発
6. その他
7. 国総研所長挨拶
8. 閉会
6.議事内容:  
(1) 評価の方法等について
   事前評価の方法等について事務局より説明し、委員の了解を得た。なお、以下の質疑があった。
評価の視点のうちの効率性の箇所について、研究費の大きさに対して成果・目標が妥当であるかという、費用対効果の議論をしなくても良いのか。
その点は委員の皆様に決めていただく事項であるが、事務局としては、今回は予算案の内示の後でもあり、そういった観点からも評価をいただければと考えている。
評価の視点に明記されている研究計画や研究体制に研究費が含まれるものと解釈して評価できるのではないか。
第2部会や第3部会が中心となる分科会は、本日の会議と同じタイミングで開かれないということだが、そうなった経緯を説明して欲しい。
両主査に新規プロジェクト研究候補としてどのような研究があるかを説明に伺ったところ、概算要求前に事前評価していただいた時点の研究内容と大きく変わりがないということから、改めて事前評価をする必要がないと判断いただいた。
 (2) 議事「新規プロジェクト研究候補の事前評価」についての評価委員の評価、意見及びそれらに対する国総研の回答
評価、意見等は、分けたり、重復のものをまとめて、話題ごとに整理した。
凡例 
○:委員からの意見及び評価、→:国総研の回答
@ <受益者の効用に着目した社会資本水準の評価に関する研究について>
説明の中で、「グローバル」、「ナショナル」、「ローカル」との用語を使っているが、このナショナルは「ステート」というべきではないか。ナショナルとステートの使い分けをしっかりして欲しい。ナショナルは、国民という意味で使われる場合が多く、また、グローバルは国際貢献を論じる際によく使われる。
グローバルは入れなくても良いのではないかというご意見か。
グローバルであれば、国際貢献につながるものが入るべきだと考える。研究の内容によって、判断していただきたい。
研究内容にリスクプレミアムを新たに追加したということは良いことだと考える。その成果としては、リスクプレミアムを計測するためのマニュアル整備をすることや計測手法を開発すること等が考えられるが、どの様な成果を目標としているか教えて欲しい。
基本的には、リスクプレミアムの計測手法を開発することを考えている。現在の手法で評価できていない項目を評価するための手法の開発を念頭に置いている。その過程で新たな原単位を作る必要があるかもしれないが、その辺りは研究を進めながら検討していきたい。
リスクには定常的な現れ方をするももあれば、地震のように短期的に捉えれば定常的ではないと考えられるものもある。またハザードの評価対象や大きさは対象とするリスクによって大きく異なるため、リスクプレミアムの計測手法も対象とするリスクによって異なるものになると思われる。計測手法の開発の対象としてどの様なリスクを扱うか教えて欲しい。
地震のように災害の範囲や対策が広範なものを対象にするのは難しいので、まずは、ある程度限定された範囲で起きて、かつ災害対策もある程度想定できる水害を検討対象としてイメージしている。
そのようにある程度ターゲットを絞った方が研究の成果が期待できるのと思う。
非常に重要な研究だと思う。ただし、今までの研究の成果にはどの様なものがあって、残りのどこを研究すればよいのかが表現されると、アウトプットがより分かりやすくなると思われる。ブレークスルーすべき点はどこであるか、これまでの研究の中でどこが出来ていないのかを教えて欲しい。
河川事業の特に事業評価についていえば、物の被害についての評価方法は既にあるが、被害に対する不安や被害の復旧に伴う不利益・損失については十分な評価方法がないと考えられる。被災に伴って余儀なくされる住み替え等については、現時点では評価対象から外れているため、事業効果の評価に考慮できるよう検討する必要があると考えている。
事業評価に繋げたいというところで国総研の特徴を出そうとしていると受け止める。アンケートや支払い意思額から評価しようということだが、例えば、堤防が低くても住民は安心・満足している場合や、逆に堤防が高くても不信感があるなど住民が不安を感じている場合もあり得る。支払い意思額に基づいて計画することがどういう意味を持つのかを検証して欲しい。実際の計画の現場では標準的な考え・モデルだけではうまくいかないと思う。その点で、コミュニケーションの仕方や住民への情報提供の方法によって、住民の判断や支払い意思額がどう左右されるかという研究になっていくのではないかと思う。
