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平成15年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会議事要旨





平成15年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会議事要旨

1.日   時: 平成15年12月18日(木)15:00〜17:50
   
2.場   所: 虎ノ門パストラル 新館6階 ヴィオレの間
  (東京都港区)
   
3.出席委員: 村上主査、浅見委員、高田委員、辻本委員、桝田委員(以上、第2部会)、佐伯委員、根本委員(以上、第1部会)、井口委員(第3部会)
   
4.配付資料:  
資料1 平成15年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第2部会担当)委員名簿
資料2 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会設置規則(平成15年度改正)
資料3 評価の方法等について
資料4 国土技術政策総合研究所プロジェクト研究一覧
資料5 国総研で重点的に推進する新規研究開発課題候補の資料
資料6 本分科会の評価対象研究に対する第1・3部会委員等からのご意見
資料7 新規国土交通省総合技術開発プロジェクトの資料
資料8 その他新規プロジェクト研究候補等(第1、3部会評価担当)の資料
参考資料1 行政機関が行う政策の評価に関する法律(行政評価法・抜粋)
参考資料2 行政評価法に基づく評価票(様式)
参考資料3 国土技術政策総合研究所パンフレット
参考資料4 平成15年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会報告書
5.議事次第:  
1. 開会
2. 所長挨拶
3. 委員紹介
4. 主査挨拶
5. 議事
(1) 評価の方法等について
(2) 国総研で重点的に推進する新規研究開発課題候補の評価
6. 報告
(1) 新規国土交通省総合技術開発プロジェクトの説明
(2) その他新規プロジェクト研究候補等(第1、3部会評価担当)の説明
7. その他
8. 閉会
6.議事内容:  
(1) 評価の方法等について
   国総研の研究開発活動の評価の方法について、分科会の運営等の変更を含め、事務局より説明した後、委員の了解を得た。
(2) 議事「国総研で重点的に推進する新規研究開発課題候補の評価」についての評価委員の評価、意見及びそれらに対する国総研の回答
評価、意見等は、適宜、分割統合を行い、整理した。
  凡例 ○:委員からの意見及び評価、→:国総研の回答
  @建築物の「安心」の定量的評価のための技術基盤の研究
研究期間は3年間か。
はい。
被災リスクを定量化して評価することは意義が高いと思われる。ただし、対象としている建築物はオフィスビルや住宅、公共施設等様々なタイプものを含んでいるように見受けられる。例えば、住宅だけについて考えてみても、一戸建て住宅と集合住宅では条件が大きく異なる。また、持ち家、賃貸、区分所有等の権利関係はとても複雑であって、阪神淡路大震災の復興過程の調査経験からすると、それらが復興リスクに大きく影響すると思われる。こういった多様な建築のタイプや権利関係等をすべて包含した研究となるのか。あるいは、そのようなタイプ等を整理した上で、どこかに重点を置いた研究となるのか。
さらに、建築物の復興は都市の復興と関係があり、建築物の復興リスクは、阪神淡路大震災の経験をふまえると、明らかに、建築の条件だけで決まるのではなく、都市がいかに復興するかということに左右される。都市と建築との関係はどう考えているのか。
一点目の質問について、研究対象は全ての建築物と考えている。ニーズの点からいうとどれも外すことはできないと思われる。持ち家等のタイプ別に所有者のリスクに対する関心、考え方が異なると思われるが、この研究ではそれを明確化しつつ、全部の範囲のリスクのタイポロジーを行っていくつもりである。それに対応してどのような技術を開発するかということについては次の段階と考えている。
二点目のご指摘については、研究する上での観点から落ちていた。地震に関するリスク分散という観点では都市または地域という広がりを考えていく必要があるとの認識はあったが、地震が起きた後等の復興では確かに道路等を含めた都市の影響を受けると思われるので、研究を進める上での観点として是非取り入れていきたい。
