各種資料

第2章 評価の結果





評価の結果
 
 本評価結果は、平成16年度第1回、第2回及び第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会における審議に基づきとりまとめたものである。
 
  平成16年10月5日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会
  委員長 虫明 功臣





1.「公共事業評価手法の高度化に関する研究」の評価結果(事後評価)
 
【総合評価】
 
 研究の目標を限定し、明確に焦点を当てたことにより、目標とした成果が得られており、本研究の目標、計画、実施方法、体制等が適切であったと評価する。
 本研究の成果については、現場で役に立つツールや手法を提供するという具体的な目標が概ね達成できたと評価する。なお、不確実性についても客観的評価を行うとともに主観的評価の活用に踏み込むことや、CVM(仮想市場法)で計測できるオプション価値と存在価値を実利用価値と峻別すること等については、今後更なる検討がなされることが期待される。
 
【評価指標別評価結果】
研究の目標、研究計画、
実施方法、体制等の妥当性
1 適切である
2 概ね適切である
3 やや適切でない
4 適切でない
☆☆☆☆☆
☆☆☆
 
 
研究の成果及び目標達成度 1 目標を十分達成できた
2 概ね目標を達成できた
3 あまり目標を達成できなかった
4 目標を達成できなかった
☆☆☆
☆☆☆☆☆
 
 
(☆は、評価した委員の数)
【指摘事項】
 なお、下記の指摘事項があり、参考にされたい。
本研究の枠外ではあるが、公共事業評価手法の高度化という大きな目的からすれば、異種事業間の比較評価やネットワーク評価、PI(パブリック・インボルブメント)等との関連等において、今後の研究開発、展開が期待される。
研究成果の公表の際には、過去のレビューをしたものなのか、オリジナルの解析・データ収集から得られた新たな知見なのかの区別を明確にされたい。
成果については、個人業績の観点から担当した研究者等が明確になるような配慮をされたい。また、オリジナルな研究成果は、学会等での発表を推進されたい。
不確実性に関する検討において、データ不足のために方向転換をしたことは適切な判断と評価できる。今後更なる分析に努力し、得られた成果について公表されたい。
公共事業評価の高度化を目指して、事業評価カルテの実用化、フィードバックの方法、データベースの活用方法等についての研究を継続されたい。
異種事業間の比較評価、計画・事業・結果の比較からの評価手法への展開(ネットワーク評価、規制評価、総合的プログラムの評価等)、蓄積されたデータのより良い活用、SEA(戦略的環境アセスメント)やPI(パブリック・インボルブメント)との関連等について、更なる取り組みが望まれる。
不確実性への対応は、理論的研究よりも行政的な計画策定プロセスの再検討といったやり方の方が実効性が高いと推察される。
   
  平成16年9月27日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第1部会主査  石田 東生



2.「健全な水循環系・流砂系の構築に関する研究」の評価結果(中間評価)
 
【総合評価】
 
 研究の目標、計画、実施方法、体制等は、概ね適切であると評価する。
 また、研究の進捗については、各コンテンツの研究、ツールの開発が進んでおり、概ね順調であると評価する。
 なお、本研究において重要な概念である「健全性」の定義を明確にし、また、「総合化」のイメージ・方法が明確になるよう、研究計画を一部の修正の上、研究を継続して実施されたい。
 研究の実施に当たっては、これまでに開発されている各種ツールをどのように有機的に組み合わせて総合化(治水・利水・環境の総合化、合意形成という総合化、水循環系と流砂系の総合化)を図るかという点により多くの研究資源を投入されたい。
 