標準的なモデルでカバーできない部分をいかにうまく整理して国民に示すかが国総研の仕事だと思う。例えば、住民にとっては内水氾濫でも外水氾濫でも同じ水害であるため、河川も下水も関連させて対策するのが一番効率的である。このような視点に立って社会資本整備の計画段階でコストまで考慮した評価をすると従来とは大きく異なる結果が得られるものと考えられる。マイクロエコノミクスの視点にだけ留まることは避け、どのようなやり方をすれば市民から激しい反発がくるのかを概括的に整理するという視点でも検討を進めていただきたい。
色々な問題を提起していただいたので、整理して研究していきたい。この研究の根本としては、住民の安心とは何か、また、その安心を実際に評価していった時にどうなるかといったアプローチの研究の進め方を考えている。
タイトルに「受益者」とあるが、社会資本の性質上、今そこに住んでいる人だけでなく、100年後にそこに住んでいるかもしれない人も受益者に含まれるのではないか。現在の住民の支払い意思額の調査等をしたとしても100年後の住民の意思は反映されないことから、受益者をいかに普遍化するかが、社会資本の基本的な課題だと思うので研究内容に盛り込んでいただきたい。
社会資本の整備水準をいかに捉えるかという問題かと思う。また、確かに、住民にとっては河川の水か下水かはわからないといった面があるため、住民の立場に立ってどのような政策を展開できるのかが問題になってくる。その中で、河川と下水のどちらを優先させるかという代替性の議論も出てくると思われる。その辺りも含めて社会資本の水準とは何かという議論がひとつのテーマになると考えている。
社会資本の整備水準には、平常時で決まるものと、災害が発生した場合のような非常時の状態を勘案して決まるものとがある。平常時と非常時の話は分けて整理していく必要があるのではないか。トータルの防災投資が地震によって決まるようなケースにおいては、全てを耐震化すれば良いのかという議論もある。防災に対するニーズの高まりはあるが、とても対応しきれないと主張する自治体もある。歴史的に見て今の耐震設計がどれほどのコスト増を招いているか等を把握して、コストとリスクの適正なバランスを示す方法論を提示できれば時宜を得た成果になるのではないか。例えば、サンフランシスコの水道事業では活断層で起きる直下型地震について現況の被害予測を行うとともに、複数の補強の水準に応じた被害の減少額と補強に必要なコストの比を示し、受益者のコスト負担を前提に、どの補強水準を選択するのがよいのかを受益者の判断に委ねて、それを参考に補強水準を定めている事例あるので参考にしてはどうか。
社会資本水準を決める際には、技術的に決まる場合、合意形成により決まる場合、効率性やマーケットにより決まる場合、政策的に決まる場合と4つのパターンが考えられる。ここでは、受益者の選好が焦点となっているため合意形成の手法ということになるが、まちづくりについては短期的な視点だけでは議論できない面があるため、政策的、技術的な視点も取り入れて検討して欲しい。
個々の研究者だけでは出来ない研究であり、組織として是非進めて欲しい。確かに研究対象として、始めから種々のジャンルが入りすぎているのではないかとも思える。社会資本の分類によってはリスクプレミアムを考える必要があるもの、非常時のことを考える必要があるもの等個性があるため、それらの特徴に配慮しつつ研究を進めて欲しい。また、整備水準についてはB/Cだけでなく、政策形成過程や政治過程などコミュニケーションのプロセスから決定される面があるため、どのようなプロセスを踏むと受容性が高まるのかといった研究も実施して欲しい。
受益者の求める整備水準や自然災害については地域性がある。また、災害経験者であるか否かによって災害に対して求める整備水準は変わってくる面もある。地域性や対象としている人を考慮できるよう研究を進め、多くの人が納得できる評価手法を提案して欲しい。
他部会の委員や欠席委員からの意見を紹介して欲しい。
いくつか意見をいただいているので、集約して紹介したい。ひとつはリスクコントロールについて過失の問題が入るのではないかという意見をいただいたが、本研究では個人行動の過失のリスクは扱わないと考えている。また、サービス水準と整備水準は同じかという質問をいただいたが、この研究でいう整備水準は、物的な整備水準やサービス水準を含む概念と捉えている。3点目で、シビルミニマムをどのように設定するのが良いかというご質問をいただいたが、本研究では個々の社会資本のシビルミニマムではなく、検討すべき尺度や計測方法を提示するのが成果目標と考えている。4点目で、意思決定を行うグループが不明とのご意見をいただいたが、本研究では行政機関としての意思決定を考えている。事業実施に当たっては合意形成等も絡んでくるが、当面は水準をどう評価するか、行政としてどう考えるべきかを優先させたい。また、ミクロ手法とマクロ手法の共有については、ミクロの手法に関する情報の共有とマクロの手法に関する情報共有のという意味がある。異なる手法を並行して使うことで、バイアス傾向を是正し、それぞれの手法を補完し合う機能が働くのではないかと考えている。