本日の二課題目の資料にもあるが、資料5−1−1の「従来からの最低基準確保のための施策」であるとか、資料5−2−3には「望ましい性能水準」「最低限確保すべき性能水準」という言葉が出てくる。最低基準とか最低限確保すべき性能水準というのは法的規制と読み替えられると思う。研究の説明に当たってなぜこのような法的規制があるのかを説明した上で、この研究では違う水準のことを要求したいということを述べた方が良いように思う。建築物は複雑なものであり、最低限確保すべき性能水準に適用されている規範と、経済則で要求水準を求めていく考え方とでは軸が違うと思うので、軸を明確にしながら研究することにより先の委員の一点目の質問にも答えられる結果になると思う。
今後の研究の中で検討していきたい。
市場選択メカニズムを用いてうまくリスクを管理する方法というのは大変おもしろく評価したい。しかし、地震のリスクを評価する際に、他機関等で出した地震が起こる確率を活用するようだが、その地震の起こる確率が信頼できるものでないと後で市場評価等がうまくできなくなるのではないか。地震の起こる確率に関する研究は研究マップ上では赤く着色され進んでいるように見受けられるが、確率はどの程度しっかりと出るようになっているのか。
昔は経験からくる統計的な確率論からの予測であったが、現段階では、統計や経験によらない地震の発生メカニズムや発生可能性の予測が急速に進んできていると理解している。これらの研究は地震調査研究推進本部等でされている。地震の発生する可能性がわかりそうであるということが、本研究に着手するきっかけにもなっている。
市場をうまく働かせるというのは本当によい発想だと思うが、市場選択メカニズムを働かせるためには、自己責任原則を徹底させなければならないと思われるので、提案していくであろう仕組みに、社会制度の中で他にどういう条件が必要であるかを見極めてほしい。例えば、ハザードマップを出しているが、土地の値段にはあまり影響していない。情報の提供方法という問題も含めて検討が必要かと思う。あるいは、モラルハザードというか、土地の安いところに家を買ったが交通が不便なのでコミュニティバスを誘致するとか、内水災害が起きたので排水ポンプを設置させるといった住民要望があるし、それらへの不適切な行政対応があると思う。災害等の確率を考慮した上での自己責任であったはずなのに、それを敢えて公共が助けるとはどういうことかという面も考えて、施策の仕組み等を併せて検討してほしい。そうしなければ自己責任を貫徹できないし市場メカニズムもうまく働かない。
全くご指摘の通りではあり、建築物は基本的には私有財、私的財であり、それに対するリスクマネジメント責任は所有者にあるという前提で考えていきたい。ただ、建築物に対する地震保険の仕組みがうまく機能していない現状があり、これは特に地震に関するリスクヘッジは必ずしも個人だけではできないことの表れと思われる。ただし、あまりにも公的な支援システムを機能させすぎるのも、今ご指摘のモラルハザードという点で問題であるので、その線をどこに引くかということもこの研究で明らかにすべき非常に重要な課題の一つとして認識している。現段階でどうすべきかは十分に分かっていないので、できるだけ早い時期に明らかにしたいと思っている。
この研究で定める基準は建築基準法より上位の性能に関する部分が対象で、建築基準法で規制されていることは市場選択メカニズムの対象外と考えて良いか。
住宅に関しては性能表示メカニズムが社会的に浸透してきたと思っている。建築においても市場選択メカニズムをうまく生かしていくには同じような性能表示の仕組みが必要になってくるが、このとき情報の信頼性が重要であると思っている。その適用可能性を本研究で整理していきたい。建築基準法の規制よりも上の部分でどのように社会または国民にとって安心を実感していただくかという仕組みを考えている。
地震の確率という点でいうと、地震の発生を含めた確率論を対象とするのか、地震動の予測のばらつきに対する確率論的な評価をするのかがわからない。
また、供用期間や施設の種類によってもリスクは変わるし、要求性能も変わるのではないか。そのため、対象建物や機能であるとか、社会的、都市防災上要求される性能等の仕分けが必要と思われる。
さらに、都市防災や不確定要素の多い地震等に関して意思決定を迫られるところへの負担を軽減するためにも、耐災性を高めた建物の固定資産税を減免する等、これまでとは逆のインセンティブを与えるような施策も必要ではないか。
