平成16年度「国土技術政策総合研究所 講演会」 講演概要

 
特別講演
「地球システムと人間圏」
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
松井 孝典
 宇宙から見ると、地球は大気圏・海・地圏・生物圏、そして人間圏が有機的に繋がった一つのシステムである。我々は、そのシステムのなかで人間圏という一つの構成要素を作って生きている。それが文明である。現代は、資源・エネルギー・人口・環境・食糧などの様々な問題が文明の発展とともに深刻化しているが、それは人類が、かつてはその循環メカニズムが安定的に機能した地球システムと、調和しない人間圏の内部システムを構築したからだ。サブシステムに過ぎない人間圏は、この地球システムのなかでどういうものであればいいのか?未来のためにどうすればいいのか?文明とは、現代とは、地球とは、人間とは何かを問いながら、地球システムと人間圏の問題を宇宙という137億年の時空スケールで考える。

<松井孝典(まつい たかふみ)氏 プロフィール>
昭和21年生まれ。静岡県出身。東京大学理学部卒業、同大学院修了。現在、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授。専門は惑星物理学・アストロバイオロジー。昭和61年『Nature』誌に発表した地球の起源と進化についての一連の論文は世界中に衝撃を与えた。国内の各種委員会ほか国際地質学連合比較惑星学委員会など、各種の国際学会メンバーとしても活躍し、科学の側から哲学の領域に斬り込もうとするその言動は、常に各界から注目されている。
著書/「巨大隕石の衝突」(PHP出版)「一万年目の『人間圏』」(ワック出版)「再現!巨大隕石衝突-6500万年前の謎を解く」(岩波書店)「絶滅恐竜からのメッセージ」(ワック出版)「150億年の手紙」(徳間書店)「宇宙人としての生き方」(岩波書店)他多数。