まちづくりの検討範囲を限定すべきという意見をいただいているが、インプットとアウトカムとの関係が比較的分かりやすい事業から順に進めたい。まずは、中心市街地活性化や観光・交流にウェイトをおいて進めたい。
まちづくり交付金はおもしろい事業だと思う。モデル開発の意義は「成功の確率が高い事業へ補助金を交付するため」と思うが、補助金をもらいやすいように成功の確率が高い設定をした事業に偏ることがないよう注意が必要。平均的に成功の確率の高い事業を全国的に展開するという考え方はおかしい。むしろ、当初の判断だけでなく、試行実験しながら、あるいはフィードバックさせながら交付していくプロセスの研究が必要かと思う。
ある程度、局所・単機能及び現在に中心を置かざるを得ないのかと思うが、できるだけ広域・多機能、長期的を目指していただきたい。例えば、安全を確保するために10のお金を使う時に、11のお金を使えば安全以外に快適や観光の効果が高くなるといった議論ができると良い。
私が関わるまちづくり団体では、社会実験を何度も繰り返し、うまく進みそうだという結果が出て初めて交付金を受けている。現行のまちづくり交付金は、単なるバラマキにはなっておらず、非常に意味のある制度として活用されているので、その辺のプロセスをよく検証しておいていただきたい。
  <評価のとりまとめ>
公平性と効率性の問題を整理し、局所・単機能・短期間であった評価を広域・複合・長期間に広げる大変重要な研究であるため、是非推進すべきであると評価できる。ただし、本研究の前段階でどこまで研究が進んでいるのかを示し、ブレークスルーすべき点をより明確にして進めてほしい。評価方法については、実際に使ってみてどうかという観点が重要である。評価体系そのものが独立して存在することのないよう留意し、合意形成やコミュニケーション過程との関係も考慮することが重要である。また、現在の受益者に焦点を当てれば短期的な視点の評価になる懸念があるので、受益者をどう考えるかという点に留意しつつ研究に取り組んでいただきたい。空間的な問題については、国土計画でいわれている二層の圏域構造、まちづくり交付金、道州制の問題等を念頭に置けば、“ナショナル”と“ステート”、“ローカル”などについて、そういったこととの関係を整理してよりPRすると良いのではないか。
 A ヒューマンエラー抑制の観点からみた安全な道路・沿道環境のあり方に関する研究について>
高齢者に焦点を当てることは現在のニーズに合っていると思うが、運動生理学の視点を取り入れるとエラーの意味が分かりやすくなるのではないか。また、「無謀な運転」や「ながら運転」が事故につながっていると考えられるが、そうしたものに起因するエラーは走行実験では考慮できないのではないか。
高齢者の事故率が高くなる要因としては、反応のスピードが遅くなる、スピード感の状況認識が低下して車間距離のみで判断しがちになるといったものが考えられる。これらの要因が、道路環境や沿道環境とどのように関係するのかを検討していきたい。本研究の最終的な目標は道路・沿道側の事故要因の除去であるため、運転者固有の問題に起因する事故については、例えば、警察の安全教育との関連も出てくると考えている。走行実験に関しては、イレギュラーな運転の走行実験をどこまでできるかという点と、イレギュラーな運転が事故要因としてどの程度大きいのかという点をあわせて検討していきたい。
全ての要因を研究対象とするわけではないということであるが、研究の対象としている要因が事故の何%を占めるかを明確にすれば研究の有効性を示せるのではないか。
資料P.2の図-2の調査結果から、19万kmある県道以上の幹線道路における事故のうち、全体の50%(21万件)に上る事故が僅か7%の道路に集中して起きており、このような箇所を対象とした検討をしていきたいと考えている。また、図-1は図-2と同一のデータに基づくものではないが、これらの図からすれば、ヒューマンエラーと道路環境の関係が事故につながっている割合は事故全体の約4分の1を占めることになる。この割合を仮定すれば、検討の対象は21万件のうちの約5万件ということになる。