最後のご指摘にあった公的関与によるインセンティブもしくは誘導政策の重要性は自覚しているが、それは次期の課題として、まずは個人の自己責任でどこまでできるかを検討していきたい。将来的な政策についてはご指摘のとおり、いずれ地域の防災性をどのように向上させていくかという話につながると思われるので、この研究では都市との関係を踏まえた考え方の整理をしていきたい。
欠席されている委員からの意見を紹介してほしい。
まず、安全だから安心とは言えないのではないか、心が安らぐとか、経済的なものも含めた安心ではないかというご指摘があった。これについては同感であり、リスクマネジメント、経済性、人命に関わるリスク等全てを考慮しつつ、ソフト的にも安心とは何かを考えながら進めていきたい。
次にブレークスルーすべき問題点が不明確というご指摘があったが、対象が膨大であるので、基盤研究として、フレームワークを明らかにし何ができうるかを見極めることがポイントとなる。プロジェクト研究との違いをご理解いただきたい。
また、建築物の地点によって入力地震動を変えるかという質問があったが、これはその通りでできる限り個々の状況をリスク評価できるようなことを考えていきたい。また、既存の建物も対象としていきたい。
誰が誰のために評価するかという質問に対して、これは設計者がユーザーのために評価することもあれば、ユーザーが自分のためにすることもあり、さらには保険会社が保険を付与する相手に対するために評価することもある。ケースバイケースと考えている。非常に多くの組み合わせがあるのでできるだけ早い時期に整理していきたい。
アウトカムとして挙げられている3つの項目について、公共の役割ではなく民の役割の方が重要ではないかというご指摘があった。しかし、地震災害リスクの特性上、建築物所有者だけではリスクマネジメントの不可能と思われるため、都市との関係等の部分で何らかの社会システムの補完が必要となる部分があるかと思う。
効率性に関して、どのように事象に対する定量的なリスクを評価するか若干不明確というご指摘があった。これについては、まだ欲張って非常に多くのケースを考えており、人命の保護に関するリスクや、機能の維持、復旧容易性、資産価値の維持に関するリスクも対象とし、その中でどのようなニーズがそれぞれに対応するのか、またどのような技術が情報を提供する仕組みとして使える可能性があるのか考えていきたい。
最後に、海洋プレート型巨大地震と直下型地震の区別が不明確とのご指摘があったが、両方を想定して研究を進めていきたい。また、実用的な予測手法や技術的な内容については、基盤研究ということで技術がどこまでできる可能性があるのかを見極めるのが重要であるのでできるだけ早い時期に見極めをしていきたい。
この研究はこれで良いが、コア・コンピタンスとしてどこに国総研の強みがあるかを考えた方が良い。国総研の総合性を考えると、このような研究で個別に地震時の建築物等の挙動を検討していくのと同時に、社会資本である道路や港湾等の応答も含めて検討していくのが良いのではないか。
また、総合研究所の利点を生かして、個別施設の挙動を研究すると同時に、災害時における被害全体の発生・波及等の代表的なシナリオをいくつか挙げ、そのリスクと個別の施設のリスクとを総合した形での総体的なリスクを出すということも重要である。
最後に市場選択メカニズムについては、圧倒的に研究の進んでいるはずの金融リスクへの対処法においても苦労しているのが実情である。取扱いがさらに難しいはずの地震など災害問題については、最終的に何かしらのアイディアが出れば、それで十分な成果といえるのではないか。
  <評価のとりまとめ>
従来の単純な防災についての研究からリスクマネジメントという視点で一歩進めた研究であり、是非進めていただきたい。その際、都市との関係や市場選択メカニズムの扱い方の問題等の意見を反映させるかたちで研究を進めていただきたい。
  A都市型社会に対応した市街地環境のあり方及び評価方法に関する研究
環境のようなソフトな場合の評価について、信頼できる結果を得るためにはどうすればよいと考えているか。
その方法論も含めて研究していきたいが、現段階の知見として、例えばこれ以下の光の量では病気になってしまうというような病理学や生理学的なアプローチからは水準を導くことは難しいだろうということまではわかっている。そのため、心理的な評価手法を取り入れることを想定しており、大規模なアンケート調査を実施してその結果と環境との相関分析をしていくとか、被験者実験で生理反応と環境との相関分析をしていくといったことを考えている。
