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説明の中で、「グローバル」、「ナショナル」、「ローカル」との用語を使っているが、このナショナルは「ステート」というべきではないか。ナショナルとステートの使い分けをしっかりして欲しい。ナショナルは、国民という意味で使われる場合が多く、また、グローバルは国際貢献を論じる際によく使われる。 |
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グローバルは入れなくても良いのではないかというご意見か。 |
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グローバルであれば、国際貢献につながるものが入るべきだと考える。研究の内容によって、判断していただきたい。 |
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研究内容にリスクプレミアムを新たに追加したということは良いことだと考える。その成果としては、リスクプレミアムを計測するためのマニュアル整備をすることや計測手法を開発すること等が考えられるが、どの様な成果を目標としているか教えて欲しい。 |
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基本的には、リスクプレミアムの計測手法を開発することを考えている。現在の手法で評価できていない項目を評価するための手法の開発を念頭に置いている。その過程で新たな原単位を作る必要があるかもしれないが、その辺りは研究を進めながら検討していきたい。 |
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リスクには定常的な現れ方をするももあれば、地震のように短期的に捉えれば定常的ではないと考えられるものもある。またハザードの評価対象や大きさは対象とするリスクによって大きく異なるため、リスクプレミアムの計測手法も対象とするリスクによって異なるものになると思われる。計測手法の開発の対象としてどの様なリスクを扱うか教えて欲しい。 |
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地震のように災害の範囲や対策が広範なものを対象にするのは難しいので、まずは、ある程度限定された範囲で起きて、かつ災害対策もある程度想定できる水害を検討対象としてイメージしている。 |
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そのようにある程度ターゲットを絞った方が研究の成果が期待できるのと思う。 |
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非常に重要な研究だと思う。ただし、今までの研究の成果にはどの様なものがあって、残りのどこを研究すればよいのかが表現されると、アウトプットがより分かりやすくなると思われる。ブレークスルーすべき点はどこであるか、これまでの研究の中でどこが出来ていないのかを教えて欲しい。 |
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河川事業の特に事業評価についていえば、物の被害についての評価方法は既にあるが、被害に対する不安や被害の復旧に伴う不利益・損失については十分な評価方法がないと考えられる。被災に伴って余儀なくされる住み替え等については、現時点では評価対象から外れているため、事業効果の評価に考慮できるよう検討する必要があると考えている。 |
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事業評価に繋げたいというところで国総研の特徴を出そうとしていると受け止める。アンケートや支払い意思額から評価しようということだが、例えば、堤防が低くても住民は安心・満足している場合や、逆に堤防が高くても不信感があるなど住民が不安を感じている場合もあり得る。支払い意思額に基づいて計画することがどういう意味を持つのかを検証して欲しい。実際の計画の現場では標準的な考え・モデルだけではうまくいかないと思う。その点で、コミュニケーションの仕方や住民への情報提供の方法によって、住民の判断や支払い意思額がどう左右されるかという研究になっていくのではないかと思う。 |
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標準的なモデルでカバーできない部分をいかにうまく整理して国民に示すかが国総研の仕事だと思う。例えば、住民にとっては内水氾濫でも外水氾濫でも同じ水害であるため、河川も下水も関連させて対策するのが一番効率的である。このような視点に立って社会資本整備の計画段階でコストまで考慮した評価をすると従来とは大きく異なる結果が得られるものと考えられる。マイクロエコノミクスの視点にだけ留まることは避け、どのようなやり方をすれば市民から激しい反発がくるのかを概括的に整理するという視点でも検討を進めていただきたい。 |
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色々な問題を提起していただいたので、整理して研究していきたい。この研究の根本としては、住民の安心とは何か、また、その安心を実際に評価していった時にどうなるかといったアプローチの研究の進め方を考えている。 |
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タイトルに「受益者」とあるが、社会資本の性質上、今そこに住んでいる人だけでなく、100年後にそこに住んでいるかもしれない人も受益者に含まれるのではないか。現在の住民の支払い意思額の調査等をしたとしても100年後の住民の意思は反映されないことから、受益者をいかに普遍化するかが、社会資本の基本的な課題だと思うので研究内容に盛り込んでいただきたい。 |