日本では他の先進国に比べて、車同士の事故だけでなく、車と歩行者の事故や、車と自転車の事故が多く、好ましくない状況にある。車と歩行者の事故や、車と自転車の事故におけるヒューマンエラーはどう考えているか。
確かに、歩行者や自転車と車とが事故を起こすケースが多い。これは、日本では道路機能の分化が進んでいないことが要因の一つと考えられる。そちらの取り組みにも期待しつつ、他の自動車へ注意が集中していて自転車や歩行者に注意が行っていない事象等をポイントとしてヒューマンエラーとの関係も配慮していきたい。
タクシーやトラックへのドライブレコーダー装着が進んでおり、運転者教育に一定の成果を挙げている。この取り組みは、交通事故はヒューマンエラーによって引き起こされるという前提で行われているが、そのデータを提供してもらうことができれば、運転者の教育だけでうまくいく事例と、教育したとしても道路側の要因で事故が減らない事例が分けられ、道路側とヒューマンエラーとの相互関係等が何か分かるのではないか。
事故の起きる現場は、路上駐車が多い時間帯など、最悪の条件の下におかれていることが多い。そこで走行実験等では、是非現実の最も危険な状況を再現した上で実施するようにしていただきたい。また、事故を減らすために標示・標識や店舗の看板のあり方等について何か提言や指示が出される場合であっても、一方では美しい国づくり政策も推進中であることから、是非景観とのバランスにも配慮していただきたい。
例えば、資料P.3にある死亡事故等多発箇所の抽出等、複数のデータの分析を行ようになっているが、国総研が新たに実施しなければいけない調査と、警察庁が既に実施している調査もあると考えられる。既存のデータ・調査結果を共同利用できると良い。
科学警察研究所でドライバー側に注目した交通事故の研究があるため、協力して研究を進めて参りたい。また、調査・データ分析の効率化については、警察と協力して作成した交通事故が多い箇所のデータベースが既にあるため、そのデータも活用したい。
走行実験については、いろいろな実験条件を検討すると思うが、その他、被験者の年齢等の属性に幅を持たせて実施して欲しい。また、夜間や天候のシチュエーション等、実際の事故の状況に近いものが作れるかがポイントとなると思うので、その辺りの検討をお願いしたい。その上で、判明したことをいかに有効に活用して実際の対策にどうつなげていくかの検討をしていただきたい。
反射時間が長くなる等の高齢者の特性は理解できるが、事故の全体数を減らすという観点からすれば、特に高齢者に重点を置かなくても良いのではないか。この危険箇所の対策をしたら、高齢者も非高齢者も揃って事故率が低くなったというのが望ましい。
高齢者に特定した走行実験等を考えている訳ではない。運転者全般を対象に考えているが、高齢者の事故数が増えていることから、高齢者の特性にも配慮していきたいということである。
資料P.2の図-3では、高齢者の事故数が増えているが、同じように30代の事故数も増えている。高齢者の人口増等、母集団の大きさの変化とも関係していると考えられるため、一定人口当たりの事故数といった表現になるようデータに基準化を施す必要があるのではないか。
「高齢者の」と特定されると、運転しやすい自動車にすれば良いというイメージが浮かぶ。高齢者が安全に走れる道路と非高齢者に安全な道路とは特別な違いはないのではないか。
高齢者の身体特性についてはこれまでに多くの研究がなされてきているが、それと交通事故との関係は明確にされておらず、関連があるのかどうかを含めて検討する意義があると思われる。また、走行実験については、実際の事故を起こすような現場を再現しての実験は困難であり、むしろ参宮橋での社会実験やプローブシステムの結果等、他の研究で集められたデータを含めて広く情報収集をして、既存のデータ分析をうまく活用する方向で進めていただきたい。
非常に危険な箇所が多くあるという切実な問題であることから、3年間の研究の途中であっても、良い成果が出てきたら実際の現場に適用してみることも必要かと思う。
国総研も参画して作成した道路交通安全対策マニュアルと対策の事例集を各地方整備局等に配布して実際の現場の事故対策を実施してもらっているところであるが、マニュアルや事例集にはヒューマンエラーの視点が十分に盛り込まれていないので、本研究で得られた成果をそれらの中で活用していきたい。
交通事故といっても多くの切り口があり、どの辺りまで国総研で研究を行うのかをはっきりさせておくことが大切である。例えば、住宅地内は30km以上スピードが出ないシステムをつけることは技術的に可能であるし、そういった自動車側によるスピード制限や運転者教育等、道路環境以外の分野との情報交換や分担も検討してはどうか。