都市計画の分野では性能規定化はホットトピックとして非常に重要な研究であるが、方法論も含めて考えたいとのことなので、ヒントになることを申し上げたい。本研究では大きく分けると効果の分析と評価の分析の2つが入っているが、これらは表裏一体であるけれども多少アプローチの仕方が違う。効果の分析手法としては、規制がある場合とない場合、ない場合は全くない場合を想定するのか、あるいは代替的な別の措置があるように想定するのかはわからないが、の比較をすることが考えられる。その場合、一つ目のアプローチは、都市における人々の行為をモデル化し、行為がそれぞれの環境下でどう変わるかを検討する。二つ目はより実証的であるが、対象規制以外の要因をできるだけコントロールしつつ規制がある地域とない地域を比較していく。現在の都市計画の研究はこの二つ目の手法を多用している。ただし、この手法では現実的にはその他の要因をコントロールすることは難しい、もしくはコントロールするための方法論がやや未整備という課題があるので、その辺りを考慮して進められたい。
評価の分析としては、アンケート調査等で心理的にどの程度の人が満足するか、または経済価値で評価する方法があると思うが、政策的にある水準を決定するときに「8割の人が満足」では根拠として若干薄いのではないか。一つの有力なアプローチとしては、定量的に人々の満足度のようなものを評価した上で、その規制の値を変えることで、社会にどのような効果が得られるかについて定量化して、それを最大化するような形で水準を決めるのが良いのではないか。
研究の枠組みを検討する上で参考にさせていただきたい。確かに、複数の評価価値があるときに片方の価値をこれ以上に上げると片方が下がるということもあり得るので、変曲点・最適点をうまく求められるようにしていきたい。
規制の考え方として、建築基準法の集団規定だけで最適な状況が作れると考えるべきではない。逆に、厳密な意味の最低基準を決めないといけないと考える必要もないのではないか。地域のまちづくりの成熟度によって、行政の関わり方や公的に規制すべき内容が変わってくると思われる。例えば、地域で合意形成が成り立ち、地域で適切な建築ルールが作れる場合には公的な規制はいったんかなり低いところまで思い切り下げて、地域の合意に従って順次合意ができたところから緩和する手法を地域ごとに進めていくのも良いと思う。地域により様々な可能性が考えられるが、全体的な決定がなかなかしにくいという条件については地域の合意を活用し最適な水準に移行させる等、多様な環境制御のシステムモデルを検討する必要がある。
また、建築研究所時代から長年にわたって行われてきた住環境水準の研究の蓄積があるが、研究マップには入っていないように見える。この研究と全く関係がないわけではないと思うので、その知見を取り入れて足りない部分はこの研究で補っていくという発想が必要ではないか。
さらに、まちにとって歴史性、文化性という要素が全く出てこないとは思えないので、定量的な分析の可能性も含めて検討してほしい。
ご指摘のように、規制制度の枠組み自体をどのようにすべきかを常に念頭に置きながら水準の検討を進めていこうと考えている。今の枠組みを前提に考えるのと、地域にある程度の裁量を持たせて、行政側では最低ルールだけを定めるという枠組みでは大きな差が出ると考えられる。その辺りの政策の手法は本省住宅局、都市・地域整備局とも連携して検討したい。ただ、片方では、制度にかかわらず環境の要素の水準について科学的な検討を行いたいと考えており、基盤研究としてチャレンジしたい。
本研究は確かにこれまでの住環境水準の研究と関連するが、研究マップについては都市や市街地という対象の特性上あらゆる分野に関係することとなり、広がりすぎてしまうのである範囲に枠を限定して書いたものである。
また、歴史性等については圧迫感や景観等の良し悪しの心理に大きく影響しているのではないかと考えている。
望ましい値を考えるときには、まず規制をなくしたときにどうなるかを考えてみてはどうか。さらに、その時何が不都合になるかも考え、それが何かを犠牲にしても守りたい価値であるなら、どの程度の犠牲と見合うのかを検討していくアプローチもあるのではないか。その中から規制を導入する意味がはっきりすると思う。また、例えば容積率の場合では、容積率を十分に使っていない例もある。これは保有コストが安いから許されていると思われる。都市全体の経済効率を高めるという観点から、望ましい容積率へ誘導するという視点があってもいい。