【評価指標別評価結果】
研究の目標、研究計画、
実施方法、体制等の妥当性
1 適切である
2 概ね適切である
3 やや適切でない
4 適切でない
 
☆☆☆☆☆☆☆☆
 
 
研究の進捗状況
(中間達成度)
1 順調である
2 概ね順調である
3 やや順調でない
4 順調でない
☆☆☆
☆☆☆☆☆
 
 
研究継続の必要性・妥当性 1 計画通り継続
2 計画を一部修正の上継続
3 計画を大幅に修正の上継続
4 中止
☆☆☆☆
☆☆☆☆
 
 
(☆は、評価した委員の数)
【指摘事項】
 なお、下記の指摘事項があり、参考にされたい。
健全性を評価するための基礎的な指標の抽出や各種ツールの開発は、概ね順調に進捗している。
環境を含めた健全性をどのように評価するかについて、これまでの研究成果では明確になっていない。
治水・利水・環境の総合化と水循環系・流砂系の総合化の整合性に留意しつつ、「総合化」のイメージ・方法や各種ツールの組み合わせ方を明確にされたい。
水循環系においては、水量のみならず、水質を含めた水収支についても考慮すべきであり、どのような水質の水をどの程度配分するかということも十分念頭に置いて研究されたい。
環境上の健全な水循環系・流砂系については、新しい研究であり生態系や生物の専門分野においても解明されていない部分が多いことを十分念頭に置いて効果的に研究されたい。
合意形成の過程において、住民の嗜好で選択する部分と、専門家が判断する部分とは異なるものであり、一般住民と専門家の役割分担や全体の合意形成のあり方を考えていく必要がある。
先行研究・類似研究の動向を調査し、より効率的な研究に努められたい。
環境上の問題への取り組みにおいては、特に土木、砂防、環境・生態系の研究者・グループの連携を深める必要がある。
研究成果については、積極的に学会等で公表されたい。
アジア地域への研究成果の適用に当たっては、自然条件・社会条件等の日本との違いを明らかにしつつ成果の活用を図るよう留意されたい。
   
  平成16年9月27日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第1部会主査  石田 東生



3.「都市地域における社会基盤・施設の防災性能評価・災害軽減技術の開発」
の評価結果(中間評価)
 
【総合評価】
 本研究の目標、計画、実施方法、体制等については、概ね適切であると評価する。ただし、多種多様で多岐にわたる災害をどのように総合化して横断的に一括して扱うかが、非常に重要な要素であることから、「総合化」のイメージを明確化するとともに力点をおいて今後の研究を実施されたい。
 個々の災害についての研究が概ね順調に進められており、研究の進捗は概ね順調であると評価する。
 各種自然災害を防ぐための戦略的な防災論の構築が必要であり、本研究に国総研が取り組む意義・必要性が大きいことから、目標とする最終成果が達成できるよう研究を継続して推進されたい。
 
【評価指標別評価結果】
研究の目標、研究計画、
実施方法、体制等の妥当性
1 適切である
2 概ね適切である
3 やや適切でない
4 適切でない

☆☆☆☆☆☆☆
 
 
研究の進捗状況
(中間達成度)
1 順調である
2 概ね順調である
3 やや順調でない
4 順調でない
☆☆☆☆
☆☆☆☆
 
 
研究継続の必要性・妥当性 1 計画通り継続
2 計画を一部修正の上継続
3 計画を大幅に修正の上継続
4 中止
☆☆☆☆☆☆
☆☆
 
 
(☆は、評価した委員の数)
【指摘事項】
 なお、下記の指摘事項があり、参考にされたい。
都市地域の自然災害を防ぐ戦略的な方法論の体系化と災害毎の様相に応じたシナリオが必要である。また、地震防災においては、予防対策・緊急対応・復旧の3つの切り口を踏まえることが望ましい。
各種災害に対してバランスがとれた対策を考える場合に、何に対してバランスを取るのかを明確にする必要がある。
リスクカーブを用いた災害の評価を全国一律に行うことは難しい。極めて稀にしか生じない強い地震動に対してどのように取り組むかを明確にされたい。
地震災害と津波の関係においては、津波来襲の前段階で河川堤防・高潮水門が地震動によって機能を損なうことがないかという点が、その後の対応等に及ぼす影響が大きいことに留意されたい。
リスクやハザードに加え、コストを視点に加えた議論が必要であり、最適な防災投資やリスクミニマム投資の判断に資する方法論の開発を視野に入れて研究を進められたい。
複合的な災害がどのように発生するか、また、それをどのように評価するかをわかりやすくするため、地震・台風等の外力別にシナリオを作成することを検討されたい。
人命救助につながることが本研究の究極の目標であることから、災害救助を実際に行う自衛隊、防衛庁、内閣府等との連携が考えられ、社会資本整備とは異なった観点からシナリオを精査することが望ましい。
災害に関する情報を広く提供していくことは、住民がそれぞれの責任で行う意思決定や災害の受忍限度の検討において非常に重要であり、研究成果のまとめに当たって留意されたい。
総合化に当たっては、戦略的な防災論の視点が必要であり、政策論的議論ができる人を加えることが必要である。
災害に弱いとされる高齢者の居住状況等の把握や連絡網整備等のソフト対策も費用対効果が高いと思われる。
研究成果の施策への反映のさせ方を具体的な形で視野に入れつつ、各種災害を総合化する箇所に力を入れて研究を進められたい。
   
  平成16年9月27日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第1部会主査  石田 東生



4.「ゴミゼロ型・資源循環型技術に関する研究」の評価結果(中間評価)
 