研究のポイントを絞る上で、死亡事故の中でも優先して減らすべきものの選択にある程度の価値判断や政策的な視点を取り入れても良いのではないか。
配慮する。
他部会の委員や欠席委員からの意見を紹介して欲しい。
色々な事象・要因の交通事故がある中で、本研究で優先すべきものは何かというご意見があったが、本研究ではヒューマンエラーに起因する事故に焦点を当てて研究を進めて参りたい。また、高齢者と非高齢者の比較をどう扱うか示されていないというご意見と、医学的要因の運転への影響の調査が必要ではないかというご意見については、前者については先に説明させていただいたとおりである。後者の医学的要因についてのは、本研究ではヒューマンエラーと道路環境の関係において引き起こされる事故に焦点をあてた検討を実施したいと考えており、ドライバー自身の医学的要因のみに関係した事故に関しては、関係機関に情報提供等を行うことで、当該分野の研究の推進に活用いただきたいと考えている。さらに、事故と男女差の関係についてもご指摘いただいているが、統計上では必ずしも女性運転者による死亡事故が多いとはいい切れないと考えている。
  <評価のとりまとめ>
重要な研究であり、国総研で重点的に実施すべきと評価する。なお、事象の発見方法・データ分析の過程では、交通関係の事業者や交通管理者と連携してデータを収集する等、各種関係機関との連携を図られたい。また、車対車の事故だけでなく、歩行者や自転車との事故についても取り上げていただきたい。高齢の運転者、何かをしながらの運転、路上駐車等、走行実験の方法に関する意見は多かったので参考にされたい。また、研究成果の実際の現場での試行を進めると同時に、安全性だけではなく、まちづくりや景観にも配慮した対策となるように進められたい。
(3) 「国総研で重点的に実施する基盤研究の報告」についての評価委員の意見及びそれらに対する国総研の回答
@ 四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発
動線解析を本気でやろうと思うと人の動きのモデリングが必要になる。この研究はデータ取得の方法に特化しているものか。それともその取得したデータを活用してモデリングを行うものか。
モデリングについては、既存の研究成果を参考にする予定であり、本研究ではデータ取得にやや重きを置きたい。ただし、取得したデータから動線を予測する基本的な考え方としては、資料P.4に示す方法を考えている。
P.4の図分からないが。
定常時のモデリングの研究や市販ソフトは多いが、パニック時のモデリングは少ないのではないか。パニック時にビデオから動きを分析してモデリングすることは、今までの技術では難しい面もあり、その辺りにも意義があるのではないか。
P.4の図は必ずしもモデリングを示す絵ではない。これは、ベイジアン推定モデルを使って、20秒ごとの歩行者の位置データから1秒ごとの位置の推定をする方法を示した図になっている。
パニック時は間隔をより細かくしたデータが必要であるが、そのサンプリングデータは不足していると思われるので、災害時のビデオ等を入手して何らかの推定手法を検討して参りたい。
大人数の複雑な動きのモデルを作ると計算等が大変になるが、単純な行動原理に基づくモデルを選ぶと、ある程度の精度の表現しか期待できないという現実がある。本研究では細かいデータが得られることが予想されるので、それを活用してより良いモデリングが出来るのではないかと期待する。
本研究では発災時の人の流れを対象としているのか、それとも平時をイメージしているのかを明確にするべきである。
前回の評価では、平常時だけを検討対象とする研究は他でも実施されているのではないかというご指摘をいただいた。災害時も対象とする研究を実施したいが、平常時を対象とする検討と災害時を対象とする検討は並行して進めることができないため、当面は平常時の方を解明していきたい。その後、3年間の研究の最終年度を目途にパニック時の予測もしていきたいと考えている。
災害時においては心理状態の違いや浸水・延焼等が生じる等パニックを起こす要因が多岐に渡るため、平常時における人の動きのデータやモデリングをそのまま災害時に応用するのはかなり難しいと予想される。平常時の研究を進める段階から、先を見越してしっかりと研究して欲しい。
その辺りを意識して1〜2年目の研究を行っていきたい。
最近は繁華街で防犯のために監視カメラを設置しているところもあるため、そのようなデータを活用できるのではないか。
