平成18年度「国土技術政策総合研究所 講演会」 講演概要


 
特別講演
公共哲学の実践的意義
−コミュニタリアニズムを中心にして−
千葉大学大学院人文社会科学研究科教授
小林 正弥

<小林 正弥(こばやし まさや)氏 プロフィール>
 1963年生まれ。東京都出身。東京大学法学部卒業。現在、千葉大学大学院人文社会科学研究科教授、公共哲学センター長・地球福祉研究センター長。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治学。アメリカ同時多発テロ(9.11)直後に公共哲学ネットワークを発足させる。公共性を中核とする国際的な学問的研究を推進すると同時に、地球的平和問題をはじめ実践的問題に対して公共的に様々な見解を提示している。03年元旦には、研究者と市民が共に平和のための実践活動を行う地球平和公共ネットワークを創設。著書に『非戦の哲学』(ちくま新書)、編書に『戦争批判の公共哲学』(勁草書房)、監訳に『ネクスト〜善き社会への道〜』(麗澤大学出版会)など多数。

理系が日本を変える
毎日新聞科学環境部記者
元村 有希子

<元村 有希子(もとむら ゆきこ)氏 プロフィール>
 1966年生まれ。福岡県出身。九州大学教育学部卒業。現在、毎日新聞科学環境部記者。同部での01,02年の日本人ノーベル賞受賞者の取材で科学(者)・技術(者)の魅力に開眼する。日本の研究者・技術者の現状を描いた毎日新聞の長期連載「理系白書」(02年1月〜)の取材班キャップとして、科学と社会 のあり方についてさまざまな問題提起をしてきた。読者との交流の場として04年9月に開設した「理系白書ブログ」では管理人を務める。06年5月には、科学技術に関する優れた報道や出版物などを表彰する「第1回科学ジャーナリスト賞」で「大賞」を受賞。
一般講演
「公共工事の品質確保のための取り組みの方向について」
研究総務官 西川 和廣
 近年、公共工事に関しては、談合対策やコスト縮減を目的とした入札の競争性・透明性を高めるため、一般競争入札への転換が図られるとともに、価格と品質を総合的に評価する総合評価方式の拡充が図られている等、その調達制度は大きな転換期を迎えている。一方、現下においては公共事業費の大幅な削減等により、企業間の競争が激化し、著しく低い価格の落札が頻発しており、手抜き工事や安全対策の怠り、下請け業者・労働者へのしわ寄せ等による公共工事の品質低下が懸念されているところである。総合政策研究センターでは、このような背景を踏まえ、計画、調査設計・施工、維持管理までの全体を通した公共調達制度のあり方について検討を行っており、その方向性について報告する。

「道路環境影響評価の技術手法のマネジメント」
環境研究部長 福田 晴耕
 平成11年の環境影響評価法の施行に伴い、一定規模以上の道路事業に対して環境影響評価(法アセス)の実施が義務づけられた。旧建設省土木研究所は、法アセスの実施を支援するための「道路環境影響評価の技術手法」(以下、技術手法という)を作成し、道路環境影響評価実施者の利用に供してきた。さらに、国総研では、円滑な環境影響評価の実施を支援するため、この技術手法について現場の課題と最新の知見を反映するよう、これを常時点検・改正する「技術手法のマネジメント」を行っている。この度、省令の改正に対応し、技術手法について制度面及び技術面での見直しを行い、全面改定を行うこととなった。本講演では、これまでに実施された法アセスについて制度と技術の面から実態と課題の分析を行うとともに、技術手法のマネジメントの概要と今回の主な改正点について報告する。

「下水道における地球環境対策」
下水道研究部長 田中 修司
 平成17年2月に京都議定書が発効し先進国は温暖化ガスの削減に本格的に取り組み始めています。日本に割り当てられた削減目標は1990年に比較して6%減となっています。日本ではすでに「地球温暖化対策の推進に関する法律」が1998年に公布され、国・自治体・事業者などがそれぞれの立場で温暖化ガスの排出削減に取り組んでいます。下水道事業からの温暖化ガスの排出量は、自治体の事業部門の中ではかなり大きくなっています。ここでは、下水道事業における温暖化対策の全体像と二酸化炭素の300倍以上の温暖化効果を持つ一酸化二窒素の排出およびその対策について最近の研究内容からご紹介します。

「沿岸域の再生に向けて −自然再生の包括的計画・管理システムの構築―」
沿岸海洋研究部長 垣 泰雄
 国土交通省の「全国海の再生プロジェクト」において、重要な取り組みと位置づけられている海域環境の改善や環境モニタリングを推進するための研究として「都市臨海部に干潟を取り戻すプロジェクト」「海辺の自然再生のための計画立案と管理技術に関する研究」を実施している。これらのプロジェクトでは、干潟造成に関する産学官の共同実験、汽水域における住民参加型の観測・実験、事例研究やシンポジウムによる計画・管理手法の考え方を整理した。海辺の自然再生においては、現状把握、目的設定、手法開発だけでなく、「順応的管理手法」のような自然再生の計画・管理を推進するシステムが不可欠である。

「東アジアの航空ネットワークと我が国における国際空港の展望」
空港研究部長 加藤 久晶
 中国をはじめとする東アジア諸国における経済発展は目覚しく,これに伴う国際航空ネットワークの発達に対応すべく各国では巨大な国際空港の建設・開港が相次いでいる.一方、わが国においては関西国際空港の2本目の滑走路が平成19年夏に供用開始予定であるほか、成田空港の滑走路延長、羽田空港の再拡張事業に伴う国際線強化(年間3万回の国際線向け離発着枠を確保)が予定されている。今後とも暫くは東アジアの経済発展が順調に続くと予想されるが、我が国経済の国際競争力の維持・強化にとって国際空港容量の不足がボトルネックとなることがないようにする必要がある。本講演では我が国における国際空港容量の現状と見通しや、東アジアの経済発展に即応した我が国の空港整備のあり方について述べる。

「建築省エネルギー技術の現状と課題」
建築新技術研究官 澤地 孝男
 民生分野における二酸化炭素排出量は我が国全体の1/4程度となっており、周知のようにその増加傾向について対策が求められている。この講演では、住宅及び業務用建築物に関するエネルギー消費の現状と省エネルギー技術について概観し、欧米諸国の動向を踏まえつつ、現段階における到達点を整理するとともに、ここ数年における課題に関して考察する。住宅については気象条件とエネルギー消費構造の確認から、設備性能評価の位置付けとともに、既存住宅性能向上のための改修工事普及の課題と解決策を論じる。また、業務用建築物に関しては、未だその核心が容易には捉えがたい省エネルギー設計技術に関して、そこへのアプローチの課題について考察する。

「交通事故削減に向けた取り組み」
道路研究部長 佐藤  浩
 第8次交通安全基本計画(2006〜2010)では、2010年までに交通事故死者数を5,500人以下にする等の目標を掲げ、道路交通事故のない社会を目指して政府全体として取り組んでいる。国総研では、交通事故発生状況の推移、特徴等を踏まえ、より効果的・効率的な交通安全対策の実施を支援するための技術研究を行っている。その成果として、対策の立案から評価までの手順、留意点等を体系的にまとめた「交通事故対策・評価マニュアル」を作成するとともに、道路管理者が実施した交通安全対策の事故削減効果を明らかにした。本講演では、これら国総研が行っている技術研究やその成果、さらに今後の取り組みについて最新の状況を述べる。









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