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社会資本の整備水準をいかに捉えるかという問題かと思う。また、確かに、住民にとっては河川の水か下水かはわからないといった面があるため、住民の立場に立ってどのような政策を展開できるのかが問題になってくる。その中で、河川と下水のどちらを優先させるかという代替性の議論も出てくると思われる。その辺りも含めて社会資本の水準とは何かという議論がひとつのテーマになると考えている。 |
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社会資本の整備水準には、平常時で決まるものと、災害が発生した場合のような非常時の状態を勘案して決まるものとがある。平常時と非常時の話は分けて整理していく必要があるのではないか。トータルの防災投資が地震によって決まるようなケースにおいては、全てを耐震化すれば良いのかという議論もある。防災に対するニーズの高まりはあるが、とても対応しきれないと主張する自治体もある。歴史的に見て今の耐震設計がどれほどのコスト増を招いているか等を把握して、コストとリスクの適正なバランスを示す方法論を提示できれば時宜を得た成果になるのではないか。例えば、サンフランシスコの水道事業では活断層で起きる直下型地震について現況の被害予測を行うとともに、複数の補強の水準に応じた被害の減少額と補強に必要なコストの比を示し、受益者のコスト負担を前提に、どの補強水準を選択するのがよいのかを受益者の判断に委ねて、それを参考に補強水準を定めている事例あるので参考にしてはどうか。 |
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社会資本水準を決める際には、技術的に決まる場合、合意形成により決まる場合、効率性やマーケットにより決まる場合、政策的に決まる場合と4つのパターンが考えられる。ここでは、受益者の選好が焦点となっているため合意形成の手法ということになるが、まちづくりについては短期的な視点だけでは議論できない面があるため、政策的、技術的な視点も取り入れて検討して欲しい。 |
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個々の研究者だけでは出来ない研究であり、組織として是非進めて欲しい。確かに研究対象として、始めから種々のジャンルが入りすぎているのではないかとも思える。社会資本の分類によってはリスクプレミアムを考える必要があるもの、非常時のことを考える必要があるもの等個性があるため、それらの特徴に配慮しつつ研究を進めて欲しい。また、整備水準についてはB/Cだけでなく、政策形成過程や政治過程などコミュニケーションのプロセスから決定される面があるため、どのようなプロセスを踏むと受容性が高まるのかといった研究も実施して欲しい。 |
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受益者の求める整備水準や自然災害については地域性がある。また、災害経験者であるか否かによって災害に対して求める整備水準は変わってくる面もある。地域性や対象としている人を考慮できるよう研究を進め、多くの人が納得できる評価手法を提案して欲しい。 |
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他部会の委員や欠席委員からの意見を紹介して欲しい。 |
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いくつか意見をいただいているので、集約して紹介したい。ひとつはリスクコントロールについて過失の問題が入るのではないかという意見をいただいたが、本研究では個人行動の過失のリスクは扱わないと考えている。また、サービス水準と整備水準は同じかという質問をいただいたが、この研究でいう整備水準は、物的な整備水準やサービス水準を含む概念と捉えている。3点目で、シビルミニマムをどのように設定するのが良いかというご質問をいただいたが、本研究では個々の社会資本のシビルミニマムではなく、検討すべき尺度や計測方法を提示するのが成果目標と考えている。4点目で、意思決定を行うグループが不明とのご意見をいただいたが、本研究では行政機関としての意思決定を考えている。事業実施に当たっては合意形成等も絡んでくるが、当面は水準をどう評価するか、行政としてどう考えるべきかを優先させたい。また、ミクロ手法とマクロ手法の共有については、ミクロの手法に関する情報の共有とマクロの手法に関する情報共有のという意味がある。異なる手法を並行して使うことで、バイアス傾向を是正し、それぞれの手法を補完し合う機能が働くのではないかと考えている。 |
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まちづくりの検討範囲を限定すべきという意見をいただいているが、インプットとアウトカムとの関係が比較的分かりやすい事業から順に進めたい。まずは、中心市街地活性化や観光・交流にウェイトをおいて進めたい。 |
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まちづくり交付金はおもしろい事業だと思う。モデル開発の意義は「成功の確率が高い事業へ補助金を交付するため」と思うが、補助金をもらいやすいように成功の確率が高い設定をした事業に偏ることがないよう注意が必要。平均的に成功の確率の高い事業を全国的に展開するという考え方はおかしい。むしろ、当初の判断だけでなく、試行実験しながら、あるいはフィードバックさせながら交付していくプロセスの研究が必要かと思う。 |
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ある程度、局所・単機能及び現在に中心を置かざるを得ないのかと思うが、できるだけ広域・多機能、長期的を目指していただきたい。例えば、安全を確保するために10のお金を使う時に、11のお金を使えば安全以外に快適や観光の効果が高くなるといった議論ができると良い。 |
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私が関わるまちづくり団体では、社会実験を何度も繰り返し、うまく進みそうだという結果が出て初めて交付金を受けている。現行のまちづくり交付金は、単なるバラマキにはなっておらず、非常に意味のある制度として活用されているので、その辺のプロセスをよく検証しておいていただきたい。 |