複数の団体にアプローチしており、興味を持ってもらえているところもある。ただし、お互いの役に立つような研究・協力関係にする必要があるので、その辺りは今後検討して参りたい。
そういったコミュニケーションの中で、どの様なアプリケーションが求められているか、ニーズが把握できる可能性もある。
利用者のニーズをうまく取り入れるように努力していきたい。
(4) 「国土交通省総合技術開発プロジェクトの報告」についての評価委員の意見及びそれらに対する国総研の回答
@ 社会資本の管理技術の開発
今日的な研究であり是非進めていただきたい。また、時代の流れに応じてIT関連技術を積極的に活用することは非常に意味のあることだと思う。なお、国土交通省では強震観測を行っているが、被害軽減のための新しい観測技術も模索しており、そちらとのリンクを検討して欲しい。また、地震動と構造物の応答の関係の検証にも観測データを活用できれば、設計手法の高度化にもつながるのではないかと期待する。さらに、国総研では津波に関するプロジェクト研究も立ち上げているため、本研究による技術を防潮水門や河口部の河川堤防が地震動によってどのように変状したかをリアルタイムに観測することにリンクできれば、その後の避難・対応をどうするかという方面にも成果を応用でき、付加価値の高いシステムになると思われる。
強震観測ネットワークを担当している研究室も本研究に参画しているが、岩盤位置と地表面における地震動の観測を行うためには費用がかなりかかるので出来る範囲で検討していきたい。
例えば、杭や基礎の地震時挙動については極めてデータが少ないことから、観測点を何カ所か増やすだけでも耐震設計の高度化に貢献できるのではないかと思う。
ISOの基準を作る際にもメディアフリーで進んでいることから、ICチップにこだわらないという姿勢は大切だと思われる。どういった概念・データディクショナリー等があるかを決めてから、利用のシナリオやビジネスモデルを考えると効率的な管理の仕組みになるのではないか。4つのシナリオがあるが、更に詳しくどの様な利用局面があるのかを考えると良い。維持管理等の現場によって用語が異なるところ、このような機会に共通化するだけでも社会資本の効率的な管理につながると考える。
データディクショナリーは定義する予定であるが、マーケティングにうまく乗っていくかどうかは少し不安が残る。直轄事業だけではマーケットが必ずしも大きくないため、ある程度、国側で作ることも考えている。ただし、データディクショナリーは公開し、標準化することを考えている。
今はICチップを話題にしているが、番号を書いておけば済む場合もあり、2次元バーコードで代替できることもある。何をどう使うのが良いかは、そのケースによって異なると思う。
現在、神戸において自律的移動支援の社会実験を行っているが、そこでもICチップにどんな情報を入れておくかまだ決まっていない。ICチップに入れる情報によって使い方が異なる場合があり、その辺りも本研究において検討していきたい。
マーケットが大きくないような説明があったが、例えば、土石流危険渓流や地滑り危険指定箇所は全国に多数あるが、リアルタイムで監視しているところは少ない。どのように情報伝達をするかは別にして、説明にあったように位置情報を入れたICチップを蒔いて動きを監視することができるとすれば、そのニーズはかなりあると考えている。そのためにも、できるだけ低価格で購入でき、普及するものとなるよう努力して欲しい。
データをどう伝達するかは、特に遠距離になると非常に問題が多いが、総務省が要求しているプロジェクトでICチップ同士が通信する技術の研究が行われることになっており、そちらにも期待したい。
(5) 評価全般を通じての委員意見・コメント
研究の説明の中でほとんど予算の話が出てこなかったが、大きな予算を使った研究でもあり、もう少し説明をしてもらえると良かった。
(6) 新規プロジェクト研究候補(第1部会評価担当)の評価書の作成
評価書の作成については、主査に一任されることとなった。
(7) その他
 事務局より、本日の審議内容については、議事要旨としてとりまとめ、各委員に確認をしていただいた上で確定するとの連絡があった。また、評価書の作成については主査に一任されたことと、最終的には本委員会委員長の同意を経て決定されることが連絡された。
 さらに、評価書や議事要旨等をとりまとめた報告書を作成し、公表されるとの連絡があった。
 最後に、各課題の資料に添付されている政策評価個票(案)について、行政評価法に基づき国総研が作成し、国土交通省本省に提出するものであり、外部評価の結果欄は本日の審議に基づき、主査の了解を得つつ作成する旨の連絡があった。