経済的な観点も入れて研究を進めたい。それぞれの土地利用者が勝手に行動したときに何が起こり、何が問題であるから、市場への介入としての規制があるのかを原点に返って考えたい。
経済学的な検討というのは、何か別の支配的な制約条件があって初めて成り立つものである(収入制約の下での効用の最大化など)。規制を撤廃した場合の容積率の問題を扱う場合、一体何を制約条件として与えるべきなのか。その結果は机上の検討の範囲を越えるものとはなり得ないのではないか。経済合理性という価値観は、都市を作る上では一部の見方にしかすぎないのではないか。仮に容積率問題を机上で検討するならば、美観という価値観だけで都市を作ったら一体どのような弊害が起きるのだろうか、などのアプローチをとった方がより興味深い結果が得られるように思われる。
規制の効果については非常に重要である。ただし、既存の規制の中にはほとんど守られていないものがあり、またそれを守らせようという仕組みが社会にできていない。規制の効果については、そうした実態をも勘案しつつ、取り組むようにしてほしい。
規制内容の評価においては、水準をどうするかという点について、多少なりとも社会科学的な根拠を求めた方が良いだろう。地区計画を立てるときには、各地域でまちづくり協議会を立ち上げているが、例えば騒音や匂い等、地域ごとに要求するものが全く異なっている。水準を求めるときには、そのような項目・数値をリストアップした上で研究を進めることが重要であり、効率的でもある。研究の方向は良いと思う一方、方法論としてより効率的なやり方があるように思われるのである。
建築協定や地区計画や市町村の独自条例等で環境やまちに関するローカルルールが近年多くつくられているので、これらを洗い出し、どのような環境要素・環境項目が重要と考えられているかというリストを最初の段階で作っていきたい。
環境評価というと地球環境の視点は欠かせないと思うので取り入れていただきたい。
他部会の委員からの意見を紹介してほしい。
出席委員からの質疑等と重複するので、一点だけ紹介したい。資料中の文言で「できるだけ定量化」とはどういうことか、というご質問があったが、これは例えば、斜線制限を性能規定化して「〜の目的のために必要な光の量○○単位を確保すること」と表現することをイメージして定量化と呼んでいる。また、現在の規制の効果を評価する際にも、例えばこれだけの日射量を市街地に与えているとか、経済的な量としてこれだけ市街地に貢献しているといった数量化ができないかを検討したいと考えている。しかし、市街地環境の良否の基準や規制値には市街地の実態や経験則、人間の感覚が含まれており、全ては数値化できないのではということもあり「できるだけ」と書いている。
  <評価のとりまとめ>
基本的に大変重要な研究であるから是非進めるべきである。その際、規制の効果としての評価、また合意形成メカニズムや、経済合理性の話などの指摘を踏まえて研究を進めていただきたい。
(3) 報告「新規国土交通省総合技術開発プロジェクト」についての評価委員の質疑、意見及びそれらに対する国総研の回答
評価、意見等は、適宜、分割統合を行い、整理した。
  凡例 ○:委員からの意見及び評価、→:国総研の回答
  @持続可能な社会構築を目指した建築性能評価・対策技術の開発
廃棄物と二酸化炭素に限定して研究を進めるということで良いか。
政策への反映を考えて、できる限り定量化できるものに研究対象を絞り込んでいる。
建築の評価としては二つの指標の他には、後半の説明にあったように、建築の性能自体の問題や寿命の問題があり、さらに追加するとすればコストの問題もあると思うが、それらを含めた上での最適化ということでは、説明があったものの他にも検討対象を入れないといけないものがあるのではないか。最終的なガイドラインとして、単なる技術基準ではなく市場誘導施策ということになると、二つの指標だけでは捉えられない部分も考慮すべきではないか。
また、予算額については本省の方で評価されるということで良いか。
先に、予算について回答する。これは要求額であるので大きく変わる可能性がある。ライフサイクルの計算に要する資料収集であるとか、先端技術のメニューについての実験・検証にかなりの予算が必要である。
また、前半のご指摘のガイドラインの内容については、どの辺りまで視野を広げるべきかは非常に重要な点だと認識している。そういった意味ではこの研究は技術的な第一歩と位置づけられるかもしれない。このガイドラインの最終的な使われ方はローカルなものであるので、地域条件に応じてさらに考えなければいけない点もある。そのような中で、想定できる成果として二つの指標を挙げているが、その基本性能としているものには廃棄物、二酸化炭素以外のものも含めていると理解していただきたい。