【総合評価】
 本研究は、ゴミゼロ型・資源循環型社会を実現させるために重要な課題であり、また個別の研究は概ね順調に進捗していると評価できる。今後、これらの成果を総合して目標達成が図られるように留意して研究を継続されたい。
 
【評価指標別評価結果】
研究の目標、研究計画、
実施方法、体制等の妥当性
1 適切である
2 概ね適切である
3 やや適切でない
4 適切でない

☆☆☆☆
☆☆
 
研究の進捗状況
(中間達成度)
1 順調である
2 概ね順調である
3 やや順調でない
4 順調でない

☆☆☆
☆☆☆
 
研究継続の必要性・妥当性 1 計画通り継続
2 計画を一部修正の上継続
3 計画を大幅に修正の上継続
4 中止
☆☆☆
☆☆☆☆
 
 
(☆は、評価した委員の数)
【指摘事項】
 なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
「静脈物流ネットワーク」と「海面処分場の社会的受容性」については、非常に重要かつ難しいテーマであるため、中途半端な形とならないよう対応していただきたい。
個別テーマの達成成果を統合し、新しい提案や方向性を示す点に重点を置いて研究を進めていただきたい。
   
  平成16年9月30日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第3部会主査  森杉 壽芳



5.「社会資本整備水準の評価手法に関する研究」の評価結果(事前評価)
 
【総合評価】
 今後の社会資本整備のあるべき水準について、概念整理を踏まえて、具体的に水準を設定することは非常に重要であり、積極的に取り組むべき課題である。このために、必要な手法開発を行う本研究は、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
 
【研究を実施するに当たっての留意事項】
 合意形成の問題、受益と負担の問題、リスクとサービスをどのように考えるかという問題等について検討し、より詳細な研究計画とされたい。
 なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
分析枠組みを作る際に経済理論を参考にされたい。公共財を提供する理由の一つであるスケールメリットと各地域の嗜好に合わせたものを作ることとの間にはトレードオフの関係があり、また、支払い意思に基づくサービス水準決定にはただ乗りの問題がある。それらの問題を研究においてどのように考えていくかがポイントである。
シビルミニマムを考える際には、どのような生活になるかという生活像をイメージする切り口もあるのではないか。
防災投資を考えるべき対象とそうでないものを分けること、また防災投資の目標水準や様々なリスクの評価について、本研究でどこまで取り扱うかの整理が必要である。
これからはストックの時代に入るため、防災投資も含めた整備水準をどのように確保していくかが重要になってくる。健全性をどの程度長持ちさせていくかを含め、使用性、安全性、耐久性の適正な水準を決めていくことが、納税者・国民にとって非常に重要である。
整備水準を決める際には、それがいつ満たされるのかという時間変化の影響が含まれるので、配慮する必要がある。
シビルミニマムは概念的にはっきりしているが、具体の計測例はない。個々のツール、事業、アウトプットとアウトカムの関係が明確でなく、相当程度大変な調査になると予想されるので、予算との兼ね合いを含めて検討されたい。
   
  平成16年9月27日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第1部会主査  石田 東生



6.「ヒューマンエラー抑制の観点からみた道路・沿道環境のあり方に関する研究」
の評価結果(事前評価)
 
【総合評価】
 本研究は、交通事故の要因となりうるヒューマンエラーを発生させやすい道路・沿道環境を把握し、ヒューマンエラーの減少を実現する対策を提案するものであり、基礎的ではあるが非常に重要な研究であるため、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
 
【研究を実施するに当たっての留意事項】
 ヒューマンエラーをどのように考えるか、どう把握するか等、情報の与え方の課題がある。現状ではヒューマンエラーの具体的な内容が明らかではないため、基礎的なデータ収集を含めて研究を進められたい。検討対象には、道路空間だけではなく沿道も含まれるが、具体的にどのようなコントロール方法があるのか、また、どのような効果が得られるのかについても検討されたい。
 なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
安全にし過ぎるのもお金がかかってしまうので、コストとの関係を踏まえた最適な安全度に留意されたい。
沿道環境を対象とするのは範囲が広すぎる感があり、まずは道路管理者が確実にコントロールできるものを検討対象にすることが望ましい。
全体の95%を占めるヒューマンエラーによる事故を本研究によりどの程度まで減らせるかという予測が、研究実施の必要性を決める要素である。大きな効果が得られるのであれば、是非研究を実施されたい。
   
  平成16年9月27日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第1部会主査  石田 東生



7.「四次元GISデータを活用した動線解析技術に関する研究」の評価結果(事前評価)
 
【総合評価】
 危険性への対応等の観点から人の時空間的動きを把握することは重要な課題であり、近年のIT技術の発達によって人の動きに関する全数調査も可能になってきた背景もあることから、本研究の積極的な推進が期待される。産学官で連携を取りつつ研究の的を絞って、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
 
【研究を実施するに当たっての留意事項】
 公共空間でしっかりとした人の流動状況のデータを継続的に取得することは非常に重要なことだと思われる。アウトプットとアウトカムについては、的を絞り、明確化するよう検討されたい。
 なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
標準化やプラットフォームについて、ボランティアベースで検討する場合には、標準化のメリットを強く打ち出す必要があるので留意されたい。
目標を国土交通省の責務である安全・安心の確保に置くのであれば、災害時に各種情報を与えられた人がどのような行動を取るのかを心理的な問題も含めてシミュレーションし、その中で施設・設備の最適な整備について検討していくという方向で研究に付加価値を付けると良いのではないか。
小規模ではあるが、大学の研究室単位でも類似の研究が行われているため、国総研で実施する研究との違いを明確にすべきである。
   
  平成16年9月27日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第1部会主査  石田 東生



8.「歴史的文化的価値を踏まえた高齢建造物の合理的な再生・活用技術の開発」
の評価結果(事前評価)
 
【総合評価】
 本研究は、豊かなまちづくり、美しい景観形成、地域の活性化等の観点から重要な研究である。また、保存・再生後の建造物の使われ方を考慮した手法・技術が求められており、他の研究分野との連携が考えられること等からも、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
 
【研究を実施するに当たっての留意事項】
 研究対象とする建造物のイメージを明確にするとともに、アウトカムのイメージをより明確にされたい。また、単なる劣化の修復に留めるのではなく、新たな価値を持つ建造物へ再生させる手法論についても検討されたい。
 なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
古い建物の価値として、文化的価値と経済的価値の関係が整理されていないこと等を踏まえ、理論的・実用的に価値が評価できるよう留意されたい。
単に建物を修復して残すだけでなく、設備面でITの活用を図り新しい機能を追加する等の付加価値を付けることにも留意されたい。
'可逆性のある補強技術'の言葉の定義が不明確であるので、明確にされたい。
建造物を再生して残すことによって、地域の将来のあり方がどう描けるかという点に踏み込んだ評価を検討されたい。
   
  平成16年9月9日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第2部会主査  村上 周三



9.「人口減少社会に対応した郊外住宅地等の再生・再編手法の開発」の評価結果(事前評価)
 
【総合評価】
 本研究は、人口減少等に伴う住宅地の衰退対策として重要なテーマであり、良好な居住環境の実現の観点のみならず、インフラや公共サービスの効率化の観点からも必要性が高い。対象住宅地等の範囲、地域性の違い、関係研究調査との連携等へ配慮しつつ、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
 
【研究を実施するに当たっての留意事項】
 '郊外'の概念を明確にして研究を実施されたい。また、住宅地以外の用途への転換を含めた再生・再編の将来の展望について十分に検討されたい。
 なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
衰退の予測手法の開発や、実際に何か起こっているかという実態把握調査が重要であり、地域性の違いも考慮されたい。
類似課題の検討を行っている学会や関係機関と連携を図って進められたい。
10〜20年先にはどういった状況になるか、どの程度を将来の絵姿とするかという予測技術が大きなポイントになるので留意されたい。
明るいシナリオばかりでなく、幅広いシナリオを検討されたい。また、対応方策についても多様な方策を検討されたい。
バブル期に乱開発された郊外住宅地が、入居者がほとんどないまま荒廃している現状があり、そのような郊外住宅地までも含めて検討されたい。
   
  平成16年9月9日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第2部会主査  村上 周三



10.「既存住宅の省エネルギー性能向上支援技術に関する研究」の評価結果(事前評価)
 
【総合評価】
 本研究は、近年増加の著しい家庭部門のエネルギー消費にかかわる地球温暖化対策として非常に重要なテーマであり、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。ただし、改修事業の実効性をあげるため、住宅所有者の視点を十分に考慮するとともに、有効な政策支援(税制等)につながる研究成果を出すことを念頭に置いた研究計画となるよう、一部修正の上、研究を実施されたい。
 