ガイドラインには非常に多くの項目を含むが、定量化という点については特に二酸化炭素と廃棄物の二点の定量化を重点的に実施するということで良いか。
そのとおりで、この二つ以外も非常に重要と認識しているが、まずは定量的に説得力のあるものから構築していきたい。
  A都市空間の熱環境評価・対策技術の開発
費用対効果という話があったが、どのようなイメージを持っているか教えてほしい。温度が上がったときの負の便益はどのように算出するのか。
例えば温度を上げないための対策として緑を何%にすれば良いという時に、それにかかる費用を活用できないかと考えている。では、現状のままではどのように不便益かということは非常に重要な観点であり、世の中で理解を得てヒートアイランド対策が進められるような費用対効果の表現を検討したいと考えている。
例えば熱帯夜で寝苦しいとかということだが、温度をコストに換算するのは難しい。
気温の費用対効果については実は大して費用がかからないという側面がある。夏は費用がかさむが冬は逆に費用が低減し、相殺されてしまいあまりコストが上がらないという基礎研究があるので活用してほしい。
また、このような気象モデルのスケールは大まかにいうと大中小と3つ程度あるが、それぞれモデルのロジックが異なっている。モデルに関しての研究は日本でもアメリカでもかなり進んでいるが、その相互のマッチングが難しい。この研究でその辺りを追求するとなるととても難しいのではないかと思う。
さらに、地理情報でヒートアイランドのモデルを動かす際には、地表面外については三次元データを使うと良いが、排出熱の方は粗度では捕らえにくい。このようなモデルの面の課題をどのように考えているか。
モデルについては、スケール別に様々なモデルがあり、それぞれ長所・短所がある。その長所を持ち寄って検討と、総合的かつ標準的なモデルができればと考えている。
また、エネルギー消費については今様々な原単位が作られているので、それと例えば建物の用途別の床面積等も含めた地理情報を組み合わせて、できるところまで推定していきたい。
排出熱源に関するデータは東京都と環境省で連携して合同委員会でデータベースを蓄積しているところである。
そこともよく連携していきたい。
自治体の施策につなげたいということで、保水性舗装や透水性舗装等の説明があり、水の循環を考慮していると思うが、例えば水の循環との絡みでそれらをうまく活用して舗装を冷却することも考えられる。また、都市の特性として雨水や下水を利用すると自治体にとってはコストがかからずより手軽に取り組めると思う。そのような手法は取り入れるように考えているか。
都市計画運用指針には雨水貯留施設や保水性舗装の活用を施策の一つとして盛り込んでいるが、どの程度整備するとどの程度効果があるかは記述されておらず、その科学的・工学的根拠をこの研究で明らかにしていき、最終的にガイドラインとして提供していきたい。
これも費用対効果のひとつの例であるが、別の研究では気温を2度下げると冷房代が下がり石油の必要量が下がるというストーリーを組み立てている。参考にしてほしい。
(4) その他新規プロジェクト研究候補等(第1、3部会評価担当)の説明
   事務局より、新規プロジェクト研究候補等(第1、3部会評価担当)7課題についての説明があった。評価を担当する部会の委員以外からも事前に意見を伺っており、それらを分科会の場で紹介することで審議・評価結果へ反映させることについても説明があった。
(5) 新規プロジェクト研究候補等(第2部会評価担当)の評価書の作成
   評価書の作成については、主査に一任されることとなった。
(6) その他
   事務局より、本日の審議内容については、議事要旨としてとりまとめ、各委員に確認をしていただいた上で確定するとの連絡があった。また、評価書の作成については主査に一任されることとなったことと、他の分科会の審議に基づき作成された評価書とともに、最終的には本委員会委員長の同意を経て決定されるとの連絡があった。
   さらに、評価書や議事要旨等をとりまとめた報告書を作成し、公表されるとの連絡があった。
   最後に、各課題の資料につけてある政策評価個票について、行政評価法に基づいて国総研が作成し、国土交通省本省に提出するものであり、外部評価欄は本日の審議に基づき、主査の了解を得つつ作成する旨の連絡があった。