【研究を実施するに当たっての留意事項】
 省エネ改修等のメリットを明確にする等、住宅所有者にとっての視点を加えて研究を実施されたい。また、コスト面でペイするようなシステムや税制支援等の施策に資する技術情報を成果目標とされたい。
 なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
省エネのためだけに改修をすることは少なく、通常はその他の生活レベルを上げるための改修を合わせて行うことになるため、全体としてエネルギー消費量が増大してしまう可能性があることに留意されたい。
住宅所有者にとっての動機付けをうまくする必要があり、所要の改修を行うことによって、省エネになり、環境にも良いという波及効果・展望を明確にすることが求められる。
住宅所有者にとって耐震や省エネ等の目的毎に改修を行うことは困難であるため、省エネ改修や耐震改修等を合わせて行う方向性を打ち出してはどうか。
税制を含めた施策を立ち上げるためには、どの程度の税制支援がどの程度のCO2削減に貢献するかを明確に示す必要がある。施策を進めるための基礎資料が出せれば大変意味のある研究になる。
   
  平成16年9月9日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第2部会主査  村上 周三



11.「AIS情報を活用した海上交通による沿岸海域の効率的利用に関する研究」
の評価結果(事前評価)
 
【総合評価】
 本研究は、沿岸海域における海上交通の実態を定常的・定量的に分析することにより、沿岸海域の効率的利用方策を提案するものであり、航路・泊地等の効果的な整備や沿岸海域・港湾の利用可能容量の拡大等の実現が図られることから、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
 
【研究を実施するに当たっての留意事項】
 研究を進めるに当たっては、以下の点について配慮されたい。
データのリアルタイム性の活用について、今後研究を進めるにあたり検討していただきたい。
AIS情報の有効性に関して、初年度の成果分析が重要であるため、詳細に検討していただきたい。
   
  平成16年9月30日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第3部会主査  森杉 壽芳



12.「海辺の自然再生のための計画立案と管理技術に関する研究」の評価結果(事前評価)
 
【総合評価】
 本研究は、豊かな海の生態系を支える場である海辺の自然再生に向けての計画手法、管理技術を提案するもので、社会的要請が高く、先進的な技術開発と思われるため、国総研で重点的に実施すべき研究と評価する。
 
【研究を実施するに当たっての留意事項】
 研究を進めるに当たっては、以下の点について配慮されたい。
一般的な結論を得る前に、地域ごとに現場経験をたくさん積むことも研究を遂行する上で重要な視点であるため、十分配慮いただきたい。
計画立案の手法を開発することに対し、実践によりフローを再現してみると、そこに研究の意義や意味があるように感じる。このフローを作ることのみが成果ではなく、それを運用し得られるものが成果であるという視点も検討いただきたい。
特に生物や生態の研究成果を十分参考とするような研究体制を取っていただきたい。
   
  平成16年9月30日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第3部会主査  森杉 壽芳



13.「アジア経済統合時代の国際物流ネットワークとインフラ整備政策に関する研究」
の評価結果(事前評価)
 
【総合評価】
 東アジアの国際物流が拡大しているなか、今後の経済連携の発展により、国際物流において大きな構造変化が生じるものと予想され、東アジア地域の国際物流と物流インフラに係る政策について研究することは、我が国の国際競争力強化等の観点から必要であり、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
 
【研究を実施するに当たっての留意事項】
 研究を進めるに当たっては、以下の点について配慮されたい。
港湾物流の情報化やカボタージュ(外国籍船による国内輸送を禁止する制度)など、より幅広いシナリオのもと研究を進めていただきたい。
モデルや分析手法の開発に加え、政策提言に重きを置くことが重要であり、シナリオライターとの連携が重要である。
他分野におけるシナリオアプローチによる研究成果を有効活用した、効率的研究が期待される。
不確実な予測入力変数の与え方や係数設定に関し、わかりやすい論理説明に留意していただきたい。
   
  平成16年9月30日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第3部会主査  森杉 壽芳



14.「地域の観光力の維持向上に資するストックマネジメント方策に関する研究」
の評価結果(事前評価)
 
【総合評価】
 「観光立国」は21世紀の国づくりに重要な政策の柱である。地域の観光力の維持向上という視点で、過去の社会資本整備・利活用と観光への影響・効果について、時系列的に研究することが本研究の特徴であり、観光振興・地域振興の面で成果が見込まれることから、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
 
【研究を実施するに当たっての留意事項】
 研究を進めるに当たっては、以下の点について配慮されたい。
結果の整理にあたっては既存の研究を参照し、本研究のとりまとめにあっては、その成果の違いを意識して整理することが重要である。
国際的に見たときの我が国の魅力という要素からすれば、色々な観光地をスタディする中で、インフラの面でも投資効率の高い地域を視点として研究することも重要である。
観光資源があり、そのために社会資本がどのように役立つかということが視点であるが、その真に誇れることが具体的に何を持ってできるのかまで踏み込んで研究することが重要である。
   
  平成16年9月30日
  国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
  第3部会主査  森杉 壽芳